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特許7326005伸縮コンベヤフレーム機構、テールピース台車システムおよび延伸ベルトコンベヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】伸縮コンベヤフレーム機構、テールピース台車システムおよび延伸ベルトコンベヤ
(51)【国際特許分類】
   B65G 21/14 20060101AFI20230807BHJP
   E21D 9/12 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B65G21/14 A
E21D9/12 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019075586
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020172375
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】服部 修
(72)【発明者】
【氏名】布村 進
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028670(JP,A)
【文献】特開2018-080009(JP,A)
【文献】実開昭51-104588(JP,U)
【文献】特開2003-065000(JP,A)
【文献】米国特許第5938004(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 21/14
E21D 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂および岩石の一方を少なくとも含む搬送対象物を搬送するための伸縮コンベヤフレーム機構であって、
複数のコンベヤローラと、
収納繰出装置と、
細長形状を有しており、前記複数のコンベヤローラが長手方向に移動可能に設置された伸縮可能な伸縮コンベヤフレームとを備え、
前記伸縮コンベヤフレームは、前記収納繰出装置に収納されることに伴い短縮されるとともに、前記収納繰出装置から繰り出されることに伴い延長される単一の収納繰出部材により構成され
前記伸縮コンベヤフレームは、前記複数のコンベヤローラを支持する第1のロープにより形成されており、
前記第1のロープとは別個の第2のロープにより形成され、隣接する前記コンベヤローラの各々を連結して隣接する前記コンベヤローラを離間させる間隔を画定するコンベヤローラ連結材をさらに備える、伸縮コンベヤフレーム機構。
【請求項2】
前記収納繰出部材は、巻き取りおよび繰り出されることが可能な巻取繰出部材を含み、
前記収納繰出装置は、前記巻取繰出部材の巻き取りおよび繰り出しを行う巻取繰出装置を含む、請求項1に記載の伸縮コンベヤフレーム機構。
【請求項3】
前記複数のコンベヤローラは、
キャリアローラ、および、リターンローラを有する第1コンベヤローラと、
前記キャリアローラ、前記リターンローラ、および、コンベヤベルトの短手方向の端部に当接することにより、前記コンベヤベルトの蛇行を修正する蛇行修正用ローラとを有する第2コンベヤローラとの両方を含む、請求項1または2に記載の伸縮コンベヤフレーム機構。
【請求項4】
前記伸縮コンベヤフレームは、
前記収納繰出装置により繰り出される際に、前記複数のコンベヤローラを互いに離間させて展開するとともに、
前記収納繰出装置により収納される際に、前記複数のコンベヤローラを互いに近接させて配置するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の伸縮コンベヤフレーム機構。
【請求項5】
前記コンベヤローラ連結材は、互いに隣接するコンベヤローラの各々を連結することにより、前記複数のコンベヤローラが互いに離間した際に、前記複数のコンベヤローラを離間させて配置するように構成されている、請求項4に記載の伸縮コンベヤフレーム機構。
【請求項6】
発破掘削により施工されるトンネルに使用される掘削ズリを搬送するためのテールピース台車システムであって、
伸縮コンベヤフレーム機構と、
前記伸縮コンベヤフレーム機構が搭載される単一の移動台車部を含むテールピース台車とを備え、
前記伸縮コンベヤフレーム機構は、
複数のコンベヤローラと、
収納繰出装置と、
細長形状を有しており、前記複数のコンベヤローラが長手方向に移動可能に設置された伸縮可能な伸縮コンベヤフレームとを含み、
前記伸縮コンベヤフレームは、前記収納繰出装置に収納されることに伴い短縮されるとともに、前記収納繰出装置から繰り出されることに伴い延長される単一の収納繰出部材により構成され
前記伸縮コンベヤフレームは、前記複数のコンベヤローラを支持する第1のロープにより形成されており、
前記伸縮コンベヤフレーム機構は、前記第1のロープとは別個の第2のロープにより形成され、隣接する前記コンベヤローラの各々を連結して隣接する前記コンベヤローラを離間させる間隔を画定するコンベヤローラ連結材をさらに含む、テールピース台車システム。
【請求項7】
前記伸縮コンベヤフレームは、掘削ズリの積み込み搬送時に、前記移動台車部の切羽側への前進に伴い切羽側に延長されるとともに、発破掘削時に、前記移動台車部の坑口側への後退に伴い坑口側に短縮されるように構成されている、請求項6に記載のテールピース台車システム。
【請求項8】
発破掘削により施工されるトンネルに使用される掘削ズリを搬送するための延伸ベルトコンベヤであって、
伸縮コンベヤフレーム機構と、
坑口側に配置されたヘッドプーリ装置と、
前記伸縮コンベヤフレーム機構が搭載される単一の移動台車部を含むテールピース台車とを備え、
前記伸縮コンベヤフレーム機構は、
複数のコンベヤローラと、
収納繰出装置と、
細長形状を有しており、前記複数のコンベヤローラが長手方向に移動可能に設置された伸縮可能な伸縮コンベヤフレームとを含み、
前記伸縮コンベヤフレームは、前記収納繰出装置に収納されることに伴い短縮されるとともに、前記収納繰出装置から繰り出されることに伴い延長される単一の収納繰出部材により構成され
前記伸縮コンベヤフレームは、前記複数のコンベヤローラを支持する第1のロープにより形成されており、
