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特許7325953骨固定装置、および、器具と骨固定装置とのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】骨固定装置、および、器具と骨固定装置とのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018236572
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2019111331
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】17210500.9
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/609,862
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトホルト・ダネッカー
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0015576(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0214084(US,A1)
【文献】米国特許第05549608(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0149887(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0173819(US,A1)
【文献】特開2017-023741(JP,A)
【文献】特開2014-012136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定装置であって、
骨固定要素(1)にロッド(6)を連結するための受け部(5,5′)を備え、前記受け部(5,5′)は、第1端部(5a)と、第2端部(5b)と、前記第1端部(5a)と前記第2端部(5b)との間に延在する中心軸(C)と、ロッド(6)を受けるための窪み(53)とを含み、前記窪み(53)により、2つの開いた脚部(53a,53b)が形成されており、前記脚部は固定要素(9)と協働するように構成されており、前記受け部(5,5′)はさらに、骨固定要素(1)のヘッド(3)を回動可能に保持するためのヘッド受け部分(54,54′)を前記第2端部(5b)に含み、前記ヘッド受け部分(54,54′)は、少なくとも部分的に可撓性があり、前記ヘッドを挿入するための開口部を前記第2端部(5b)に有しており、前記骨固定装置はさらに、
前記ヘッド受け部分(54,54′)のまわりに少なくとも部分的に取付けられるロックリング(8)を備え、前記中心軸(C)を中心とした前記ロックリングの回転移動が前記ヘッド受け部分(54,54′)を圧縮させる力をもたらし、
前記ロックリング(8)が前記ヘッド受け部分(54,54′)のまわりにある場合、前記ロックリング(8)は、前記ヘッド(3)がロックされるように前記ロックリング(8)が前記ヘッド受け部分(54,54′)に対して力を加えるロック位置と、前記ヘッド(3)が前記受け部(5,5′)に対して回動可能となる非ロック位置とを取ることができ、前記ロックリングは、前記ロック位置と前記非ロック位置との間および前記非ロック位置と前記ロック位置との間で回転可能であり、
前記ロックリング(8)は、前記受け部(5,5′)の前記ヘッド受け部分(54,54′)のまわりに前記ロックリング(8)が取付けられたときに前記受け部(5,5′)に面する第1の端部を含み、前記ロックリング(8)は前記第1の端部とは反対側の第2の端部(8b)を含み、
前記ロックリング(8)は、前記ロックリング(8)の前記第1の端部に向かう方向に開いている少なくとも1つの切欠(85)を含み、前記少なくとも1つの切欠(85)は、前記中心軸(C)に対して傾斜された態様で前記第2の端部(8b)に向かって延在し、
前記切欠(85)は、前記ロックリング(8)を回転させるための器具の突起(105)によって係合されるように構成される、骨固定装置。
【請求項2】
前記ロックリング(8)は内面(82)を含み、前記ヘッド受け部分(54,54′)は外面を含み、前記内面は第1係合構造を有し、前記第1係合構造は、前記非ロック位置において前記ヘッド受け部分(54,54′)の前記外面上の第2係合構造と協働する、請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項3】
前記第1係合構造は、前記外面において少なくとも1つの窪みを含み、前記内面(82)において少なくとも1つの突起を含む、請求項2に記載の骨固定装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの窪みが複数の溝(54b)である、請求項3に記載の骨固定装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの突起が複数の隆起(82b)である、請求項3または4に記載の骨固定装置。
【請求項6】
前記ヘッド受け部分(54,54′)において少なくとも部分的に収容されるとともに前記ヘッド(3)に対して圧力を加えるように構成された圧力部材(7,7′)をさらに備え、前記圧力部材(7,7′)は、固定要素(9)によって前記ヘッド(3)に対して加えられた力を伝達するように構成される、請求項1からのいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項7】
前記ロックリング(8)は、前記骨固定装置の外側部分を形成する、請求項1からのいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項8】
前記脚部(53a,53b)の各々は、前記脚部の高さを低くするために前記脚部の上方部分(530a,530b)を分離させることを可能にする、受け部(5)の外表面の円周溝(5c)を含む弱化部分(5c)を備え、前記脚部の前記上方部分は前記円周溝(5c)よりも上方に延在する、請求項1からのいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項9】
