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特許7326019密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置および電気コネクタ
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  • 特許-密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置および電気コネクタ 図1
  • 特許-密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置および電気コネクタ 図2a
  • 特許-密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置および電気コネクタ 図2b
  • 特許-密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置および電気コネクタ 図3a
  • 特許-密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置および電気コネクタ 図3b
  • 特許-密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置および電気コネクタ 図3c
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置および電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/585 20060101AFI20230807BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20230807BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01R13/585
H01R13/52 301E
H01R43/00 B
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019092628
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2019200992
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】1854181
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518105024
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクス フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】パマート,オリヴィエ
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543646(JP,A)
【文献】特開2006-253148(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135303(WO,A1)
【文献】特開平05-013127(JP,A)
【文献】特開2006-164843(JP,A)
【文献】特開平04-264376(JP,A)
【文献】実開平03-086577(JP,U)
【文献】特開2005-317365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/585
H01R 13/52
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッド(3)を備え、前記グリッド(3)自体が、1つまたは複数のケーブル(105、107)をそれぞれ受け入れるための1つまたは複数の受入れオリフィス(9、11)をそれぞれ備えており、前記グリッド(3)が、各前記1つまたは複数のケーブル(105、107)を前記グリッド(3)の各前記1つまたは複数の受入れオリフィス(9、11)に固定するためのクランプ手段を備えている、密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)であって、

前記グリッド(3)は、第1のジョー(5)および第2のジョー(7)を備えており、前記第1のジョー(5)および前記第2のジョー(7)は、前記第1のジョー(5)と前記第2のジョー(7)との間に前記1つまたは複数のケーブル(105、107)のための前記1つまたは複数の受入れオリフィス(9、11)を形成しており、前記ハウジング(101)の開口(103)への導入時に閉じることによって前記1つまたは複数の受入れオリフィス(9、11)内で前記1つまたは複数のケーブル(105、107)をそれぞれ締め付けるように互いに対して可動であり、

