(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】蛇捕獲装置
(51)【国際特許分類】
A01M 23/08 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
A01M23/08
(21)【出願番号】P 2019156736
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】592190545
【氏名又は名称】テクノ・サクセス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】河内 徹彦
(72)【発明者】
【氏名】福田 知美
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-309532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向きに設けられた棒材と、
該棒材に外挿された捕獲容器とからなる蛇捕獲装置であって、
前記捕獲容器は、
容器本体と、該容器本体の上部に
取付けられた複数枚の弾力性のある板バネで構成された上蓋と、前記容器本体の下部に
取付けられた複数枚の弾力性のある板バネで構成された下蓋と
からなり、
前記上蓋は締付け金具を用いて、前記板バネの先端部を前記棒材に接して閉じられており、前記締付け金具を外すと人為的に開けることが可能であり、
前記下蓋は、下方から上向きに加わる外力によって
開き、かつ上方から下向きに力を加えても閉じる逆止め機能を有する
ことを特徴とする蛇捕獲装置
。
【請求項2】
前記捕獲容器の一部に内部を透視できる透視部が設けられている
ことを特徴とする請求項
1記載の蛇捕獲装置。
【請求項3】
前記捕獲容器が、前記容器本体と前記上蓋とが着脱自在に構成されている
ことを特徴とする請求項
1記載の蛇捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇捕獲装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、蛇が電力用設備である変電所機器や送電鉄塔に昇搭することによって発生する電気的な地絡事故を防ぐことに有効な蛇捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所構内には、架空送電線から架線された電力線を受けるため鉄構と鉄材で組まれた架台や、その上部に設置される、断路器など種々の電力用機器が配置されており、これらの機器には、断路器の操作ロットとか構造用鋼材などの種々の縦向きに配置された部材がある。高い所へ昇る習性のある蛇は縦向きに配置された部材をたどって変電所設備の上部まで昇塔し、架線された電力線に接触して地絡事故を発生させる場合がある。
【0003】
これまで、蛇の昇塔を防止する技術には、多数のものがある。
特許文献1,2は、電撃を用いるものであるが、この従来技術は高価な設備を必要とする欠点がある。
特許文献3,4は、ローラを用いるものであるが、蛇がローラを迂回すると蛇の昇塔を防止することができない。
特許文献5~7は、蓋状の容器を用いるものであるが、蛇の昇塔を邪魔することはできても捕獲することはできない。
特許文献8~10は、網カゴ等を用いるものであるが、蛇の昇塔を邪魔することはできても捕獲することはできない。
特許文献11~15は、物理的な邪魔物を用いるものであるが、蛇の昇塔を邪魔することはできても捕獲することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-117577号公報
【文献】特開2016-119810号公報
【文献】特開2008-148634号公報
【文献】特開2018-178404号公報
【文献】特開平8-308462号公報
【文献】特開2001-309532号公報
【文献】特開平5-231043号公報
【文献】特開2011-250755号公報
【文献】特開2005-307434号公報
【文献】特開2008-154461号公報
【文献】特開2012-55121号公報
【文献】特開2011-142715号公報
【文献】特開2011-139643号公報
【文献】特開2011-62084号公報
