(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】塔状構造体の基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/42 20060101AFI20230807BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20230807BHJP
F03D 13/20 20160101ALI20230807BHJP
E04H 12/22 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
E02D27/42 C
E02D27/32 A
F03D13/20
E04H12/22
(21)【出願番号】P 2019089384
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Borsigstrasse 26, 26607 Aurich Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアナ アプランテス アルフェス
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-065454(JP,A)
【文献】特開2017-133295(JP,A)
【文献】特開2014-167202(JP,A)
【文献】特開2017-215238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/42
E02D 27/32
F03D 13/20
E04H 12/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔状構造体の柱脚基部を固定するよう柱脚基部を受ける座部に沿って分散配置され、複数のアンカーをセットとして有する塔状構造体の基礎構造であって、
前記基礎構造の縦断面で見て前記アンカーと平行に配されかつ前記座部の内側及び外側の領域に分散配置された一群の縦筋と、
前記アンカーと交わる方向で水平方向に基礎構造の中心軸に向って放射状に配されかつ前記座部に沿って分散配置された複数の放射状水平筋ループと、を有し、
前記放射状水平筋ループは一対の水平部を含んで構成され、
前記
放射状水平筋ループは前記アンカーのセットの下部を起点として形成されるコーン状破壊面と交差して配設され、
前記一群の縦筋は前記コーン状破壊面と交差して前記座部の内側及び外側の領域から前記基礎構造のフーチング
部の下部にまで延在すること、
を特徴とする塔状構造体の基礎構造。
【請求項2】
前記
放射状水平筋ループの前記一対の水平部は前記縦断面で見て上下に離隔して配設され、前記水平部を繋ぐループ部は実質的に前記コーン状破壊面の外側に位置すること、を特徴とする請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記一群の縦筋は、前記フーチング部の底部にまで延在することを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎構造。
【請求項4】
前記一群の縦筋は、前記
放射状水平筋ループと交差して格子状配筋構造を形成することを特徴とする請求項1~3の一に記載の基礎構造。
【請求項5】
前記基礎構造は、前記座部を支持する台座部を有し、前記
放射状水平筋ループは前記台座部の側縁部近傍まで延在することを特徴とする請求項1~4の一に記載の基礎構造。
【請求項6】
前記
放射状水平筋ループのループ部は、一対の縦筋部から構成されることを特徴とする請求項1~5の一に記載の基礎構造。
【請求項7】
さらに複数の水平
筋リングを有し、前記一群の縦筋は、前記放射状水平筋ループとの交差部で前記水平
筋リングと接合されることを特徴とする請求項1~6の一に記載の基礎構造。
【請求項8】
前記アンカーのセットはその下端部にリング状のアンカープレートを有し、前記コーン状破壊面は前記アンカープレートの下端部を起点として規定されることを特徴とする請求項1~7の一に記載の基礎構造。
【請求項9】
前記一群の縦筋の少なくとも一部はU字型に折曲げられた一対のアーム部を含むU字型筋として構成されることを特徴とする請求項1~8の一に記載の基礎構造。
【請求項10】
前記一群の縦筋の少なくとも一部は、2つの前記U字型筋のアーム部対をU字型折曲部を両端として互いに重ねて配置することによって構成されることを特徴とする請求項9に記載の基礎構造。
【請求項11】
前記アンカーのセットは、その上端部に、仮止め上部アンカープレートを、コンクリート打設後除去可能に備えることを特徴とする、請求項1~10の一に記載の基礎構造。
【請求項12】
前記アンカーのセットは、半径方向に少なくとも2本のアンカーが平行に配置されて構成されることを特徴とする請求項1~11の一に記載の基礎構造。
【請求項13】
前記アンカーのセット
は、アンカープレートをフーチング部底部より支持する支柱を有する請求項8~12の一に記載の基礎構造。
【請求項14】
前記
放射状水平筋ループは、一本の筋からループ状に折り曲げて構成される請求項1~13の一に記載の基礎構造。
【請求項15】
前記
放射状水平筋ループは、両端に重なり合い部分を有することを特徴とする請求項
14記載の基礎構造。
【請求項16】
前記
放射状水平筋ループと平行に、かつ前記コーン状破
壊面を横切ってフーチング部から放射状に延在する1以上のフーチング部水平筋部を有することを特徴とする請求項1~15の一に記載の基礎構造。
【請求項17】
前記基礎構造は、前記座部の半径方向両側に座部外縁部及び座部内縁部を備える台座部を有し、前記台座部の上端部近傍に延在する水平放射状筋を有すること特徴とする請求項1~16の一に記載の基礎構造。
【請求項18】
台座部の水平放射状筋に少なくとも一部分が重なり配設され、前記台座部の内端部及び外端部近傍にて縦方向に折り曲げられて前記フーチング部の底部にまで延在する縦筋を有することを特徴とする請求項1~17の一に記載の基礎構造。
【請求項19】
前記一群の縦筋は、折曲がり上端部を有し、折曲がり上端部が台座部の水平放射状筋に掛け回されて配設されることを特徴とする請求項1~18の一に記載の基礎構造。
【請求項20】
