(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】レーザを用いてガラスを切断する方法
(51)【国際特許分類】
C03B 33/09 20060101AFI20230807BHJP
C03B 33/023 20060101ALI20230807BHJP
C03B 33/037 20060101ALI20230807BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20230807BHJP
【FI】
C03B33/09
C03B33/023
C03B33/037
B23K26/38 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018207622
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-09-16
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591235304
【氏名又は名称】ゼネラル・アトミックス
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ATOMICS
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,ジェームス ロス
(72)【発明者】
【氏名】バグディ,エステバン バラレゾ
(72)【発明者】
【氏名】カコウズ,マーク アオラハ
(72)【発明者】
【氏名】トライアル,ジェフリー ジェームス
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-156358(JP,A)
【文献】特開2012-136413(JP,A)
【文献】特開平06-155920(JP,A)
【文献】特開2013-089714(JP,A)
【文献】特表2016-534971(JP,A)
【文献】特開昭61-126987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00-33/14
B23K 26/00-26/70
B28D 1/00- 7/04
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを切断するための方法であって、
表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置することであって、前記ガラスシートは、前記裏面が前記犠牲基板に面するように前記犠牲基板上に配置されることと、
ビームを前記表面に、更に前記ガラスシートを通過して前記犠牲基板上へと誘導することと、
前記ビームを10kHzから30kHzの周波数で前記犠牲基板においてパルス化することと、
前記ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度で前記ガラスシート全体にわたって移動させることと、
前記ビームで前記犠牲基板をアブレーションすることと、
前記犠牲基板の前記アブレーションに応じて過熱蒸気を発生させることと、
前記過熱蒸気で前記ガラスシートの前記裏面をアブレーションし、これにより前記ガラスシートを切断することと、を含み、
前記配置することは、ラバストーンを含む前記犠牲基板上に前記ガラスシートを配置することを含む
、方法。
【請求項2】
ガラスを切断するための方法であって、
表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置することであって、前記ガラスシートは、前記裏面が前記犠牲基板に面するように前記犠牲基板上に配置されることと、
ビームを前記表面に、更に前記ガラスシートを通過して前記犠牲基板上へと誘導することと、
前記ビームを10kHzから30kHzの周波数で前記犠牲基板においてパルス化することと、
前記ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度で前記ガラスシート全体にわたって移動させることと、
前記ビームで前記犠牲基板をアブレーションすることと、
前記犠牲基板の前記アブレーションに応じて過熱蒸気を発生させることと、
前記過熱蒸気で前記ガラスシートの前記裏面をアブレーションし、これにより前記ガラスシートを切断することと、を含み、
前記配置することは、ワンダーストーンを含む前記犠牲基板上に前記ガラスシートを配置することを含む
、方法。
【請求項3】
ガラスを切断するための方法であって、
表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置することであって、前記ガラスシートは、前記裏面が前記犠牲基板に面するように前記犠牲基板上に配置されることと、
ビームを前記表面に、更に前記ガラスシートを通過して前記犠牲基板上へと誘導することと、
前記ビームを10kHzから30kHzの周波数で前記犠牲基板においてパルス化することと、
前記ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度で前記ガラスシート全体にわたって移動させることと、
前記ビームで前記犠牲基板をアブレーションすることと、