前記伸縮コンベヤフレーム機構は、前記第1のロープとは別個の第2のロープにより形成され、隣接する前記コンベヤローラの各々を連結して隣接する前記コンベヤローラを離間させる間隔を画定するコンベヤローラ連結材をさらに含む、延伸ベルトコンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮コンベヤフレーム機構、テールピース台車システムおよび延伸ベルトコンベヤに関し、特に、土砂や岩石などの搬送対象物の搬送に使用される伸縮コンベヤフレーム機構、テールピース台車システムおよび延伸ベルトコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土砂や岩石などの搬送対象物の搬送に使用されるテールピース台車が知られている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、土砂や岩石などの搬送対象物の搬送に使用されるスライド式テールピース台車が開示されている。スライド式テールピース台車は、コンベヤフレームおよびコンベヤベルトを備えた自走行可能な本体部と、本体部のコンベヤフレームおよびコンベヤベルトとは別個のコンベヤフレームおよびコンベヤベルトを備えた自走行可能なスライド部とを備えている。すなわち、スライド式テールピース台車は、互いに独立した2つの搬送機構(本体部、スライド部)により構成されている。スライド部は、搬送対象物である掘削ズリを積み込み可能に構成されている。スライド部は、本体部に対してスライド移動することにより、掘削ズリの積み込み位置を変更可能に構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】西松建設株式会社のNEWS&TOPICSに掲載“山岳トンネル工事における高速施工が可能な『高速ずり搬出システム』を開発-ずり搬出時間を最大30%以上削減可能な連続ベルトコンベヤシステム-”、[online]、[平成31年4月5日検索]、インターネット<URL:https://www.nishimatsu.co.jp/news/news.php?no=MjM1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のスライド式テールピース台車では、搬送対象物の積み込み位置を変更するために、互いに独立した2つの搬送機構を備えているため、装置構成が複雑化しているという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、搬送対象物の積み込み位置の変更を簡易な構成により行うことが可能な伸縮コンベヤフレーム機構、テールピース台車システムおよび延伸ベルトコンベヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の伸縮コンベヤフレーム機構は、土砂および岩石の一方を少なくとも含む搬送対象物を搬送するための伸縮コンベヤフレーム機構であって、複数のコンベヤローラと、収納繰出装置と、細長形状を有しており、複数のコンベヤローラが長手方向に移動可能に設置された伸縮可能な伸縮コンベヤフレームとを備え、伸縮コンベヤフレームは、収納繰出装置に収納されることに伴い短縮されるとともに、収納繰出装置から繰り出されることに伴い延長される単一の収納繰出部材により構成され、伸縮コンベヤフレームは、複数のコンベヤローラを支持する第1のロープにより形成されており、第1のロープとは別個の第2のロープにより形成され、隣接するコンベヤローラの各々を連結して隣接するコンベヤローラを離間させる間隔を画定するコンベヤローラ連結材をさらに備える
【0008】
この発明の伸縮コンベヤフレーム機構では、上記のように構成することによって、収納繰出装置を利用して、単一の収納繰出部材により構成された伸縮コンベヤフレーム(コンベヤベルト)を延長および短縮することにより、搬送対象物の積み込み位置を変更することができる。したがって、互いに独立した2つの搬送機構を備える従来構成と比較して、単一の収納繰出部材を延長および短縮する単一の搬送機構により、搬送対象物の積み込み位置を変更することができるので、搬送対象物の積み込み位置の変更を簡易な構成により行うことができる。また、従来のように互いに独立した2つの搬送機構を備える場合、搬送対象物の積み込み位置を変更する際に、2つの搬送機構の位置合わせが必要となる。一方、本発明では、上記のように単一の搬送機構を備えることにより、従来のような位置合わせが不要となるので、搬送対象物の積み込み位置を容易に変更することができる。
【0009】
上記伸縮コンベヤフレーム機構において、好ましくは、収納繰出部材は、巻き取りおよび繰り出されることが可能な巻取繰出部材を含み、収納繰出装置は、巻取繰出部材の巻き取りおよび繰り出しを行う巻取繰出装置を含む。このように構成すれば、巻取繰出装置により、巻取繰出部材を巻き取ることによって収納して短縮することができるので、巻取繰出部材を容易に短縮することができる。
【0010】
上記伸縮コンベヤフレーム機構において、好ましくは、複数のコンベヤローラは、キャリアローラ、および、リターンローラを有する第1コンベヤローラと、キャリアローラ、リターンローラ、および、コンベヤベルトの短手方向の端部に当接することにより、コンベヤベルトの蛇行を修正する蛇行修正用ローラとを有する第2コンベヤローラとの両方を含む。このように構成すれば、伸縮コンベヤフレームの延長および短縮を行う際に、コンベヤベルトが蛇行したとしても、蛇行修正用ローラにより蛇行を確実に修正することができる。
【0011】
上記伸縮コンベヤフレーム機構において、好ましくは、伸縮コンベヤフレームは、収納繰出装置により繰り出される際に、複数のコンベヤローラを互いに離間させて展開するとともに、収納繰出装置により収納される際に、複数のコンベヤローラを互いに近接させて配置するように構成されている。このように構成すれば、伸縮コンベヤフレームを繰り出すだけで、自動で複数のコンベヤローラを展開することができるとともに、伸縮コンベヤフレームを収納するだけで、自動で複数のコンベヤローラを近接して配置することができる。すなわち、複数のコンベヤローラを、容易に、展開および近接配置することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、コンベヤローラ連結材は、互いに隣接するコンベヤローラの各々を連結することにより、複数のコンベヤローラが互いに離間した際に、複数のコンベヤローラを略等間隔で離間させて配置するように構成されている。このように構成すれば、コンベヤローラの各々を連結するだけの簡易な構成により、複数のコンベヤローラが互いに離間した際に、複数のコンベヤローラを略等間隔で離間させて配置することができる。
【0013】
この発明のテールピース台車システムは、発破掘削により施工されるトンネルに使用される掘削ズリを搬送するためのテールピース台車システムであって、伸縮コンベヤフレーム機構と、伸縮コンベヤフレーム機構が搭載される単一の移動台車部を含むテールピース台車とを備え、伸縮コンベヤフレーム機構は、複数のコンベヤローラと、収納繰出装置と、細長形状を有しており、複数のコンベヤローラが長手方向に移動可能に設置された伸縮可能な伸縮コンベヤフレームとを含み、伸縮コンベヤフレームは、収納繰出装置に収納されることに伴い短縮されるとともに、収納繰出装置から繰り出されることに伴い延長される単一の収納繰出部材により構成され、伸縮コンベヤフレームは、複数のコンベヤローラを支持する第1のロープにより形成されており、伸縮コンベヤフレーム機構は、第1のロープとは別個の第2のロープにより形成され、隣接するコンベヤローラの各々を連結して隣接するコンベヤローラを離間させる間隔を画定するコンベヤローラ連結材をさらに含む