前記第1のジョー(5)は、前記ハウジング(101)の前記開口(103)への前記グリッド(3)の導入方向とは逆の方向に前記第2のジョー(7)を越えて延びている、
密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)。
【請求項2】
前記第1のジョー(5)は、1つまたは複数の弾性変形可能なヒンジ(31、33)を使用して、前記第2のジョー(7)に対する前記第1のジョー(5)の回転旋回動作を可能にするように、前記第2のジョー(7)に対して可動に取り付けられている、
請求項に記載の密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)。
【請求項3】
前記第1のジョー(5)、前記第2のジョー(7)および前記1つまたは複数のヒンジ(31、33)は、
前記ケーブルクランプ装置(1)が前記ハウジング(101)に挿入されていない組立て状態で、前記第1のジョー(5)及び前記第2のジョー(7)が開いて前記ケーブル(105、107)の導入を可能にし、
前記ケーブルクランプ装置(1)が前記ハウジング(101)に挿入されている組付け状態で、前記第1のジョー(5)及び前記第2のジョー(7)がさらに閉じて前記ケーブル(105、107)が前記受入れオリフィス(9、11)に固定されるように形成されている、
請求項1または2に記載の密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)。
【請求項4】
前記第1のジョー(5)は、前記グリッド(3)の導入方向に前記ハウジング(101)の前記開口(103)へ向けて下降している斜面を有した傾斜面要素(42、43)を具備している、
請求項3に記載の密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)。
【請求項5】
前記傾斜面要素(42、43)の頂点(42a、43a)は、前記ハウジング(101)の前記開口(103)への前記第1のジョー(5)の挿入が前記第1のジョー(5)の旋回動作を引き起こして前記第1のジョー(5)および前記第2のジョー(7)を前記1つまたは複数のケーブル(105、107)上へ締め付けるように寸法設定されている、
請求項に記載の密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)。
【請求項6】
前記組付け状態で前記1つまたは複数のケーブル(105、107)に接触するように構成された前記第1のジョー(5)および/または前記第2のジョー(7)の内壁(49)に、前記1つまたは複数のケーブル(105、107)を固定するための少なくとも1つの保持形状(51、53)が設けられている、
請求項4に記載の密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)。
【請求項7】
前記組付け状態で前記ハウジング(101)の前記開口(103)の内壁(119)に対向する前記第2のジョー(7)の少なくとも1つの壁に、前記ハウジング(101)内の前記グリッド(3)のスナップロックを可能にする少なくとも1つの突起(55)が設けられている、
請求項4に記載の密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)。
【請求項8】
プラスチック材料から作られた単一の一体鋳造の弾性片で形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)用のケーブルクランプ装置(1)。
【請求項9】
1つまたは複数のケーブル(105、107)および請求項1に記載のケーブルクランプ装置(1)を収容するための少なくとも1つの開口(103)が設けられたハウジング(101)を備えている密閉型電気コネクタ。
【請求項10】
前記ケーブルクランプ装置(1)は、前記第1のジョー(5)および前記第2のジョー(7)が設けられた前記グリッド(3)を備えており、前記第1のジョー(5)および前記第2のジョー(7)は、前記第1のジョー(5)と前記第2のジョー(7)との間に前記グリッド(3)の導入方向(A)に前記ハウジング(101)の前記開口(103)へ前記1つまたは複数のケーブル(105、107)を固定するような保持形状(51、53)を具備している、
請求項に記載の密閉型電気コネクタ。
【請求項11】
