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特許7326081インク供給部、印刷装置、および錠剤印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】インク供給部、印刷装置、および錠剤印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20230807BHJP
   A61J 3/06 20060101ALI20230807BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B41J2/175 503
A61J3/06 Q
B41J2/175 143
B41J2/19
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019167575
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041678
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中野 信行
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴之
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-204570(JP,A)
【文献】特開2016-137676(JP,A)
【文献】特開2004-122704(JP,A)
【文献】特開2016-010887(JP,A)
【文献】特開2000-141687(JP,A)
【文献】特開2016-101751(JP,A)
【文献】特開2006-231654(JP,A)
【文献】特開2016-077345(JP,A)
【文献】特開2004-009348(JP,A)
【文献】実開昭60-141243(JP,U)
【文献】特開2018-089906(JP,A)
【文献】特開2021-003852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
A61J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の表面にインクジェット方式で印刷を行う印刷装置に備えられるインク供給部であって、
インク滴を吐出する複数のインクノズルが配列された吐出面を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給するインクを軟包材に封入したインクパウチを保持可能なインクパウチ保持部であって、前記インクパウチ内のインクを前記記録ヘッドに向けて排出する筒状の排出口を備えるインクパウチ保持部と、
円筒状であり、一端が前記記録ヘッドに接続され、他端が前記排出口に接続されるインク配管と、
を備え、
前記排出口は、水平方向に対して傾斜して配置され、
前記排出口の先端部は、前記インクパウチから離れるにつれて鉛直下方に向かい、
前記インクパウチ保持部は、前記インクパウチのインクが消費されるにつれて前記インクパウチの水平方向の厚みが次第に薄くなるように、前記インクパウチを保持し、
前記排出口は、前記インクパウチが前記インクパウチ保持部に取り付けられたときの姿勢でみたときに前記インクパウチにおける鉛直下方側の端部に位置するパウチ口に接続される、インク供給部。
【請求項2】
請求項1に記載のインク供給部であって、
前記インク配管の前記他端は、前記排出口の前記先端部と一直線に接続される、インク供給部。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインク供給部であって、
前記インク配管の中途部であって、内部流路が方向転換する曲折部は、前記排出口よりも鉛直下方側に位置する、インク供給部。
【請求項4】
請求項3に記載のインク供給部であって、
前記曲折部は、前記インク配管のうち最も鉛直下方側に位置する、インク供給部。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のインク供給部であって、
前記排出口は、前記記録ヘッドの前記吐出面よりも鉛直下方側に位置する、インク供給部。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載のインク供給部であって、
前記インクパウチ保持部は、前記インクパウチを下方から受ける載置底面を有する、インク供給部。
【請求項7】
請求項6に記載のインク供給部であって、
前記インクパウチ保持部は、前記載置底面から鉛直上方に延びる一対の側面を有し、
前記インクパウチは前記一対の側面により両側から挟まれる、インク供給部。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のインク供給部であって、
前記載置底面は、前記排出口に近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜平面状である、インク供給部。
【請求項9】
請求項5に記載のインク供給部であって、
前記インクパウチ保持部は、鉛直方向よりも、水平方向に長い形状を有する、インク供給部。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のインク供給部であって、
一端部に前記記録ヘッドが支持されるとともに、他端部に前記インクパウチ保持部が支持される、支持部材をさらに備える、インク供給部。
【請求項11】
請求項10に記載のインク供給部であって、
前記記録ヘッドと、前記インクパウチ保持部と、前記インク配管と、前記支持部材とを含むユニットが、前記印刷装置のその他の構成に対して、一体的に着脱可能である、インク供給部。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のインク供給部を備える、印刷装置。