分離されるべき前記上方部分(530a,530b)内に延在する雌ねじ(52)が前記脚部(53a,53b)上に設けられている、請求項に記載の骨固定装置。
【請求項10】
骨に係止するためのシャンク(2)と前記ヘッド(3)とを有する骨固定要素(1)をさらに備え、前記骨固定要素(1)の前記ヘッド(3)が、前記受け部(5,5′)の前記第2端部(5b)において、前記ヘッド受け部分(54,54′)内で回動可能に保持される、請求項1からのいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項11】
前記ヘッドは球形の外面部分を有する、請求項10に記載の骨固定装置。
【請求項12】
器具と請求項1から11のいずれか1項に記載の骨固定装置とのシステムであって、前記器具は、
前記ロックリング(8)に係合するように構成された外管(100)と、
前記外管(100)に少なくとも部分的に設けられる内管(120)とを備え、前記内管(120)は、前記受け部(5,5′)に係合するように構成されており、
前記外管(100)は、前記外管(100)が前記ロックリング(8)に係合して前記内管(120)が前記受け部(5,5′)に係合したときに、前記受け部(5,5′)に対して前記ロックリング(8)を移動させるように前記内管(120)に相対的にずらすことができ、
前記外管(100)および前記ロックリング(8)は、前記外管(100)の軸方向移動が結果として前記ロックリング(8)の回転移動をもたらすような態様で協働するように構成され、
前記外管(100)は、前記外管(120)の軸方向移動を前記ロックリング(8)の回転移動に変換するために前記ロックリングのうち軸方向に傾斜した切欠(85)において案内される突起(105)を含み、
前記内管(120)および前記外管(100)は、互いに対して、前記受け部の第1端部と第2端部との間に延びる中心軸の方向に案内される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸骨固定装置、および、多軸骨固定装置と当該装置と共に用いられる器具とのシステムに関する。より特定的には、骨固定装置は、骨固定要素にロッドを連結するための受け部と、ヘッドをロックするとともに、たとえば器具を介してこのロックを解除するためのロックリングとを含む。
【背景技術】
【0002】
このタイプの多軸骨固定装置はUS2017/0020574A1から公知である。公知の多軸骨固定装置は、ロッド受け部分と骨固定要素のヘッドを挿入してクランプするための可撓性のあるヘッド受け部分とを備えた受け部を含む。さらに、ヘッドをロックするためにヘッド受け部分のまわりに配置されるように構成されたロックリングが設けられている。受け部は第1係合構造を含み、ロックリングは第2係合構造を含む。係合構造は、ロック位置から、挿入されたヘッドが回動可能となる位置に向かって中心軸に沿って受け部に対してロックを移動させるために器具によって係合されるように構成されている。
【0003】
US2016/0331412A1は、骨固定要素にロッドを連結するための連結装置を開示する。連結装置は、骨固定要素のヘッドを収容するための収容空間を規定する受け部を含む。連結装置はさらに、収容空間に少なくとも部分的に配置されるとともに挿入されたヘッドをクランプするための可撓性のある部分を有する圧力要素と、圧力要素のうち可撓性のある部分のまわりに少なくとも部分的に延在するクランプ要素とを備える。クランプ要素は、第1位置から、クランプ要素が圧力要素に対してクランプ力を加える第2位置へと移動するように構成されている。この移動は中心軸を中心としてクランプ要素を回転させることを含む。
【0004】
WO2016/170452A1は、少なくとも1つの接続棒材と、「チューリップ」型およびいわゆる「多軸」型の少なくとも1つの固定部材とを含む椎骨用骨接合器具を開示している。固定部材は、本体と、接続棒材のための係合ダクトを形成するヘッドとを含む。当該ヘッドは当該本体に対して関節接合されている。固定部材はさらに、ヘッドに対して角度を付けて移動するリングを含む。リングは、ヘッドの軸に沿った第1位置およびヘッドの軸に沿った第2位置を取ることができる。第1位置においては、ヘッドが本体に対して関節式に移動可能である。第2位置においては、ヘッドが本体に対して移動不可能となるかまたは実質的に移動不可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US2017/0020574A1
【文献】US2016/0331412A1
【文献】WO2016/170452A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
脊椎手術においては、しばしば、脊椎ロッドおよび多軸骨固定具を用いて、脊柱の複数の部分を補正および/または安定化しなければならない。このような手順中に、多軸骨固定装置の受け部に対して骨固定要素およびロッドを繰返し調整することが必要になるかもしれない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、手術中に安全かつ利便性の高い操作を可能にするさらに改善された多軸骨固定装置を提供すること、ならびに、このような多軸骨固定装置およびこれと共に用いられるように適合された器具からなるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の多軸骨固定装置によって、また、請求項12に記載の器具と多軸骨固定装置とのシステムによって解決される。さらなる展開例が従属請求項において提供される。
【0009】
多軸骨固定要素は、受け部に対して或る角度位置でロックすることができ、ロッドの固定とは別個に、その角度位置からロック解除することができる。したがって、ヘッドのロックを維持することができるとともに、ロッドの位置を調整することができる。
【0010】
ヘッドのロックは、中心軸を中心としてロックリングを一方向に回転させることによって達成され、ロック解除は、ロックリングを反対方向に回転させることによって達成される。このような設計であれば、薄型にするために、ヘッド受け部分の大きさを軸方向に小さくすることもできる。さらなる臨床上の利点として、ヘッドをロックするためにロックリングを下方向に移動させる必要がなくなるので、ヘッドをロックする際に椎骨に対して加えられる圧力を減らすことができる点が挙げられる。さらに、ロックリングおよびヘッド受け部分のそれぞれの2つのテーパ面が係合することによってロックが実現されるような公知の装置と比べて、ロック解除するのに必要な力が少なくて済む。
