(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】光半導体素子、光サブアセンブリ、及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/22 20060101AFI20230807BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20230807BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20230807BHJP
H01S 5/227 20060101ALI20230807BHJP
H01S 5/12 20210101ALI20230807BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230807BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01S5/22 610
H01S5/343
H01S5/026 616
H01S5/026 618
H01S5/227
H01S5/12
G02B6/12 301
G02B6/125 301
(21)【出願番号】P 2019076530
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
(72)【発明者】
【氏名】中西 慧
(72)【発明者】
【氏名】山内 俊也
(72)【発明者】
【氏名】滝田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】中井 義博
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 秀明
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098342(JP,A)
【文献】特開2018-093002(JP,A)
【文献】特開2000-012952(JP,A)
【文献】特開2010-263153(JP,A)
【文献】特開2013-077753(JP,A)
【文献】特開2009-088129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0083417(US,A1)
【文献】特開2002-289971(JP,A)
【文献】特開2000-269601(JP,A)
【文献】特開2004-319893(JP,A)
【文献】特開2014-165393(JP,A)
【文献】特開2006-253525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に並んで配置され、それぞれ活性層及び回折格子を含むとともに該回折格子が後方端面に至る、複数のメサストライプと、
前記複数のメサストライプの上面それぞれと電気的に接続され、ワイヤボンディングのためのパッド部をそれぞれ有する、複数の電極と、
前記複数のメサストライプの前記活性層それぞれと光学的に接続される、複数の導波路と、
前記複数のメサストライプの後方端面に配置され、反射率が30%以上となる反射膜と、
を備える光半導体素子であって、
前記複数の電極のうち、前記複数のメサストライプの第1メサストライプに接続された電極は、前記複数の電極のうち他のいずれの電極にも交差せずに、前記複数の導波路と交差し、
前記第1メサストライプは、前記複数のメサストライプの第2メサストライプに挟まれた位置にあり、
前記複数のメサストライプのうち、両端にある2つのメサストライプの後方端面における中心間距離は150μm以下であり、
前記複数のメサストライプのうち少なくとも2つのメサストライプは同時に駆動される、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光半導体素子であって、
前記複数のメサストライプをそれぞれ含んで、複数の分布帰還型レーザが集積されるアレイ素子である、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項3】
請求項2に記載の光半導体素子であって、
前記複数の分布帰還型
レーザが出射する出力光の波長は、1.3μm帯である、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光半導体素子であって、
前記複数の導波路の前方にそれぞれ配置される、複数の変調器を、
さらに備える、光半導体素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光半導体素子であって、
前記複数のメサストライプと前記複数の導波路との間にそれぞれ配置される、複数の光増幅器を、
さらに備える、光半導体素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光半導体素子であって、
前記複数のメサストライプのうち、両端にある2つのメサストライプそれぞれのさらに外側に配置される、ダミーメサストライプを、
さらに備える、光半導体素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光半導体素子であって、
前記複数の導波路のうち、少なくとも1の導波路は、対応する前記メサストライプの延伸方向に対して屈曲する部分を含む、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の光半導体素子であって、
前記複数の導波路のうち、少なくとも1組の隣り合う導波路は、対応する隣り合う1組のメサストライプと比べて、出射方向に沿ってさらに広がって延伸する部分がある、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項9】
請求項8に記載の光半導体素子であって、
前記少なくとも1組の隣り合う導波路の後方端面における中心間距離より、前方端面における中心間距離が長い、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載の光半導体素子であって、
前記複数の導波路のうち、少なくとも1組の導波路の前方に配置され、前記1組の導波路を経由して入力される1組の光信号を合波する、MMI合波器を、
さらに備える、光半導体素子。
【請求項11】
請求項10に記載の光半導体素子であって、
前記1組の導波路の、一方の導波路の途中に配置される、光吸収器を、
さらに備える、光半導体素子。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の光半導体素子であって、
前記1組の導波路にそれぞれ光学的に接続される1組のメサストライプは、互いに異なる波長の光を発振し、
前記MMI合波器に入力される前記1組の光信号の振幅は互いに異なっている、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項13】
請求項12に記載の光半導体素子であって、
前記MMI合波器に入力される前記1組の光信号の、ビート周波数が変調周波数の2倍以上である、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の光半導体素子であって、
前記複数の導波路は、前記第2メサストライプと前記活性層で光学的に接続される第2導波路を含み、
前記第1メサストライプに接続された前記電極は、前記第2導波路と交差する、
ことを特徴とする、光半導体素子。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の光半導体素子と、
前記複数の電極にそれぞれワイヤボンディングする複数のワイヤと、
前記光半導体素子を駆動するための電気信号を出力する、ドライバと、
を備える、光サブアセンブリ。
【請求項16】
請求項15に記載の光サブアセンブリ、
を備える、光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子、光サブアセンブリ、及び光モジュールに関し、特に、安定的に回折格子が作製されることにより歩留まりが向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発光素子を備える光モジュールが用いられる。複数の光ファイバが光モジュールの複数の発光素子それぞれに接続されて、光モジュールは複数の光ファイバへそれぞれ光信号を出射する。
