(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 3/14 20060101AFI20230807BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
F16H3/14
B60L15/00 H
(21)【出願番号】P 2019130896
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-078367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/14
B60L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を駆動するための駆動ユニットであって
モータと、
前記モータからの動力が入力されるトルクコンバータと、
前記トルクコンバータからの動力を前記駆動輪へと出力する動力出力部と、
前記トルクコンバータからの動力を出力する出力軸と、
前記出力軸と一体回転するクラッチハブ、及び軸方向に移動可能に配置されるリングギヤを有する切替機構と、
を備え、
前記動力出力部は、前記トルクコンバータからの動力を第1回転方向で出力する第1ギヤ列と、前記トルクコンバータからの動力を前記第1回転方向とは反対方向の第2回転方向で出力する第2ギヤ列と、を有
し、
前記第1ギヤ列は、互いに噛み合う第1ギヤ及び第2ギヤを有し、
前記第1ギヤは、前記出力軸に相対回転可能に支持されており、
第2ギヤ列は、第3ギヤ、前記第3ギヤと噛み合う第4ギヤ、及び前記第4ギヤと噛み合う第5ギヤを有し、
前記第3ギヤは、出力軸に相対回転可能に支持されており、
前記リングギヤは、前記クラッチハブと噛み合うとともに前記第1ギヤに係合する状態と、前記クラッチハブと噛み合うとともに前記第3ギヤに係合する状態と、を取ることができる、
駆動ユニット。
【請求項2】
前記第1ギヤ列における変速比は、前記第2ギヤ列における変速比と異なる、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記動力出力部は、前記第1ギヤ列を介して動力を出力する第1出力モードと、前記第2ギヤ列を介して動力を出力する第2出力モードと、前記トルクコンバータからの動力を出力しないニュートラルモードと、のいずれかの状態をとり得る、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記切替機構は、前記動力出力部の状態を、前記第1出力モード、前記第2出力モード、又は前記ニュートラルモードのいずれかに切り替える
ように構成されている、
請求項3に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記モータ又はトルクコンバータと一体的に回転するオイルポンプをさらに備える、
請求項1から4のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記出力軸は、前記トルクコンバータから前記モータに向かって延びる、
請求項1から5のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記動力出力部は、軸方向において、前記モータと前記トルクコンバータとの間に配置される、
請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、モータを駆動源として走行する。電気自動車は、モータを正回転させることによって前進し、モータを逆回転させることによって後進する。モータからのトルクを増幅させるために、トルクコンバータを設けた電気自動車が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようにトルクコンバータを有する電気自動車において、トルクコンバータはモータと同様に回転する。このため、前進時にモータを正回転させるとトルクコンバータも正回転し、後進時にモータを逆回転させるとトルクコンバータも逆回転する。ここで、トルクコンバータは、正回転時にはトルク増幅機能を発揮できる一方で、逆回転時にはトルク増幅機能が著しく低下する。このため、上述したような電気自動車では、後進時の駆動力が低下するという問題がある。そこで、本発明の課題は、前進時だけでなく後進時もトルクを増幅させることのできる駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある側面に係る駆動ユニットは、駆動輪を駆動するための駆動ユニットである。駆動ユニットは、モータと、トルクコンバータと、動力出力部とを備えている。トルクコンバータは、モータからの動力が入力される。動力出力部は、トルクコンバータからの動力を駆動輪へと出力する。動力出力部は、第1ギヤ列と、第2ギヤ列とを有する。第1ギヤ列は、トルクコンバータからの動力を第1回転方向で出力する。第2ギヤ列は、トルクコンバータからの動力を第1回転方向とは反対方向の第2回転方向で出力する。