【0011】
手術中における骨固定要素のロックおよびロック解除はまた、ロッドが挿入されていない状態で、または、ロッド受け窪みの底部から距離を空けて受け部において高い位置にある状態で、行なわれてもよい。これにより、手術中に補正工程を行なう可能性が高くなる。
【0012】
付加的に、ヘッドに対して圧力を加えるための圧力部材が設けられている場合、クランプ力がヘッドに対してより有効に分散され得る。さらに、ロッドをロックする際に、圧力部材に対してロッドによって加えられる圧力がヘッドに対するロック力をさらに高める可能性もある。
【0013】
脚部は各々、延在タブを形成する分離可能部分を含み得る。延在タブは、手術中に多軸骨固定装置を利便性良く操作することを可能にする。さらに、延在タブは、インプラントまたは器具の部品を移植部位にまで案内および/または供給することを可能にする。これは、低侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)の場合には特に有用である。延在タブは、ヘッドおよびロッドをロックした後に折取られてもよい。
【0014】
器具は、下方移動がヘッドのロックに関連付けられているとともに上方移動が受け部におけるヘッドのロック解除に関連付けられているので、操作するのに利便性が良い。さらに、ロッドおよび固定要素が受け部のチャネルに既に挿入されているがロッドがまだ固定されていない場合であっても、当該器具を用いることができる。これにより、当該器具を用いて、受け部に骨固定要素を一時的にロックすることができる。骨固定要素のヘッドが受け部においてロックされており、ロッドが依然として移動可能である場合、器具を備えた骨固定装置を、挿入されたロッドに向かって引張り、これにより、堆骨の位置を補正するために関連する堆骨をロッドに向かって引張ることもできる。したがって、多軸骨固定装置は、手術中に角度位置および/またはロッド位置のさまざまな調整および再調整を可能にする。
【0015】
多軸骨固定装置は、骨固定要素が最初に骨に挿入され、その後、ロックリングを備えた受け部が骨固定要素のヘッド上に取付けられるような態様で、ボトムローディング式骨固定装置として用いられてもよい。さらに多軸骨固定装置の場合、実際の臨床上の要件に応じて、必要に応じてさまざまな固定要素を受け部と組合わせることを可能にするモジュラーシステムが設けられてもよい。これにより、多軸ねじを用いる際の全体的費用が削減され、在庫が削減され、より広範かつより多用途なインプラントの選択肢が外科医に与えられる。
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面を参照した実施形態の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】多軸骨固定装置の実施形態を示す分解斜視図である。
図2図1の多軸骨固定装置を組立てられた状態で示す斜視図である。
図3図1および図2の多軸骨固定装置を、器具の一部と共に組立てられた状態で示す、ロッド軸に対して垂直であるとともに中心軸を通って延在する平面に沿った断面図である。
図4図1図3の多軸骨固定装置を組立てられた状態で示す別の斜視図である。
図5図1図4の多軸骨固定装置の上方から見た受け部を示す斜視図である。
図6a図5の受け部を底から見た斜視図である。
図6b図6aの詳細を示す拡大図である。
図7図5図6aおよび図6bの受け部を示す上面図である。
図8図7における線A-Aに沿って図5図7の受け部を示す断面図である。
図9図1図4の多軸骨固定装置のロックリングを上から見た斜視図である。
図10図9のロックリングを底から見た斜視図である。
図11図9および図10のロックリングを示す上面図である。
図12図11における線B-Bに沿った、図9図11のロックリングを示す断面図である。
図13図1図4の多軸骨固定装置の圧力部材を上から見た斜視図である。
図14図1図4の圧力部材を底から見た斜視図である。
図15図13および図14の圧力部材を示す上面図である。
図16図15における線D-Dに沿った図13図15の圧力部材を示す断面図である。
図17図1図4に記載の多軸骨固定装置と共に用いられる器具の外管の前方部分を側面から示す斜視図である。
図18図17に記載の外管の前方部分を底から見た斜視図である。
図19図17および図18に記載の外管の前方部分を示す、外管の中心長手方向軸と外管の対向アーム同士の中心とを通って延在する平面に沿った断面図である。
図20図1図4に記載の多軸骨固定装置と共に用いられる器具の内管の前方部分を側面から見た斜視図である。
図21図20に示される前方部分を底から見た斜視図である。
図22図20および図21に示される器具の内管の前方部分を示す、器具の中心長手方向軸と内管のアーム同士の中心とを通って延在する平面に沿った断面図である。
図23】多軸骨固定装置および器具の一部を、挿入されたロッドの長手方向軸に沿って示す側面図である。
図24図23における線E-Eに沿って図23の多軸骨固定装置を示す拡大断面図である。
図25a図1図4に記載の実施形態の多軸骨固定装置を堆骨に挿入された状態で示す断面図である。
図25b図1図4に記載の実施形態の多軸骨固定装置を堆骨に挿入された状態で示す斜視図である。
図26】内管を取付ける工程中における図25aおよび図25bの多軸骨固定装置を器具の内管の一部と共に示す断面図である。
図27a図26の多軸骨固定装置を、受け部に固定された器具の内管と共に示す断面図である。
図27b図26の多軸骨固定装置を、受け部に固定された器具の内管と共に示す斜視図である。
図28a】器具の外管を取付ける第1工程中における図27aおよび図27bの多軸骨固定装置を示す断面図である。
図28b】器具の外管を取付ける第1工程中における図27aおよび図27bの多軸骨固定装置を示す斜視図である。
図29a図28aおよび図28bにおける多軸骨固定装置を、外管を90°だけ回転させた状態で示す断面図である。
図29b図28aおよび図28bにおける多軸骨固定装置を、外管を90°だけ回転させた状態で示す斜視図である。
