(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】高周波電力増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/30 20060101AFI20230807BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H03F1/30
H03F3/24
(21)【出願番号】P 2018241882
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】島松 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 栄作
(72)【発明者】
【氏名】野崎 雄介
(72)【発明者】
【氏名】福泉 勝
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-140633(JP,A)
【文献】特開2006-121123(JP,A)
【文献】特開昭63-309008(JP,A)
【文献】特開2007-201698(JP,A)
【文献】特開2002-076782(JP,A)
【文献】特開2005-175819(JP,A)
【文献】特開2004-140518(JP,A)
【文献】特開2010-219964(JP,A)
【文献】国際公開第2015/121891(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0117208(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力増幅器であって、
入力信号が入力される入力端子と、
トランジスタにより増幅された信号を出力する出力端子と、
前記入力端子に接続された第1電極を、少なくとも有する前記トランジスタと、
リファレンス電圧源に接続され、増幅された前記信号の状態を判定するためのコンパレータと、
前記第1電極に接続され、前記コンパレータの出力により可変されるバイアスを前記第1電極にかけるバイアス回路と、
増幅された前記信号の振幅を示す検波電圧を出力する検波回路と、
前記検波電圧を伝達する出力線に接続された第1の抵抗と、
前記第1の抵抗とグランドとの間に接続された第2の抵抗と、
前記高周波電力増幅器の電源電圧を検出し、前記電源電圧に応じた電流を、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点から入力する電源検出回路と、を備え、
前記コンパレータは、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との前記接続点に接続される
高周波電力増幅器。
【請求項2】
前記トランジスタは、更に、前記出力端子に接続された第2電極を備え、
前記高周波電力増幅器は、前記第2電極と電源との間に接続される負荷インピーダンス素子を備える
請求項1に記載の高周波電力増幅器。
【請求項3】
前記検波回路は、前記出力端子に接続される
請求項
1に記載の高周波電力増幅器。
【請求項4】
前記検波回路は、前記バイアス回路のバイアス出力線に接続される
請求項
1に記載の高周波電力増幅器。
【請求項5】
高周波電力増幅器であって、
入力信号が入力される入力端子と、
トランジスタにより増幅された信号を出力する出力端子と、
前記入力端子に接続された第1電極と、前記出力端子に接続された第2電極とを、少なくとも有する前記トランジスタと、
リファレンス電圧源に接続され、増幅された前記信号の状態を判定するためのコンパレータと、
前記第1電極に接続され、前記コンパレータの出力により可変されるバイアスを前記第1電極にかけるバイアス回路と、
前記第2電極と電源との間に接続される負荷インピーダンス素子と、
前記電源に接続された第1の抵抗と、
前記第1の抵抗とグランドとの間に接続された第2の抵抗と、を備え、
前記高周波
電力増幅器の温度を検出し、温度に応じた電流を、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点から入力する温度検出回路と、を備え、
前記コンパレータは、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との前記接続点に接続される
高周波電力増幅器。
【請求項6】
前記コンパレータは、ヒステリシス特性を備える
請求項1~
5のいずれか一項に記載の高周波電力増幅器。
【請求項7】
前記バイアス回路は、
電流源と前記コンパレータの出力により可変されるスイッチとを直列に接続した直列回路を有する
請求項1~
6のいずれか一項に記載の高周波電力増幅器。
【請求項8】
前記バイアス回路は、
第1の電流源と前記コンパレータの出力により可変されるスイッチとを直列に接続した直列回路、および、前記直列回路と並列に接続された第2の電流源を有する
請求項1~
6のいずれか一項に記載の高周波電力増幅器。
【請求項9】
前記バイアス回路は、第1のバイアス電圧源と前記コンパレータの出力により可変される第1のスイッチとを並列に接続した並列回路を有する
請求項1~
6のいずれか一項に記載の高周波電力増幅器。
【請求項10】
前記バイアス回路は、さらに、前記並列回路と直列に接続された第2のバイアス電圧源を有する
請求項
9に記載の高周波電力増幅器。
【請求項11】
前記負荷インピーダンス素子は、インダクタである
請求項2に記載の高周波電力増幅器。
【請求項12】
前記負荷インピーダンス素子は、インダクタとコンダクタとを並列に接続した共振回路である
請求項2に記載の高周波電力増幅器。
【請求項13】
高周波低雑音増幅器として用いられる
請求項1~
12のいずれか一項に記載の高周波電力増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、通常の電圧条件での特性劣化を伴なわずに、過電源電圧時の出力負荷変動に起因する電力増幅用トランジスタの破壊を防ぐ保護回路を有する電力増幅器を提案している。
【0003】
また、特許文献2は、入力信号レベルの増加等で電界効果トランジスタで構成した電力増幅器のドレイン電流が増大し、破壊に達するのを未然に保護する保護回路を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-341052号公報
【文献】特開平9-199950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スマートフォン等の無線通信機器において、アンテナから固定局までに送信するために必要となる高周波電力増幅器が搭載されている。
