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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】固形経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/175 20160101AFI20230807BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230807BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230807BHJP
   A61P 25/26 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A23L33/175
A61K31/198
A61P3/02
A61P25/26
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/12
A61K47/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019026576
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020130022
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 佳大
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
(72)【発明者】
【氏名】森谷 愛美
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-330124(JP,A)
【文献】健康美容EXPO [オンライン], 2015.05.28 [検索日 2022.11.25], インターネット:<URL:https://news.e-expo.net/release/2015/05/post-136-51.html/>
【文献】茶研報,1996年,Vol.83,pp.21-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/175
A61K 31/198
A61P 3/02
A61P 25/26
A61K 9/14
A61K 9/20
A61K 47/12
A61K 47/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)オルニチン及びその塩から選択される少なくとも1種、
(B)カフェイン、及び
(C)酸味料 0.3~質量%
を含有し、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.001~0.35であり、
成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が1.030である、
固形経口組成物。
【請求項2】
成分(A)の含有量が1~60質量%である、請求項1記載の固形経口組成物。
【請求項3】
成分(B)の含有量が0.005~5質量%である、請求項1又は2記載の固形経口組成物。
【請求項4】
成分(C)がクエン酸、リンゴ酸、酒石酸及びそれらの塩から選択される1種又は2種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の固形経口組成物。
【請求項5】
更に成分(D)として非重合体カテキン類を含み、成分(D)の含有量が0.2~20%質量である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固形経口組成物。
【請求項6】
粉末又は錠剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の固形経口組成物。
【請求項7】
飲食品である、請求項1~6のいずれか1項に記載の固形経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オルニチンはアミノ酸の一種であり、様々な健康機能を有することから、近年オルニチンを添加した飲食品が多数上市されている(特許文献1~3)。
【0003】
また、酸味は、甘味、塩味、苦味、旨味とともに五原味の1つであり、飲食品の風味を構成するために極めて重要な要素である。このような酸味を飲食品に付与する目的で、酸味料が多用されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-131735号公報
【文献】特開2010-148453号公報
【文献】特開2015-12819号公報
【文献】特許第3481245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、酸味料を含有する固形経口組成物にオルニチンを添加すると、酸味がオルニチンにより増強されるだけでなく、酸味が過度に持続してスッキリ感が損なわれるという課題が存在することを見出した。そして、かかる課題は、製品形態が固形である経口組成物に特異的な課題であることが判明した。
本発明の課題は、オルニチンを高含有しながらも、酸味の持続感が改善された酸味料含有固形経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、オルニチン及び/又はその塩と、特定量の酸味料を含有する固形経口組成物において、オルニチン及び/又はその塩に対してカフェインを特定の量比で含有させ、オルニチン及び/又はその塩と酸味料との量比を特定範囲内に制御することで、オルニチンにより増強した酸味の持続感を改善できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)オルニチン及びその塩から選択される少なくとも1種、
(B)カフェイン、及び
(C)酸味料 0.3~50質量%
を含有し、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.001~0.35であり、