台座部のフレーム構造を形成する縦筋の上部には縦方向に互いに離隔配置された複数の水平筋リングが接合保持されて、籠状のフレーム組を形成することを特徴とする請求項5~19の一に記載の基礎構造。
【請求項21】
前記籠状のフレーム組は、少なくともコーン状破壊面と交差してその両側に延在配設されることを特徴とする請求項20に記載の基礎構造。
【請求項22】
前記アンカーは、プレストレスを導入するアンボルドアンカーであることを特徴とする請求項1~21の一に記載の基礎構造。
【請求項23】
前記複数の水平筋リングの夫々は、前記一群の縦筋の1つのみと接合されることを特徴とする請求項7に記載の基礎構造。
【請求項24】
請求項1~
23の一に記載の基礎構造を有することを特徴とする風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭状構造体の基礎構造に関し、特に風力発電装置の支柱や煙突などの高い柱状(一般的には中空柱状)構造物を地盤に対して支持するための基礎構造に関する。基礎構造は、一般的には、塔状構造体に作用する風力、地震力等により生ずる回転モーメント及び/又は水平応力に抵抗するに十分な抵抗力をその安全、安定的支持のため、確保する必要がある。
【背景技術】
【0002】
搭状構造体は、地盤に配設された基礎構造に対し、一般的には、アンカーボルトによって固定保持される。アンカーボルトは、鉄筋コンクリート構造体として構成された基礎構造体に予め埋設して建造される。
【0003】
塔状構造体の基礎構造へのアンカーボルトの埋設の設計指針ないし設計基準としては、例えば、日本においては、非特許文献1、2のような文献が知られている。この設計基準は学術的に裏付けられたものであり、世界各国においても妥当するものと考えられる。
【0004】
各種アンカーボルトが知られているが、そのうち、典型的には頭付きアンカーボルトが用いられる。頭付きアンカーボルトの場合、コンクリート躯体(body)において、その埋設状態において、アンカーボルトへ作用する引抜力(上方への引張力)によって、コーン状破壊面がアンカーボルト頭部の端部を起点として形成される。非特許文献1、239頁、
図4.5参照。同図の斜線部分が、頭付きアンカーボルトの有効水平投影面積Acである。この図を本願の
図13に示す。さらに、アンカーボルトは一般的に複数並置(array)して用いられるが、その場合の有効水平投影面積ΣAcは、同図(b)に示されている。さらに多数のアンカーボルトが用いられる場合は、この応用となり、アンカープレートを併用する場合も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】各種合成構造設計指針・同解説、日本建築学会(AIJ Recommendations for Design of Composite Constructions)(2010改訂)第4編、各種アンカーボルト設計指針
【文献】煙突構造設計施工指針(1982年版)、財団法人日本建築センター発行:P79-81、2.4基礎
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
搭状構造体の代表例としては、煙突、風力発電装置の支柱(ないし支持塔)がある。再生エネルギーのうち、風力発電は、太陽光発電と異なり、日夜を通して発電することが可能であり、欧米、アジアではすでに再生エネルギーの主力の座を占めるに至っている。日本においても、再生エネルギーは将来の主力電源として位置付けされ、そのうち、風力発電の重要性及びその有用性の認識が高まっている。
【0008】
風力発電は陸上と洋上があるが、特に陸上の場合、地盤に基礎構造を建設し、その上に支柱を立設し、支柱の頂部に風車及び発電機を取付けて風力に応じて風車を回転させ、もって発電機を回転して発電を行う。洋上でも浅い海域では海底地盤に基礎構造を設けて支柱を支えることができる。深い海域の洋上では、海底地盤から立上げた櫓構造の上にプラットフォームを設け支柱を支える定置方式と、浮体を基礎構造体としてその上に支柱を設置する浮体方式とがある。
【0009】
本発明においては、陸上又は比較的浅い海底の地盤に基礎構造を設ける方式に用いる基礎構造を念頭において論ずるが、これに限定されるものではない。
【0010】
風力発電の発展は急激に進行しており、近時、風車の直径は100m超が一般的であり、百数十mから150mにも達するものも実用化されようとしている。これに対して支柱の高さも50mを超え、100m以上にまで達しようとしている。風車の大径化にはもちろん発電機の大型化も伴うので、支柱頂部に配される風車及び発電機の荷重も増大の一途を辿っている。大径風車は当然風力を受けて回転するものであり、風速の作用により風車の受ける抗力は風車のハブに伝達され、支柱の頂部に伝達される。自然環境の変動により、台風、ハリケーン、暴風、突風、竜巻などの強風、突風による風車への圧力も当然考慮しなければならず、これに耐える抗力を支柱頂部で確保する必要がある。
【0011】
支柱は基礎構造に固着され、固着手段としては通例アンカーボルト(以下、アンカーとも称する)が用いられる。コンクリート体に埋没されたアンカーボルトの引張力に対する抗力の確保のためには、コンクリートだけでは不充分であり、一般的に補強筋(鉄筋)の配設が行われる。そしてその際、コーン状破壊面でのコンクリート破壊が生じないよう様々な配筋設計が行われてきた。
【0012】
特に、高い塔状構造体で頂部にその軸線に直交する方向の力が作用するようなものについて、一例として特許文献1がある。この場合、基礎コンクリートに縦方向の引張応力のみならず、横方向の引張力が作用することが教示され、それと対抗するための特定の配筋構造が提案されている。これによって基礎構造にコーン状破壊面が生成することが抑止できる、とされている。
【0013】
なお、煙突の基礎の設計原則について、非特許文献2、80頁には次のように教示がある(本願
図14参照)。煙突の基礎は上部構造物から伝達される転倒モーメント(MB)に脚部に生ずるせん断力(Q
B)と基礎せい(D)によって生ずる付加モーメント(M
B1)及び基礎自身にかつ地震力による水平力(重心位置に生ずる)と基礎底面までの距離(D/2)によって生ずる付加モーメント(M
B2)を加えた値に対して、転倒を起こさないよう設計しなければならない。なおこの転倒モーメントは煙突、基礎及び基礎上部±重量と直接基礎にあっては地耐力、くい基礎にあってはくい耐力で抵抗させることを原則とする。なお「基礎せい(D)」とは基礎の垂直方向寸法(深さ)のことである。
