IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日建設計総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社日建設計の特許一覧

特許7325947自律移動ロボット及びデータ計測システム
<>
  • 特許-自律移動ロボット及びデータ計測システム 図1
  • 特許-自律移動ロボット及びデータ計測システム 図2
  • 特許-自律移動ロボット及びデータ計測システム 図3
  • 特許-自律移動ロボット及びデータ計測システム 図4
  • 特許-自律移動ロボット及びデータ計測システム 図5
  • 特許-自律移動ロボット及びデータ計測システム 図6
  • 特許-自律移動ロボット及びデータ計測システム 図7
  • 特許-自律移動ロボット及びデータ計測システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】自律移動ロボット及びデータ計測システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230807BHJP
【FI】
G05D1/02 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018216908
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020086678
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】509221135
【氏名又は名称】株式会社日建設計総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】山村 真司
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 隆太
(72)【発明者】
【氏名】栄 千治
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503376(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に車輪を配置すると共に、駆動装置を配設した移動台車と、前記移動台車上に設置した支持台体と、前記支持台体に装備した計測装置と、前記移動台車を駆動すると共に、前記計測装置を作動する制御装置と、から構成される自律移動ロボットであって、
前記計測装置は、距離を計測するLIDAR(レーザー測距センサ)と、施設内の環境データを計測する環境データ計測装置と、から構成され、
前記制御装置は、前記自律移動ロボットを自律走行させる範囲の環境地図を作成する環境地図生成部と、この環境地図を格納する環境地図記憶部と、前記自律移動ロボットを自律走行させる走行経路を設定する走行経路生成部と、から構成され、
施設内の壁面、柱面に沿って前記自律移動ロボットを走行させ、前記LIDARにより前記自律移動ロボットと壁面、柱面との距離を計測することによって、前記環境地図生成部において、前記自律移動ロボットの移動履歴と、前記LIDARによる当該位置における壁面、柱面との距離計測値とを対応させて、環境地図データを作成し、この環境地図データを前記環境地図記憶部に格納し、
前記環境地図記憶部から前記環境地図データを取り出し、表示装置上に環境地図として表示させ、前記走行経路生成部において、前記自律移動ロボットの走行経路におけるスタート地点とゴール地点を設定し、さらに、走行経路における停止地点を設定して、スタート地点、停止地点、ゴール地点に至る走行経路を設定し、
前記自律移動ロボットを走行経路のスタート地点まで移動させ、自律走行モードに切換えることによって、前記自律移動ロボットは、前記LIDARにより施設内の壁面、柱面との距離を計測しつつ移動すると共に、前記環境地図における走行経路を参照することによって、走行経路における位置及び方向を自動認識し、前記停止地点に到達すると、所定時間停止して、当該位置における施設内の環境データを計測し、再度、移動を開始して走行経路に沿って走行し、前記ゴール地点に至って停止することを特徴とする自律移動ロボット。
【請求項2】
走行経路に沿って移動する途上において、人物、物体等の障害物が存在する場合には、前記LIDARがこれら障害物を検知して、前記自律移動ロボットは、当該障害物の周囲を迂回して移動していくことを特徴とする請求項1に記載の自律移動ロボット。
【請求項3】
前記停止地点に到達すると、前記自律移動ロボットは、所定時間停止して、温湿度センサ、照度センサによって、当該地点における温度、湿度及び照度を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の自律移動ロボット。
【請求項4】
請求項1に記載の自律移動ロボットと、コンピュータと、クラウドサーバと、これらを接続する通信回線と、から構成されるデータ計測システムであって、
前記コンピュータは、クラウドサーバを介して前記自律移動ロボットに、前記環境地図データ、前記走行経路データ、前記スタート地点、ゴール地点及び停止地点の位置データという設定情報を送信し、
反対に、前記自律移動ロボットは、クラウドサーバを介して前記コンピュータに、前記環境データ計測装置によって計測した、前記停止地点における施設内の環境データを送信することを特徴とするデータ計測システム。
【請求項5】
前記自律移動ロボットと前記クラウドサーバとを接続する通信回線は、一部を無線通信とする、インターネットであることを特徴とする請求項4に記載のデータ計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行させる範囲の環境地図を作成することができると共に、設定経路に従って自律走行することができる自律移動ロボット、及びその自律移動ロボットによって種々データを計測、収集するデータ計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院、介護施設等の医療福祉施設において、看護師、介護士等の労力を軽減するために、配給膳、寝具類、洗濯物等を搬送する自律移動ロボットが使用されるようになってきた。