【0006】
この構成によれば、トルクコンバータからの動力は動力出力部を介して駆動輪へと出力される。この動力出力部は、第1ギヤ列において第1回転方向で動力を出力する一方、第2ギヤ列において第2回転方向で動力を出力する。このため、モータを正回転させた状態で第1ギヤ列を介して動力を出力することで車両を前進させる一方で、モータを正回転させた状態のまま第2ギヤ列を介して動力を出力することで車両を後進させることができる。このように、モータを正回転させた状態で車両を後進させることができる。この結果、後進時においてもトルクコンバータは正回転するため、トルク増幅機能を発揮させることができる。したがって、本発明に係る駆動ユニットは、前進時だけでなく後進時もトルクを増幅させることができる。
【0007】
好ましくは、第1ギヤ列における変速比は、第2ギヤ列における変速比と異なる。例えば、第1ギヤ列における変速比は、第2ギヤ列における変速比よりも小さい。もしくは、第1ギヤ列における変速比は、第2ギヤ列における変速比よりも大きい。
【0008】
好ましくは、動力出力部は、第1ギヤ列を介して動力を出力する第1出力モードと、第2ギヤ列を介して動力を出力する第2出力モードと、トルクコンバータからの動力を出力しないニュートラルモードと、のいずれかの状態をとり得る。動力出力部の状態をニュートラルモードにすることによって、車両の牽引を容易にすることができる。また、動力出力部の状態をニュートラルモードにすることによって、オイルポンプを駆動する際のモータの負荷を低減することができる。
【0009】
好ましくは、駆動ユニットは、切替機構をさらに備える。切替機構は、動力出力部の状態を、第1出力モード、第2出力モード、又はニュートラルモードのいずれかに切り替えるように構成される。
【0010】
好ましくは、駆動ユニットは、オイルポンプをさらに備える。オイルポンプは、モータ又はトルクコンバータと一体的に回転する。好ましくは、オイルポンプは、トルクコンバータのインペラと一体的に回転する。この構成によれば、オイルポンプは、車両の前進時も後進時も一定方向に回転する。このため、オイルポンプなどの故障を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前進時だけでなく後進時もトルクを増幅できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図8】第1冷却流路を示すための、駆動ユニットの断面図。
【
図10】トルクコンバータケースの側壁部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る駆動ユニットの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る駆動ユニットの概略図である。なお、以下の説明において、軸方向とはモータ2及びトルクコンバータ3の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。
【0014】
[駆動ユニット100]
図1に示すように、駆動ユニット100は、駆動輪101を駆動するためのユニットである。駆動ユニット100は、モータ2、トルクコンバータ3、動力出力部4、切替機構8、入力軸5、及び出力軸6、トルクコンバータケース7、及び第1冷却流路9a(
図8参照)を備えている。この駆動ユニット100は、例えば、電気自動車に搭載される。
【0015】
<モータ2>
モータ2は、モータケース21、ステータ22、及びロータ23を有している。本実施形態におけるモータ2は、いわゆるインナーロータ型のモータである。モータケース21は、車体フレームなどに固定されており、回転不能である。
【0016】
ステータ22は、モータケース21の内周面に固定されている。ステータ22は回転不能である。ロータ23は、回転軸O周りに回転する。ロータ23は、径方向において、ステータ22の内側に配置される。なお、モータ2は、後述するように、車両の前進時も後進時も同じ方向に回転する。このため、モータ2は、正回転方向のみに回転し、逆回転方向には回転しない。