請求項に記載のケーブルクランプ装置(1)を密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)に接合する方法であって、
a)前記1つまたは複数のケーブル(105、107)に沿って前記ハウジング(101)の前記開口(103)まで前記グリッド(3)を摺動させるステップと、
b)前記第1のジョー(5)および前記第2のジョー(7)が前記第1のジョー(5)と前記第2のジョー(7)との間に前記1つまたは複数のケーブル(105、107)を締め付けるまで、前記第1のジョー(5)を旋回させるように、前記グリッド(3)を前記ハウジング(101)の前記開口(103)に押し込むステップとを含む方法。
【請求項12】
前記ケーブルクランプ装置(1)の前記第1のジョー(5)は、前記グリッド(3)の導入方向に前記ハウジング(101)の前記開口(103)へ向けて下降している斜面を有した傾斜面要素(42、43)を具備しており、
前記傾斜面要素(42、43)の頂点(42a、43a)は、前記ハウジング(101)の前記開口(103)への前記第1のジョー(5)の挿入が前記第1のジョー(5)の旋回動作を引き起こして前記第1のジョー(5)および前記第2のジョー(7)を前記1つまたは複数のケーブル(105、107)上へ締め付けるように寸法設定されており、
前記ステップb)は、前記グリッド(3)が前記ハウジング(101)に導入されたとき、前記第1のジョー(5)の前記傾斜面要素(42、43)の前記頂点(42a、43a)を前記ハウジング(101)の前記開口(103)の内壁(119)に当接させて前記第1のジョー(5)の旋回動作を引き起こし、前記第1のジョー(5)および前記第2のジョー(7)を前記1つまたは複数のケーブル(105、107)上へ締め付けることを含むケーブルクランプ装置(1)を密閉型電気コネクタ(100)のハウジング(101)に接合する求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップb)は、前記グリッド(3)が前記ハウジング(101)に導入されたとき、前記第2のジョー(7)の少なくとも1つの突起(55)を前記ハウジング(101)の孔(115、117)に入れて、前記ハウジング(101)内の前記グリッド(3)のスナップロックを可能にすることを含む
求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置、ならびに1つまたは複数の電気ケーブルおよびケーブルクランプ装置を収容するための少なくとも1つの開口が設けられたハウジングを備えている電気コネクタに関する。本発明はまた、ケーブルクランプ装置を密閉型電気コネクタのハウジングに接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型電気コネクタに関しては、密閉型電気コネクタのハウジングの開口で密閉接合部に付随するリアグリッドを使用し、それによって電気ケーブルが挿入されることが知られている。この目的で、リアグリッドには、電気ケーブルを受け入れるように寸法設定されたオリフィスが設けられる。リアグリッドは特に、密閉接合部を保持および圧縮することを可能にする。
【0003】
密閉型のコネクタでは、ハウジングのさらに内側に位置する圧着端子とは異なり、電気ケーブルの絶縁体が圧着されない。これにより、たとえばコネクタの取扱いおよび/または使用中、ハウジングへのケーブルの挿入方向とは逆の方向にケーブルが引っ張られたとき、密閉型ハウジングは引張り応力を受けやすくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、密閉型電気コネクタ用のケーブルクランプ装置を提案することであり、このケーブルクランプ装置は、特にハウジング内に電気ケーブルを固定することを可能にし、その結果、密閉型電気コネクタは、ケーブルにかかる軸方向応力により良好に耐えることができるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、グリッドを備え、グリッド自体が、1つまたは複数のケーブルをそれぞれ受け入れるための1つまたは複数の受入れオリフィスをそれぞれ備えており、グリッドが、1つまたは複数のケーブル、特に各ケーブルの絶縁体を、グリッドの各受入れオリフィスに固定するためのクランプ手段を備えている、密閉型電気コネクタのハウジング用のケーブルクランプ装置によって実現される。したがって、このグリッドにより、ハウジングの開口の閉鎖を確実にする周知の機能に加えて、1つまたは複数のケーブルの絶縁体を締め付ける機能を実現することが可能になり、それにより引張り応力を受けているときでもケーブルをより良好に保持することが可能になる。同時に、本発明により、密閉型電気コネクタのアセンブリ内の構成要素の数を低減させることが可能になり、一方で電気ケーブルを潜在的な軸方向応力から保護することが可能になる。