成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.05~50である、
固形経口組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オルニチンを高含有しながらも、酸味の持続感が改善された酸味料含有固形経口組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「固形経口組成物」とは、経口摂取に供される固形製品をいう。固形経口組成物の形態としては、常温(20℃±15℃)において固形であれば特に限定されないが、例えば、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等を挙げることができる。中でも、固形経口組成物の製品形態としては、粉末、顆粒、錠剤が好ましく、粉末、錠剤が更に好ましい。固形経口組成物中の固形分量は、通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、殊更に好ましくは97質量%以上である。なお、かかる固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。
【0010】
本発明の固形経口組成物は、成分(A)としてオルニチン及びその塩から選択される少なくとも1種を含有する。
成分(A)は、L体でも、D体でも、これらの混合物(例えば、ラセミ体)であってもよいが、L体が好ましい。成分(A)は、天然由来品でも、化学合成品でもよく、更に市販品であってもよい。天然由来品としては、例えば、シジミからの抽出物が挙げられ、また化学合成品としては、例えば、発酵法により製造したものが挙げられ、必要によりカラムクロマトグラフィ等により精製してもよい。
【0011】
オルニチンの塩としては、例えば、酸付加塩、アミノ酸付加塩、有機アミン付加塩、アンモニウム塩、金属塩等が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α-ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。アミノ酸塩としては、例えば、グリシン塩、フェニルアラニン塩、リジン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等が挙げられ、有機アミン付加塩としては、例えば、モルホリン塩、ピペリジン塩等を挙げることができる。アンモニウム塩としては、例えば、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられ、金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等を挙げることができる。オルニチンの塩は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
中でも、成分(A)としては、オルニチンの塩が好ましく、オルニチン酸付加塩、オルニチンアミノ酸塩がより好ましく、L-オルニチン塩酸塩、L-オルニチンL-アスパラギン酸塩が更に好ましい。
【0013】
本発明の固形経口組成物中の成分(A)の含有量は、オルニチンの強化、生理効果の観点から、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、4質量%以上が更に好ましく、6質量%以上がより更に好ましく、8質量%以上が殊更に好ましく、またオルニチンによる酸味の増強抑制の観点から、60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、18質量%以下が更に好ましく、15質量%以下がより更に好ましく、13質量%以下が殊更に好ましい。かかる成分(A)の含有量の範囲としては、本発明の固形経口組成物中に、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは2~30質量%であり、更に好ましくは3~30質量%であり、更に好ましくは4~25質量%であり、更に好ましくは6~18質量%であり、より更に好ましくは6~15質量%であり、殊更に好ましくは8~13質量%である。なお、成分(A)が塩の形態である場合、成分(A)の含有量は遊離オルニチンに換算した値とする。また、成分(A)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、アミノ酸分析装置を用いることができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0014】
本発明の固形経口組成物は、成分(B)としてカフェインを含有する。成分(B)は、原料に由来するものでも、新たに加えられたものでもよい。また、成分(B)は、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、天然由来品でもよい。
【0015】
本発明の固形経口組成物中の成分(B)の含有量は、酸味の持続感の改善の観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上が更に好ましく、0.07質量%以上が殊更に好ましく、またカフェイン由来の苦味抑制の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下が更に好ましく、0.8質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下がより更に好ましく、0.1質量%以下が殊更に好ましい。成分(B)の含有量の範囲としては、本発明の固形経口組成物中に、好ましくは0.005~5質量%であり、より好ましくは0.01~3質量%であり、更に好ましくは0.03~2.5質量%であり、更に好ましくは0.07~1.5質量%であり、更に好ましくは0.07~0.8質量%であり、より更に好ましくは0.07~0.3質量%であり、殊更に好ましくは0.07~0.1質量%である。なお、成分(B)が水和物の形態である場合、成分(B)の含有量は無水物に換算した値とする。また、成分(B)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0016】