【0006】
高周波電力増幅器は、スマートフォンのアンテナの近くに搭載されており、金属などの遮蔽物が近づくことにより、破壊が起こることがある。高周波電力増幅器の出力端子に取り付けられているアンテナに遮蔽物が近づくと、高周波電力増幅器の出力端子のインピーダンスは大きく変動する。この変動により、高周波電力増幅器の性能が劣化すると同時に、高周波電力増幅器のトランジスタが異常発振することにより、出力された信号がアンテナで反射され、出力振幅が大きくなり、破壊に至る場合がある。これを回避するために、遮蔽物の影響を受けにくい、電気的には一方向しか信号を通過させない、アイソレータを使用する方法がある。しかし、1dB程度の損失を持っているため、高周波電力増幅器の出力を上げる必要があり、また、アイソレータは磁石などで構成されており、小型化、軽量化が難しくなる。
【0007】
また、近年、5Gサービスに向けてマルチバンド化が進み、スマートフォン等の無線通信機器の搭載部品が増加することが予測され、安全に使用できる信頼性に加えて、低コスト、軽量化、高速大容量通信を可能とする無線通信機器が求められている。このため、高周波電力増幅器は、さまざまな使用状況においても破壊されにくい保護回路を搭載するだけでなく、高出力化、また幅広い電源電圧範囲で動作することが要求されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1において、保護回路が動作し、最終段トランジスタの破壊を防止するための検出電圧は、電源電圧に依存する。特許文献1の高周波電力増幅器において(A)上限動作電源電圧での出力信号の波形、および、(B)下限動作電源電圧での出力信号の波形は、例えば
図14のようになると考えられる。下限動作電源電圧のとき、上限動作電源電圧のときと比較して、検出電圧が低下するため、最終段トランジスタの出力である電圧は制限されてしまう。このため、下限動作電源電圧のとき、高周波電力増幅器は、高出力化を実現することができないという問題がある。
【0009】
また、特許文献2の高周波電力増幅器において(A)動作範囲の下限温度での出力信号の波形、および、(B)動作範囲の上限温度での出力信号の波形は、例えば
図15のようになると考えられる。特許文献2において、動作範囲の上限温度のとき、高周波電力増幅器の出力振幅電圧は、下限温度のときと比較して、小さくなる。このため、動作範囲の上限温度のとき、高周波電力増幅器の出力電圧が破壊電圧に達しなくても、保護がかかり、電源電圧範囲を拡大することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためのもので、高出力化と、電源電圧範囲を拡大することを可能にし、保護機能を有する、高周波電力増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明の一態様に係る高周波電力増幅器は、入力信号が入力される入力端子と、トランジスタにより増幅された信号を出力する出力端子と、前記入力端子に接続された第1電極を、少なくとも有する前記トランジスタと、リファレンス電圧源に接続され、増幅された前記信号の状態を判定するためのコンパレータと、前記第1電極に接続され、前記コンパレータの出力により可変されるバイアスを前記第1電極にかけるバイアス回路と、増幅された前記信号の振幅を示す検波電圧を出力する検波回路と、前記検波電圧を伝達する出力線に接続された第1の抵抗と、前記第1の抵抗とグランドとの間に接続された第2の抵抗と、前記高周波電力増幅器の電源電圧を検出し、前記電源電圧に応じた電流を、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点から入力する電源検出回路と、を備え、前記コンパレータは、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との前記接続点に接続される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高出力化を可能にし、保護機能を有する、高周波電力増幅器が構成できる。また、本発明の他方の形態では、電源電圧範囲を拡大することを可能にし、保護機能を有する、高周波電力増幅器が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは本発明の実施の形態1の高周波電力増幅器の一例を示す回路図である。
【
図1B】
図1Bは本発明の実施の形態1の高周波電力増幅器の別例を示す回路図である。
【
図2A】
図2Aは本発明の実施の形態1及び実施の形態2のバイアス回路の第1構成例を示す回路図である。
【
図2B】
図2Bは本発明の実施の形態1及び実施の形態2のバイアス回路の第2構成例を示す回路図である。
【
図2C】
図2Cは本発明の実施の形態1及び実施の形態2のバイアス回路の第3構成例を示す回路図である。
【
図2D】
図2Dは本発明の実施の形態1及び実施の形態2のバイアス回路の第4構成例を示す回路図である。
【
図3】
図3は本発明の実施の形態1における(A)上限動作電源電圧VCC_Hにおける出力信号の一例を示す波形と、(B)下限動作電源電圧VCC_Lにおける出力信号の一例を示す波形である。
【
図4】
図4は本発明の実施の形態1において、横軸を出力振幅電圧V
A、縦軸を検波電圧V
DETにしたときの特性の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は本発明の実施の形態1において、横軸を電源検出回路へ流し込む電流I
3、縦軸を出力振幅電圧V
Aにしたときの特性の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は本発明の実施の形態1において、横軸を電源電圧VCC、縦軸を電源検出回路106へ流し込む電流I
3にしたときの特性の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は本発明の実施の形態1における(A)上限動作電源電圧VCC_Hにおける出力信号の一例を示す波形と、(B)下限動作電源電圧VCC_Lにおける出力信号の一例を示す波形である。
【
図8】
図8は本発明の実施の形態2の高周波電力増幅器の一例を示す回路図である。
【
図9】
図9は本発明の実施の形態2における(A)動作範囲の下限温度T_Lにおける出力信号の一例を示す波形と、(B)動作範囲の上限温度をT_Hにおける出力信号の一例を示す波形である。
【
図10】
図10は本発明の実施の形態2において、横軸を温度T、縦軸を出力振幅電圧V
Aにしたときの特性の一例を示すグラフである。
【
図11】
図11は本発明の実施の形態2において、横軸を温度検出回路へ流し込む電流I