【請求項13】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のインク供給部を備え、前記記録媒体としての錠剤の表面にインクジェット方式で印刷を行う錠剤印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給部、印刷装置、および錠剤印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の表面にインクジェット方式で印刷を行う印刷装置に備えられるインク供給部が知られている。この種のインク供給部は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、記録ヘッド(2)側にインクを供給するインク供給用針(3)と、インクを収納するインク容器(1)とを備え、インク供給用針(3)をインク容器(1)に突き刺すことによりインク容器(1)から記録ヘッド(2)側へインクを供給する。インク容器(1)は、軟包材で形成され、このインク容器(1)にインク供給用針(3)を直接突き刺し、インク容器(1)から記録ヘッド(2)側へインクを供給可能である、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-347259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、インク容器内のインクの残量が少なくなる等してインク容器を着脱するときに、インク供給用針に気泡が混入してしまう場合があると考えられる。インク供給用針に気泡が混入すると、脱気フィルター等により脱気することが困難であり、この気泡が原因で印字抜け等の印刷不良が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、気泡に起因する印字抜け等の印字不良の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上のごとくであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本願の第1の観点では、記録媒体の表面にインクジェット方式で印刷を行う印刷装置に備えられるインク供給部が提供される。前記インク供給部は、記録ヘッドと、インクパウチ保持部と、インク配管とを備える。前記記録ヘッドは、インク滴を吐出する複数のインクノズルが配列された吐出面を有する。前記インクパウチ保持部は、前記記録ヘッドに供給するインクを軟包材に封入したインクパウチを保持可能である。前記インクパウチ保持部は、前記インクパウチ内のインクを前記記録ヘッドに向けて排出する筒状の排出口を備える。前記インク配管は、円筒状であり、一端が前記記録ヘッドに接続され、他端が前記排出口に接続される。前記排出口は、水平方向に対して傾斜して配置される。前記排出口の先端部は、前記インクパウチから離れるにつれて鉛直下方に向かい、前記インクパウチ保持部は、前記インクパウチのインクが消費されるにつれて前記インクパウチの水平方向の厚みが次第に薄くなるように、前記インクパウチを保持し、前記排出口は、前記インクパウチが前記インクパウチ保持部に取り付けられたときの姿勢でみたときに前記インクパウチにおける鉛直下方側の端部に位置するパウチ口に接続される
【0009】
本願の第2の観点では、第1の観点に係るインク供給部において、前記インク配管の前記他端は、前記排出口の前記先端部と一直線に接続される。
【0010】
本願の第3の観点では、第1の観点または第2の観点に係るインク供給部において、前記インク配管の中途部であって、内部流路が方向転換する曲折部は、前記排出口よりも鉛直下方側に位置する。
【0011】
本願の第4の観点では、第3の観点に係るインク供給部において、前記曲折部は、前記インク配管のうち最も鉛直下方側に位置する。
【0012】
本願の第5の観点では、第3の観点または第4の観点に係るインク供給部において、前記排出口は、前記記録ヘッドの前記吐出面よりも鉛直下方側に位置する。
【0013】
本願の第6の観点では、第3の観点から第5の観点までのいずれか1つに係るインク供給部において、前記インクパウチ保持部は、前記インクパウチを下方から受ける載置底面を有する。
【0014】
本願の第7の観点では、第6の観点に係るインク供給部において、前記インクパウチ保持部は、前記載置底面から鉛直上方に延びる一対の側面を有する。前記インクパウチは前記一対の側面により両側から挟まれる。
【0015】
本願の第8の観点では、第6の観点または第7の観点に係るインク供給部において、前記載置底面は、前記排出口に近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜平面状である。
【0016】
本願の第9の観点では、第5の観点に係るインク供給部において、前記インクパウチ保持部は、鉛直方向よりも、水平方向に長い形状を有する。
【0017】
本願の第10の観点では、第1の観点から第9の観点までのいずれか1つに係るインク供給部において、一端部に前記記録ヘッドが支持されるとともに、他端部に前記インクパウチ保持部が支持される、支持部材をさらに備える。
【0018】
本願の第11の観点では、第10の観点に係るインク供給部において、前記記録ヘッドと、前記インクパウチ保持部と、前記インク配管と、前記支持部材とを含むユニットが、前記印刷装置のその他の構成に対して、一体的に着脱可能である。
【0019】
本願の第12の観点では、第1の観点から第11の観点までのいずれか1つに係るインク供給部を備える、印刷装置が提供される。
【0020】
本願の第13の観点では、第1の観点から第11の観点までのいずれか1つに係るインク供給部を備え、前記記録媒体としての錠剤の表面にインクジェット方式で印刷を行う錠剤印刷装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本願の第1の観点~第13の観点によれば、気泡に起因する印字抜け等の印字不良の発生を抑制することができる。
【0022】
特に、本願の第1の観点によれば、インクパウチの脱着時に排出口の付近に混入した気泡が、排出口を通ってインクパウチの内部へと逃げ易くなる。