図30a図29aおよび図29bにおける多軸骨固定装置を、外管を第1距離だけ下方向に移動させた状態で示す断面図である。
図30b図29aおよび図29bにおける多軸骨固定装置を、外管を第1距離だけ下方向に移動させた状態で示す斜視図である。
図31a図30aおよび図30bにおける多軸骨固定装置を、外管が最低位置にある状態で示す断面図である。
図31b図30aおよび図30bにおける多軸骨固定装置を、外管が最低位置にある状態で示す斜視図である。
図32図31aにおける多軸骨固定装置を、ロッドおよび固定ねじが挿入された状態で示す断面図である。
図33図31bにおける多軸骨固定装置を、外管を上方向に移動させた状態で示す断面図である。
図34】多軸骨固定装置のさらなる実施形態を器具の一部と共に示す、挿入されたロッドの長手方向軸に対して垂直に延在するとともに受け部の中心を通って延在する平面に沿った断面図である。
図35図34の多軸骨固定装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図4に示されるように、本発明の一実施形態に従った多軸骨固定装置は骨固定要素1を含む。骨固定要素1は、たとえば骨ねじの形状であって、ねじ部分を備えたシャンク2と、球状に形作られた外面部分を備えたヘッド3とを有する。ヘッド3は、ドライバと係合させるための窪み4を有していてもよい。骨固定装置はまた、骨固定要素1に接続されるべきロッド6を受けるための受け部5を含む。加えて、骨固定要素1のヘッド3に対して圧力を加えるための圧力部材7が受け部5に設けられていてもよい。さらに、骨固定装置は、ヘッド3に対して圧力を加えるために受け部5の一部を圧縮するためのロックリング8を含む。ロックリング8は受け部5に取付け可能である。最後に、骨固定要素はまた、たとえば、受け部5にロッドを固定するための内ねじまたは止めねじの形状をした固定要素9を含む。
【0019】
図5図8を付加的に参照して、受け部5をより詳細に記載することとする。受け部5は、上方端部または第1端部5aと、反対側に下方端部または第2端部5bと、第1端部5aおよび第2端部5bを通過する中心軸Cとを備える。通路51は、第1端部5aから受け部5を通って第2端部5bにまで延在する。通路51は、異なる直径を有するいくつかの区域を有していてもよい。第1端部5aを始端として第1端部5aから距離を空けて延在する1つの区域においては、通路51は同軸ボア51aとして形成されており、その少なくとも一部に雌ねじ52が設けられていてもよい。通路51はさらに、骨固定装置のヘッド3および圧力部材7のうち少なくとも一部を収容する役割を果たす収容空間51b内へと広がっていてもよい。第2端部5bにおいてまたはその付近において、収容空間51bが第2端部5bに向かって狭窄して狭窄部分51cとなる。狭窄部分51cは先細にすることができ、より具体的には、円錐状に先細にすることができるか、または、別の形状になるよう狭窄させることもできる。第2端部5bにおいて通路51によって規定される開口部は、骨固定要素1のヘッド3を通過させるように構成されており、これにより、骨固定装置がボトムローディング式多軸骨固定装置として用いることができるようになる。
【0020】
実質的にU字型であり得る窪み53は、第1端部5aから第2端部5bの方向に延在する。この場合、窪み53の幅は、ロッド6を窪み53に配置してその内部を案内することができるように、ロッド6の直径よりもわずかに大きくなっている。これにより、窪み53は、ロッド6のためのロッド受け窪みまたはチャネルを形成する。窪み53により、2つの自由な脚部53a、53bが形成され、その上に、雌ねじ52が少なくとも部分的に位置している。雌ねじ52は、たとえば、メートルねじ、角ねじ、負角ねじ、鋸歯ねじまたは他の如何なるねじ形状であってもよい。好ましくは、角ねじまたは負角ねじなどのねじ形状は、固定要素9がねじ留めされる際に脚部53a、53bが広がるのを防止するかまたは抑制するために用いられる。
【0021】
脚部53a、53bの一部を分離させるかまたは折り取ることを可能にする弱化区域が、第1端部5aから距離を空けて設けられている。弱化区域は、受け部5の外面上に円周方向溝5cを含む。円周方向溝5cは、脚部53a、53bを、溝5cの上方に延在する第1部分または上方部分530a、530bと、溝5cの下方において窪み53の基部にまで延在する第2部分または下方部分531a、531bとに分割する。溝5cにおいて、脚部53a、53bの壁厚が薄くなっている。これにより、上方部分530a、530bは、それぞれ、骨固定装置の延在タブとも称される延在脚部を形成する。このような延在タブは、患者の皮膚下の移植部位における骨固定具1にまでインプラント要素(たとえば、ロッド6または固定要素9)を案内するために、たとえば低侵襲手術(MIS)の際に経路を規定するのに特に適しているかもしれない。上方部分530a、530bを下方部分531a、531bから分離することを可能にするために弱化区域を設けるための他の手段、たとえば穿孔などが企図されてもよい。
【0022】
雌ねじ52は、固定要素9を同軸ボア51aによって規定された経路に沿ってねじ込むことができるように、脚部53a、53bの上方部分530a、530bおよび下方部分531a、531bのうち少なくとも一部に沿って設けられている。窪み53の深さは、ロッド6が窪み53に配置されて固定要素9が脚部53aと53bとの間にねじ留められる場合、脚部の上方部分530a、530bが折取られたときに固定要素9が実質的に受け部5から突出さないような深さにされている。
【0023】
脚部53a、53bを含む受け部5の上方部分50はロッド受け部分を形成する。受け部5の上方部分50と第2端部5bとの間に、受け部5のうち収容空間51bを含むヘッド受け部分54が設けられている。ヘッド受け部分54の最大外側幅は上方部分50の下方端部50aにおける受け部5の幅よりも短くなっており、これにより、ロッド受け部分の下方端部50aが肩部を形成することとなる。ヘッド受け部分54は、第2端部5bにおいて、外側に突出るリム55を備えた実質的に円筒形の外面部分を含む。外側に突出るリム55は、ロックリング8が受け部5の上に取付けられると不用意に取り外すことができなくなるように、ロックリング8のための止め部を形成している。さらに、ヘッド受け部分54の円筒形部分の軸方向長さは、ロックリング8の主部分の高さに実質的に対応しており、このため、実際に取付けられたロックリング8は軸方向に移動できなくなる。