【0014】
この発明のテールピース台車システムでは、上記のように構成することにより、上記伸縮コンベヤフレーム機構と同様に、搬送対象物の積み込み位置の変更を簡易な構成により行うことができる。
【0015】
上記テールピース台車システムにおいて、好ましくは、伸縮コンベヤフレームは、掘削ズリの積み込み搬送時に、移動台車部の切羽側への前進に伴い切羽側に延長されるとともに、発破掘削時に、移動台車部の坑口側への後退に伴い坑口側に短縮されるように構成されている。このように構成すれば、掘削ズリの積み込み搬送時に搬送対象物を容易に積み込み可能な切羽に比較的近い位置にテールピース台車を配置することができるとともに、発破掘削時に発破の影響が及ばない位置にテールピース台車を退避させることができる。なお、上記の従来のスライド式テールピース台車では、発破掘削時には、テールピース台車と切羽との間にバルーンなどの防護壁が設置される。これに対して本発明では、テールピース台車を退避させることができる(切羽とテールピース台車との間に安全な距離を確保することができる)ので、このような防護壁を設置することが不要となる。また、一般的には、破砕機およびテールピース台車は、常時、切羽の約60m後方(切羽から比較的遠い位置)に配置されているため、ショベルローダ(運搬車両)の走行時間が長くなるが、本発明では、上記の通り、切羽に比較的近い位置にテールピース台車を配置することができるので、ショベルローダ(運搬車両)の走行時間を短縮することができる。
【0016】
この発明の延伸ベルトコンベヤは、発破掘削により施工されるトンネルに使用される掘削ズリを搬送するための延伸ベルトコンベヤであって、伸縮コンベヤフレーム機構と、坑口側に配置されたヘッドプーリ装置と、伸縮コンベヤフレーム機構が搭載される単一の移動台車部を含むテールピース台車とを備え、伸縮コンベヤフレーム機構は、複数のコンベヤローラと、収納繰出装置と、細長形状を有しており、複数のコンベヤローラが長手方向に移動可能に設置された伸縮可能な伸縮コンベヤフレームとを含み、伸縮コンベヤフレームは、収納繰出装置に収納されることに伴い短縮されるとともに、収納繰出装置から繰り出されることに伴い延長される単一の収納繰出部材により構成され、伸縮コンベヤフレームは、複数のコンベヤローラを支持する第1のロープにより形成されており、伸縮コンベヤフレーム機構は、第1のロープとは別個の第2のロープにより形成され、隣接するコンベヤローラの各々を連結して隣接するコンベヤローラを離間させる間隔を画定するコンベヤローラ連結材をさらに含む
【0017】
この発明の延伸ベルトコンベヤでは、上記のように構成することにより、上記伸縮コンベヤフレーム機構と同様に、搬送対象物の積み込み位置の変更を簡易な構成により行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、搬送対象物の積み込み位置の変更を簡易な構成により行うことが可能な伸縮コンベヤフレーム機構、テールピース台車システムおよび延伸ベルトコンベヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態による伸縮コンベヤフレーム機構およびテールピース台車を備えた延伸ベルトコンベヤの概要を示した模式図である。
図2】実施形態による伸縮コンベヤフレーム機構を示した斜視図である。
図3】実施形態による伸縮コンベヤフレーム機構の第2コンベヤローラを示した正面図である。
図4】実施形態による伸縮コンベヤフレーム機構を用いた第1(7)施工手順について説明するための図である。
図5】実施形態による伸縮コンベヤフレーム機構を用いた第2(6)施工手順について説明するための図である。
図6】実施形態による伸縮コンベヤフレーム機構を用いた第3(5)施工手順について説明するための図である。
図7】実施形態による伸縮コンベヤフレーム機構を用いた第4施工手順について説明するための図である。
図8】実施形態の変形例による伸縮コンベヤフレーム機構を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[実施形態]
図1図7を参照して、実施形態による伸縮コンベヤフレーム機構100について説明する。
【0022】
図1に示すように、伸縮コンベヤフレーム機構100は、テールピース台車T(後述する移動台車部T1)に搭載されており、テールピース台車Tとともにテールピース台車システムSを構築している。テールピース台車Tは、発破掘削により施工されるトンネルに使用される掘削ズリEMを搬送するための装置である。掘削ズリEMとは、トンネルの掘削時に地山から掘削された岩石、土砂などである。なお、掘削ズリEMは、特許請求の範囲の「搬送対象物」の一例である。
【0023】
(延伸ベルトコンベヤの構成の概要)
伸縮コンベヤフレーム機構100およびテールピース台車Tは、延伸ベルトコンベヤEの一構成要素である。延伸ベルトコンベヤEは、伸縮コンベヤフレーム機構100およびテールピース台車Tに加えて、ヘッドプーリ装置E1と、コンベヤベルトE2と、ベルトストレージE3と、ベルト駆動装置E4と、固定コンベヤフレームE5とを備えている。
【0024】
延伸ベルトコンベヤEは、切羽(掘削面)側に配置されるテールピース台車TのテールピースT21と、坑口側に配置されるヘッドプーリ装置E1との間で、掘削ズリEMの運搬用のコンベヤベルトE2を巻回した運搬システムである。ヘッドプーリ装置E1が坑口付近に固定設置されるのに対して、テールピース台車Tは、発破掘削に伴いトンネル内で前後方向に移動する。コンベヤベルトE2は、環状の無端ベルトである。
【0025】
なお、以下の説明では、上下方向(鉛直方向)をZ方向とし、コンベヤベルトE2の延びる方向をX方向とし、Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とする。X方向のうち、切羽側を向く方向である掘進方向をX1方向とし、坑口側を向く方向である掘削ズリEMの搬送方向をX2方向とする。
【0026】
ベルト駆動装置E4は、テールピース台車T(テールピースT21)、ヘッドプーリ装置E1、ベルトストレージE3の各対のプーリE3a、E3bにそれぞれ巻回された1本のコンベヤベルトE2を駆動するように構成されている。なお、各対のプーリE3a、E3bは、左右から油圧シリンダなどにより牽引される。ベルト駆動装置E4は、たとえば、電動機と減速機とを組み合わせて、コンベヤベルトE2が巻回されたドライブプーリE4aを回転駆動することにより、コンベヤベルトE2を循環させるように構成されている。なお、ベルトストレージE3は、コンベヤベルトE2を貯蔵しテールピース台車Tが延伸するとコンベヤベルトE2にテンション(張力)を付与した状態でコンベヤベルトE2を繰り出す。