【0023】
特に、本願の第2の観点によれば、インクパウチの脱着時に排出口の付近に混入した気泡が、インク配管の内部よりも、排出口を介してインクパウチの内部へと逃げ易くなる。
【0024】
特に、本願の第3の観点によれば、インクパウチの脱着時に排出口の付近に混入した気泡が、インクパウチの内部へとより逃げ易くなる。
【0025】
特に、本願の第4の観点によれば、インクパウチの脱着時に排出口の付近に混入した気泡が、インクパウチの内部へとより一層逃げ易くなる。
【0026】
特に、本願の第5の観点によれば、例えば、吐出面の鉛直方向における位置と、インクパウチ内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置と、の差が、所定の許容範囲(理想の水頭差)となるように、排出口と吐出面との鉛直方向における位置関係を設定することにより、インクノズル内におけるメニスカスを適正に保持することが可能となる。
【0027】
特に、本願の第7の観点によれば、インクパウチを載置底面で下方から受けるとともに、一対の側面で両側から挟むことにより、インクパウチの水平方向の厚みを、インクが消費されるにつれて徐々に薄くすることが容易となる。これにより、インクが消費されても、インクパウチ内のインクの液面位置があまり変動しなくなる。
【0028】
特に、本願の第8の観点によれば、インクパウチ内でのインクの排出口側への移動を促進できるので、インクパウチ内のインクが残り少なくなったときに、残存するインクが鉛直方向に分断されてしまうといった事態が生じ難くなる。
【0029】
特に、本願の第9の観点によれば、吐出面の鉛直方向における位置と、インクパウチ内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置と、の差が、所定の許容範囲(理想の水頭差)となる領域に、大容量のインクを搭載することができる。その結果、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度をより少なく抑えることができ、連続的に印刷を行うことができる。また、インクパウチの着脱に伴う気泡の混入の可能性も低減する。
【0030】
特に、本願の第10の観点によれば、インクパウチ内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面の鉛直方向における位置と、の差が、許容範囲内に保たれるように、予め位置決めされた状態に配置することが容易となる。
【0031】
特に、本願の第11の観点によれば、吐出面の位置と、インクパウチ保持部の位置と、インク配管の位置と、の鉛直方向における相対関係が適切に設定された状態のインク供給部を、ユニット化して取り扱うことが可能となる。よって、例えば異なる種類のインクごとにこのようなユニットを予め準備しておくことで、ユニットを着脱して付け替えることで、複数種類のインクを使い分けて印刷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】錠剤印刷装置の概略構成を示した図である。
図2】錠剤搬送機構の部分斜視図である。
図3】ヘッドの下面図である。
図4】インク供給部の側面図である。
図5】インクパウチの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。
【0034】
<1.錠剤印刷装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る錠剤印刷装置(印刷装置)1の構成を示した図である。この錠剤印刷装置1は、医薬品である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、錠剤搬送機構10、印刷部20、乾燥機構30、および制御部40を備えている。
【0035】
錠剤搬送機構10は、複数の錠剤9を保持しつつ搬送する機構である。錠剤搬送機構10は、一対のプーリ11と、一対のプーリ11の間に掛け渡された環状の搬送ベルト12とを有する。錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9は、振動フィーダや搬送ドラム等により構成される搬入機構91によって、等間隔に整列されるとともに、搬送ベルト12の外周面に供給される。一対のプーリ11の一方は、搬送用モータ13から得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト12が、図1中の矢印の方向に回動する。このとき、一対のプーリ11の他方は、搬送ベルト12の回動に伴い従動回転する。
【0036】
図2は、錠剤搬送機構10の部分斜視図である。図2に示すように、搬送ベルト12には、複数の吸着孔14が設けられている。複数の吸着孔14は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、図1に示すように、錠剤搬送機構10は、搬送ベルト12の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構15を有する。吸引機構15を動作させると、搬送ベルト12の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔14に吸着保持される。
【0037】
このように、錠剤搬送機構10は、複数の錠剤9を、複数の吸着孔14に一定の間隔で保持しつつ、搬送ベルト12の回動によって、複数の錠剤9を搬送する。後述する4つの記録ヘッド21の下方では、複数の錠剤9は、水平方向に搬送される。
【0038】
また、図1に示すように、錠剤搬送機構10は、搬送ベルト12の内側に、ブロー機構16を有する。ブロー機構16を動作させると、搬送ベルト12の複数の吸着孔14のうち、搬出機構92に対向する吸着孔14のみが、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔14における錠剤9の吸着が解除され、搬送ベルト12から搬出機構92へ、錠剤9が受け渡される。搬出機構92は、搬送ベルト12から受け渡された錠剤9を、例えば他の搬送ベルトによって、錠剤印刷装置1の外部へ搬出する。