本発明の固形経口組成物は、成分(C)として酸味料を含有する。
成分(C)は、有機酸でも、無機酸でも、それらの塩であってもよく、飲食品に通常使用されるものであれば特に限定されない。成分(C)は、1種又は2種以上含有させることができる。
有機酸としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、アジピン酸、フィチン酸、フマル酸等が挙げられる。また、無機酸としては、例えば、リン酸等が挙げられる。塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩を挙げることができる。中でも、酸味の質の観点から、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸から選択される1種又は2種以上が更に好ましい。
【0017】
本発明の固形経口組成物中の成分(C)の含有量は0.3~50質量%であるが、酸味の付与の観点から、0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上が更に好ましく、1.5質量%以上が殊更に好ましく、また酸味バランスの観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が殊更に好ましい。成分(C)の含有量の範囲としては、本発明の固形経口組成物中に、好ましくは0.5~40質量%であり、より好ましくは0.5~30質量%であり、更に好ましくは0.7~20質量%であり、より更に好ましくは1.2~10質量%であり、殊更に好ましくは1.5~4質量%である。
【0018】
本発明の固形経口組成物は、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.001~0.35であるが、酸味の持続感の改善の観点から、0.0015以上が好ましく、0.003以上がより好ましく、0.006以上が更に好ましく、またオルニチンによる酸味の増強抑制の観点から、0.3以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が更に好ましい。かかる質量比[(B)/(A)]の範囲としては、好ましくは0.0015~0.3であり、より好ましくは0.0015~0.25であり、更に好ましくは0.003~0.15であり、殊更に好ましくは0.006~0.15である。
【0019】
本発明の固形経口組成物は、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.05~50であるが、オルニチンの強化、生理効果の観点から、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、1.5以上がより更に好ましく、2.5以上が殊更に好ましく、またオルニチンによる酸味の増強抑制の観点から、30以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。かかる質量比[(A)/(C)]の範囲としては、好ましくは0.1~30であり、より好ましくは0.3~15であり、更に好ましくは1.0~10であり、より更に好ましくは1.5~10であり、殊更に好ましくは2.5~10である。
【0020】
本発明の固形経口組成物は、成分(D)として非重合体カテキン類を含有することができる。ここで、本明細書において「(D)非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン等の非ガレート体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のガレート体を併せての総称である。本発明においては、上記8種の非重合体カテキン類のうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、成分(D)は、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、非重合体カテキン類を含有する植物から抽出したものでもよい。
【0021】
本発明の固形経口組成物の成分(D)の含有量は、酸味の持続感改善の観点から、0.2質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、また苦渋味の抑制の観点から、20質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。成分(D)の含有量の範囲としては、本発明の固形経口組成物中に、好ましくは0.2~20質量%であり、より好ましくは2.0~5質量%である。なお、成分(D)の含有量は、上記8種の非重合体カテキン類の合計量に基づいて定義される。また、成分(D)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィーで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0022】
また、本発明の固形経口組成物は、必要に応じて許容される担体を含有することができる。担体としては、例えば、賦形剤(例えば、澱粉又はデキストリン等の澱粉分解物、グルコース、ガラクトース、フルクトース等の単糖類、スクロース、ラクトース、ラクトース、パラチノース等の二糖類、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、還元パラチノース等の糖アルコール);結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、メチルセルロース、硬化油等);崩壊剤(例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等);滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化ケイ素等);嬌味剤(例えば、ステビア等);オリゴ糖、寒天、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、リン酸水素カルシウム、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、希釈剤等の担体が挙げられる。
