(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ディスプレイ及び照明用途用の緑色発光体としての光安定性シアノ置換ホウ素-ジピロメテン染料
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230807BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230807BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20230807BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230807BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20230807BHJP
H10K 50/125 20230101ALI20230807BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20230807BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230807BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/20 101
C09K11/06
G02F1/13357
G09F9/30 365
H10K59/00
H10K50/125
H10K59/38
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2020571691
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019065939
(87)【国際公開番号】W WO2019243286
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・シュテファニエ・マンゴルト
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ケーネマン
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン・フランク・ハルバウアー
(72)【発明者】
【氏名】ソリン・イヴァノヴィチ
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183854(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0230960(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267921(US,A1)
【文献】国際公開第2017/155297(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/068299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H10K 59/38
H10K 85/60
C09K 11/06
G02F 1/13357
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス材料と、
式(I.b
)
【化1】
(式中、
式(I.b)中のR
1
、R
3、R
5
及びR
7は
、互いに独立し
てC
1~C
4
-アルキルから選択され
、
式(I.b)中のR
4a、R
4bは、互いに独立してフッ
素から選択され
、
式(I.b)中のR
8bは、C
1~C
4
-アルキル
である)
の化合
物から選択され
る有機蛍光染料とを含む、色変換体。
【請求項2】
(B1) 式(III)
【化2】
(式中、
qは、1~4であり
R
30は、非置換であるか、又はハロゲン、C
1~C
10-アルキル若しくはC
6~C
10-アリールにより一置換若しくは多置換されたアリールオキシであり、ここで、R
30基は、*で示される1つ又は複数の位置にあり
R
31及びR
32は、それぞれ独立してC
1~C
30-アルキル、C
3~C
8-シクロアルキル、アリール、ヘタリール、又はアリール-C
1~C
10-アルキレンであり、ここで、後の3つの基中の(ヘテロ)芳香族環は、非置換であるか、又はC
1~C
10-アルキルにより一置換若しくは多置換されている)
のアリールオキシ置換ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド化合物
及びその混合物
(B2) 式(IV)
【化3】
(式中、
R
41及びR
42は、それぞれ独立してC
1~C
30-アルキル、C
3~C
8-シクロアルキル、アリール、ヘタリール、又はアリール-C
1~C
10-アルキレンであり、ここで、後の3つの基中の(ヘテロ)芳香族環は、非置換であるか、又はC
1~C
10-アルキルにより一置換若しくは多置換されている)
のペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド化合物
(B3) 式(V)
【化4】
(式中、
R
51及びR
52は、互いに独立して水素、各場合において非置換又は置換されている、C
1~C
30-アルキル、ポリアルキレンオキシ、C
1~C
30-アルコキシ、C
1~C
30-アルキルチオ、C
3~C
20-シクロアルキル、C
3~C
20-シクロアルキルオキシ、C
6~C
24-アリール又はC
6~C
24-アリールオキシから選択され
R
53、R
54、R
55、R
56、R
57、R
58、R
59、R
510、R
511、R
512、R
513、R
514、R
515、R
516、R
517及びR
518は、互いに独立して水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、ニトロ、-NE
51E
52、-NR
Ar51COR
Ar52、-CONR
Ar51R
Ar52、-SO
2NR
Ar51R
Ar52、-COOR
Ar51、-SO
3R
Ar52、各場合において非置換又は置換されている、C
1~C
30-アルキル、ポリアルキレンオキシ、C
1~C
30-アルコキシ、C
1~C
30-アルキルチオ、C
3~C
20-シクロアルキル、C
3~C
20-シクロアルコキシ、C
6~C
24-アリール、C
6~C
24-アリールオキシ又はC
6~C
24-アリールチオから選択され、
ここで、R
53及びR
54、R
54及びR
55、R
55及びR
56、R
56及びR
57、R
57及びR
58、R
58及びR
59、R
59及びR
510、R
511及びR
512、R
512及びR
513、R
513及びR
514、R
514及びR
515、R
515及びR
516、R
516及びR
517並びに/又はR
517及びR
518はまた、それらが結合しているビフェニリル部分の炭素原子と一緒になって更なる縮合芳香族又は非芳香族環系を形成してもよく、前記
縮合芳香族又は非芳香族環系は非置換又は置換されており
E
51及びE
52は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C
1~C
18-アルキル、非置換若しくは置換C
2~C
18-アルケニル、非置換若しくは置換C
2~C
18-アルキニル、非置換若しくは置換C
3~C
20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C
6~C
10-アリールであり
R
Ar51及びR
Ar52は、それぞれ互いに独立して水素、非置換若しくは置換C
1~C
18-アルキル、非置換若しくは置換C
3~C
20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C
6~C
20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである)
の剛直な2,2'-ビフェノキシ架橋を有するペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド化合物
又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料Bを更に含む、請求項
1に記載の色変換体。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックス材料が、ポリスチレン、ポリカルボナート、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、シリコーン、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)-コポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレンアクリロニトリル、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、2,5-フランジカルボキシラートポリエステル、ポリ酪酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド又はそれらの混合物から選択される、請求項1
又は2に記載の色変換体。
【請求項4】
少なくとも1種の光散乱剤を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の色変換体。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックス材料が、少なくとも1種のバインダー、少なくとも1種の反応性モノマー、少なくとも1種の光開始剤及び/又は光酸発生剤を含む感光性レジスト組成物である、請求項1
又は2に記載の色変換体。
【請求項6】
前記感光性レジスト組成物が、熱ラジカル開始剤、有機溶媒、分散剤、界面活性剤、光散乱剤又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項
5に記載の色変換体。
【請求項7】
(i)少なくとも1つの光
源と
(ii)少なくとも1つの請求項1から
6のいずれか一項に記載の色変換体とを含み、
前記少なくとも1つの色変換体が前記少なくとも1つの光源からリモート蛍光体配置にある、液晶ディスプレイ用のバックライトユニット。
【請求項8】
(i)薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、液晶層、並びに赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを含むカラーフィルターアレイを含む液晶パネルと
(ii)少なくとも1つの光源と
(iii)少なくとも1つの請求項1から
6のいずれか一項に記載の色変換体とを含む、液晶ディスプレイデバイス。
【請求項9】
(i)白色有機発光ダイオード、青色有機発光ダイオード、ミニLED、又はマイクロLEDから選択される少なくとも1つの光源と
(ii)少なくとも1つの請求項1から
6のいずれか一項に記載の色変換体と
(iii)赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを含む任意選択のカラーフィルターアレイとを含む、自己発光型ディスプレイデバイス。
【請求項10】
(i)請求項
1に定義される
式(I.b)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料と
(ii)少なくとも1種の光硬化性又は熱硬化性バインダーと
(iii)任意選択で、光開始剤、光酸発生剤、反応性モノマー、熱ラジカル開始剤又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の成分と
(iv)任意選択で、
式(I.b)の化合物とは異なる有機蛍光着色剤、有機溶媒、分散剤、界面活性剤、光散乱剤、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤とを含む、インク配合物。
【請求項11】
液晶ディスプレイデバイス又は自己発光型ディスプレイデバイスの製造における、請求項
10に記載のインク配合物の使用。
【請求項12】
ディスプレイにおける、請求項1から
6のいずれか一項に記載の色変換体の使用。
【請求項13】
発光の中心波長が400nmから480nmの間の青色LEDにより生成される光を変換して白色光を供給するための、3000Kから20000Kの間の相関色温度を有する白色LEDにより生成される光を変換してより低い相関色温度を有する白色光を供給するための、又はデータを伝送し、可視スペクトル領域の電磁放射線を放出する伝送器における、請求項1から
6のいずれか一項に記載の色変換体の使用。
【請求項14】
少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの請求項1から
6のいずれか一項に記載の色変換体とを含み、前記少なくとも1つの色変換体が、前記少なくとも1つの光源からリモート蛍光体配置にある、照明デバイス。
【請求項15】
請求項
8又は9に記載のディスプレイデバイスを含む、テレビデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーマトリックス材料と少なくとも1種のシアノ置換BODIPY(ホウ素-ジピロメテン)染料とを含む色変換体、液晶ディスプレイ用のバックライトユニット、自己発光型及び非発光型ディスプレイ並びにそれを含むデバイス、前記色変換体の使用、少なくとも1種のシアノ置換BODIPY染料を含むインク配合物及び前記インク配合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、白色発光ダイオード(WLED)が、従来の光源、例えば白熱灯及び蛍光灯を、かつてない程の勢いで置き換えつつある。WLEDは、多くの用途、例えば一般点灯やディスプレイの用途に使用することができる。白色光は、典型的には、青色発光ダイオード(LED)を、1種又は複数の、一般に蛍光体材料として公知の波長変換材料と組み合わせて使用することにより創出される。蛍光体材料は、青色LED光源から放出された光を吸収し、吸収された光とは異なる波長を有する光を放出する。蛍光体材料は通常、黄色、赤色及び/又は緑色の成分を追加し、そのため、蛍光体により放出される光は、青色LEDからの残存する青色光と組み合わされて、白色と認識される光となる。蛍光体材料は通常、LEDチップに直接塗布され、蛍光体が空間を介さずにLEDチップに直接塗布される構成は、「蛍光体オンチップ」構成とも呼ばれる。
【0003】
典型的な市販の非常に効率的なWLEDは、黄色発光ダウンコンバート型イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体(YAG-蛍光体)でコーティングされた青色発光InGaN LEDチップで構成される。蛍光体は通常、ポリマーマトリックス材料に分散させた、セリウムをドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(Ce:YAG)である。LEDからの青色光がCe:YAG蛍光体を励起して黄色光を放出させ、続いてそれが青色光と混合されて白色光を生成する。蛍光体オンチップ構成を有するWLEDにおいては、これまで使用されてきた蛍光体材料は、一般に無機材料であり、それは、その高い熱及び放射安定性による。蛍光体オンチップ構成のWLEDは、緑色と赤色のスペクトルが不足しているため、多くの場合、6000Kを超える高い相関色温度と、80未満の低い演色評価数(CRI)の光を供給する。しかし、赤色の寄与を向上させることができる公知の無機赤色発光蛍光体は、比較的効率が低く、多くの場合、高価な希土類金属化合物である。
【0004】
蛍光体ベースの白色LEDに対する別のアプローチは、青色LEDと色変換体であり、色変換体は一般に、リモート蛍光体構成の担体とポリマー層とを含む、即ち、蛍光体材料は、LEDチップからある特定の距離に配置される。ポリマー層は、1種又は複数の有機蛍光体(以下、有機蛍光染料と呼ぶ)を含む。色変換体は多くの場合、黄色発光有機蛍光染料と赤色発光有機蛍光染料との混合物を含む。効率的な有機黄色発光蛍光染料及び有機赤色発光蛍光染料は、当技術分野で公知である。
【0005】
蛍光体ベースの白色LEDに対する更に別のアプローチは、蛍光体オンチップ構成(配置)の黄色蛍光体でコーティングされ、リモート蛍光体構成(配置)の色変換体と連結させた青色LEDからなるWLEDである。色変換体は、典型的には、少なくとも1種の赤色発光有機蛍光染料を含む。
【0006】
現在、有機蛍光染料は、白色光の出力が望まれるLEDベースの光源における無機蛍光体を置き換えるために検討されている。それらの使用は、様々な利点を提供する。第一に、有機蛍光染料は、高い質量比吸収率により区別され、それは、無機蛍光体の場合よりも、効率的な放射変換に必要な材料がかなり少ないことを意味する。第二に、有機蛍光染料は、光の色相の調製を可能とし、したがって、暖白色のLED光の創出を可能とする。第三に、有機蛍光染料は、コストがかかる不便な方法で採掘し供給しなければならず、限られた程度でしか入手できない希土類を含む材料を何ら必要としない。更に、有機蛍光染料は通常、溶液処理可能である。
【0007】
一般照明の目的では、演色性の高いWLEDを実現するには、波長変換材料の選択が重要である。良好な演色には、420~780nmの可視スペクトル範囲の大部分にわたる発光が必要である。しかし、市販のWLEDの大多数のスペクトルは、青色成分(LEDからの青色発光)と黄色成分(Ce:YAGからの黄色発光)が豊富であるが、緑色と赤色が不足している。したがって、青色LEDの発光波長よりも長い発光波長であるが、黄色蛍光体材料の発光波長よりも短い波長で発光する、光安定性が高い、特に高い蛍光量子収率と、高い光安定性を併せ持つ、緑色発光有機蛍光染料に対する継続的必要性が存在する。
【0008】
今日、照明とデータ伝送とを組み合わせることができる色変換体用の有機蛍光体に対する大きな必要性が存在する。照明とデータ伝送の両方に白色LEDを利用する新しい技術が、可視光通信(VLC)として公知である。VLCは、急速に成長している技術分野であり、高速で安全な無線通信を実施して、既存の無線技術を置きかえる、又は補完することを目的としている。とりわけリモート蛍光体LEDにおける色変換体として使用できる有機蛍光体は、その可視バンドギャップ、短い放射寿命、及び高い蛍光量子収率に起因して、VLCにとって多くの潜在的利点を提供する。LiFi(Light Fidelity:光忠実度)は、高速無線通信用に強度が変化するLED点灯を使用する照明によるデータの伝送のために確立された用語である。オフィス、街灯及び家庭でのLED点灯の使用の普及と共に、LiFiは、既存の点灯インフラへの付加利益となっている。したがって、数ナノ秒、好ましくはそれよりも更に短い範囲の高速のデータ伝送を目的として、特に、高い蛍光量子収率と、高い光安定性及び短い蛍光寿命を併せ持つ緑色発光蛍光染料に対する継続的必要性が存在する。
【0009】
緑色及び赤色有機蛍光染料を含む色変換体も、現代のディスプレイデバイスに頻繁に使用されている。今日、ディスプレイデバイスのトレンドは、より自然で鮮やかな実物に近い色を可能にするより広い色域に向かっている。特に、フルカラーディスプレイは、飽和した赤色、緑色、及び青色の画素を必要とする。色域のサイズは、色変換体で使用する有機蛍光染料の選択に強く依存する。とりわけ、有機蛍光染料は、狭い発光スペクトル、即ち、狭い半値全幅(FWHM)を有する必要がある。緑色スペクトル領域(490~560nm)において狭帯域放出を有する先行技術の有機蛍光染料は多くの場合、照射条件下での長期の光安定性に欠けている。したがって、高い長期光安定性を有する、緑色スペクトル領域において狭帯域放出を有する蛍光染料に対する継続的必要性が存在する。好ましくは、染料は、青色光(400~490nm未満)により効率的に励起される必要があり、高い蛍光量子収率を有する必要がある。
【0010】
周知のように、ホウ素-ジピロメテン化合物(BODIPY)は多くの場合、可視から近赤外の波長での狭い吸収及び発光帯域幅、高い蛍光量子収率、短い蛍光寿命、及び良好な熱安定性を示す。ニトロ置換BODIPYは通常、低い蛍光量子収率を特徴とするか、蛍光を示さないことさえもあることも周知である。
【0011】
M. T. Sajjadらは、Adv. Optical Mater. 2015、3、536~540頁に、VLC用の周波数変換体材料としての蛍光赤色発光BODIPY-オリゴフルオレン星形分子を記載している。
【0012】
Naoya Ieda、Yuji Hotta、Naoki Miyata、Kazunori Kimura及びHidehiko Nakagawaは、J. Am. Chem. Soc 2014、136、7085~7091頁に、式NOBL-1の青色光制御可能な一酸化窒素放出剤を記載している。式(A)の化合物が、参照化合物として使用された。
【0013】
【0014】
WO2014/025435は、シアノ基を持っていてもよい4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY)化合物を含む有機感光性光電子デバイス、例えば太陽電池、光検出器、光センサ及び光伝導体を記載する。
【0015】
US2014/0125222は、LEDと、任意の有機蛍光体化合物、例えばペリレン由来化合物、ジフルオリドホウ素ジピロメテン誘導体、フルオレン誘導体、クマリン染料等を含んでもよい波長変換要素とを含む発光デバイスを記載する。
【0016】
WO2017/155297、US2016/0223162、US2016/0230960、US2017/0247610、US2017/267921、US2018/0134952、US2018/0134953、US2018/0274753、US2018/0208838及びUS2019/093008は、樹脂マトリックス中にBODIPY染料、とりわけシアノ置換BODIPY染料であってもよいBODIPY染料を含む色変換体、それを含むバックライトユニット、及びディスプレイデバイスにおけるその使用を記載する。
【0017】
US2016/0272884は、ディスプレイで使用するための有機ドットを含む補正フィルムを記載している。有機ドットは、ペリレン化合物及び/又は修飾BODIPY化合物、例えばシアノ置換BODIPY化合物であってもよい。
【0018】
US2019/0062348は、炭素コア骨格の2、6位にシアノ基を持っていてもよい赤色蛍光BODIPY化合物、及び色変換フィルムにおけるその使用に関する。色変換体は、樹脂マトリックスに分散させたこれらの化合物を含む。
【0019】
WO2018/021866は、樹脂マトリックス中に緑色蛍光BODIPY化合物を含む色変換体、それを含有するバックライトユニット及びディスプレイデバイスを記載している。WO2018/021866のBODIPY化合物は、2位又は6位におけるシアノにより一置換されたものとすることができる。参照の目的で、以下に図示する式AのBODIPY化合物を含む色変換体が記載されている。
【0020】
【0021】
WO2018/068299は、青色バックライトユニットと、それぞれ緑色又は赤色の光を放出する表面改質粒子を含む緑色色変換層及び赤色色変換層を含む色変換アレイとを含む発光デバイスを記載し、表面改質粒子は、ゾル-ゲルナノ粒子とゾル-ゲルナノ粒子の表面に付着した複数の発光団、例えばBODIPY染料とを含む。
【0022】
先行技術の有機緑色蛍光BODIPY染料は多くの場合、不十分な光安定性が問題となる。しかし、点灯デバイス及びディスプレイへの適用には、高い蛍光量子収率と小さなFWHMに加えて、長期照射下での高い光安定性が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】WO2014/025435
【文献】US2014/0125222
【文献】WO2017/155297
【文献】US2016/0223162
【文献】US2016/0230960
【文献】US2017/0247610
【文献】US2017/267921
【文献】US2018/0134952
【文献】US2018/0134953
【文献】US2018/0274753
【文献】US2018/0208838
【文献】US2019/093008
【文献】US2016/0272884
【文献】US2019/0062348
【文献】WO2018/021866
【文献】WO2018/068299
【文献】WO2007/006717
【文献】US4,845,223
【文献】WO2014/122549
【文献】EP3072887
【文献】EP16192617.5
