IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特許-繰出し容器 図1
  • 特許-繰出し容器 図2
  • 特許-繰出し容器 図3
  • 特許-繰出し容器 図4
  • 特許-繰出し容器 図5
  • 特許-繰出し容器 図6
  • 特許-繰出し容器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】繰出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/04 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
A45D40/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020074295
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021171065
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-040230(JP,A)
【文献】特表2016-520401(JP,A)
【文献】中国実用新案第215189824(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00-40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が繰出し口となる筒状のケース体と、
前記ケース体に初期位置と前記初期位置よりも下方の解除位置との間で昇降可能に連結し、把持部とねじ部とを備える操作部材と、
前記ケース体の内部に回り止めされた状態で配置されるとともに前記ねじ部にねじ結合する軸部材と、
前記ケース体の内部に昇降可能に配置される繰出し部材と、
前記ケース体に対する前記操作部材の相対回転を、前記初期位置では第1周方向に許容するとともに第2周方向に阻止し、前記解除位置では前記第2周方向に許容するラチェット機構部と、
前記初期位置での前記第1周方向への前記相対回転により前記軸部材で前記繰出し部材を押し上げ、前記初期位置から前記解除位置への前記操作部材の下降により前記軸部材を前記繰出し部材に対して下降させ、前記解除位置での前記第2周方向への前記相対回転により前記軸部材で前記繰出し部材を引き下げるように、前記軸部材と前記繰出し部材とを連結する連結機構部と、を有することを特徴とする、繰出し容器。
【請求項2】
前記ラチェット機構部が、
前記操作部材に設けられ、径方向に弾性変形可能な爪部と、
前記ケース体の内周面に設けられ、前記初期位置での前記第2周方向への前記相対回転により前記爪部を係止する係止面と、
前記ケース体の内周面に設けられ、前記初期位置での前記第1周方向への前記相対回転により前記係止面を乗り越えるように前記爪部を案内する乗越え面と、を有する、請求項1に記載の繰出し容器。
【請求項3】
前記ケース体の内周面が、上下方向に延びる案内レール部を有し、
前記繰出し部材が、前記案内レール部に案内される被案内部を有し、
前記連結機構部が、前記繰出し部材に前記軸部材を回り止めされた状態で昇降可能に連結する、請求項1または2に記載の繰出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形内容物を収納する繰出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布対象物に塗布可能な固形内容物を収納する容器として、繰出し容器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、上端が繰出し口となる筒状のケース体と、ケース体に相対回転可能に連結し、把持部とねじ部とを備える操作部材と、ケース体の内部に回り止めされた状態で配置されるとともにねじ部にねじ結合する軸部材と、軸部材に一体に連なり、ケース体の内部に昇降可能に配置される繰出し部材と、を有する繰出し容器が記載されている。
【0004】
この繰出し容器によれば、操作部材をケース体に対して第1周方向に相対回転させることにより、繰出し部材をケース体の内部で上昇させて、固形内容物をケース体から繰り出して使用することができる。