【0027】
延伸ベルトコンベヤEが備える各装置(テールピース台車T、ヘッドプーリ装置E1、ベルトストレージE3、ベルト駆動装置E4、コンベヤベルトE2)の間において、固定コンベヤフレームE5は、コンベヤローラE51を介してコンベヤベルトE2を支持している。コンベヤローラE51は、キャリアローラとリターンローラとを備えている。
【0028】
図2に示すように、固定コンベヤフレームE5は、X方向に直線状に延びるとともに、Y方向に並ぶ一対の梁部材E52から構成されている。固定コンベヤフレームE5は、一対の梁部材E52をX方向に複数連結することにより、X方向に長く延びるように構成されている。固定コンベヤフレームE5は、切羽近傍を除くトンネル内の略全域に設けられている。一対の梁部材E52上には、キャリアローラおよびリターンローラを有するコンベヤローラE51が設置されている。キャリアローラおよびリターンローラは、コンベヤベルトE2の2枚のベルト部分を支持している。
【0029】
なお、ここでのコンベヤベルトE2の2枚のベルト部分とは、図1に示すように、掘削ズリEMを載せてテールピースT21からヘッドプーリ装置E1へ向かうキャリア部分E2aと、ヘッドプーリ装置E1からテールピースT21へ戻るリターン部分E2bとを意味する。キャリア部分E2aは、複数本のローラにより舟型に形成される(図3参照)が、水平方向(Y方向)に延びるローラにより形成することも可能である。また、キャリア部分E2aは、リターン部分E2bに重なるように、リターン部分E2bの直上に配置されている。コンベヤベルトE2のうちリターン部分E2bは、水平方向(Y方向)に延びる1つのリターンローラによって支持される。
【0030】
図1に示したテールピース台車Tやヘッドプーリ装置E1等の各装置の間の区間には、固定コンベヤフレームE5および伸縮コンベヤフレーム1が設けられてコンベヤベルトE2を循環移動可能に支持している。これらの装置間に配置される固定コンベヤフレームE5は、所定長さに形成され、X方向の端部同士が連結されるとともに、トンネル内でニーブレイスKを介して坑壁に固定設置されている。そのため、掘削に伴ってテールピース台車Tが前進すると、コンベヤテール部T2が既設の固定コンベヤフレームE5に対して前進して、コンベヤテール部T2の後端部(X2方向端部)と固定コンベヤフレームE5との間に隙間(空隙)ができる。テールピース台車Tでは、掘進に伴い前進する度に、この隙間に延伸用(追加)の固定コンベヤフレームE5が、テールピース台車Tの中間フレーム設置架台T3上で組み立てられて、既設の固定コンベヤフレームE5を切羽側(X1方向側)に延長するように連結される。
【0031】
図1に示すように、発生した掘削ズリEMは、ホイールローダ等の運搬車両Hによってかき集められて、自走式のクラッシャーCにより搬送可能なサイズまで細かく破砕された後、テールピース台車Tに積み込まれる。
【0032】
テールピース台車TのコンベヤベルトE2上に積み込まれた掘削ズリEMは、ベルト駆動装置E4がコンベヤベルトE2を循環駆動することによって、トンネル外部の坑口付近に設置されたヘッドプーリ装置E1までコンベヤベルトE2の移動に伴って連続的に搬送される。
【0033】
(テールピース台車の構成)
図4に示すテールピース台車Tは、発破掘削により施工されるトンネルに使用される掘削ズリを搬送するための装置である。テールピース台車Tは、発破掘削(トンネルの延伸)に伴って、運搬車両HおよびクラッシャーCとともに、原則、切羽側(X1方向側)に前進していく。
【0034】
テールピース台車Tは、単一の移動台車部T1と、コンベヤテール部T2と、中間フレーム設置架台T3とを備えている。
【0035】
ここで、移動台車部T1には、伸縮コンベヤフレーム機構100が搭載されている。伸縮コンベヤフレーム機構100は、坑壁に固定された固定コンベヤフレームE5(複数の固定コンベヤフレームE5のうち最も切羽側に位置する固定コンベヤフレームE5)の切羽側の端部E5a(図2参照)(X1方向端部)に接続可能に構成されている。すなわち、伸縮コンベヤフレーム機構100は、コンベヤテール部T2と固定コンベヤフレームE5との間に配置されている。伸縮コンベヤフレーム機構100は、テールピース台車Tと固定コンベヤフレームE5との間において、テールピース台車T(移動台車部T1)の前進および後退に伴って前後方向(X方向)に伸縮(延長および短縮)するように構成されている。
【0036】
要するに、伸縮コンベヤフレーム機構100は、テールピース台車Tが前進および後退したとしても、前後方向に伸縮(延長および短縮)することにより、テールピース台車Tと固定コンベヤフレームE5との間において、コンベヤベルトE2を支持し続けることが可能に構成されている。伸縮コンベヤフレーム機構100の詳細については後述する。
【0037】
なお、テールピース台車Tは、発破掘削時において、伸縮コンベヤフレーム機構100を短縮させて坑口側に退避することによって、切羽との間に発破の影響が及ばない程度の距離を確保することが可能である。したがって、発破掘削時において、テールピース台車Tと切羽との間には、発破の影響を抑えるために一般的に使用されるバルーンなどの防護壁が設置されることはない。すなわち、発破掘削時において、テールピース台車Tと切羽とは、トンネル内で空間的に連通した状態で保持される。
【0038】
〈移動台車部の構成〉
図4に示すように、移動台車部T1は、テールピース台車Tを構成する各種の構成が組み付けられた単一の(1つの)構成である。すなわち、移動台車部T1は、テールピース台車Tの全体を移動可能に支持している。移動台車部T1には、コンベヤテール部T2と、中間フレーム設置架台T3と、伸縮コンベヤフレーム機構100とが搭載されている。なお、本明細書において、「移動台車部」は、移動可能に構成された支持構造を意味し、車輪を備えている構造には限られない。
【0039】
移動台車部T1は、台車フレームT11と、移動機構T12と、テールピース台車Tを所定の位置において固定するアウトリガーT13とを含んでいる。
【0040】
台車フレームT11は、テールピース台車Tの骨格部分であり、各種構成が組み付けられている。台車フレームT11は、移動機構T12により移動可能に支持されている。
【0041】
台車フレームT11は、前方側(X1方向側)でコンベヤテール部T2を支持するとともに、後方側(X2方向側)で中間フレーム設置架台T3を支持している。また、台車フレームT11は、前後方向におけるコンベヤテール部T2と中間フレーム設置架台T3との間で、伸縮コンベヤフレーム機構100(後述するコンベヤローラスタンド7および巻取繰出装置4)を支持している。なお、巻取繰出装置4は、特許請求の範囲の「収納繰出装置」の一例である。
【0042】