【文献】EP17187765.7
【文献】US4,379,934
【文献】US4,446,324
【文献】EP0657436
【文献】WO2009/037283A1
【文献】WO2017/121833
【文献】US2011/0306804
【文献】WO2010/132740
【文献】WO2011/043660
【文献】WO2011/043661
【文献】US2011/0282020
【文献】US2014/0336349
【文献】WO2015/137804
【文献】US2,551,731
【文献】WO2008/101841
【文献】US2015/0183955
【文献】WO2010/108835
【文献】WO2010/081749
【文献】EP-A634445
【文献】WO2012/152812
【非特許文献】
【0024】
【文献】M. T. Sajjadら、Adv. Optical Mater. 2015、3、536~540頁
【文献】Naoya Ieda、Yuji Hotta、Naoki Miyata、Kazunori Kimura及びHidehiko Nakagawa、J. Am. Chem. Soc 2014、136、7085~7091頁
【文献】T. Greene and P. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis (3rd ed.)、John Wiley & Sons, NY (1999)
【文献】Biorg. Med. Chem. Lett. 18 (2008)、3112~3116頁
【文献】Journal of Organic Chemistry、2013、vol. 78(2)、757~761頁
【文献】Photochemical & Photobiological Sciences 2009、8、1006~1015頁
【文献】Oscar Nuyken、Polystyrenes and Other Aromatic Polyvinyl Compounds、in Kricheldorf、Nuyken、Swift、New York 2005、73~150頁
【文献】Elias、Macromolecules、Weinheim 2007、269~275頁
【文献】Elias、Macromolecules、Weinheim 2007、343~347頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、本発明の目的は、光安定性が高い有機緑色蛍光BODIPY染料を提供することである。緑色蛍光BODIPY染料は、光源から放出される光により励起される必要があり、ディスプレイ用途に必要な緑色原色の高い色彩度を可能とする、490~560nmのスペクトル領域でのFWHMが狭い効率的な発光を示す必要がある。
【0026】
好ましくは、有機蛍光染料は、下記の特性のうちの1つ又は複数も有する必要がある:
- 数ナノ秒程度の短い蛍光寿命;
- 青色光及び/又は白色光照射条件下での高い熱安定性;
- 水分及び酸素に関する高い化学的安定性;
- 良好な処理可能性、好ましくは良好な溶液処理可能性。
【0027】
これらの目的及び更なる目的は、以下に定義される式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物及びそれらの混合物の使用により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0028】
第1の態様において、本発明は、ポリマーマトリックス材料と、式(I.a)、(I.b)、(I.c)
【0029】
【0030】
(式中、
式(I.a)、(I.b)及び(I.c)中のR1、R2、R3、R5、R6及びR7は、存在する場合、互いに独立して水素、C1~C20-アルキル又はC6~C14-アリール-C1~C10-アルキレンから選択され、ここで、C6~C14-アリール-C1~C10-アルキレン中のアリール部分は、非置換であるか、又はk個の同一若しくは異なる置換基R9により置換されており;
式(I.a)、(I.b)及び(I.c)中のR4a、R4bは、互いに独立してフッ素、塩素、シアノ又はOR10から選択され、
式(I.a)中のR8aは、C1~C20-アルキルであり;
式(I.b)中のR8bは、C1~C20-アルキルであり;
式(I.c)中のR8cは、C1~C20-アルキル、C6~C10-アリール又はC6~C10-アリール-C1~C10-アルキレンであり、ここで、前述の2つの基中のアリール部分は、非置換であるか、又はk個の同一若しくは異なる置換基R9により置換されており;
ここで、
kは、1、2、3、4、5又は6であり;
R9は、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルコキシ、CN、ハロゲン、フェニル又はフェノキシであり;
R10は、C1~C10-アルキル又はヒドロキシ-C1~C10-アルキルである)
の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料とを含む色変換体に関する。
【0031】
本発明者らは、BODIPYコアに結合した2つのシアノ基が、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物に高い長期光安定性を与えることを発見した。本発明による式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物の使用は、高い光安定性、高い蛍光量子収率、60nm未満の狭いFWHMの490~560nmの波長域における発光スペクトルの観点から有利である。更なる利点は、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物が、発光要素(光源)、典型的には青色LED、白色LED、青色有機LED又は白色有機LEDの光で励起できることである。更なる利点は、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物が、溶液処理可能なことである。
【0032】
更なる態様において、本発明は、これらの色変換体の使用に関する。本発明の色変換体は、ディスプレイ用途に特に有用である。本発明の色変換体はまた、発光の中心波長が400nmから480nmの間の青色LEDにより生成される光を変換して白色光を供給するのに、3000Kから20000Kの間の相関色温度を有する白色LEDにより生成される光を変換してより低い相関色温度を有する白色光を提供するのに、又はデータを伝送し、可視スペクトル領域の電磁放射線を放出するための伝送器において、特に有用である。
【0033】
更なる態様において、本発明はまた、少なくとも1つの上記に定義される色変換体と、少なくとも1つの光源とを含み、少なくとも1つの色変換体と少なくとも1つの光源とが、リモート蛍光体配置にある照明デバイスに関する。
【0034】
更なる態様において、本発明はまた、(i)少なくとも1つの光源、好ましくは6000から12000Kの間の相関色温度を有する白色LED、又は発光の中心波長が400nm~480nmの青色発光ダイオードと、(ii)少なくとも1つの上記に定義される色変換体とを含み、少なくとも1つの色変換体と少なくとも1つの光源とが、リモート蛍光体配置にある、液晶ディスプレイ用のバックライトユニットに関する。
【0035】
更なる態様において、本発明はまた、(i)薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、液晶層、並びに赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを含むカラーフィルターアレイを含む液晶パネルと;(ii)少なくとも1つの光源と;少なくとも1つの上記に定義される色変換体とを含む、液晶ディスプレイデバイスに関する。
【0036】
更なる態様において、本発明はまた、(i)白色有機発光ダイオード、青色有機発光ダイオード、ミニLED、又はマイクロLEDから選択される少なくとも1つの光源と;(ii)少なくとも1つの上記に定義される色変換体と;(iii)赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを含む任意選択のカラーフィルターアレイとを含む、自己発光型ディスプレイデバイスに関する。
【0037】
更なる態様において、本発明はまた、上記に定義されるディスプレイデバイスを含む、テレビデバイスに関する。
【0038】
また更なる態様において、本発明はまた、(i)上記に定義される式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料と;(ii)少なくとも1種の光硬化性又は熱硬化性バインダーと;(iii)任意選択で、光開始剤、光酸発生剤、反応性モノマー、熱ラジカル開始剤又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の成分と;(iv)任意選択で、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物とは異なる有機蛍光着色剤、有機溶媒、分散剤、界面活性剤、光散乱剤、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤とを含む、インク配合物に関する。
【0039】
また更なる態様において、本発明はまた、液晶ディスプレイデバイス又は自己発光型デバイスの製造における前記インク配合物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
「変換材料」という用語は、第1の波長の光子により励起され、第2の(より長い)異なる波長の光子を放出する材料を指す。
【0041】
本発明の文脈において、「青色光」という用語は、400~490nm未満の範囲の波長を有する光である。
【0042】
本発明の文脈において、「緑色光」という用語は、490~560nmの範囲の波長を有する光である。
【0043】
本発明の文脈において、「黄色光」という用語は、560nmを超え、600nm未満の範囲の波長を有する光である。
【0044】
本発明の文脈において、「赤色光」という用語は、600~780nm、好ましくは610~660nmの範囲の波長を有する光を指す。
【0045】
本発明の文脈において、「緑色発光有機蛍光染料」という用語は、実施形態において、複数の緑色発光有機蛍光染料に関することもある。
【0046】
本発明の文脈において、「黄色発光有機蛍光染料」という用語は、実施形態において、複数の黄色発光有機蛍光染料に関することもある。
【0047】
本発明の文脈において、「赤色発光有機蛍光染料」という用語は、実施形態において、複数の赤色発光有機蛍光染料に関することもある。
【0048】
量子ドットは、量子機械的特性を呈するほど十分小さい半導体材料で作られたナノ結晶である。量子ドットは、狭い発光スペクトルを示しており、即ち、FWHM(半値全幅)が非常に小さい。ドットの色出力は、結晶のサイズを制御することにより調節できる。量子ドットのサイズが小さいほど、量子ドットは、より短い波長の光を放出する。
【0049】
本発明の文脈において、「ポリマーマトリックス材料」という用語、及び「ポリマーマトリックス」という用語は、変換材料、即ち、本発明による少なくとも1種の有機蛍光染料を分散させた、又は分子的に溶解させたポリマーを指す。
【0050】
本発明の文脈において、「溶液処理可能」という用語は、溶液又は懸濁液の形態のいずれかで、液体媒体に溶解、分散、若しくは液体媒体にて輸送することができる、及び/又は液体媒体から堆積させることができることを意味する。
【0051】
本発明の文脈において、「色変換体」及び「周波数変換体」という用語は、単に「変換体」とも称され、特定の波長の光を吸収し、第2の波長の光に変換できる物理的なデバイス全てを意味するものと理解される。色変換体は、例えば、点灯デバイス、とりわけ光源としてUV光又はLED又はOLEDを利用する点灯デバイス、バックライトユニット、自己発光型ディスプレイ、又は蛍光変換太陽電池の一部である。
【0052】
本発明の文脈において、所与のスペクトル分布F(λ)の「中心波長」という用語は、下記の平均と定義される:λc=∫λ・F(λ)dλ/∫F(λ)dλ。
【0053】
本発明の文脈において、「半値全幅(FWHM)」という用語は、最大振幅の半分での線形の幅を意味する。
【0054】
本発明の文脈において、「蛍光量子収率(QY)」という用語は、放出された光子の数の吸収された光子の数に対する比であると定義される。
【0055】
2種類の発光ダイオードが存在する。一方は、無機材料に基づくもの(LED)であり、他方は、有機材料に基づくもの(OLED)である。したがって、「LED」という用語は、本明細書において使用した場合、無機発光ダイオードを指し、一方、「有機LED(OLED)」という用語は、本明細書において使用した場合、有機発光ダイオードを指す。両方の種類の発光ダイオードは、同様の原理で本質的に作動し、正と負の電荷担体が半導体材料に注入され、電荷担体がデバイススタックの発光ゾーンで再結合すると発光が起こる。OLEDは、一重項状態(蛍光発光性)又は三重項状態(リン光性)のいずれかから光を放出する発光材料を有する。
【0056】
本発明の文脈において、「青色LED」は、発光の中心波長が400~480nm、好ましくは420~480、より好ましくは440~470nm、最も好ましくは440~460nmの範囲である電磁スペクトルの青色範囲において光を放出するLEDを意味するものと理解される。好適な半導体材料は、炭化ケイ素、セレン化亜鉛、並びに窒化物、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)及び窒化インジウムガリウム(InGaN)である。LEDは、典型的には、そのピーク波長を中心にして非常に狭い波長分布を有する。標準的なInGaN系青色LEDは、サファイア基板上に作製され、ピーク発光波長は通常、445~455nmを中心とする。
【0057】
本発明の文脈において、「マイクロLED」は、主に青色光を放出するLEDを意味するものと理解される。半導体材料、例えば窒化ガリウム(GaN)又はセレン化亜鉛(ZnSe)で形成される。マイクロLED(μ-LED)は通常、1~100μmの最大幅を有する。
【0058】
本発明の文脈において、「ミニLED」は、主に青色光を放出するLEDを意味するものと理解される。チップサイズは通常、100から200μmの間である。
【0059】
本発明の文脈において、「白色LED」(WLEDとも呼ばれる)は、人間の眼により白色であると認識される光を放出するLEDを意味するものと理解される。例は、赤色、緑色及び青色LEDからなるマルチLED(RGB LEDシステムとも呼ばれる)であり、これらの発光が混合されて白色光を形成する。更なる例は、放出された光が蛍光体材料を通過する青色LEDである。好ましいのは、無機蛍光体材料、とりわけ黄色蛍光体材料、例えばYAG、又は蛍光体の赤色、緑色若しくは任意の他の色又は組合せ、特に黄色蛍光体でコーティングされた青色LEDである。更なる例はまた、無機蛍光体材料、とりわけ黄色蛍光体、例えばYAG、又は蛍光体の赤色、緑色若しくは任意の他の色又は組合せと、少なくとも1種の有機蛍光染料を含む追加のリモート蛍光体層とでコーティングされた青色LEDである。
【0060】
本発明の文脈において、「白色有機発光ダイオード」(白色OLED又はWOLEDとも呼ばれる)は、人間の眼により白色であると認識される光を放出する有機発光ダイオードを意味するものと理解される。
【0061】
本発明の文脈において、「白色光」という用語は、通常、2000から20000K、とりわけ2500から20000Kの間の相関色温度(CCT)を有する光に関する。市販の白色LEDは多くの場合、3000K以上、例えば3000~20000K又は4000~20000Kの範囲の相関色温度を有する。
【0062】
本発明の文脈において、420~780nmの可視スペクトル領域を含む電磁放射線も、可視光として指定される。
【0063】
LEDは、黒体又は白熱光源ではなく、したがって、相関色温度(CCT)を有する。CCTは、LEDと同じ白色光を放出するとして人間の眼により認識される黒体放射体の温度である。したがって、CCTは、電気的光源から放出される白色光の色の見え方を記述し、ケルビン単位で測定される。CCTは、CIE国際基準に従って判定される。高いCCTを有する白色光は、CCTが低い白色光と比較して、短波長領域(青色)において比較的高い強度を、より長波長の領域(赤色)において比較的より低い強度を含有する。したがって、一般にCCTが高いほど、有意な青色成分又は冷たい色調を有する白色光を示す一方、一般にCCTが低いほど、有意な赤色がかった又は暖かい色調を有する光を示す。6000~20000Kの範囲のCCTを有する白色光は、比較的高い青色成分を有する。白色蛍光体変換LEDのCCTは、使用される蛍光体によって決まる。
【0064】
演色(CRI)は、光源が、物体の色を人間の眼にどのように見えるようにするか、及び色合いの微妙な変化がどの程度明らかにされるかの尺度である。一般に、CRIは、色温度よりも重要な点灯品質であると考えられている。CIE17.4、国際照明用語集によると、演色(CRI)は、「参照発光物の下での色の見え方との意識的又は無意識的比較による、物体の色の見え方に対する発光物の効果」であると定義されている。平均又は一般的演色評価数Raは、8つのパステルCIE標準(参照)色サンプルR1~R8の色度の差から計算される(CIE13.3-1995)。
【0065】
本発明の文脈において、「発光効率」という用語は、ワット単位で測定された入力電力に対する光のルーメンを生成する際の出力スペクトルの有効性を定量化するものである。発光効率の単位は、ルーメン/ワット(lm/W)である。
【0066】
本発明の文脈において、「色域」という用語は、ディスプレイが生成できる色の範囲を定義するものである。ディスプレイの色域を表現する一般的な方法は、国際照明委員会(CIE)により確立されたXYZ表色系のxy色度図である。色域は、xy色度図上の三角形により定義される。これに加えて、又はこれに代えて、色域の評価には、国際照明委員会により確立されたu'v'図が使用される。
【0067】
本発明の文脈において、「RGB色空間」という用語は、三原色である赤色、緑色及び青色の色度により定義され、赤色、緑色及び青色の光が共に合わされて色を生成する。
【0068】
本明細書及び特許請求の範囲において使用した場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形への言及を含む。
【0069】
「少なくとも」という用語は、1つ、又は2つ以上、例えば1つ、2つ、3つ又は4つ、好ましくは1つ、2つ、又は3つ、とりわけ1つ又は2つを定義することを意味する。
【0070】
「任意選択で置換された」という用語は、それが指す基が非置換であるか置換されているかのいずれかであることを意味する。
【0071】
本発明の文脈における「本質的に」という用語は、「完全に」、「全体的に」及び「全て」という単語を包含する。この単語は、90%以上、例えば95%以上、とりわけ99%又は100%の割合を包含する。
【0072】
本願の文脈における「(メタ)アクリラート」という用語は、アクリラート及び対応するメタクリラートを指すことを意味する。
【0073】
上記式において指定された可変基の定義は、一般にそれぞれの置換基を表す総称を使用する。定義Cn~Cmは、それぞれの置換基又は置換基部分で、各場合において可能な炭素原子の数を与える。
【0074】
「BODIPY」という用語は、ホウ素-ジピロメテンコア(4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンコアとも呼ばれる)を有する化合物を指す。本明細書において使用されるBODIPYコアの番号付けを、以下に図示する。
【0075】
【0076】
「ハロゲン」という表現は、各場合において、フッ素、臭素、塩素又はヨウ素、特に塩素、臭素又はヨウ素を表す。
【0077】
本発明の文脈において、「各場合において非置換又は置換されている、アルキル、シクロアルキル及びアリール」という表現は、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換シクロアルキル、及び非置換又は置換アリールを表す。
【0078】
同様に、本発明の文脈において、「各場合において非置換又は置換されている、C1~C30-アルキル、ポリアルキレンオキシ、C1~C30-アルコキシ、C1~C30-アルキルチオ、C3~C20-シクロアルキル、C3~C20-シクロアルキルオキシ、C6~C24-アリール及びC6~C24-アリールオキシ」という表現は、非置換又は置換C1~C30-アルキル、非置換又は置換ポリアルキレンオキシ、非置換又は置換C1~C30-アルコキシ、非置換又は置換C1~C30-アルキルチオ、非置換又は置換C3~C20-シクロアルキル、非置換又は置換C3~C20-シクロアルキルオキシ、非置換又は置換C6~C24-アリール、及び非置換又は置換C6~C24-アリールオキシを表す。
【0079】
本発明の目的のため、「脂肪族基」という用語は、非環式の飽和又は不飽和、直鎖又は分枝炭化水素基を指す。通常、脂肪族基は、1~100個の炭素原子と、2~100個の炭素原子を有する(不飽和直鎖又は分枝炭化水素基の場合)。脂肪族基の例は、アルキル、アルケニル及びアルキニルである。
【0080】
本発明の目的のため、「脂環式基」という用語は、通常3~20個の環炭素原子を有する、環状の非芳香族飽和又は不飽和炭化水素基を指す。例は、シクロアルカン、シクロアルケン、及びシクロアルキンである。脂環式基は、N、O、S又はSO2から選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子基を更に含んでもよい。
【0081】
「アルキル」という用語は、本明細書において、また、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル等のアルキル部分において使用した場合、通常1~100個(「C1~C100-アルキル」)、1~30個(「C1~C30-アルキル」)、1~18個(「C1~C18-アルキル」)、1~10個(「C1~C10-アルキル」)、1~8個(「C1~C8-アルキル」)又は1~6個(「C1~C6-アルキル」)若しくは1~4個(「C1~C4-アルキル」)の炭素原子を有する飽和直鎖又は分枝炭化水素基を指す。アルキルは、好ましくはC1~C30-アルキル、より好ましくはC1~C20-アルキルである。C1~C4-アルキルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、2-ブチル(=sec-ブチル)、イソブチル及びtert-ブチルである。C1~C6-アルキルの例は、C1~C4-アルキルに関して言及したものの他に、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-2-メチルプロピルである。C1~C10-アルキルの例は、C1~C6-アルキルに関して言及したものの他に、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、1-エチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、n-オクチル、1-メチルオクチル、2-メチルヘプチル、1-エチルヘキシル、2-エチルヘキシル、1,2-ジメチルヘキシル、1-プロピルペンチル、2-プロピルペンチル、ノニル、デシル、2-プロピルヘプチル及び3-プロピルヘプチルである。
【0082】
置換アルキル基は、アルキル鎖の長さに応じ、1又は複数個(例えば1、2、3、4、5個又は6個以上)の置換基を有する。これらは、好ましくは、それぞれ互いに独立して非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換シクロアルキルチオ、非置換又は置換ヘテロシクロアルキル、非置換又は置換アリール、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、非置換又は置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換又は置換アルコキシ、非置換又は置換ポリアルキレンオキシ、非置換又は置換アルキルチオ、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、シアノ、ニトロ、非置換又は置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換アルキル基は、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される1又は複数個、例えば1、2又は3個の置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0083】