また、使用後には、操作部材をケース体に対して第1周方向の反対方向である第2周方向に相対回転させることで、繰出し部材を下降させて、固形内容物をケース体の内部に繰り入れて保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-15417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の繰出し容器のように、操作部材をケース体に対して第2周方向に相対回転させることで内容物をケース体の内部に繰り入れることができるようにした構成では、例えば比較的柔らかい固形内容物を収納した場合に、操作体がケース体に対して第2周方向に相対回転されると、固形内容物が形状の崩れや破断などの損傷を生じてしまうおそれがある、という問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、比較的軟らかい固形内容物の収納に適した繰出し容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の繰出し容器は、上端が繰出し口となる筒状のケース体と、前記ケース体に初期位置と前記初期位置よりも下方の解除位置との間で昇降可能に連結し、把持部とねじ部とを備える操作部材と、前記ケース体の内部に回り止めされた状態で配置されるとともに前記ねじ部にねじ結合する軸部材と、前記ケース体の内部に昇降可能に配置される繰出し部材と、前記ケース体に対する前記操作部材の相対回転を、前記初期位置では第1周方向に許容するとともに第2周方向に阻止し、前記解除位置では前記第2周方向に許容するラチェット機構部と、前記初期位置での前記第1周方向への前記相対回転により前記軸部材で前記繰出し部材を押し上げ、前記初期位置から前記解除位置への前記操作部材の下降により前記軸部材を前記繰出し部材に対して下降させ、前記解除位置での前記第2周方向への前記相対回転により前記軸部材で前記繰出し部材を引き下げるように、前記軸部材と前記繰出し部材とを連結する連結機構部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の繰出し容器は、上記構成において、前記ラチェット機構部が、前記操作部材に設けられ、径方向に弾性変形可能な爪部と、前記ケース体の内周面に設けられ、前記初期位置での前記第2周方向への前記相対回転により前記爪部を係止する係止面と、前記ケース体の内周面に設けられ、前記初期位置での前記第1周方向への前記相対回転により前記係止面を乗り越えるように前記爪部を案内する乗越え面と、を有するのが好ましい。
【0010】
本発明の繰出し容器は、上記構成において、前記ケース体の内周面が、上下方向に延びる案内レール部を有し、前記繰出し部材が、前記案内レール部に案内される被案内部を有し、前記連結機構部が、前記繰出し部材に前記軸部材を回り止めされた状態で昇降可能に連結するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的軟らかい固形内容物の収納に適した繰出し容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態である繰出し容器の縦断面図である。
図2図1に示す繰出し容器の要部を拡大して示す拡大断面図である。
図3図2に示す操作本体部材の正面図である。
図4図2に示す操作本体部材の側面図である。
図5】ラチェット機構部の構成を説明するための横断面図である。
図6】摺動抵抗付与部の構成を説明するための横断面図である。
図7】固形内容物を繰り出した状態から操作部材を解除位置に下降させ、第2周方向に回転操作しているときの様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施の形態である繰出し容器1を例示説明する。
【0014】
なお、本明細書においては、上下方向はケース体10の軸線Oに沿う方向を意味し、上方は固形内容物が繰り出される方向を意味し、下方はその反対方向を意味し、周方向は軸線Oを周回する方向を意味し、第1周方向は周方向一方側を意味し、第2周方向は周方向他方側を意味し、径方向は軸線Oと直交する直線に沿う方向を意味し、縦断面は軸線Oを含む断面を意味し、横断面は軸線Oに垂直な断面を意味している。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施の形態である繰出し容器1はケース体10を有している。ケース体10は軸線Oに沿って延びる円筒状となっており、その上端は繰出し口10aとなっている。本実施の形態では、繰出し口10aは、軸線Oに垂直な面に対して斜めに傾斜しているが、軸線Oに垂直であってもよい。
【0016】
ケース体10は、その内部に固形内容物2を収納することができる。固形内容物2としては、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布対象物に塗布可能なものを採用することができる。本実施の形態では、固形内容物2は、略円柱状の口紅である。なお、固形内容物2とは、形状を留めておける程度の堅さを有する内容物を意味し、例えば半練り状のものなど、ある程度の柔らかさのものを含む。ケース体10に収納された固形内容物は、繰出し口10aにおいてケース体10の外部に露出している。
【0017】