3、縦軸を上限動作電源電圧VCC_Hにしたときの特性の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は本発明の実施の形態2において、横軸を温度T、縦軸を温度検出回路へ流し込む電流I
3にしたときの特性の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は本発明の実施の形態2における(A)動作範囲の下限温度T_Lにおける出力信号の一例を示す波形と、(B)動作範囲の上限温度T_Hにおける出力信号の一例を示す波形である。
【
図14】
図14は特許文献1の高周波電力増幅器における(A)上限動作電源電圧での出力信号の波形例、および、(B)下限動作電源電圧における出力信号の波形例である。
【
図15】
図15は特許文献2の高周波電力増幅器における(A)動作範囲の下限温度での出力信号の波形例、および、(B)動作範囲の上限温度での出力信号の波形例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
〔構成〕
図1Aに本発明の実施の形態を説明するための高周波電力増幅器の構成を示す。
同図の高周波電力増幅器は、入力端子101、トランジスタ102、出力端子103、負荷インピーダンス素子104、検波回路105、電源検出回路106、抵抗107、抵抗108、リファレンス電圧源109、コンパレータ110、およびバイアス回路111を備える。
【0016】
この高周波電力増幅器においては第1~第3電極を有するトランジスタ102が用いられる。この「トランジスタ102」として、電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタとのいずれを用いても良い。上記の第1電極は、ゲートまたはベースに相当する。第2電極は、ソースおよびドレインの一方、または、エミッタおよびコレクタの一方に相当する。第3電極は、ソースおよびドレインの他方、または、エミッタおよびコレクタの他方に相当する。本実施の形態1および後述する実施の形態2では、バイポーラトランジスタを用いる構成を例示する。また、電源電圧または電源端子は、VCCと表記する。
【0017】
【0018】
入力端子101は、入力信号が入力され、トランジスタ102の第1電極としてのベースに接続される。
【0019】
トランジスタ102は、入力端子101に接続された第1電極、出力端子103に接続された第2電極、および、グランドに接続された第3電極を有する。同図では、第2電極としてのコレクタが負荷インピーダンス素子104、検波回路105、及び出力端子103に接続されている。第3電極としてのエミッタがグランドに接続されている。
【0020】
出力端子103は、トランジスタ102により増幅された信号を出力する。この信号は、以下、出力信号または出力電圧VOUTとも呼ばれる。
【0021】
負荷インピーダンス素子104は、例えば、インダクタ、あるいはインダクタとコンダクタの並列接続による共振回路である。
【0022】
検波回路105は、出力端子103の出力振幅電圧VAを検波電圧Vdetに変換して、抵抗107へ出力する。検波電圧Vdetは、出力信号の振幅値でもよいし、ピークピーク値でもよいし、実効値でもよく、出力振幅電圧VA(つまり出力電圧VOUTの振幅)に対応していればよい。
【0023】
電源検出回路106は、電流源を含み、電源電圧VCCに応じて電流源の電流量を制御する。この電流源の電流は、抵抗107と抵抗108の共通する点V1から電源検出回路106に入力される。共通する点V1は、直列に接続された抵抗107と抵抗108との接続点である。
【0024】
抵抗107と抵抗108からなる直列回路は、検波回路105からの検波電圧Vdetを分圧する。分圧値は、検波電圧Vdetに比例し、トランジスタ102により増幅された出力信号の状態を判定するためにコンパレータ110で用いられる。
【0025】
コンパレータ110は、プラス側の入力にリファレンス電圧源109が接続され、マイナス側の入力に、点V1が接続され、またグランドに対して抵抗108が接続されている。コンパレータ110の出力には、トランジスタ102のベースに供給するためのバイアス回路111が接続される。また、コンパレータ110に、プラス側の入力に点V1が接続され、マイナス側の入力にリファレンス電圧源109が接続されてもよい。また、コンパレータ110はヒステリシス特性を備えており、ノイズ等により検出電圧が変動したときの誤動作を防止することができる。
【0026】
バイアス回路111は、トランジスタ102の第1電極に接続され、コンパレータ110の出力により可変されるバイアスを第1電極にかける。具体的には、バイアス回路111は、第1電極にバイアス電流IBIASを供給、または、バイアス電圧VBIASを印加する。
【0027】
また、
図2A~
図2Dにバイアス回路111の第1~第4構成例を示している。
図2Aは、電流源202とコンパレータ110の出力により可変されるスイッチ201を直列に接続した直列回路で構成されている。
図2Bは、電流源202とコンパレータ110の出力により可変されるスイッチ201aを直列に接続した直列回路と電流源203と並列に接続した並列回路で構成されている。
図2Cは、バイアス電圧源204とコンパレータ110の出力により可変されるスイッチ201aを並列に接続した並列回路で構成されている。
【0028】
図2Dは、
図2Cの並列回路とバイアス電圧源205と直列に接続した直列回路で構成されている。
【0029】
〔動作〕
本実施の形態1および後述する実施の形態2では、電源電圧VCCの下限動作電源電圧をVCC_L、上限をVCC_H、また動作範囲の下限温度をT_L、上限をT_Hとする。
【0030】
まず、
図1Aにおいて、トランジスタ102の破壊電圧を超えることによる破壊を防止することを可能にする、高周波電力増幅器の保護機能について説明する。入力端子101から入力された信号は、トランジスタ102により増幅され、出力端子103へ出力される。出力された信号の一部が検波回路105へ入り、検波回路105は入力された出力端子103の出力振幅電圧V
Aに応じて検波電圧Vdetを出力する。検波回路105の検波電圧Vdetは、抵抗107と抵抗108によって分圧される。金属等の遮蔽物の接近により、出力端子103のインピーダンスが変動したとき、トランジスタ102の出力信号である出力電圧V