「アルキレン」(又はアルカンジイル)という用語は、本明細書において使用した場合、各場合において、炭素骨格の任意の位置の1個の水素原子が1つの更なる結合部位により置きかえられ、したがって、二価部分を形成している、上記に定義されるアルキル基を表す。
【0084】
置換アルキル基の特別な実施形態は、1個の水素原子がアリール基(「アラルキル」、以下、アリールアルキル又はアリールアルキレンとも呼ばれる)、特にフェニル基により置きかえられているアルキル基である。したがって、アリールアルキルは、アルキル基を介して分子の残部に結合したアリールを指す。アリール基は更に、非置換又は置換であってもよく、好適な置換基は、アリールに関して以下に言及する置換基である。アリールアルキルの特定の例としては、フェニル-C1~C4-アルキル、例えばベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル(フェネチル)、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニル-1-プロピル、2-フェニル-2-プロピル及びナフチル-C1~C4-アルキル、例えば1-ナフチルメチル、1-ナフチルエチル、2-ナフチルメチル、2-ナフチルエチルが挙げられる。
【0085】
「ヒドロキシ-C1~C10-アルキル」という用語は、1又は2個の水素原子がヒドロキシ(OH)基により置きかえられているアルキル基を指す。好ましくは、ヒドロキシ-C1~C10-アルキルは、モノヒドロキシ-C4~C10-アルキル基である。
【0086】
置換アルキル基の更なる特別な実施形態は、これらの基中の水素原子のいくつか又は全てが先に言及したようなハロゲン原子により置きかえられていてもよいアルキル基、例えばC1~C4-ハロアルキルである。
【0087】
「アルコキシ」という用語は、本明細書において使用した場合、各場合において、酸素原子を介して結合した直鎖又は分枝アルキル基を指し、即ち、「アルコキシ」基は、-O-アルキルとして表わされてもよく、ここで、アルキルは、上記に定義した通りである。C1~C2-アルコキシは、メトキシ又はエトキシである。C1~C4-アルコキシは、加えて、例えば、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、ブトキシ、1-メチルプロポキシ(sec-ブトキシ)、2-メチルプロポキシ(イソブトキシ)又は1,1-ジメチルエトキシ(tert-ブトキシ)である。C1~C6-アルコキシは、加えて、例えば、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ又は1-エチル-2-メチルプロポキシである。C1~C8-アルコキシは、加えて、例えば、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ及びそれらの位置異性体である。
【0088】
したがって、「非置換又は置換アルコキシ」という用語は、本明細書において使用した場合、-O-アルキルを指し、ここで、アルキルは、上記に定義したように非置換又は置換である。
【0089】
「ポリオキシアルキレン」という用語は、本明細書において使用した場合、酸素原子を介して分子の残部に結合したアルキル基を指し、ここで、アルキルは、1又は複数個の隣接していない酸素原子により中断されており、アルキルは、上記に定義した通りである。
【0090】
したがって、「非置換又は置換ポリアルキレンオキシ」という用語は、本明細書において使用した場合、アルキルが1又は複数個の隣接していない酸素原子により中断されており、アルキルが上記に定義したように非置換又は置換である-O-アルキルを指す。
【0091】
「アルキルチオ」という用語は、本明細書において使用した場合、硫黄原子を介して結合したアルキル基を指し、即ち、「アルキルチオ」基は、-S-アルキルとして表わされてもよく、ここで、アルキルは、上記に定義した通りである。C1~C2-アルキルチオは、メチルチオ又はエチルチオである。C1~C4-アルキルチオは、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、1-メチルエチルチオ(イソプロピルチオ)、ブチルチオ、1-メチルプロピルチオ(sec-ブチルチオ)、2-メチルプロピルチオ(イソブチルチオ)又は1,1-ジメチルエチルチオ(tert-ブチルチオ)である。
【0092】
したがって、「非置換又は置換アルキルチオ」という用語は、本明細書において使用した場合、-S-アルキルを指し、ここで、アルキルは、上記に定義したように非置換又は置換である。
【0093】
「アルケニル」という用語は、本明細書において使用した場合、通常2~100個(「C2~C100-アルケニル」)、2~18個(「C2~C18-アルケニル」)、2~10個(「C2~C10-アルケニル」)、2~8個(「C2~C8-アルケニル」)、又は2~6個(「C2~C6-アルケニル」)の炭素原子と、1又は複数個、例えば2又は3個の二重結合を任意の位置に有する直鎖又は分枝炭化水素基を指す。置換アルケニル基は、アルケニル鎖の長さに応じ、1又は複数個(例えば1、2、3、4、5個又は6個以上)の置換基を有する。これらは、好ましくは、それぞれ互いに独立して非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換シクロアルキルチオ、非置換又は置換ヘテロシクロアルキル、非置換又は置換アリール、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、非置換又は置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換又は置換アルコキシ、非置換又は置換ポリアルキレンオキシ、非置換又は置換アルキルチオ、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、シアノ、ニトロ、非置換又は置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換アルケニル基は、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される1又は複数個、例えば1、2又は3個の置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0094】
「アルキニル」という用語は、本明細書において使用した場合(炭素鎖が1又は複数個の三重結合を含んでもよいアルキルとも呼ばれる)は、通常2~100個(「C2~C100-アルキニル」)、2~18個(「C2~C18-アルキニル」)、2~10個(「C2~C10-アルキニル」)、2~8個(「C2~C8-アルキニル」)、又は2~6個(「C2~C6-アルキニル」)の炭素原子と、1又は複数個、例えば2又は3個の三重結合を任意の位置に有する直鎖又は分枝炭化水素基を指す。置換アルキニル基は、アルキニル鎖の長さに応じ、1又は複数個(例えば1、2、3、4、5個又は6個以上)の置換基を有する。これらは、好ましくは、それぞれ互いに独立して非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換シクロアルキルチオ、非置換又は置換ヘテロシクロアルキル、非置換又は置換アリール、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、非置換又は置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換又は置換アルコキシ、非置換又は置換ポリアルキレンオキシ、非置換又は置換アルキルチオ、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、シアノ、ニトロ、アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換アルキニル基は、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される1又は複数個、例えば1、2又は3個の置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0095】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書において使用した場合、各場合において、通常3~24個(「C3~C24-シクロアルキル」)、3~20個(「C3~C20-シクロアルキル」)の原子、好ましくは3~8個(「C3~C8-シクロアルキル」)又は3~6個(「C3~C6-シクロアルキル」)の炭素原子を有する単環又は二環又は多環式の飽和炭化水素基を表す。3~6個炭素原子を有する単環式基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。3~8個の炭素原子を有する単環式基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。7~12個の炭素原子を有する二環式基の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[4.2.1]ノニル、ビシクロ[4.3.1]デシル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[4.4.0]デシル、ビシクロ[4.2.2]デシル、ビシクロ[4.3.2]ウンデシル、ビシクロ[3.3.3]ウンデシル、ビシクロ[4.3.3]ドデシル及びペルヒドロナフチルが挙げられる。多環式環の例は、ペルヒドロアントラシル、ペルヒドロフルオレニル、ペルヒドロクリセニル、ペルヒドロピセニル、及びアダマンチルである。
【0096】
置換シクロアルキル基は、環のサイズに応じ、1又は複数個(例えば1、2、3、4、5個又は6個以上)の置換基を有してもよい。これらは、好ましくは、それぞれ互いに独立して非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アルキニル、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換シクロアルキルチオ、非置換又は置換ヘテロシクロアルキル、非置換又は置換アリール、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、非置換又は置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換又は置換アルコキシ、非置換又は置換ポリアルキレンオキシ、非置換又は置換アルキルチオ、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、シアノ、ニトロ、非置換又は置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、-NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換シクロアルキル基は、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される1又は複数個、例えば1、2又は3個の置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0097】
「シクロアルキルオキシ」という用語は、本明細書において使用した場合、酸素原子を介して結合したシクロアルキル基を指し、即ち、「シクロアルキルオキシ」基は、-O-シクロアルキルとして表わされてもよく、ここで、シクロアルキルは、上記に定義した通りである。
【0098】
したがって、「非置換又は置換シクロアルキルオキシ」という用語は、本明細書において使用した場合、-O-シクロアルキルを指し、ここで、シクロアルキルは、上記に定義したように非置換又は置換である。
【0099】
「シクロアルキルチオ」という用語は、本明細書において使用した場合、硫黄原子を介して結合したシクロアルキル基を指し、即ち、「シクロアルキルチオ」基は、-S-シクロアルキルとして表わされてもよく、ここで、シクロアルキルは、上記に定義した通りである。
【0100】
したがって、「非置換又は置換シクロアルキルチオ」という用語は、本明細書において使用した場合、-S-シクロアルキルを指し、ここで、シクロアルキルは、上記に定義したように非置換又は置換である。
【0101】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、環員としての炭素原子に加えて、O、N、NRcc、S、SO及びS(O)2から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子又はヘテロ原子含有基を環員として含む、一般に5~8環員、好ましくは5又は6環員を有する非芳香族の部分的不飽和又は完全飽和複素環式環を指し、ここで、Rccは、水素、C1~C20-アルキル、C3~C24-シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、C6~C24-アリール又はヘテロアリールである。ヘテロシクロアルキル基の例は、とりわけピロリジニル、ピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロピラニル、2-オキサゾリニル、3-オキサゾリニル、4-オキサゾリニル及びジオキサニルである。
【0102】
置換ヘテロシクロアルキル基は、環のサイズに応じ、1又は複数個(例えば1、2、3、4、5個又は6個以上)の置換基を有してもよい。これらは、好ましくは、それぞれ互いに独立して非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アルキニル、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換シクロアルキルチオ、非置換又は置換ヘテロシクロアルキル、非置換又は置換アリール、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、非置換又は置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換又は置換アルコキシ、非置換又は置換ポリアルキレンオキシ、非置換又は置換アルキルチオ、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、シアノ、ニトロ、非置換又は置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、-NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換ヘテロシクロアルキル基は、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される1又は複数個、例えば1、2又は3個の置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0103】
本発明の目的のため、「アリール」という用語は、単環式の芳香族炭化水素基(即ち、フェニル)又は少なくとも1つの縮合フェニル環を有する縮合二環、三環若しくは多環式の芳香族炭化水素基を指す。アリール基中の炭素環原子の数は、変化する可能性があり、通常6~24個である。アリールが単環式の芳香族炭化水素基、即ちフェニルではない場合、この用語は、縮合環について、飽和形態(ペルヒドロ形態)、部分不飽和形態(例えばジヒドロ形態若しくはテトラヒドロ形態)又は芳香族形態を含む。「アリール」という用語は、例えば二環式の芳香族基で、両方の環が芳香族であるもの、及び二環式の芳香族基で、一方の環のみが芳香族であるものを含む。二環又は三環式の芳香族炭素環の例としては、ナフチル、1,2-ジヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル、アントラセニル、フルオレニル等が挙げられる。好ましくは、「アリール」という用語は、フェニル及びナフチル(C6~C10-アリール)を表す。
【0104】
置換アリールは、その環系の数とサイズに応じ、1又は複数個(例えば1、2、3、4、5個又は6個以上)の置換基を有してもよい。これらは、好ましくは、それぞれ互いに独立して非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アルキニル、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換シクロアルキルチオ、非置換又は置換ヘテロシクロアルキル、非置換又は置換アリール、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、非置換又は置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換又は置換アルコキシ、非置換又は置換ポリアルキレンオキシ、非置換又は置換アルキルチオ、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、シアノ、ニトロ、非置換又は置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、-NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換アリール基は、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される1又は複数個、例えば1、2又は3個の置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0105】
置換アリールは、好ましくは少なくとも1個のアルキル基により置換されたアリール(「アルカリール」、以下、アルキルアリールとも呼ばれる)である。アルカリール基は、芳香族環系のサイズに応じ、1又は複数個(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9個又は10個以上)のアルキル置換基を有する。アルキル置換基は、非置換又は置換であってもよい。これに関して、非置換及び置換アルキルに関する上記の記載が参照される。特別な実施形態は、アルキルが非置換であるアルカリール基に関する。アルカリールは、好ましくは、1、2、3、4又は5個、好ましくは1、2又は3個、より好ましくは1又は2個のアルキル置換基を持つフェニルである。1又は複数個のアルキル基を持つアリールは、例えば、2-、3-及び4-メチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-、3-及び4-エチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジエチルフェニル、2,4,6-トリエチルフェニル、2-、3-及び4-n-プロピルフェニル、2-、3-及び4-イソ-プロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-n-プロピルフェニル、2,4,6-トリプロピルフェニル、2-、3-及び4-イソプロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、2-、3-及び4-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジブチルフェニル、2,4,6-トリブチルフェニル、2-、3-及び4-イソブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソブチルフェニル、2,4,6-トリイソブチルフェニル、2-、3-及び4-sec-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-sec-ブチルフェニル、2,4,6-トリ-sec-ブチルフェニル、2-、3-及び4-tert-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-tert-ブチルフェニル、並びに2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルである。
【0106】
C6~C24-アリールオキシ:上記に定義されるC6~C24-アリールであり、酸素原子(-O-)を介して骨格に結合している。フェノキシ及びナフチルオキシが好ましい。
【0107】
したがって、「非置換又は置換アリールオキシ」という用語は、本明細書において使用した場合、-O-アリールを指し、ここで、アリールは、上記に定義したように非置換又は置換である。
【0108】
C6~C24-アリールチオ:上記に定義されるC6~C24-アリールであり、硫黄原子(-S-)を介して骨格に結合している。フェニルチオ及びナフチルチオが好ましい。
【0109】
したがって、「非置換又は置換アリールチオ」という用語は、本明細書において使用した場合、-S-アリールを指し、ここで、アリールは、上記に定義したように非置換又は置換である。
【0110】
本発明の文脈において、「ヘタリール」(ヘテロアリールとも呼ばれる)という表現は、複素芳香族の単環又は多環式基を含む。これらは、環炭素原子に加えて、1、2、3、4個又は5個以上のヘテロ原子を環員として有する。ヘテロ原子は、好ましくは酸素、窒素、セレン及び硫黄から選択される。ヘタリール基は、好ましくは5~18個、例えば5、6、8、9、10、11、12、13又は14個の環原子を有する。
【0111】
単環式ヘタリール基は、好ましくは5又は6員ヘタリール基、例えば2-フリル(フラン-2-イル)、3-フリル(フラン-3-イル)、2-チエニル(チオフェン-2-イル)、3-チエニル(チオフェン-3-イル)、1H-ピロール-2-イル、1H-ピロール-3-イル、ピロール-1-イル、イミダゾール-2-イル、イミダゾール-1-イル、イミダゾール-4-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、ピラゾール-4-イル、ピラゾール-5-イル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、4H-[1,2,4]-トリアゾール-3-イル、1,3,4-トリアゾール-2-イル、1,2,3-トリアゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル及び1,2,4-トリアジン-3-イルである。
【0112】
多環式ヘタリール基は、2、3、4個又は5個以上の縮合環を有する。縮合環は、芳香族飽和又は部分不飽和であってもよい。多環式ヘタリール基の例は、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾトリアジニル、ベンゾセレノフェニル、チエノチオフェニル、チエノピリミジル、チアゾロチアゾリル、ジベンゾピロリル(カルバゾリル)、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ナフト[2,3-b]チオフェニル、ナフサ[2,3-b]フリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロインドリジニル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキノリニル及びジヒドロイソキノリニルである。
【0113】
置換ヘタリール基は、その環系の数とサイズに応じ、1又は複数個(例えば1、2、3、4、5個又は6個以上)の置換基を有してもよい。これらは、好ましくは、それぞれ互いに独立して非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アルキニル、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換シクロアルキルチオ、非置換又は置換ヘテロシクロアルキル、非置換又は置換アリール、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、非置換又は置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換又は置換アルコキシ、非置換又は置換ポリアルキレンオキシ、非置換又は置換アルキルチオ、非置換又は置換シクロアルキルオキシ、非置換又は置換アリールオキシ、非置換又は置換アリールチオ、シアノ、ニトロ、非置換又は置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、-NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換ヘタリール基は、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換シクロアルキル、非置換又は置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される1又は複数個、例えば1、2又は3個の置換基を有し、ここで、E1、E2、RAr1及びRAr2は、上記に定義した通りである。