前記犠牲基板の前記アブレーションに応じて過熱蒸気を発生させることと、
前記過熱蒸気で前記ガラスシートの前記裏面をアブレーションし、これにより前記ガラスシートを切断することと、を含み、
前記配置することは、窒化ケイ素を含む前記犠牲基板上に前記ガラスシートを配置することを含む
、方法。
【請求項4】
表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを切断するためのシステムであって、
犠牲基板であって、前記ガラスシートは、前記裏面が前記犠牲基板に面するように前記犠牲基板上に配置される、犠牲基板と、
レーザであって、前記犠牲基板とこのレーザとの間に前記ガラスシートが挿入されている、レーザと、
前記レーザに結合され、10kHzから30kHzの周波数で前記レーザからのビームをパルス化するパルス化システムと、
前記レーザに結合されたレーザ制御装置と、を備え、
前記レーザ制御装置は、前記レーザからのビームを、前記ガラスシートの前記表面に、更に前記ガラスシートを通過して前記犠牲基板上へと誘導し、前記ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度で前記ガラスシート全体にわたって移動させ、前記ビームで前記犠牲基板をアブレーションし、前記犠牲基板の前記アブレーションに応じて過熱蒸気を発生させ、前記過熱蒸気で前記ガラスシートの前記裏面をアブレーションし、これにより前記ガラスシートを切断する、ように適合されており、
前記犠牲基板は、ラバストーンを含む
、システム。
【請求項5】
表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを切断するためのシステムであって、
犠牲基板であって、前記ガラスシートは、前記裏面が前記犠牲基板に面するように前記犠牲基板上に配置される、犠牲基板と、
レーザであって、前記犠牲基板とこのレーザとの間に前記ガラスシートが挿入されている、レーザと、
前記レーザに結合され、10kHzから30kHzの周波数で前記レーザからのビームをパルス化するパルス化システムと、
前記レーザに結合されたレーザ制御装置と、を備え、
前記レーザ制御装置は、前記レーザからのビームを、前記ガラスシートの前記表面に、更に前記ガラスシートを通過して前記犠牲基板上へと誘導し、前記ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度で前記ガラスシート全体にわたって移動させ、前記ビームで前記犠牲基板をアブレーションし、前記犠牲基板の前記アブレーションに応じて過熱蒸気を発生させ、前記過熱蒸気で前記ガラスシートの前記裏面をアブレーションし、これにより前記ガラスシートを切断する、ように適合されており、
前記犠牲基板は、ワンダーストーンを含む
、システム。
【請求項6】
表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを切断するためのシステムであって、
犠牲基板であって、前記ガラスシートは、前記裏面が前記犠牲基板に面するように前記犠牲基板上に配置される、犠牲基板と、
レーザであって、前記犠牲基板とこのレーザとの間に前記ガラスシートが挿入されている、レーザと、
前記レーザに結合され、10kHzから30kHzの周波数で前記レーザからのビームをパルス化するパルス化システムと、
前記レーザに結合されたレーザ制御装置と、を備え、
前記レーザ制御装置は、前記レーザからのビームを、前記ガラスシートの前記表面に、更に前記ガラスシートを通過して前記犠牲基板上へと誘導し、前記ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度で前記ガラスシート全体にわたって移動させ、前記ビームで前記犠牲基板をアブレーションし、前記犠牲基板の前記アブレーションに応じて過熱蒸気を発生させ、前記過熱蒸気で前記ガラスシートの前記裏面をアブレーションし、これにより前記ガラスシートを切断する、ように適合されており、
前記犠牲基板は、窒化ケイ素を含む
、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガラスの切断に関し、更に具体的には、レーザを用いたガラスの切断に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを切断するための技術において、様々なシステム及びプロセスが既知である。しかしながら、スクライビングホイール又は他のスクライブ方法を用いたガラスの切断は、ガラスを曲げた場合に予想できる位置で破壊するため、ガラスに傷を付けることを含み得る。場合によっては、機械的な方法がガラスを破壊することがある。従って、ガラスの切断はガラスを破壊させるか又は使用できない形状を生じる可能性があり、これが切断プロセスの実効歩留まりを低減させる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザを用いてガラスシートの切断を達成することができる。具体的には、レーザを用いて薄いガラスシート(すなわち300μm厚さ未満)を切断できる。