【0014】
特許文献1の
図1~6を参照すると、アンカーボルト(アンボンドアンカー5)に平行な一対の縦筋7a、7bをアンカーの両側(半径方向で外側、内側)に立設して交叉させ、さらにリング状のフープ筋8a、8bを円周上に配置して、それぞれの縦筋7a、7bに接合保持し、さらにアンカー5に直交して水平方向に多数の放射状筋9を上下に離隔し、かつアンカー及び縦筋に直交するよう配置した略シリンダ状の筋組み構造が開示されている。なお、縦筋7a、7bはフーチング部に伸長している。アンカーの上下端にはリング状のアンカープレートが配されている。座部3bはフーチング部3の上部に形成され、フーチング部の筋組みはフーチング部の外壁に沿ってその内縁部に配されている。
【0015】
しかしながら、例えば風力発電装置の風車の巨大化に伴い、その支柱の高さも巨大化し、高さ50m以上から100m以上にも達しようとしている。さらに支柱が頂部に配置される風力発電装置も大型化している。そのように頂部に力の作用する大型の塔状構造物を安全に確実に支持するには、上記特許文献1の基礎構造ではなお不十分な耐力しか提供し得ないという懸念がある。
【0016】
本発明は、その一視点において、巨大な支柱(塔状構造体)の安全な支持に貢献することが出来る基礎構造を提供することを一目的とする。また本発明の他の一視点において、筋組み構造の簡単化、組立て工程の容易化ないし簡単化に貢献する基礎構造の提供も一目的とされる。本発明の他の視点、他の目的はさらに全開示の中から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第一の視点において、塔状構造体の基礎構造が提供される。この基礎構造は、鉄筋コンクリート基礎構造であり、
搭状構造体の柱脚基部を固定するよう柱脚基部を受ける座部に沿って分散配置された、複数のアンカーボルト、特にプレストレスを導入するアンボンドアンカー、をセットとして有する搭状構造体の基礎構造である。基礎構造は、前記基礎構造の縦断面で見て前記アンカーボルトと平行に配されかつ前記座部の内側及び外側の領域に分散配置された一群の縦筋と、
前記アンカーボルトと交わる方向で水平方向に基礎構造の中心軸に向って放射状に配されかつ前記座部に沿って分散配置された複数の放射状水平筋ループと、を有する。この基礎構造において、前記放射状水平筋ループは一対の水平部を含んで構成される。典型的には、前記水平筋ループは前記アンカーボルトのセットの下部を起点として形成されるコーン状破壊面と交差して配設される。さらに、典型的には、前記一群の縦筋は前記コーン状破壊面と交差して前記座部の内側及び外側の領域から前記基礎構造のフーチング部の下部にまで延在するよう配設される。
【0018】
本発明の第二の視点において、塔状構造体の基礎構造、特に第一の視点に対応する基礎構造の、製造方法が提供される。この製造方法によれば、第一の視点に規定される配筋構造[即ち筋組みないし筋アセンブリ]を組み立てる工程を含む。さらに、組立工程の後、コンクリートを注入[流し込み]する工程がある。その後、コンクリートの硬化を待って基礎構造は完成する。
なお、特許請求の範囲に図面参照符号を付記した場合、それは専ら理解を助けるためのものであり、本発明を図示の形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0019】
本発明の各視点により、アンカーボルトに作用する巨大な応力や、繰り返し応力にも耐える強固な基礎構造、特に塔状構造体の基礎構造の提供に貢献することができる。塔状構造体としては、特に風力発電装置の支柱としての支持塔、特に大型の風車を有する風力発電装置用のものが考えられ、その基礎構造として本発明の基礎構造を用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、基礎構造の概要形態[基本形態]について、概説する。塔状構造体の基礎構造は、鉄筋コンクリート基礎構造であり、搭状構造体の柱脚基部を固定するよう柱脚基部を受ける座部に沿って分散配置、例えば所定間隔で分布配置、された複数のアンカーボルト、特にプレストレスを導入するアンボンドアンカー、をセットとして有する搭状構造体の基礎構造である。基礎構造は、前記基礎構造の縦断面で見て前記アンカーボルト[以下アンボンドアンカーを含めてアンカーボルトないしアンカーと称する]と平行に配されかつ前記座部の内側及び外側の領域に分散配置[例えば所定間隔で分布配置]された一群の縦筋を有する。
【0021】
さらに基礎構造は、アンカーボルトと交わる方向で水平方向に基礎構造の中心軸に向って放射状に配されかつ前記座部に沿って[円周方向に所定間隔で]分散配置された複数の放射状水平筋ループを有する。この基礎構造において、前記放射状水平筋ループは一対の水平部を含んで構成される。典型的には、水平筋ループはアンカーボルトのセットの下部を起点として形成されるコーン状破壊面と交差して配設される。さらに、典型的には、前記一群の縦筋は前記コーン状破壊面と交差して前記座部の内側及び外側の領域から前記基礎構造のフーチング下部にまで延在するよう配設される。この水平筋ループと一群の縦筋の組み合わせ[以下便宜上、「水平ループ/縦筋組合せ構成」と言う]により、基礎構造の耐力、詳しくは、アンカー保持耐力の画期的増大が実現される。しかも、その構造は簡潔であり、組み立ても複雑な筋組を要しないという、追加的利点も存在する。
【0022】
コーン状破壊面とは、アンカーボルトの下端部から上方へ向かって開くように水平面に対し約45度の角度でコンクリート内部にコーン状に形成される破壊面のことであり、記述のとおり一般的には、非特許文献1に教示されている。コーン状破壊面は、破壊が生じたとき形成されるもので、実際にコンクリート内に存在する面ではなく、その意味では、仮想面とみなされるが、基礎構造のアンカーの設計にあたり、その考慮は、安全の確保上重要な意義を有する。
【0023】