【0114】
縮合環系は、脂環式、脂肪族複素環式、芳香族及び複素芳香族環、並びにそれらの組合せ、縮合により結合したヒドロ芳香族を含むことができる。縮合環系は、2、3個又はそれ以上(例えば4、5、6、7又は8個)の環を含む。縮合環系中の環が結合する方式に応じ、オルト縮合、即ち、各環が少なくとも1つの縁又は2個の原子を隣接する各環と共有するものと、炭素原子が3つ以上の環に属するペリ縮合とが区別される。好ましい縮合環系は、オルト縮合環系である。
【0115】
本発明の化合物の下部構造を示す式に#又は*が現れる場合、それは、残りの分子における結合点を表す。
【0116】
式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物の可変基(置換基)の好ましい実施形態に関して以下に述べることは、それ自体で、及び好ましくは、互いに組み合わせて有効である。
【0117】
式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物
本発明に従い使用される式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、BODIPYコアに結合した2つのシアノ基を特徴とする。これらのシアノ基は、実際の照射条件下で本発明に従い使用される化合物の光安定性を著しく改善する。
【0118】
本発明による好ましい化合物は、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物であり、式中、R1、R2、R3、R5、R6及びR7は、存在する場合、互いに独立して水素、C1~C10-アルキル又はフェニル-C1~C4-アルキルから選択され、ここで、フェニル-C1~C4-アルキル中のフェニル部分は、非置換であるか、又は1、2若しくは3個の同一若しくは異なるR9基により置換されている。この文脈において、R9は、好ましくはC1~C4-アルキル、C1~C4-アルコキシ、CN、フェニル又はフェノキシである。とりわけ、R9は、C1~C4-アルキル又はC1~C4-アルコキシである。R1、R2、R3、R5、R6及びR7は、存在する場合、互いに独立して、より好ましくはC1~C6-アルキル又はフェニル-C1~C2-アルキルから選択され、ここで、フェニル-C1~C2-アルキル中のフェニル部分は、非置換であるか、又は1、2若しくは3個のR9基により置換されており、R9は、上記に定義した通りであり、とりわけ好ましいものとして言及した意味のうちの1つを有する。とりわけ、R1、R2、R3、R5、R6及びR7は、存在する場合、互いに独立してC1~C4-アルキルから選択される。本明細書において、特に、R1、R2、R3、R5、R6及びR7は、存在する場合、互いに独立してメチル又はエチルである。
【0119】
式(I.a)、(I.b)及び(I.c)のR4a及びR4bは、互いに独立して、好ましくはフッ素、塩素、シアノ、C1~C6-アルコキシ又はモノヒドロキシ-C4~C10-アルキルから選択される。C1~C6-アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、とりわけメトキシである。モノヒドロキシ-C4~C10-アルキルの例は、2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルプロポキシ、2-ヒドロキシ-1,2-ジメチルプロポキシ、2-ヒドロキシ-1,1,2-トリメチルプロポキシ、2-ヒドロキシ-1,1,2-トリメチルプロポキシ、3-ヒドロキシ-1-メチルプロポキシ、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチル-プロポキシ、とりわけ2-ヒドロキシ-1,1,2-トリメチルプロポキシである。好ましい実施形態において、R4a及びR4bは、同じ意味を有する。特に、R4a及びR4bは、それぞれフッ素である。
【0120】
好ましくは、式(I.a)のR8aは、C1~C10-アルキルである。より好ましくは、R8aは、C1~C4-アルキルである。最も好ましくは、R8aは、メチル又はエチルである。
【0121】
好ましくは、式(I.b)のR8bは、C1~C10-アルキルである。より好ましくは、R8bは、C1~C4-アルキルである。最も好ましくは、R8bは、メチル又はエチルである。
【0122】
好ましくは式(I.c)のR8cは、C1~C10-アルキル、フェニル-C1~C4-アルキル又はフェニルであり、後に言及した2つの基中のフェニルは、非置換であるか、又はk個の同一若しくは異なるR9基により置換されており、ここで、kは、1、2又は3である。この文脈において、R9は、好ましくはC1~C4-アルキル、C1~C4-アルコキシ、CN、フェニル又はフェノキシである。とりわけ、R9は、C1~C4-アルキル又はC1~C4-アルコキシである。より好ましくは、R8cは、C1~C4-アルキルである。最も好ましくは、R8cは、メチル又はエチルである。同様により好ましくは、R8cは、非置換であるか、又はC1~C4-アルキルから選択される1、2若しくは3個のR9基により置換されているフェニルである。
【0123】
好ましい化合物の例は、下記の表A~Cにまとめた個々の化合物である。
【0124】
式(I.a)の好ましい化合物の例を、以下の表Aにまとめる:
【0125】
【0126】
【0127】
式(I.b)の好ましい化合物の例を、以下の表Bにまとめる:
【0128】
【0129】
【0130】
式(I.b)の化合物の中で、より好ましいのは、化合物(I.b-1)、(I.b-6)、(I.b-11)及び(I.b-16)である。
【0131】
式(I.c)の好ましい化合物の例を、以下の表Cにまとめる:
【0132】
【0133】
【0134】
式(I.c)の化合物の中で、より好ましいのは、化合物(I.c-1)、(I.c-6)、(I.c-11)、(I.c-16)、(Ic-21)及び(Ic-26)である。
【0135】
本発明の一実施形態において、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される有機蛍光染料は、色変換体において発光の中心波長が490nm~545nmの唯一の有機蛍光染料である。
【0136】
本発明に従い使用される化合物は、当業者によく知られている常法を使用することにより調製することができる。BODIPY足場にシアノ基を導入するための2つの異なる一般的な方法が存在する。1つの方法は、活性化させたカルボニル化合物とシアン化ピロールから出発してシアン化ジピロメテンを得た後、ホウ素源との錯体形成を行うものである。別の方法は、ジハロゲン化ホウ素ジピリンをシアン化物で後官能化するものである。式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物の全てが両方の方法により調製できるわけではない。
【0137】
特に、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、下記のスキームに従い調製でき、ここで、可変基は、別段断らない限り、上記に定義した通りである。それとは別に、当業者は、以下のスキームに図示する合成に好適な反応条件を常法により容易に見出す。更なる詳細は、本明細書に含まれる調製例からも得ることができる。
【0138】
R4a及びR4bがそれぞれフッ素である式(I.b)の化合物は、スキーム1に概説するように調製できる。
【0139】
【0140】
スキーム1において、LGは、脱離基、例えば塩化物、臭化物又はR'-C(=O)-Oであり、R'は、C1~C6-アルキルである。スキーム1の工程(i)において、式(3)の活性化させたカルボニル化合物を式(1)のピロールと、続いて式(2)のピロールと縮合させると、式(4)のジピロメテン化合物が得られる。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、式(3)の活性化させたカルボニル化合物と式(1)のピロールとの反応は、モノアシル化ピロールを与え、それが次いで式(2)のピロールと反応すると考えられる。このモノアシル化ピロールは、式(1)のピロールが式(2)のピロールとは異なる場合、単離される。スキーム1の工程(ii)において、式(4)の化合物は、BF3源、例えばBF3エーテラートと容易に錯体を形成する。有利には、錯体形成は、塩基の存在下で行われる。好適な塩基は、特に第2級及び第3級アミン、とりわけ第3級アミン、例えばトリ(C1~C10-アルキル)アミン、特にトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンである。
【0141】
式(1)の化合物は、スキーム2に概説するように、式(5)のαアミノケトンと式(6)のαシアノケトンとの縮合反応により調製できる。
【0142】
【0143】
式(2)の化合物は、式(1)の化合物と同様の方法で調製できる。
【0144】
式(5)の化合物は、以下のスキーム3に概説するように、式(7)の2-オキソアルデヒドから出発して調製できる。式(7)の2-オキソアルデヒドとヒドロキシルアミンとの縮合反応により、式(8)の2-オキソアルドキシムが得られる。続いて、式(8)の化合物を還元して式(5)のアミンが得られる。
【0145】
【0146】
式(6)の化合物は、以下のスキーム4に概説するように、式(9)のエステルを塩基の存在下でアセトニトリルで処理することにより調製できる。
【0147】
【0148】
スキーム4において、R'は、C1~C6-アルキル、好ましくはC1~C4-アルキルである。
【0149】
式(I.c)の化合物は、式(I.b)の化合物と同様の方法で調製できるが、以下のスキーム5に図示するように、式(10)の3-シアノピロール化合物、式(11)の3-シアノピロール化合物、及び式(12)の化合物から出発する。
【0150】
【0151】
スキーム5において、LGは、脱離基、例えば塩化物、臭化物又はR'-C(=O)-Oであり、R'は、C1~C6-アルキルである。スキーム5の工程(i)における縮合反応は、スキーム1の工程(i)と同様に行われる。スキーム5の工程(ii)における錯体形成は、スキーム1における工程(ii)と同様に行われる。
【0152】
式(10)の化合物は、以下のスキーム6に概説するように調製できる。スキーム6の工程(i)において、式(14)のオキシムが、塩基、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、例えばKOHの存在下で、1,2-ジクロロエタンで処理され、式(15)の化合物のピロールを与える。式(16)のN-保護ピロールを得るためのスキーム6の工程(ii)における式(15)のピロールのN-保護は、それ自体公知の方法に従い、例えば、シリル化試薬、例えばtert-ブチルジメチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド又はtert-ブチルジフェニルシリルクロリドを使用して遂行することができる。スキーム6の工程(iii)における臭素化と、それに続く工程(iv)におけるシアン化物源での臭素の求核置換及びスキーム6の工程(v)における最終的な脱保護により、式(10)のピロール化合物が得られる。スキーム6の工程(iii)における臭素化は、臭素又はN-ブロモスクシンイミドを用いて行うことができる。臭素化は、塩基の存在下で行ってもよい。スキーム6の工程(iv)におけるシアン化物源は、シアン化銅(I)であってもよい。保護基PGは、スキーム6の工程(v)において、それ自体公知の方法、例えば、T. Greene and P. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis (3rd ed.)、John Wiley & Sons, NY (1999)に記載の方法により除去することができる。例えば、シリル保護基は、溶媒の存在下で、臭化テトラブチルアンモニウム又はフッ化テトラブチルアンモニウムから選択される脱保護剤により除去することができる。
【0153】
【0154】
スキーム6において、PGは、保護基、好ましくはシリル保護基を意味する。
【0155】
式(11)の化合物は、スキーム6に図示する式(10)の化合物を調製する方法と同様にして調製できる。
【0156】
或いは、式(I.b)の化合物は、以下のスキーム7に図示するように、式(17)のジハロゲン化ホウ素ジピリンの後官能化により調製することもできる。
【0157】
【0158】
スキーム7において、Halは、塩素又は臭素、好ましくは臭素である。式(17)の化合物の、シアン化物アニオンによるシアノ化は、遷移金属触媒の存在下で行われる。好適なシアン化物源は、シアン化亜鉛である。好適な遷移金属触媒は特に、パラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニル-ホスフィン)パラジウム(0);ビス[ビス-(1,2-ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0);ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0);トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0);ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド;ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)クロリド;[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]-パラジウム(II)クロリド/塩化メチレン(1:1)錯体;ビス(ビス-(1,2-ジフェニルホスフィノ)ブタン]-パラジウム(II)クロリド;酢酸パラジウム(II);塩化パラジウム(II);及び酢酸パラジウム(II)/トリ-o-トリルホスフィン錯体又はホスフィンとPd塩若しくはホスフィンとPd-錯体との混合物、例えばジベンジリデンアセトン-パラジウムとトリ-tert-ブチルホスフィン(若しくはそのテトラフルオロボラート);トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)及びトリ-tert-ブチルホスフィン;テトラメチルエチレンジアミンの存在下での酢酸パラジウムと1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン;又はポリマー結合Pd-トリフェニルホスフィン触媒系、例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム担持ポリスチレンである。
【0159】
反応は通常、溶媒中で行われる。好適な溶媒は、例えば極性非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリル、窒素含有複素環式化合物、N,N-二置換脂肪族カルボキサミド、好ましくはN,N-ジ(C1~C4-アルキル)(C1~C4)カルボキサミド)、並びにN-アルキルラクタム、例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルブチルアミド及びN-メチルピロリドン(NMP);無極性溶媒、例えばエーテル、例えばテトラヒドロフラン若しくは1,4-ジオキサン、又は芳香族溶媒、例えばベンゼン、トルエン若しくはキシレンである。
【0160】
各Halが臭素であるか、各Halが塩素である式(17)の化合物は、以下のスキーム8に概説するように調製できる。式(18)の化合物の臭素化は、スキーム6の工程(iii)と同様に行ってもよい。各Halが塩素である式(17)の化合物は、式(18)の化合物をN-クロロスクシンイミドで処理することにより調製できる。
【0161】
【0162】
式(I.a)の化合物は、以下のスキーム9に図示するように、ルイス酸、例えば四塩化スズの存在下で、式(19)のジハロゲン化ホウ素ジピリンをシアノ化試薬、例えばシアン化トリメチルシリルで後官能化することにより調製できる。シアノ化は、Biorg. Med. Chem. Lett. 18 (2008)、3112~3116頁に記載の方法と同様に行うことができる。
【0163】
【0164】
式(19)の化合物は、スキーム10に概説するように調製できる。スキーム10の工程(i)において、式(21)及び(22)のピロールを酸性条件下、R*がC1~C6-アルキルである式(20)のヘミアセタールと反応させ、式(23)のジピロメタン化合物を得る。スキーム10の工程(ii)において、式(23)のジピロメタンをテトラヒドロフラン中において、塩素化剤、例えばN-クロロスクシンイミドで処理し、3、5位に塩素を持つジクロロピロメタンを得る。続いて、前記化合物を酸化剤、例えば5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノンで処理し、式(24)のジクロロピロメテン化合物を得る(スキーム10の工程(iii))。スキーム10の工程(iv)における錯体形成は、スキーム1における工程(ii)と同様に行われる。
【0165】
【0166】
R4a及びR4bがフッ素とは異なる式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、ホウ素からのフッ化物イオンの求核置換により調製できる。
【0167】
R4a及びR4bがそれぞれ塩素である式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、Journal of Organic Chemistry、2013、vol. 78(2)、757~761頁に記載されているように、R4a及びR4bがそれぞれフッ素である式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物をジクロロメタン中、三塩化ホウ素で処理することにより調製できる。
【0168】
R4a及びR4bがそれぞれシアノである式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、Photochemical & Photobiological Sciences 2009、8、1006~1015頁又はBiorg. Med. Chem.Lett. 18 (2008)、3112~3116頁に記載の方法と同様に、ルイス酸触媒求核置換反応において、R4a及びR4bがそれぞれフッ素である式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物を、ルイス酸、例えば三フッ化ホウ素エーテラート又は四塩化物スズの存在下で、シアノ化試薬、例えばシアン化トリメチルシリルで処理することにより調製できる。
【0169】
R4a及びR4bがそれぞれOR10基である式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、R4a及びR4bがそれぞれフッ素である式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物を、式Me-OR10の金属アルコキシドで処理することにより調製できる。Meは、好ましくはアルカリ金属である。通常、反応は、溶媒中で行われる。R10がC1~C10-アルキルである場合、溶媒は通常、1~10個の炭素原子を有するアルカノールである、R10がヒドロキシ-C1~C10-アルキルである場合、溶媒は通常、1~10個の炭素原子を有するアルカンジオールである。或いは、R4a及びR4bがそれぞれOR10基である式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、R4a及びR4bがそれぞれフッ素である式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物を、三塩化アルミニウムの存在下で、式HOR10のアルコールで処理することにより調製できる。
【0170】
R4a及びR4bがそれぞれ塩素である式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物も、それぞれ式(4)、(13)及び(24)の化合物の、三塩化ホウ素との錯体形成により調製できる。
【0171】
当業者は容易に理解することであるが、更なる式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物が、先に図示した方法に類似の方法を用いて調製できる。
【0172】
上記の反応は、窒素又はアルゴン中で行うことが有利な場合がある。出発物質は、市販されていない場合、標準的な有機化学技法、公知の構造的に類似の化合物の合成に類似した技法、又は先に記載したスキーム若しくは合成例の節に記載する手順に類似の技法から選択される手順により調製してもよい。
【0173】
好ましい実施形態によると、色変換体は、以下から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料Bを追加で含む。
(B1) 式(III)
【0174】
【0175】
(式中、
qは、1、2、3、又は4であり;
R30は、非置換であるか、又はハロゲン、C1~C10-アルキル若しくはC6~C10-アリールにより一置換若しくは多置換されたアリールオキシであり、ここで、R30基は、*で示される1つ又は複数の位置にあり;
R31及びR32は、それぞれ独立してC1~C30-アルキル、C3~C8-シクロアルキル、アリール、ヘタリール、又はアリール-C1~C10-アルキレンであり、後の3つの基中の(ヘテロ)芳香族環は、非置換であるか、又はC1~C10-アルキルにより一置換若しくは多置換されている)
のアリールオキシ置換ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド化合物;
及びその混合物;
(B2) 式(IV)
【0176】
【0177】
(式中、
R41及びR42は、それぞれ独立してC1~C30-アルキル、C3~C8-シクロアルキル、アリール、ヘタリール、又はアリール-C1~C10-アルキレンであり、ここで、後の3つの基中の(ヘテロ)芳香族環は、非置換であるか、又はC1~C10-アルキルにより一置換若しくは多置換されている)
のペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド化合物;
(B3) 式(V)
【0178】
【0179】
(式中、
R51及びR52は、互いに独立して水素、各場合において非置換又は置換されている、C1~C30-アルキル、ポリアルキレンオキシ、C1~C30-アルコキシ、C1~C30-アルキルチオ、C3~C20-シクロアルキル、C3~C20-シクロアルキルオキシ、C6~C24-アリール又はC6~C24-アリールオキシから選択され;
R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R510、R511、R512、R513、R514、R515、R516、R517及びR518は、互いに独立して水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、ニトロ、-NE51E52、-NRAr51CORAr52、-CONRAr51RAr52、-SO2NRAr51RAr52、-COORAr51、-SO3RAr52、各場合において非置換又は置換されている、C1~C30-アルキル、ポリアルキレンオキシ、C1~C30-アルコキシ、C1~C30-アルキルチオ、C3~C20-シクロアルキル、C3~C20-シクロアルコキシ、C6~C24-アリール、C6~C24-アリールオキシ又はC6~C24-アリールチオから選択され、
ここで、R53及びR54、R54及びR55、R55及びR56、R56及びR57、R57及びR58、R58及びR59、R59及びR510、R511及びR512、R512及びR513、R513及びR514、R514及びR515、R515及びR516、R516及びR517並びに/又はR517及びR518はまた、それらが結合しているビフェニリル部分の炭素原子と一緒になって更なる縮合芳香族又は非芳香族環系を形成してもよく、前記縮合環系は非置換又は置換されており;