【0023】
中でも、担体としては、賦形剤が好適に使用され、賦形剤の中では、デキストリン及び糖アルコールから選択される1種以上が好ましい。ここで、本明細書において「デキストリン」とは、でんぷん分解物の一種であり、でんぷんを酸処理又は加熱処理して部分的に加水分解し低分子化した化合物である。賦形剤がデキストリンである場合、デキストリンは、グリコシド結合が鎖状に結合していても、環状に結合していても、これらの混合物であってもよく、糖の結合方式は特に限定されない。また、デキストリンのデキストロース当量(DE)は、好ましくは1~40であり、より好ましくは2~30であり、更に好ましくは3~20であり、殊更に好ましくは3~16である。なお、デキストリン及びデキストロース当量(DE)の分析法としては、例えば、SOMOGYI法等を挙げることができる。
【0024】
賦形剤が糖アルコールである場合、例えば、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、パラチニット等を挙げることができる。糖アルコールは、1種又は2種以上を使用することができる。
【0025】
担体の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で、担体の種類により適宜設定することができる。
【0026】
本発明の固形経口組成物は、所望により、甘味料、酸味料、炭酸ガス、香料、ビタミン、ミネラル、酸化防止剤、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、茶エキス、果汁エキス、野菜エキス、花蜜エキス、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0027】
本発明の固形経口組成物の好適な態様としては、飲食品を挙げることができる。飲食品としては、例えば、インスタント飲料;ゼリー、グミ、キャンディ、スナック、ビスケット、チョコレート、米菓等の菓子等が挙げられるが、これらに限定されない。飲食品は、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等)とすることもできる。中でも、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、散剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤等が好ましい。
【0028】
また、本発明の固形経口組成物は、飲食品に添加してもよい。
本発明の固形経口組成物が添加される飲食品は特に限定されないが、例えば、炭酸飲料、果汁飲料、野菜ジュース、スポーツドリンク、栄養ドリンク、コーヒー飲料、ココア飲料、茶飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、豆乳飲料等の飲料一般、ヨーグルト、ゼリー、プディング、ムース、水羊羹等のデザート、アイスクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、シャーベット等の冷菓又は氷菓、ケーキ、クッキー、ビスケット、チョコレート、パイ、クラッカー、スナック、チューインガム、ハードキャンディ、ソフトキャンディー、ヌガー、ゼリービーンズ、グミ、饅頭、煎餅、かき餅、あられ、羊羹等の菓子、タレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ、シロップ等の調味料、クリーム、ジャム、パン、練り製品、食肉加工品、レトルト食品、缶詰、漬け物、佃煮、冷凍食品等を挙げることができる。
【0029】
本発明の固形経口組成物の添加方法としては特に制限はなく、例えば、固形経口組成物の飲食品への直接添加や、水等の液体を用いて希釈してからの飲食品への添加、製品への被覆、フィリング、製造工程中の生地への混練としての使用等が挙げられ、最終的に喫食する飲食品に固形経口組成物が含有されていればよい。中でも、好適な添加方法としては、飲食品に直接ふりかけて喫食する態様が挙げられる。
【0030】
本発明の固形経口組成物の添加量は飲食品の種類により適宜選択可能であるが、飲食品100質量部に対して固形経口組成物を、通常0.01~30質量部、好ましくは0.03~20質量部、更に好ましくは0.05~15質量部、殊更に好ましくは0.1~10質量部である。
【0031】
本発明の固形経口組成物は適宜の方法で製造することができるが、例えば、成分(A)、成分(B)及び成分(C)、必要により他の成分を配合し、成分(C)の含有量、質量比[(B)/(A)]及び質量比[(A)/(C)]を調整して製造することができる。成分(A)、成分(B)及び成分(C)の混合順序は特に限定されず、任意の順序で添加しても、3者を同時に添加してもよい。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法を採用することが可能であり、混合装置を使用しても構わない。混合装置の混合方式は、容器回転型でも、容器固定型でもよい。容器回転型として、例えば、水平円筒型、V型、ダブルコーン型、立方体型等を採用することができる。容器固定型として、例えば、リボン型、スクリュー型、円錐形スクリュー型、パドル型、流動層型、フィリップスブレンダ-等を採用することができる。また、公知の造粒法により造粒物としてもよい。造粒方法としては、例えば、噴霧造粒、流動層造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒、押出造粒、粉末被覆造粒等が挙げられる。なお、造粒条件は、造粒方法により適宜選択することができる。また、錠剤とする場合には、湿式打錠及び乾式打錠のいずれでもよく、公知の圧縮成形機を使用することができる。
【実施例
【0032】
1.オルニチン及びその塩の分析