ケース体10に、繰出し口10aを覆うオーバーキャップ3を着脱自在に装着した構成とすることもできる。本実施の形態では、オーバーキャップ3は、周壁部3aと頂壁部3bとを備えた有頂円筒状となっており、ケース体10の繰出し口10aを含む上端から所定範囲を覆うように構成されている。ケース体10に装着された状態において、オーバーキャップ3の頂壁部3bと繰出し口10aとの間には上下方向に間隔が空けられており、固形内容物2が繰出し口10aから若干突出した状態においても、頂壁部3bを固形内容物2に触れさせることなくオーバーキャップ3をケース体10に装着して、固形内容物2の当該突出部分を保護することができるようになっている。
【0018】
ケース体10の内部には、繰出し部材11が回り止めされた状態で昇降可能に配置されている。繰出し部材11は、ケース体10の内周面に対し上下方向に摺動可能である。
【0019】
繰出し部材11は、円筒状の周壁部11aと周壁部11aの下端に連なる底壁部11bとを備えており、周壁部11aの外周面においてケース体10の内周面に対し摺動可能となっている。また、ケース体10の内周面には上下方向に延びるリブ状の複数の案内レール部10bが設けられており、繰出し部材11は、周壁部11aの外周面に設けられた上下方向に延びる溝状の複数の被案内部11cが、それぞれ対応する案内レール部10bに係合して上下方向に案内されることで、ケース体10の内周面に対し、回り止めされた状態で上下方向に摺動可能となっている。
【0020】
繰出し部材11の底壁部11bの下面には、周壁部11aと同軸の円筒状の連結筒部11dが一体に設けられている。
【0021】
固形内容物2は、繰出し口10aと繰出し部材11との間においてケース体10に収納されており、その一部は繰出し部材11の内部に配置されている。繰出し部材11は、図1に示す位置から上昇することで、ケース体10の内部に収納されている固形内容物2を押し上げて、繰出し口10aから外部に繰り出すことができる。
【0022】
ケース体10には、操作部材12が初期位置と初期位置よりも下方の解除位置との間で昇降可能に連結している。また、操作部材12は、ケース体10に対する操作部材12の相対回転を、初期位置では第1周方向に許容するとともに第2周方向に阻止し、解除位置では第1周方向と第2周方向のいずれにも許容するラチェット機構部20を介してケース体10に連結している。
【0023】
操作部材12は、把持部13aを有する操作本体部材13と、雄ねじとして形成されたねじ部14aを有するねじ部材14とで構成されている。ねじ部材14は、ケース体10に対し、操作本体部材13と一体に相対回転可能且つ相対移動可能に操作本体部材13に連結している。
【0024】
図2に示すように、本実施の形態では、操作本体部材13は、ケース体10の下方に同軸に配置された円筒状の把持部13aと、把持部13aの上端からケース体10の内部に向けて突出する円筒状の係合筒部13bとを有しており、係合筒部13bの外周面から径方向外側に向けて突出して設けられた円環状の係止突起13cがケース体10の内周面に設けられた円環状の上側係止溝10cの下端に係止されることで、ケース体10に初期位置で相対回転可能に保持されている。
【0025】
また、ケース体10の内周面における上側係止溝10cよりも下側の部分には、円環状の下側係止溝10dが設けられており、ケース体10に対して把持部13aを下方に引くことで、係合筒部13bの係止突起13cを上側係止溝10cの下端を弾性変形により乗り越えさせて下側係止溝10d内に移動させ、下側係止溝10dの下端に係止させることにより、操作本体部材13をケース体10に解除位置で相対回転可能に保持させることができる(図7参照)。なお、把持部13aは、ケース体10と同一の外径寸法となっている。
【0026】
図1に示すように、ねじ部材14は、ねじ部14aを外周面に備えた、所謂スクリューロッドであるねじ軸14bを有している。ねじ軸14bは、繰出し部材11よりも下方においてケース体10の内部に配置されている。
【0027】
図2に示すように、本実施の形態では、ねじ軸14bの下端には連結板14cが一体に設けられている。連結板14cは、その外周面から径方向外側に向けて突出して設けられた係止突起14dが操作本体部材13の把持部13aの下端側の内周面に設けられた円環状の係止溝13dに係止されることで、操作本体部材13に連結している。また、連結板14cは、その外周面に上下方向に延びる溝状の切欠き部14eを有しており、切欠き部14eが操作本体部材13の把持部13aの内周面に設けられた回止め突起13eに係合することで、操作本体部材13に対して周方向に回り止めされている。
【0028】