移動機構T12は、台車フレームT11の下部に設けられ、台車フレームT11を支持している。移動機構T12は、クローラ方式(無限軌道方式)の移動機構であり、幅方向(Y方向)に一対設けられるクローラと、クローラを駆動する油圧モータなどを含んで構成されている。テールピース台車Tは、移動機構T12によって、自力走行(外部動力に依らずに走行)可能に構成されている。
【0043】
なお、移動機構T12は、たとえば、タイヤ方式、レール&車輪方式により自力走行する構成であってもよい。また、移動機構T12は、外部装置によって牽引または推進されることにより走行する構成であってもよい。外部装置によって走行する場合の移動機構T12としては、上記のクローラ方式、タイヤ方式、レール&車輪方式の他に、たとえばスキッド方式(そり)であってもよい。
【0044】
〈コンベヤテール部の構成〉
図4に示すように、コンベヤテール部T2は、テールピースT21と、ホッパT22と、ローラT23(キャリアローラ、リターンローラ、インパクトローラ)と、角度調整機構T24とを備えている。
【0045】
角度調整機構T24は、コンベヤテール部T2全体を傾斜可能に支持している。これにより、角度調整機構T24は、テールピースT21の高さ位置を維持しながら、坑口側のコンベヤベルトE2のベルトレベル(高さ位置)を調整可能なように構成されている。
【0046】
〈中間フレーム設置架台の構成〉
中間フレーム設置架台T3は、固定コンベヤフレームE5を延伸する際に、未だニーブレイスK(図2参照)により坑壁に固定されていない新たな固定コンベヤフレームE5を一時的に支持するように構成されている。中間フレーム設置架台T3は、たとえば、固定コンベヤフレームE5を支持する高さ位置を調整可能なように、上下方向に伸縮可能な複数の油圧シリンダにより構成される。なお、中間フレーム設置架台T3に新たな固定コンベヤフレームE5を設置する際には、伸縮コンベヤフレーム機構100と既設の固定コンベヤフレームE5との接続が一時的に解除される。詳細については後述する。
【0047】
(伸縮コンベヤフレーム機構の構成)
図2に示すように、伸縮コンベヤフレーム機構100は、巻取繰出部材により構成された伸縮コンベヤフレーム1と、複数(8つ)のコンベヤローラ2と、コンベヤローラ連結材3と、巻取繰出装置4(ウインチ)と、前側固定部材5および後側固定部材(端部接続部6)と、コンベヤローラスタンド7(収納架台)とを備えている。なお、巻取繰出装置4およびコンベヤローラスタンド7は、テールピース台車T(図4参照)に対して直接固定されている。
【0048】
〈伸縮コンベヤフレームの構成〉
図2に示すように、伸縮コンベヤフレーム1(巻取繰出部材)は、巻き取りおよび繰り出されることが可能なワイヤーロープにより形成されている。伸縮コンベヤフレーム1は、X方向を長手方向とする細長形状を有している。
【0049】
伸縮コンベヤフレーム1には、複数のコンベヤローラ2が設置されている。複数のコンベヤローラ2は、伸縮コンベヤフレーム1の長手方向(X方向)に移動可能に構成されている。なお、伸縮コンベヤフレーム1、コンベヤローラ連結材3、巻取繰出装置4、後側固定部材(端部接続部6)、および、前側固定部材5は、それぞれ、Y方向において、コンベヤローラ2の両端部付近に設けられる一対の構成である。
【0050】
伸縮コンベヤフレーム1の坑口側の後端部(X2方向端部)には、端部接続部6が設けられている。端部接続部6は、固定コンベヤフレームE5の切羽側の端部E5aに設けられた係合部E5bに係合する(挟持する)ことにより、固定コンベヤフレームE5に接続する(固定される)ように構成されている。
【0051】
伸縮コンベヤフレーム1の切羽側の前端部(X1方向端部)は、巻取繰出装置4に接続されている。伸縮コンベヤフレーム1の切羽側の前端部を含む前方側部分は、巻取繰出装置4に巻き取られている(収納されている)。伸縮コンベヤフレーム1は、巻取繰出装置4に巻き取られている部分を除いて、略同じ高さ位置でX方向に延びている。詳細には、伸縮コンベヤフレーム1は、巻取繰出装置4に巻き取られている部分を除いて、固定コンベヤフレームE5と略同じ高さ位置に配置されている。
【0052】
伸縮コンベヤフレーム1は、切羽側の前端部側から巻取繰出装置4に巻き取られる(収納される)ことに伴いX方向に短縮されるとともに、巻取繰出装置4から繰り出されることに伴いX方向に延長されるように構成されている。
【0053】
なお、伸縮コンベヤフレーム1は、坑口側の後端部が端部接続部6により固定コンベヤフレームE5に接続されていることから、巻取繰出装置4に巻き取られる(収納される)ことに伴いX方向に短縮された場合、切羽側の前端部が固定コンベヤフレームE5(坑口側の後端部)により近づくことになる。反対に、伸縮コンベヤフレーム1は、巻取繰出装置4から繰り出されることに伴いX方向に延長された場合、切羽側の前端部が固定コンベヤフレームE5(坑口側の後端部)からより離間することになる。
【0054】
〈コンベヤローラの構成〉
図2に示すように、複数(8つ)のコンベヤローラ2は、複数(4つ)の第1コンベヤローラ21と、複数(4つ)の第2コンベヤローラ22とを含んでいる。第1コンベヤローラ21と、第2コンベヤローラ22とは、X方向に1つずつ交互に配置されている。
【0055】
複数(8つ)のコンベヤローラ2は、伸縮コンベヤフレーム1を巻取繰出装置4により繰り出す際には、互いに略等間隔で離間して配置され、伸縮コンベヤフレーム1を巻取繰出装置4により収納する際には、互いに近接して配置される。詳細については後述する。
【0056】
〈第1コンベヤローラの構成〉
第1コンベヤローラ21は、キャリアローラ23aと、リターンローラ23bと、キャリアローラ23aおよびリターンローラ23bを回転可能に支持する支持フレーム23cとを備えている。これらの構成は、固定コンベヤフレームE5上に設置されたコンベヤローラE51と同様の構成である。
【0057】
さらに、第1コンベヤローラ21は、支持フレーム23cの下端に設けられた筒状部23dを備えている。筒状部23dは、X方向に延びる貫通穴を有している。筒状部23dは、第1コンベヤローラ21のY方向の両端部付近に一対設けられている。筒状部23dには、伸縮コンベヤフレーム1(ワイヤーロープ)が挿通されている。第1コンベヤローラ21は、筒状部23dに挿通された伸縮コンベヤフレーム1に支持されることにより、X方向への移動がガイドされる。
【0058】
さらに、第1コンベヤローラ21は、支持フレーム23cのY方向外側に突出するように設けられたコンベヤローラ連結材取付部23eを備えている。コンベヤローラ連結材取付部23eには、コンベヤローラ連結材3が取り付けられている。
【0059】
〈第2コンベヤローラの構成〉
第2コンベヤローラ22は、第1コンベヤローラ21と同様に、キャリアローラ23aと、リターンローラ23bと、キャリアローラ23aおよびリターンローラ23bを回転可能に支持する支持フレーム23cと、筒状部23dと、コンベヤローラ連結材取付部23eとを備えている。