【0003】
特許文献1に、複数の光送信器と、複数の光送信器を制御する集積回路アセンブリと、を備える光モジュールが開示されている。集積回路アセンブリはチップ識別パットを含んでおり、設計が容易であり余分な費用をかけることなく集積回路を識別することができる技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光モジュールに複数の発光素子がそれぞれ個別に搭載される場合、複数の発光素子それぞれに対して光部品が必要となり、製造コストが増大するという問題が生じてしまう。それゆえ、コスト抑制の観点では、複数の発光素子が1つの半導体基板上に集積されるアレイ素子である光半導体素子が望ましい。しかしながら、かかる光半導体素子の場合、集積される複数の発光素子のうち1つの発光素子でも不具合があれば、かかる光半導体素子は製品として用いることはできない。アレイ素子である光半導体素子の場合、各発光素子の歩留まりの積となり、光半導体素子の歩留まりの向上を実現するためには、各発光素子の歩留まりを向上させることが重要となる。
【0006】
特に、発光素子が後方端面に至る回折格子と後方端面に形成される反射膜とを有する場合、発光素子には原理的にSMSR(Side Mode Suppression Ratio)不良が一定割合で発生することにより、単一の発光素子と比べて、アレイ素子である光半導体素子では、歩留まりの低下が大きくなり、コスト上昇が発生してしまう。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、SMSR不良が抑制されることにより、歩留りが向上される、光半導体素子、光サブアセンブリ、及び光モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る光半導体素子は、半導体基板と、前記半導体基板上に並んで配置され、それぞれ活性層及び回折格子を含むとともに該回折格子が後方端面に至る、複数のメサストライプと、前記複数のメサストライプの上面それぞれと電気的に接続され、ワイヤボンディングのためのパッド部をそれぞれ有する、複数の電極と、前記複数のメサストライプの前記活性層それぞれと光学的に接続される、複数の導波路と、前記複数のメサストライプの後方端面に配置され、反射率が30%以上となる反射膜と、を備える光半導体素子であって、前記複数のメサストライプのうち、両端にある2つのメサストライプの後方端面における中心間距離は150μm以下であり、前記複数のメサストライプのうち少なくとも2つのメサストライプは同時に駆動される、ことを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)に記載の光半導体素子であって、前記複数のメサストライプをそれぞれ含んで、複数の分布帰還型レーザが集積されるアレイ素子であってもよい。
【0010】
(3)上記(2)に記載の光半導体素子であって、前記複数の分布帰還型レーザが出射する出力光の波長は、1.3μm帯であってもよい。
【0011】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光半導体素子であって、前記複数の導波路の前方にそれぞれ配置される、複数の変調器を、さらに備えていてもよい。
【0012】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光半導体素子であって、前記複数のメサストライプと前記複数の導波路との間にそれぞれ配置される、複数の光増幅器を、さらに備えていてもよい。
【0013】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の光半導体素子であって、前記複数のメサストライプのうち、両端にある2つのメサストライプそれぞれのさらに外側に配置される、ダミーメサストライプを、さらに備えていてもよい。
【0014】
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光半導体素子であって、前記複数の導波路のうち、少なくとも1の導波路は、対応する前記メサストライプの延伸方向に対して屈曲する部分を含んでいてもよい。
【0015】
(8)上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の光半導体素子であって、前記複数の導波路のうち、少なくとも1組の隣り合う導波路は、対応する隣り合う1組のメサストライプと比べて、出射方向に沿ってさらに広がって延伸する部分があってもよい。
【0016】
(9)上記(8)に記載の光半導体素子であって、前記少なくとも1組の隣り合う導波路の後方端面における中心間距離より、前方端面における中心間距離が長くてもよい。
【0017】
(10)上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の光半導体素子であって、前記複数の導波路のうち、少なくとも1組の導波路の前方に配置され、前記1組の導波路を経由して入力される1組の光信号を合波する、MMI合波器を、さらに備えていてもよい。
【0018】
(11)上記(10)に記載の光半導体素子であって、前記1組の導波路の、一方の導波路の途中に配置される、光吸収器を、さらに備えていてもよい。
【0019】
(12)上記(10)又は(11)に記載の光半導体素子であって、前記1組の導波路にそれぞれ光学的に接続される1組のメサストライプは、互いに異なる波長の光を発振し、前記MMI合波器に入力される前記1組の光信号の振幅は互いに異なっていてもよい。
【0020】
(13)上記(12)に記載の光半導体素子であって、前記MMI合波器に入力される前記1組の光信号の、ビート周波数が変調周波数の2倍以上であってもよい。
【0021】
(14)本発明に係る光サブアセンブリは、上記(1)乃至(13)のいずれかに記載の光半導体素子と、前記複数の電極にそれぞれワイヤボンディングする複数のワイヤと、前記光半導体素子を駆動するための電気信号を出力する、ドライバと、を備えていてもよい。
【0022】
(15)本発明に係る光モジュールは、上記(14)に記載の光サブアセンブリ、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、SMSR不良が抑制されることにより、歩留りが向上される、光半導体素子、光サブアセンブリ、及び光モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【
図3A】本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子のレーザ領域の構造を示す断面図である。
【
図3B】本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子の導波路領域の構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る光サブアセンブリ主要部の平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【
図9】本発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【
図10】本発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0026】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置1及び光モジュール2の構成を示す模式図である。光伝送装置1は、プリント回路基板11(PCB)とIC12を備えている。光伝送装置1は、例えば、大容量のルータやスイッチである。光伝送装置1は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。光伝送装置1に、複数の光モジュール2が搭載されており、光モジュール2より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、IC12などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、プリント回路基板11を介して、該当する光モジュール2へそのデータを伝達する。
【0027】