図1に示すように、ねじ軸14bの径方向外側には、軸部材15が配置されている。軸部材15は、ねじ軸14bのねじ部14aにねじ結合する雌ねじ15aを内周面に備えており、繰出し部材11の連結筒部11dに連結機構部40を介して連結している。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態では、軸部材15は、その下方側の一部にのみ雌ねじ15aが設けられている。また、軸部材15は、その上端側に設けられた係止突起15bが連結筒部11dの内周面に設けられた円環状の係止溝11eに係止溝11e内で昇降可能に係合するとともに、連結筒部11dとの間にスプライン部16が設けられることにより、連結筒部11dに回り止めされている。したがって、軸部材15は、繰出し部材11に回り止めされた状態で昇降可能に連結されている。また、連結機構部40は、係止突起15b、係止溝11e及びスプライン部16で構成されている。
【0030】
このように、軸部材15は、ケース体10に回り止めされた繰出し部材11に回り止めされることにより、ケース体10の内部に回り止めされた状態で配置されている。また、前述したように、ねじ部14aは、連結板14cとともに操作本体部材13に対して周方向に回り止めされている。したがって、操作本体部材13がケース体10に対して周方向に相対回転すると、ねじ部14aも操作本体部材13とともにケース体10及びケース体10に回り止めされている軸部材15に対して軸線Oを中心として相対回転する。
【0031】
ねじ部14aと雌ねじ15aは、ねじ部14aがケース体10に対して第1周方向に相対回転することにより雌ねじ15aがねじ部14aに対して上昇し、ねじ部14aがケース体10に対して第2周方向に相対回転することにより雌ねじ15aがねじ部14aに対して下降するように構成されている。したがって、ケース体10に対して操作部材12が第1周方向に相対回転すると、軸部材15で繰出し部材11が押し上げられ、ケース体10に対して操作部材12が第2周方向に相対回転すると、軸部材15で繰出し部材11が引き下げられる。
【0032】
このように、連結機構部40は、初期位置でのケース体10に対する操作部材12の第1周方向への相対回転により軸部材15で繰出し部材11を押し上げ、初期位置から解除位置へのケース体10に対する操作部材12の下降により軸部材15を繰出し部材11に対して下降させ、解除位置でのケース体10に対する操作部材12の第2周方向への相対回転により軸部材15で繰出し部材11を引き下げるように、軸部材15と繰出し部材11とを連結している。
【0033】
図2に示すように、本実施の形態では、ラチェット機構部20は、連結筒部11dよりも下方における軸部材15の外側に設けられており、操作部材12の側に設けられた径方向に弾性変形可能な一対の爪部21と、ケース体10の側に設けられた歯車部22とを有している。
【0034】
一対の爪部21は、それぞれ、操作本体部材13と一体に設けられている。より具体的には、図3図5に示すように、一対の爪部21は、それぞれ、操作本体部材13の係合筒部13bの上端から突出する脚部21aと、脚部21aに支持されるとともに脚部21aに対して周方向に延びる湾曲片21bと、湾曲片21bの先端から径方向外側に向けて延びる爪片21cとを一体に備えている。それぞれの爪片21cの湾曲片21bとは反対側を向く面は、周方向に垂直である。一対の爪部21は、それぞれ、湾曲片21bが脚部21aを支点として湾曲度合いを強める方向に弾性変形することで、軸部材15とケース体10との間で、爪片21cが径方向の両側に変位するように弾性変形することができる。
【0035】
一方、歯車部22は、図5に示すように、ケース体10の内周面に一体に設けられた複数(12個)の係止面22aと、ケース体10の内周面に一体に設けられた複数(12個)の乗越え面22bと、を有している。それぞれの係止面22aは、操作部材12が初期位置においてケース体10に対して第2周方向に相対回転したときに、爪片21cに係合して爪部21を係止することで、操作部材12のケース体10に対する第2周方向への相対回転を阻止するように構成されている。それぞれの乗越え面22bは、隣り合う2つの係止面22aの間で、一方の係止面22aの径方向外側部分から他方の係止面22aの径方向内側部分に向けて湾曲して延びており、操作部材12が初期位置においてケース体10に対して第1周方向に相対回転したときに、係止面22aを乗り越えるように爪部21の爪片21cを案内することで、操作部材12のケース体10に対する第1周方向への相対回転を許容するように構成されている。
【0036】
図7に示すように、操作部材12が解除位置にあるときには、一対の爪部21と歯車部22は係合することはなく、ケース体10に対する操作部材12の相対回転は第1周方向と第2周方向のいずれにも許容される。
【0037】
なお、ラチェット機構部20に設けられる爪部21及び係止面22aないし乗越え面22bの数は、種々変更可能である。
【0038】