OUTは上昇する。これにより、検波回路105の出力である検波電圧Vdetが上昇し、抵抗108にかかる電圧、つまりコンパレータ110のマイナス側の入力の電圧が上昇する。コンパレータ110のマイナス側の入力の電圧が、リファレンス電圧源109より上昇すると、コンパレータ110の出力が反転し、バイアス回路111の電流、もしくは電圧が可変される。これにより、トランジスタ102のベースへ供給される電流もしくは、電圧が可変され、トランジスタ102の出力電圧V
OUTが破壊電圧を超えて、トランジスタ102が破壊に至ることを防ぐことができる。
【0031】
次に、
図1Aにおいて、高周波電力増幅器の高出力化について説明する。
【0032】
高周波電力増幅器の出力電圧VOUTは、電源電圧VCCと出力振幅電圧により決定され、電源電圧VCCが低下するにつれて、低下する。出力振幅電圧は、出力電圧VOUTが最大値となる、上限動作電源電圧VCC_Hで制限される。
【0033】
図3の(A)に上限動作電源電圧VCC_Hのとき、
図3の(B)に下限動作電源電圧VCC_Lのときのトランジスタ102の出力電圧V
OUTの波形例を示す。
図3の(A)に示すように、トランジスタ102の出力電圧V
OUTの最大値が、トランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXとなる。一方、
図3の(B)に示すように、下限動作電源電圧VCC_Lのとき、電源電圧VCCが下がる分、トランジスタ102の出力電圧V
OUTの最大値が、トランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXによりも低くなる。このため、トランジスタ102の出力電圧V
OUTの最大値が電圧V
CE_MAXに到達しない電圧範囲内において、出力振幅電圧V
Aを上げてもトランジスタ102の破壊は起こらないが、保護機能は、出力振幅電圧V
Aを検出して動作するため、出力振幅電圧V
Aが上昇すると保護機能が動作してしまう。これを回避するため、本実施の形態1では、電源検出回路106を搭載している。以降に効果を説明する。
【0034】
前述した保護機能で説明したように、出力端子103の出力振幅電圧VAに応じて検波電圧Vdetが出力され、抵抗108には、抵抗107と抵抗108で分圧された電圧がかかる。抵抗108は、抵抗107から流れてきた電流から、電源検出回路106へ流れ込む電流を差し引いた電流が流れる。これにより、電源検出回路106へ流し込む電流が増加するほど、抵抗108にかかる電圧は減少するため、コンパレータ110の出力が反転するための検波回路105の検波電圧を高く設定することができる。よって電源電圧VCCが低い場合に、電源検出回路106へ流し込む電流を増加させることで、出力振幅電圧VAの範囲は大きく取ることができ、高周波電力増幅器の高出力化が可能となる。
【0035】
図1Aにおいて、詳しい効果について説明する。リファレンス電圧源109の電圧をV
REF、抵抗107、抵抗108の抵抗値をそれぞれR
1、R
2、抵抗107、抵抗108の電流値をそれぞれI
1、I
2とし、電源検出回路106へ流し込む電流をI
3とする。また、検波電圧V
DETは、
【数1】
で与えられるとし、Kは係数である。また、
図4に、横軸を出力振幅電圧V
A、縦軸を検波電圧V
DETにしたときのグラフを示す。
図1Aから、
【数2】
が導かれる。これらの式より、出力振幅電圧V
Aは、
【数3】
となる。この式より、電源検出回路106へ流し込む電流I
3の増加に伴い、トランジスタ102の保護機能を検出する電圧である、出力振幅電圧V
Aは大きく取ることができる。
【0036】
出力振幅電圧V
Aが最小となる出力振幅電圧の最小電圧V
A_MINは、電源検出回路106へ流し込む電流I
3が0[A]のときであり、
【数4】
となる。出力振幅電圧の最小電圧V
A_MINは、上限動作電源電圧VCC_Hにおける出力振幅電圧V
Aである。ここで、トランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧を、V
CE_MAXとすると、トランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧を超えない電圧V
CE_MAXまで、電源検出回路106へ流し込む電流I
3を最大まで増加させ、出力振幅電圧V
Aを最大とする出力振幅電圧の最大電圧V
A_MAXは、
【数5】
となり、そのときの電源検出回路106へ流し込む電流I
3が最大となるときの電流I
3_MAXは、
【数6】
となる。
【0037】
図5に、横軸を電源検出回路106へ流し込む電流I
3、縦軸を出力振幅電圧V
Aにしたときのグラフを示す。電源検出回路106へ流し込む電流I
3は0[A]のとき、出力振幅電圧V
Aは、出力振幅電圧の最小電圧V
A_MINとなり、最大電流I
3_MAXで、出力振幅電圧の最大電圧V
A_MAXとなる。
【0038】
また、
図6に、横軸を電源電圧VCC、縦軸を電源検出回路106へ流し込む電流I
3にしたときのグラフを示す。上限動作電源電圧VCC_Hでは、電源検出回路106へ流し込む電流I
3は0[A]となり、下限動作電源電圧VCC_Lでは、最大値I
3_MAXとなる。
【0039】
図7に、トランジスタ102の出力電圧V
OUTの波形を示す。
図7の(A)は、上限動作電源電圧VCC_Hにおける出力信号の波形例を示す。出力振幅電圧V
Aは、上限動作電源電圧VCC_Hで動作するときに決定され、最小となり、出力振幅電圧の最小電圧V
A_MINとなる。
図7の(B)は、下限動作電源電圧VCC_Lにおける出力信号の波形例を示す。実線の波形は、出力振幅電圧の最小電圧V
A_MINで動作している波形例である。点線の波形は、出力振幅電圧の最大電圧V
A_MAXで動作している波形例である。トランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXを超えない電圧まで、電源検出回路106へ流し込む電流I
3を増加させることで、出力振幅電圧の最大電圧V
A_MAXを取ることができる。
【0040】
よって、電源検出回路106がない場合は、下限動作電源電圧VCC_Lにおいて、出力振幅電圧VAが固定され、高出力化をできなかったが、電源検出回路106を搭載し、電源検出回路106へ流し込む電流I3を制御することにより、最適な出力振幅電圧VAに設定することができるため、高周波電力増幅器の高出力化を実現することができる。
【0041】
次に、バイアス回路111の具体的な構成例について説明する。
【0042】
図2A~
図2Dに、バイアス回路111の第1~第4構成例を示す。
図2Aにおいて、スイッチ201は、コンパレータ110からの出力により可変され、トランジスタ102の出力電圧V
OUTがトランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXに達したときに、スイッチ201はグランドにショートされる。これにより、トランジスタ102のベースへ供給するバイアス電流I