E51及びE52は、互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり;
RAr51及びRAr52は、それぞれ互いに独立して水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである)
の剛直な2,2'-ビフェノキシ架橋を有するペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド化合物;
又はそれらの混合物。
【0180】
有機蛍光染料(B1)
式(III)の化合物の好適な例は、例えば、WO2007/006717、とりわけ1ページ5行目から22ページ6行目;US4,845,223、とりわけ2段54行目から6段54行目;WO2014/122549、とりわけ3ページ20行目から9ページ11行目;EP3072887及びEP16192617.5、とりわけ35ページ34行目から37ページ29行目;EP17187765.7、とりわけ22ページ12行目から24ページ3行目に明記されたペリレン誘導体である。式(III)の化合物は通常、橙色又は赤色蛍光染料である。好ましいのは、R31及びR32が、それぞれ独立してC1~C10-アルキル、2,6-ジ(C1~C10-アルキル)アリール及び2,4-ジ(C1~C10-アルキル)アリールから選択される、式(III)の化合物である。より好ましくは、R31及びR32は、同一である。殊に、R31及びR32は、それぞれ2,6-ジイソプロピルフェニル又は2,4-ジ-tert-ブチルフェニルである。R30は、好ましくはフェノキシであり、非置換であるか、又はフッ素、塩素、C1~C10-アルキル及びフェニルから選択される1若しくは2個の同一若しくは異なる置換基により置換されている。好ましくは、qは、2、3又は4、特に2又は4である。
【0181】
式(III)の化合物は、例えばWO2007/006717、US4,845,223、EP3072887及びWO2014/122549に記載の方法と同様にして調製できる。
【0182】
好適な有機蛍光染料(B1)は、例えば、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6-ジ(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,7-ジ(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6-ジ(p-tert-オクチルフェノキシ)ペリレン-3,4;9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,7-ジ(p-tert-オクチルフェノキシ)ペリレン-3,4;9,10-テトラカルボキシミド、N,N'ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6-ジフェノキシペリレン-3,4;9,10-テトラカルボキシミド、N,N'ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,7-ジフェノキシペリレン-3,4;9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6-ジ(2,6-ジフェニルフェノキシ)ペリレン-3,4;9,10-テトラカルボキシミド、N,N'ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,7-ジ(2,6-ジフェニルフェノキシ)ペリレン-3,4;9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,7-ジ(2,3-ジフルオロフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラフェノキシペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2-フェニルフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2-イソプロピルフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2-フェニルフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2,4-ジフェニルフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド;N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(3-フルオロ-フェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(3-クロロフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2,3-ジフルオロフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2,5-ジフルオロフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2,6-ジフルオロフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2,3-ジクロロフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2,6-ジクロロフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1,6,7,12-テトラ(2,5-ジクロロフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボキシミドである。
【0183】
特に、有機蛍光染料(B1)は、式s(III-1)、(III-2)、(III-3)又は(III-4)の化合物から選択される。
【0184】
【0185】
有機蛍光染料(B2)
式(IV)の化合物は、当技術分野で、例えばUS4,379,934、US4,446,324又はEP0657436から周知である。これらは、従来のプロセスにより、例えばペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸又はその二無水物をアミンと縮合させることにより調製できる。これらは通常、赤色蛍光染料である。好ましくは、式(IV)の化合物において、R41及びR42は、直鎖状又は分枝C1~C18アルキル基、C4~C8-シクロアルキル基、フェニル又はナフチルであり、ここで、後に言及した2つの基中の芳香族環は、直鎖状又は分枝C1~C10-アルキルにより一置換又は多置換されていてもよい。好ましくは、R41及びR42は、同じ意味を有する。一実施形態において、式(IV)におけるR41及びR42は、WO2009/037283A1の16ページ19行目から25ページ8行目に明記されるようないわゆる燕尾置換を有する化合物を表す。好ましい実施形態において、R41及びR42は、互いに独立して1-アルキルアルキル、例えば1-エチルプロピル、1-プロピルブチル、1-ブチルペンチル、1-ペンチルヘキシル又は1-ヘキシルヘプチルである。別の好ましい実施形態において、R41及びR42はそれぞれ、2,4-ジ(tert-ブチル)フェニル 2,6-ジイソプロピルフェニル又は2,6-ジ(tert-ブチル)フェニルである。式(IV)の好ましい化合物は、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(CAS番号:82953-57-9)である。
【0186】
有機蛍光染料(B3)
式(V)の化合物は、WO2017/121833の主題である。式(V)の化合物は通常、赤色蛍光染料である。R51及びR52が、互いに独立して、非置換であるか、又は1、2若しくは3個のC1~C6-アルキルにより置換されているフェニルから選択され;R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R510、R511、R512、R513、R514、R515、R516、R517及びR518がそれぞれ水素である式(V)の化合物が好ましい。上記に定義される式(V)の化合物は、好ましくは式(V.1)の化合物である。
【0187】
【0188】
本発明によると、色変換体は、ポリマーマトリックス材料を含む。式(I.a)、(I.b)、及び/又は(I.c)の化合物用のマトリックスとして機能する好ましいポリマーは、ポリスチレン、ポリカルボナート、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、シリコーン、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)-コポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレンアクリロニトリル、ポリ-ブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、2,5-フランジカルボキシラートポリエステル、ポリ酪酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド又はそれらの混合物から選択される。
【0189】
本発明の一実施形態において、好適なポリマーマトリックス材料は、光学的に透明である。
【0190】
別の実施形態において、好適なポリマーマトリックス材料は、光学的に不透明である。
【0191】
「シリコーン」という用語は、「(ポリ)シロキサン」という用語としても公知である。
【0192】
とりわけ、ポリマーマトリックス材料は、本質的に又は完全にポリスチレン、ポリカルボナート、ポリエチレンテレフタラート又はポリエチレンフラノアートからなる。
【0193】
ポリスチレンは、ここでは、とりわけ、スチレン及び/又はスチレンの誘導体の重合から生じるホモ又はコポリマー全てを意味するものと理解される。スチレンの誘導体は、例えば、アルキルスチレン、例えばα-メチルスチレン、オルト-、メタ-、パラ-メチルスチレン、パラ-ブチルスチレン、とりわけパラ-tert-ブチルスチレン、アルコキシスチレン、例えばパラ-メトキシスチレン、パラ-ブトキシスチレン、パラ-tert-ブトキシスチレンである。一般に、好適なポリスチレンは、10000~1000000g/mol(GPCによる判定)、好ましくは20000~750000g/mol、より好ましくは30000~500000g/molの平均モル質量Mnを有する。
【0194】
好ましい実施形態において、色変換体のマトリックスは、本質的に又は完全に、スチレン又はスチレン誘導体のホモポリマーからなる。より詳細には、ポリマーマトリックス材料は、完全にポリスチレンからなる。
【0195】
本発明の更なる好ましい実施形態において、ポリマーマトリックス材料は、本質的に又は完全にスチレンコポリマーからなり、それは、本願の文脈において同様にポリスチレンと見なされる。スチレンコポリマーは、更なる構成要素として、例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、ビニルカルバゾール、又はアクリル酸、メタクリル酸若しくはイタコン酸のエステルをモノマーとして含んでもよい。好適なスチレンコポリマーは一般に、少なくとも20質量%のスチレン、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60質量%のスチレンを含む。別の実施形態において、それらは少なくとも90質量%のスチレンを含む。
【0196】
好ましいスチレンコポリマーは、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、スチレン-1,1'-ジフェニルエテンコポリマー、アクリルエステル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー(ASA)、メチルメタクリラート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(MABS)である。更なる好ましいポリマーは、α-メチルスチレン-アクリロニトリルコポリマー(AMSAN)である。スチレンホモ又はコポリマーは、例えば、フリーラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合により、又は有機金属触媒(例えばチーグラー-ナッタ触媒作用)の影響下で調製できる。これは、イソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックポリスチレン又はコポリマーをもたらすことができる。これらは、好ましくはフリーラジカル重合により調製される。重合は、懸濁液重合、乳化重合、溶液重合又は塊状重合として遂行することができる。好適なポリスチレンの製造は、例えば、Oscar Nuyken、Polystyrenes and Other Aromatic Polyvinyl Compounds、in Kricheldorf、Nuyken、Swift、New York 2005、73~150頁及びそこに引用されている参考文献;並びにElias、Macromolecules、Weinheim 2007、269~275頁に記載されている。
【0197】
別の好ましい実施形態において、ポリマーマトリックス材料は、本質的に又は完全にポリエチレンテレフタラートからなる。ポリエチレンテレフタラートは、エチレングリコールとテレフタル酸との縮合により、又はジメチルテレフタラートとエチレングリコールとの間のエステル交換反応により得ることができる。好ましくは、ポリマーは完全にポリエチレンテレフタラートからなる。
【0198】
同様に、より具体的には、ポリマーマトリックス材料は、本質的に又は完全にポリカルボナートからなる。より好ましくは、ポリマーマトリックス材料完全にポリカルボナートからなる。ポリカルボナートは、炭酸と芳香族又は脂肪族ジヒドロキシル化合物とのポリエステルである。好ましいジヒドロキシル化合物は、例えば、メチレンジフェニレンジヒドロキシル化合物、例えばビスフェノールAである。ポリカルボナートを調製する1つの手段は、界面重合での好適なジヒドロキシル化合物とホスゲンとの反応である。別の手段は、縮合重合での炭酸のジエステル、例えば炭酸ジフェニルとの反応である。好適なポリカルボナートの調製は、例えば、Elias、Macromolecules、Weinheim 2007、343~347頁に記載されている。
【0199】
同様に、より具体的には、ポリマーマトリックス材料は、本質的に又は完全に2,5-フランジカルボキシラートポリエステルからなる。2,5-フランジカルボキシラートポリエステルは、(i)脂肪族C2~C20-ジオール及び脂環式C3~C20-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種のジオールを、(ii)2,5-フランジカルボン酸及び/又はそのエステル形成誘導体、並びに(iii)任意選択で、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、テレフタル酸及び2,6-ナフタル酸及び/又はそのエステル形成誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の更なるジカルボン酸と反応させることにより得ることができる。
【0200】
好適な脂肪族C2~C20-ジオールは、好ましくは直鎖状又は分枝C2~C15-アルカンジオール、とりわけ直鎖状又は分枝C2~C10-アルカンジオール、例えばエタン-1,2-ジオール(エチレングリコール)、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール(プロピレングリコール)、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール(ブチレングリコール)、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘプタン-1,7-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、ノナン-1,9-ジオール、デカン-1,10-ジオール等である。好適な脂環式C3~C20-ジオールは、好ましくはC3~C10-シクロアルキレンジオール、例えば1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘプタンジオール又は1,4-シクロヘプタンジオールである。他の好適な脂環式C3~C20-ジオールとしては、1,3-シクロヘキサンジメタノール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール、若しくは2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、又はそれらの組合せが挙げられる。特に好ましいジオールは、C2~C6-アルカンジオール、特にエタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及びそれらの混合物である。より特に好ましいのは、エタン-1,2-ジオール及びプロパン-1,3-ジオール、とりわけエタン-1,2-ジオールである。
【0201】
より特に好ましいのはまた、生物学的に誘導された(「生物由来の」)C2~C10-アルカンジオール、とりわけC2~C6-アルカンジオール、例えばエタン-1,2-ジオール及びプロパン-1,3-ジオールである。生物ベースのエタン-1,2-ジオールは、リグノセルロース系バイオマス源から、それに含まれる炭水化物の変換により得てもよい。バイオマスからC2~C10-アルカンジオールを調製する方法は、当技術分野で、例えばUS2011/0306804から公知である。
【0202】
好ましくは、ジオール成分(i)は、好ましいものとして言及した1種のジオール、とりわけエタン-1,2-ジオールのみで構成される。ジオール成分(i)は、2種、3種又は4種以上の異なるジオールを含むこともできる。2種、3種又は4種以上の異なるジオールを使用する場合、好ましいものであると先に言及したものが好ましい。この場合、成分(i)の総質量に対して、エタン-1,2-ジオールが好ましくは主成分である。
【0203】
2,5-フランジカルボン酸のエステル形成誘導体はとりわけ、2,5-フランジカルボン酸のC1~C10-ジアルキルエステルである。特に好ましいジエステルは、2,5-フランジカルボン酸のC1~C6~ジアルキルエステル、とりわけジメチルエステル及びジエチルエステルである。成分(ii)はまた、2種、3種又は4種以上の異なる2,5-フランジカルボン酸のジエステルを含んでもよい。2,5-フランジカルボン酸は、生物ベースの糖類から製造できる。Co、Mn及び/又はCeを含む触媒を用いた2,5-二置換フラン、例えば5-ヒドロキシメチルフルフラールの空気酸化を使用した2,5-フランジカルボン酸の調製のための経路が、最近、WO2010/132740、WO2011/043660、WO2011/043661、US2011/0282020、US2014/0336349及びWO2015/137804において報告された。2,5-フランジカルボン酸のジアルキルエステルの調製のための経路は、例えばWO2011/043661にも記載されている。
【0204】
好ましくは、ポリマーは、(i)脂肪族C2~C20-ジオール及び脂環式C3~C20-ジオールからなる群から選択される1種のジオールと(ii)2,5-フランジカルボン酸、又は2,5-フランジカルボン酸のジエステルのみで構成される。
【0205】
好ましくは、2,5-フランジカルボキシラートポリエステルは、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(プロピレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(ブチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(ペンチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(ネオペンチレン-2,5-フランジカルボキシラート)及びそれらの混合物からなる群から選択される。特に、本発明による色変換体に使用されるポリマーマトリックス材料は、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(トリメチレン-2,5-フランジカルボキシラート)及びポリ(ブチレン-2,5-フランジカルボキシラート)からなる、又は本質的にそれらからなるものとすることができる。とりわけ、本発明による色変換体に使用されるポリマーマトリックス材料は、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート)からなる。更なる特定の実施形態において、色変換体のポリマーマトリックス材料は、上記に定義される異なる2,5-フランジカルボキシラートポリエステルの混合物(ブレンド)、例えば、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート)とポリ(プロピレン-2,5-フランジカルボキシラート)とのブレンドを含む。ポリ(プロピレン-2,5-フランジカルボキシラート)は、ポリ(トリメチレン2,5-フランジカルボキシラート)とも呼ばれ;ポリ(ブチレン-2,5-フランジカルボキシラート)は、ポリ(テトラメチレン2,5-フラン-ジカルボキシラート)とも呼ばれ、ポリ(ペンチレン-2,5-フランジカルボキシラート)は、ポリ(ペンタメチレン2,5-フラン-ジカルボキシラート)とも呼ばれる。
【0206】
同様に好適なのは、少なくとも1種の上記に定義されるジオール成分(i)と、上記に定義される成分(ii)と、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、テレフタル酸及び2,6-ナフタル酸、並びに/又はそれらのエステル形成誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の更なる二酸又はジエステル成分(iii)とを反応させることにより得ることができる2,5-フランジカルボキシラートポリエステルである。1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、テレフタル酸及び2,6-ナフタル酸のエステル形成誘導体はとりわけ、C1~C10-ジアルキルエステルである。特に好ましいエステルは、C1~C6~ジアルキルエステル、とりわけジメチルエステル及びジエチルエステルである。成分(ii)と成分(iii)との組合せを使用する場合、成分(ii)と(iii)の総質量に対して成分(ii)が主成分である。例は、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-1,2-シクロヘキサンジカルボキシラート)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-テレフタラート)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-2,6-ナフタラート)又はポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-3,4-フランジカルボキシラート)、好ましくはポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-テレフタラート)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-2,6-ナフタラート)又はポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-3,4-フランジカルボキシラートである。
【0207】
2,5-フランジカルボキシラートポリエステル(A)は、US2,551,731に記載されているように調製できる。
【0208】
ポリメタクリラートの例は、ポリメチルメタクリラート(PMMA)である。
【0209】
特に、点灯用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、ポリスチレンからなる。
【0210】
同様に、特に、点灯用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、ポリカルボナートからなる。
【0211】