光モジュール2は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバである。光モジュール2は、プリント回路基板21と、光ファイバ3Aを介して受信する光信号を電気信号に変換する光受信モジュール23Aと、電気信号を光信号に変換して光ファイバ3Bへ送信する光送信モジュール23Bと、を含んでいる。プリント回路基板21と、光受信モジュール23A及び光送信モジュール23Bとは、それぞれフレキシブル基板22A,22B(FPC)を介して接続されている。光受信モジュール23Aより電気信号がフレキシブル基板22Aを介してプリント回路基板21へ伝送され、プリント回路基板21より電気信号がフレキシブル基板22Bを介して光送信モジュール23Bへ伝送される。光モジュール2と光伝送装置1とは電気コネクタ5を介して接続される。光受信モジュール23Aや光送信モジュール23Bは、プリント回路基板21に電気的に接続され、光信号/電気信号を電気信号/光信号にそれぞれ変換する。ここで、光受信モジュール23Aは、1又は複数の光サブアセンブリを含み、光送信モジュール23Bは、1又は複数の光サブアセンブリを含む。
【0028】
当該実施形態に係る伝送システムは、2個以上の光伝送装置1と2個以上の光モジュール2と、1個以上の光ファイバ3を含む。各光伝送装置1に、1個以上の光モジュール2が接続される。2個の光伝送装置1にそれぞれ接続される光モジュール2の間を、光ファイバ3が接続している。一方の光伝送装置1が生成した送信用のデータが接続される光モジュール2によって光信号に変換され、かかる光信号を光ファイバ3へ送信される。光ファイバ3上を伝送する光信号は、他方の光伝送装置1に接続される光モジュール2によって受信され、光モジュール2が光信号を電気信号へ変換し、受信用のデータとして当該他方の光伝送装置1へ伝送する。
【0029】
図2は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100の平面図である。当該実施形態に係る半導体レーザ素子100は、複数(ここでは4つ)の分布帰還型(DFB:Distributed FeedBack)レーザ(LD:Laser Diode)が集積されるアレイ素子である光半導体素子であり、直接変調型となっている。以下、分布帰還形レーザをDFB-LDと記すこととする。当該複数のDFB-LDが出射する出力光の波長は1.3μm帯である。当該実施形態に係る半導体レーザ素子100は、
図1に示す光送信モジュール23Bが含む1又は複数の光サブアセンブリのいずれかに搭載される光半導体素子である。
図2に示す通り、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100は、レーザ領域101と導波路領域102とを含んでいる。各DFB-LDが構成されるレーザ領域101に、メサストライプ103が形成されており、出射方向を向いて左方から右方にかけて(
図2の上方から下方にかけて)順に並んで、メサストライプ103A,103B,103C,103Dと表されている。メサストライプ103の上面と物理的に接触して電気的に接続されるp側電極104が配置される。
図2には、メサストライプ103A,103B,103C,103Dの上面それぞれと電気的に接続されるp側電極104A,104B,104C,104Dが示されている。
【0030】
導波路領域102に、各メサストライプ103の活性層112(後述)と光学的に接続される導波路105が配置される。
図2には、メサストライプ103A,103B,103C,103Dそれぞれと接続される導波路105A,105B,105C,105Dが示されており、導波路105A,105B,105C,105Dは、メサストライプ103A,103B,103C,103Dの延伸方向に対して両側へ広がるように広がるように延伸している。メサストライプ103B,103Cの中心線に対して対照的に、すなわち、導波路105A,105Bは出射方向を向いて左方(
図2の上方)へ、導波路105C,105Dは出射方向を向いて右方(
図2の下方)へ、それぞれ広がって延伸している。
【0031】
半導体レーザ素子100の前方端面(出射側の端面:
図2の右側の端面)には反射防止膜107(AR膜)が、後方端面(すなわち複数のメサストライプ103の後方端面:
図2の左側の端面)には高反射膜108(HR膜)が、それぞれ配置される。反射防止膜107は反射率5%以下が望ましい。高反射膜108は反射率30%以上が望ましいが、50%以上がさらに望ましく、70%以上がさらに望ましい。
【0032】
図3Aは、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100のレーザ領域101の構造を示す断面図である。
図3Aは、
図2に示すIIIA-IIIA線の断面を示している。半導体レーザ素子100は、n型InP基板110(半導体基板)と、複数のメサストライプ103と、複数のp側電極104(電極)と、を備えている。
図3Aに示す通り、n型InP基板110上に、n型InPクラッド層111と、活性層112(多重量子井戸層)と、p型InPスペーサ層113と、回折格子層114と、p型InPクラッド層115と、p型コンタクト層116と、が順に積層されている。n型InPクラッド層111の上部と、活性層112と、p型InPスペーサ層113と、回折格子層114と、p型InPクラッド層115と、p型コンタクト層116と、からなる半導体多層は、各DFB-LDにおいて光導波路となる領域の外側が除去されており、メサストライプ構造を有している。回折格子層114はメサストライプ103の延伸方向に対して周期的となる形状に形成されており、回折格子として機能する。回折格子層114の周期的となる形状は、メサストライプ103の後方端面(半導体レーザ素子100の後方端面でもある)に至っている。回折格子層114は、p型InPスペーサ層113とp型InPクラッド層115との間に配置されている。p型InPスペーサ層113とp型InPクラッド層115を一つのp型クラッド層だとすると、回折格子層114はp型クラッド層の内部に配置されていると考えてもよい。各DFB-LDは、1つのメサストライプを含んでおり、複数のメサストライプは半導体基板上に並んで配置され、各メサストライプは活性層と回折格子を含むとともに該回折格子が後方端面に至る。
【0033】
複数のメサストライプ103それぞれの両側となる領域、すなわち、隣り合う2つのメサストライプ103の間となる領域それぞれ及び両端にあるメサストライプ103のそれぞれ外側となる領域は、高抵抗InP層117により埋め込まれている。当該実施形態に係る半導体レーザ素子100は、埋め込み(BH:Buried-hetero)構造を有している。複数のメサストライプ103及び高抵抗InP層117を覆って絶縁膜118が形成されているが、複数のメサストライプ103の上面の少なくとも一部には絶縁膜118が除去されている。さらに、絶縁膜118の上側に複数のp側電極104が形成されるが、各p側電極104は対応するメサストライプ103の上面と物理的に接触しており、対応するメサストライプ103の上面と電気的に接続される。各p側電極104は、後述の通り所定の形状を有している。また、図示はなされていないが、n型InP基板110の裏面には各p側電極104に対応する共通のn側電極が形成されている。
【0034】
図3Bは、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100の導波路領域102の構造を示す断面図である。
図3Bは、
図2に示すIIIB-IIIB線の断面を示している。
図3Bに示す通り、n型InP基板110上に、n型InPクラッド層111と、導波路層120と、p型InPクラッド層115と、が順に積層されている。n型InPクラッド層111の上部と、導波路層120と、p型InPクラッド層115と、からなる半導体多層は、メサストライプ構造を有している。レーザ領域101のメサストライプ103に対して、かかるメサストライプ構造をメサストライプ106とすると、各DFB-LDの導波路領域102は、1つのメサストライプ106を含んでおり、メサストライプ106は、n型InP基板110上に配置され、導波路層120を含んでいる。
【0035】
複数のメサストライプ106は、レーザ領域101の複数のメサストライプ103と同様に、高抵抗InP層117により埋め込まれている。複数のメサストライプ106及び高抵抗InP層117を覆って絶縁膜118が形成されている。導波路領域102の複数のメサストライプ106にp型コンタクト層116が配置されておらず、またメサストライプ106の上面となる領域の絶縁膜118も除去されていない。それゆえ、複数のメサストライプ106は、レーザ領域101の複数のメサストライプ103と異なり、平面視して交差するp側電極104と電気的に接続しておらず(透明導波路領域)、光出力に影響を与えない。