BIASは、遮断されることで、入力信号がトランジスタ102で電力増幅されなくなる。これにより、トランジスタ102の出力電圧V
OUTが破壊電圧を超えて、トランジスタ102が破壊に至ることを防ぐことができる。
【0043】
図2Bは、
図2Aのバイアス電流I
BIASを遮断する構成に対して、バイアス電流I
BIASを減少させる構成である。
図2Bにおいて、スイッチ201aは、トランジスタ102の出力電圧V
OUTがトランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXに達したときに、スイッチ201aはオフされ、トランジスタ102のベースへ供給するバイアス電流I
BIASは、電流源202と電流源203との合成電流から、電流源203の電流へ減少することで、電力増幅利得が低下し、出力振幅電圧V
Aが抑制される。これにより、トランジスタ102の出力電圧V
OUTが破壊電圧を超えて、トランジスタ102が破壊に至ることを防ぐことができる。
【0044】
図2Cにおいて、スイッチ201aは、トランジスタ102の出力電圧V
OUTがトランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXに達したときに、スイッチ201aはオフされ、トランジスタ102のベースへ供給するバイアス電圧V
BIASは、グランドに接地されることで、入力信号がトランジスタ102で電力増幅されなくなる。これにより、トランジスタ102の出力電圧V
OUTが破壊電圧を超えて、トランジスタ102が破壊に至ることを防ぐことができる。
【0045】
図2Dは、
図2Cのバイアス電圧V
BIASを遮断する構成に対して、バイアス電圧V
BIASを減圧させる構成である。
図2Dにおいて、スイッチ201aは、トランジスタ102の出力電圧V
OUTがトランジスタ102の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXに達したときに、スイッチ201aはオフされ、トランジスタ102のベースへ供給するバイアス電圧V
BIASは、バイアス電圧源204とバイアス電圧源205の合成電圧からバイアス電圧源205の電圧へ減圧することで、電力増幅利得が低下し、出力振幅電圧V
Aが抑制される。これにより、トランジスタ102の出力電圧V
OUTが破壊電圧を超えて、トランジスタ102が破壊に至ることを防ぐことができる。
【0046】
また、負荷インピーダンス素子104は、インダクタであってもよく、あるいはインダクタとコンダクタの並列接続による共振回路であってもよい。インダクタとコンダクタの並列接続のとき、高周波電力増幅器は、インダクタのみで構成したときと比較して、特定の周波数においてより高い出力振幅電圧VAを得ることができる。
【0047】
また検波回路105において、その入力はトランジスタ102からの出力振幅電圧VAに限定せず、トランジスタ102からの出力電流または出力電圧を検出し、前記所望の効果が得られる検波電圧を出力してもよい。
【0048】
また同様に検波回路105において、その入力はトランジスタ102からの出力振幅電圧V
Aに限定せず、
図1Bに示されるようなトランジスタ102の出力電圧V
OUTまたは電流値を制御するバイアス回路111からのバイアス電流またはバイアス電圧を検出し、前記所望の効果が得られる検波電圧を出力してもよい。
【0049】
また、本実施の形態1は、高周波低雑音増幅器へ適用することにより、高出力化を可能にし、保護機能を有する、高周波低雑音増幅器を実現することができる。
【0050】
以上説明してきたように実施の形態1の高周波電力増幅器は、入力信号が入力される入力端子と、トランジスタにより増幅された信号を出力する出力端子と、前記入力端子に接続された第1電極を、少なくとも有する前記トランジスタと、リファレンス電圧源に接続され、増幅された前記信号の状態を判定するためのコンパレータと、前記第1電極に接続され、前記コンパレータの出力により可変されるバイアスを前記第1電極にかけるバイアス回路と、を備える。
【0051】
これによれば、高周波電力増幅器は、保護機能を有しながらも、高出力化と、電源電圧範囲の拡大を可能にする。
【0052】
ここで、前記トランジスタは、更に、前記出力端子に接続された第2電極を備え、前記高周波電力増幅器は、前記第2電極と電源との間に接続される負荷インピーダンス素子を備えてもよい。
【0053】
ここで、増幅された前記信号の振幅を示す検波電圧を出力する検波回路と、前記検波電圧を伝達する出力線に接続された第1の抵抗と、前記第1の抵抗とグランドとの間に接続された第2の抵抗と、を備えてもよい。
【0054】
これによれば、コンパレータは、増幅された前記信号の振幅を示す検波電圧に比例する分圧値と、リファレンス電圧とを比較することにより、バイアス回路によるバイアスを切り替える。これにより、保護機能を有しながらも、高出力化を可能にする。
【0055】
ここで、前記検波回路は、前記出力端子に接続されてもよい。
【0056】
これによれば、検波回路は、出力端子の出力振幅電圧VAから直接的に検波電圧に生成することができる。
【0057】
ここで、前記検波回路は、前記バイアス回路のバイアス出力線に接続されてもよい。
【0058】
これによれば、検波回路は、バイアス出力線のバイアス電圧またはバイアス電流から、間接的に検波電圧を生成することができる。
【0059】
ここで、前記コンパレータは、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点に接続されてもよい。
【0060】
これによれば、電源検出回路は、電源電圧に応じて第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電位を、調整することができるので、保護機能を有しながらも、高出力化を容易にすることができる。
【0061】
ここで、前記高周波電力増幅器の電源電圧を検出し、電源電圧に応じた電流を、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点から入力する電源検出回路を備えてもよい。
【0062】
これによれば、第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電位は、電源検出回路が入力する電流によって電源電圧に応じて調整されるので、保護機能を有しながらも、高出力化を容易にすることができる。
【0063】
ここで、前記コンパレータは、ヒステリシス特性を備えてもよい。
【0064】