同様に、特に、点灯用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、ポリエチレンテレフタラートからなる。
【0212】
同様に、特に、点灯用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、ポリエチレンフラノアートからなる。
【0213】
本発明の好ましい実施形態において、色変換体は、少なくとも1種の光散乱剤を含む。好適で特に好ましい光散乱剤については、以下に述べることが参照される。
【0214】
特に、ディスプレイ用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、ポリスチレン又はポリスチレン系樹脂、例えば、スチレンのコポリマーとα-メチルスチレンとアクリル酸の反応生成物、若しくはメチルメタクリラート及びアクリル酸と3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリラートとのコポリマー、又はそれらの混合物である。
【0215】
同様に、特に、ディスプレイ用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、それぞれホモ又はコポリマーアクリラート及びメタクリラート、とりわけポリアクリラート、ポリメチルメタクリラート又はポリメタクリラートからなる。
【0216】
同様に、特に、ディスプレイ用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、ポリカルボナートからなる。
【0217】
同様に、特に、ディスプレイ用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、ポリエチレンテレフタラートからなる。
【0218】
とりわけ、ディスプレイ用途に使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、ビニルエステル樹脂からなる。エポキシアクリラート樹脂としても公知であるビニルエステル樹脂は、ここでは、不飽和カルボン酸(通常(メタ)アクリル酸)とエポキシ樹脂との反応から作られる不飽和樹脂を意味するものと理解される。通常、ビニルエステル樹脂は、高分子量のエポキシ樹脂骨格を有し、ビニルエステルは、末端不飽和を有する。市販品の例は、日本の昭和電工株式会社から入手可能なアクリラート樹脂Ripoxy(登録商標)SPC-2000である。
【0219】
使用する「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸及び対応するメタクリル酸を指すことを意味する。
【0220】
同様に、とりわけディスプレイデバイスに使用する場合、ポリマーマトリックス材料は、重合性(硬化性)組成物の反応生成物を含む。好ましくは、ポリマーマトリックス材料は、硬化性樹脂組成物の反応生成物からなる。硬化性樹脂組成物は、好ましくは、少なくとも1種のバインダー、少なくとも1種の反応性モノマー、少なくとも1種の光開始剤及び/又は光酸発生剤を含む感光性レジスト組成物である。好ましくは、感光性レジスト組成物は、熱ラジカル開始剤、有機溶媒、分散剤、界面活性剤、光散乱剤又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤を追加で含む。
【0221】
好適なバインダーの例としては、不飽和ポリエステル;ビニルエステル樹脂(エポキシアクリラート樹脂);ノボラック樹脂;ポリビニルフェノール樹脂;カルボキシル基含有ウレタン樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。例は、例えば、WO2008/101841、18ページ28行目から25ページ21行目、又はUS2015/0183955、段落[0100]から段落[0101]に開示されている。好適なバインダーはまた、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、シリコーン等である。
【0222】
好ましいバインダーは、ペンダント基としてカルボン酸機能を有するアクリル樹脂である。例は、例えば、WO2010/108835、4ページ11行目から11ページ5行目に開示されている。市販品の例は、例えば、日本の昭和電工株式会社が提供するRipoxy(登録商標)SPC-1000である。
【0223】
硬化性組成物中に存在するバインダーの量は、感光性レジスト組成物中の固形分の総量に対して質量で5~95%、好ましくは10~90%の範囲である。
【0224】
好適な反応性モノマーの例としては、芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、不飽和カルボキシラート、例えばメチル(メタ)アクリラート、不飽和アミノアルキルカルボキシラート、不飽和グリシジルカルボキシラート、不飽和アミド及び不飽和イミド、ポリマー分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー、及びポリシロキサン、並びにそれらの混合物が挙げられる。例は、例えば、US2015/0183955、段落[0102]に記載されている。
【0225】
好適な反応性モノマーの例としては、任意のアクリラートタイプモノマーも挙げられる。例は、例えば、WO2010/108835、11ページ13行目から14ページ13行目に記載されているものである。好ましいモノマーとしては、多官能性(メタ)アクリラートモノマー又はオリゴマー、例えばジプロピレングリコールジアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリトリトールテトラアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタアクリラート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリラート、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリラート、ペンタエリトリトールトリアクリラート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリラート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0226】
硬化性組成物中に存在する反応性モノマーの量は、ラジカル感光性レジスト組成物中の固形分の総量に対して質量で5~70%、好ましくは5~50%、より好ましくは7~30%の範囲である。
【0227】
光開始剤の使用は、重要ではない。光開始剤は、光を照射すると硬化プロセスを開始するラジカルを生成する化合物である。光開始剤は通常、ベンゾフェノン、芳香族α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、芳香族α-アミノケトン、フェニルグリオキサル酸エステル、モノ-アシルホスフィンオキシド、ビス-アシルホスフィンオキシド、トリス-アシルホスフィンオキシド、芳香族ケトンから誘導されるオキシムエステル及び/又はカルバゾールタイプのオキシムエステルからなる群から選択される。例は、例えば、WO2010/108835、15ページ6行目から17ページ13行目又はWO2010/081749、7ページ11行目から10ページ3行目に記載されている。1種類の光開始剤を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0228】
一実施形態において、光開始剤は、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンジルオキシム)(IRGACURE OXE01(登録商標)、CAS番号:253585-83-0;BASF SE社から入手可能)である。
【0229】
光開始剤の総量は、感光性レジスト組成物中の固形分の総量に対して好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~8質量%、最も好ましくは0.5~5質量%である。
【0230】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の感光性レジスト組成物は、少なくとも光酸発生剤を更に含んでもよい。光酸発生剤は、光を照射すると酸を発生する化合物であり、様々な光酸発生剤が市販されている。光酸発生剤の好適な例は、有機オニウム塩、例えばスルホニウム、ヨードニウム、セレニウム、アンモニウム及びホスホニウムのカチオン及びアニオンである。
【0231】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の感光性レジスト組成物は、例えばWO2010/108835、17ページ15行目から35ページ20行目に記載されるような、過酸化物又はヒドロキシルアミンエステル等の熱ラジカル開始剤を更に含んでもよい。
【0232】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の感光性レジスト組成物は、少なくとも1種の溶媒を更に含んでもよい。好適な溶媒の例は、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸3-メチル-3-メトキシブチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、及びエチルピルビン酸、並びにそれらの組合せである。
【0233】
溶媒の量は、存在する場合、感光性レジスト組成物の総質量に対して1~80%である。
【0234】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の感光性レジスト組成物は、少なくとも1種の分散剤を更に含んでもよく、少なくとも1種の界面活性剤を更に含んでもよい。好適な界面活性剤は、例えば、カチオン性、アニオン性、非イオン性若しくは両性界面活性剤、又はシリコーン系若しくはフッ素系界面活性剤である。好適な界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えばポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;ポリエチレングリコールジエステル、例えばジラウリン酸ポリエチレングリコール及びジステアリン酸ポリエチレングリコール;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸変性ポリエステル;第3級アミン変性ポリウレタン;ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0235】
好適な分散剤の例は、高分子分散剤である。例は、ポリカルボキシラート、例えば高分子ポリアクリラート;不飽和ポリアミド;ポリカルボン酸の(部分的)アミン塩、アンモニウム塩及びアルキルアミン塩;ポリシロキサン;長鎖ポリアミノアミドホスファート;ヒドロキシル基含有ポリカルボキシラート;及びそれらの変性生成物;遊離カルボン酸基を有するポリエステルをポリ(低級アルキレンイミン)と反応させることにより形成されるアミド及びその塩等である。一実施形態において、分散剤は、EFKA(登録商標)4300、ドイツBASF SE社から入手可能なアクリルブロックコポリマーである。
【0236】
好ましい実施形態において、ポリマーの調製は、酸素の非存在下で行われてきた。好ましくは、重合中のモノマーは、合計で1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、とりわけ好ましくは10ppm以下の酸素を含んでいた。
【0237】
ポリマーマトリックス材料は、更なる構成要素として、添加剤、例えば難燃剤、抗酸化剤、光安定剤、UV吸収剤、フリーラジカル捕捉剤、帯電防止剤を含んでもよい。この種の安定剤は、当業者に公知である。
【0238】
好適な抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤は、例えば、フェノール、とりわけ立体障害フェノール、例えばブチルヒドロキシアニソール(BHA)若しくはブチルヒドロキシトルエン(BHT)、又は立体障害アミン(HALS)である。この種の安定剤は、例えば、BASF社により、Irganox(登録商標)の商品名で販売されている。場合によっては、抗酸化剤及びフリーラジカル捕捉剤は、二次安定剤、例えばホスファイト又はホスホナイト、例えば、BASF社によりIrgafos(登録商標)の商品名で販売されているようなものにより補うことができる。
【0239】
好適なUV吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール、例えば2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(BTZ)、トリアジン、例えば(2-ヒドロキシフェニル)-s-トリアジン(HPT)、ヒドロキシベンゾフェノン(BP)又はオキサルアニリドである。この種のUV吸収剤は、例えば、BASF社により、Uvinul(登録商標)の商品名で販売されている。
【0240】
本発明の好ましい実施形態において、ポリマーマトリックス材料は、抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤を何ら含まない。
【0241】
本発明の一実施形態において、ポリマーマトリックス材料は、光散乱剤を含む。好適な光散乱剤は、無機白色顔料、例えば二酸化チタン、硫酸バリウム、リトポン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウムであり、DIN 13320に対する平均粒径が0.01~10μm、好ましくは0.1~1μm、より好ましくは0.15~0.4μmである。これらの光散乱剤は、各場合において、散乱体を含むポリマーマトリックスに対して典型的には0.01~2.0質量%、好ましくは0.05~0.5質量%、より好ましくは0.1~0.4質量%の量で含まれる。
【0242】
好適な有機光散乱剤の例としては、ポリ(アクリラート)に基づくもの;ポリ(アルキルメタクリラート)、例えばポリ(メチルメタクリラート)(PMMA);ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE);シリコーン系散乱剤、例えば加水分解されたポリ(アルキルトリアルコキシシラン)、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの光散乱剤のサイズ(平均直径-質量平均)は、通常0.5~50μm、好ましくは1~10μmの範囲である。これらの光散乱剤は、典型的には、各場合において、散乱体を含む層のポリマーに対して1~10質量%の量で含まれる。有用な光散乱剤は、例えば3~5質量%のPMMA系散乱剤と1.5~2質量%のシリコーン系散乱剤との混合物である。
【0243】
同様に好適なのは、EP-A634445に記載されるような、TiO2と組み合わせたコア/シェル形態を有するビニルアクリラートに基づく高分子粒子を含有する光散乱組成物である。
【0244】
好ましい実施形態によると、色変換体は、少なくとも1種の光散乱剤を追加で含む。
【0245】
先に言及したポリマーは、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物、及び、存在する場合、本明細書において先に記載した有機蛍光染料B、又は後に本明細書に記載する無機蛍光材料のためのマトリックス材料として機能する。好ましい実施形態において、色変換体は、式(I.a)、(I.b)、(I.c)又はそれらの混合物のうちの少なくとも1種の蛍光染料と、少なくとも1種の有機蛍光染料Bとを含む。
【0246】
ポリマーマトリックス材料における式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される蛍光化合物の濃度は、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物の励起波長での吸収強度と、形成される層の厚さとを含む要因に依存する。層が薄い場合、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物のうちの少なくとも1種の濃度は一般に、厚い層の場合においてよりも高い。本発明による色変換層における式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物の総濃度は、ポリマーマトリックス材料の総ポリマー質量に対して通常0.0005~8質量%、好ましくは0.001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%の範囲である。
【0247】
特別には、一般点灯用途に使用する場合、色変換体における式(I.a)、(I.b)、(I.c)の緑色発光化合物又はそれらの混合物の濃度は、ポリマーマトリックス材料の総ポリマー含有量に対して典型的には0.001~0.8質量%、好ましくは0.002~0.6質量%、より好ましくは0.003~0.5質量%の範囲である。
【0248】
典型的には、一般点灯用途に使用する場合、少なくとも1種の染料Bが存在する場合、染料Bの総量は、使用するポリマーの量に対して0.0001~0.5質量%、好ましくは0.001~0.1質量%の範囲である。式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物の色変換体に存在する染料(B)の総量に対する比は、典型的には1:1~20:1、好ましくは2:1~15:1、より好ましくは2:1~10:1、例えば2:1~6:1の範囲である。染料の比率は、選ばれる光源及び所望の相関色温度に依存することを、当業者は容易に理解する。所望のCCTについて、発光の中心波長が400nmから480nmの間である青色LEDにより光が生成される場合の式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物の染料Bに対する比は、光が3000から20000Kの間のCCTを有する白色LEDにより生成される場合の式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物の染料Bに対する比と比較して、遙かに大きい。
【0249】
特別には、ディスプレイ用途に使用する場合、色変換体における式(I.a)、(I.b)、(I.c)の緑色発光化合物及びそれらの混合物の濃度は、ポリマーマトリックス材料の総ポリマー質量に対して好ましくは0.005~5質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0250】
特定の実施形態において、ディスプレイデバイスに使用する場合、色変換体は、少なくとも1種の染料Bを含む。いくつかの実施形態において、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物と蛍光染料Bは、色変換体の様々な層に存在する。式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物は、少なくとも1種の染料Bよりも比較的高含有量で存在する必要がある。本発明のこの実施形態によると、少なくとも1種の蛍光染料Bの総量は、ポリマーマトリックス材料に使用されるポリマーの総量に対して典型的には0.001~2質量%、好ましくは0.001~0.8%、より好ましくは0.002~0.5質量%である。
【0251】
更なる実施形態によると、本発明による色変換体は、任意選択で、又は代替的に、更なる蛍光材料として、少なくとも1種の無機蛍光材料を含む。少なくとも1種の無機蛍光材料は、好ましくはガーネット、ケイ酸塩、硫化物、窒化物及び酸窒化物からなる群から選択される。
【0252】
好適なガーネット、ケイ酸塩、硫化物、窒化物及び酸窒化物の例を、以下の表Iにまとめる:
【0253】
【0254】
更なる実施形態によると、本発明の色変換体は、少なくとも1種の量子ドットを含む。量子ドットは、約20nm以下の直径を有する半導体材料のナノ結晶である。量子ドットは、Si系ナノ結晶、II~VI族化合物半導体ナノ結晶、III~V族化合物半導体ナノ結晶、IV~VI族化合物ナノ結晶、及びそれらの混合物のうちの1種を含んでもよい。II~VI族化合物半導体ナノ結晶は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HggZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe及びHgZnSTeからなる群から選択される1種を含んでもよい。III~V族化合物半導体ナノ結晶は、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、及びInAlPAsからなる群から選択される1種を含んでもよい。IV-VI族化合物半導体ナノ結晶は、SnTeであってもよい。
【0255】
量子ドットの形態のナノ結晶を合成するため、量子ドットを蒸着、例えば金属有機化学蒸着若しくは分子線エピタキシーにより、又は1種又は複数の前駆体を有機溶媒に添加することにより結晶を成長させる湿式化学プロセスにより調製してもよい。
【0256】
本発明のより好ましい実施形態において、本発明の色変換体は、量子ドットを含まない。同様に、本発明のより好ましい実施形態において、本発明の色変換体は、無機蛍光材料を何ら含まない。
【0257】
本発明の一実施形態において、本発明の色変換体は、積層構造を有する。色変換体は、単層構造、又は一般に1種又は複数の蛍光染料及び/又は光散乱体を含む複数のポリマー層で構成される多層構造のいずれかを有してもよい。色変換体が多層構造を有する場合、1つの層が本発明による蛍光染料を含み、別の層が本発明に包含される少なくとも1種の蛍光材料を含む。
【0258】
一実施形態において、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の蛍光染料は、色変換体のLEDに面する層に存在する。別の実施形態において、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の蛍光染料は、色変換体のLEDに面していない層に存在する。
【0259】
本発明の色変換体が少なくとも1種の有機蛍光染料Bを含む場合、本発明の一実施形態において、複数種の蛍光染料が1つの層中に互いに隣り合わせで存在することが可能である。別の実施形態において、様々な蛍光染料が様々な層に存在する。
【0260】
特定の実施形態において、有機蛍光染料を含む層又はマトリックスのうちの少なくとも1つが、光用の光散乱剤を含む。
【0261】
特別な実施形態において、色変換体は、多層構造、好ましくは2層構造を有し、各層が、少なくとも1種の有機蛍光染料を含む。この実施形態において、層のうちの1つ、又は2つ以上であるが全てではない層、又は層の全てが、光散乱剤、好ましくはTiO2を含む。
【0262】
一実施形態において、色変換体は、一緒に積層されて複合体を形成した複数のポリマー層からなり、様々な蛍光染料及び/又は散乱剤が、異なるポリマー層に存在してもよい。
【0263】
更なる実施形態において、色変換体の少なくとも1つのポリマー層が、ガラス繊維で機械的に補強されている。
【0264】
好適な色変換体は、任意所望の幾何学配置にあってもよい。色変換体は、例えばフィルム、シート又はプラークの形態であってもよい。同様に、有機蛍光染料を含有するマトリックスは、液滴形態若しくは半球形態、又は凸面及び/若しくは凹面、平面又は球面を有するレンズの形態であってもよい。
【0265】
一般点灯用途に使用する場合、本発明による色変換体の厚さは、2マイクロメートル(μm)~5ミリメートル、例えば0.2~5ミリメートルの厚さ、又は0.3~3mm若しくは0.4~1mmである。
【0266】
ディスプレイ用途に使用する場合、色変換体は通常、1μm~1000μmの厚さを有する。
【0267】
色変換体が1つの層からなる場合、又は積層構造を有する場合、個々の層は、好ましい実施形態において、連続しており、穴又は中断を何ら有さない。
【0268】
本発明の色変換体は、任意選択で、更なる構成要素、例えばバッキング層を含んでもよい。
【0269】
バッキング層は、色変換体に機械的安定性を付与する役割を果たす。バッキング層用の材料のタイプは、透明であって、所望の機械的強度を有する限り、重要ではない。バッキング層用の好適な材料は、例えば、ガラス又は透明で剛直な有機ポリマー、例えばポリカルボナート、ポリスチレン、又はポリメタクリラート若しくはポリメチルメタクリラート、又はポリエチレンテレフタラートである。
【0270】