【0039】
印刷部20は、搬送ベルト12により搬送される錠剤9の表面に、インクジェット方式で画像を記録する部位である。図1に示すように、本実施形態の印刷部20は、4つの記録ヘッド21を有する。各記録ヘッド21は、後述するインク供給ユニット50に含まれる。4つの記録ヘッド21は、搬送ベルト12の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。4つの記録ヘッド21は、錠剤9の表面に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各記録ヘッド21から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0040】
図3は、1つの記録ヘッド21の下面図である。図3には、搬送ベルト12と、搬送ベルト12に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。図3中に拡大して示したように、記録ヘッド21の下面である吐出面210には、インク滴を吐出可能な複数のインクノズル211が設けられている。本実施形態では、記録ヘッド21の下面に、複数のインクノズル211が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各インクノズル211は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のインクノズル211を二次元的に配置すれば、各インクノズルの幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のインクノズル211は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0041】
インクノズル211からのインク滴の吐出方式には、例えば、ピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、インクノズル211内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してインクノズル211内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル式であってもよい。
【0042】
乾燥機構30は、錠剤9の表面に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構30は、搬送ベルト12の周囲の、印刷部20よりも搬送方向下流側の位置に設けられている。乾燥機構30には、例えば、搬送ベルト12により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を吹き付ける、熱風供給機構が用いられる。錠剤9の表面に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面に定着する。
【0043】
制御部40は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。制御部40は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、およびハードディスクドライブ等の記憶部を有するコンピュータにより構成される。制御部の記憶部内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムが、インストールされている、制御部40は、上述した搬送用モータ13、吸引機構15、ブロー機構16、4つの記録ヘッド21、乾燥機構30、搬入機構91、および搬出機構92と、それぞれ通信可能に接続されている。また、制御部40は、後述する上下移動機構62および水平移動機構64とも、通信可能に接続されている。制御部40は、上記の記憶部に記憶されたコンピュータプログラムやデータをメモリに一時的に読み出し、コンピュータプログラムに基づいて、プロセッサが演算処理を行うことにより、ハードウェアとソフトウェアの協働によって、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9に対する印刷処理が進行する。
【0044】
<2.印刷部の詳細について>
図4は、図1中の白抜き矢印Vの位置からみた印刷部20の側面図である。図4に示すように、この錠剤印刷装置1の内部空間は、印刷エリアA1とメンテナンスエリアA2とに分けられる。印刷エリアA1は、上述した錠剤搬送機構10により錠剤9を搬送しつつ、錠剤9に対して印刷を行うエリアである。メンテナンスエリアA2は、印刷前または印刷後に記録ヘッド21を待機させたり、記録ヘッド21の吐出面210を洗浄したり、後述するインク供給ユニット50を付け替えたりするエリアである。印刷エリアA1とメンテナンスエリアA2との間には、両エリアを仕切る隔壁95が設けられている。隔壁95は、錠剤9の搬送方向と平行かつ水平面に対して垂直に広がっている。
【0045】
上述の通り、印刷部20は、4つの記録ヘッド21を有する。また、図4に示すように、印刷部20は、記録ヘッド21ごとに、インク供給ユニット(インク供給部)50を有する。なお、インク供給ユニット50には、記録ヘッド21自体も含まれる。また、印刷部20は、各記録ヘッド21(インク供給ユニット50)に対応するインク供給ユニット移動機構60と、各記録ヘッド21に対応する4つの洗浄ユニット71とを有する。
【0046】
<2-1.インク供給ユニットについて>
インク供給ユニット50は、印刷部20にインクを供給する。上述もしたように、インク供給ユニット50は、各記録ヘッド21について設けられる。インク供給ユニット50は、記録ヘッド21の他に、インクパウチ保持部51、支持部材53、およびインク配管54を有する。
【0047】