【文献】特開2011-62083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例は、蛇の昇塔を邪魔することはできても、捕獲はしないので一時的な効果にとどまる。ある程度長期的な効果を担うなら蛇を捕獲するのが効果的である。
本発明は上記事情に鑑み、棒状体を伝って移動する蛇を容易に捕獲できる蛇捕獲装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の蛇捕獲装置は、縦向きに設けられた棒材と、該棒材に外挿された捕獲容器とからなる蛇捕獲装置であって、前記捕獲容器は、容器本体と、該容器本体の上部に取付けられた複数枚の弾力性のある板バネで構成された上蓋と、前記容器本体の下部に取付けられた複数枚の弾力性のある板バネで構成された下蓋とからなり、前記上蓋は締付け金具を用いて、前記板バネの先端部を前記棒材に接して閉じられており、前記締付け金具を外すと人為的に開けることが可能であり、前記下蓋は、下方から上向きに加わる外力によって開き、かつ上方から下向きに力を加えても閉じる逆止め機能を有することを特徴とする。
第2発明の蛇捕獲装置は、第1発明において、前記捕獲容器の一部に内部を透視できる透視部が設けられていることを特徴とする。
第3発明の蛇捕獲装置は、第1発明において、前記捕獲容器が、前記容器本体と前記上蓋とが着脱自在に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)蛇は縦向きの棒材を昇る習性があるので、棒材を伝って捕獲容器に入ろうとする。このとき、蛇が下蓋を下方から上向きに押すと開くので容器本体内に入ってしまう。この下蓋は上から加えた下向きの力では開かない逆止め機能を有するので、蛇は容器本体内に閉じ込められたままとなる。このため、蛇が上部に架線された電力線に接触して地絡事故を発生させるリスクをゼロにできる。また、一定期間経過後、上蓋を人為的に開けると捕獲した蛇を取り出すことができる。このようにして敷地内の蛇を捕獲していけば、周辺エリア内の蛇の絶対数が減るので昇塔確率を低減でき、その結果として地絡事故の防止効果が高くなる。
b)弾力性の板バネは簡単かつ軽量な構成で開閉できるので、捕獲容器が簡単となり、使い勝手が良くなる。
第2発明によれば、容器の内部を透視できるので、蛇の存否が確認しやすくなる。
第3発明によれば、上蓋を容器本体から取り外すと、容器本体内の蛇を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る蛇捕獲装置の斜視図である。
【
図3】
図1に示す蛇捕獲装置における蛇の捕獲と取り出し作業の説明図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る蛇捕獲装置の斜視図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る蛇捕獲装置の斜視図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る蛇捕獲装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の蛇捕獲装置は、蛇が縦向きの棒材を昇る習性を利用したものであるので、棒材に捕獲容器を取付ける構成が採用されている。本発明の蛇捕獲装置は、とくに変電所構内に設置される変電所機器や送電鉄塔を構成する縦向きの棒材に設置されるのが代表的であるが、適用対象が変電設備等に限られるものではない。
【0010】
(第1実施形態)
図1および
図2に基づき、第1実施形態に係る蛇捕獲装置Aを説明する。
図に示す棒材pは、変電所内に設置された断路器の操作ロッドが代表的なものである。この棒状pは常時は縦向きの状態となっている。
捕獲容器1は、円筒状の容器であり、棒材pに外挿されている。換言すれば、棒材pは捕獲容器1の内部に存している。
【0011】
捕獲容器1の容器本体1aは上下高さは約50cm以上、直径等は約25cm以上のものである。捕獲容器1の上下高さが約50cm以上であると、蛇が容器の外面を這い上がらなくなるので好ましい。また、捕獲容器1の直径が約25cm以上であると、蛇が容器の外面を巻き付いて昇りにくくなるので好ましい。
捕獲容器1の材質にはとくに制限がないが、金属製の板バネと同一材料を用いるなら、ステンレススチールやアルミニウム、合成樹脂などが好適である。