前記の筋配置構造を有することにより、基礎構造は、塔状構造体から作用する巨大な応力、特にアンカーボルトの下端部からコンクリートに及ぼされる上方への引張応力及び水平方向のせん断応力に対抗する耐力を形成することに貢献する。その結果、例えば、直径百メートル以上の巨大風車と対応発電機を支持塔の上部に有する風力発電装置の巨大塔状構造体を固定支持する基礎構造として、十分なアンカー保持耐力を発揮することができる。もちろん、各筋自体の耐力の設計は、所定の安全基準を満たすよう、それぞれ、既存の設計基準ないし設計指針に基づいて、個別工事の所与の条件に応じて専門技術者の手で行われるべきものであり、ここでは、詳述しない。
【0024】
塔状構造体の基礎構造、特に第一の視点に対応する基礎構造の、製造方法は、第一の視点に規定される配筋構造[即ち筋組みないし筋アセンブリ]を組み立てる工程を含む。さらに、組立工程の後、コンクリートを注入[流し込み]する工程がある。その後、コンクリートの硬化を待って基礎構造は完成する。
【0025】
以下、さらに本発明において、上述の、概要形態の展開可能な形態について、説明する。
【0026】
水平筋ループの一対の水平部は前記縦断面(基礎構造の中心軸を通る縦断面)で見て上下に離隔して[典型的にはループ面が縦方向と実質的に平行に]配設され、前記水平部を繋ぐループ部は実質的にコーン状破壊面の外側に位置することが提案される。この構成により水平筋ループの効果的な耐力作用が確保される。実際的に、この基準を満たすことによって、水平方向の耐力が確保され、大きな水平方向応力を受けたときでも、コーン状破壊面の生成を未然に防止することができる。
【0027】
前記一群の縦筋は、前記フーチング部の底部にまで延在することが好ましい。十分な縦方向耐力を確保するためである。しかもこの構造によれば、縦筋の配置構成及び組み立て工程を簡単化でき、かつ縦筋の径も軽減できる利点がある。
【0028】
前記一群の縦筋は、前記水平筋ループと交差して縦断面で見て格子状配筋構造を形成することが好ましい。これによりコンクリート断面内に一様な耐力分布を形成できる利点がある。また、筋の組上げ構造も、さらに組み立て工程も、簡単になる。
【0029】
基礎構造は、前記座部を支持する台座部を有し、前記水平筋ループは前記台座部の側縁部近傍まで延在することが提案される。台座部は、目的とするアンカー耐力を確保する部分として設計され、塔状構造体の基本的支持構造部(「基台部」とも称する)を形成する。
【0030】
台座部は座部を支持する形で座部の下から座部の半径方向内側、外側両方向に延在することが好ましい。台座部は、帯円状[リング状]座部を囲む幅広のリング形状とすることが好ましく、このように構成することによって、平面図で見た場合、どの方位角においても均一なアンカー耐力、即ち基礎構造耐力を得ることができる。
【0031】
水平筋ループのループ部は、一対の縦筋部分から構成されることが好ましい。この場合、水平筋ループは、ほぼ矩形状、特に半径方向に長い矩形状になる。この構成により、水平筋ループの及ぼす水平方向耐力を増大させることができ、併せて、そのループ化加工工程、及び筋組み立て工程も、簡単化され、位置決めの正確化も達成できる。
【0032】
前記アンカーボルトのセットはその下端部にリング状のアンカープレートを有することが好ましい。リング状アンカープレートの使用は、アンカーセットの全体としてのアンカー耐力の均一化ないし複合(合成)合力作用化をもたらすので有用である。アンカープレートを用いる場合、コーン状破壊面はアンカープレートの端縁部(厳密には上端縁部)を起点として規定されることになり、そのコーン中心は、基礎構造(ないし基台部)の中心軸に一致する。アンカープレートの外端縁部を起点として形成されるコーン状破壊面のコーン面は、その下方への延長面[縦断面で見た場合延長線]の頂点が前記中心軸に一致する。他方、アンカープレートの内端縁部を起点とするコーン状破壊面のコーン面は、その上方への延長面の頂点が前記中心軸に一致する。従って、コーン状破壊面は、アンカープレートの内外両端縁部を起点として、外側コーン状破壊面と内側コーン状破壊面の2つの部分から構成される。
【0033】
前記一群の縦筋の少なくとも一部はU字型に折曲げられた一対のアーム部を含むU字型筋として構成されることが好ましい。これにより縦筋の耐力の増大が得られると共に、縦筋の組み付け及び配筋も容易化される。
【0034】
前記一群の縦筋の少なくとも一部(好ましくは大部分)は、2つの前記U字型筋のアーム部対をU字型折曲部を両端として互いに重ねて(即ち対として)配置することによって構成されることが好ましい。これにより縦筋の加工及び組み立てが簡易化されると共に、縦方向の耐力の確保に資する。
【0035】
アンカーボルトのセットは、その上端部に、仮止め上部アンカープレートを、コンクリート打設後除去可能に備えることが好ましい。アンカーセットの組み立ての便宜とアンカーの正確な位置決め、並びにコンクリート打設時のアンカー位置の確保に資する。なお、上部アンカープレートは、そのまま埋込み状態で用いることも可能である。
【0036】
アンカーボルトのセットは、半径方向に少なくとも2本のアンカーが(好ましくは)平行に配置されて構成されることが好ましい。複数のアンカーは、塔状構造体の下部(柱脚基部)に設けたフランジ状のアンカー受けないしアンカー係合部に正確に位置決めして、設計設置される必要があるが、アンカーの分布配置の位置決め及び締め付け固定後のアンカー耐力の一様な分布に資する。
【0037】
アンカーのセットは、前記(下部の)アンカープレートをフーチング部底部より支持する支柱を有することが好ましい。アンカープレート(特にアンカー)の正確な組付け位置の確保に有用である。
【0038】
水平筋ループは、一本の筋からループ状に折り曲げて構成されることが好ましい。これにより、水平筋のループの耐力の確保が容易に達成されると共に、併せてその加工が容易になる。
【0039】
この場合、水平筋ループは、両端に重なり合い部分を有するよう構成することが好ましい。水平筋ループの耐力の確保とループ加工の容易性を併せて与えることができる。重なり合い部分は好ましくは、水平部分に配することが好ましいが、これに限らず、ループ部に又はループ部を含めて、配することもできる。
【0040】
基礎構造には、水平筋ループと平行に、かつコーン状破壊面を横切ってフーチング部から放射状に延在する1以上のフーチング部水平筋部を有することが好ましい。これにより、フーチング部に施された筋の延長部として配置された筋(フーチング部水平筋部)が、アンカー耐力の確保にも役立つことになる。
【0041】