【0006】
本発明は、以下の実施形態によってさらに改善することができる。
【0007】
本発明の別の実装形態によれば、グリッドは、第1のジョーおよび第2のジョーを備えることができ、第1のジョーおよび第2のジョーは、第1のジョーと第2のジョーとの間に1つまたは複数のケーブルのための1つまたは複数の受入れオリフィスを形成しており、ハウジングの開口への導入時に閉じることによって、受入れオリフィス内でケーブルを締め付けるように互いに対して可動である。ジョーが閉じる前、ケーブルは、受入れオリフィスへ容易に進むことができ、次いでジョーが電気ケーブル上に閉じることで、電気ケーブルを固定し、したがって軸方向応力への耐性を改善することが可能になる。
【0008】
本発明の別の実装形態によれば、第1のジョーは、1つまたは複数の弾性変形可能なヒンジを使用して、第2のジョーに対する第1のジョーの回転旋回動作を可能にするように、第2のジョーに対して可動に取り付けることができる。第1のジョーおよび第2のジョーが弾性変形可能なヒンジによって可動である結果、第1のジョーの回転旋回動作を開始するための工具の使用が不要になり、組立てが容易になる。
【0009】
本発明の別の実装形態によれば、第1および第2のジョー、および1つまたは複数のヒンジは、前記ケーブルクランプ装置がハウジングに挿入されていないいわゆる組立て状態で、第1および第2のジョーが開いてケーブルの導入を可能にし、前記ケーブルクランプ装置がハウジングに挿入されているいわゆる組付け状態で、第1および第2のジョーがさらに閉じてケーブルの固定をもたらすように形成することができる。したがって、いわゆる組立て状態で、1つまたは複数の電気ケーブルは、クランプ装置のグリッドに導入することができ、いわゆる組付け状態で、ケーブルクランプ装置は、電気ケーブルの固定を確実にする。したがって、本発明によるケーブルクランプ装置の第1及び第2のジョー、およびヒンジにより、装置の2重の機能性を確実にすることが可能になる。
【0010】
本発明の別の実装形態によれば、第1のジョーは、グリッドの導入方向にハウジングの開口へ向けて下降している斜面を有した傾斜面要素を具備することができる。したがってグリッドの導入方向にハウジングの開口内へ下降している斜面を有した傾斜面形状により、ハウジングの開口への第1のジョー、したがってケーブルクランプ装置自体の導入を容易にすることが可能になる。
【0011】
本発明の別の実装形態によれば、第1のジョーは、グリッドの導入方向とは逆の方向に第2のジョーを越えて延びることができる。第1のジョーと第2のジョーとの間の深さの差により、第1のジョーの回転旋回動作を容易にすることが可能になる。
【0012】
本発明の別の実装形態によれば、前記ケーブルクランプ装置がハウジングに挿入されていないいわゆる組立て状態にあるグリッドの寸法は、グリッドが導入されるハウジングの開口の寸法より広くすることができる。したがって、グリッドの寸法は、傾斜面の頂点が第1のジョーの旋回動作を引き起こして第1および第2のジョーを1つまたは複数の電気ケーブル上へ締め付けるように適合されている。グリッドとハウジングの開口との間のこの寸法の差により、ハウジングの開口への導入中の第1のジョーの自動旋回動作を確実にすることが可能になる。
【0013】
本発明の別の実装形態によれば、いわゆる組付け状態で1つまたは複数のケーブルに接触するように構成された第1のジョーおよび/または第2のジョーの面に、1つまたは複数のケーブルを固定するための少なくとも1つの保持形状、特に突起を設けることができる。これらの保持形状により、グリッドを受け入れるために受入れオリフィスでケーブルを保持することをさらに確実にすることが可能になる。したがって、電気ケーブルの固定がさらに改善される。
【0014】
本発明の別の実装形態によれば、いわゆる組付け状態でハウジングの開口の内壁に対向する第2のジョーの少なくとも1つの壁に、ハウジング内のグリッドのスナップロックを可能にする少なくとも1つの突起を設けることができる。この突起により、グリッド、したがってケーブルクランプ装置を、電気ハウジングの開口に保持することを確実にすることが可能になる。このスナップロックは、振動および/または衝撃の影響を受けやすい環境における密閉型電気コネクタの使用中にいっそう必要である。
【0015】