捕獲容器1の外面は平滑にしておくとよい。平滑だと蛇がよじ昇りにくいからである。逆にいうと、段差や凹凸、小孔などは、蛇が昇りやすくなるので、避けるべきである。
【0012】
上蓋2は、金属製の板バネ3で構成されている。複数枚板バネ3が円周状に並べられ、板バネ3の基端部3aが容器本体1aに固定され、先端部3bが自由端となって、上向きに延び棒材pの外表面に接している。
板バネ3は弾力性があるので、自然な状態では先端部3bが棒材pの外面に接しており、上蓋2が閉じた状態となっている。しかし、人の手で先端部3bを押し開いて、上蓋2を開くこともできる。
【0013】
捕獲容器1の棒材pへの取付けは複数枚の板バネ3を棒材pへ沿わせておいて、適宜の締付け金具6で固定するのが簡便である。なお、締付け金具6の代りに針金や紐を用いてもよい。
【0014】
下蓋4は金属製の板バネ5で構成されている。複数枚の板バネ5が円周状に並べられ、板バネ5の基端部5aが容器本体1aに固定され、先端部5bが自由端となって上向きに延び棒材pに接近している。換言すれば、板バネ5の先端部は容器本体1aにおける上下方向中間部分に位置している。
板バネ5は弾力性があるので、自然な状態では先端部5bが棒材pの外面に近接するか、軽く接触する状態となっている。
板バネ5は、下方から上向きに加わる外力によって開くので、棒材pを昇ってきた蛇が板バネ5を押し開いて、容器本体1aの中に入ることができる。一方、容器本体1aの中に入った蛇が板バネ5を自らの体で上方から下向きに力を加えても、板バネ5は開かない。この逆止め機能によって、蛇は容器本体1a内に閉じ込められた状態となる。
【0015】
図3は、蛇の取出し要領を示している。上蓋2を固定している締付け金具6を外して、捕獲容器1を下向きに移動させ、手で開いた上蓋2から器具10を差し込むと捕獲していた蛇を取り出すことができる。
【0016】
(第2実施形態)
図4に基づき、第2実施形態の蛇捕獲装置Bを説明する。
本実施形態では、捕獲容器1の容器本体1aに透視窓7を設けたものである。透視窓7は内部に蛇が居るかどうかを確認でき、蛇が逃げ出す程の隙間が無いものであればよい。
図示の例は、網目張りの透視窓7であるが、これ以外に小孔を多数設けたもの等を例示できる。
【0017】
(第3実施形態)
図5に基づき、第3実施形態の蛇捕獲装置Cを説明する。
本実施形態では、棒材pに台座11を取付け、植栽12等を置いたものである。
この実施形態は、既存の変電設備の棒材(操作ロッドなど)を利用しないで、蛇捕獲のみを目的とした使用に向いている。
【0018】
(第5実施形態)
図6に基づき、第5実施形態の蛇捕獲装置Dを説明する。
捕獲容器1は四面が四角形の立体容器である。図示の例では第1実施形態と同様の金属材料や合成樹脂材料で六面が構成されている。なお、
図6では、捕獲容器1内部を破断して示している。
捕獲容器1の上面は、手で開閉できる上蓋2となっている。下蓋4は板バネ5製の進入口とその周囲の底板とからなる。
この実施形態は、棒材pが捕獲容器1の上蓋2を貫いておらず容器内に収まっている。
【0019】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、棒材pは断路器の操作ロッドに対応する部材であったが、これに限られず、縦向きに配置された棒状の部材であれば、どのような物も該当する。
図示の棒材pは全て断面が円形の棒状部材であったが、このような丸棒に限られることなく、断面が四角形や三角形、L形の棒材pにも本発明を適用できる。
【0020】
本発明の他の実施形態として、捕獲容器1の容器本体1aから上蓋2を取外しできるようにしたものも例示できる。上蓋2を取付け取外しできるようにしておくと、蛇の取り出しが容易にできるので好ましい。
上蓋2を容器本体1aに取付けるための手段は任意であり、上蓋2(具体的な例としての板バネ3)の基部を容器本体1aに取付け取外しできるのであれば、とくに制限なく採用でき、そのような例として適宜の留め金や係合器具、あるいはねじ込みや嵌合機構で取付け取外しできるものを例示できる。
なお、上蓋2の容器本体1aに対する取付け取外し機構は、上蓋2全体だけでなく、上蓋2の一部を取付け取外し自在にするものであってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 捕獲容器
2 上蓋
3 板バネ
4 下蓋
5 板バネ
6 締付け金具
7 透視窓
A 蛇捕獲装置