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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/30 20060101AFI20230807BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230807BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C09K3/30 Z
A61K8/04
A61K8/73
A61Q19/00
C09K3/30 D
C09K3/30 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019164716
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021042298
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 典子
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222610(JP,A)
【文献】特表2016-525514(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031416(WO,A1)
【文献】特開2017-002154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/30
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーおよび水を含む原液と、溶解性圧縮ガスとを含み、
エアゾール容器に前記原液および前記溶解性圧縮ガスが充填された状態において、エアゾール組成物の液相100mL中の溶解性圧縮ガスの溶解量は、0.4~5.0gである、噴霧用エアゾール組成物。
【請求項2】
前記原液は、比重が1を超える重質油剤をさらに含む、請求項1記載の噴霧用エアゾール組成物。
【請求項3】
前記重質油剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項2記載の噴霧用エアゾール組成物。
【請求項4】
前記原液は、比重が1未満である軽質油剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の噴霧用エアゾール組成物。
【請求項5】
前記原液は、比重が1を超える重質油剤と、比重が1未満である軽質油剤とをさらに含み、
前記重質油剤と前記軽質油剤との含有割合(質量比)は、20:1~1:1である、請求項1記載の噴霧用エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、腕等の適用箇所において、噴霧されたエアゾール組成物に溶解された状態の溶解性圧縮ガスを到達させることができ、適用箇所上で溶解性圧縮ガスを気化させることにより、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所に付与しやすいエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚などの適用箇所にエアゾール組成物を噴霧して、種々の効果をするためのエアゾール組成物が開発されている。特許文献1には、平均粒子径が2μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体を含有するスプレー剤用組成物が開示されている。特許文献1には、噴射剤として、ジメチルエーテル、液化石油ガス、炭酸ガス、窒素ガスなどが例示されている。特許文献2には、繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバー、粉体、機能性物質、溶媒を含有するスプレー用組成物が開示されている。特許文献2のスプレー用組成物は、ポンプ式装置やトリガー式装置などの噴霧装置によって噴霧され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-73229号公報
【文献】特開2018-196550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のスプレー剤用組成物は、原液と液化石油ガス等の液化ガスが主に含まれる。液化ガスは、噴霧されると気化しやすく、容積が数百倍に膨張する。そのため、このようなスプレー剤用組成物は、炭酸ガスのような圧縮ガスを含んでいる場合であっても、噴霧後に適用箇所に到達する前に気化しやすく、炭酸ガス等による効果が適用箇所において得られにくい。また、特許文献2には、主にポンプ式装置やトリガー式装置によってスプレー用組成物を噴霧することが開示されているが、炭酸ガス等のガスを含むスプレー用組成物を、エアゾール式装置によって噴霧して、適用箇所に到達させる技術に関しては何ら具体的に開示されていない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、腕等の適用箇所において、噴霧されたエアゾール組成物に溶解された状態の溶解性圧縮ガスを到達させやすく、適用箇所上で溶解性圧縮ガスを気化させることにより、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所に付与することのできるエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)セルロースナノファイバーおよび水を含む原液と、溶解性圧縮ガスとを含む、エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、セルロースナノファイバーおよび水を含む原液に、溶解性圧縮ガスが溶解していることにより、粘度が高くなる。このエアゾール組成物は、粘度が高くなることにより、噴霧されたエアゾール組成物中に、溶解性圧縮ガスを保持しやすい。その結果、噴霧されたエアゾール組成物は、腕などの適用箇所に到達しやすく、適用箇所上において溶解性圧縮ガスが気化して発泡しやすい。これにより、エアゾール組成物は、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所に付与しやすい。