本発明の別の実装形態によれば、ケーブルクランプ装置は、特にプラスチック材料から作られた単一の一体鋳造の弾性片で形成することができる。これにより、密閉型電気コネクタを組み立てるための構成要素の数を低減させ、したがって特にプラスチック材料片を使用してそのようなコネクタの重量を低減させることが可能になる。加えて、プラスチック材料から作られた一体鋳造片は、再現可能かつ経済的に成形によって容易に形成することができる。
【0016】
本発明の目的はまた、1つまたは複数の電気ケーブルおよびケーブルクランプ装置を収容するための少なくとも1つの開口が設けられたハウジングを備えている電気コネクタ、特に密閉型電気コネクタによって実現される。したがって、電気コネクタの1つまたは複数の電気ケーブルが保持され、それにより特に引張り応力を受けているとき、ケーブルの抵抗が改善される。
【0017】
本発明の別の実装形態によれば、電気コネクタのケーブルクランプ装置は、第1のジョーおよび第2のジョーが設けられたグリッドを備えることができ、第1のジョーおよび第2のジョーは、第1のジョーと第2のジョーとの間にグリッドの導入方向にハウジングの開口へ1つまたは複数の電気ケーブルを固定するような保持形状を具備している。したがって、ケーブルクランプ装置により、リアグリッドおよびコレットチャックの機能を確実にすることが可能になる。したがって本発明により、電気コネクタのアセンブリ内の構成要素の数を低減させることが可能になり、一方で電気ケーブルを潜在的な軸方向応力からより良好に保護することが可能になる。
【0018】
本発明の目的はまた、ケーブルクランプ装置を電気コネクタ、特に密閉型電気コネクタのハウジングに接合する方法であって、a)1つまたは複数の電気ケーブルに沿ってハウジングの開口までグリッドを摺動させるステップと、b)第1のジョーおよび第2のジョーが第1のジョーと第2のジョーとの間に1つまたは複数の電気ケーブルを締め付けるまで、第1のジョーを旋回させるように、グリッドをハウジングの開口に押し込むステップとを含む方法によって実現される。したがって、グリッドの挿入により、リアグリッドのようにハウジングの開口を閉じるだけでなく、第1のジョーと第2のジョーとの間のケーブルの固定を確実にすることが可能になる。したがってグリッドは、ケーブルクランプ装置に2重の機能性を与える。
【0019】
本発明は、以下の実施形態によってさらに改善することができる。
【0020】
本発明の別の実装形態によれば、ステップb)は、グリッドがハウジングに導入されたとき、第1のジョーの傾斜面の頂点をハウジングの開口の内壁に当接させて第1のジョーの旋回動作を引き起こし、第1および第2のジョーをケーブル上へ締め付けることを含むことができる。したがって、第1および第2のジョーをケーブル上へ締め付けるための第1のジョーの旋回は、傾斜面の頂点からハウジングの開口へ進むことによって、自動的に誘発される。したがって、組立ては工具を必要とせず、その結果簡略化される。
【0021】
本発明の別の実装形態によれば、ステップb)は、グリッドがハウジングに導入されたとき、第2のジョーの少なくとも1つの突起をハウジングの孔に入れて、ハウジング内のグリッドのスナップロックを可能にすることを含むことができる。この突起により、グリッド、したがってケーブルクランプ装置を、電気ハウジングの開口内に保持することを確実にすることが可能になる。このスナップロックは、振動および/または衝撃の影響を受ける環境における密閉型電気コネクタの使用中に特に必要である。
【0022】
前述した実施形態を組み合わせて、本発明のさらに有利な実施変形形態を形成することができる。
【0023】
本発明およびその利点について、好ましい実施形態を使用して、特に以下の添付の図に基づいて、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明によるケーブルクランプ装置が設けられた電気コネクタの断面を概略的に示す図。
図2a】本発明によるケーブルクランプ装置を概略的に示す図。
図2b】本発明によるケーブルクランプ装置の断面を概略的に示す図。
図3a】ケーブルクランプ装置を組み立てる方法の第1のステップに従って、電気ケーブル上を摺動したが密閉型電気コネクタのハウジングに接合されていない、本発明のケーブルクランプ装置の概略的に示す図。
図3b】ケーブルクランプ装置を組み立てる方法の第2のステップ中の電気コネクタおよびクランプ装置の断面図。
図3c】いわゆる組付け状態にある電気コネクタおよびケーブルクランプ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は実質的に任意のタイプの電気コネクタ、特に任意のタイプの密閉型電気コネクタに適用することができることが、当業者には理解されよう。
【0026】