インクパウチ保持部51は、記録ヘッド21に供給するインクを軟包材に封入したインクパウチ110を保持可能なホルダーである。インクパウチ保持部51は、後述のインク配管54を介して記録ヘッド21に接続可能である。詳細には、インクパウチ保持部51は、第1側面部512と第2側面部513とが搬送方向に重ね合わされてネジ等の締結部材で互いに結合されることにより、構成される。
【0048】
第1側面部512は、搬送方向に対して垂直に広がる矩形の板状である。第1側面部512は、矩形の長辺が水平方向に対して傾斜した姿勢で、配置される。第1側面部512の矩形の長辺の水平方向に対する傾斜角度は、好ましくは5°以上かつ15°以下、より好ましくは8°以上かつ12°以下、より一層好ましくは10°である。
【0049】
第2側面部513は、第1側面部512に対して搬送方向に重ね合わせることが可能な部材である。第2側面部513の外形は、第1側面部512の外形と略同じである。すなわち、第2側面部513の外形は矩形状である。ただし、第2側面部513は、外縁部を除く領域に、第1側面部512から離れる方向に凹む凹部513aを有する。なお、厳密には、第2側面部513は、外縁部に、後述する排出口514を有する。凹部513aは、後述するインクパウチ110の形状に沿う。一方、第1側面部512は、凹部513aを被覆することが可能な蓋状である。
【0050】
第1側面部512の、第2側面部513と対向する面は、本実施形態に係る「一対の側面」のうちの一方である。また、第2側面部513の、第1側面部512と対向する面は、本実施形態に係る「一対の側面」のうちの他方である。
【0051】
第2側面部513は、載置底面513dを有する。詳細には、第2側面部513の凹部513aの下方側の面(底面)が、載置底面513dである。載置底面513dは、インクパウチ保持部51に収容されるインクパウチ110を、下方側から受ける板状の部分である。載置底面513dは、後述する排出口514に近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜平面状である。載置底面513dの水平方向に対する傾斜角度は、好ましくは5°以上かつ15°以下、より好ましくは8°以上かつ12°以下、より一層好ましくは10°である。載置底面513dは、搬送方向に薄い形状である。
【0052】
凹部513aにインクパウチ110を収容した状態で、第2側面部513に対して第1側面部512を搬送方向に重ね合わせて、ネジ等の締結部材で互いに結合することにより、インクパウチ110をインクパウチ保持部51内に保持可能である。
【0053】
排出口514は、凹部513aの幅方向の一方側(記録ヘッド21に近い側)の側面と、インクパウチ保持部51の外部とを接続する、筒状の通路である。本実施形態の排出口514は、水平方向に対して傾斜する方向に延びている。排出口514の一端(基端部)は、凹部513aの幅方向の一方側の側面に接続される。排出口514の他端部(先端部)は、凹部513aから離れるにつれて鉛直下方に向かう。すなわち、排出口514は、水平面に対して斜め下向きに延びる。
【0054】
排出口514は、後述するインクパウチ110のパウチ口110aに沿う形状を有する。排出口514に、インクパウチ110のパウチ口110aを収容可能である。排出口514が延びる方向の、水平方向に対する傾斜角度は、好ましくは5°以上かつ15°以下、より好ましくは8°以上かつ12°以下、より一層好ましくは10°である。排出口514は、載置底面513dの近傍に配置される。
【0055】
インク配管54は、円筒状のパイプが複数箇所で屈曲したような形状を有する。インク配管54の一端は、記録ヘッド21に接続される。インク配管54の他端は、排出口514の先端部に接続される。より具体的には、インク配管54は、第1配管541と、継手部542と、第2配管543とを有する。
【0056】
第1配管541は、一続きの円筒状のパイプが2箇所で垂直に折れ曲がって、全体として幅方向に延びる。第1配管541の一端は、記録ヘッド21に接続される。第1配管541の他端は、継手部542の一端に接続される。継手部542は、インク配管54の延びる方向を変換する。継手部542の一端は、第1配管541の他端に接続される。継手部542の他端は、第2配管543の一端に接続される。
【0057】
第2配管543は、一続きの円筒状のパイプが1箇所で垂直に折れ曲がって、全体としてL字状に延びる。第2配管543の長辺側の先端(一端)は、継手部542の他端に接続される。第2配管543の短辺側の先端(他端)は、排出口514の先端部に接続される。排出口514と、第2配管543の短辺とは、搬送方向にみたときに一直線に延びている。ここで、排出口514の方が、第2配管543の短辺よりも鉛直方向上方側に位置している。
【0058】
第2配管543の、長辺と短辺との接続箇所は、本実施形態に係る「曲折部543a」をなす。曲折部543aは第2配管543の内部流路が方向変換する部位である。搬送方向にみたときに、曲折部543aは、排出口514よりも鉛直下方側に位置する。
【0059】
第1配管541と継手部542と第2配管543とにより構成されるインク配管54は、インクパウチ保持部51に保持されたインクパウチ110内のインクを、記録ヘッド21へと供給することが可能である。
【0060】
支持部材53は、搬送方向に対して垂直な板状であり、幅方向に長い形状を有する。支持部材53の幅方向における一端部には、記録ヘッド21が支持される。支持部材53の幅方向における他端部には、インクパウチ保持部51が支持される。詳細には、記録ヘッド21の吐出面210の鉛直方向における位置と、インクパウチ110内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置との差が、所定の許容範囲となるように、記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51とが、位置決めされて支持部材53に固定されている。別の言い方をすれば、インクパウチ110がインクパウチ保持部51に取り付けられたときに、インクパウチ110内の液面位置と、吐出面210でのインクの液面位置と、の水頭差が、各インクノズル211内で適正なメニスカスを保持することが可能な程度の水頭差となるように、記録ヘッド21とインクパウチ保持部51との鉛直方向における相対位置が、支持部材53によって決められている。