基礎構造は、座部の半径方向両側に座部外縁部及び座部内縁部を備えて、台座部を構成し、台座部の上端部近傍に延在する水平放射状筋を有することが好ましい。これにより、台座部としての強度、耐力を確保することができると共に、一群の縦筋との連携作用の確保に資する。
【0042】
台座部の水平放射状筋は少なくとも一部分が互いに重なり配設され、台座部としての筋の組み立ての容易化にも、当然資する。台座部の内端部及び外端部近傍にて縦方向に折り曲げられて前記フーチング部の底部にまで延在する縦筋を有することが提案される。これにより、台座部を含めこれを支持するフーチング部の対応部分からなる基台部の筋フレーム構造が創出されると共に、フーチング部の底部にまで延在する縦筋の存在により、台座部及び基台部における筋の組み立てが安定化し、筋の組み立て工程も安定化する。そして台座部の筋フレーム構造の正確な位置決め及び組み立て状態における正確な配筋位置の維持、確保に資する。
【0043】
前記一群の縦筋は、(U字状の)折曲がり上端部を有し、折曲がり上端部が台座部の水平放射状筋に掛け回されて配設されることが好ましい。これにより、夫々の縦筋の上記の構造が簡略化(simplified)されると共に、各縦筋の縦方向耐力の増大に資する。即ち、折曲がり上端部が水平放射状筋に掛け回されて配設されることにより、縦方向筋に縦方向力が作用した場合に、水平放射状筋に縦方向力が伝達されその安定保持機能力(即ち縦方向力への対抗機能が加味されその合力として縦方向耐力)が形成される。この際縦方向筋は、特に放射状水平筋に結合(ないし接合)する必要はなく、単に掛け回し支持されることをもって足りる。この構成により、筋の組立て工程も、縦筋の組立て後の(特にコンクリート打設中での)安定性も確保できる、という利点がある。
【0044】
前記台座部のフレーム構造を形成する縦筋の上部には各縦筋につき少なくとも1つの水平筋リングが接合保持されることが好ましく、籠状のフレーム組を形成することが好ましい。(必要に応じて水平筋リングは縦方向に互いに離隔して複数配設すること)が好ましい。水平筋リングとの接合により、縦筋の円周方向位置決め、及び水平筋リングの上下(垂直即ち縦)方向の位置決めがなされ、筋フレーム構造(筋のフレーム組)の組立て安定性が達成される。加うるに、組立て工程の容易性も達成される。
【0045】
上記籠状のフレーム組は、少なくともコーン状破壊面と交差してその両側に延在配設されることが好ましい。これにより、コーン状破壊面の形成に対する耐力が一層強化される。
【0046】
前記アンカーボルトとしては、プレストレスを導入するアンボンドアンカーを用いることが好ましい。これにより、コンクリート構造に対する(ひいては、塔状構造体に対する)アンカーボルトの耐力の強化、安定性を確保することができる。
【0047】
風力発電装置は上述の基礎構造を有することにより、容易に建設でき、かつ安定して運転できる。即ち、上述の基礎構造の上に、アンカーボルトを介して支持塔を設立固定し、その頂部に風車と発電機を備えた発電機構を配設することにより、風力発電装置が建設され、かつ安定して運転可能である。強化された堅固な基礎構造とアンカーボルトシステムにより、台風、ハリケーンなどの暴風雨にも十分耐える保持耐力が得られる。該基礎構造の存在により、巨大な風車を備えた風力発電装置の建設、設置が容易に行われ、かつ、安定した運転の確保に資する。もちろん、地震による地盤の振動にも十分な水平/垂直方向の耐力の確保にも、本発明のアンカーシステムは資する所大である。
【0048】
以下、図面を参照して、さらに具体的な実施例の説明を行う。これらの実施例は、本願発明をそれらに限定するものではなく、上述の概要形態の説明とも組合わされて当業者には自明の修正、組合わせ、要素の選択(ないし要素の不選択)が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】基礎構造の一例の主要部の縦断面図(フーチング部の左翼は右翼と対称のため省略)である。
【
図4】基礎構造の外形及び台座部の一例を縦断面図として示す。
【
図5】一群の縦筋(18、19)の一例を分解図として示す。
【
図6】台座部の筋フレーム構造の一例を分解図として示す。
【
図7】放射状水平筋ループの一例を分解図として示す。
【
図8】台座部の上部の水平筋部及びフーチング部の筋構造の主要部分の一例を分解図として示す。
【
図9】アンカーボルトの上端部の一例を部分拡大図として示す。
【
図12】塔状構造体の上端部に作用する力とアンカーボルト及び台座部にかかる力の関係を示す概略図である。
【実施例1】
【0050】
図1に、基礎構造70の一例の主要部の縦断面図(以下「断面図」と略称することもある)を示す。フーチング部71の左翼72は右翼72と対称のため図示を省く。
図2に、
図1のA部拡大図(台座部の座部、アンカー結合部)を示す。基礎構造70は、台座部73をその中央部に有し、塔状構造体の下部たる柱脚基部60を受ける座部56を上面に有する。座部56は帯状リング部材(好ましくは、弾性材料)として形成され、柱脚基部60の下端に設けたフランジ部61を支持するよう構成される。
【0051】
座部56は、台座部上面に所定の凹所(リング状凹所)にフランジ部61を受けるに十分な所定の幅をもって、中心軸CLを中心として所定位置に配される。アンカーボルト50A、50Bは、座部56の孔及びフランジ部61の孔62を貫通して延在し、フランジ上部に突出して配され、ねじ50Cによって基礎構造に固着される。
【0052】
アンカーボルト50A、50Bは、所定の長さで縦方向に延在し、その下端部に配されたアンカープレート54(プレート両側に配したナットにより)に固定されている。アンカープレート54は、フーチング部底部より立設した支柱57によってフーチング部底面より所定高さにかつ、中心軸CLを中心として所定の半径方向位置に、定置組み付けられる。このようにして、アンカープレート54を介して、多数のアンカーボルト50A、50Bは、円周に沿ってリング状に配設され、アンカーボルトのセットを構成する。
【0053】
図示の態様では、アンカーボルト50A、50Bは、縦断面において、一つの半径上に外/内の所定位置に、所定間隔をもって並置されているが、このアンカーボルトの配置態様は、必要に応じ、均一なアンカー耐力を確保する限り、任意の配列が可能である。
【0054】