図3Bに示す通り、導波路領域102にも複数の(ここでは2つ)のp側電極104B,104Cが形成されているが、p側電極104とメサストライプ106との間には絶縁膜118が配置されており、電気的に接続されていない。
【0036】
導波路領域102に配置されるメサストライプ106の導波路層120(の後方端面)は、レーザ領域101に配置されるメサストライプ103の活性層112(の前方端面)とバットジョイント(Butt-Joint)される。そして、導波路領域102に配置されるメサストライプ106の導波路層120が、導波路105を構成する。よって、レーザ領域101のメサストライプ103の活性層112と導波路105とは光学的に接続されている。なお、各DFB-LDは対応するレーザ領域101のメサストライプ103を1つ含んでいる。
【0037】
p側電極104は、ワイヤボンディングをするためのパッド部付きの電極であり、p側電極104A,104Bは出射方向を向いて左方(
図2の上方)に、p側電極104C,104Dは出射方向を向いて右方(
図2の下方)に、それぞれパッド部が広がっている。p側電極104A(104D)は、メサストライプ103A(103D)の上面と電気的に接続するとともに、メサストライプ103A(103D)の後方部分から出射方向を向いて左方へ(右方へ)延伸しており、かかる部分がパッド部となっている。p側電極104B(104C)は、メサストライプ103B(103C)の上面と電気的に接続するとともに、さらに前方(すなわち出射方向)へ延伸し、出射方向を向いて左方へ(右方へ)屈曲している。p側電極104B(104C)は、さらにp側電極104A(104D)とは接触することなく囲うように、出射方向を向いて左方へ(右方へ)広がっており、かかる部分がパッド部となっている。平面視して、p側電極104B(104C)は、2つの導波路105A,105B(105C,105D)と交差しているが、かかる領域では、p側電極104とメサストライプ106との間には絶縁膜118が配置されており、前述の通り電気的には接続されておらず、光出力には影響を与えない。
【0038】
図4は、当該実施形態に係る光サブアセンブリ130主要部の平面図である。当該実施形態に係る光サブアセンブリ130は、
図1に示す光送信モジュール23Bが含む1又は複数の光サブアセンブリのいずれかである。光サブアセンブリ130は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100と、サブマウント131と、ドライバ132と、を備えている。なお、ドライバ132は光サブアセンブリ130の外側にあっても良い。サブマウント131の上面には、電極パターン140が形成されている。電極パターン140は、カソード電極141と複数(ここでは4つ)のアノード電極142とを含んでいる。半導体レーザ素子100のn側電極とカソード電極141ははんだなどにより電気的及び物理的に接続されている。サブマウント131には複数のビアホール143が形成されており、カソード電極141はビアホール143を介してサブマウント131の裏面に配置されるカソード電極と電気的に接続されており、さらに光サブアセンブリ130の筐体と電気的に接続される。ドライバ132と複数のアノード電極142とはそれぞれ、ワイヤ144を介して電気的に接続されている。また、ドライバ132とカソード電極141もワイヤ147を介して電気的に接続されている。さらに、複数のアノード電極142と半導体レーザ素子100のp側電極104とはそれぞれ、ワイヤ145を介して電気的に接続されている。ワイヤ145はp側電極104のパッド部にワイヤボンディングされる。ドライバ132は、半導体レーザ素子100に集積される4つのDFB-LDを駆動するために4つの電気信号を対応する4つの端子へそれぞれ出力する。ドライバ132は、駆動する対象のDFB-LDへ電気信号を対応する端子へ出力し、かかる電気信号が対応するカソード電極142を介して対応するp側電極104へ入力される。入力される電気信号により対応するDFB-LDが駆動される。4つのDFB-LDのうち2つのDFB-LDを駆動するために、ドライバ132が2つの電気信号を対応する2つの端子へそれぞれ出力すれば、当該2つのDFB-LDが同時に駆動される。4つのDFB-LDすべてを駆動するために、ドライバ132が4つの電気信号を対応する4つの端子へそれぞれ出力すれば、4つのDFB-LDすべてが同時に駆動される。なお、ここではカソード電極は共通であり、本構成はシングルエンド駆動となっている。
【0039】
なお、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100は直接変調型DFB-LDであるので、レーザ領域101のメサストライプ103と電気的に接続されるp側電極104に駆動するための電気信号が入力される。しかしながら、半導体レーザ素子が複数のDFB-LDと複数の変調器とが集積される光半導体素子の場合は、変調器の電極に駆動するための電気信号が入力される。
【0040】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子100の主な特徴は、レーザ領域101に配置される複数のメサストライプ103のうち、両端にある2つのメサストライプ103の後方端面における中心間距離Wが150μm以下であり、複数のメサストライプ103のうち少なくとも2つのメサストライプ103(すなわち、複数のDFB-LDのうち少なくとも2つのDFB-LD)は同時に駆動されることにある。複数のメサストライプ103(すなわち、複数のDFB-LD)がすべて同時に駆動されることがさらに望ましい。ここで、2つのメサストライプ103の中心間距離とは、一方のメサストライプ103が有する幅の中点と、他方のメサストライプ103が有する幅の中点との距離である。ここで、幅とは、メサストライプ103の延伸方向に交差する方向(実質的には直交する方向)の長さをいう。レーザ領域101に配置される複数のメサストライプ103それぞれは、実質的に一定の幅を保って一方向(
図2の左右方向)へ延伸しており、2つのメサストライプ103は、実質的に一定の間隔を保って配置されている。それゆえ、延伸方向に対して、2つのメサストライプ103の中心間距離は実質的に一定である。本発明では、メサストライプ103の回折格子(回折格子層114)の後方端面位相に注目しているので、2つのメサストライプ103の中心間距離を後方端面におけるものとする。さらに厳密にいえば、後方端面において、メサストライプ103の積層方向において、回折格子層114の後方端面におけるものとする。
【0041】
発光素子が後方端面に至る回折格子を有し後方端面に反射膜が配置される場合、回折格子の後方端面位相を制御することは非常に困難である。それゆえ、かかる発光素子には原理的に一定の割合でSMSR不良が発生してしまう。高出力化及び低閾値化のために、DFB-LDでは後方端面が高反射膜でコーティングされている。この場合、DFB-LDのSMSRは回折格子の後方端面位相により決定される。例えば、1.3μm帯で発振するDFB-LDの回折格子の周期は約200nmと非常に短い。
【0042】
ここで、従来技術に係る半導体レーザ素子について考察する。かかる半導体レーザ素子は、例えば4つのDFB-LDが集積されるアレイ素子である。従来技術に係る半導体レーザ素子では、4つのDFB-LD、すなわち4つのメサストライプが等しい中心間距離で順に並んでいる。例えば、4つのDFB-LDの出力光が4本の光ファイバを含むリボンファイバに結合する場合、隣り合うDFB-LDの出射端面(前方端面)における中心間距離、すなわち、隣り合うメサストライプの中心間距離は、リボンファイバの隣り合う光ファイバのコアの中心間距離によって決定されるのが望ましく、かかる中心間距離は200μm~300μmであり、代表的な値は250μmである。両端にある2つのメサストライプの中心間距離は600μm~900μmとなり、代表的な値は750μmである。
【0043】