バッキング層は概して、0.1mm~10mm、好ましくは0.2mm~5mm、より好ましくは0.3mm~2mmの厚さを有する。
【0271】
本発明の一実施形態において、本発明の色変換体は、WO2012/152812に開示されるような、酸素及び/又は水に対する少なくとも1つの障壁層を有する。障壁層は、色変換層の両側に設けてもよく、色変換層は、全ての側が少なくとも1つの障壁層により囲まれていてもよい。障壁層用の好適な障壁材料の例は、例えば、ガラス、石英、金属酸化物、SiO2、Al2O3とSiO2の層の交互層で構成される多層系、窒化チタン、SiO2/金属酸化物多層材料、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、液晶ポリマー(LCP)、ポリスチレン-アクリロニトリル(SAN)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチレンナフタラート(PBN)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル(EVA)から誘導されるポリマー及びエチレン-ビニルアルコール(EVOH)から誘導されるポリマーである。
【0272】
障壁層用の好ましい材料は、ガラス又はAl2O3とSiO2層の交互層で構成される多層系である。好ましくは、好適な障壁層は、酸素に対する透過性が低い。より好ましくは、好適な障壁層は、酸素及び水に対する透過性が低い。概して、障壁層は、0.01μm~5mm、好ましくは0.1μm~1000μm、及びより好ましくは1μm~100μmの厚さを有する。ガラスの障壁層は、好ましくは0.01~5000μm、及びより好ましくは0.1~1000μmの厚さを有する。
【0273】
本発明の別の実施形態において、色変換体は、酸素に対する透過性が低い障壁層を含まない。
【0274】
本発明の色変換体は、様々な方法により製造できる。一実施形態において、本発明の色変換体を製造する方法は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の有機蛍光染料の溶媒への溶解、及び所望の場合、散乱剤と、所望の場合、上記に定義される更なる添加剤の添加、得られた混合物の例えばドクターブレード技法によるコーティング、及びそれに続く溶媒の除去を含む。別の実施形態において、本発明の色変換体を製造する方法は、少なくとも1種のポリマーと、所望の場合、散乱剤と、所望の場合、上記に定義される更なる添加剤とを含む少なくとも1種の有機蛍光染料の押し出しを含む。特に、色変換体は、押し出し、印刷、コーティング又は成形により形成される。
【0275】
色変換体は、自立型フィルムであってもよいが、基板層上に施すこともできる。本発明の文脈において、自立型フィルムは、その一部が支持材料、例えば基板と接触していないフィルムである。支持層は、色変換体に機械的安定性を付与する役割を果たす。支持層の材料のタイプは、透明であって所望の機械的強度を有する限り重要ではない。代表的基板層は、ガラス、セラミック又はプラスチック、例えば酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタラート、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、ポリメタクリラート、ポリメチルメタクリラート、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリカルボナート並びにシリコーンのフィルムである。基板層は、概して、5μm~3000μmの厚さを有する。
【0276】
本発明の色変換体は、青色光から白色光への変換にとりわけ好適である。殊に、発光の中心波長が400nmから480nmの間の青色LEDにより生成される光を変換して白色光を供給するのに好適である。好適な青色LEDは、例えば、窒化ガリウム(GaN)又は窒化インジウムガリウム(InGaN)に基づくものである。それらは、市販されている。好適な青色LEDはまた、青色光を放出するミニLED及びマイクロLEDである。
【0277】
本発明の色変換体は、とりわけ、3000Kから20000Kの間の相関色温度を有する低温白色LEDにより生成される光を変換してより低い相関色温度を有する白色光を供給するのにも好適である。好適な白色LEDに関しては、本明細書において先に述べていることが参照される。CCTが3000Kから20000Kの間の白色LEDは、市販されている。
【0278】
特に、本発明による色変換体は、5000K未満、とりわけ4500K以下、又は4000K以下、又は3500K以下のCCTで白色光を、高発光効率、例えば230ルーメン毎ワットを超える発光効率で供給することを可能とする。更に、本発明による色変換体は、5000K未満、とりわけ4500K以下、殊に4000K以下、又は3500K以下の白色光を、90以上の高平均演色評価数CRI Raで供給することを可能とする。
【0279】
同様に可能なのは、水銀ランプ又は有機発光ダイオード(OLED)により生成される光の変換のためのそれらの使用である。
【0280】
本発明の更なる態様は、
(i)少なくとも1つの光源と;
(ii)本明細書において少なくとも1つの上記に定義される色変換体とを含み、
少なくとも1つの色変換体が、少なくとも1つの光源からリモート配置にある点灯デバイス(照明デバイス)に関する。
【0281】
好ましくは、少なくとも1つの光源は、発光の中心波長が400nm~480nmである青色LED、及び3000Kから20000Kの間の相関色温度を有する白色LEDからなる群から選択されるLEDである。好ましい実施形態において、本発明の点灯デバイスは、いくつかのLEDを含む。一実施形態において、本発明の点灯デバイスは、いくつかのLEDを含み、その全てが青色である。別の実施形態において、本発明の点灯デバイスは、いくつかのLEDを含み、少なくとも1つのLEDが青色であり、少なくとも1つのLEDが青色ではなく、別の色の光を放出する。
【0282】
概して、使用されるLEDのタイプは、本発明の点灯デバイスにとって重要ではない。好ましい実施形態において、変換体プレートの表面に衝突する青色LED光の電力密度は、通常200mW/cm2未満、好ましくは120mW/cm2未満、より好ましくは80mW/cm2未満である。より高い電力密度、例えば150~200mW/cm2のLEDの使用も同様に可能である。
【0283】
色変換体は、例えば、LEDの周りに同心円状に配置されてもよく、又は平面的幾何形状を有してもよい。例えば、プラーク、シート又はフィルムの形態をとってもよく、液滴形態であってもよく、流延物の形態を取ってもよい。
【0284】
点灯デバイスに使用する本発明の色変換体は、リモート蛍光体設定で使用される。この場合、色変換体は、LEDから空間的に分離されている。概して、LEDと色変換体との間の距離は通常、0.1mmを超え、例えば0.2mm以上であり、いくつかの実施形態においては、0.1以上~10cm、例えば0.3~5cm又は0.5~3cmである。色変換体とLEDとの間には、異なる媒体、例えば空気、希ガス、窒素若しくは他のガス又はそれらの混合物があってもよい。本発明の点灯デバイスは、屋内、屋外、オフィス、車両、懐中電灯、ゲーム機、街灯、交通標識の点灯に好適である。
【0285】
本発明の点灯デバイスは、高発光効率を伴う優れた光学性能を呈する。それらは、4000K未満、とりわけ3500K未満のCCTの暖かい色調の白色光を呈し、平均演色評価数は90を超え、好ましくは少なくとも92、とりわけ少なくとも95と高く;R9値は60を超え、好ましくは少なくとも70、とりわけ少なくとも75と高く;230ルーメン/ワットを超える高い発光効率を伴う。
【0286】
本発明の色変換体は、加えて、光起電装置及び蛍光変換太陽電池における集光システム(蛍光収集器)としての用途に好適である。
【0287】
通常0.1~9nsの範囲である短い蛍光減衰時間のため、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、データを伝送し可視範囲の電磁放射線を放出するための伝送器を含む光忠実度用途でのデータ伝送用の色変換体における使用についても、特に興味深い。
【0288】
したがって、本発明はまた、データを伝送し、可視スペクトル領域の電磁放射線を放出する伝送器に関し、前記伝送器は、
- 第1の電磁放射線の生成及び放出のための放射源と;
- 伝送すべきデータに応じ、第1の電磁放射線を変調して変調された第1の電磁放射線を生成するように適合させた変調器とを含み、
伝送器が、
- 変調された第1の電磁放射線の少なくとも一部を、変調された第2の電磁放射線であって、変調された第1の電磁放射線とは異なる変調された第2の電磁放射線へと変換するための色変換体を更に含むことを特徴とし、
色変換体は、上記に定義される式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される有機蛍光染料と、ポリマーマトリックスとを含む。
【0289】
多くの異なる放射源が、本発明の伝送器により使用されてもよい。ただし、本発明の好ましい実施形態によると、放射源は、複数のLEDである。更に、レーザーダイオードを放射源として使用してもよい。好ましくは、本発明の伝送器の放射源は、青色LED、RGB LEDシステム、有機LED、例えば白色有機LED又は青色有機LED、及び低温白色LEDからなる群から選択される。
【0290】
伝送器に使用される色変換体に関しては、本明細書において先に述べていることが参照される。特に、伝送器に使用する場合、放射源と色変換体との間の距離は、0.01~10cmの範囲である。
【0291】
緑色スペクトル領域(波長域490~560nm、とりわけ490~540nm)における狭帯域発光のため、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物は、ディスプレイデバイス、例えば非発光型ディスプレイ及び自己発光型ディスプレイにおける使用が、特に興味深い。その使用は、ディスプレイの色域を大幅に増加させる。
【0292】
したがって、本発明は更に、
(i)少なくとも1つの光源と;
(ii)少なくとも1つの上記のような色変換体と;
を含み、
少なくとも1つの色変換体が少なくとも1つの光源からリモート蛍光体配置にある、液晶ディスプレイ(LCD)用のバックライトユニットに関する。
【0293】
標準的なLCDバックライトユニット(BLU)における光源は通常、複数のLEDである。好ましくは、LEDは、400nm~480nmの波長域に発光の中心波長を有する青色LEDである。好適な青色LEDは、例えば、窒化ガリウム(GaN)又は窒化インジウムガリウム(InGaN)に基づくものである。同様に好ましくは、LEDは、白色LEDである。商業的に、白色LEDは、典型的には青色光を放出するLEDチップと、黄色、緑色及び/又は赤色蛍光体のコーティング、とりわけCe:YAGを含む黄色コーティングからなる。これらのWLEDは通常、6000から12000Kの間、好ましくは6500から11000Kの間の相関色温度を有する。特に、白色LEDから放出される光は、400~700nmの範囲の波長を含む。
【0294】
バックライトユニットは、エッジ点灯バックライト又はフルアレイバックライトとすることができる。エッジ点灯バックライトは、フルアレイバックライトとは光源の配置が異なる。エッジ点灯構成では、LEDは、矩形の光ガイドプレートのエッジに組み付けられており、LEDからの光は、光ガイドプレートの内面で全内部反射を受け、最終的に光ガイドプレートの上面を通して引き出される。色変換体は光ガイドプレートの上面に面している。フルアレイバックライトでは、色変換体は、リモート蛍光体配置の光源のアレイの上側に配置される。
【0295】
本発明によると、バックライトユニットは、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される有機蛍光染料を含む少なくとも1つの色変換体を含む。色変換体は、更なる有機蛍光染料、とりわけ少なくとも1種の蛍光染料Bを含んでもよい。更なる染料も、少なくとも1つの光源により励起されてもよい。少なくとも1種の更なる染料、とりわけ染料Bの使用は、特に有利である。
【0296】
バックライトユニットは、光ガイドの下に配置された反射体、光ガイド上に配置された下部拡散体、輝度向上フィルム及び/又は拡散フィルムを更に含んでもよい。
【0297】
本発明の一実施形態によると、色変換体は、光散乱剤を何ら含まない。
【0298】
本発明の好ましい実施形態によると、色変換体は、無機又は有機光散乱剤を含む。好適な無機及び有機光散乱剤は、先に言及したもの、とりわけ好ましいものとして言及したものである。ディスプレイ用途用の色変換体に使用する光散乱剤は通常、5~500nmの範囲の直径を有する。
【0299】
バックライトユニットに使用する色変換体は通常、2マイクロメートル~1000マイクロメートル、好ましくは5~500μm、及びより好ましくは10~350μm、例えば50~300マイクロメートルの厚さを有する。本発明によると、色変換体は、光源から物理的に分離されており、即ち、色変換体は、少なくとも1つの光源からリモート蛍光体配置にある。バックライトユニットに使用する本発明の色変換体に関しては、LED光源と色変換体との間の距離は、0.01~20mm、例えば0.01~10mm又は0.01~5mm又は0.05~3.5mmの範囲であってもよい。
【0300】
本発明は更に、
(i)薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、液晶層、並びに赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを含むカラーフィルターアレイを含む液晶パネルと;
(ii)少なくとも1つの光源と;
(iii)少なくとも1つの上記に定義される色変換体とを含む、液晶ディスプレイデバイスに関する。
【0301】
光源は通常、複数の発光ダイオードである。好適な光源は、上記に定義される白色発光ダイオード又は青色発光ダイオードである。光源と色変換体との間の距離は、0.01~20mm、例えば0.01~10mm又は0.01~5mm又は0.05~3.5mmの範囲であってもよい。色変換体は通常、2~1000μm、好ましくは5~500μm、及びより好ましくは10~350μm、例えば50~300μmの厚さを有する。
【0302】
本発明の一実施形態において、色変換体は、液晶パネルの下側に配置されており、即ち、少なくとも1つの色変換体と少なくとも1つの光源は、上記に定義されるバックライトユニットの一部である。この実施形態によると、色変換体のポリマーマトリックス材料は、好ましくはポリスチレン又はポリスチレン系樹脂、例えばスチレンのコポリマーとα-メチルスチレンとアクリル酸の反応生成物であり;又は、色変換体のポリマーマトリックス材料は、好ましくはそれぞれホモ若しくはコポリマー状アクリラート及びメタクリラート、とりわけポリアクリラート、ポリメチルメタクリラート若しくはポリメタクリラートである。特に、ポリマーマトリックスは、ポリカルボナートからなるか、ポリエチレンテレフタラートからなる。特別には、色変換体は、少なくとも1種の更なる有機蛍光染料、とりわけ本明細書において上記に定義される有機蛍光染料Bも含む。色変換体はまた、上記に定義される光散乱剤を含んでもよい。
【0303】
更なる実施形態において、色変換体は、カラーフィルターアレイ内に配置される。この実施形態において、色変換体のポリマーマトリックスは、好ましくはエポキシ樹脂若しくはビニルエステル樹脂、又は本明細書において先に記載したような感光性フォトレジスト組成物である。この実施形態において、色変換体は、更なる有機蛍光染料、とりわけ少なくとも1種の蛍光染料Bを含んでもよい。更なる染料も、少なくとも1つの光源により励起されてもよい。少なくとも1種の更なる染料、とりわけ式Bの染料の使用は、特に有利である。色変換体はまた、上記に定義される光散乱剤を含んでもよい。
【0304】
これらの実施形態によると、少なくとも1つの光源により放出される光は、液晶層、次いでカラーフィルターアレイを通過する。色変換体がカラーフィルターアレイの一部である場合、液晶層と赤色、緑色、及び青色のカラーフィルターとの間に位置してもよく、又はカラーフィルターに含まれてもよい。
【0305】
カラーフィルターアレイは、複数の赤色、緑色及び青色のカラーフィルター、赤色画素用の赤色フィルター;緑色画素用の緑色フィルター、及び青色画素用の青色フィルターを含む。3つのカラーフィルターのそれぞれは、独立して操作され、単一の画素の色が、3色のうちの1つにより、又は3色のうちの少なくとも2つの組合せにより表される。カラーフィルターアレイは通常、画素領域のマトリックスを定義するための遮光部材を含む。遮光部材は、黒色マトリックスとも呼ばれる。黒色マトリックスは、遮断しなければ基板の表示側に現れるディスプレイに無関係な光を遮断することにより、全体的なコントラストを低下させる。
【0306】
カラーフィルターアレイは、本明細書において先に記載した感光性フォトレジスト組成物をパターン化することにより、又は印刷技法により作製することができる。パターン化法において、パターン化は、カラーフィルター用の着色剤、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料、存在する場合、式Iの化合物とは異なる更なる有機蛍光染料を含む感光性レジスト組成物を光に露光し現像することにより実施され、パターン化は、順次必要な回数繰り返される。当業者は理解することであるが、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物と、存在する場合の式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物とは異なる有機蛍光染料は、異なるレジスト組成物中に存在する。
【0307】
式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物とは異なる有機蛍光染料は、存在する場合、好ましくは先に言及した有機蛍光染料B又はその混合物から選択される。更なる染料も、少なくとも1つの光源により励起されてもよい。
【0308】
液晶ディスプレイパネルは、カラーフィルターアレイ、カラーフィルター基板とは反対側の薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、及び液晶層を含む。
【0309】
液晶ディスプレイがフルアレイ又はエッジ点灯LED光源のどちらで構成されているかには関係なく、光は、液晶層とカラーフィルターアレイとを順次通過する。
【0310】
液晶層は、複数の液晶分子を含む。液晶ディスプレイデバイスは、一対の偏光子を更に含む。
【0311】
液晶ディスプレイパネルは、透過型ディスプレイパネル、反射型ディスプレイパネル又は半透過型ディスプレイパネルとすることができる。
【0312】
上記の液晶ディスプレイデバイスは、パッシブマトリックスデバイス又はアクティブマトリックスデバイスのいずれかである。アクティブマトリックス液晶ディスプレイは、アクティブ駆動要素、例えば薄膜トランジスタ(TFT)又はダイオードを各画素要素に含む。
【0313】
アクティブマトリックスLCDデバイスは、ねじれネマティック(TN)、平面スイッチング(IPS)、垂直アラインメント(VA)又はマルチドメイン垂直アラインメント(MVA)技術に従い作動させることができる。
【0314】
本発明の色変換体のため、先行技術のLEDバックライトと比較して、フィルター除去する必要がある光が少なくなる。本発明に従い使用される色変換体は、緑色スペクトル領域において狭いピークを実現し、それにより、先行技術から公知のものよりも、自然で、鮮やかな色を備えたより広い色域を有するLCDの提供を可能にする。
【0315】
液晶ディスプレイデバイスは、コンピュータモニタ、テレビ、タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、プロジェクタ、スマートフォン、電子写真フレーム、GPSディスプレイ、電子標識、産業設備ディスプレイ、医療用デバイスディスプレイ、及び多くの他の視覚的ディスプレイとして使用することができる。
【0316】
本発明の更なる態様は、
(i)白色有機発光ダイオード、青色有機発光ダイオード、ミニLED、又はマイクロLEDから選択される少なくとも1つの光源と;
(ii)少なくとも1つの上記に定義される色変換体と;
(iii)赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを含む任意選択のカラーフィルターアレイとを含む、自己発光型ディスプレイデバイスに関する。
【0317】
本発明の一実施形態によると、光源は、複数の有機発光ダイオード(OLED)である。OLEDは概して、少なくとも3つの層:カソード層、カソード層の上に配置された発光層、及び発光層の上に配置されたアノード層を含む。OLEDは、機能層、例えば電子輸送層(ETL)、正孔輸送層(HTL)、電子障壁層(EBL)及び正孔障壁層(HBL)を更に含んでもよい。特定の実施形態によると、光源は、白色有機発光ダイオードである。本発明による色変換体と組み合わせた白色OLEDの使用は、別々にパターン化された赤色、緑色、及び青色発光体を有するOLEDよりも単純な製造プロセスを実現する。とりわけ好適なのは、pin構造の白色OLED、即ち、pドープされた正孔輸送層、本質的に伝導性の発光ゾーン、及びnドープされた電子輸送層を備えたOLEDである。例は、リン光白色pin OLED及び蛍光白色pin OLEDである。
【0318】
白色OLED(WOLED)は、薄膜多層構造を有することができ、発光色の異なる2つ以上の別々の発光層からの光からの同時発光が、白色光をもたらす。発光層は、補色関係、即ち、青色と黄緑色の発光体層を有してもよく、又は、光の3原色、即ち、青色、赤色及び緑色を放出する。同様に、緑色、黄色及び赤色リン光層を青色蛍光層に組み込むことができる。発光層は、水平又は垂直に積み重ねることができる。例えば、黄色リン光pin-OLEDを青色蛍光pin-OLEDの上に積み重ねることができる。同様に好適なのは、単一の発光層構造を有するWOLEDであり、層は、異なる染料をドープしているか、2種以上のポリマーをブレンドした青色発光体からなる。WOLEDは、平面ボトム発光、平面トップ発光、非平面ボトム発光、又は非平面トップ発光デバイス構造を有することができる。
【0319】
WOLEDは通常、3000Kから12000K、例えば6000から12000K、又は6500から11000Kの間の相関色温度を有する。特に、WOLEDにより放出される白色光は、所望の発光スペクトルを生成するために400~700nmの範囲の波長を含む。
【0320】
別の好ましい実施形態によると、光源は、複数の青色有機発光ダイオード、とりわけ発光の中心波長が400から480nmの間の青色OLEDである。別の好ましい実施形態によると、光源は、青色光を放出する複数のマイクロLED又はミニLEDである。一実施形態において、マイクロLEDデバイスは、p-nダイオード内に量子井戸層を含む。通常、マイクロLEDは、中心波長が400~480nmの光を放出する。
【0321】
色変換体のポリマーマトリックス材料は、好ましくはエポキシ樹脂若しくはビニルエステル樹脂、又は本明細書において上記に記載するような感光性フォトレジスト組成物である。色変換体はまた、光散乱剤を含んでもよい。
【0322】
色変換体はまた、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料とは異なる有機蛍光染料を含んでもよく、存在する場合、好ましくは先に言及した有機蛍光染料B又はその混合物から選択される。更なる染料も、少なくとも1つの光源により励起されてもよい。
【0323】
自己発光型ディスプレイに使用する色変換体は通常、1~20μmの厚さを有する。
【0324】
色変換体は、自立型フィルムとすることもでき、OLEDと直接接触させることもでき、存在する場合、カラーフィルターアレイに配置することもできる。本明細書において使用する場合、「直接接触させる」とは、介在層又はエアギャップが存在しないことを意味する。
【0325】
OLEDの駆動方法に応じ、OLEDパネルは、パッシブマトリックス有機発光ダイオード(PMOLED)パネルとアクティブマトリックス有機発光ダイオード(AMOLED)パネルとに分類することができる。とりわけ、本発明のいくつかの実施形態において、ディスプレイは、AMOLEDディスプレイである。
【0326】
OLEDディスプレイは、熱蒸発と微細金属マスクを使用することにより、フォトリソグラフィにより、又は印刷技法、とりわけインクジェット印刷技法により製造できる。
【0327】