これによれば、ノイズ等によりコンパレータの入力が変動したときの誤動作を抑制することができる。
【0065】
ここで、前記バイアス回路は、電流源と前記コンパレータの出力により可変されるスイッチとを直列に接続した直列回路を有してもよい。
【0066】
ここで、前記バイアス回路は、第1の電流源と前記コンパレータの出力により可変されるスイッチとを直列に接続した直列回路、および、前記直列回路と並列に接続された第2の電流源を有してもよい。
【0067】
ここで、前記バイアス回路は、第1のバイアス電圧源と前記コンパレータの出力により可変される第1のスイッチとを並列に接続した並列回路を有してもよい。
【0068】
ここで、前記バイアス回路は、さらに、前記並列回路と直列に接続された第2のバイアス電圧源を有してもよい。
【0069】
ここで、前記負荷インピーダンス素子は、インダクタであってもよい。
【0070】
ここで、前記負荷インピーダンス素子は、インダクタとコンダクタとを並列に接続した共振回路であってもよい。
【0071】
ここで、前記高周波電力増幅器は、高周波低雑音増幅器として用いてもよい。
【0072】
また、本発明の実施の形態に係る高周波電力増幅器は、入力信号が入力端子に入力され、トランジスタにより増幅された信号が出力端子に出力される、高周波電力増幅器であって、ゲートが入力端子に接続され、コレクタが出力端子に接続されたトランジスタと、上記トランジスタのコレクタと電源との間に接続された負荷インピーダンス素子と、上記出力端子に接続された検波回路と、上記検波回路が上記出力端子に接続されない他方に接続された第1の抵抗と、上記第1の抵抗が上記検波回路に接続されない他方とグランドとの間に接続された第2の抵抗と、入力の片方がリファレンス電圧源に接続され、入力の他方が上記第1の抵抗と上記第2の抵抗の共通する点に接続されたコンパレータと、上記トランジスタのベースとの間に接続され、上記コンパレータの出力により可変されるバイアス回路と、上記コンパレータの入力の他方に接続された電源検出回路と、を備えている。
【0073】
この構成によれば、高出力化を可能にし、保護機能を有する、高周波電力増幅器が構成できる。
【0074】
なお、上記コンパレータは、ヒステリシス特性を備えることがより好ましい。これにより、ノイズ等により検出電圧が変動したときの誤作動を防止することができる。
【0075】
なお、上記バイアス回路は、第1の電流源と上記コンパレータの出力により可変されるスイッチ1とを直列に接続した第1の直列回路で構成されていることがより好ましい。この構成によれば、上記トランジスタを保護するために、上記トランジスタのベースへ供給するバイアス電流を遮断することができる。
【0076】
また、上記バイアス回路は、上記第1の直列回路と第2の電流源とを並列に接続した第1の並列回路に構成されていることがより好ましい。この構成によれば、上記トランジスタを保護するために、上記トランジスタのベースへ供給するバイアス電流を減少させることができる。
【0077】
また、上記バイアス回路は、第1のバイアス電圧源と上記コンパレータの出力により可変される第1のスイッチとを並列に接続した第2の並列回路で構成されていることがより好ましい。この構成によれば、上記トランジスタを保護するために、第1のバイアス電圧源の両端をショートさせ、上記トランジスタのベース電圧をグランドに接地することができる。
【0078】
さらに、上記バイアス回路は、上記第2の並列回路と第2のバイアス電圧源とを直列に接続した第2の直列回路で構成されていることがより好ましい。この構成によれば、上記トランジスタを保護するために、第1のバイアス電圧源の両端をショートさせ、上記トランジスタのベース電圧を減圧させることができる。
【0079】
上記第1の抵抗と上記第2の抵抗との間に第2のスイッチを備えていることがより好ましい。この構成によれば、保護機能を動作させないときに、第2のスイッチをオフさせることにより、上記第1の抵抗および上記第2の抵抗に流れる電流を遮断することができる。
【0080】
上記負荷インピーダンス素子は、インダクタであることがより好ましい。この構成によれば、高周波電力増幅器は、高い出力振幅電圧VAを得ることができる。
【0081】
また、上記負荷インピーダンス素子は、インダクタとコンダクタとを並列に接続した共振回路で構成されていることがより好ましい。この構成によれば、高周波電力増幅器は、特定の周波数において、インダクタのみで構成したときと比較して、より高い出力振幅電圧VAを得ることができる。
【0082】
また、記載の高周波電力増幅器のいずれかにおいて構成される、高周波低雑音増幅器であってもよい。この構成によれば、高出力化を可能にし、保護機能を有する、低雑音増幅器を実現することができる。
【0083】
(実施の形態2)
図8に本発明の実施の形態を説明するための高周波電力増幅器の構成を示す。実施の形態1は、高周波電力増幅器の出力振幅電圧V
Aを検出して、下限動作電源電圧VCC_Lにおいて高出力化を可能にする、保護機能を有する、高周波電力増幅器の提案について説明した。実施の形態2では、電源を検出することで、動作範囲の上限温度において電源電圧範囲拡大を可能とする、保護機能を有する、高周波電力増幅器の提案について説明する。また、バイアス回路、及び負荷インピーダンス素子の構成、動作については、実施の形態1と同じであるため、省略する。
【0084】
〔構成〕
実施の形態2の構成について、
図8で説明する。入力端子801は、トランジスタ802のベースに接続され、トランジスタ802は、エミッタがグランドに接続され、コレクタが負荷インピーダンス素子804、抵抗807、及び出力端子803に接続されている。温度検出回路806は、電流源を含み、温度に応じて電流源の電流量を制御する。この電流源の電流は、抵抗807と抵抗808の共通する点V
1から温度検出回路806に入力される。共通する点V
1は、直列に接続された抵抗107と抵抗108との接続点である。コンパレータ810は、プラス側の入力にリファレンス電圧源809が接続され、マイナス側の入力に、点V
1が接続され、またグランドに対して抵抗808が接続されている。コンパレータ810の出力には、トランジスタ802のベースに供給するためのバイアス回路811が接続された。また、コンパレータ810に、プラス側の入力に点V
1が接続され、マイナス側の入力にリファレンス電圧源809が接続されてもよい。また、コンパレータ110はヒステリシス特性を備えており、ノイズ等により検出電圧が変動したときの誤動作を防止することができる。
【0085】
〔動作〕
まず、