【0017】
<トルクコンバータ3>
トルクコンバータ3は、軸方向において、モータ2と間隔をあけて配置されている。このトルクコンバータ3とモータ2との間に、動力出力部4が配置されている。軸方向において、モータ2、動力出力部4、トルクコンバータ3の順で配列している。
【0018】
トルクコンバータ3の回転軸Oは、モータ2の回転軸Oと実質的に一致している。トルクコンバータ3は、モータ2からの動力が入力される。そして、トルクコンバータ3は、モータ2からの動力(トルク)を増幅して動力出力部4へと出力する。
【0019】
図2に示すように、トルクコンバータ3は、カバー31、インペラ32、タービン33、ステータ34、及びワンウェイクラッチ36を有している。また、トルクコンバータ3は、遠心クラッチ37をさらに有している。
【0020】
トルクコンバータ3は、インペラ32がモータ2側(
図2の左側)を向き、カバー31がモータ2と反対側(
図2の右側)を向くように配置されている。このトルクコンバータ3は、トルクコンバータケース7内に収容されている。トルクコンバータ3内には作動流体が供給されている。作動流体は、例えば作動油である。
【0021】
カバー31は、モータ2からの動力が入力される。カバー31は、モータ2からの動力によって回転する。カバー31は、モータ2から延びる入力軸5に固定されている。例えば、カバー31は、スプライン孔を有しており、入力軸5がカバー31のスプライン孔にスプライン嵌合する。このため、カバー31は、入力軸5と一体的に回転する。カバー31は、タービン33を覆うように配置されている。
【0022】
カバー31は、円板部311、円筒部312、及びカバーハブ313を有している。円板部311は、中央に開口を有する。円筒部312は、円板部311の外周端部からモータ2側に延びている。円板部311と円筒部312とは1つの部材によって構成されている。
【0023】
カバーハブ313は、円板部311の内周端部に固定されている。本実施形態では、カバーハブ313は、円板部311と別部材によって構成されているが、円板部311と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0024】
カバーハブ313は、第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cを有している。第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cは、一つの部材によって構成されている。
【0025】
第1ボス部313aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第1ボス部313aに、入力軸5がスプライン嵌合する。第1ボス部313aは、トルクコンバータケース7に軸受部材102を介して回転可能に支持されている。このため、第1ボス部313aは、軸方向において、第1フランジ部313bからモータ2と反対側に延びている。
【0026】
第1フランジ部313bは、第1ボス部313aから径方向外側に延びている。詳細には、第1フランジ部313bは、第1ボス部313aのモータ2側の端部から径方向外側に延びている。この第1フランジ部313bの外周端部に、円板部311が固定されている。
【0027】
突出部313cは、第1フランジ部313bから軸方向に延びている。突出部313cは、モータ2に向かって延びている。突出部313cは、第1フランジ部313bの外周端部から延びている。突出部313cは、円筒状である。この突出部313cは、複数の貫通孔313dを有している。この貫通孔313dを介して作動流体がトルクコンバータ3から排出される。
【0028】
インペラ32は、カバー31と一体的に回転する。インペラ32は、カバー31に固定されている。インペラ32は、インペラシェル321、複数のインペラブレード322、インペラハブ323、及び複数の供給流路324を有している。
【0029】
インペラシェル321は、カバー31に固定されている。複数のインペラブレード322はインペラシェル321の内側面に取り付けられている。
【0030】
インペラハブ323は、インペラシェル321の内周端部に取り付けられている。なお、本実施形態では、インペラハブ323は、インペラシェル321と一つの部材によって構成されているが、インペラシェル321と別部材によって構成されていてもよい。
【0031】
インペラハブ323は、第2ボス部323aと、第2フランジ部323bとを有する。第2ボス部323aは、円筒状であって、