自己発光型ディスプレイデバイスは、赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを含むカラーフィルターアレイを含んでもよい。任意選択で、カラーフィルターアレイはまた、白色画素を含んでもよい。ディスプレイデバイスは、カラーフィルター層間の境界に配置された黒色マトリックスを更に含んでもよい。
【0328】
カラーフィルターアレイは、存在する場合、本明細書において先に記載した感光性フォトレジスト組成物をパターン化することにより、又は印刷技法により作製することができる。パターン化法において、パターン化は、カラーフィルター用の着色剤、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料、存在する場合、この少なくとも1種の有機蛍光染料とは異なる更なる有機蛍光染料を含む感光性レジスト組成物を光に露光し現像することにより実施され、パターン化は、順次必要な回数繰り返される。当業者は理解することであるが、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料と、存在する場合の前記少なくとも1種の有機蛍光染料とは異なる有機蛍光染料は、異なるレジスト組成物中に存在する。
【0329】
加えて、いくつかの実施形態において、ディスプレイは、タッチセンサ式要素と併せて提供されてもよい。
【0330】
光源として少なくとも1つの白色OLED、青色OLED又は青色マイクロLEDを含むディスプレイは、ガラス、プラスチック又はケイ素基板上に形成することができる。
【0331】
OLEDディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して、反応が速く、軽く、視野角の制約が少なく、コントラストが高い。電子ペーパー、OLEDパネル、スマートフォン、ノートブックコンピュータ、タブレット、テレビ、デジタル写真フレーム又はGPSデバイスのディスプレイとしてとりわけ好適である。
【0332】
マイクロLEDディスプレイは、ウェアラブルデバイス、例えばスマートウォッチ及び拡張現実眼鏡及びスマートフォンにとりわけ好適である。とりわけヘッドアップディスプレイ、大画面テレビ又はスマートフォンにも好適である。
【0333】
自己発光型デバイスは、任意のパターン化技法、例えばシャドウマスキング及びフォトリソグラフィ/レジストプロセスを使用してパターン化することができる。自己発光型デバイスは、印刷技法、とりわけインクジェット印刷を使用してパターン化することもできる。
【0334】
更なる態様において、本発明は、静止視覚ディスプレイデバイス;上記に定義される色変換体を含むモバイル視覚ディスプレイデバイスから選択されるデバイスに関する。静止視覚ディスプレイユニットは、例えば、コンピュータの視覚ディスプレイユニット、テレビ、プリンタにおける視覚ディスプレイユニット、台所用電化製品及び広告パネル、照明及び情報パネルである。モバイル視覚ディスプレイユニットは、例えば、スマートフォン、ラップトップ、タブレットPC、デジタルカメラ、mp-3プレーヤー、車両、並びにバス及び列車の目的地ディスプレイにおける視覚ディスプレイユニットである。
【0335】
更なる態様において、本発明は、上記に定義されるディスプレイデバイスを含むテレビデバイスに関する。
【0336】
フォトリソグラフィ技法は、多数の製造工程を伴い、印刷法よりも遙かに複雑である。加えて、フォトリソグラフィ技法は、典型的には印刷技法よりも遙かに高価である。
【0337】
したがって、本発明の目的は、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料を含有するフィルムの印刷に好適なインク配合物を提供することである。
【0338】
したがって、本発明の更なる態様は、
(i)上記に定義される式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料と;
(ii)少なくとも1種の光硬化性又は熱硬化性バインダーと;
(iii)任意選択で、光開始剤、光酸発生剤、反応性モノマー、熱ラジカル開始剤又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の成分と;
(iv)任意選択で、式(I.a)、(I.b)及び(I.c)の化合物とは異なる有機蛍光着色剤、有機溶媒、分散剤、界面活性剤、光散乱剤、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤とを含む、インク配合物に関する。
【0339】
インク配合物は、ディスプレイデバイスの、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料を含有する層の印刷に使用してもよい。
【0340】
本発明によると、バインダーは、少なくとも1種のポリマー成分を含む。ポリマー成分は通常、ポリエーテル(メタ)アクリラート、ポリエステル(メタ)アクリラート、エポキシ(メタ)アクリラート、ウレタン(メタ)アクリラートを含む。
【0341】
本発明によるインク配合物は、1、2、3、4、5、6個又は7個以上のオレフィン二重結合を含有する反応性モノマーを含んでもよい。
【0342】
1個のオレフィン二重結合を有する反応性モノマーの例としては、モノ(メタ)アクリラートが挙げられる。モノ(メタ)アクリラートには、アルキル基が1~20個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリラート及びエチル(メタ)アクリラート、又は;環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリラート;アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート;フェノキシアルキル(メタ)アクリラート、例えば2-フェノキシエチル(メタ)アクリラート及びフェノキシメチル(メタ)アクリラート;2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリラート、イソボルニル(メタ)アクリラートが含まれる。
【0343】
2個のオレフィン二重結合を有する反応性モノマーの例としては、ジ(メタ)アクリラートが挙げられる。当該の好適なジ(メタ)アクリラートはまた、エトキシ化物、プロポキシ化物、又はエトキシ化物とプロポキシ化物の混合物であってもよい。ジ(メタ)アクリラートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、約200~約500g/molの範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、約200~約500g/molの範囲の数平均分子量を有するポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールエトキシラートジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールプロポキシラート(2)ジ(メタ)アクリラート、ジペンタエリトリトールジ(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリラート、ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリラート、ビスフェノール-Aエトキシラートジ(メタ)アクリラートが挙げられる。
【0344】
3、4、5個又は6個以上のオレフィン二重結合を有する反応性モノマーの例としては、トリ(メタ)アクリラート、テトラ(メタ)アクリラート、ペンタ(メタ)アクリラート及び更に官能性の高い(メタ)アクリラートが挙げられる。好適な反応性モノマーには、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ジペンタエリトリトールトリアクリラート、ペンタエリトリトールトリアクリラート、ペンタエリトリトールテトラアクリラート、ジペンタエリトリトールテトラアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタアクリラート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリラート、又はアルコキシル化アルコールのアクリル酸エステル、例えばグリセロールエトキシラートトリアクリラート、グリセロールプロポキシラートトリアクリラート、プロポキシ化グリセロールトリアクリラートが含まれる。
【0345】
インク配合物は、重合プロセスを開始するための少なくとも1種の(通例の)光開始剤を含んでもよい。印刷用インク配合物は、(通例の)光酸発生剤を含んでもよい。印刷用インク配合物は、(通例の)熱ラジカル開始剤を含んでもよい。
【0346】
インク配合物は、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物とは異なる有機蛍光着色剤、有機溶媒、分散剤、界面活性剤、光散乱剤、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の更なる添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、所望の通りに、印刷用インク配合物に任意の有効量で含まれてもよい。インク配合物の粘度及び/又は表面張力を調整するための好適な溶媒は、特に、有機溶媒、例えばエステル、エーテル、ジオール、グリコール及び芳香族炭化水素である。式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物及びそれらの混合物とは異なる多種多様な有機及び無機染料及び顔料を、単独で、又は組み合わせて使用することができる。式(I.a)、(I.b)又は(I.c)の化合物とは異なる有機蛍光着色剤はとりわけ、上記に定義される蛍光染料B又はその混合物から選択される。印刷用インク配合物は、ポリマー成分に分散させた光散乱剤を含んでもよい。光散乱剤については、先に述べたことが参照される。
【0347】
印刷用インク配合物の重合は、熱、電子ビーム照射、UV照射又はLED照射により引き起こすことができる。電子ビーム、UV暴露、LEDからの照射又は熱による硬化は、酸素含有雰囲気下、又は、具体的には、不活性ガス下で行ってもよい。硬化すべきインク配合物に応じ、硬化は、照射のみにより行うことができるが、照射前、照射中、又は照射後の熱硬化も有利な場合がある。
【0348】
いくつかの実施形態において、バインダーは、インク配合物における主成分である。
【0349】
インク配合物は、
(i)0.1~40質量%の、上記に定義される式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の有機蛍光染料と;
(ii)30~90質量%の、少なくとも1種の光硬化性又は熱硬化性バインダー系と;
(iii)0~60質量%の、光開始剤及び/又は光酸発生剤、反応性モノマー、熱ラジカル開始剤又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の成分と;
(iv)任意選択で、0~40質量%の、式(I.a)、(I.b)、(I.c)の化合物とは異なる有機蛍光着色剤、有機溶媒、分散剤、界面活性剤、光散乱剤、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の更なる添加剤とを含んでもよい。
【0350】
印刷用インク配合物は、個々の成分を混合することにより通例の方法で調製してもよい。
【0351】
本発明による印刷用インク配合物は、スクリーン印刷又はインクジェット印刷にとりわけ好適である。
【0352】
印刷用インク配合物は、好ましくは液晶ディスプレイデバイス又は自己発光型デバイスの製造に使用される。
【0353】
本発明を、以下に記載の実施例により詳細に説明する。同時に、実施例は、本発明の制限であると見なすべきではない。特に、式Iの蛍光化合物及び本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、実際の例を参照して更により詳細に記載される。本発明による化合物の調製は、実施例により説明される;しかし、本発明の主題は、与えられる実施例に限定されない。
【実施例】
【0354】
I. 調製
(実施例1)
調製
【0355】
【0356】
経路a)
1.1 下記の調製
【0357】
【0358】
100mLのクロロベンゼン、5.0g(19.1mmol)の4,4-ジフルオロ-1,3,5,7-ペンタメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(CAS121207-31-6、TCI社から入手可能)及び16.5g(5.5mL)の臭素の混合物を3時間室温で撹拌した。その後臭素を吹き飛ばし、生成物を100mLのメタノールの添加により沈殿させ、ろ過し、メタノールで洗浄し、乾燥させ、4.2g(53%)の赤色固体を95%(HPLC)の純度で得た。
Rf(トルエン)=0.82。
【0359】
1.2 下記の調製
【0360】
【0361】
40mLのN-メチルピロリドン(NMP、実施例1.1からの1.0g(2.4mmol)のジブロモ化合物)、0.84g(7.1mmol)のシアン化亜鉛、0.88g(1.0mmol)のトリス-(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム及び1.68mL(2.0mmol)の1.0Mのトリ-tert.-ブチルホスフィンのトルエン溶液の混合物を100℃に2.5時間加熱した。混合物を室温に冷却し、ろ過し、ろ液がほとんど無色になるまでNMPで洗浄した。ろ液を水で希釈し、メチル-tert.-ブチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を真空下で濃縮し、残留物をトルエン/酢酸エチル20:1を使用したシリカ上でのカラムクロマトグラフィーにより2回精製した。2.0mgの表題化合物が得られた。
Rf(トルエン:酢酸エチル=20:1)=0.57
【0362】
経路b)
1.3 2-オキソプロパナールオキシムの調製
80mLのテトラヒドロフラン(THF)、6.15mL(2.88g、0.04mol)のメチルグリオキサールの40%水溶液、及び2.78g(0.04mol)の塩酸ヒドロキシルアミンの混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を、更なる単離及び精製をすることなく次の工程で使用した。
Rf(シクロヘキサン:アセトン1:1)=0.7
【0363】
1.4 1-アミノプロパン-2-オンの調製
実施例1.3からの溶液に、70mLの水及び23.8g(0.2mol)の金属スズを添加した。この懸濁液に、19.0gの濃塩酸を3時間以内に添加した。反応混合物を42℃未満に保った。残存するスズをろ別した。ろ液に約50mLの20%NaOHを添加してわずかに塩基性(pH=9)にした。沈殿した塩をろ別した。得られた混合物を、更なる単離及び精製をすることなく、次の工程に取り入れた。
【0364】
1.5 2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボニトリルの調製
実施例1.4から得られた混合物に、3.5g(0.04mol)の3-オキソブタンニトリルを添加した。混合物を45~50℃で一晩、pH=9で撹拌した。反応物を室温に冷却し、200mLのジクロロメタンで3回抽出し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を、トルエン/酢酸エチル10:1を用いたカラムクロマトグラフィーに供した。0.32g(26%、全工程)の白色固体が得られた。
Rf(トルエン:酢酸エチル=10:1)=0.39
【0365】
1.6 下記の調製
【0366】
【0367】
0.22g(1.8mmol)の実施例1.5からの化合物を3mLのジクロロエタンに溶解させた。0.52g(6.6mmol)の塩化アセチルを添加し、反応混合物を3時間加熱して還流(78℃)した。1.0g(13.2mmol)の塩化アセチルを更に添加し、混合物を更に1時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、30mLの石油エーテルを添加した。懸濁液を1時間撹拌し、ろ過した。得られた黒色残留物(220mg)を、更なる精製をすることなく次の工程に使用した。
【0368】
1.7 下記の調製
【0369】
【0370】
窒素下、220mg(0.8mmol)の実施例1.6からの暗色固体の混合物を400mLのトルエンに懸濁させ、0.71g(7mmol)のトリエチルアミンを添加した。この混合物に、1.38g(9.7mmol)の三フッ化ホウ素エーテラートを添加し、混合物を80℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、溶液を水で2回抽出し、溶離剤としてジクロロメタンを用いたカラムクロマトグラフィーに供した。溶液中で17mg(6.6%)の緑色蛍光を有する赤色固体が得られた。
Rf(ジクロロメタン)=0.6
【0371】
(実施例2)
4,5-ジメチル-1-トリイソプロピルシリル-ピロール-3-カルボニトリルの調製
2.1 2,3-ジメチル-1H-ピロールの調製
10g(0.114mol)の2-ブタノンオキシムを170mLのジメチルスルホキシドに溶解させた。34.50g(0.455mol)の85%粉末状KOHを添加した。混合物を110℃に加熱した。この混合物に、18.75g(0.19mol)ジクロロエタンを20mLのジメチルスルホキシドに溶解させた溶液を110から120℃の間で30分以内に添加した。その後、反応混合物を105℃に冷却し、この温度で1時間撹拌し、次いで室温に冷却した。混合物を氷水に添加し、NH4Cl溶液を添加し、混合物をメチルtert-ブチルエーテルで抽出した。合わせた有機物をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィーに供した。2.90g(26%)の油が単離された。Rf(シクロヘキサン:ジクロロ-メタン1:2)=0.69
【0372】
2.2 (2,3-ジメチルピロール-1-イル)-トリイソプロピル-シランの調製
1.21gのNaH(30mmol)を40mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、0℃に冷却した。2.9gの実施例2.1からの化合物を10mLのDMFに溶解させた溶液を20分以内に滴加した。20mLのDMFを添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した、その後、混合物を0℃に冷却した。30分以内に、5.29g(27mmol)の塩化トリイソプロピルシリル溶液を0~4℃に冷却して添加した。混合物を90分間撹拌した。残存するNaHを破壊するために、2mLのイソプロパノールを反応混合物に添加した。混合物を水に注ぎ、メチルtert-ブチルエーテルで抽出した。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を、溶離剤としてシクロヘキサンジクロロメタンを用いたカラムクロマトグラフィーに供した。4.34g(63%)の無色油が得られた。Rf(シクロヘキサン:ジクロロメタン1:2)=0.96
【0373】
2.3 (4-ブロモ-2,3-ジメチル-ピロール-1-イル)-トリイソプロピル-シランの調製
2.6g(9.88mmol)の実施例2.2からの化合物を25mLのTHFに溶解させ、-78℃に冷却した。1.75gのN-ブロモスクシンイミドを1時間以内に5回に分けて添加した。混合物をこの温度で1時間撹拌した。25mLのペンタンを添加し、反応混合物を中性のAl2O3でろ過した。3.26g(95%)の暗色油が単離された。Rf(シクロヘキサン)=0.48
【0374】
2.4 4,5-ジメチル-1-トリイソプロピルシリル-ピロール-3-カルボニトリルの調製
アルゴン下、4.10g(12.4mmol)の実施例2.3からの化合物、2.19g(18.6mmol)のZn(CN)2、568mg(0.62mmol)のトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム、及び40mLのジオキサンの混合物に、2.4mL(2.4mmol)のトリ-tert-ブチルホスフィンの1Mトルエン溶液を添加した。混合物を5時間加熱して還流(98℃)した。同量のZn(CN)2、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム、及びトリ-tert-ブチルホスフィンを添加し、混合物を22時間更に還流した。更に1.1gのZn(CN)2、284mgのトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム及び1.2mLのトリ-tert-ブチルホスフィンを添加し、混合物を更に5時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、80mLの水に注いだ。10mLのブラインを添加し、生成物を酢酸エチルで繰り返し抽出した。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を、溶離剤としてジクロロメタンとシクロヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーに供した。1.92g(56%)の油が単離された。Rf(ジクロロメタン:シクロヘキサン2:1)=0.53
【0375】
2.5 4,5-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボニトリルの調製
1.94g(6.9mmol)の実施例2.4からの化合物を20mLのTHFに溶解させた。6.9mL(6.9mmol)のフッ化テトラブチルアンモニウムの1MのTHF溶液を室温で添加した。混合物を室温で15分撹拌した。その後、20mLのメチルtert-ブチルエーテルを添加し、溶液を30mLの水と10mLのブラインで2回洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を10mLのペンタンに懸濁させ、ろ過し、1mLのペンタンで3回洗浄した。0.69g(83%)の無色油が単離された。Rf(ジクロロメタン:シクロヘキサン2:1)=0.18
【0376】
II. 光安定性
染料の試験のための色変換体の製造:
実施例1の蛍光染料を使用して、色変換体を製造した。この目的のため、化合物を以下に記載するように、ポリカルボナート(PC、Bayer社製Macrolon(登録商標)2808)で構成されるマトリックスに組み込んだ。
【0377】
約2.5gのポリマー及び0.05質量%の染料を、約5mLの塩化メチレンに溶解させ、0.2質量%のTiO2(Kronos 2233)をその中に分散させた。得られた溶液/分散体を、ドクターブレードを使用してガラス表面に400μmの未乾燥膜厚でコーティングした。溶媒を乾燥させた後、フィルムをガラスから剥がし、真空乾燥キャビネットにおいて50℃で一晩乾燥させた。厚さ67μmの各フィルムから15mmの直径を有する2つの円形フィルム片を打ち抜き、これらを分析サンプルとして使用した。
【0378】
分析サンプルの蛍光量子収率(FQY)を、C9920-02量子収率測定系(浜松ホトニクス社製)で測定した。これは、積分球(ウルブリヒト球)においてサンプルのそれぞれに445~455nmの光を照射することにより行った。サンプルのないウルブリヒト球での参照測定との比較により、励起光の吸収されない部分とサンプルにより放出された蛍光とが、CCD分光計によって判定される。吸収されない励起光のスペクトル又は放出された蛍光のスペクトル全体にわたり強度を積分すると、各サンプルの吸収若しくは蛍光強度の程度又は蛍光量子収率が得られる。
【0379】
蛍光量子収率測定の結果:
実施例1の化合物:
PCフィルム:発光λmax:532nm;発光、FWHM:43nm;
FQY:89%。
【0380】
PCフィルムにおける実施例1の化合物及び比較化合物C1(Sigma-Aldrich社から市販されている)
【0381】
【0382】
のT80値を判定した。T80は、110mW/cm2の青色光(450nm)の照射中に蛍光(吸光係数とQYの積)がその初期値の80%へ減衰することである。この目的のため、TiO2と蛍光染料をドープしたPCポリマーフィルムを上記のように調製した。結果を表IIにまとめる。
【0383】
【0384】
表IIからわかるように、本発明に従い使用される実施例1の化合物は、照射条件下で構造的に類似した非シアン化化合物C1よりも実質的に長い寿命を有する。