【0009】
(2)前記原液は、比重が1を超える重質油剤をさらに含む、(1)記載のエアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、溶解性圧縮ガスは、重質油剤に多く溶解することができる。その結果、噴霧されたエアゾール組成物は、多くの溶解性圧縮ガスを含んだ状態で適用箇所に到達しやすく、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所により付与しやすい。
【0011】
(3)前記重質油剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含む、(2)記載のエアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、溶解性圧縮ガスは、ハイドロフルオロオレフィンに対してより多く溶解することができる。その結果、噴霧されたエアゾール組成物は、より多くの溶解性圧縮ガスを含んだ状態で適用箇所に到達しやすく、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所にさらに付与しやすい。
【0013】
(4)前記原液は、比重が1未満である軽質油剤をさらに含む、(1)~(3)のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【0014】
このような構成によれば、溶解性圧縮ガスは、軽質油剤に多く溶解することができる。その結果、噴霧されたエアゾール組成物は、多くの溶解性圧縮ガスを含んだ状態で適用箇所に到達しやすく、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所により付与しやすい。
【0015】
(5)前記原液は、比重が1を超える重質油剤と、比重が1未満である軽質油剤とをさらに含み、前記重質油剤と前記軽質油剤との含有割合(質量比)は、20:1~1:1である、(1)記載のエアゾール組成物。
【0016】
このような構成によれば、重質油剤および軽質油剤は、エアゾール組成物中で微細な粒子の状態でより安定に分散しやすい。その結果、エアゾール組成物は、より均一な組成で噴霧されやすい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、適用箇所である腕等において、噴霧されたエアゾール組成物に含まれた状態の溶解性圧縮ガスを到達させやすく、適用箇所上で溶解性圧縮ガスを気化させることにより、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所に付与することのできるエアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<エアゾール組成物>
本発明の一実施形態のエアゾール組成物は、セルロースナノファイバーおよび水を含む原液と、溶解性圧縮ガスとを含む。このようなエアゾール組成物は、セルロースナノファイバーおよび水を含む原液に、溶解性圧縮ガスが溶解していることにより、粘度が高くなる。このエアゾール組成物は、粘度が高くなることにより、噴霧されたエアゾール組成物中に溶解性圧縮ガスを閉じ込めやすい。その結果、噴霧されたエアゾール組成物は、腕などの適用箇所に到達しやすく、適用箇所上において溶解性圧縮ガスが気化して発泡しやすい。これにより、エアゾール組成物は、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所に付与しやすい。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
(原液)
原液は、セルロースナノファイバーおよび水を含む。
【0020】
・セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバーは、水に可溶化されて原液の粘度を高くし、容器内では溶解性圧縮ガスが原液に溶解してエアゾール組成物の粘度を高くし、外部に噴霧されると溶解性圧縮ガスを噴射物中に保持して、適用箇所において溶解性圧縮ガスの効果を得られやすくする目的で配合される。
【0021】
セルロースナノファイバーは、未変性セルロースまたは化学変性セルロースの微細繊維である。セルロースナノファイバーは、通常、平均繊維径が3~500nm程度である。また、セルロースナノファイバーは、通常、平均アスペクト比が10以上である。アスペクト比の上限は特に限定されない。一例を挙げると、アスペクト比の上限は、1000以下である。セルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長の測定は、たとえば、セルロースナノファイバーの0.001質量%水分散液を調製し、この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した形状像の断面高さを計測することにより、数平均繊維径あるいは繊維長として算出することができる。また、平均アスペクト比は下記の式により算出することができる:
平均アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0022】
本実施形態のセルロースナノファイバーは、セルロース原料を解繊すること、セルロース原料を化学変性した後に解繊すること、または、セルロース原料を解繊した後に化学変性することにより得ることができる。なお、セルロースナノファイバーは、公知の方法により製造されたセルロースナノファイバーであってもよく、市販品であってもよい。
【0023】
セルロースナノファイバーの含有量(固形分)は特に限定されない。一例を挙げると、セルロースファイバーの含有量(固形分)は、原液中、0.001質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることがより好ましい。また、セルロースナノファイバーの含有量(固形分)は、原液中、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、原液に溶解性圧縮ガスが溶解して粘度が高くなりやすい。その結果、噴霧されたエアゾール組成物は、溶解している溶解性圧縮ガスを噴射物中に保持して、適用箇所に到達させやすく、適用箇所において溶解性圧縮ガスの効果が得られやすい。