回折格子を形成する方法として、電子線描画が一般に用いられる。電子線描画装置では、1000μm角程度の領域内であれば1nm程度の位置精度が実現可能であり、半導体基板劈開面に対する平行度の精度については0.02°以下が実現可能である。DFB-LDの回折格子の後方端面位相に対する位置精度の影響を考察すると、位置精度1nmは回折格子周期200nmに対して十分小さく、ここでは位置精度の影響は問題とならない。これに対して、半導体基板劈開面に対する平行度の精度の影響を考察すると、前述の通り平行度の精度は0.02°である。sin(0.02°)=0.00033であり、回折格子の周期(メサストライプの延伸方向)に対して垂直方向に600μm移動すると、回折格子の後方端面位相は、200nm、すなわち回折格子1周期分ずれることになる。
【0044】
前述の通り、DFB-LDのアレイ素子のSMSR歩留まりは、各DFB-LDのSMSR歩留まりの積であり、単一のDFB-LDのSMSR歩留まりと比べて大幅に低下してしまう。従来技術に係る半導体レーザ素子では、4つのメサストライプのうち、両端にある2つのメサストライプの中心間距離は600μm~900μmとなり、回折格子の後方端面位相のずれは1周期分かそれより大きくなってしまっており、4つのDFB-LDのうち、1のDFB-LDにSMSR不良が発生していなくても、他のDFB-LDにSMSR不良が発生する可能性は高くなっている。DFB-LDのアレイ素子のいずれのDFB-LDにSMSR不良が発生しても、DFB-LDのアレイ素子は不良品となってしまうのでアレイ素子のSMSR歩留りは非常に低下してしまう。発明者らは、従来技術に係るDFB-LDのアレイ素子の歩留まり低下の主な原因が、各DFB-LDのSMSR不良によるとの知見を得ることにより、本発明に想到している。
【0045】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子100において、複数(ここでは4つ)のメサストライプ103のうち、両端にある2つのメサストライプ103の中心間距離は、SMSR安定化の観点では、回折格子の後方端面位相のずれが1周期に対して有意に小さくなるよう決定されるのが望ましい。具体的にはπ/2(1/4周期)以内に収まるように決定されるのが望ましい。両端にある2つのメサストライプ103の回折格子の後方端面位相のずれは、回折格子の周期と、電子線描画装置の半導体基板劈開面に対する平行度の精度によって決定される。1.3μm帯のDFB-LDの場合、回折格子の後方端面位相のずれが1周期となるのは2つのメサストライプ103の中心間距離が600μm程度離れるときであり、位相のずれが1/4周期以内とするには、両端にある2つのメサストライプ103の中心間距離は150μm以下であるのが望ましい。複数のDFB-LDをかかる範囲内に集積されるアレイ素子において、複数のDFB-LDの回折格子の後方端面位相のずれを抑制することができ、アレイ素子のSMSR歩留まりをDFB-LD単一のSMSR歩留まりに近づけることができる。言い換えれば、アレイ素子に集積される複数のDFB-LDのうち、1のDFB-LDにSMSR不良が発生していなければ、他のDFB-LDにもSMSR不良が発生していない可能性が大きく高まることとなる。よって、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100の歩留まりは格別に向上される。
【0046】
SMSR安定化の観点では、複数のメサストライプ103のうち、隣り合う1組のメサストライプ103の中心間距離(ピッチ)は出来る限り短いのが望ましい。メサストライプ103や高抵抗InP層117の作製精度に鑑みると、隣り合う2つのメサストライプ103の中心間距離は20μm以上であるのが望ましい。隣り合う2つのメサストライプ103の中心間距離を近づけることにより半導体レーザ素子100のSMSR歩留まりをさらに向上させることが出来る。
【0047】
前述の従来技術に係る半導体レーザ素子では、隣り合う2つのメサストライプの中心間距離は接続されるリボンファイバの光ファイバのコアの中心間距離によって決定されている。これに対して、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100では、両端にある2つのメサストライプ103の中心間距離は、SMSR安定化の観点より回折格子の後方端面位相のずれを抑制することにより決定され、隣り合う2つのメサストライプ103の中心間距離は、両端にある2つのメサストライプ103の中心間距離と複数のメサストライプ103の個数とによって決定される。言い換えれば、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100において、隣り合うメサストライプ103の前方端面(出射側の端面)における中心間距離は、接続される外部の光学部品などによって決定される距離により短くなる場合があり得る。これを解決するために、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100は、レーザ領域101に配置される複数のメサストライプ103にそれぞれ接続される複数の導波路105を備えており、複数の導波路105のうち、少なくとも1の導波路105は、対応するメサストライプ103の延伸方向に対して屈曲する部分を含んでいる。かかる導波路105は、対応するメサストライプ103の延伸方向に対してすべて直線的に延伸しているのではなく、かかる導波路105の前方端面は、対応するメサストライプ103の延伸方向への延長線とは異なる位置にある。これにより、かかる導波路105の前方端面を外部の光学部品と接続されるために所望の位置に配置することができる。すなわち、半導体レーザ素子100において、複数のDFB-LDの出力光の出射箇所(導波路105の前方端面)を所望の位置に配置することができる。
【0048】
図2に示す通り、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100では、複数の導波路105は、後方端面(レーザ領域101のメサストライプ103との接続箇所)から前方端面(出力光の出射端面)にかけて、出射方向(さらに厳密にはメサストライプ103の出射方向)を向いて両側に広がって延伸している。複数の導波路105のうち、隣り合う2つの導波路105それぞれは、対応する隣り合う2つのメサストライプ103と比べて、出射方向に沿ってさらに広がって延伸する部分がある。
【0049】
複数の導波路105のうち、少なくとも1組の隣り合う導波路105が対応する隣り合う1組のメサストライプと比べて、出射方向に沿ってさらに広がって延伸する部分があれば、当該1組の隣り合う導波路105の前方端面における中心間距離を後方端面における中心間距離より長くすることが可能となり、当該1組の隣り合うDFB-LDの出射箇所(当該1組の隣り合う導波路105の前方端面)において所望の中心間距離で外部の光学部品と接続することが可能である。複数の導波路105のうち、隣り合う導波路105すべてが対応する隣り合うメサストライプと比べて、出射方向に沿ってさらに広がって延伸する部分があるのがさらに望ましく、隣り合う導波路105すべてにおいて、前方端面における中心間距離を後方端面における中心間距離より長くすることが可能となり、半導体レーザ素子100に備えられるすべてのDFB-LDの出射箇所(複数の導波路105すべての前方端面)において所望の中心間距離で外部の光学部品と接続することが可能である。当該実施形態に係る半導体レーザ素子100では、従来技術に係る半導体レーザ素子と同様に、半導体レーザ素子100の4つのDFB-LDの出力光は4本の光ファイバを含むリボンファイバに結合する。そのために、隣り合う導波路105すべてにおいて、前方端面における中心間距離は200μm~300μmのいずれかの値であり、代表的な値は250μmである。なお、ここでは、半導体レーザ素子100の隣り合う出射口(ここでは、隣り合う導波路105)の中心間距離はリボンファイバの隣り合う光ファイバのコアの中心間距離によって決定されているが、これに限定されることはなく、例えばレンズアレイに配置される隣り合うレンズの中心間距離など、それ以外の光学部品によって決定されてもよい。
【0050】
本発明は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100のように、4以上のDFB-LDが集積される場合に最適である。集積されるDFB-LDの数を増加させると、それに応じて複数のDFB-LDの少なくともいずれかにSMSR不良が発生する可能性が上昇してしまうところ、本発明にSMSR歩留りを向上することが出来る。また、集積されるDFB-LDの数を増加させると、それに応じて複数のDFB-LDそれぞれに配置される電極の形状は複雑になる。その観点からは集積されるDFB-LDの数は4以下が望ましく、4つのDFB-LDが集積される場合はさらに望ましい。