自律移動ロボットは、さらに、病院、介護施設内に収容する患者、被介護者のバイタルサインデータの収集、空港、商業施設等における人流データの把握、不審者、徘徊者の特定にも利用されることが期待されている。
【0003】
この自律移動ロボットを利用するには、自律移動ロボットを走行させる範囲の環境地図を基に、自律移動ロボットを効率的に走行させる経路を設定し、その走行経路中においてデータ収集するための停止地点を決定しなければならない。
ここで、従来、自律移動ロボットを走行させ、その走行範囲の環境地図を自動的に作成する方法(特許文献1参照)、その環境地図を基に自律移動ロボットを効率的に走行させる経路を設定する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-260724号公報
【文献】特開平11-085273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1によれば、環境地図作成方法によって環境地図を作成し、さらに、上記特許文献2によれば、環境地図に基づいて走行経路を設定し、自律移動ロボットを走行させることができる。
しかし、その走行経路中において所定のデータを収集するためには、自律移動ロボットを停止する地点を決定し、又、その地点においてデータを効率的に計測、収集し、迅速に処理、分析できるようにする必要があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みて為されたものであって、自律移動ロボットを走行させる範囲の環境地図を作成し、自律移動ロボットを効率的に走行させる経路を設定し、その走行経路中においてデータ計測するための停止地点を決定し、かつ、その地点においてデータを効率的に計測、収集し、迅速に処理、分析できるようにした自律移動ロボット及びデータ計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の自律移動ロボットは、本体に車輪を配置すると共に、駆動装置を配設した移動台車と、前記移動台車上に設置した支持台体と、前記支持台体に装備した計測装置と、前記移動台車を駆動すると共に、前記計測装置を作動する制御装置と、から構成される自律移動ロボットであって、
前記計測装置は、距離を計測するLIDAR(レーザー測距センサ)と、施設内の環境データを計測する環境データ計測装置と、から構成され、
前記制御装置は、前記自律移動ロボットを自律走行させる範囲の環境地図を作成する環境地図生成部と、この環境地図を格納する環境地図記憶部と、前記自律移動ロボットを自律走行させる走行経路を設定する走行経路生成部と、から構成され、
施設内の壁面、柱面に沿って前記自律移動ロボットを走行させ、前記LIDARにより前記自律移動ロボットと壁面、柱面との距離を計測することによって、前記環境地図生成部において、前記自律移動ロボットの移動履歴と、前記LIDARによる当該位置における壁面、柱面との距離計測値とを対応させて、環境地図データを作成し、この環境地図データを前記環境地図記憶部に格納し、
前記環境地図記憶部から前記環境地図データを取り出し、表示装置上に環境地図として表示させ、前記走行経路生成部において、前記自律移動ロボットの走行経路におけるスタート地点とゴール地点を設定し、さらに、走行経路における停止地点を設定して、スタート地点、停止地点、ゴール地点に至る走行経路を設定し、
前記自律移動ロボットを走行経路のスタート地点まで移動させ、自律走行モードに切換えることによって、前記自律移動ロボットは、前記LIDARにより施設内の壁面、柱面との距離を計測しつつ移動すると共に、前記環境地図における走行経路を参照することによって、走行経路における位置及び方向を自動認識し、前記停止地点に到達すると、所定時間停止して、当該位置における施設内の環境データを計測し、再度、移動を開始して走行経路に沿って走行し、前記ゴール地点に至って停止することを特徴とする。
【0008】
ここで、走行経路に沿って移動する途上において、人物、物体等の障害物が存在する場合には、前記LIDARがこれら障害物を検知して、前記自律移動ロボットは、当該障害物の周囲を迂回して移動していくことを特徴とする。
【0009】
又、前記停止地点に到達すると、前記自律移動ロボットは、所定時間停止して、温湿度センサ、照度センサによって、当該地点における温度、湿度及び照度を測定することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のデータ計測システムは、請求項1に記載の自律移動ロボットと、コンピュータと、クラウドサーバと、これらを接続する通信回線と、から構成されるデータ計測システムであって、
前記コンピュータは、クラウドサーバを介して前記自律移動ロボットに、前記環境地図データ、前記走行経路データ、前記スタート地点、ゴール地点及び停止地点の位置データという設定情報を送信し、
反対に、前記自律移動ロボットは、クラウドサーバを介して前記コンピュータに、前記環境データ計測装置によって計測した、前記停止地点における施設内の環境データを送信することを特徴とする。
【0011】
ここで、前記自律移動ロボットと前記クラウドサーバとを接続する通信回線は、一部を無線通信とする、インターネットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自律移動ロボットによれば、自律移動ロボットを走行させる範囲の環境地図を作成し、自律移動ロボットを効率的に走行させる経路を設定し、その走行経路中においてデータ計測するための停止地点を決定し、かつ、その地点においてデータを効率的に計測、収集し、迅速に処理、分析することができる。
【0013】
又、本発明のデータ計測システムによれば、前記自律移動ロボットを使用して、その走行経路中におけるデータ、及び、停止地点におけるデータを効率的に計測、収集し、迅速に処理、分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の自律移動ロボットの外観斜視図である。
図2図1に示す自律移動ロボットの制御装置の概略構成図である。
図3】リモートコントローラーによって自律移動ロボットを移動させる状態を示す説明図である。