【0024】
・水
水は、溶媒として用いられ、原液やエアゾール組成物の粘度を調節するために配合される。
【0025】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0026】
水の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水の含有量は、原液中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、原液中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、原液およびエアゾール組成物は、粘度が適切に調整されやすい。
【0027】
本実施形態の原液は、セルロースナノファイバーおよび水のほかにも、比重が1を超える油剤(重質油剤)、比重が1未満である油剤(軽質油剤)を好適に含む。
【0028】
・重質油剤
重質油剤は、20℃における比重が1を超える油剤である。重質油剤は、溶解性圧縮ガスの溶解量を多くして、効果を得られやすくする目的で好適に配合される。
【0029】
重質油剤は特に限定されない。一例を挙げると、重質油剤は、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、アビエチン酸等である。これらの中でも、重質油剤は、溶解性圧縮ガスの溶解量が多く、その効果が得られやすい点から、ハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましく、適用箇所において優れた冷却効果が得られやすい点から、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))や、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z))などの沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンを含むことがより好ましい。重質油剤は併用されてもよい。
【0030】
重質油剤が含まれる場合において、重質油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、重質油剤の含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、重質油剤の含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。重質油剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、溶解性圧縮ガスの溶解量を多くすることができ、適用箇所において溶解性圧縮ガスによる効果がより得られやすい。
【0031】
・軽質油剤
軽質油剤は、20℃における比重が1未満である油剤である。軽質油剤は、溶解性圧縮ガスの溶解量を多くして、効果を得られやすくする目的で好適に配合される。
【0032】
軽質油剤は特に限定されない。一例を挙げると、軽質油剤は、ホホバ油、アボガド油、ツバキ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、シア脂、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、胚芽油、ヤシ油、バーム油、メドフォーム油などの油脂、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ケロシン、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、軽質イソパラフィンなどの炭化水素油、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジオクチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシルなどのエステル油、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール、ワセリン、パラフィンワックス、ミツロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウなどのロウ類等である。軽質油剤は併用されてもよい。
【0033】
軽質油剤が含まれる場合において、軽質油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、軽質油剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、軽質油剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。軽質油剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、溶解性圧縮ガスの溶解量を多くすることができ、適用箇所において溶解性圧縮ガスによる効果がより得られやすい。
【0034】
本実施形態において、重質油剤と軽質油剤とが併用される場合、重質油剤と軽質油剤との含有割合(質量比)は特に限定されない。一例を挙げると、重質油剤と軽質油剤との含有割合(質量比)は、20:1~1:1であることが好ましく、15:1~2:1であることがより好ましい。重質油剤と軽質油剤との含有割合(質量比)が上記範囲内であることにより、重質油剤および軽質油剤は、エアゾール組成物中で微細な粒子の状態でより安定に分散しやすい。その結果、エアゾール組成物は、より均一な組成で噴霧されやすい。また、エアゾール組成物は、より多くの溶解性圧縮ガスを、適用箇所に到達させやすい。その結果、エアゾール組成物は、適用箇所において溶解性圧縮ガスによる効果がより得られやすい。
【0035】
原液は、上記セルロースナノファイバー、水、および好適に配合される重質油剤および軽質油剤のほかにも、たとえば、有効成分、界面活性剤、アルコール、水溶性高分子、パウダー等の任意成分が適宜配合されてもよい。これらはいずれも併用されてもよい。