試料0.5gを精秤後、10w/v%スルホルサリチル酸溶液25mLを加え、更に3mol/L水酸化ナトリウム溶液を加え混和する。その後、クエン酸ナトリウム緩衝液でpH2.2に調製し、100mLに定容したものを、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク13A,孔径0.2μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、アミノ酸自動分析に供する。
【0033】
アミノ酸自動分析計操作条件
・機種:JLC-500/V(日本電子株式会社)
・カラム:LCR-6,φ4mm×120mm(日本電子株式会社)
・移動相:クエン酸リチウム緩衝液(P-12~P-15,P-21)(日本電子株式会社)
・反応液:日本電子用ニンヒドリン発色液キット-II(和光純薬工業株式会社)
・流量:移動相0.50mL/min,反応液0.30mL/min
・測定波長:570nm
【0034】
2.カフェインの分析
純水で溶解希釈した試料を、高速液体クロマトグラフ(型式SCL-10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L-カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定する。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行う。なお、グラジエント条件は以下の通りである。
【0035】
濃度勾配条件(体積%)
時間 A液濃度 B液濃度
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
60分 97% 3%
【0036】
3.酸味料の分析
カルボン酸の分析
試料10gに5%過塩酸5mLを加え、水で50mLに定容する。これを必要に応じて各種カルボン酸の検量線の範囲内に入るように水で希釈したものを試験溶液とする。試験溶液を高速液体クロマトグラフに注入し、電気伝導度を測定し、各種カルボン酸を検量線より算出する。
【0037】
・分離カラム:Shim-pack SCR-102H(島津製作所製)
・移動相 :5mmol/L p-トルエンスルホン酸
・検出試薬 :5mmol/L p-トルエンスルホン酸、
100μmol/L EDTA、
20mmol/L Bis-Tris緩衝液
・注入量 :10μL
・流量 :0.8mL/分
・電気伝導度検出器:CDD-10AVP(島津製作所製)
・温度 :40℃
【0038】
4.非重合体カテキン類の分析
純水で溶解希釈した試料を、高速液体クロマトグラフ(型式SCL-10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L-カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定する。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行う。なお、グラジエント条件は以下の通りである。
【0039】
濃度勾配条件(体積%)
時間 A液濃度 B液濃度
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
60分 97% 3%
【0040】
5.官能評価
オルニチン塩酸塩とクエン酸とを用いて酸味の持続感の強さを5段階に調整した、表1に示す「持続感標準固形経口組成物」を調製した。そして、専門パネル4名が各濃度の「持続感標準固形経口組成物」について、表1に示す評点とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが「持続感標準固形経口組成物」をオルニチン濃度が低いものから順に摂取し、酸味の持続感の強さを記憶する。次いで、各専門パネルが各持続感標準固形経口組成物を摂取し、酸味の持続感の程度を評価し、「持続感標準固形経口組成物」の中から酸味の持続感が最も近いものを決定する。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。なお、評点は、数字が小さくなるに連れて、酸味が長く持続してしまう一方で、数字が大きいほど、酸味の持続感が良好であることを意味する。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1~6及び比較例1、2
表2に示す各成分を均一に混合し、各固形経口組成物を調製した。得られた固形経口組成物について分析及び官能評価を行った。その結果を表2に併せて示す。
【0043】
【表2】
【0044】
実施例7~10及び比較例3~5
表3に示す各成分を均一に混合し、各固形経口組成物を調製した。得られた固形経口組成物について分析及び官能評価を行った。その結果を表3に併せて示す。
【0045】
【表3】
【0046】
実施例11~14及び比較例6~9
表4に示す各成分を均一に混合し、各固形経口組成物を調製した。得られた固形経口組成物について分析及び官能評価を行った。その結果を、実施例3及び比較例1の結果とともに表4に併せて示す。
【0047】
【表4】
【0048】
実施例15、16
表5に示す各成分を均一に混合し、各固形経口組成物を調製した。得られた固形経口組成物について分析及び官能評価を行った。その結果を、実施例3の結果とともに表5に併せて示す。
【0049】
【表5】
【0050】
実施例17及び比較例10
表6に示す各成分を均一に混合し、各固形経口組成物を調製した。得られた固形経口組成物について分析及び官能評価を行った。その結果を表6に併せて示す。
【0051】
【表6】
【0052】
実施例18
表7に示す各成分を均一に混合し、各固形経口組成物を調製した。得られた固形経口組成物について分析及び官能評価を行った。その結果を、実施例3及び比較例1の結果とともに表7に併せて示す。
【0053】
【表7】
【0054】
表2~7から、オルニチン及び/又はその塩と、酸味料を含有する固形経口組成物において、オルニチン及び/又はその塩に対してカフェインを一定の量比で含有させ、オルニチン及び/又はその塩と酸味料との量比を特定範囲内に制御することで、オルニチンにより増強した酸味の持続感を改善できることがわかる。