ガラスシートの下で基板を用いて切断を容易にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、方法は、表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置することと、レーザからのビームを表面に、更にガラスシートを通過するように誘導することと、ビームを10kHzから30kHzの周波数で犠牲基板においてパルス化することと、ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度でガラスシート全体にわたって移動させることと、ビームで犠牲基板をアブレーションすることと、犠牲基板のアブレーションに応じて過熱蒸気を発生することと、過熱蒸気でガラスシートの裏面をアブレーションし、これによりガラスシートを切断することと、を含み得る。1つの適切なレーザはオルトバナジウム酸イットリウム(YVO4)である。
【0005】
レーザによって生成される光波長においてガラスが光学的に透明であるならば、オルトバナジウム酸イットリウム(YVO4)レーザの代わりに、ガラスシートを介して基板をアブレーションするために適切な周波数を有する他のレーザ、例えば固体レーザ(Nd:YAG)、ガスレーザ(CO2)、半導体レーザ(AlGaAs、AlGaInP、GaN等)、及びファイバレーザ(Nd/Ybドープファイバ)等も使用できる。
【0006】
別の実施形態において、非一時的(non-transitory)コンピュータ読み取り可能媒体は、表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置すること、レーザからのビームを表面に、更にガラスシートを通過するように誘導することと、ビームを10kHzから30kHzの周波数で犠牲基板においてパルス化することと、ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度でガラスシート全体にわたって移動させることと、ビームで犠牲基板をアブレーションすることと、犠牲基板のアブレーションに応じて過熱蒸気を発生することと、過熱蒸気でガラスシートの裏面をアブレーションし、これによりガラスシートを切断することと、をプロセッサに実行させるように動作可能な命令を含み得る。
【0007】
更に別の実施形態において、システムは、表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置し、レーザからのビームを表面に、更にガラスシートを通過するように誘導し、ビームを10kHzから30kHzの周波数で犠牲基板においてパルス化し、ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度でガラスシート全体にわたって移動させ、ビームで犠牲基板をアブレーションし、犠牲基板のアブレーションに応じて過熱蒸気を発生し、過熱蒸気でガラスシートの裏面をアブレーションし、これによりガラスシートを切断する、ように構成された1つ以上のコンポーネントを含み得る。
【0008】
追加の実施形態において、装置は、表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置するための手段と、レーザからのビームを表面に、更にガラスシートを通過するように誘導するための手段と、ビームを10kHzから30kHzの周波数で犠牲基板においてパルス化するための手段と、ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度でガラスシート全体にわたって移動させるための手段と、ビームで犠牲基板をアブレーションするための手段と、犠牲基板のアブレーションに応じて過熱蒸気を発生するための手段と、過熱蒸気でガラスシートの裏面をアブレーションし、これによりガラスシートを切断するための手段と、を含み得る。
【0009】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例において、誘導することは、5マイクロメートル未満のスポットサイズを有する表面にYVO4レーザからのビームを誘導することを含む。
【0010】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例において、配置することは、ラバストーンの犠牲基板上にガラスを配置することを含む。
【0011】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例において、配置することは、ワンダーストーンの犠牲基板上にガラスを配置することを含む。
【0012】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例において、配置することは、窒化ケイ素の犠牲基板上にガラスを配置することを含む。
【0013】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例において、配置することは、金属の犠牲基板上にガラスを配置することを含む。
【0014】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例において、配置することは、紙の犠牲基板上にガラスを配置することを含む。