図1は、本発明による電気コネクタ、特に密閉型電気コネクタ100の断面図を示す。コネクタ100は、高さLの開口103が設けられたハウジング101を備える。絶縁体106が設けられた電気ケーブル105が、開口103を通って導入される。図2aおよび図2bの説明でさらに記載するように、本発明によるケーブルクランプ装置1は、開口103に位置決めされる。ケーブルクランプ装置1は、挿入方向Aに沿って導入されている。電気ケーブル105およびその絶縁体106は、ケーブルクランプ装置1を通過し、ハウジング101の内部200まで挿入される。ハウジング101の内側200では、ケーブル105からその絶縁体106が剥がされ、ケーブル105は圧着領域201で圧着される。
【0027】
密閉型の電気コネクタ100の場合、電気ケーブルの絶縁体は密閉の理由で圧着されない。密閉を確実にするために、電気コネクタ100には、コネクタ100の密閉を保証するようにリップ205を具備した密閉プラグ203が設けられている。
【0028】
図2aおよび図2bは1つの同じ実施形態による本発明のケーブルクランプ装置1の2つの図を示しているので、図2aおよび図2bについて以下にあわせて説明する。
【0029】
図2aおよび図2bによって示すケーブルクランプ装置1は、第1のジョー5および第2のジョー7が設けられたグリッド3を備えており、第1のジョー5および第2のジョー7は、第1のジョー5と第2のジョー7との間に、電気ケーブルを受け入れるように構成された2つの略円形のオリフィス9、11を形成している。受入れオリフィス9、11の寸法は、電気ケーブルの寸法に適している。この実施形態では、グリッドは、2つのオリフィスを備えているが、他の実施形態では、グリッドは、より多くのオリフィスを備えることもできる。さらに別の変形形態では、1つのオリフィスのみが存在することもできる。
【0030】
別の実施形態によれば、ケーブルクランプ装置1は、弾性変形可能なプラスチック材料で単一の一体鋳造片から形成される。これにより、密閉型電気コネクタ内の構成要素の数を低減させ、容易なアセンブリを提供することが可能になる。
【0031】
図2aおよび図2bに示す実施形態では、第2のジョー7は、「U」の形状を有しており、その中心部分13の長さl1は、2つの側部15、17の長さl2より長い。第2のジョー7の寸法は、電気コネクタのハウジングの開口の寸法に適合されることが、当業者には理解されよう。第2のジョー7の中心部分13は、2つの円形の切り口19、21を与えるように凹状であり、円形の切り口19、21は、第1のジョー5と組み合わせて、電気ケーブルを受け入れるためのオリフィス9、11を与える。
【0032】
第1のジョー5は、第2のジョー7の「U」字形の開口に位置決めされる。2つのジョー5、7を連結するために、2つのヒンジ31、33が使用される。
【0033】
オリフィス9、11を閉じるために、第2のジョー7の中心部分13に対向する第1のジョー5の平坦面40の内壁49が使用される。
【0034】
オリフィス9、11へのケーブルの容易な挿入を可能にするように、2つの円形の切り口19、21と第1のジョー5の内壁49との間の距離l3は、1つまたは複数の電気ケーブルの直径に適合される。
【0035】
第1のジョー5の平坦面40のヒンジ31、33に隣接して、下方側部41から2つの傾斜面構造42、43が垂直に延びており、頂点42a、43aでは、同様に平坦面40から垂直に延びる後壁44を介してともにつなぎ合わされる。後壁44は、コネクタのハウジングに入るために使用される下方側部41とは反対側に位置する。導入方向は、矢印Aを使用して示されている。したがって、傾斜面42、43は、導入方向Aとは逆の方向に高くなる。傾斜面42、43の形状におけるこの特定の形状寸法により、ケーブルクランプ装置1は下方側部41で第1のジョー5の頂点42a、43aに向かって挿入されるため、電気ハウジングの開口への第1のジョー5の挿入を容易にすることが可能になる。
【0036】
2つの傾斜面42、43間の空間は空であるが、別の変形形態によれば、この空間をグリッド3に使用されるものと同じ材料で充填することもできる。
【0037】
2つのヒンジ31、33は、第2のジョー7に対する第1のジョー5の回転旋回を可能にするように、弾性変形可能である。参照符号Bによって示す回転軸は、挿入方向Aに直交している。第2のジョー7の2つの内側壁35、37に直交して一体化されている2つのヒンジ31、33はまた、矢印Aに示すハウジングの開口へのケーブルクランプ装置1の挿入方向に直交している。
【0038】