【0036】
有効成分は、エアゾール組成物の使用目的や用途に応じて適宜選択される。一例を挙げると、有効成分は、天然香料、合成香料などの各種香料;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルアミド-アクリル酸ヒドロキシアルキル-メタクリル酸アルキルアミノアルキル共重合体などの両性型樹脂、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョン、ビニルピロリドン-スチレン共重合体エマルジョン、アクリル酸-アクリル酸ヒドロキシエステル共重合体エマルジョンなどのエマルジョン系樹脂などのスタイリング剤;l-メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類;アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸;コラーゲン、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;ローヤルゼリーエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、緑茶エキスなどの消臭剤;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、p-メンタン-3,8-ジオール、3-[アセチル(ブチル)アミノ]プロピオン酸エチル、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピルなどの害虫忌避剤;クロロヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノールなどの制汗剤;サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤等である。
【0037】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、有効成分を配合することによる効果を充分に発揮させる点から、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、適切な効果が得られやすい点から、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
界面活性剤は、特に重質油剤または軽質油剤が配合される場合において、これらの油剤と水とを乳化させるために好適に配合される。
【0039】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;アルカリのケン化物、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などのアニオン性界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩;アミノ酸型アニオン性界面活性剤;ポリエーテル変性シリコーンなどのシリコーン系界面活性剤;アルキルベタインなどの両性界面活性剤等である。界面活性剤は併用されてもよい。
【0040】
界面活性剤が配合される場合、界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、べたつきにくく使用感が良いという利点がある。
【0041】
アルコールは、水に溶解しにくい有効成分の溶媒として好適に配合される。
【0042】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリンなどの多価アルコールである。
【0043】
アルコールが配合される場合、アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、アルコールを配合することによる効果が得られやすい。
【0044】
水溶性高分子は、原液やエアゾール組成物の粘度を調整するために好適に配合される。
【0045】
水溶性高分子は、セルロースナノファイバーと併用されてもよい。一例を挙げると、水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子;キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等である。
【0046】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、水溶性高分子を配合することによる効果が得られやすく、かつ、原液の粘度が高くなり過ぎない。
【0047】
パウダーは、サラサラ感を付与するなど、使用感を向上させるために好適に配合される。
【0048】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。
【0049】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、パウダーを配合することによる効果が得られやすく、かつ、エアゾール組成物は、吐出される際に、吐出通路において詰まりを生じにくい。
【0050】
原液全体の説明に戻り、原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、水にセルロースナノファイバー等を添加し、混合することにより調製し得る。
【0051】
(溶解性圧縮ガス)
溶解性圧縮ガスは、噴射剤として作用すると共に、原液中に溶解してエアゾール組成物の粘度を上昇させるために配合される。粘度の上昇したエアゾール組成物は、噴射物中に、溶解性圧縮ガスを保持しやすく、このような状態で適用箇所に到達しやすい。
【0052】
本実施形態において、溶解性圧縮ガスは、溶媒への溶解量が多いガス(たとえば、25℃における水に対するオストワルド係数が0.5以上であるガス)である。一例を挙げると、溶解性圧縮ガスは、炭酸ガス(オストワルド係数:0.83)、亜酸化窒素ガス(オストワルド係数:0.59)、およびこれらの混合ガス等である。
【0053】