【0015】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例は、犠牲基板の前記アブレーションに応じて粉末を発生するためのプロセス、機構(feature)、手段、又は命令を更に含み得る。
【0016】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例は、ガラスシートを切断した後に前記ガラスシートを超音波洗浄するためプロセス、機構、手段、又は命令を更に含み得る。
【0017】
上述した方法、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体、システム、及び装置のいくつかの例において、犠牲基板はアブレーションに基づいて燃焼し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の上記及びその他の態様、特徴、及び利点は、以下の図面と共に提示される以下の更に具体的な記載から明らかとなろう。
【0019】
【
図1】本開示の態様に従った、オルトバナジウム酸イットリウム(YVO4)レーザを用いたガラスの切断をサポートするガラス切断システムの図を示す。
【
図2】本開示の態様に従った、オルトバナジウム酸イットリウム(YVO4)レーザを用いたガラスの切断をサポートするガラス切断システムの図を示す。
【
図3】本開示の態様に従った、YVO4レーザを用いてガラスを切断するためのプロセスのフローチャートを示す。
【
図4】本開示の態様に従った、YVO4レーザを用いてガラスを切断するためのプロセスのフローチャートを示す。
【0020】
図面のいくつかの図を通して、対応する参照符号は対応する構成要素を示している。図における要素は簡略化及び明確化のために示され、必ずしも一定の縮尺通りに描かれていないことは、当業者には認められよう。例えば、本発明の様々な実施形態の理解の向上に役立てるため、図面における要素のいくつかの寸法は他の要素に比べて誇張され得る。また、商業的に実行可能な実施形態において有用であるか又は必要な、一般的であるが充分に理解されている要素は、本発明のこれらの様々な実施形態の図解を妨げないように、多くの場合は図示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の記載は、限定の意味で解釈されるのではなく、単に例示的な実施形態の一般的な原理を説明する目的のために行われる。本発明の範囲は特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0022】
本明細書全体を通して、「1つの実施形態」、「一実施形態」、又は同様の用語に対する言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通して、「1つの実施形態において」、「一実施形態において」というフレーズ、及び同様の用語が出現した場合は全て、同一の実施形態を指し得るが、必ずしもそうではない。
【0023】
更に、1つ以上の実施形態において、本発明の記載される特徴、構造、又は特性を、任意の適切なやり方で組み合わせることができる。以下の記載では、プログラミング、ソフトウェアモジュール、ユーザ選択、ネットワークトランザクション、データベースクエリ、データベース構造、ハードウェアモジュール、ハードウェア回路、ハードウェアチップ等のような多数の具体的な詳細を与えて、本発明の実施形態の完全な理解に供する。しかしながら、それらの具体的な詳細、又は他の方法、構成要素、材料等のうち1つ以上がなくても本発明を実施できることは、当業者には認められよう。他の例では、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるため、周知の構造、材料、又は動作については詳細な図示も記載も行わない。
【0024】
図1を参照すると、本開示の態様に従った、オルトバナジウム酸イットリウム(YVO4)レーザ105を用いたガラスの切断をサポートするガラス切断システム100の図が示されている。システム100は、レーザ105と、ガラスシート110と、基板115と、過熱蒸気120と、を含み得る。いくつかの場合、レーザ105はYV04レーザである。しかしながら、ガラスシート110を介して基板115をアブレーションするために適切な周波数を有する他のレーザを使用することも可能である。レーザによって生成される光波長においてガラスが光学的に透明であるならば、オルトバナジウム酸イットリウム(YVO4)レーザ105の代わりに、固体レーザ(Nd:YAG)、ガスレーザ(CO2)、半導体レーザ(AlGaAs、AlGaInP、GaN等)、及びファイバレーザ(Nd/Ybドープファイバ)等も使用できる。
【0025】
レーザ105は、電磁放射の誘導放出から光を発するデバイスである。誘導放出は、高いエネルギ状態から低いエネルギ状態へ遷移する電子からの光子放出である。物質に磁場を与えることによって、原子が特定の遷移状態に入る確率が大きく増大し、発する光の周波数に対する制御が可能となる。レーザ105からの光はコヒーレントに発する。これは、レーザ105からの光が一定の位相差、同一の周波数、及び同一の波形を有することを意味する。
【0026】