図8において、トランジスタ802の破壊電圧を超えることによる破壊を防止することを可能にする、高周波電力増幅器の保護機能について説明する。入力端子801から入力された信号は、トランジスタ802により増幅され、出力端子803へ出力される。電源電圧VCCは、抵抗807と抵抗808によって分圧される。電源電圧VCCが上昇することにつれて、抵抗808にかかる電圧、つまりコンパレータ810のマイナス側の入力の電圧が上昇する。コンパレータ810のマイナス側の入力の電圧が、リファレンス電圧源809より上昇すると、コンパレータ810の出力が反転し、バイアス回路811の電流、もしくは電圧が可変される。これにより、トランジスタ802のベースへ供給される電流もしくは、電圧が可変され、トランジスタ802の出力電圧V
OUTが破壊電圧を超えて、トランジスタ802が破壊に至ることを防ぐことができる。
【0086】
次に、高周波電力増幅器の電源電圧範囲の拡大について説明する。高周波電力増幅器の出力振幅電圧V
Aは、高周波電力増幅器の温度に依存し、温度が上昇するにつれて、小さくなる。
図9の(A)に動作範囲の下限温度T_Lのとき、
図9の(B)に動作範囲の上限温度T_Hのときのトランジスタ802の出力電圧V
OUTの波形例を示す。
図9の(A)に示すように、上限動作電源電圧VCC_Hでのトランジスタ802の出力電圧V
OUTの最大値が、トランジスタ802の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXとなる。一方、
図9の(B)に示すように、温度が高くなり、出力振幅電圧V
Aが小さくなる分、
図9の(A)と同じ上限動作電源電圧VCC_Hでのトランジスタ802の出力電圧V
OUTの最大値が、トランジスタ802の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧V
CE_MAXによりも低くなる。このため、トランジスタ802の出力電圧V
OUTの最大値が電圧V
CE_MAXに到達しない電圧範囲内において、上限動作電源電圧VCC_Hを上げてもトランジスタ802の破壊は起こらないが、保護機能は、電源電圧VCCを検出して動作するため、上限動作電源電圧VCC_Hが少しでも上昇すると保護機能が動作してしまう。これを回避するため、本実施の形態2では、温度検出回路806を搭載している。以降に効果を説明する。
【0087】
前述した保護機能で説明したように、
図8において、電源電圧VCCは、抵抗807と抵抗808によって分圧される。抵抗808は、抵抗807から流れてきた電流から、温度検出回路806へ流れ込む電流を差し引いた電流が流れる。これにより、温度検出回路806へ流し込む電流が増加するほど、抵抗808にかかる電圧は減少するため、コンパレータ810の出力が反転するための電圧を高く設定することができる。よって温度が高い場合に、温度検出回路806へ流し込む電流を増加させることで、上限動作電源電圧VCC_Hを上げることができ、高周波電力増幅器の電源電圧範囲の拡大が可能となる。
【0088】
図8において、詳しい効果について説明する。リファレンス電圧源109の電圧をV
REF、抵抗807、抵抗808の抵抗値をそれぞれR
1、R
2、各電流値をI
1、I
2とし、温度検出回路806へ流し込む電流をI
3とする。また、出力振幅電圧V
Aは、
【数7】
で与えられるとし、Kは係数、V
A0は定数である。また、
図10に、横軸を温度T、縦軸を出力振幅電圧V
Aにしたときのグラフを示す。
図8から、
【数8】
が導かれる。これらの式より、上限動作電源電圧VCC_Hは、
【数9】
となる。この式より、温度検出回路806へ流し込む電流I
3の増加に伴い、トランジスタ802の保護機能を検出する電圧である、上限動作電源電圧VCC_Hを拡大することができる。
【0089】
上限動作電源電圧VCC_Hが最小となる上限動作電源電圧の最小電圧VCC_H
_MINは、温度検出回路806へ流し込む電流I
3が0[A]のときであり、
【数10】
となる。上限動作電源電圧の最小電圧VCC_H
_MINは、動作範囲の下限温度T_Lにおける上限動作電源電圧VCC_Hである。トランジスタ802の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧を超えない電圧V
CE_MAXまで、温度検出回路806へ流し込む電流I
3を最大まで増加させたとき、上限動作電源電圧VCC_Hを最大とする上限動作電源電圧の最大電圧VCC_H
_MAXは、
【数11】
となり、そのときの温度検出回路806へ流し込む電流I
3が最大となるときの最大電流I
3_MAXは、
【数12】
となる。
【0090】
図11に、横軸を温度検出回路806へ流し込む電流I
3、縦軸を上限動作電源電圧VCC_Hにしたときのグラフを示す。温度検出回路806へ流し込む電流I
3は0[A]のとき、上限動作電源電圧VCC_Hは、上限動作電源電圧の最小電圧VCC_H
_MINとなり、最大電流I
3_MAXで、上限動作電源電圧の最大電圧VCC_H
_MAXとなる。
【0091】
図12に、横軸を温度T、縦軸を温度検出回路806へ流し込む電流I
3にしたときのグラフを示す。動作範囲の下限温度T_Lでは、温度検出回路806へ流し込む電流I
3は0[A]となり、動作範囲の上限温度T_Hでは、最大電流I
3_MAXとなる。
【0092】
図13に、トランジスタ802の出力電圧V
OUTの波形を示す。
図13の(A)は、動作範囲の下限温度T_Lにおける出力信号の波形例を示す。電源上限動作電源電圧VCC_Hは、上限動作電源電圧の最小電圧VCC_H
_MINで動作する。出力振幅電圧V
Aは、動作範囲の下限温度T_Lで動作するときの出力振幅電圧V
Aで決定され、最大となり、出力振幅電圧の最大電圧V
A_MAXとなる。
図13の(B)は、動作範囲の上限温度T_Hにおける出力信号の波形例を示す。実線の波形は、上限動作電源電圧の最小電圧VCC_H
MINで動作している波形例である。動作範囲の上限温度T_Hでは、出力振幅電圧V
Aは、最小となり、出力振幅電圧の最小電圧V
A_MINとなる。
【0093】
点線の波形は、上限動作電源電圧の最大電圧VCC_H_MAXで動作している波形例である。動作範囲の上限温度T_Hで、出力振幅電圧の最小電圧VA_MINとなるため、トランジスタ802の破壊電圧よりも低い予め定めた電圧VCE_MAXを超えない電圧まで、温度検出回路806へ流し込む電流I3を増加させることで、上限動作電源電圧VCC_H_MAXを取ることができる。
【0094】
よって、温度検出回路806がない場合は、動作範囲の下限温度T_Lにおいて、上限動作電源電圧VCC_Hが固定され、電源電圧範囲の拡大ができなかったが、温度検出回路806を搭載し、温度検出回路806へ流し込む電流I3を制御することにより、上限動作電源電圧VCC_Hを設定することができるため、高周波電力増幅器の電源電圧範囲の拡大を実現することができる。