2つのヒンジ31、33は、第1のジョー5が回転旋回することができる軸Bを、ヒンジ31、33間に画定する。したがって第1のジョー5は、図2bに矢印Cによって示すように、2つのヒンジ31、33をつなぎ合わせる軸Bの周りを回転旋回する。したがって第1のジョー5および第2のジョー7は、互いに対して可動であり、第1のジョー5の頂点42a、43aに圧力が印加されたとき、たとえば電気導体がハウジングの開口へ導入されたときに閉じることによって、電気ケーブルをオリフィス9、11で締め付けることができる。
【0039】
加えて、第1のジョー5の傾斜面42、43の頂点42a、43aの高さにも対応する後壁44の高さl4は、図1に示すように、ケーブルクランプ装置1が挿入されるハウジングの高さLの開口より、グリッド3が大幅に広くなるように寸法設定される。特に、高さl4は、ハウジングの開口への第1のジョー5の挿入が、第1のジョー5の軸Bの周りの旋回を引き起こし、ジョー5、7をオリフィス9、11でケーブル上へ締め付けるように寸法設定される。この態様について、図3a、図3b、および図3cにさらに説明する。
【0040】
オリフィス9、11に対向する第1のジョー5の内壁49、ならびに第2のジョー7の円形の切り口19、21には、ケーブルを固定するための保持形状51、53が設けられている。図2aおよび図2bによって示す実施形態では、第1のジョーおよび第2のジョーには、傾斜面の形状の突起51、53が設けられており、突起51、53の斜面は、互いに反対の方向を有しており、これは電気ケーブルの締付けをさらに改善する働きをする。
【0041】
加えて、第2のジョー7の壁39には、第1のジョー5の下方側部41に隣接して、突起55が設けられており、それによりハウジング内のグリッド3のスナップロックが可能になる。この突起55は、傾斜面構造を有し、傾斜面構造の斜面は挿入方向Aに下降し、それによりハウジングの開口へのケーブルクランプ装置1の挿入を容易にすることが可能になる。この突起55により、グリッド3、したがってケーブルクランプ装置1を、電気ハウジングの開口で保持することを確実にすることが可能になる。このスナップロックは、振動および/または衝撃の影響を受けやすい環境における密閉型電気コネクタの使用中に特に必要である。
【0042】
図2aおよび図2bに示す実施形態では、ケーブルクランプ装置1をさらに軽くし、変形を容易にしてハウジングへのグリッド3の導入を可能にするために、第2のジョー7の壁39にはいくつかの凹部57a、57b、57c、57dが設けられている。
【0043】
さらに、第2のジョー7の壁39の周辺部47は、電気コネクタのハウジングの開口への第2のジョー7の挿入を容易にするように面取りされている。
【0044】
図3aは、前記ケーブルクランプ装置1がハウジングに挿入されておらず、ジョー5、7が開いて力を必要とすることなく電気ケーブルの導入を可能にしているいわゆる組立て状態にあるケーブルクランプ装置1を示す。このステップは、本発明によるケーブルクランプ装置1を電気コネクタ、特に密閉型電気コネクタのハウジングに接合する方法の第1のステップに対応する。
【0045】
図3aで、密閉型電気コネクタ100は、本発明によるケーブルクランプ装置1を受け入れるように寸法設定された開口103が設けられたハウジング101を備える。2つの電気ケーブル105、107が、密閉型電気コネクタ100のハウジング101の内側にすでに圧着されている。1つの変形形態では、2つより多いまたは少ない電気ケーブルが存在することもできる。
【0046】
図3aに示すステップで、ケーブルクランプ装置1は、電気ケーブル105、107に沿って摺動し、電気ケーブル105、107は、導入方向Aにグリッド3の受入れオリフィス9、11に収容されている。
【0047】
第1のジョー5の後壁44の高さl4が、ハウジング101の開口103の高さLより大幅に大きいグリッド3の寸法を与える。しかし、第1のジョー5の傾斜面42、43の形状の構造により、開口103へのケーブルクランプ装置1の挿入を容易にすることが可能になる。加えて、第2のジョー7の壁39の面取りされた周辺部47により、特にハウジング101の開口103の周辺部109も同様に面取りされているため、同様に開口103への第2のジョー7の挿入を容易にすることが可能になる。
【0048】
開口103の両側に位置するハウジング101の側壁111、113にはそれぞれ、第2のジョー7の突起55を受け入れるように構成された孔115、117が設けられており、それによりハウジング101内のケーブルクランプ装置1のスナップロックが可能になる。
【0049】
図3bは、ケーブルクランプ装置1を組み立てる方法の第2のステップ中の電気コネクタ100およびケーブルクランプ装置1の断面図を示す。
【0050】
このステップで、ケーブルクランプ装置1は、ハウジング101の開口103の内側にすでに部分的に挿入されている。