台座部73は、フーチング部71の中央部に突出形成されているが、台座部の形状は必要に応じ選択可能である。また台座部73の上面73Aは、その中央部が平坦なプロフィルとなっているが、必要に応じ可変であり、例えば、低い凸状としてもよい。台座部73の上面の外周縁部(座部56の外方周縁部)は、僅かな傾斜を示すが、これは雨水等の流出の便宜にすぎず、必要に応じて変更、選択可能である。
【0055】
台座部73の内部には、アンカーボルトの安定保持を確保するため、並びに、塔状構造体の荷重を支えるための、鉄筋構造ないし筋フレーム構造が配される。台座部73(フーチング部71より突出した部分を、便宜上台座部73という)とその下部のフーチング部中央部が、主な荷重受け構造を構成する。台座部73とその下部のフーチング部中央部の部分、リング状の座部56を支える下部構造(即ち、座部支持構造)を示す部分を、便宜上「基台部」と称する。基台部73Bは台座部73の上面73Aから、フーチング部71の座部にまで達するリング状筋フレーム構造を有し、主として、フレーム外部の縦筋11、10でリング状に囲まれて(いわば)ドーナツ状に形成される。
【0056】
基台部73Bにおいて、台座部上端部(上面の直下位置)から下方へ延在して配される一群の縦筋18、19がある。一群の縦筋18、19は、断面図において、所定の間隔(半径方向間隔)で配され、アンカーボルト50A、50Bと平行に延在し、さらに、下方へと延在して、少なくともフーチング部71の下部に至る。図示の態様においては、一群の縦筋18、19は、フーチング部の底部71Cにまで達している。なお、フーチング部71は、地盤上に設けた捨てコンクリート71Dの上に構築される。必要に応じ、水平面確保のため、捨てコンクリート71Dの上にスチール板を介在させてもよい。
【0057】
基台部73Bとフーチング部71の境界に亘り、放射状水平筋ループ12(12A、12B、12C)が、アンカー50A、50Bと 直交する方向に水平に延在している。そのループ部12Cは筋フレーム構造を成す縦筋11、10のすぐ近くに配され、水平筋部12A、12Bは互いに平行に、放射状に延在して放射状水平筋ループ12を形成している。水平筋ループの一例は、
図7に示され、一本の筋を折曲げ加工して形成されている。また、その両端は、特に接合せず、重ね合わせ部を形成している。重ね合わせ部は少なくとも水平筋部12A、12Bを含み、さらにループ部12Cに延在することが好ましい。水平筋ループの形態、特にループ部の形状は、図示のものに限定されず、必要に応じてさらに選択可能である。図示部分Aに一例を示す水平筋ループの形態(即ち、水平方向(半径方向)に長い矩形状)は、筋の加工及びその配置の便宜上、さらにその作用効果上、好ましいものである。
【0058】
水平筋部12A、12Bの上下(垂直)間隔は、コンクリートとの接合力を考慮して任意に選択できる。図示の形態では、断面図に1セットの水平筋ループが配設されているが、その数は、所定耐力を考慮して、選択可能であり、必要に応じ複数とすることも許容される。
【0059】
放射状水平筋ループは水平方向(ないしアンカーに対し横方向)に作用する力に対し、十分な保持耐力を確保、維持できるよう定められ、その存在によって、アンカー耐力の安定保持に資するものである。なお、図示の態様においても、さらに円周方向における分布間隔ないしピッチ(従って円周当りのループ数)の設定により、水平方向耐力のさらなる調節が可能である。
【0060】
図2に、コーン状破壊面の典型例が示されている。コーン状破壊面は、アンカープレート54の端部を起点として、水平面から約45度の角度をもって延在するコーン状面52A、52Bとして生成するものと確認されている。その外部(ないし外側)コーン状面52Aは、その下方への延長面(ないし延長線)が、中心軸CL上に頂部を有するよう形成される。また、内部コーン状面52Bは、その上方への延長面が中心軸CL上に頂部を有するよう形成される。この時に仮定される仮
想的コーン状破壊面が、実際には生じないように、所定の配筋構造によって、アンカーボルトの機能が確保されるよう、設計される。即ち、水平筋ループは、コーン状破壊面を横切って配設される具体例の一つであるが、
図2に示すとおり、水平筋ループの上部水平筋12A、下部水平筋12Bは、それぞれコーン状破壊面52A、52Bを横切って延在している。この構成により、水平方向の力に対する耐力が確保される。
【0061】
なお、図示の態様から分かるとおり、2つのループ部12Cは、夫々、コーン状破壊面の外側に位置し、他方水平筋部12A、12Bの中央部は、コーン状破壊面の内側(図示の例では、上方へ開いたコーン面の内側)に位置する。このような配置状態は好ましい一例である。
【0062】
次に一群の縦筋についてさらに説明する。
図1、2に一例として示す一群の縦筋18、19は重なって表示されているが、いずれも2本の筋から成る。各筋18又は19は、
図5に示すように途中でU字形に折曲げ加工されており(18C、19C)、それぞれが一対のアーム部(18A、18B)(19A、19B)を有するU字形折り曲げ加工筋である。上部の折曲げ部19Cから延在する縦筋19と下部の折曲げ部18Cから延在する縦筋18は互いに重なって配設される。そのことによって、あたかも
図1、2において一本に見える縦筋は、一対の縦筋として存在し、もって、合わせて縦筋としての機能を発揮する。
【0063】
図示の態様において、一群の縦筋束19、18はそれぞれ対をなして、上部の台座部上面直下からフーチング部の底部にまで延在する。他の2つの縦筋も同様である。この構成により、一群の縦筋は、コーン状破壊面を横断して垂直方向に延在するよう配設されることになり、垂直方向への引張り応力に対抗する耐力を与える。特にアンカーボルト50A、50Bに近い所から所定の水平方向間隔をもって配置された一群の縦筋18、19は、コーン面の下部(アンカーボルトに近い領域)においてコーン状破壊面を横切って延在しており、このアンカー近隣領域において、アンカーボルト下端部から作用する上向きの引張り応力に対し、確実な耐力を与えることができる。その際には縦筋18、19に生ずる引張応力は、その上下端部における水平筋との掛け回しによる、拘束力も受けることができ、耐力を安定して確保することに資する。
【0064】
図3は、