【0060】
さらに、図2および図3に示すように、第2コンベヤローラ22は、キャリアローラ23a上のコンベヤベルトE2(E2a)(図3参照)を挟み込むように、コンベヤベルトE2の短手方向(Y方向)の両端に設けられた一対の蛇行修正用ローラ24aを備えている。蛇行修正用ローラ24aは、コンベヤベルトE2が蛇行した際に、コンベヤベルトE2(E2a)に当接することにより、コンベヤベルトE2の蛇行を修正する機能を有している。
【0061】
さらに、第2コンベヤローラ22は、リターンローラ23b上のコンベヤベルトE2(E2b)を挟み込むように、コンベヤベルトE2の短手方向(Y方向)の両端に設けられた一対の蛇行修正用ローラ24b(図3参照)を備えている。蛇行修正用ローラ24bは、コンベヤベルトE2(E2b)の短手方向(Y方向)の端部に当接することにより、コンベヤベルトE2の蛇行を修正する機能を有している。
【0062】
〈コンベヤローラ連結材の構成〉
図2に示すように、コンベヤローラ連結材3は、複数設けられている。コンベヤローラ連結材3は、ワイヤーロープにより形成されている。複数のコンベヤローラ連結材3の長さは、互いに等しい。コンベヤローラ連結材3は、上記の通り、コンベヤローラ2のコンベヤローラ連結材取付部23eに取り付けられている。コンベヤローラ連結材3は、X方向に隣り合うコンベヤローラ2同士(第1コンベヤローラ21と第2コンベヤローラ22と)を連結している。
【0063】
コンベヤローラ連結材3は、互いに隣接するコンベヤローラ2の各々を連結することにより、伸縮コンベヤフレーム1を巻取繰出装置4から繰り出して複数のコンベヤローラ2を互いに離間させる際に、複数のコンベヤローラ2を略等間隔で離間させて配置する機能を有している。すなわち、隣接するコンベヤローラ2は、コンベヤローラ連結材3の長さ以上に離間することはない。要するに、コンベヤローラ連結材3は、隣接するコンベヤローラ2の最大離間距離を定める機能を有している。
【0064】
〈前側固定部材および後側固定部材の構成〉
図2に示す前側固定部材5は、複数のコンベヤローラ2のうち、切羽側の先頭(X1方向側の端部)に位置するコンベヤローラ2のテールピース台車T(図6参照)に対するX方向の位置を固定するように構成されている。一例として、前側固定部材5は、先頭のコンベヤローラ2と、テールピース台車Tとを接続するワイヤーロープにより形成されている。
【0065】
後側固定部材は、複数のコンベヤローラ2のうち、坑口側の最後尾(X2方向側の端部)に位置するコンベヤローラ2の固定コンベヤフレームE5に対するX方向の位置を固定するように構成されている。具体的には、後側固定部材は、端部接続部6により構成されている。すなわち、最後尾のコンベヤローラ2は、端部接続部6に直接固定(接続)可能なように構成されている。
【0066】
〈巻取繰出装置の構成〉
図4に示すように、巻取繰出装置4は、テールピース台車Tの中間フレーム設置架台T3よりも切羽側(X1方向側)に配置されている。巻取繰出装置4は、ウインチと同様の構造を有している。
【0067】
巻取繰出装置4は、電動機を含む駆動装置41と、駆動装置41により回転されて伸縮コンベヤフレーム1(ワイヤーロープ)が巻き付けられる巻取繰出装置本体部42とを備えている。なお、巻取繰出装置本体部42の高さ位置は、調整可能なように構成されていてもよい。
【0068】
駆動装置41は、伸縮コンベヤフレーム1が伸縮(延長および短縮)する際に、伸縮コンベヤフレーム1が下方にたるむことがないように、伸縮コンベヤフレーム1を予め設定された張力により牽引するように構成されている。なお、設定された張力とは、必ずしも一定である必要はなく、伸縮コンベヤフレーム1がより長くなる程、張力がより大きくなるように変動するものであってもよい。
【0069】
ここで、本実施形態では、コンベヤローラ連結材3により隣接するコンベヤローラ同士が連結されるとともに、前側固定部材5および後側固定部材(端部接続部6)によりそれぞれ先頭および最後尾のコンベヤローラ2が固定された状態(伸縮コンベヤフレーム1を伸縮させることが可能となる状態、(以下、伸縮可能状態と記す))で、伸縮コンベヤフレーム1は、巻取繰出装置4により繰り出される際に、複数のコンベヤローラ2を互いに略等間隔で離間させて展開するとともに、巻取繰出装置4により収納される際に、複数のコンベヤローラ2を互いに近接させて配置するように構成されている。
【0070】
詳細には、伸縮可能状態で、伸縮コンベヤフレーム機構100は、テールピース台車Tの切羽側への前進に伴い、巻取繰出装置4により伸縮コンベヤフレーム1(ワイヤーロープ)を繰り出すことによって、コンベヤローラ連結材3により互いに連結された複数のコンベヤローラ2を、後方のコンベヤローラ2から順に自動的に略等間隔で離間させて展開するように構成されている。
【0071】
また、伸縮可能状態で、伸縮コンベヤフレーム機構100は、テールピース台車Tの坑口側への後退に伴い、巻取繰出装置4により伸縮コンベヤフレーム1(ワイヤーロープ)を巻き取る(収納する)ことによって、コンベヤローラ連結材3により互いに連結された複数のコンベヤローラ2を、前方のコンベヤローラ2から順に自動的に近接(当接を含む)させて配置するように構成されている。
【0072】
なお、伸縮コンベヤフレーム機構100は、上記のように、複数のコンベヤローラ2を近接させて配置(収納)することが可能であり、簡易な構成であるため、トンネルの掘削作業が完了した場合には、比較的小さな収納スペースにて保存することができる。
【0073】
〈コンベヤローラスタンドの構成〉
図2に示すように、コンベヤローラスタンド7は、X方向に並ぶ複数のローラにより構成されている。コンベヤローラスタンド7は、コンベヤローラ2をX方向に滑らかに移動させることが可能なように、テールピース台車T(図4参照)上でコンベヤローラ2の筒状部23dを下方から支持している。コンベヤローラスタンド7は、巻取繰出装置4により伸縮コンベヤフレーム1(ワイヤーロープ)が巻き取られて、複数のコンベヤローラ2が互いに近接して配置される際に、テールピース台車T上でのコンベヤローラ2のX方向への移動をガイドする機能も有している。なお、図4図7では、コンベヤローラスタンド7を模式的に図示している。
【0074】
(伸縮コンベヤフレーム機構の動作)
図4図7を参照して、伸縮コンベヤフレーム機構100の動作について説明する。説明は第1~第7施工手順に沿って順に行う。
【0075】
〈第1施工手順〉
まず、図4に示す第1施工手順では、伸縮コンベヤフレーム機構100が搭載されたテールピース台車Tが固定コンベヤフレームE5(複数の固定コンベヤフレームE5のうち最も切羽側に位置する固定コンベヤフレームE5)の切羽側の端部E5a(X1方向端部)の近傍位置(対向する位置)に配置される。