【0024】
ヘッド受け部分54は可撓性があり、特に、中心軸Cに向けられる力の作用を受けて圧縮可能である。図示される実施形態においては、ヘッド受け部分54は、複数の可撓性のある壁区域54aから構成されている。複数の可撓性のある壁区域54aは、中心軸Cに対して実質的に平行に延在するとともに第2端部5bに向かって開いているスリット56によって隔てられている。スリット56の数および大きさはヘッド受け部分54の所望の可撓性に応じて選択される。ヘッド受け部分54に可撓性があるために、第2端部5bにおける開口部も拡張させたり圧縮させたりすることができる。より詳細には、開口部の大きさは、ヘッド3が入り込んで弾力的に元の状態に跳ね戻ってくる際に可撓性のある壁区域54aがばらばらに広げられるような大きさにされている。
【0025】
ここで図6aおよび図6bをより詳細に参照すると、好ましくは可撓性のある壁区域54aの各々の外面上に、長手方向に延在する溝54bが設けられている。溝54bは、好ましくは中心軸Cに対して平行に延びており、好ましくは、中心軸Cを中心とした円周方向に見たときに可撓性のある壁区域54aの中心に位置している。溝54bは、以下に記載されるロックリング8の一部と協働するための役割を果たす。外側に突出るリム55上において、溝54bが円周方向に広がって幅広部分54cを形成している。これらの幅広部分54cは、ロックリング8の取付けを容易にし得る。実施形態においては、各々の可撓性のある壁区域54aが溝54bを含む一方で、ロックリング8を回転させるときにロックリング8がヘッド3および/または圧力部材7に対して圧力を加えることを可能にするために、可撓性のある壁区域54aがこのような溝54bを少なくとも1つまたはより少ない数(たとえば、1つおきに)含んでいれば十分であることに留意されたい。溝54bは浅くてもよく、円筒セグメント形状の断面を有していてもよいが、ロックリング8に設けられている対応する構造を把持したり解放したりすることを可能にする他の断面を有していてもよい。
【0026】
上方部分50の外面は実質的に円筒形である。脚部の上方部分530a、530bの領域において、外径は、上方部分50の下方端部50aに隣接する領域よりも小さくてもよい。溝5cの下方において、各々の脚部上には、円周方向に延在する係合窪み57が上方部分50の外面上に設けられている。係合窪み57は、器具(より特定的には器具の内管)との係合のための役割を果たす。好ましくは、係合窪みは、U字型の窪み53から距離を空けて両側において終端している。
【0027】
最後に、通路51の内壁上に、圧力部材のための2つの止め部が設けられている。第1止め部は、雌ねじ52の下方に位置する第1円周方向溝58aの上方壁によって形成されている。第1止め部は、ヘッド3が挿入されると、圧力部材7の上方移動を妨げる。第2止め部は、第2円周方向溝58bによって、第1溝58aから第2端部5bに向かう方向に距離を空けて設けられている。第2止め部は、以下により詳細に記載されるように、圧力部材7が下方位置、特にロック前位置にある場合、圧力部材7の上方移動を妨げる。付加的には、アンダーカット58cが雌ねじ52の下方端部に設けられていてもよい。
【0028】
さらに、受け部5の壁において、より具体的には、上方部分50の壁において、少なくとも1つ、好ましくは2つの穴59が設けられてもよく、穴59は、圧力部材7に係合するためにピン509などの固定部材を挿入するための役割を果たし得る。これらの穴59は、ロッド受け窪み53から実質的に90°ずつ空けて互いの反対側に位置していてもよい。
【0029】
図9図12を付加的に参照してロックリング8をより詳細に記載することとする。ロックリング8は、第1端部8aの上方端部と反対側の第2端部8bの下方端部とを含むとともに、第1端部8aと第2端部8bとの間に、第2端部8bに向かって狭くなる実質的に球形の外面81を有していてもよい。第1端部8aにあるかまたは第1端部8aに隣接する球面81の外径は、ロックリング8が受け部5のヘッド受け部分54のまわりに取付けられている場合に、確実にコンパクトに設計するためにロックリングが受け部5の上方部分50から実質的に外側に突出さないような大きさにされ得る。しかしながら、ロックリング8の外面81の形状が他の実施形態において異なり得ることにも留意されたい。たとえば、外面81は円筒形または別の形状を有していてもよい。第1端部8aと第2端部8bとの間のロックリングの軸方向高さは、クランプリングが上方部分50の下方端部50aと外側に突出るリム55との間において受け部5のヘッド受け部分54上に嵌まるような大きさにされている。
【0030】
特に図12から分かるように、ロックリング8は、上方端部8aに隣接しているかまたは実質的に隣接している内側円筒面部分82を有する。内側円筒面82上において、複数の長手方向の突起または隆起82bは、ロックリング8が受け部5上に取付けられたときに中心軸Cに対して平行な軸方向に延在するように形成される。隆起82bは、円周方向において等距離に間隔を空けて配置されている。これらの円周方向幅は、隆起82bがヘッド受け部分54のうち可撓性のある壁部分54aの溝54bに係合するような構成となるように設定されている。隆起82bの数は、好ましくは、ヘッド受け部分54の溝54bの数に対応している。
【0031】
内側円筒面部分82と上方端部との間に、円筒内面部分82から第1端部8aに向かって広がる小さな先細区域82aが設けられていてもよい。この先細部分82aは、ロックリング8をヘッド受け部分54上に取付けるのを容易にする。
【0032】
ロックリング8はさらに、自由端部84を有するとともに第1端部8aから延在する上方に突出る2つのアーム83a、83bを含む。アームの自由端部84は端縁において丸みがあってもよい。アーム83a、83bの各々の上に、アームの自由端部84から第1端部8aにまでまたはその付近にまで延在する切欠85が形成されている。切欠85は、ロックリング8が受け部5上に取付けられたときに中心軸Cに対して平行な線に対して傾斜するように延びている。特に図9から分かるように、アーム83a、83b上の溝85は、リングの回転軸である中心軸Cに対して垂直な方向から見ると、互いに対して反対方向に傾斜している。切欠85の底部85aは丸みがあってもよく、切欠85の幅は、器具の上、より具体的には器具の外管上、に設けられた突起が案内する態様で切欠に嵌まり込むような大きさにされる。より詳細には、このような突起が切欠85に入り込むと、突起が、スロット付きリンクのガイド機能と同様にそこに案内される。傾斜角は、器具の突起の案内によって、ロックリング8を好適に回転させることができるように選択されている。