【0061】
記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51と、支持部材53と、インク配管54とは、インク供給ユニット50としてユニット化されている。すなわち、インク供給ユニット50は、錠剤印刷装置1のその他の構成に対して、一体的に着脱可能である。具体的には、記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51と、支持部材53と、インク配管54とにより構成されるインク供給ユニット50は、幅方向にスライド移動されることで、着脱される。本実施形態では、異なる種類のインクごとに、このようなインク供給ユニット50を、予め準備している。これにより、インク供給ユニット50を着脱して付け替えることで、複数種類のインクを使い分けて印刷できるようにしている。
【0062】
<2-2.インクパウチについて>
ンクパウチ110は、上述のインクパウチ保持部51に保持されるインク供給源である。図5は、インクパウチ110の構成を示す側面図である。
【0063】
インクパウチ110は、軟包材に脱気したインクを封入したものである。インクパウチ110は、搬送方向にみたときの外形が、略矩形状である。インクパウチ110は、搬送方向に薄い扁平な形状を有する。インクパウチ110は、表面と裏面とが近接・離間する方向に容易に変形可能である。インクパウチ110がインクパウチ保持部51に取り付けられるときの姿勢でみたときに、インクパウチ110の鉛直下方側の端部には、内部のインクを注出(排出)するパウチ口110aが設けられている。インクパウチ110がインクパウチ保持部51に取り付けられるときの姿勢でみたときに、インクパウチ110の鉛直下方側の辺110bは、パウチ口110aに近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜状である。インクパウチ110の辺110bの水平方向に対する傾きは、載置底面513dの水平方向に対する傾きと一致する。
【0064】
<2-3.インク供給ユニットの移動機構について>
図4に戻る。インク供給ユニット移動機構60は、印刷エリアA1とメンテナンスエリアA2との間で、インク供給ユニット50を移動させる機構である。別の言い方をすれば、インク供給ユニット移動機構60は、記録ヘッド21をオンキャリッジ式で、印刷エリアA1からメンテナンスエリアA2にかけて移動させる機構である。本実施形態のインク供給ユニット移動機構60は、アーム61、上下移動機構62、移動ステージ63、および水平移動機構64を有する。アーム61は、幅方向に延びる部材である。記録ヘッド21は、アーム61の先端に固定されている。
【0065】
上下移動機構62は、制御部40からの指令に従って、アーム61を上下に移動させる。上下移動機構62を動作させると、図4中の矢印D1のように、アーム61と、記録ヘッド21を含むインク供給ユニット50とが、一体として上下に移動する。これにより、印刷を行う錠剤9の厚みに応じて、吐出面210の鉛直方向における位置を調整できる。また、メンテナンスエリアA2において、上下移動機構62によって記録ヘッド21を下降させることにより、記録ヘッド21の吐出面210に洗浄ユニット71を作用させることも可能である。これにより、吐出面210を洗浄してメンテナンスを行うことができる。
【0066】
上下移動機構62は、移動ステージ63により支持されている。水平移動機構64は、移動ステージ63を、幅方向に移動させる。これにより、移動ステージ63、上下移動機構62、アーム61、およびインク供給ユニット50が、一体となって、図4中の矢印D2のように幅方向に移動する。水平移動機構64および上下移動機構62には、例えば、モータの回転運動を、ボールねじを介して直線運動に変換する機構が用いられる。ただし、水平移動機構64および上下移動機構62は、リニアモータやエアシリンダなどの他の機構によって実現されるものであってもよい。
【0067】
以上のような構成の錠剤印刷装置1において、インク供給ユニット50は、記録ヘッド21および支持部材53がアーム61に取り付けられることにより、印刷部20に搭載される。そして、水平移動機構64によって、記録ヘッド21を搬送ベルト12の上方の位置から幅方向に最も離れる位置まで移動させた状態で、インクパウチ110のインクパウチ保持部51への取付けを行うことが可能である。これにより、オペレータが取付作業を行うスペースを、搬送ベルト12から幅方向に離れた位置において、十分に確保することができる。
【0068】
インクパウチ110のインクパウチ保持部51への取付けは、以下のようにして行われる。すなわち、まず初めにオペレータは、締結部材を取り外すことにより、インクパウチ保持部51から第1側面部512を取り外す。そして、オペレータは、インクパウチ110のパウチ口110aを排出口514に挿入して接続した状態にしつつ、インクパウチ110を第2側面部513の凹部513aに嵌め込む。このとき、インクパウチ110の鉛直下方側の辺110bが、載置底面513dにより下方から受け止められる。この状態で、オペレータは、締結部材を再び締め付けることにより、第1側面部512を第2側面部513に対して取り付ける。これにより、インクパウチ110は、一対の側面により両側から挟まれた状態となる。
【0069】