図2に対して、別の一変形例を示す。一群の縦筋19はそのU字形折曲げ部が放射状水平筋14、15に掛け回されて配置され、そのアーム部19A、19Bは、放射状水平筋の手前側(19A)及び後ろ側(19B)で放射状水平筋12の水平筋部12A、12Bと、それぞれ交差して延在する(図示の態様では、水平筋部12A、12Bの両側に一対のアーム部19A、19Bで水平筋部を挟むよう延在する)。下部の縦状筋18のアーム部18A、18Bとの重なり具合は、
図5(分解図)に示すのと同様である。
【0065】
図3の変形例の場合、複数の水平筋リング27は、縦筋のアーム部(19A、19B)の一方(手前側19A)と下の水平筋部12Bの交差点に配されると共に、他方の縦筋(アーム部)(後ろ側19B)と上の水平筋部12Aの交差点に配されて、夫々接合される。この前/後配置関係は、隣接の縦筋(アーム部19A、19B)に交互に繰り返される。これにより水平筋リング27の数を節約しつつ、一群の縦筋(18、19)の水平面内での位置固定を安定化させることができる。併せて、放射状水平筋ループ12の高さ位置(垂直方向の位置)の、組立て時における安定化にも資する。水平筋リング27の分解図(平面図)は、
図10にその部分角度で示すとおりであり、円形に曲げ加工した水平筋リング27の両端は、好ましくは互いに重なり合って構成される。重なり部分は、適宜分数配置することが好ましい。
【0066】
図1、
図8(筋分解図)に示す如く、水平筋リング27は、縦筋19A、19B、及び放射状水平筋ループの組立て位置関係の安定化のためのものであり、特にアンカーから作用する応力(垂直方向引張り応力、水平方向剪断力)に対する耐力には関係ない。かくて、水平筋リング27は、筋の組立て位置確保に十分な強さ(太さ)を有すれば足り、またその数も必要最低限でよい。
【0067】
放射状水平筋ループ12と平行に、その半径方向の全長に亘り、フーチング部71の翼部72の上端部に延在する横方向筋42の延長部分が水平筋部分42Aとして、放射状水平均ループを横方向(図中水平方向)の全長に亘り延在し、その末端は下方に折曲げられて、フレーム縦筋10(11)と平行にかつ同一面を成して延在する縦部分42Bをもって終端している。これにより、フーチング部71との台座部73の一体化と共に台座部73に作用する応力のフーチング部71(特にその翼部72)への応力の伝達・分散が図られる。ひいては巨大な塔状構造物に対するアンカー耐力の増強に資する。なお、
図1に示す鉄筋で上述以外のものは、全体として基礎構造の設計上一般的に必要とされる補強強度を達成するに十分な範囲で、適宜配設されるものである。これらの鉄筋は、28~41、43~45を含み、7、8、9、10A~10C、14~16、17、23、24、25等を含むが、これらは一例にすぎず、これらに限定されるものではない。
【0068】
図2に対する対称位置(
図1では右側)における(台座部とその下部の支持フーチング部を合わせた)基台筋フレーム部の筋構造も、フレーム縦筋11に関して、
図2の場合と同様な関係にある。
【0069】
台座部73の拡大図(
図2)に戻ると、その上端部には、放射状水平筋15がその両端を垂直方向に折曲げて配設されている(
図8も参照)。これは、塔状構造部の荷重を支持するための補強にも資する。また、台座部73の上部には、基台部の上面部の補強筋構造(9、43、44、45)が図示の如く設けられる。これは、座部56の周辺表面部の強化に資するが、詳細は省く。
【0070】
再度
図2に戻ると、台座部73からそれに続くフーチング部71にかけて、台座部73のフレーム構造53A、53Bを形成する縦筋10、11の上部には、水平リング筋25、26が垂直方向に所定間隔で配されて、籠状のフレーム組53A、53Bを形成している。水平リング筋25、26は夫々、縦筋11、10の円周方向位置決めを行うと共に、台座部の外周壁部の水平リング筋25は、コーン状破壊面52Aに対する外周壁部の強化にも資する。また水平リング筋(複数)26は内側のコーン状破壊面52Bに対する耐力の強化にも資する。
【0071】
籠状のフレーム組53A、53Bは、コーン状破壊面52A、52Bを夫々垂直方向に横切る位置に(その両側に)存在している。これにより、コーン状破壊面の上端部での耐力の確保に資している。
【0072】
図2に示す、水平筋リング27の配置形式は、上部水平筋部12A、下部水平筋部12Bと一群の縦筋18、19の各縦筋との交差点に配置、接合されている。これにより、放射状、水平筋ループの高さ位置固定と、一群の縦筋18、19の水平面内における円周角度位置の固定、安定化が達成される。もって、台座部73ないし基台筋フレーム部における筋構造の組み立て時の安定化が達成される。
【0073】
なお、アンカーボルトとしては、プレストレスを導入するアンボンドアンカーを用いることが有利である。プレストレスの導入の仕方は、当業者に周知であり、詳述を省く。アンカーボルト50A、50Bは、コンクリート注入、硬化の後、座部56の設置を行い、塔状構造体の柱状脚部60の着座の際、アンカーボルトの上端部をフランジ部61の孔62に挿通して、着座させる。着座の後、アンカーボルトのねじ50Cを各アンカーボルト50A、50Bに螺合し、順次締め付けを行い、フランジ部61を座部56に固く締着する。これにより、アンカーボルト50A、50Bには予応力が生成されて、柱状脚部60は、基礎構造に安定的に固定される。
【0074】
図12は、塔状構造体の上端部に作用する力と、アンカーボルト及び台座部にかかる力の関係を概略的に示す。塔状構造体の上端Pに力Fが作用するものとし、台座面73Aからの高さをhとすると、モーメントFxhにより、アンカーAK1には引張応力、アンカーAK2の部分の台座部73には圧縮応力がかかる。なお、Fと反対方向の力が作用した場合には、この逆の関係になる。この際、頭部付きアンカーAK1の下端部から約45°のコーン状破壊面が想定される。基礎構造70に対して安定して塔状構造体を支持するには、十分な強さの結合手段即ちアンカーが必要である。hの巨大化、(例えば50m以上、130m以上、150m以上)に対応して、AK1、AK2に作用する引張応力も巨大化する。この際アンカーには水平応力も生ずる。これに十分耐える基礎コンクリート構造が望まれることになる。
【0075】
本発明の教示内容に基づき、本実施例に対応する設計によれば、所定の要求を満たす基礎構造の確実な製造に貢献できる。その際、所定の一群の縦筋と所定の放射状水平筋ループの組合せは、アンカー耐力の確実な確保に貢献する。かかる縦筋/水平筋ループの組合せの採用は、基礎構造の設計を簡単化し、また組立てを容易化することにも貢献する。