図1に示すように、本実施の形態の繰出し容器1は、操作部材12がケース体10に対して周方向に相対回転したときに、操作部材12とケース体10との間に摺動抵抗を付与する摺動抵抗付与部30を備えた構成とすることができる。摺動抵抗付与部30は、操作本体部材13と一体に設けられて、連結筒部11dとラチェット機構部20との間の部分において、ケース体10の内周面に弾性的に接することで、操作部材12がケース体10に対して周方向に相対回転したときに、操作部材12とケース体10との間に摺動抵抗を付与するように構成されている。本実施の形態では、摺動抵抗付与部30は、操作部材12が初期位置と解除位置のいずれにあるときにも、操作部材12とケース体10との間に摺動抵抗を付与するように構成されている。
【0039】
図2図4に示すように、本実施の形態では、摺動抵抗付与部30は、一対の柱部31、支持体32、4つの弾性片33及び4つの摺動突起部34を備えた構成とされている。
【0040】
より具体的には、一対の柱部31は、それぞれ操作本体部材13の係合筒部13bの上端に、一対の脚部21aの間において一体に連ねて設けられている。図2に示すように、一対の柱部31は、係合筒部13bから軸部材15とケース体10との間において上方に延びている。一対の柱部31の上端は脚部21aよりも上方に位置している。
【0041】
図2図4に示すように、支持体32は、係合筒部13bと同軸の円筒状となっており、一対の柱部31の上端に一体に連ねて設けられている。図2に示すように、支持体32は、軸部材15とケース体10との間に配置されている。
【0042】
図2図4に示すように、4つの弾性片33は、それぞれ細長い板状となっており、支持体32の上端に、周方向に等しい間隔を空けて一体に連ねて設けられている。図2に示すように、それぞれの弾性片33は、支持体32から上方に向けて延びており、支持体32を支点として径方向に弾性変形自在となっている。
【0043】
なお、柱部31、支持体32及び弾性片33は、それぞれケース体10の内周面に対して間隔を空けて配置されている。
【0044】
図2図4に示すように、4つの摺動突起部34は、それぞれ対応する弾性片33の先端(上端)の外側を向く面に一体に設けられ、それぞれ当該面から径方向外側に突出している。図2に示すように、それぞれの摺動突起部34は、支持体32を支点として弾性片33を径方向内側に向けて弾性変形させた状態で、ケース体10の内周面に接している。このように、摺動突起部34はケース体10の内周面に弾性的に接しており、これにより、操作部材12がケース体10に対して周方向に相対回転したときに、操作部材12とケース体10との間に摺動抵抗が付与される。摺動抵抗付与部30が操作部材12とケース体10との間に付与する摺動抵抗は、固形内容物2をケース体10から繰り出す際の操作性等を鑑みて、予め実験等を行って適度な値に設定することができる。
【0045】
本実施の形態では、オーバーキャップ3、ケース体10、繰出し部材11、操作本体部材13、ねじ部材14及び軸部材15はそれぞれ、合成樹脂材料の射出成形により一体に形成されている。
【0046】
上記構成を有する本実施の形態の繰出し容器1は、操作部材12が初期位置にありオーバーキャップ3がケース体10から取り外された状態で、ケース体10を一方の手などで保持しつつ他方の手などで操作部材12の把持部13aを把持して第1周方向に回転操作するなどして、操作部材12をケース体10に対して第1周方向に相対回転させることで、固形内容物2をケース体10の繰出し口10aから外部に繰り出すことができる。
【0047】
すなわち、操作部材12を初期位置でケース体10に対して第1周方向に相対回転させると、操作部材12とともにねじ部14aがケース体10に対して第1周方向に相対回転する。ねじ部14aにねじ結合する雌ねじ15aを備えた軸部材15は、連結機構部40を介して連結筒部11dに連結されて繰出し部材11とともにケース体10に回り止めされているので、ねじ部14aがケース体10に対して第1周方向に相対回転すると、ねじ部14aにねじ結合する雌ねじ15aを備えた軸部材15は、ねじ部14aと雌ねじ15aのねじ作用により上昇し、繰出し部材11を押し上げる。これにより、固形内容物2は、上昇する繰出し部材11により押し上げられ、繰出し口10aからケース体10の外部に繰り出される。固形内容物2のケース体10からの繰出し量(突出量)は、操作部材12を相対回転させる量によって調整することができる。よって、操作部材12をケース体10に対して第1周方向に所望の量だけ相対回転させることで、ケース体10の繰出し口10aから、所望の量の固形内容物2を繰り出して、使用することができる。
【0048】
一方、操作部材12を、初期位置でケース体10に対して、固形内容物2の繰出し時とは反対側となる第2周方向に相対回転させると、ラチェット機構部20により当該相対回転が阻止される。したがって、操作部材12が不意にケース体10に対して第2周方向に相対回転するように操作されても、固形内容物2の下端側部分を支持する繰出し部材11が下降することはなく、これにより、固形内容物2がケース体10の内部に繰り入れられることが防止される。したがって、例えば比較的柔らかい口紅など、ケース体10の内部に繰り入れることが好ましくない硬さの固形内容物2を収納した場合であっても、操作部材12が不意にケース体10に対して第2周方向に相対回転するように操作されて、固形内容物2が形状の崩れや破断などの損傷を生じることを防止することができる。