レーザ105は、ビームで犠牲基板115をアブレーションし、犠牲基板115のアブレーションに応じて過熱蒸気120を発生し、過熱蒸気120でガラスシート110の裏面をアブレーションし、これによってガラスシート110を切断し、更に、犠牲基板115のアブレーションに応じて粉末を発生することができる。場合によっては、犠牲基板115はアブレーションに基づいて燃焼する。空間コヒーレンスによってレーザ105を小さいエリアに集束することができ、これがレーザ焼成及び切断のような用途を可能とする。レーザ105は、
図2を参照して記載されるレーザ210の態様を組み込むことができる。
【0027】
基板115は、ガラスシート110をレーザ切断するために使用できる。例えば、基板115の上に切断対象のガラスシート110を配置し、ガラスシート110を介して基板115へレーザ105を誘導することができる。いくつかの例では、基板115は犠牲的であるか、再使用可能であるか、又はそれら双方であり得る(すなわち、場合によっては犠牲基板115は完全に消費される前に有限回数だけ使用され得る)。レーザ105はガラスシート110を通過し、ガラスシート110の下の基板115の極めて小さいエリアをアブレーション及び/又は燃焼させることができる。ガラスシート110上に残余粉末が存在する場合、残余粉末は超音波洗浄するか、又は布、溶媒、もしくはその双方でガラスシート110から拭き取ることができる。
【0028】
場合によっては、基板115は、特に残余粉末を生成するという理由で選択される。これは、残余粉末の生成がガラスシート110の切断において効果的である基板115に関連するである。基板115として様々な材料が使用され得る。任意選択的に、暗い色のセラミック、例えばラバストーン(lavastone)、ワンダーストーン(wonderstone)、及び窒化ケイ素は、他の材料よりも基板115として適切である場合がある。いくつかの場合、窒化ホウ素のような明るい色のセラミックは基板115としてあまり適切でないことがある。基板115として金属及び印刷紙も使用できる。基板115からの集束された過熱蒸気120は、ガラスシート110の裏面をアブレーションすることができる。
【0029】
図2は、本開示の態様に従った、YVO4レーザ210を用いたガラスの切断をサポートするレーザ制御装置205を含むガラス切断システムの
図200を示す。いくつかの例において、レーザ制御装置205は、レーザ210と、ガラス配置コンポーネント215と、ビーム位置決めコンポーネント220と、パルス化システム225と、ガラス洗浄コンポーネント230と、を含み得る。
【0030】
ガラスシートの切断は、レーザ210を用いて又は機械的な方法によって達成できる。機械的な切断方法は、ダイヤモンド又は焼結炭化物(carbide)のスクライビングホイールのようなツールを用いた直接アブレーションによってガラスシートにクラックを生成することを含み得る。スクライブの結果として、マイクロクラック、チッピング、及び低い切断精度が生じ得る。切断されたガラスシートの後処理は、機械的な切断方法によって生じた損傷を取り除くため時間のかかる方法を伴うことがある。
【0031】
レーザ210を用いてガラスシートを切断することができる。空間コヒーレンスによってレーザ210を小さいエリアに集束できる。場合によっては、レーザから発した光がガラスに吸収されて熱応力を生じ、ガラスを切断することがある。場合によっては、レーザがガラスを加熱し、ガラスが溶融して、明確でない丸くなったエッジを生じることがある。このため、炭酸ガス(CO2)レーザ等のいくつかのレーザは細かく精密な切断には適さない場合がある。例えば、CO2レーザの回折限界スポットサイズは約55μmであり、これよりも小さいフィーチャの切断が可能でないことがある。いくつかのレーザでは切断測度が限定され得る。
【0032】
例えば、CO2レーザは33mm/sの速度でしか切断を行えない可能性がある。従って、YVO4レーザ210を用いて薄いガラスシート(すなわち300μm厚さ未満)を切断することができる。
【0033】
いくつかの例では、YVO4レーザ210はパルス化され、1064nmの波長で光を発生できる。例えばレーザ210は、高い出力(~25W)及び10~30kHzでパルス化され得る。YVO4 1064nmレーザ210は、他のガラス切断レーザよりも著しく小さい1μm~5μmのスポットサイズを有し得る。この方法を用いて、ほとんど完璧な歩留まりで、25μmの薄さ、又は200μmの厚さのガラスを切断できる。また、この方法は、最大で90mm/sの速度で複雑な形状を切断できる。従って、YVO4レーザ210を用いると、多数の用途向けの超薄ガラスの歩留まり向上が可能となり得る。
【0034】
レーザ210は、以下のプロセスに従って薄いガラスシートを切断することができる。すなわち、ビームで犠牲基板をアブレーションし、犠牲基板のアブレーションに応じて過熱蒸気を発生し、過熱蒸気でガラスシートの裏面をアブレーションし、これによってガラスシートを切断する。場合によっては、レーザ210は犠牲基板のアブレーションに応じて粉末を発生させ得る。場合によっては、犠牲基板は燃焼する。レーザ210は、
図1を参照して記載されるレーザ105の態様を組み込むことができる。
【0035】