【0033】
隆起82bを含む内側円筒面部分82の大きさは、ロックリング8が受け部5のヘッド受け部分54のまわりに取付けられたときに、隆起82bが、ヘッド受け部分54bのうち可撓性のある壁区域54aを圧縮することなく溝54bに嵌まり込むように設定されている(図24も参照)。ロックリング8およびヘッド受け部分54は、中心軸Cを中心としてロックリング8をある程度まで回転させることによって隆起82bを動かして溝54bから出すことにより、隆起82bを押し当てることによって可撓性のある壁部分54aを圧縮するような態様で協働するように構成されている。
【0034】
ロックリング8は、付加的には、アームの両側の外側球面81に2つの対向する平坦部分86を有していてもよい。2つの対向する平坦部分86は、ロックリング8が受け部5に取付けられたときにロッドチャネルと位置合わせされるように構成されている。アーム83aと83bとの間の円周方向における距離は少なくともロッドをアーム間に配置することができるような長さにされている。図示のとおり、たとえば、図2において、アーム83a、83bの高さは、ロックリング8が受け部5上に取付けられたときにアームの自由端部84が係合窪み57よりも下方において距離を空けて配置されるような高さにされている。
【0035】
さらに図13図16をより詳細に参照して圧力部材7を説明することとする。圧力部材7は、上方端部7aを備えた上方部分または第1部分71と、下方端部7bを備えた下方部分または第2部分72とを含む。第2部分72は、第2端部7bにおいて開口部を備えた中空の内部チャンバ73を含む。中空のチャンバ73は球形のヘッド3をそこに収容してクランプするように構成されている。このことを実現するために、第2部分72には、スリット74によって少なくとも部分的に可撓性がある。これらスリット74は、第2端部7bに向かって開いているとともに、チャンバ73のうち広い内側部分に対応して第2端部7bから距離を空けて終端している。スリット74は、それらの閉端部において幅広部分74aを有していてもよい。スリット74の数および寸法は、ヘッド3が挿入されているときに第2部分の壁がヘッド3上に嵌まるほど十分に可撓性をもつように設定されている。第2部分72の外面は、実質的に円筒形であって、圧力部材が通路51を通って受け部の収容空間51b内にまで摺動することを可能にする外径を備えている。第2端部7bに隣接する下方端部76は、ヘッド受け部分54の狭窄部分51cと協働するように構成されている。たとえば、下方端部76は、受け部の狭窄部分51cとして先細にされていてもよい。
【0036】
圧力部材の第1部分71はまた、第2部分72と同一平面上にある実質的に円筒形の外面を有してもよい。挿入されたロッド6を支持するように構成されたロッド支持面77は、第1部分71に設けられてもよい。ロッド支持面77は、異なる直径を持つロッドを支持できるようにするために中心軸Cに対して横方向に沿ってV字状の断面を有していてもよい。代替的には、ロッド支持面77は平坦であってもよく、円筒形であってもよく、または、他の形状であってもよい。
【0037】
ロッド支持面77の左側および右側には、実質的に円筒形の外面を有する直立した脚部78a、78bが形成されている。たとえば、脚部78a、78bは、支持面77の左側および右側にスロット79を設けることによって形成されてもよい。スロット79により、脚部78a、78bは、ロッド支持面77に向かって内側に曲げることができる。外側に向けられた部分700が、直立した脚部78a、78bのそれぞれの自由端部上に形成されている。外側に向けられた部分700は、圧力部材7が挿入位置にある場合には受け部5の通路51における溝58aに係合し、かつ、圧力部材がロック前位置に場合には溝58bに係合するように構成されている。
【0038】
直立した脚部78aおよび78bの中心において、軸方向に細長い貫通穴701が設けられてもよく、その長手方向軸は、圧力部材7が受け部5に挿入されると中心軸Cに対して平行となる。貫通穴701は、好ましくは圧力部材7を回転させないようにするために、受け部5の内部で圧力部材7を保持するためのピン509または他の保持手段によって係合されるように適合されている。ドライバまたは工具を用いてヘッド3にアクセスすることを可能にするために、同軸ボア702が圧力部材7に設けられてもよい。
【0039】
圧力部材の寸法は、骨固定要素3のヘッド3が挿入されているときに第2部分72のうち可撓性のある部分が収容空間51bにおいて拡張し得るような寸法にされている。
【0040】
ここで、図3図4および図17図22を参照して、多軸骨固定装置と共に用いられるように適合された器具を説明する。器具は、外管100と、外管100内に摺動可能に配置された内管120とを含む。図においては、外管100および内管120の前方部分だけが示されている。外管100および内管120の各々は、任意の好適な形状を有し得る後方部分を含む。後方部分は、特に、外管100を内管120に対して保持するためのおよび/または移動させるための任意のグリップまたはハンドル部分を有し得る。好ましくは、外管100および内管120は、たとえば、窪みまたはスロットにおいて案内される突起によって案内される態様で互いに対して摺動可能である。この案内は、多軸骨固定装置から器具を取外し易くするために解除されてもよい。
【0041】
図17図19に示されるように、外管100は、実質的にU字型のスロット102によって形成される、2つの対向するアーム101aおよび101bで構成される前方部分を含む。この場合、スロットの開口側は自由端部103に方向付けられている。実質的にU字型のスロット102は、外管100の前方部分が図3において示されるように受け部5の上方部分50上にわたって配置されるのに十分な可撓性を有するような態様で設計されている実質的に長方形のスロット104におけるU字形の底部に繋がっていてもよい。アーム101a、101bは、それらの自由端部103に向かって実質的に三角形に形作られていてもよい。各々のアーム101a、101bは、自由端部103に、またはその付近に、ロックリング8の切欠85に嵌まり込む内向き突起105を含む。突起105は、外管100を下向きに軸方向移動させることにより突起105の圧力が切欠85の側壁に対して加わり、これにより、中心軸Cを中心としてロックリングを回転させるような態様で切欠85において案内されるように構成されている。