そうすると、インクパウチ110からの水圧によって、インク配管54を介して、各インクノズル211にインクが供給される。この際、インク供給ユニット50においては、吐出面210の位置と、インクパウチ保持部51の位置との、鉛直方向における相対関係が適切に設定されている。具体的には、吐出面210の鉛直方向における位置の方が、インクパウチ保持部51に保持されるインクパウチ110内のインクの重心位置よりも、所定量だけ高くなるよう設定されている。そのため、吐出面210からインク滴が滴り落ちてしまう虞が無い。すなわち、各インクノズル211では、適正なメニスカスが保持される。しかも、吐出面210の位置と、インクパウチ保持部51の位置との、鉛直方向における相対関係が適正に設定されているので、記録ヘッド21からインクパウチ110の方にインクが逆流してしまう虞も少ない。
【0070】
上記のような構成により、本実施形態の錠剤印刷装置1では、インクパウチ110内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面210の鉛直方向における位置と、の差が許容範囲に保たれるので、インク配管54の途中にポンプ等を設けなくても、水頭差を利用して、インクノズル211へインクを供給することができる。
【0071】
印刷を行う際には、水平移動機構64によって、記録ヘッド21を搬送ベルト12の上方の位置に配置した状態にして、制御部40からの指令に応じて上述のピエゾ素子に電圧を加えることにより、インクノズル211からインク滴を吐出させる。
【0072】
ここで、印刷が行われることにより、インクノズル211でインク滴が消費されると、インクパウチ110の水平方向の厚みが次第に薄くなる。詳述すると、インクパウチ110の上部において、軟包材の表面と裏面とが次第に近接した状態となることで、インクパウチ110の水平方向の厚みが、インクの消費量が増えるほど薄くなる。そのため、インクが消費されても、インクパウチ110内のインクの液面位置は、大幅には変動しない。すなわち、仮にインク供給源として一般的なインクタンクを用いた場合、インクが消費されるに従ってインクタンク内のインクの液面位置はリニアに下降するが、本実施形態のようにインク供給源としてインクパウチ110を用いた場合には、インクの液面位置の下降の速度は緩やかとなる。よって、印刷処理が進行しても、インクパウチ110内のインクの液面と、吐出面210との水頭差を、長期にわたって許容範囲内に保つことができる。その結果、インクの補充等のために印刷処理を頻繁に中断しなくてもよく、効率的に印刷を行うことが可能である。
【0073】
特に、本実施形態では、インクパウチ保持部51に取り付けられたインクパウチ110の鉛直下方側の辺110bは、パウチ口110aに近づくにつれて鉛直下方側に下がる形状となっている。詳述すると、インクパウチ110は、下方に向けて先細りの形状となっており、下端部に向かうほど、貯留されるインクの量が少なくなる。そのため、下端部が先細り形状でないインクパウチを用いた場合と比較して、インクの残存量が同じ場合のインクの液面位置が高くなる。したがって、インクの液面位置が、上述した水頭差が許容範囲となる高さに維持される時間を、より長くすることができる。よって、印刷処理が進行しても、インクパウチ110内のインクの液面と、吐出面210との水頭差を長期にわたって適正に保つことができる。また、辺110bおよび載置底面513dの形状により、インクパウチ110内でのインクの排出口514側への移動を促進できる。図5中に、インクが移動する方向を白抜き矢印で示している。このため、インクパウチ110内のインクが残り少なくなったときに、残存するインクが鉛直方向に分断されてしまうといった事態が生じ難くなる。
【0074】
インクパウチ110内のインクの残量が少なくなったら、上述と同様の方法により、インクパウチ保持部51の第1側面部512を着脱して新しいインクパウチ110に付け替えることが可能である。
【0075】
ところで、従来、インクパウチ内のインクの残量が少なくなる等してインクパウチを着脱するときに、インク配管に気泡が混入してしまう場合があった。インク配管に大きな気泡が混入すると、脱気フィルター等により脱気することが困難であり、この気泡が原因で印字抜け等の印刷不良が生じる虞があった。この点、本実施形態では、排出口514の傾きや、排出口514と第2配管543との位置関係を、適正化することにより、気泡がインク配管54に混入してしまうことを阻止している。
【0076】
具体的には、排出口514と、第2配管543の短辺と、が水平方向に対して傾いた傾斜直線状に接続され、しかも排出口514の方が高い位置に配置されている。このため、インクパウチ110の着脱時に混入した気泡は、第2配管543の側ではなく、排出口514の基端部側へと流れる。すなわち、排出口514の鉛直方向における位置が、インク配管54の鉛直方向における最下点となる曲折部543aの鉛直方向における位置よりも高い。このため、インクよりも比重が軽い気泡は、排出口514の方へと自然と流れる。
【0077】
<3.まとめ>
以上に示したように、本実施形態に係る錠剤印刷装置(印刷装置)1に備えられるインク供給ユニット(インク供給部)50は、記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51と、インク配管54とを備える。インクパウチ保持部51は、インクパウチ110内のインクを記録ヘッド21に向けて排出する筒状の排出口514を備える。排出口514は、水平方向に対して傾斜して配置される。排出口514の先端部は、インクパウチ110から離れるにつれて鉛直下方に向かう。これにより、インクパウチ110の着脱時に排出口514の付近に混入した気泡が、排出口514を通って、インクパウチ110の内部へと逃げ易くなる。よって、気泡に起因する印字抜け等の印刷不良の発生を抑制できる。
【0078】
また、本実施形態に係るインク供給ユニット50においては、インク配管54(第2配管543)の他端は、排出口514の先端部と一直線に接続される。これにより、インクパウチ110の着脱時に排出口514の付近に混入した気泡が、インク配管54の内部よりも、排出口514を介してインクパウチ110の内部へと逃げ易くなる。
【0079】
また、本実施形態に係るインク供給ユニット50においては、インク配管54の中途部であって、内部流路が方向変換する曲折部543aは、排出口514よりも鉛直下方側に位置する。これにより、インクパウチ110の着脱時に排出口514の付近に混入した気泡が、インクパウチ110の内部へとより逃げ易くなる。