ガラス配置コンポーネント215は、表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置することができる。場合によっては、配置することは、ラバストーンの犠牲基板上にガラスを配置することを含む。場合によっては、配置することは、ワンダーストーンの犠牲基板上にガラスを配置することを含む。場合によっては、配置することは、窒化ケイ素の犠牲基板上にガラスを配置することを含む。場合によっては、配置することは、金属の犠牲基板上にガラスを配置することを含む。場合によっては、配置することは、紙の犠牲基板上にガラスを配置することを含む。配置コンポーネントは、ガラスがレーザによって切断されている間ガラスを所定位置に保持するよう設計された固定具とすることができる。
【0036】
ビーム位置決めコンポーネント220は、YVO4レーザ210からのビームをガラスシートの表面へ、更にガラスシートを通過するように誘導することができる。ビーム位置決めコンポーネント220は、ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度でガラスシート全体にわたって移動させることができる。場合によっては、この誘導は、YVO4レーザ210からのビームを、5マイクロメートル未満のスポットサイズを有する表面に誘導することを含む。ビーム位置決めコンポーネント220は、インターロックによって保護されたチャンバを含むことができ、この中で切断が行われる。チャンバは上部にレーザのための孔を含む。動作において、レーザはこのチャンバの上に配置され、この穴を覆っている。レーザは穴を介して切断を行う。
【0037】
パルス化システム225は、10kHzから30kHzの周波数で、犠牲基板において、ビームをパルス化することができる。
【0038】
ガラス洗浄コンポーネント230は、ガラスシートが切断された後、ガラスシートを超音波洗浄することができる。
【0039】
図3は、本開示の態様に従った、YVO4レーザを用いてガラスを切断するためのプロセスのフローチャート300を示す。
【0040】
いくつかの例において、ガラス切断システムは、記載される機能を実行するようにガラス切断システムの機能要素を制御するためのコードセットを実行できる。これに加えて又はこの代わりに、ガラス切断システムは専用ハードウェアを用いてこれらを実行することができる。
【0041】
ブロック305において、ガラス切断システムは、表面、裏面、及び厚さを有するガラスシートを、犠牲基板上に配置することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されたガラス配置コンポーネント215によって実行できる。
【0042】
ブロック310において、ガラス切断システムは、YVO4レーザからのビームを表面へ、更にガラスシートを通過するように誘導することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されたビーム位置決めコンポーネント220によって実行できる。
【0043】
ブロック315において、ガラス切断システムは、10kHzから30kHzの周波数で、犠牲基板において、ビームをパルス化することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されたパルス化システム225によって実行できる。
【0044】
ブロック320において、ガラス切断システムは、ビームを毎秒30ミリメートルから毎秒90ミリメートルの速度でガラスシート全体にわたって移動させることができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されるビーム位置決めコンポーネント220によって実行できる。
【0045】
ブロック325において、ガラス切断システムは、ビームで犠牲基板をアブレーションすることができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図1及び
図2を参照して記載されたレーザ105、210によって実行できる。
【0046】
ブロック330において、ガラス切断システムは、犠牲基板のアブレーションに応じて過熱蒸気を発生することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図1及び
図2を参照して記載されたレーザ105、210によって実行できる。
【0047】
ブロック335において、ガラス切断システムは、過熱蒸気でガラスシートの裏面をアブレーションすることができ、これによってガラスシートが切断される。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図1及び
図2を参照して記載されたレーザ105、210によって実行できる。
【0048】
図4は、本開示の態様に従った、YVO4レーザを用いてガラスを切断するためのプロセスのフローチャート400を示す。いくつかの例において、ガラス切断システムは、記載される機能を実行するようにガラス切断システムの機能要素を制御するためのコードセットを実行できる。これに加えて又はこの代わりに、ガラス切断システムは専用ハードウェアを用いてこれらを実行することができる。
【0049】