【0076】
図6に、台座部の筋フレーム構造の一例として分解図を示す。縦筋10、11は、その上、下面端部で直角に水平方向へ折り曲げ加工されて形成されている。これにより、縦筋の本来の縦筋部分に作用する応力は、両端部の水平方向部へも一部伝達される。その結果、縦筋に作用する応力は一部分散される。この筋フレーム構造により、縦筋に要求される許容応力(ないし耐力)が軽減され、用いる縦筋の節約に資する。節約は筋の直径の縮小ないし配筋数の減少として実施可能である。
【0077】
図8に、台座部の上部の水平筋部及びフーチング部の筋構造の一例として、分解図を示す。フーチング部71の外壁部強化筋42、16は、フーチング部の底部71Cの周縁部から出発して、半径外方へ延び、周壁部との角で折り曲がった後、周壁部内を上方へ延在し、さらにフーチング部の翼部72上方外端部に至って折曲がり、翼部72の上面(コーン状斜面)に沿って、台座部の外周縁に至り、さらに水平に方向を変じて、台座部を水平に横断する方向へ延在する。外壁部強化筋42は、基台部の内端辺の縦筋間に達するまで水平筋ループ12と平行に延在して水平筋部分42Aを成し、その後縦筋10の位置に達し、そこで縦筋10と平行な方向に折り曲げられて、下方に縦筋10と平行な延在部(縦部分)42Bとなって終端する。一方、筋16は、基台部の中間(アンカーの手前)で下方へ折曲がって終端する。この筋構造により、フーチング部と基台部の一体化に貢献する。同様に、水平筋ループ12の水平方向耐力を補強する機能も有する。また、14、15として基台部に配される他の放射状水平筋(
図2に示す)の一例を示す(
図8も参照)。
【0078】
図9にアンカーボルトの上端部の一例として、部分拡大図を示す。2本(一対)のアンカーボルト50A、50Bの上端部は、座部56の孔を貫通してその上方へ一定量突出し、ねじ部分に一時的位置決め用仮アンカープレート55を有する。仮アンカープレートの孔に挿通された後、上下一対のねじ(仮ねじ)50Eで仮アンカープレート55は固定される。これにより、アンカー50A、50Bは、コンクリート打設の際に所定位置に位置決め確保される。仮アンカープレート(従って、アンカーボルト50A、50Bの上端部)の位置は、図示外の任意の手段によって確保される。特に、リング状の仮アンカープレート55は、基礎構造(従って台座部)の中心軸CLと一致して同心に保持される。なお、座部56の下面プロフィルは、逆台形状に構成されているが、これに限定されない。座部56の材質は、耐久性弾性部材を用いることが好ましい。これは入手可能な部材から選択可能である。その理由は柱脚基部60(のフランジ部61)を載置した際の水平レベリングの容易化のためである。水平レベリングが、他の形式で達成できる場合、弾性材料はより硬いものとでき、或いは他の材質に代えることも可能である。
【0079】
【0080】
図11は基礎構造の上に設置することが可能な風力発電装置の一例を示す。
【0081】
風力発電装置100は、基礎構造に固定された支持塔(塔状構造体)102を有し、その頂部にナセル104を方位ベアリング112を介して旋回可能に支持する。ナセルには風車106が回転可能に取り付けられ、風車のハブ部110には、複数のプレート(108、この場合37)がエアロダイナミックに取り付けられており、風の向きに応じて方位角が調節されて風車が回転し、風車の回転力はナセル内に配された発電機を駆動して発電を行う。支持塔102の基礎101は格子(grid)記号で示す。本発明の基礎構造は、一例として、このような風力発電装置の支持塔の基礎として用いることができる。風速、風向は常時変動し、また突風、暴風雨(台風、ハリケーン)、竜巻などの異常気象に風力発電装置はさらされる。そのため、これらの異常気象にも十分耐える支持構造及び基礎構造が求められる。本発明の基礎構造は、これらの要求に応じることに貢献する。なお、基礎構造の耐力設計には、地震により生ずる各種応力、特に水平及び又は垂直方向の応力への対応も考慮されることが望ましい。本発明は、地震への耐力の確保にも貢献できる。
【0082】
[産業上の利用可能性]
巨大な塔状構造体としては、例えば、風力発電装置の支持塔が考えられる。風車の直径の巨大化は、必然的に支持塔の高さの巨大化を招く。風車径の増大は発電効率の増大に有用であり、その傾向は、今後一層助長されよう。本発明による十分なアンカー耐力を有す基礎構造の提供は、再生エネルギーの発電効率の一層の改善にも貢献する。基礎構造は、十分な支持耐力を有する地盤の上に築かれるが、地盤の耐力が不十分な場合杭による支持(ないし補強)が行われる。地盤としては典型的には陸上が考えられるが、海底、特に浅い海底の地盤にも適用可能である。
【0083】
なお、風力発電装置以外にも巨大な塔状構造体が必要な場合、本発明の基礎構造を利用することができる。
【0084】
塔状構造体としては、そのほか煙突や電波塔ないしアンテナ塔、観測塔など、目的・用途の如何に拘わらず、高い塔状構造物に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
10、11 縦筋(フレーム縦筋)
12(12A、12B、12C) (放射状)水平筋ループ
12A、B 水平筋部
12C ループ部
14、15 放射状水平筋
16 外壁部強化筋(筋)
18 縦筋(縦筋束)
18A、B アーム部
18C 折曲げ部
19(19A、19B、19C) 縦筋(縦筋束)
19A、B アーム部
19C 折曲げ部
25、26 水平リング筋
27 水平筋リング
42(42A、42B、42C) 外壁部強化筋
42A 水平筋部分
42B 延在部(縦部分)
50A、B アンカーボルト(アンカー)
50C、E ねじ
52A、B コーン状破壊面(コーン状面)
53A、B フレーム構造(フレーム組)
54 アンカープレート
55 仮アンカープレート
56 座部
57 支柱
60 柱脚基部(柱状脚部)
61 フランジ部
62 孔
70 基礎構造
71 フーチング部
71C 底部
71D 捨てコンクリート
72 翼部
73 台座部
73A 上面(台座面)
73B 基台部
100 風力発電装置
101 基礎
102 支持塔
104 ナセル
106 風車
110 ハブ部
112 方位ベアリング
A 図示部分
AK1、2 アンカー
CL 中心軸
F 力
P 上端