本実施形態のエアゾール組成物は、上記溶解性圧縮ガスのほかに、溶解性圧縮ガスとともに溶媒への溶解量が少ない低溶解性圧縮ガス(たとえば、25℃における水に対するオストワルド係数が0.5未満であるガス)が併用されてもよい。低溶解性圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、低溶解性圧縮ガスは、窒素ガス(オストワルド係数:0.014)、酸素ガス(オストワルド係数:0.028)、空気(オストワルド係数:0.017)等である。低溶解性圧縮ガスが併用されることにより、エアゾール組成物は、使用し続けることにより、エアゾール容器内におけるエアゾール組成物の量が減少した場合であっても、圧力降下が小さく、噴射状態が安定しやすい。
【0054】
溶解性圧縮ガスがエアゾール容器に充填される場合の圧力は特に限定されない。一例を挙げると、溶解性圧縮ガスは、溶解性圧縮ガスにより、25℃におけるエアゾール容器内の圧力を0.4MPa以上に調整されることが好ましく、0.5MPa以上に調整されることがより好ましい。また、溶解性圧縮ガスは、溶解性圧縮ガスにより、25℃におけるエアゾール容器内の圧力を1.0MPa以下に調整されることが好ましく、0.8MPa以下に調整されることがより好ましい。エアゾール容器内の圧力が上記範囲内に調整されることにより、溶解性圧縮ガスは、原液中に多く溶解してエアゾール組成物の粘度を高くする効果が得られやすい。特に、溶解性圧縮ガスとして炭酸ガスを含有する場合は油剤を微細な粒子で長時間分散させることができ、エアゾール組成物を均一な組成で噴射することができる。
【0055】
また、エアゾール容器に原液および溶解性圧縮ガスが充填された状態において、エアゾール組成物の液相100mL中の溶解性圧縮ガスの溶解量は、0.4g以上であることが好ましく、0.5g以上であることがより好ましい。また、エアゾール組成物の液相100mL中の溶解性圧縮ガスの溶解量は、5.0g以下であることが好ましく、4.5g以下であることがより好ましい。溶解量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、粘度が高くなりやすく噴射物中に溶解性圧縮ガスを保持することで溶解性圧縮ガスの効果が得られやすい。
【0056】
以上、本実施形態のエアゾール組成物は、セルロースナノファイバーおよび水を含む原液に、溶解性圧縮ガスが溶解していることにより、粘度が高くなる。このエアゾール組成物は、粘度が高くなることにより、噴霧されたエアゾール組成物中に、溶解性圧縮ガスを閉じ込めやすい。その結果、噴霧されたエアゾール組成物は、腕などの適用箇所に到達しやすく、適用箇所上において溶解性圧縮ガスが気化して発泡しやすい。これにより、エアゾール組成物は、溶解性圧縮ガスの効果を適用箇所に付与しやすい。
【実施例
【0057】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0058】
(実施例1)
以下の表1に示される処方にしたがって、原液Aを調製した。この原液A60gをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填し、耐圧容器の口部にバルブを固着した。バルブから炭酸ガスを充填し、実施例1のエアゾール組成物を調製した。耐圧容器を上下に振盪し、炭酸ガスが飽和溶解した後の容器内の圧力は0.6MPa(25℃)であった。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例2~5、比較例1~3)
表1に示される処方にしたがって、原液B~Eを調製した。得られた原液A~Eを用いて、表2に示される処方にしたがって、実施例1と同様の方法により圧縮ガスを充填し、それぞれ実施例2~5および比較例1~3のエアゾール組成物を調製した。
【0061】
実施例1~5および比較例1~3において得られたエアゾール組成物を用いて、以下の評価方法により、増粘効果、分散維持効果および噴射状態を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
1.増粘効果
原液に圧縮ガスを充填する前後での粘度の違いを目視により観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:原液は、圧縮ガスが飽和溶解することでとろみが増し、増粘した。
×:原液は、圧縮ガスが飽和溶解しても増粘しなかった。
【0063】
2.油剤の分散維持効果
耐圧容器を上下に振盪してエアゾール組成物を撹拌し、25℃の恒温室内で24時間静置した耐圧容器内のエアゾール組成物を目視で観察し、エアゾール組成物中の油剤の分散維持効果を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:エアゾール組成物は、非常に微細な油剤が均一に分散していた。
△:エアゾール組成物は、わずかに底部で油剤の偏りが生じていた。
×:エアゾール組成物は、油剤が分離していた。
-:油剤を含有していないため評価していない。
【0064】
3.噴射状態
耐圧容器を25℃の恒温水槽中に1時間浸漬し、手のひらにエアゾール組成物を噴射して噴射物の状態を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:エアゾール組成物は、霧状に噴射され、手のひらに微細な泡が多く付着し、発泡が持続した。
×:エアゾール組成物は、霧状に噴射され、手のひらに微細な泡が付着したが消泡が早く垂れやすかった。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示されるように、実施例1~5のエアゾール組成物は、増粘効果、噴射状態が優れている結果を示した。また、油剤を含む実施例2~5のエアゾール組成物は油剤の分散維持効果が優れていた。中でも、軽質油剤と重質油剤とを含む実施例3~5のエアゾール組成物は、油剤の分散維持効果が特に優れていた。
【0067】
一方、溶解性圧縮ガスではない比較例1~3のエアゾール組成物は、増粘しなかった。また、油剤を含有する比較例2~3のエアゾール組成物は分散状態を維持できず油剤が分離していた。さらに、比較例1~3のエアゾール組成物の噴射状態は、霧状に噴射され、手のひらに微細な泡が付着したが消泡が早く垂れやすかった。