【0042】
内管120は、受け部5に係合するとともに受け部5を保持するように構成されている2つのアーム121a、121bを有する前方部分を含む。アーム121a、121bは、受け部5の上方部分50上に嵌め込むことができる程度にまでアーム121a、121bに可撓性をもたらす、実質的にU字型のスロット122によって設けられている。より詳細には、前方部分は、自由端部123に隣接して、実質的に円筒形の窪み124を含む。実質的に円筒形の窪み124は、脚部53aの上方部分530aおよび脚部53bの上方部分530bを収容するような大きさにされている。内側に突出る突起125が、自由端部123に隣接または近接して形成されている。内側に突出る突起125は、受け部5における係合窪み57にそれぞれ嵌合する脚部121a、121bの各々上に形成されている。受け部が回転不可能な態様で保持されるように突起125と窪み57との間の協働がなされる。受け部5が骨固定要素1に連結されると、内管120も受け部5を軸方向に固定する。
【0043】
図23は、骨固定装置を、固定要素1が堆骨1000に挿入された状態で、かつ外管がロックリング8の切欠85と協働するように配置された状態で示す。図24は、上述のとおり、ロックリング8の隆起82bとヘッド受け部分の溝54bとの係合を示す、骨固定装置の断面図を示す。これはロックリング8の非ロック位置である。
【0044】
受け部5、圧力部材7、ロックリング8および骨固定要素1、さらには、ロッド6および器具は各々、生体適合性のある材料でできており、たとえば、チタンもしくはステンレス鋼、NiTi合金、たとえばニチノールなどの生体適合性合金、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、または、たとえばポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone:PEEK)もしくはポリ-l-ラクチド酸(poly-l-lactide acid:PLLA)などの生体適合性のあるプラスチック材料でできている。加えて、これらの部品は互いに同じ材料または異なる材料でできていてもよい。
【0045】
ここで図25図33を参照して、多軸骨固定装置および器具の使用を説明することとする。まず、図25aおよび図25bに示されるように、骨固定要素1と、圧力部材7およびロックリング8を備えた予め組立てられた受け部5とは、骨(たとえば、堆骨1000の椎弓根)に挿入され得る。これは以下のように実現することができる。第1使用方法においては、骨固定要素1が最初に骨に挿入される。次いで、受け部5、圧力部材7およびロックリング8のアセンブリが骨固定要素1のヘッド3上に取付けられる。圧力部材7は、圧力部材の細長い貫通穴701に係合するピン509によって受け部5内に保持される。これにより、ロッド支持面77は受け部5のチャネル53と位置合わせされる。
【0046】
ロックリング8が非ロック位置にある場合、骨固定要素1のヘッド3は、ヘッド受け部分54の下方開口部を通って収容空間51bに(より具体的には圧力部材7の内側チャンバ73に)入り込み得る。ヘッド3がヘッド受け部分54に入り込むと、圧力部材7は受け部5の第1端部5aに向かって上方向に動かされる。これが挿入位置であって、この挿入位置においては、圧力部材7が受け部の第1端部5aから抜け出てしまう(図示せず)のを防ぐように外側延在部分700が溝58aに係合している最上位置に、圧力部材5が位置している。圧力部材7のうち可撓性のある第2部分72は、ヘッド3が入り込むことを可能にするために収容空間において拡張し得る。
【0047】
骨固定装置を挿入する代替的な態様においては、骨固定要素1と、圧力部材7およびロックリング8を備えた受け部5とは、骨に挿入されるよりも前に既に予め組立てられている。
【0048】
図25aおよび図25bに示される条件では、圧力部材7は、端部分700が溝58bに係合してヘッド3が下方開口部内を通って移動するのを防止するように、下方に動かされている(ロック前条件)。受け部5は、ヘッド受け部分54および圧力部材7の大きさに応じてヘッド3に対して回動可能であり、受け部5に対する骨固定要素1の如何なる角度位置もヘッド3と圧力部材7との協働する表面間の摩擦に基づいて維持することができる。
【0049】
次いで、図26に示されるように、器具の内管120は、内管120のアーム121a、121bが受け部5の脚部53a、53bと位置合わせされるように受け部5上に配置される。内管120は、内側に突出る突起125が図27aおよび図27bに示されるように、脚部の外面における窪み57に嵌まり込むまで、下方向に摺動される。
【0050】
これにより、内管120および受け部5は、並進移動および回転移動を考慮して互いに対して固定される。
【0051】
その後、図28aおよび図28bに示されるように、外管100は、アーム101a、101bが受け部5のU字型の窪み53に位置するような向きで、内管120上に配置される。こうして、突起105がロッドチャネル内に突出る。受け部上に外管を正確に配置することができるように、印または他の任意のアライメント特徴または方向付け特徴が内管および外管に存在し得ることに留意されたい。
【0052】
図29aおよび図29bに示されるように、さらに、突起105がそれぞれロックリング8のうち傾斜した切欠85の上方に位置するように外管100を90°だけ回転させる。この場合も、器具の後方端部においては正確な配置が示されて監視され得る。
【0053】
次いで、図30aおよび図30bに示されるように、外管120が下方向に動かされることにより、突起105がロックリング8の傾斜した切欠85に係合し、これにより、図30bにおける矢印によって示される方向にロックリングを回転させる。こうして、突起105がそれぞれ切欠85によって案内されると、ロックリング8はこの案内に追従して回転させられる。回転中、ロックリングの隆起82bは、ヘッド受け部分の溝54bから抜け出て、可撓性のある壁部分54aを圧縮させる。これにより、ヘッド3が多軸式にロックされる。