ブロック405において、ガラス切断システムはガラスシートを犠牲基板上に配置することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されたガラス配置コンポーネント215によって実行できる。
【0050】
ブロック410において、ガラス切断システムは、YVO4レーザからのビームを表面へ、更にガラスシートを通過するように誘導することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されたビーム位置決めコンポーネント220によって実行できる。
【0051】
ブロック415において、ガラス切断システムは犠牲基板においてビームをパルス化することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されたパルス化システム225によって実行できる。
【0052】
ブロック420において、ガラス切断システムはビームをガラスシート全体にわたって移動させることができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されるビーム位置決めコンポーネント220によって実行できる。
【0053】
ブロック425において、ガラス切断システムは、ビームで犠牲基板をアブレーションすることができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図1及び
図2を参照して記載されたレーザ105、210によって実行できる。
【0054】
ブロック430において、ガラス切断システムは過熱蒸気を発生することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図1及び
図2を参照して記載されたレーザ105、210によって実行できる。
【0055】
ブロック435において、ガラス切断システムは粉末を発生することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図1及び
図2を参照して記載されたレーザ105、210によって実行できる。
【0056】
ブロック440において、ガラス切断システムは、過熱蒸気でガラスシートの裏面をアブレーションすることができ、これによってガラスシートが切断される。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図1及び
図2を参照して記載されたレーザ105、210によって実行できる。
【0057】
ブロック445において、ガラス切断システムは、ガラスシートを切断した後、ガラスシートを超音波洗浄することができる。これらの動作は、本開示の態様に従って記載される方法及びプロセスに従って実行できる。例えばこれらの動作は、様々なサブステップから構成され得るか、又は本明細書に記載される他の動作と関連付けて実行され得る。いくつかの例において、記載される動作の態様は、
図2を参照して記載されたガラス洗浄コンポーネント230によって実行できる。
【0058】
本明細書において記載される機能ユニットのいくつかは、モジュール又はコンポーネントと称して、それらの実施の独立性を特に強調した。例えばモジュールは、カスタムVLSI(超大規模集積)回路もしくはゲートアレイを含むハードウェア回路として、又は、論理チップ、トランジスタ、もしくは他のディスクリートコンポーネントのような既製(off-the-shelf)半導体として、実施され得る。また、モジュールは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイ論理、プログラマブル論理デバイス等のプログラマブルハードウェアデバイスとしても実施され得る。
【0059】
また、モジュールは、様々なタイプのプロセッサにより実行されるソフトウェアにおいても実施され得る。識別された実行可能コードのモジュールは、例えば、オブジェクト、手順、又は関数として組織化され得るコンピュータ命令の1つ以上の物理ブロック又は論理ブロックを含むことができる。それにもかかわらず、識別されたモジュールの実行ファイルは、物理的に一緒に配置する必要はなく、異なる位置に記憶された異種の命令を含むことができ、これらは論理的に結び付いた場合にモジュールを構成し、モジュールのための上記の目的を達成できる。
【0060】
実際、実行可能コードのモジュールは、単一の命令又は多くの命令である可能性があり、いくつかの異なるコードセグメント間、異なるプログラム間、及びいくつかのメモリデバイス間に分散させることも可能である。同様に、本明細書においてオペレーショナルデータ(operational data)をモジュール内で識別及び説明し、任意の適切な形態で具現化すると共に任意の適切なタイプのデータ構造内で組織化することができる。オペレーショナルデータは、単一のデータセットとして収集されるか、又は異なるストレージデバイスを含む異なる位置に分散させることができ、少なくとも部分的に、単にシステム又はネットワーク上の電子信号として存在することができる。
【0061】
本明細書に開示される本発明について、その具体的な実施形態、例、及び用途によって記載したが、特許請求の範囲に述べられる本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変更及び変形を実施することができる。