【0049】
また、ケース体10を一方の手などで保持しつつ他方の手などで操作部材12の把持部13aを把持してケース体10から引き下げ操作するなどして、図7に下向き矢印で示すように、操作部材12をケース体10に対して下降させることにより、操作部材12を初期位置から解除位置に移動させてラチェット機構部20の機能を解除することもできる。また操作部材12を初期位置から解除位置に移動させる際には、繰出し部材11の位置はそのままで、繰出し部材11と軸部材15の上下方向の相対移動を許容する連結機構部40を介して繰出し部材11に連結された軸部材15のみを操作部材12とともに下降させることができる。そして、解除位置で操作部材12をケース体10に対して第2周方向に相対回転させることで、軸部材15がねじ部14aと雌ねじ15aのねじ作用により下降し、繰出し部材11を引き下げる。これにより、固形内容物2は、下降する繰出し部材11により引き下げられ、繰出し口10aからケース体10の内部に繰り入れられる。したがって、固形内容物2を若干繰り出しすぎた場合などに、操作部材12を初期位置から解除位置に移動させ、解除位置で操作部材12をケース体10に対して第2周方向に相対回転させることで、固形内容物2を僅かに繰り入れて適切な繰り出し量に微調整することができる。
【0050】
このように、本実施の形態の繰出し容器1では、初期位置においてケース体10に対する操作部材12の相対回転を第1周方向に許容し、第2周方向に阻止するラチェット機構部20を設けるようにしたので、例えば比較的柔らかい口紅など、ケース体10の内部に繰り入れることが好ましくない硬さの固形内容物2を収納した場合であっても、操作部材12により繰出し部材11が固形内容物2をケース体10の内部に繰り入れるように作動することを防止して、固形内容物2が形状の崩れや破断などの損傷を生じることを防止することができる。
【0051】
また、本実施の形態の繰出し容器1では、解除位置ではケース体10に対する操作部材12の相対回転を前記第2周方向に許容するようにラチェット機構部20を構成しており、また、初期位置でのケース体10に対する操作部材12の第1周方向への相対回転により軸部材15で繰出し部材11を押し上げ、初期位置から解除位置への操作部材12の下降により軸部材15を繰出し部材11に対して下降させ、解除位置でのケース体10に対する操作部材12の第2周方向への相対回転により軸部材15で繰出し部材11を引き下げるように、軸部材15と繰出し部材11とを連結する連結機構部40を構成しているので、固形内容物2を若干繰り出しすぎた場合などにおいても、固形内容物2を僅かに繰り入れて適切な繰り出し量に微調整することができる。
【0052】
また、本実施の形態の繰出し容器1では、ラチェット機構部20を、連結筒部11dよりも下方において軸部材15の外側に設けるようにしたので、ラチェット機構部20を、連結筒部11dの移動経路よりも下方のスペースを効果的に用いて配置することで、ラチェット機構部20が設けられた繰出し容器1を小型化ないし細径化することができる。
【0053】
さらに、本実施の形態の繰出し容器1では、図5に示すように、ラチェット機構部20を、爪部21、係止面22a及び乗越え面22bを有する構成としたので、簡単な構成でラチェット機構部20を設けることができる。これにより、ラチェット機構部20が設けられた繰出し容器1を、小型化することができるとともに、そのコストを低減することができる。
【0054】
さらに、本実施の形態の繰出し容器1では、ケース体10の内周面に案内レール部10bを設け、繰出し部材11に被案内部11cを設け、繰出し部材11に軸部材15を回り止めされた状態で昇降可能に連結するように連結機構部40を構成しているので、簡単な構成で軸部材15をケース体10に回り止めしてねじ作用による軸部材15の昇降を可能にすることができる。
【0055】
さらに、本実施の形態の繰出し容器1では、連結筒部11dとラチェット機構部20との間に摺動抵抗付与部30を設け、操作部材12がケース体10に対して周方向に相対回転したときに、操作部材12とケース体10との間に適度な摺動抵抗が付与されるようにしたので、操作部材12をケース体10に対して周方向に相対回転させる際の繰出し部材11による固形内容物2の押し圧を安定化させて、操作部材12の操作性を高めることができる。
【0056】
また、本実施の形態の繰出し容器1では、摺動抵抗付与部30を、連結筒部11dとラチェット機構部20との間のスペースに配置するようにしたので、連結筒部11dの移動経路よりも下方側のスペースを効果的に用いて摺動抵抗付与部30を配置することができる。これにより、摺動抵抗付与部30が設けられた繰出し容器1を小型化ないし細径化することができる。