軸方向に延びている。第2ボス部323aは、軸受部材103を介してトルクコンバータケース7に回転可能に支持されている(
図8参照)。第2ボス部323a内を、固定軸104が
軸方向に延びている。なお、この固定軸104は円筒状であり、この固定軸104内を出力軸6が
軸方向に延びている。また、固定軸104は、例えば、変速機ケース40又はトルクコンバータケース7から延びている。固定軸104は、回転不能である。
【0032】
供給流路324は、インペラハブ323に形成されている。詳細には、供給流路324は、第2フランジ部323bに形成されている。供給流路324は、インペラハブ323の内周面から径方向外側に延びている。そして、供給流路324は、トーラスT内に開口している。なお、トーラスTは、インペラ32とタービン33とによって囲まれた空間である。
【0033】
供給流路324は、軸方向において閉じられている。すなわち、供給流路324は、インペラハブ323内を径方向に延びる貫通孔である。
図3に示すように、供給流路324は、放射状に延びている。供給流路324は、径方向外側に向かって、回転方向と反対側に傾斜している。なお、供給流路324は直線状に延びているものに限らず、例えば、
図4に示すように、供給流路324は曲線状に延びていてもよい。
【0034】
図2に示すように、タービン33は、インペラ32と対向して配置されている。詳細には、タービン33は、軸方向においてインペラ32と対向している。タービン33は、作動流体を介してインペラ32からの動力が伝達される。
【0035】
タービン33は、タービンシェル331、複数のタービンブレード332、及びタービンハブ333を有している。タービンブレード332は、タービンシェル331の内側面に固定されている。
【0036】
タービンハブ333は、タービンシェル331の内周端部に固定されている。例えば、タービンハブ333は、リベットによって、タービンシェル331に固定されている。本実施形態では、タービンハブ333は、タービンシェル331と別部材によって構成されているが、タービンシェル331と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0037】
タービンハブ333には、出力軸6が取り付けられている。詳細には、出力軸6が、タービンハブ333にスプライン嵌合している。タービンハブ333は、出力軸6と一体的に回転する。
【0038】
タービンハブ333は、第3ボス部333a及び第3フランジ部333bを有している。第3ボス部333a及び第3フランジ部333bは、一つの部材によって構成されている。
【0039】
第3ボス部333aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第3ボス部333aに、出力軸6がスプライン嵌合する。第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bからモータ2と反対側に延びている。すなわち、第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bからカバーハブ313に向かって延びている。
【0040】
第3ボス部333aは、径方向において、突出部313cと間隔をあけて配置されている。すなわち、径方向において、第3ボス部333aの外側に突出部313cが配置されている。第3ボス部333aと突出部313cとの間に、軸受部材35が配置されている。なお、軸受部材35が無い状態では、第3ボス部333aの外周面と、突出部313cの内周面とが対向する。
【0041】
第3ボス部333aの先端とカバーハブ313との間には作動流体が流れる流路が形成されている。本実施形態では、第3ボス部333aの先端部に複数の切り欠き部333cが形成されている。切り欠き部333cは、第3ボス部333aの先端部を径方向に延びている。この切り欠き333c及び貫通孔313dを介して作動流体がトルクコンバータ3から排出される。
【0042】
第3フランジ部333bは、第3ボス部333aから径方向外側に延びている。詳細には、第3フランジ部333bは、第3ボス部333aのモータ2側の端部から径方向外側に延びている。この第3フランジ部333bの外周端部に、タービンシェル331がリベットなどによって固定されている。
【0043】
ステータ34は、タービン33からインペラ32へと戻る作動油を整流するように構成されている。ステータ34は、回転軸O周りに回転可能である。例えば、ステータ34は、固定軸104に、ワンウェイクラッチ36を介して支持されている。このステータ34は、軸方向において、インペラ32とタービン33との間に配置される。