【0076】
この状態では、伸縮コンベヤフレーム機構100は、固定コンベヤフレームE5に接続(固定)されておらず、すべてのコンベヤローラ2は、コンベヤローラスタンド7上で互いに近接(当接を含む)して配置されている。
【0077】
〈第2施工手順〉
次に、図5に示す第2施工手順では、巻取繰出装置4(ウインチ)から伸縮コンベヤフレーム1(ワイヤーロープ)を繰り出すとともに、端部接続部6が固定コンベヤフレームE5に接続されることにより、伸縮コンベヤフレーム1がX方向に延長される。
【0078】
この状態では、第1施工手順と同様に、未だ、すべてのコンベヤローラ2は、コンベヤローラスタンド7上で互いに近接(当接を含む)して配置されている。
【0079】
〈第3施工手順〉
次に、図6に示す第3施工手順では、最後尾(X2方向端部)のコンベヤローラ2がX2方向に移動されて、端部接続部6(後側固定部材)に固定される。これにより、最後尾のコンベヤローラ2のX方向の位置が略固定される。この際、最後尾のコンベヤローラ2にコンベヤローラ連結材3を介して接続されたX1方向側に隣接するコンベヤローラ2、および、さらにそのコンベヤローラ2にコンベヤローラ連結材3を介して接続されたX1方向側に隣接するコンベヤローラ2などの一部のコンベヤローラ2が、X方向に互いに略等間隔で離間して配置される。
【0080】
なお、先頭(X1方向端部)のコンベヤローラ2は、前側固定部材5(たとえば、ワイヤーロープ)を介してテールピース台車Tに常に固定されている。このため、先頭のコンベヤローラ2のテールピース台車Tに対するX方向の相対位置は、略変わらない。第3施工手順が完了することで、伸縮コンベヤフレーム機構100は、上記説明した伸縮可能状態になる。
【0081】
なお、この状態におけるテールピース台車Tと固定コンベヤフレームE5との間のX方向の距離をD1とし、伸縮コンベヤフレーム機構100のX方向の大きさd1とする。
【0082】
〈第4施工手順〉
次に、図7に示す第4施工手順では、テールピース台車Tが切羽側(X1方向側)に移動(前進)されるとともに、巻取繰出装置4により伸縮コンベヤフレーム1が繰り出される。この際、テールピース台車Tとともに、運搬車両H(図1参照)およびクラッシャーC(図1参照)も切羽側(X1方向側)に移動される。
【0083】
なお、この状態におけるテールピース台車Tと固定コンベヤフレームE5との間のX方向の距離はD1よりも大きいD2となり(D2>D1)、伸縮コンベヤフレーム機構100のX方向の大きさはd1よりも大きいd2となる(d2>d1)。ここで、コンベヤローラ2の数をn(8つ)とし、隣接するコンベヤローラ2間の最大ピッチ(≒コンベヤローラ連結材3を略直線状に配置した際の長さ)をLとした場合、d2は、(n-1)×Lよりも少なくとも大きくなる。
【0084】
〈第5施工手順〉
次に、図6に示す第5施工手順では、テールピース台車Tが坑口側(X2方向側)に移動(退避)されるとともに、巻取繰出装置4により伸縮コンベヤフレーム1が巻き取られる(収納される)。この際、テールピース台車Tとともに、運搬車両HおよびクラッシャーCも坑口側(X1方向側)に移動される。すなわち、切羽からテールピース台車Tが離れるように移動される。この退避状態で、切羽とテールピース台車Tとの間にバルーンなどの防護壁を設けることなく発破掘削が行われる。
【0085】
〈第6施工手順〉
次に、図5に示す第6施工手順では、最後尾(X2方向端部)のコンベヤローラ2の端部接続部6(後側固定部材)に対する接続(固定)が解除される。そして、すべてのコンベヤローラ2は、再びコンベヤローラスタンド7上に配置される。これにより、中間フレーム設置架台T3上にスペースが確保される。すなわち、X方向において、中間フレーム設置架台T3と、伸縮コンベヤフレーム機構100とが互いにオーバーラップする状態が解消する。その結果、新たな固定コンベヤフレームE5を中間フレーム設置架台T3に設置するためのスペースが確保される。
【0086】
〈第7施工手順〉
次に、図4に示す第7施工手順では、中間フレーム設置架台T3上に新たな固定コンベヤフレームE5が設置される。すなわち、固定コンベヤフレームE5が延伸される。
【0087】
なお、上記各施工手順では、伸縮コンベヤフレーム機構100を最大限伸ばして施工を行う例を示したが、このような例に限られることはない。たとえば、伸縮コンベヤフレーム機構100を繰り返し進退移動させる中で、伸縮コンベヤフレーム機構100の伸張長さを徐々に大きくしていくなど、種々の施工手順が考えられる。
【0088】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0089】
本実施形態では、上記のように、巻取繰出装置4を利用して、単一の巻取繰出部材により構成された伸縮コンベヤフレーム1(コンベヤベルトE2)を延長および短縮することによって、掘削ズリEMの積み込み位置を変更することができる。したがって、互いに独立した2つの搬送機構を備える従来構成と比較して、単一の巻取繰出部材を延長および短縮する単一の搬送機構により、掘削ズリEMの積み込み位置を変更することができるので、掘削ズリEMの積み込み位置の変更を簡易な構成により行うことができる。また、従来のように互いに独立した2つの搬送機構を備える場合、掘削ズリEMの積み込み位置を変更する際に、2つの搬送機構の位置合わせが必要となる。一方、本発明では、上記のように単一の搬送機構を備えることにより、従来のような位置合わせが不要となるので、掘削ズリEMの積み込み位置を容易に変更することができる。
【0090】
本実施形態では、上記のように、巻取繰出部材により巻取繰出部材の巻き取りおよび繰り出しを行う。これにより、巻取繰出装置4を利用して、巻取繰出部材を巻き取ることによって収納して短縮することができるので、巻取繰出部材を容易に短縮することができる。
【0091】
本実施形態では、上記のように、複数のコンベヤローラ2は、キャリアローラ23a、および、リターンローラ23bを有する第1コンベヤローラ21と、キャリアローラ23a、リターンローラ23b、および、コンベヤベルトE2の短手方向の端部に当接することにより、コンベヤベルトE2の蛇行を修正する蛇行修正用ローラ24a、24bとを有する第2コンベヤローラ22との両方を含む。これにより、伸縮コンベヤフレーム1の延長および短縮を行う際にコンベヤベルトE2が蛇行したとしても、蛇行修正用ローラ24a、24bにより確実に蛇行を修正することができる。
【0092】
本実施形態では、上記のように、伸縮コンベヤフレーム1は、巻取繰出装置4により繰り出される際に、複数のコンベヤローラ2を互いに離間させて展開するとともに、巻取繰出装置4により収納される際に、複数のコンベヤローラ2を互いに近接させて配置するように構成されている。これにより、伸縮コンベヤフレーム1を繰り出すだけで、自動で複数のコンベヤローラ2を展開することができるとともに、伸縮コンベヤフレーム1を収納するだけで、自動で複数のコンベヤローラ2を近接して配置することができる。すなわち、複数のコンベヤローラ2を、容易に、展開および近接配置することができる。