【0051】
なお、当該実施形態に係る半導体レーザ素子100に備えられる複数のメサストライプ103は、1.3μm帯のうち、実質的に同じ波長の光を発振しているが、これに限定されることはなく、同じ波長帯であれば、必要に応じて互いに(又は一部に)異なる波長の光を発振していてもよい。異なる波長の場合は、最も離れた波長差が0.5%以内であるとより本発明の効果を得ることができる。
【0052】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ素子150は、複数のDFB-LDと複数の変調器が集積される光半導体素子である。
図5は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子150の平面図である。当該実施形態に係る半導体レーザ素子150は、導波路領域102の前方に(出射側に)変調領域151をさらに含んでいる。半導体レーザ素子150は、変調領域151に配置される複数の変調器152をさらに備える。また、変調器152を備えることにより外部変調型となるので、レーザ領域101のメサストライプ103は連続発振(CW:Continuous Wave)する。それ以外については、半導体レーザ素子150は、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子100と同じ構造をしている。
【0053】
変調領域151に配置される変調器152の基本的な構造は公知のものであり、詳細な説明は省略する。変調器152は、導波路領域102に配置されるメサストライプ106と接して配置されるメサストライプを備える。当該メサストライプは、メサストライプ106の導波路層120とバットジョイントされる活性層を含んでいる。変調器152は、レーザ領域101と同様に、複数のp側電極153を備え、対応するメサストライプの上部と電気的に接続されている。
図5には、導波路105A,105B,105C,105Dにそれぞれ接続される変調器152A,152B,152C,152Dが示されており、変調器152A,152B,152C,152Dがそれぞれ備えるp側電極153A,153B,153C,153Dが示されている。レーザ領域101の複数のp側電極153と同様に、複数のp側電極153には平面視して導波路105と交差するものもあるが、電気的に接続されていないので光出力に影響を与えない。
【0054】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子150は、第1の実施形態と同様に、複数の導波路105を備えており、複数の導波路105のうち隣り合う導波路105すべてにおいて前方端面(変調器152との接続箇所)における中心間距離が後方端面(メサストライプ103との接続箇所)における中心間距離より長くすることができている。変調領域151の変調器152において隣り合うメサストライプは直線的に延伸しているが、半導体レーザ素子100に備えられるすべてのDFB-LDの出射箇所(複数の変調器152すべての前方端面)において所望の中心間距離で外部の光学部品と接続することが可能である。当該実施形態に係る半導体レーザ素子150は、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子100と同様の効果を奏する。なお、導波路領域102と変調領域151の順序が逆の配置であっても構わない。この場合、導波路領域102の複数の導波路105は、対応するメサストライプ103の活性層112と、変調領域151(対応する変調器152)を介して光学的に接続される。
【0055】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ素子155は、2つのDFB-LDとMMI(Multi-Mode Interference)合波器とが集積される光半導体素子である。
図6は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子155の平面図である。半導体レーザ素子155は、レーザ領域101と導波路領域102と合波領域156とを含んでいる。レーザ領域101に、2つのメサストライプ103A,103Dが配置され、2つのメサストライプ103A,103Dの上面それぞれと物理的に接触して電気的に接続される2つのp側電極104A,104Dが配置される。導波路領域102に、2つのメサストライプ103A,103Dそれぞれと接続される2つの導波路157A,157Dが配置される。第1の実施形態と同様に、レーザ領域101に配置されるメサストライプ103の活性層112と、導波路領域102に配置されるメサストライプ106の導波路層120とは、バットジョイントされる。合波領域156に、2つの導波路157A,157Dを経由して入力される2つの光信号を合波する、MMI合波器158と、MMI合波器158が出射する多重光信号を出射端面まで伝搬させる導波路159と、が配置される。
【0056】
レーザ領域101に配置される2つのメサストライプ103A,103D及び2つのp側電極104A,104Dの構造は、2つのDFB-LDの発振波長が異なっている点で第1の実施形態と異なるが、それ以外については第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と異なり、2つのメサストライプ103A,103Dのみがレーザ領域101に配置されているが、2つのメサストライプ103A,103D(両端にある2つのメサストライプ)の中心間距離は150μm以下が望ましい。当該実施形態に係る半導体レーザ素子155は第1の実施形態に係る半導体レーザ素子100と同様の効果を奏する。
【0057】
導波路領域102に配置される2つの導波路157A,157Dは、後方端面から前方端面にかけて、2つのメサストライプ103A,103Dから直線的に延伸し(中心間距離は一定に保たれる)、MMI合波器158に向けて互いに近づくよう延伸する(中心間距離が徐々に短くなる)。それ以外については、2つの導波路157A,157Dは第1の実施形態に係る2つの導波路105A,105Dと同じ構造をしている。
【0058】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子155のDFB-LDは直接変調型であり、2つのメサストライプ103A,103Dより2つの光信号が出力し、かかる2つの光信号が2つの導波路157A,157Dをそれぞれ伝搬し、かかる2つの光信号がMMI合波器158に入力される。MMI合波器158は入力される2の光信号を合波して多値光信号を導波路159へ出力し、導波路159を伝搬して、半導体レーザ素子155は前方端面より外部へかかる多重光信号(ここでは2chの光信号)を出射する。
【0059】
MMI合波器158は入力される2つの光信号(ここでは、2つのメサストライプ103A,103Dが出力する2つの光信号と実質的に同じである)のビート周波数(うなり周波数:2つの光信号の周波数の差)が2つの光信号の変調周波数より十分に大きい場合には、ドライバ132(
図4参照)の制御により、2つのメサストライプ103A,103Dのうち、一方のメサストライプ103が出力する光信号の振幅と、他方のメサストライプ103が出力する光信号の振幅とを、例えば1:2とすることにより、MMI合波器158が出力する多重光信号を多値変調光信号とすることができる。高周波遮断フィルターを用いることにより、2つの光信号のビート(うなり)を抑制することが可能だからである。ここで、MMI合波器158に入力される2つの光信号のビート周波数が変調周波数より十分に大きいとは、ビート周波数が変調周波数の2倍以上であるのが望ましく、5倍以上であるのがさらに望ましく、10倍以上がさらに望ましい。
【0060】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子155は、第1及び第2の実施形態と異なり、2つの導波路157A,157Dの中心間距離は、後方端面(メサストライプ103側の端面)と比べて前方端面(MMI合波器158側の端面)より短くなっている。かかる場合であっても、少なくとも1(ここでは2つ)の導波路157が、メサストライプ103の延伸方向に対して屈曲する部分を含むことにより、MMI合波器158へ2つの光信号を出力することができている。