【0080】
また、本実施形態に係るインク供給ユニット50においては、曲折部543aは、インク配管54のうち最も鉛直下方側に位置する。これにより、インクパウチ110の着脱時に排出口514の付近に混入した気泡が、インクパウチ110の内部へとより一層逃げ易くなる。
【0081】
また、本実施形態に係るインク供給ユニット50においては、排出口514は、記録ヘッド21の吐出面210よりも鉛直下方側に位置する。これにより、例えば、吐出面210の鉛直方向における位置が、インクパウチ110内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置よりも、所定量だけ高くなるように、排出口514と吐出面210との鉛直方向における位置関係を設定することにより、インクノズル内におけるメニスカスを適正に保持することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態に係るインクパウチ保持部51は、載置底面513dから鉛直上方に延びる一対の側面を有する。インクパウチ110は、この一対の側面により両側から挟まれる。これにより、インクパウチ110を載置底面513dで下方から受けるとともに、一対の側面で両側から挟む。そうすると、インクパウチ110の水平方向の厚みを、インクが消費されるにつれて徐々に薄くすることが容易となる。これにより、インクが消費されても、インクパウチ110内のインクの液面位置があまり変動しなくなる。
【0083】
また、本実施形態に係るインク供給ユニット50においては、載置底面513dは、排出口514に近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜平面状である。これにより、インクパウチ110内でのインクの排出口514側への移動を促進できるので、インクパウチ110内のインクの残量が少なくなったときに、残存するインクが鉛直方向に分断されてしまうといった事態が生じ難くなる。
【0084】
また、本実施形態に係るインクパウチ保持部51は、図5に示すように、鉛直方向よりも、水平方向に長い形状を有する。これにより、吐出面210の鉛直方向における位置と、インクパウチ110内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置と、の差が、所定の許容範囲(理想の水頭差)となる領域に、大容量のインクを搭載することができる。その結果、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度をより少なく抑えることができ、連続的に印刷を行うことができる。
【0085】
さらに、本実施形態に係るインク供給ユニット50においては、一端部に記録ヘッド21が支持されるとともに、他端部にインクパウチ保持部51が支持される、支持部材53をさらに備える。これにより、インクパウチ110内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面210の鉛直方向における位置と、の差が、許容範囲内に保たれるように、予め位置決めされた状態に配置することが容易となる。
【0086】
さらに、本実施形態に係るインク供給ユニット50においては、記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51と、インク配管54と、支持部材53とを含むユニットが、錠剤印刷装置1のその他の構成に対して、一体的に着脱可能である。これにより、吐出面210の位置と、インクパウチ保持部51の位置と、インク配管54の位置と、の鉛直方向における相対関係が適正に設定された状態のインク供給ユニット50を、ユニット化して取り扱うことが可能となる。よって、例えば異なる種類のインクごとにこのようなユニットを予め準備しておくことで、ユニットを着脱して付け替えることで複数種類のインクを使い分けて印刷することが可能となる。
【0087】
<4.変形例について>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したものに対し種々の変更を行うことが可能である。
【0088】
上記の実施形態では、インクパウチ110は、搬送方向にみたときに矩形状としたが、これに限るものではなく、例えば、インクパウチの形状を、搬送方向にみたときに台形状や、三角形状などとしてもよい。
【0089】
上記の実施形態では、インクパウチ保持部51には、所定の形状(容量)のインクパウチ110を取付け可能であるものとしたが、これに限定されない。上記に代えて、インクパウチ保持部51に、異なる容量のインクパウチが選択的に取り付けられることにしてもよい。
【0090】
上記の実施形態では、インクパウチ保持部51の第2側面部513にのみ、インクパウチ110を収容する凹部513aが設けられているとしたが、これに限らない。上記に代えて、インクパウチ保持部51の第1側面部512および第2側面部513の両方に、インクパウチ110を収容する凹部が設けられていることにしてもよい。
【0091】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 錠剤印刷装置
9 錠剤
10 錠剤搬送機構
14 吸着孔
15 吸引機構
16 ブロー機構
20 印刷部
21 記録ヘッド
40 制御部
50 インク供給ユニット(インク供給部)
51 インクパウチ保持部
53 支持部材
54 インク配管
60 インク供給ユニット移動機構
62 上下移動機構
63 移動ステージ
64 水平移動機構
91 搬入機構
92 搬出機構
95 隔壁
110 インクパウチ
110a パウチ口
110b 辺
210 吐出面
211 インクノズル
512 第1側面部
513 第2側面部
513a 凹部
513d 載置底面
514 排出口
541 第1配管
542 継手部
543 第2配管
543a 曲折部

図1
図2
図3
図4
図5