図4】作成した環境地図の一実施例を示す平面図である。
図5】自律移動ロボットの位置及び方向を推定する方法を示す平面図である。
図6】自律移動ロボットが障害物体を回避する方法を示す平面図である。
図7】自律移動ロボットの走行経路及び停止位置を示す平面図である。
図8】データ計測システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明の自律移動ロボットの好適な実施形態について、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本発明の自律移動ロボット1は、図1に示すように、移動台車2と、支持台体3と、計測装置4と、制御装置5と、から構成される。
【0017】
移動台車2は、本体21の左右両側に車輪22,22を、前側に小車輪23を配置し、本体21に駆動装置24を載置してある。
【0018】
支持台体3は、支持板31,32,33を支持脚34,35,36によって連結したものである。
【0019】
計測装置4は、LIDAR(レーザー測域センサ)41と、温湿度センサ42と、照度センサ43と、から構成される。
【0020】
制御装置5は、図2に示すように、環境地図生成部51と、環境地図記憶部52と、走行経路生成部53と、駆動制御部54と、データ収集部55、通信制御部56と、から構成される。
【0021】
先ず、環境地図の作成方法について、図面を参照して説明する。
【0022】
図3に示すように、操作者は、リモートコントローラー6を把持し、操作して、病院、介護施設、空港、商業施設等の施設内の壁面、柱面に沿って、自律移動ロボット1を走行させる。
【0023】
このとき、自律移動ロボット1は、LIDAR(レーザー測域センサ)41によって自律移動ロボット1と壁面、柱面との距離を計測するから、環境地図生成部51において、自律移動ロボットの移動履歴と当該位置における距離計測値とを対応させ、図4に示すように、自律走行させる範囲の環境地図が作成される。
【0024】
作成された環境地図データは、一旦、環境地図記憶部52に格納されるが、適宜、コンピュータ7からの指令によって、環境地図記憶部52から環境地図データを取り出し、表示装置71上に環境地図として表示できるようになっている。
【0025】
次に、走行経路の設定方法について、図面を参照して説明する。
【0026】
操作者は、コンピュータ7の入力装置72を操作し、環境地図記憶部52から環境地図データを取り出し、図7に示すように、表示装置71上に環境地図を表示させる。
【0027】
そして、図7に示すように、スタートとゴール地点を設定し、さらに、走行経路における停止地点を設定すれば、走行経路生成部53において、スタート地点、停止地点、ゴール地点に至る走行経路が設定される。
【0028】
次に、操作者は、リモートコントローラー6を操作して、自律移動ロボット1をスタート地点まで移動させる。
そして、自律移動ロボット1を自律走行モードにすれば、自律移動ロボット1は、前記走行経路に沿って走行していく。
【0029】
このとき、自律移動ロボット1は、図5及に示すように、LIDAR41によって壁面、柱面との距離を計測しつつ移動するから、環境地図を参照することによって、自律移動ロボット1の位置及び方向を自動認識することができる。
【0030】
走行経路に沿って移動する途上において、図6に示すように、人物、物体等の障害物が存在する場合には、LIDAR41がこれら障害物を検知して、障害物の周囲を迂回して移動していく。
【0031】
そして、図7に示すように、停止地点に到達すると、自律移動ロボット1は、所定時間停止し、温湿度センサ42、照度センサ43によって、当該地点における温度、湿度及び照度を測定する。
【0032】
その後、自律移動ロボット1は、再度、移動を開始し、走行経路に沿って走行し、ゴール地点に至って停止する。
【0033】
次に、本発明のデータ計測システムの好適な実施形態について、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
本発明のデータ計測システム100は、図8に示すように、自律移動ロボット1と、コンピュータ7と、クラウドサーバ101と、これらを接続する通信回線102,103と、から構成される。
【0035】
ここで、自律移動ロボット1は自律走行するから、自律移動ロボット1とクラウドサーバ101とを接続する通信回線102は、一部を無線通信とする、インターネットとしてある。
一方、コンピュータ7とクラウドサーバ101とを接続する通信回線103は、全部を有線通信とする、インターネットとしてもよい。
【0036】
よって、コンピュータ7は、クラウドサーバ101を介して、自律移動ロボット1に、
環境地図データ、走行経路データ、スタート、ゴール、停止地点のデータ等、設定情報を送信する。
【0037】
反対に、自律移動ロボット1は、クラウドサーバ101を介して、コンピュータ7に、
走行経路の途上における、又、停止地点における温度、湿度、照度等の各種センサデータを送信する。
【0038】
このようにして、データ計測システム100は、一日の所定時刻に、又、年間の所定月日に、自律移動ロボット1を病院、介護施設、空港、商業施設等の施設内で走行させて、種々データを収集すれば、一日の時刻、年間の月日に対応、最適化させた、空調、照明制御等を実施することができる。
【0039】
尚、計測、収集するデータは、温度、湿度、照度等に限定されるものではなく、CO2濃度、PM2.5濃度等の健康環境データ、体表面温度、脈拍、心拍等のバイタルサインデータ等であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 自律移動ロボット
2 移動台車
3 支持台体
4 計測装置
41 LIDAR
42 温湿度センサ
43 照度センサ
5 制御装置
51 環境地図生成部
52 環境地図記憶部
53 走行経路生成部
7 コンピュータ
71 表示装置
100 データ計測システム
101 クラウドサーバ
102 通信回線
103 通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8