【0061】
また、当該実施形態に係る半導体レーザ素子155では、1組(すなわち2つ)の隣り合うメサストライプ103及びそれに光学的に接続される1組(すなわち2つ)の隣り合う導波路が配置されているが、これに限定されることはない。複数のメサストライプが複数組の隣り合うメサストライプを含み、複数の導波路が複数組の隣り合う導波路を含み、当該複数組の導波路を経由して複数組の光信号がそれぞれ入力される複数のMMI合波器を半導体レーザ素子が備えていてもよい。いずれの場合であっても、複数のメサストライプのうち、両端にある2つのメサストライプの中心間距離が150μm以下であれば、SMSR歩留まりが飛躍的に向上される。
【0062】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ素子160は、複数のDFB-LDと複数の変調器とMMI合波器が集積される光半導体素子である。
図7は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子160の平面図である。当該実施形態に係る半導体レーザ素子160は、
図6に示す第3の実施形態に係る半導体レーザ素子155の導波路領域102に配置される2つの導波路157A,157Dの途中に、変調器152が配置される構造を有している。第3の実施形態と同様に2つのDFB-LDの発振波長が異なっているが、半導体レーザ素子160は外部変調型であるので、第2の実施形態と同様にレーザ領域101のメサストライプ103は連続発振する。それ以外については、半導体レーザ素子160は、第3の実施形態に係る半導体レーザ素子155と同じ構造をしている。
【0063】
図7に示す通り、当該実施形態に係る半導体レーザ素子160は、レーザ領域101と導波路領域102Aと変調領域151と導波路領域102Bと合波領域156とを含んでいる。レーザ領域101のメサストライプ103A,103Dは、前述の通り、第3の実施形態と異なり連続発振しているが、それ以外の構造は第3の実施形態と同じである。導波路領域102Aには2つの導波路161A1,161D1が配置されるが、第3の実施形態に係る2つの導波路157A,157Dのうちレーザ領域101側の部分(直線的に延伸する部分)と同じ構造を有する。変調領域151に、第2の実施形態と同様に、(p側電極153A,153Dをそれぞれ備える)変調器152A,152Dが配置される。導波路領域102Bには2つの導波路161A2,161D2が配置されるが、第3の実施形態に係る2つの導波路157A,157Dのうち合波領域156側の部分(直線的に延伸する部分の一部と互いに近づくよう延伸する部分)と同じ構造を有する。合波領域156に、MMI合波器158と導波路159とが配置されるが、第3の実施形態と同じ構造を有する。
【0064】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子160の2つのメサストライプ103a,103dは連続発振するので、2つの導波路161A1,161D1を伝搬する光は連続光であるが、変調器152A,152Dにより2つの光信号に変換される。かかる2つの光信号は、2つの導波路161A2,161D2を伝搬して、MMI合波器158へ入力される。当該実施形態に係る半導体レーザ素子160は、第3の実施形態と同様の効果を奏する。
【0065】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ素子165は、第3の実施形態に係る半導体レーザ素子155の導波路領域102に配置される導波路157A(1組の導波路の、一方の導波路)の途中に、光吸収器が配置されているが、それ以外については、第3の実施形態と同じ構造を有している。
【0066】
図8は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子165の平面図である。当該実施形態に係る半導体レーザ素子165は、第3の実施形態に係る導波路領域102の代わりに、導波路・光吸収領域166を含んでおり、導波路・光吸収領域166には、導波路157Dに加えて、第3の実施形態に係る導波路157Aの代わりに、導波路167A1、光吸収器168、及び導波路167A2が配置される。前述の通り、第3の実施形態に係る導波路157Aの途中に光吸収器168を配置したものであり、導波路167A1,167A2は導波路157Aの対応する部分と同じ構造をしている。光吸収器168はp側電極169を備えており、その構造は公知のものであってよい。
【0067】
第3の実施形態では、メサストライプ103Aが出力する光信号の振幅と、メサストライプ103Dが出力する光信号の振幅とが異なるよう、ドライバ132が制御している。一般に、DFB-LDの変調帯域を決定する緩和振動周波数は光出力に対する依存性が大きい。それゆえ、2つのDFB-LDの光出力(すなわち振幅)が異なると、光出力の周波数応答特性が異なることとなり、一方のメサストライプ103が出力する光信号の振幅と、他方のメサストライプ103が出力する光信号の振幅とを、例えば1:2とするならば、MMI合波器158で合波される多値変調光信号の波形(合成波形)に大きな歪が発生する可能性があり得る。
【0068】
これに対して、当該実施形態に係る半導体レーザ素子165は、第3の実施形態に係る半導体レーザ素子155と同様の効果を奏する。半導体レーザ素子165では、2つのメサストライプ103A,103Dが出射する光信号の振幅は実質的に同じとなるようドライバ132は制御すればよく、一方の光信号を光吸収器168が吸収することにより、該一方の光信号の振幅を低減させることができる。よって、MMI合波器158に入力される2つの光信号の周波数応答特性を実質的に同一となるよう近づけることができている。
【0069】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子165は、第3の実施形態に係る半導体レーザ素子155の一方の導波路157Aの途中に光吸収器168を配置するものであったが、これに限定されることはない。第4の実施形態に係る半導体レーザ素子160の一方の導波路の途中に光吸収器168を配置してもよい。この場合、変調器152の前方にある導波路(例えば、導波路161A2)の途中に光吸収器168を配置するのが望ましい。
【0070】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ素子170は、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子100に配置される複数(ここでは4つ)のメサストライプ103のうち、両端にある2つのメサストライプ103A,103Dそれぞれのさらに外側に配置される、ダミーメサストライプ171をさらに備えている。しかしながら、それ以外については、第1の実施形態と同じ構造をしている。
【0071】
図9は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子170の平面図である。
図9に示す通り、レーザ領域101に配置される4つのメサストライプ103A,103B,103C,103Dから出射方向を向いてさらに左方(
図9の上方)に2つのダミーメサストライプ171Aが、さらに右方(
図9の下方)に2つのダミーメサストライプ171Dが、それぞれ配置されている。ダミーメサストライプ171A,17ADの構造は、複数のメサストライプ103や複数のp側電極104と電気的に接続しておらず、形状がメサストライプ103と大きく異なっていなければよい。ダミーメサストライプ171A,171DにはP側電極が配置されていない。製造コスト低減の観点からは、メサストライプ103を作製する工程と少なくとも一部が共通しているのが望ましい。そして、ダミーメサストライプ171A,171Dに電圧(又は電流)が印可されることはなく、それゆえ、ダミーメサストライプ171A,171Dが駆動されることはない。そして、実際に駆動される複数のメサストライプ103のうち両端にある2つのメサストライプ103A,103Dの中心間距離Wが150μm以下であればSMSR歩留りへの影響を低減することができる。
【0072】