【0051】
第2のジョー7は、ハウジング101の内側で摺動しており、第2のジョー7の寸法は、開口103に対して相補形である。第1のジョー5も同様に、ハウジング101の内側で摺動し、それにより傾斜面42、43の斜面が挿入方向Aに下降する。したがって、第1のジョー5の下方側部41がまず導入され、次いでケーブルクランプ装置1がハウジング101の内側にさらに押し込まれ、その後、第1のジョー5の傾斜面42の頂点42aのすぐ下の部分42bが、電気ハウジング101の開口103の面取りされた周辺部109で停止する。導入方向Aに沿って、l5がl7より長いという第1のジョーの深さl5と第2のジョーの深さl7との間の長さの差によって、ジョー5の旋回がさらに容易になる。したがって、第1のジョー5の長さl6のうち、後壁44に向かっている部分が、導入方向Aに対して平行な方向に第2のジョー7を越えて延びる。長さl6のこの部分は、具体的には、傾斜面42の頂点42aとは反対側に対応する。
【0052】
図3cは、次のいわゆる組付け状態にある電気コネクタ100およびケーブルクランプ装置1の断面図を示す。
【0053】
図3bのステップで示すように、挿入方向Aにケーブルクランプ装置1をさらに押し込むことによって、第1のジョー5の傾斜面42、43の頂点42a、43aが、開口103の面取りされた周辺部109に当接することで、矢印Cによって示すように、回転軸Bの周りで第1のジョー5の旋回を引き起こす。グリッド3、特に第1のジョー5の高さl4と、ハウジング101の開口103の高さLとの間の寸法の差により、開口103へのハウジング101の導入中に第1のジョー5の旋回を誘発することが可能になる。
【0054】
第1のジョー5の回転旋回により、矢印Cによって示すように、第1のジョー5の内壁49を第2のジョー7の方へ下げ、したがって電気ケーブル105上に第1のジョー5および第2のジョー7を閉じて電気ケーブル105を固定することが可能になる。加えて、第1のジョー5の突起51および第2のジョー7の突起53は、特に突起51、53が傾斜面形状を有し、傾斜面形状の斜面が互いに逆の方向を有しているため、電気ケーブル105をさらに保持し、それにより電気ケーブル105の締付けを改善する。したがって、突起51、53は、電気ケーブル105の絶縁体106に圧力を加え、突起51、53と絶縁体106との間の摩擦および/または形状によって固定を引き起こす。同じことが、第2のケーブル107にも当てはまり、適用される。
【0055】
いわゆる組付け状態で、ケーブルクランプ装置1は、突起55および相補形の孔115、117(図3cには図示せず)によるスナップロックによって保持される。加えて、ケーブルクランプ装置1は同様に、第1のジョー5の傾斜面42、43の頂点42a、43aとハウジング101の内壁119との間の摩擦によって保持される。
【0056】
したがって、本発明のケーブルクランプ装置1により、特に図3cに矢印Tによって示すように引張り応力を受けているとき、密閉型電気コネクタ100内の電気ケーブル105、107の保持を確実にすることが可能になる。本発明のケーブルクランプ装置1によってケーブル105、107の絶縁体106を締め付けることに加えて、電気ケーブル105、107の伝導コアを圧着することで、図3cによって示すように矢印Tの方向に引張り応力を受けているときの電気ケーブル105、107の抵抗を改善することが可能になる。
【0057】
したがって、ケーブルクランプ装置1を有するそのような密閉型電気コネクタ100は、振動および/または衝撃の影響を受けやすい環境における使用に適している。
【符号の説明】
【0058】
1 ケーブルクランプ装置
3 グリッド
5 第1のジョー
7 第2のジョー
9、11 受入れオリフィス
13 中心部分
15、17 側部
19、21 切り口
31、33 ヒンジ
35、37 内壁
39 面、壁
40 平坦面
41 下方側部
42、43 傾斜面
42a、43a 頂点
44 後壁
47 周辺部
49 内壁
51、53、55 突起
57a、57b、57c、57d 凹部
100 密閉型電気コネクタ
101 ハウジング
103 開口
105 電気ケーブル
106 絶縁体
107 電気ケーブル
109 周辺部
111、113 側壁
115、117 孔
119 内壁
200 内部
201 圧着領域
203 密閉プラグ
205 リップ
A 挿入方向
B 回転軸
C 回転運動
T 引張り方向、軸方向応力
L 開口の高さ
l1、l2、l3、l4、l5、l6、l7 長さ/高さ
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c