【0093】
本実施形態では、上記のように、互いに隣接するコンベヤローラ2の各々を連結することにより、複数のコンベヤローラ2が互いに離間した際に、複数のコンベヤローラ2を略等間隔で離間させて配置するコンベヤローラ連結材3をさらに備える。これにより、コンベヤローラ2の各々を連結するだけの簡易な構成により、複数のコンベヤローラ2が互いに離間した際に、複数のコンベヤローラ2を略等間隔で離間させて配置することができる。
【0094】
本実施形態では、上記のように、伸縮コンベヤフレーム1は、掘削ズリEMの積み込み搬送時に、移動台車部T1の切羽側への前進に伴い切羽側に延長されるとともに、発破掘削時に、移動台車部T1の坑口側への後退に伴い坑口側に短縮されるように構成されている。これにより、掘削ズリEMの積み込み搬送時に掘削ズリEMを容易に積み込み可能な切羽に比較的近い位置にテールピース台車Tを配置することができるとともに、発破掘削時に発破の影響が及ばない位置にテールピース台車Tを退避させることができる。なお、上記の従来のスライド式テールピース台車では、発破掘削時にはテールピース台車Tと切羽との間に、バルーンなどの防護壁が設置される。これに対して本発明では、テールピース台車Tを退避させることができる(切羽とテールピース台車Tとの間に安全な距離を確保することができる)ので、このような防護壁を設置することが不要となる。また、一般的には、破砕機およびテールピース台車は、常時、切羽の約60m後方(切羽から比較的遠い位置)に配置されているため、ショベルローダ(運搬車両)の走行時間が長くなるが、本発明では、上記の通り、切羽に比較的近い位置にテールピース台車Tを配置することができるので、ショベルローダ(運搬車両H)の走行時間を短縮することができる。
【0095】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0096】
たとえば、上記実施形態では、本発明の収納繰出装置を巻取繰出装置(ウインチ)により構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図8に示す変形例の伸縮コンベヤフレーム機構200のように構成してもよい。具体的には、伸縮コンベヤフレーム機構200は、伸縮コンベヤフレーム1を、たすき掛けにより、蛇行形状に配置して収納する収納繰出装置204を備えている。収納繰出装置204は、上記説明したベルトストレージE3(図1参照)と同様の構成を備えているため、説明を省略する。
【0097】
また、上記実施形態では、伸縮コンベヤフレーム機構を、発破掘削により施工されるトンネルで掘削ズリを搬送するために使用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、伸縮コンベヤフレーム機構を、坑外で、土砂や岩石などを搬送するために使用してもよい。すなわち、伸縮コンベヤフレーム機構を、テールピース台車に搭載して使用しなくてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、伸縮コンベヤフレームを、ワイヤーロープにより構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、伸縮コンベヤフレームを、ベルト、リンク機構、チェーンなどのワイヤーロープ以外の構成としてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、伸縮コンベヤフレームが8つのコンベヤフレームを備える例を示したが、伸縮コンベヤフレームの数はこれに限られず、9つ以上でも7つ以下であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、伸縮コンベヤフレーム機構が、第1コンベヤローラおよび第2コンベヤローラの両方を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、伸縮コンベヤフレーム機構が、第1コンベヤローラおよび第2コンベヤローラの一方のみを備えていてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、第1コンベヤローラおよび第2コンベヤローラを、1つずつ交互に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1コンベヤローラおよび第2コンベヤローラを、2つずつ交互に配置するなど、いかなる順番で配置してもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、第2コンベヤローラに、キャリアローラ上のコンベヤベルトの蛇行を修正する蛇行修正用ローラと、リターンローラ上のコンベヤベルトの蛇行を修正する蛇行修正用ローラとの両方を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2コンベヤローラに、キャリアローラ上のコンベヤベルトの蛇行を修正する蛇行修正用ローラと、リターンローラ上のコンベヤベルトの蛇行を修正する蛇行修正用ローラとの一方のみを設けてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、伸縮コンベヤフレームが繰り出されることに伴い、コンベヤローラを自動的に展開させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、伸縮コンベヤフレームが繰り出された状態で、コンベヤローラを手動により展開させてもよい。この場合、収納時も手動でコンベヤローラを移動させる。
【0104】
また、上記実施形態では、伸縮コンベヤフレーム機構がコンベヤローラスタンドを備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、伸縮コンベヤフレーム機構がコンベヤローラスタンドを備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 伸縮コンベヤフレーム
2 コンベヤローラ
3 コンベヤローラ連結材
4 巻取繰出装置(収納繰出装置)
21 第1コンベヤローラ
22 第2コンベヤローラ
23a キャリアローラ
23b リターンローラ
24a、24b 蛇行修正用ローラ
100、200 伸縮コンベヤフレーム機構
204 収納繰出装置
E 延伸ベルトコンベヤ
E1 ヘッドプーリ装置
EM 掘削ズリ(搬送対象物)
S テールピース台車システム
T テールピース台車
T1 移動台車部
T12 移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8