第1の実施形態に係る半導体レーザ素子100では、複数のメサストライプ103が並んで配置され、当該複数のメサストライプ103それぞれの両側が高抵抗InP層117で埋め込まれている。複数のメサストライプ103のうち、2つのメサストライプ103B,103Cは、自身のメサストライプ103の両側に実質的に同じ中心間距離で隣り合うメサストライプ103が配置され、その間が高抵抗InP層117で埋め込まれている。これに対して、両側にあるメサストライプ103A(103D)では、自身のメサストライプ103A(103D)の出射方向を向いて右方(左方)には隣り合うメサストライプ103B(103C)が配置され、その間が高抵抗InP層117で埋め込まれているが、出射方向を向いて左方(右方)には隣り合うメサストライプ103は存在せず、左方(右方)を広く高抵抗InP層117で埋め込まれている。すなわち、両側にはる2つのメサストライプ103A,103Dは延伸方向に対して非対称的な環境となっており、メサストライプ103A,103Dに非対称な応力がかかる可能性が高くなり得る。かかる非対称な応力は、素子特性の観点でも素子信頼性の観点でも望ましくない。
【0073】
これに対して、当該実施形態にかかる半導体レーザ素子170では、両端にある2つのメサストライプ103A,103Dそれぞれのさらに外側にダミーメサストライプが少なくとも1つのダミーメサストライプ171が配置されることにより、両端にある2つのメサストライプ103A,103Dにかかる応力の非対称性を抑制することができる。当該実施形態では、メサストライプ103A(103D)の出射方向を向いて左方(右方)に2つのダミーメサストライプ171A(171D)が配置されており、メサストライプ103A(103D)にかかる応力の非対称性はさらに抑制されている。
【0074】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子170は、両側にある2つのメサストライプ103それぞれの外側に2つのダミーメサストライプが配置されているが、これに限定されることはない。対称性の観点では2つのダミーメサストライプが望ましいが、1つのダミーメサストライプであってもよい。対称性の観点では3つ以上のダミーメサストライプがさらに望ましい。
【0075】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子170は、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子150に配置される複数のメサストライプ103のさらに外側にダミーメサストライプ171を配置したものであるが、これに限定されず、他のすべての実施形態に係る半導体レーザ素子に適用することができる。
【0076】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ素子175は、第2の実施形態に係る半導体レーザ素子150に、複数のメサストライプ103と複数の導波路105との間に配置される、複数の光増幅器がさらに備えている。しかしながら、それ以外については、第2の実施形態と同じ構造をしている。
【0077】
図10は、当該実施形態に係る半導体レーザ素子175の平面図である。
図10に示す通り、当該実施形態に係る半導体レーザ素子175は、レーザ領域101と導波路領域102と変調領域151とに加えて、レーザ領域101と導波路領域102との間に光増幅領域176を含んでいる。光増幅領域176に、複数の光増幅器177が配置される。
【0078】
光増幅器177の構造は、光増幅器177に含まれるメサストライプには回折格子層114が形成されない点を除いて、レーザ領域101のメサストライプ103と同じ構造をしている。すなわち、レーザ領域101と光増幅領域176とは共通する製造工程で同時に形成される。また、素子の駆動時には、レーザ領域101の活性層112にも光増幅領域176の活性層112にも同じ電気信号が印可されるので、両領域に共通の電極が形成されればよく、
図10には、第2の実施形態と同様に、p側電極104A,104B,104C,104Dとして表されている。
【0079】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子175では、光増幅器177が配置されており、光半導体素子の高出力化を実現することができる。特に、当該実施形態に係る半導体レーザ素子175は、変調器152を備えており、レーザ領域101のメサストライプ103は連続発振しているので、光増幅器177を利得飽和領域にて使用することにより、変調器152へ入力する光出力の安定化がさらに実現される。
【0080】
レーザ領域101のメサストライプ103には回折格子が形成されているが、光増幅領域176のメサストライプには回折格子が形成されておらず、メサストライプの形状はさらなる自由度を有する。当該実施形態に係る半導体レーザ素子175では、レーザ領域101に配置される4つのメサストライプ103は直線的に延伸しているが、光増幅領域176に配置される4つのメサストライプは、前方に向けて両側へ広がる形状を有している。それに伴って、p側電極104の形状が第2の実施形態に係るp側電極104と前方部分(導波路領域102側の端部)において異なっている。
【0081】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子175は、第2の実施形態に係る半導体レーザ素子150に光増幅器177を配置しており、連続発振される光の出力を増幅することで格別の効果を奏しているが、これに限定されることはない。他のすべての実施形態に係る半導体レーザ素子に適用することができる。
【0082】
当該実施形態に係る半導体レーザ素子175では、レーザ領域101に配置されるメサストライプ103の活性層112と、導波路領域102に配置されるメサストライプ106の導波路層120とは、光増幅領域176に配置されるメサストライプの活性層112を介して光学的に接続されている。なお、光増幅領域176に配置されるメサストライプの活性層112と導波路領域102に配置されるメサストライプ106の導波路層120とはバットジョイントされている。このように、第1乃至第6の実施形態のように、レーザ領域101に配置されるメサストライプ103の活性層112と導波路領域102に配置されるメサストライプ106の導波路層120とは、バットジョイントにより直接接続されていても、第7の実施形態のように、他のメサストライプを介して接続されていてもよく、両者が光学的に接続されていればよい。
【0083】
以上、本発明の実施形態に係る光半導体素子、光サブアセンブリ、及び光モジュールについて説明した。上記実施形態に限定されることなく、活性層及び回折格子を含むメサストライプが複数並んで半導体基板上に配置され、後方端面に反射膜が配置される、光半導体素子、光サブアセンブリ、及び光モジュールに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 光伝送装置、2 光モジュール、3,3A,3B 光ファイバ、11,21 プリント回路基板、12 IC、22A 光受信モジュール、22B 光送信モジュール、100,150,155,160,165,170,175 半導体レーザ素子、101 レーザ領域、102,102A,102B 導波路領域、103,103A,103B,103C,103D,106 メサストライプ、104,104A,104B,104C,104D,153,153A,153B,153C,153D,169 p側電極、105,105A,105B,105C,105D,157A,157D,159,161A1,161A2,161D1,161D2,167A1,167A2 導波路、107 反射防止膜、108 高反射膜、110 n型InP基板、111 n型InPクラッド層、112 活性層、113 p型InPスペーサ層、114 回折格子層、115 p型InPクラッド層、116 p型コンタクト層、117 高抵抗InP層、118 絶縁膜、120 導波路層、130 光サブアセンブリ、131 サブマウント、132 ドライバ、140 電極パターン、141 アノード電極、142 カソード電極、143 ビアホール、144,145,147 ワイヤ、151 変調領域、152,152A,152B,152C,152D 変調器、156 合波領域、158 MMI合波器、166 導波路・光吸収領域、168 光吸収器、171,171A,171D ダミーメサストライプ、176 光増幅領域、177 光増幅器。