【0044】
ステータ34は、円板状のステータキャリア341と、その外周面に取り付けられる複数のステータブレード342と、を有している。
【0045】
ワンウェイクラッチ36は、固定軸104とステータ34との間に配置されている。ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を正回転方向に回転可能とするように構成されている。一方、ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を逆回転方向に回転不能とする。このステータ34によって、動力(トルク)が増幅されて、インペラ32からタービン33へと伝達される。
【0046】
遠心クラッチ37は、タービン33に取り付けられている。遠心クラッチ37は、タービン33と一体的に回転する。遠心クラッチ37は、タービン33の回転によって生じる遠心力によって、カバー31とタービン33とを連結するように構成されている。詳細には、遠心クラッチ37は、タービン33が所定の回転数以上になると、カバー31からタービン33に動力を伝達するように構成されている。
【0047】
遠心クラッチ37は、複数の遠心子371と、摩擦材372とを有している。摩擦材372は、遠心子371の外周面に取り付けられている。遠心子371は、径方向に移動可能に配置されている。なお、遠心子371は、周方向に移動不能に配置されている。このため、遠心子371は、タービン33とともに回転し、遠心力によって径方向外側に移動する。
【0048】
この遠心クラッチ37は、タービン33の回転数が所定の回転数以上になると、遠心子371が径方向外側に移動し、摩擦材372がカバー31の円筒部312の内周面と摩擦係合する。この結果、遠心クラッチ37はオン状態となり、カバー31からの動力が遠心クラッチ37を介してタービン33へと伝達される。なお、遠心クラッチ37がオン状態になっても、作動流体は遠心クラッチ37を介して流通可能である。
【0049】
タービン33の回転数が所定の回転数未満になると、遠心子371が径方向内側に移動し、摩擦材372とカバー31の円筒部312の内周面との摩擦係合が解除される。この結果、遠心クラッチ37はオフ状態となり、カバー31からの動力は遠心クラッチ37を介してタービン33へと伝達されない。すなわち、カバー31からの動力は、インペラ32に伝達された後、作動流体を介してタービン33へと伝達される。
【0050】
<入力軸5>
図1及び
図2に示すように、入力軸5は、モータ2から延びている。詳細には、入力軸5は、モータ2のロータ23から延びている。入力軸5は、トルクコンバータ3に向かって延びている。入力軸5の回転軸は、モータ2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。
【0051】
入力軸5は、モータ2からの動力をトルクコンバータ3に入力する。入力軸5の先端部は、トルクコンバータ3のカバーハブ313に取り付けられている。入力軸5は、モータ2のロータ23と一体的に回転する。入力軸5は、出力軸6内を延びている。入力軸5は、中実状である。入力軸5は、先端部に連通路51を有している。連通路51は、軸方向に延びている。そして、連通路51は、第1冷却流路9aに向かって開口している。
【0052】
<出力軸6>
出力軸6は、トルクコンバータ3からの動力を出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3からの動力を動力出力部4へと出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3からモータ2に向かって延びている。
【0053】
出力軸6は、円筒状である。入力軸5は、この出力軸6内を延びている。出力軸6の一方の端部(
図2の右端部)は、トルクコンバータ3のタービン33に取り付けられている。一方、出力軸6の他方の端部は、例えば、変速機ケース40に軸受部材などを介して回転可能に支持されている。
【0054】
<動力出力部4>
図1に示すように、動力出力部4は、軸方向においてモータ2とトルクコンバータ3との間に配置されている。動力出力部4は、変速機ケース40内に収容される。動力出力部4は、トルクコンバータ3からの動力を駆動輪101側へと出力する。詳細には、動力出力部4は、トルクコンバータ3からの動力を、デファレンシャルギア109を介して、駆動輪101へと出力する。なお、後述するように、動力出力部4は、ニュートラルモードでは動力を出力しない。