【0095】
また本実施の形態2にいて、電源電圧の検出のみに限らず、電源から高周波電力増幅器へ流入する電源電流値を検出してもよい。
【0096】
また、本実施の形態2は、高周波低雑音増幅器へ適用することにより、高出力化を可能にし、保護機能を有する、高周波低雑音増幅器を実現することができる。
【0097】
以上説明してきたように実施の形態2の高周波電力増幅器は、前記電源に接続された第1の抵抗と、前記第1の抵抗とグランドとの間に接続された第2の抵抗と、を備え、前記コンパレータは、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点に接続される。
【0098】
これによれば、第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電位は、電源電圧に応じて調整されるので、保護機能を有しながらも、電源電圧範囲の拡大を容易にすることができる。ここで、前記高周波電力増幅器の温度を検出し、温度に応じた電流を、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点から入力する温度検出回路を備えてもよい。
【0099】
これによれば、第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電位は、さらに、温度検出回路が入力する電流によって温度に応じて調整されるので、保護機能を有しながらも、電源電圧範囲の拡大を容易にすることができる。
【0100】
また、本発明の他の形態に係る、高周波電力増幅器は、入力信号が入力端子に入力され、トランジスタにより増幅された信号が出力端子に出力される、高周波電力増幅器であって、入力信号が入力端子に入力され、トランジスタにより増幅された信号が出力端子に出力される、高周波電力増幅器であって、ゲートが入力端子に接続され、コレクタが出力端子に接続されたトランジスタと、上記トランジスタのコレクタと電源との間に接続された負荷インピーダンス素子と、上記電源に接続された第3の抵抗と、上記第3の抵抗が出力端子に接続されない他方とグランドとの間に接続された第4の抵抗と、入力の片方がリファレンス電圧源に接続され、入力の他方が上記第3の抵抗と上記第4の抵抗の共通する点に接続されたコンパレータと、上記トランジスタのベースとの間に接続され、上記コンパレータの出力により可変されるバイアス回路と、上記コンパレータの入力の他方に接続された温度検出回路と、を備えている。
【0101】
この構成によれば、電源電圧範囲を拡大することを可能にし、保護機能を有する、高周波電力増幅器が構成できる。
【0102】
なお、上記コンパレータは、ヒステリシス特性を備えることがより好ましい。これにより、ノイズ等により検出電圧が変動したときの誤作動を防止することができる。
【0103】
なお、上記バイアス回路は、第1の電流源と上記コンパレータの出力により可変される第1のスイッチとを直列に接続した第1の直列回路で構成されていることがより好ましい。この構成によれば、上記トランジスタを保護するために、上記トランジスタのベースへ供給するバイアス電流を遮断することができる。
【0104】
なお、上記バイアス回路は、上記第1の直列回路と第2の電流源とを並列に接続した第1の並列回路に構成されることがより好ましい。この構成によれば、上記トランジスタを保護するために、上記トランジスタのベースへ供給するバイアス電流を減少させることができる。
【0105】
なお、上記バイアス回路は、第1のバイアス電圧源と上記コンパレータの出力により可変される第1のスイッチとを並列に接続した第2の並列回路で構成されてもいることがより好ましい。この構成によれば、上記トランジスタを保護するために、第1のバイアス電圧源の両端をショートさせ、上記トランジスタのベース電圧をグランドに接地することができる。
【0106】
なお、上記バイアス回路は、上記第2の並列回路と第2のバイアス電圧源とを直列に接続した第2の直列回路で構成されていることがより好ましい。この構成によれば、上記トランジスタを保護するために、第1のバイアス電圧源の両端をショートさせ、上記トランジスタのベース電圧を減圧させることができる。
【0107】
なお、上記第3の抵抗と上記第4の抵抗との間に第2のスイッチを備えていることがより好ましい。この構成によれば、保護機能を動作させないときに、第2のスイッチをオフさせることにより、上記第3の抵抗および上記第4の抵抗に流れる電流を遮断することができる。
【0108】
なお、上記負荷インピーダンス素子は、インダクタであることがより好ましい。この構成によれば、高周波電力増幅器は、高い出力振幅電圧VAを得ることができる。
【0109】
なお、上記負荷インピーダンス素子は、インダクタとコンダクタとを並列に接続した共振回路で構成されることがより好ましい。この構成によれば、高周波電力増幅器は、特定の周波数において、インダクタのみで構成したときと比較して、より高い出力振幅電圧VAを得ることができる。
【0110】
なお、高周波電力増幅器のいずれかにおいて構成される、高周波低雑音増幅器であることがより好ましい。この構成によれば、電源電圧範囲の拡大を可能にし、保護機能を有する、低雑音増幅器を実現することができる。
【0111】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示として解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されるものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の高周波電力増幅器は、保護機能を有し、高出力化と、電源電圧範囲の拡大とを可能にすることができる。このため、スマートフォン等の小型無線通信機器、高出力を必要とする基地局向け無線通信機器、またあらゆる無線通信機器において、高周波電力増幅器は、有効である。
【符号の説明】
【0113】
101 入力端子
102 トランジスタ
103 出力端子
104 負荷インピーダンス素子
105 検波回路
106 電源検出回路
107 抵抗
108 抵抗
109 リファレンス電圧源
110 コンパレータ
111 バイアス回路
201、201a スイッチ
202 電流源
203 電流源
204 バイアス電圧源
205 バイアス電圧源
801 入力端子
802 トランジスタ
803 出力端子
804 負荷インピーダンス素子
806 温度検出回路
807 抵抗
808 抵抗
809 リファレンス電圧源
810 コンパレータ
811 バイアス回路