【0057】
さらに、本実施の形態の繰出し容器1では、摺動抵抗付与部30を、支持体32に、それぞれ摺動突起部34を備えた複数(4つ)の弾性片33を、周方向に並べて設けた構成としたので、操作部材12とケース体10との間に安定して摺動抵抗が生じるようにして、操作部材12の操作性をさらに高めることができる。
【0058】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
したがって、前記実施の形態である繰出し容器1は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0060】
繰出し容器1は、ケース体10、操作部材12、繰出し部材11、ラチェット機構部20及び連結機構部40を有している限り、種々変更可能である。ケース体10は、上端が繰出し口10aとなる筒状をなしている限り、種々変更可能である。操作部材12は、ケース体10に初期位置と初期位置よりも下方の解除位置との間で昇降可能に連結し、把持部13aとねじ部14aとを備えている限り、種々変更可能である。繰出し部材11は、ケース体10の内部に昇降可能に配置されている限り、種々変更可能である。ラチェット機構部20は、ケース体10に対する操作部材12の相対回転を、初期位置では第1周方向に許容するとともに第2周方向に阻止し、解除位置では第2周方向に許容するように構成されている限り、種々変更可能である。連結機構部40は、初期位置での第1周方向への相対回転により軸部材15で繰出し部材11を押し上げ、初期位置から解除位置への操作部材12の下降により軸部材15を繰出し部材11に対して下降させ、解除位置での第2周方向への相対回転により軸部材15で繰出し部材11を引き下げるように、軸部材15と繰出し部材11とを連結するように構成されている限り、種々変更可能である。
【0061】
しかし、ラチェット機構部20は、爪部21、係止面22a及び乗越え面22bで構成するのが好ましい。また、爪部21は、操作部材12に設けられ、径方向に弾性変形可能な構成であるのが好ましい。また、係止面22aは、ケース体10の内周面に設けられ、初期位置での第2周方向への相対回転により爪部21を係止する構成であるのが好ましい。また、乗越え面22bは、ケース体10の内周面に設けられ、初期位置での第1周方向への相対回転により係止面22aを乗り越えるように爪部21を案内する構成であるのが好ましい。
【0062】
また、繰出し容器1は、ケース体10の内周面が、上下方向に延びる案内レール部10bを有し、繰出し部材11が、案内レール部10bに案内される被案内部11cを有し、連結機構部40が、繰出し部材11に軸部材15を回り止めされた状態で昇降可能に連結する構成であるのが好ましい。
【0063】
また、繰出し容器1は、摺動抵抗付与部30を有するのが好ましい。
【0064】
摺動抵抗付与部30は、ケース体10の内周面に弾性的に接して、操作部材12がケース体10に対して周方向に相対回転したときに、操作部材12とケース体10との間に摺動抵抗を付与することができる構成である限り、種々変更可能である。
【0065】
しかし、摺動抵抗付与部30は、支持体32に、それぞれ摺動突起部34を備えた複数の弾性片33を周方向に並べて設けた構成とするのが好ましい。なお、弾性片33の数は4つに限らず、任意に設定することができる。
【0066】
また、軸部材15は、雌ねじ15aを内周面に備えた筒状をなすものに限らない。例えば、軸部材15を、雄ねじを外周面に備えた筒状又は棒状をなす所謂スクリューロッドのような構成とし、ねじ部材14は設けずに、操作本体部材13の内周面における上側部分に雌ねじとして構成されたねじ部14aを一体に形成した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 繰出し容器
2 固形内容物
3 オーバーキャップ
3a 周壁部
3b 頂壁部
10 ケース体
10a 繰出し口
10b 案内レール部
10c 上側係止溝
10d 下側係止溝
11 繰出し部材
11a 周壁部
11b 底壁部
11c 被案内部
11d 連結筒部
11e 係止溝
12 操作部材
13 操作本体部材
13a 把持部
13b 係合筒部
13c 係止突起
13d 係止溝
13e 回止め突起
14 ねじ部材
14a ねじ部
14b ねじ軸
14c 連結板
14d 係止突起
14e 切欠き部
15 軸部材
15a 雌ねじ
15b 係止突起
16 スプライン部
20 ラチェット機構部
21 爪部
21a 脚部
21b 湾曲片
21c 爪片
22 歯車部
22a 係止面
22b 乗越え面
30 摺動抵抗付与部
31 柱部
32 支持体
33 弾性片
34 摺動突起部
40 連結機構部
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7