【0055】
図5に示すように、動力出力部4は、第1ギヤ列41と第2ギヤ列42とを有している。動力出力部4は、第1ギヤ列41又は第2ギヤ列42のどちらか一方から動力を出力する。第1ギヤ列41は、トルクコンバータ3からの動力を第1回転方向で出力する。第2ギヤ列42は、トルクコンバータ3からの動力を第2回転方向で出力する。第2回転方向は、第1回転方向とは反対の回転方向である。
【0056】
第1回転方向とは、車両が前進する際の回転方向である。第2回転方向とは、車両が後進する際の回転方向である。このため、第1ギヤ列41を介して駆動輪101に動力が伝達されると、車両は前進する。一方、第2ギヤ列42を介して駆動輪101に動力が伝達されると、車両は後進する。
【0057】
第1ギヤ列41は、互いに噛み合う第1ギヤ41a及び第2ギヤ41bを有する。第1ギヤ41aは、出力軸6に相対回転可能に支持されている。後述する切替機構8のリングギヤ82が噛み合うことによって、第1ギヤ41aは、出力軸6と一体回転する。
【0058】
第2ギヤ41bは、駆動軸43に支持されている。第2ギヤ41bは、駆動軸43と一体的に回転する。第2ギヤ41bは、第1ギヤ41aからの動力を駆動軸43へと出力する。
【0059】
第2ギヤ列42は、第3ギヤ42a、第4ギヤ42b、及び第5ギヤ42cを有している。第2ギヤ列42は、第1ギヤ列41よりも、ギヤの数が1つ多い。第3ギヤ42aは、出力軸6に相対回転可能に支持されている。後述する切替機構8のリングギヤ82が噛み合うことによって、第3ギヤ42aは、出力軸6と一体回転する。
【0060】
第4ギヤ42bは、第3ギヤ42aと噛み合っている。第4ギヤ42bは、カウンタ(図示省略)軸に支持されている。第4ギヤ42bは、カウンタ軸と一体回転してもよいし、カウンタ軸と相対回転してもよい。
【0061】
第5ギヤ42cは、第4ギヤ42bと噛み合っている。第5ギヤ42cは、駆動軸43に支持されている。第5ギヤ42cは、駆動軸43と一体回転する。第5ギヤ42cは、第3ギヤ42aからの動力を駆動軸43へと出力する。
【0062】
第1ギヤ列41における変速比は、第2ギヤ列42における変速比と異なる。詳細には、第2ギヤ列42における変速比は、第1ギヤ列41における変速比よりも大きい。
【0063】
動力出力部4は、第1出力モード、第2出力モード、及びニュートラルモードのいずれかの状態を取り得る。動力出力部4は、第1出力モードにおいて、第1ギヤ列41を介して動力を出力する。また、動力出力部4は、第2出力モードにおいて、第2ギヤ列42を介して動力を出力する。また、動力出力部4は、ニュートラルモードにおいて、トルクコンバータ3からの動力を出力しない。
【0064】
<切替機構>
切替機構8は、動力出力部4の状態を、第1出力モード、第2出力モード、及びニュートラルモードのいずれかに切り替えるように構成されている。切替機構8は、クラッチハブ81、リングギヤ82、及びレバー83を有している。
【0065】
クラッチハブ81は、出力軸6に取り付けられている。クラッチハブ81は、出力軸6と一体回転する。クラッチハブ81は、出力軸6と1つの部材によって構成されていてもよいし、別部材によって構成されていてもよい。クラッチハブ81は、外周面に複数の歯を有している。
【0066】
リングギヤ82は、内周面に複数の歯を有している。リングギヤ82は、常時、クラッチハブ81と噛み合っており、クラッチハブ81と一体回転している。すなわち、リングギヤ82は、出力軸6と一体回転している。リングギヤ82は、軸方向に移動可能に配置されている。
【0067】
図5に示すように、リングギヤ82は、クラッチハブ81と噛み合うとともに、第1ギヤ41aに係合する状態を取ることができる。詳細には、第1ギヤ41aは、軸方向に突出する第1円筒部411を有している。第1円筒部411は、外周面に複数の歯を有している。そして、この第1円筒部411の外周面に、リングギヤ82が噛み合っている。
【0068】
このようにリングギヤ82がクラッチハブ81及び第1円筒部411と噛み合うことによって、動力出力部4が第1出力モードとなる。すなわち、出力軸6からの動力が第1ギヤ列41を介して出力される。
【0069】
図6に示すように、リングギヤ82は、クラッチハブ81と噛み合うとともに、第3ギヤ42aに係合する状態を取ることができる。詳細には、第3ギヤ42aは、軸方向に突出する第2円筒部421を有している。第2円筒部421は、外周面に複数の歯を有している。そして、この第2円筒部421の外周面に、リングギヤ82が噛み合っている。