【0054】
図31aおよび図31bは、外管100の最低位置を示しており、突起105がそれぞれロックリング8の傾斜した窪み85の底部85aの上に位置している。これは、ヘッド3がヘッド受け部分54においてロックされているロック位置に対応している。外管100の下方向への移動中に、内管120に対する外管の回転が防止され得るように外管が内管に対して案内され得る(図示せず)ことに留意されたい。
【0055】
最後に、図32に示されるように、ロッド6が挿入されてもよく、ロッドの位置を調整した後、ロッド6は固定ねじ9によって固定される。固定ねじ9はまた、ロッド6を介して圧力部材7に対して圧力を加え、これにより、ヘッド3とロッド6とが最終的にロックされる。
【0056】
図33は、ヘッド3をロック解除する動作を示す。外管100が上方向に動かされ、これにより、ロックリング8を矢印によって示されるように反対方向に回転させる。こうして、隆起82bが、ロックリング8のロック解除位置を規定するヘッド受け部分54の溝54bにまで戻ってくる。
【0057】
外科手術において、最初に、少なくとも2つの骨固定要素1が、たとえば、隣接する椎骨内に係止され得る。次いで、受け部5がその上に取付けられる。その後、ロッド6が挿入される。ヘッド3の正確な角度位置が見出されると、ロックリング8を回転させることによってヘッド3をロックすることができる。ロッド6は、ヘッド3のロックを緩めなくても、再度位置決めすることができる。脚部の上方部分530aおよび530bがあることにより、ロッドが窪み53において高い位置にある場合に、ロッド位置および/またはヘッド3の角度位置の補正工程を実行することができる。ロッドおよび固定要素が受け部に既に配置されている状態で、すべての補正工程を行なうことができる。
【0058】
多軸骨固定装置のさらなる実施形態を図34および図35に関連付けて記載することとする。図34および図35に従った実施形態は、受け部のヘッド受け部分の設計および圧力部材の設計の点で先の実施形態とは異なる。他のすべての部分は既に記載された実施形態と同じであるかまたは同様であり、先の実施形態におけるのと同じ参照番号で示されており、その説明は繰り返されない。圧力部材7′は、ヘッド3を横方向に取り囲む可撓性のある部分を備えていない。図34に示されるように、圧力部材7′は実質的に円筒形である第2部分または下方部分72′を有する。第2部分または下方部分72′は、ヘッド3に面するその下側面に球形の窪み73′を有する。球形の窪み73′はヘッド3の上方部分を収容する。したがって、圧力部材7′は上方からヘッド3に対して圧力を加えるように構成されている。受け部5′はヘッド受け部分54′を含む。収容空間は、ヘッド3のための座部、好ましくは、同時に狭窄部分および座部を形成している球形状の中空部分51c′、を下方端部5bの隣りに備える。
【0059】
ロックリング8が回転すると、座部51c′は、たとえばロッドの位置決めおよび/または再位置決めの最中に、ヘッド3を一時的にクランプするためにヘッド3に対して押し当てられる。最後に固定ねじ9が締められると、圧力部材7′に対して圧力が加えられ、これによりヘッド3が座部51c′に押し込まれ、これにより、ヘッドとロッドとがロックされる。
【0060】
上述の実施形態の変形例が企図され得る。たとえば、本発明は、ロックリングの傾斜した窪みを器具の突起と係合させる特定の実施形態を用いてロックリングを回転させることに限定されない。また、器具を用いて直接ロックリングを回転させることが可能であってもよい。
【0061】
器具と受け部またはロックリングとの間を接続する、受け部および/またはロックリングの他の係合構造も企図され得る。
【0062】
本発明の他の実施形態に従った骨固定装置は、さらに変形された態様で提供することができる。たとえば、骨固定要素のヘッドは、たとえば、平らな側面を備えた円筒形状または球形状などの他の任意の形状を有することができる。単一の平面において固定要素を回動させることを可能にする単一平面型装置が提供される。ヘッドはまた、ヘッド受け部分の内側中空部分が特定の形状に適合されるように、円錐形または他の形状に形作ることができる。さらなる変形例においては、ヘッド受け部分の可撓性は、材料の特性に基づいていてもよく、または材料の特性によって促進されてもよく、たとえば、プラスチック材料が用いられてもよく、ヘッド受け部分におけるスリットが全体的または部分的に省かれてもよい。
【0063】
圧力部材においては、直立した脚部が省かれてもよい。ヘッドの挿入中に圧力部材が外れるのを防止する他の構造が設けられてもよい。圧力部材はまた、受け部の下方端部から挿入できるような形状にされてもよい。圧力部材も完全に省くことができる。このような場合、ヘッドは、ロックリングをヘッド受け部分に対して作用させることによってのみロックすることができる。ロッドは、固定ねじとロッド受けチャネルの底部との間においてのみクランプすることができる。
【0064】
いくつかの実施形態においては、ヘッド受け部分は、傾斜した開口端を有し得るか、または、挿入されたヘッドの角度を一方向により大きくすることを可能にするように非対称的であってもよい。
【0065】
受け部上の延在タブは省くことができる。
加えて、いくつかの実施形態においては、他の種類の固定要素も用いることができ、たとえば、代替的な前進構造を有するねじ無しのロック要素を用いることもできる。加えて、たとえば鉤状部を備えた骨固定具または釘などのすべての種類の骨固定要素を用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 骨固定要素、3 ヘッド、5,5′ 受け部、6 ロッド、5a 第1端部、5b 第2端部、8 ロックリング、9 固定要素、53 窪み、53a,53b 脚部、54,54′ヘッド受け部分、C 中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25a
図25b
図26
図27a
図27b
図28a
図28b
図29a
図29b
図30a
図30b
図31a
図31b
図32
図33
図34
図35