【0070】
このようにリングギヤ82がクラッチハブ81及び第2円筒部421と噛み合うことによって、動力出力部4が第2出力モードとなる。すなわち、出力軸6からの動力が第2ギヤ列42を介して出力される。
【0071】
図7に示すように、リングギヤ82は、クラッチハブ81のみと噛み合う状態を取ることができる。このように、リングギヤ82がクラッチハブ81のみと噛み合い、第1円筒部411及び第2円筒部421の両方と噛合わないことによって、動力出力部4はニュートラルモードとなる。すなわち、出力軸6からの動力は駆動輪101側へと出力されない。
【0072】
レバー83は、リングギヤ82に連結されている。レバー83は、リングギヤ82から変速機ケース40の外部へと延びている。レバー83は、運転者によって操作される。レバー83を操作することによって、リングギヤ82を軸方向に移動させることができる。これによって、リングギヤ82は、クラッチハブ81及び第1円筒部411と噛み合ったり、クラッチハブ81及び第2円筒部421と噛み合ったり、クラッチハブ81のみと噛み合ったりする。この結果、切替機構8は、動力出力部4の状態を、第1出力モード、第2出力モード、及びニュートラルモードのいずれかに切り替えることができる。
【0073】
<トルクコンバータケース7>
図8に示すように、トルクコンバータケース7は、トルクコンバータ3を収容している。本実施形態では、トルクコンバータケース7は、変速機ケース40と一つの部材によって構成されているが、別部材によって構成されていてもよい。
【0074】
トルクコンバータケース7は、側壁部71と、外壁部72と、複数の放熱フィン73とを有している。側壁部71は、トルクコンバータ3のカバー31と対向するように配置されている。側壁部71は、回転軸Oと直交するように配置されている。
【0075】
軸方向において、側壁部71の一方側(
図8の左側)には、トルクコンバータ3が配置されている。一方、側壁部71の他方側(
図8の右側面)は、外気と接している。すなわち、側壁部71の他方側には、熱源となる部材は配置されていない。
【0076】
側壁部71の中央部には、軸受部材102を介して、カバー31が回転可能に取り付けられている。側壁部71は、第1冷却流路9a内を流れる作動流体から速やかに多くの熱を吸収して大気へ放熱できるように、比熱及び熱伝導率の大きい材料によって構成されている。例えば、側壁部71は、マグネシウム、又はアルミニウムなどによって構成されている。
【0077】
外壁部72は、トルクコンバータ3の外周面と対向するように配置されている。外壁部72は、側壁部71と一つの部材によって構成されているが、別部材によって構成されていてもよい。外壁部72は、側壁部71の外周端部からモータ2に向かって延びている。外壁部72は、回転軸Oと実質的に平行に延びている。なお、外壁部72の先端部(モータ2側の端部)は、径方向内側に向かって傾斜している。外壁部72の材質は、側壁部71と同様とすることができる。
【0078】
放熱フィン73は、側壁部71に形成されている。放熱フィン73は、側壁部71からトルクコンバータ3と反対側(
図8の右側)に延びている。放熱フィン73は、第1冷却流路9a内を流れる作動流体を効率的に放熱するために側壁部71に取り付けられている。放熱フィン73の熱伝導率は、側壁部71の熱伝導率と同等、もしくはより高くすることが好ましいが、特に限定されない。例えば、放熱フィン73は、マグネシウム、アルミニウム、又は銅などによって構成されている。
【0079】
<第1冷却流路9a>
第1冷却流路9aは、トルクコンバータ3から排出された作動流体を冷却するための流路である。第1冷却流路9aは、トルクコンバータケース7内を延びている。本実施形態では、第1冷却流路9aは、トルクコンバータケース7の上半分のみに形成されている。
【0080】
第1冷却流路9aは、側壁部71の中央部から外周部まで延び、続いて、外壁部72を軸方向においてトルクコンバータ3を超えるまで延びている。第1冷却流路9aは、作動流体溜り部91と連通している。
【0081】
図9又は
図10に示すように、第1冷却流路9aは、側壁部71内において、複数の経路を有している。本実施形態では、第1冷却流路9aは、側壁部71内において、2本の経路に分かれている。第1冷却流路9aは、側壁部71内において、中央部から外周部まで直線状に延びるのではなく、蛇行しながら延びている。
【0082】
第1冷却流路9aは、外壁部72内においても複数の経路を有していてもよい。本実施形態では、例えば、第1冷却流路9aは、外壁部72内において、3本の経路に分かれている。第1冷却流路9aは、外壁部72内では直線状に軸方向に延びているが、蛇行しながら延びていてもよい。
【0083】
<作動流体溜り部>
図8に示すように、駆動ユニット100は、作動流体溜り部91を備えている。作動流体溜り部91は、軸方向において、側壁部71と協働してトルクコンバータ3を挟むように配置されている。すなわち、軸方向において、作動流体溜り部91、トルクコンバータ3、側壁部71の順で並んでいる。作動流体溜り部91は、変速機ケース40内に配置されている。作動流体溜り部91は、回転軸Oの上方に配置されている。
【0084】
作動流体溜り部91は、トルクコンバータ3に供給する作動流体を内部に有している。作動流体溜り部91は、底面に供給孔92を有している。この供給孔92から排出された作動流体は、固定軸104とインペラハブ323の第2ボス部323aとの間の流路106を介して、トルクコンバータ3へと供給される。
【0085】
具体的には、トルクコンバータ3のインペラ32の回転によって遠心力が生じ、流路106内の作動流体が供給流路324を介してトーラスT内へと供給される。そして、トルクコンバータ3から排出された作動流体は、連通路51を介して第1冷却流路9aへと流れる。そして、第1冷却流路9aを流れて冷却された作動流体は、作動流体溜り部91に戻される。
【0086】
<動作>
以上のように構成された駆動ユニット100では、車両の前進時には、動力出力部4は、第1出力モードとなる。この結果、モータ2からトルクコンバータ3に入力された動力は、動力出力部4の第1ギヤ列41を介して駆動輪101に出力される。一方、車両の後進時には、動力出力部4は、第2出力モードとなる。この結果、モータ2からトルクコンバータ3に入力された動力は、動力出力部4の第2ギヤ列42を介して駆動輪101に出力される。このように、車両の前進時と後進時とで、モータ2及びトルクコンバータ3の回転方向は一定である。このため、駆動ユニット100は、前進時だけでなく後進時もトルクを増幅させることができる。
【0087】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0088】
変形例1
上記実施形態では、インペラ32は、供給流路324を有しているが、この構成に限定されない。すなわち、インペラ32は、供給流路324を有していなくてもよい。この場合、
図11に示すように、駆動ユニット100は、オイルポンプ12をさらに備えていてもよい。
【0089】
オイルポンプ12は、トルクコンバータ3内にオイルを供給するように構成されている。オイルポンプ12は、モータ2又はトルクコンバータ3と一体的に回転する。詳細には、オイルポンプ12は、インペラ32と一体回転するようにインペラ32に取り付けられている。より詳細には、オイルポンプ12は、インペラ32のインペラハブ323に取り付けられている。オイルポンプ12は、例えば、容積式ポンプである。
【0090】
変形例2
上記実施形態では、切替機構8は、操作レバー83を操作することによって動力出力部4の状態を切り換えているが、切替機構8の構成はこれに限定されない。例えば、切替機構8は、電子制御などによって、動力出力部4の状態を切り替えることもできる。
【0091】
変形例3
図12に示すように、トルクコンバータユニットは、第2冷却流路9bをさらに有していてもよい。第2冷却流路9bは、トルクコンバータユニットが搭載される車両の車室107内を延びている。第2冷却流路9b内は、トルクコンバータ3から排出された作動流体が流れる。第2冷却流路9b内を流れる作動流体は、車室107内に放熱することによって冷却される。
【0092】
第2冷却流路9bは、連通路51から作動流体が供給される。また、第2冷却流路9bは、作動流体溜り部91に作動流体を戻す。
【0093】
トルクコンバータユニットは、選択機構11をさらに有している。選択機構11は、トルクコンバータ3から排出された作動流体を供給する冷却流路として、第1冷却流路9aと第2冷却流路9bとのどちらか一方を選択するように構成されている。
【0094】
変形例4
上記実施形態では、第2ギヤ列42は、第1ギヤ列41よりもギヤの数が1つ多く構成されているが、第2ギヤ列42の構成はこれに限定されない。例えば、第2ギヤ列42は、第1ギヤ列41よりもギヤの数が1つ少なくてもよい。
【符号の説明】
【0095】
2 モータ
3 トルクコンバータ
4 動力出力部
41 第1ギヤ列
42 第2ギヤ列
8 切替機構
12 オイルポンプ
100 駆動ユニット