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特許7326102保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230807BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20230807BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20230807BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20230807BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230807BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230807BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230807BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/10
C09J7/24
C09J7/25
C09J7/35
C09J11/04
C09J11/06
C09J201/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019184720
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021061323
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】野島 一馬
(72)【発明者】
【氏名】米山 裕之
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131850(WO,A1)
【文献】特開2013-194102(JP,A)
【文献】特開2015-032644(JP,A)
【文献】特開2019-059879(JP,A)
【文献】特開2018-127571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/10
C09J 7/24
C09J 7/25
C09J 7/35
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップの裏面に保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムであって、
前記保護膜の波長2000~3200nm(ただし、2701~2999nmを除く)における吸光度の最大値Xmaxと、前記保護膜の150℃における比熱S150と、を用いて、式:
150=Xmax/S150
により算出されるZ150が、0.12以上であり、かつ、
前記Xmaxと、前記保護膜の200℃における比熱S200と、を用いて、式:
200=Xmax/S200
により算出されるZ200が、0.11以上である、保護膜形成用フィルム。
【請求項2】
前記保護膜形成用フィルムが熱硬化性又はエネルギー線硬化性である、請求項1に記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項3】
前記保護膜形成用フィルムが、可視光及び赤外線のいずれか一方又は両方を吸収可能な光吸収剤を、2種以上含有する、請求項1又は2に記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項4】
前記保護膜形成用フィルムが炭素材料を含有する、請求項1又は2に記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項5】
前記保護膜の、波長400~750nmの光の透過率の最小値Tが、15%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項6】
前記保護膜の、波長2000~2600nmの光の反射率の最大値Uが、20%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項7】
支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、を備え、
前記保護膜形成用フィルムが、請求項1~6のいずれか一項に記載の保護膜形成用フィルムである、保護膜形成用複合シート。
【請求項8】
前記支持シートが、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、
前記粘着剤層が、前記基材と、前記保護膜形成用フィルムと、の間に配置されている、請求項7に記載の保護膜形成用複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや絶縁体ウエハ等のウエハには、その一方の面(回路面)に回路が形成されており、さらにその面(回路面)上にバンプ等の突状電極を有するものがある。このようなウエハは、分割によりチップとされ、その突状電極が回路基板上の接続パッドに接続されることにより、前記回路基板に搭載される。
このようなウエハやチップにおいては、クラックの発生等の破損を抑制するために、回路面とは反対側の面(裏面)を、保護膜で保護することがある(特許文献1~2参照)。
【0003】
このような保護膜を形成するためには、半導体ウエハの裏面に、保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムを貼付するが、このとき、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた前記保護膜形成用フィルムと、を備えて構成された保護膜形成用複合シートを使用できる。支持シートは、保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えたウエハを、チップへと分割するときに、このウエハ固定するためのダイシングシートとして利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-32644号公報
【文献】国際公開第2015/146936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、チップが搭載された回路基板は、基板装置として各種電子部品で利用されるが、チップの突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度を向上させることで、より信頼性が高い基板装置を作製できる。
これに対して、特許文献1~2には、このような接続強度をさらに向上させるための手段については、開示されていない。
【0006】
本発明は、チップの裏面に保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートとして、チップの突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度の向上を可能とするものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、チップの裏面に保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムであって、
前記保護膜の波長2000~3200nm(ただし、2701~2999nmを除く)における吸光度の最大値Xmaxと、前記保護膜の150℃における比熱S150と、を用いて、式:
150=Xmax/S150
により算出されるZ150が、0.12以上であり、かつ、
前記Xmaxと、前記保護膜の200℃における比熱S200と、を用いて、式:
200=Xmax/S200
により算出されるZ200が、0.11以上である、保護膜形成用フィルムを提供する。
本発明の保護膜形成用フィルムは、熱硬化性又はエネルギー線硬化性であってもよい。
【0008】
本発明の保護膜形成用フィルムは、可視光及び赤外線のいずれか一方又は両方を吸収可能な光吸収剤を、2種以上含有してもよい。
本発明の保護膜形成用フィルムは、炭素材料を含有してもよい。
本発明の保護膜形成用フィルムにおいては、前記保護膜の、波長400~750nmの光の透過率の最小値Tが、15%以下であることが好ましい。
本発明の保護膜形成用フィルムにおいては、前記保護膜の、波長2000~2600nmの光の反射率の最大値Uが、20%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明は、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、を備え、前記保護膜形成用フィルムが、前記本発明の保護膜形成用フィルムである、保護膜形成用複合シートを提供する。
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、前記支持シートが、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記粘着剤層が、前記基材と、前記保護膜形成用フィルムと、の間に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、チップの裏面に保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートとして、チップの突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度の向上を可能とするものが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムを用いた場合の、保護膜付きチップと回路基板との接続状態の一例を、模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
◇保護膜形成用フィルム
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、チップの裏面に保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムであって、前記保護膜の波長2000~3200nm(ただし、2701~2999nmを除く)における吸光度の最大値Xmaxと、前記保護膜の150℃における比熱S150と、を用いて、式:
150=Xmax/S150
により算出されるZ150が、0.12以上であり、かつ、
前記Xmaxと、前記保護膜の200℃における比熱S200と、を用いて、式:
200=Xmax/S200
により算出されるZ200が、0.11以上である。
本実施形態の保護膜形成用フィルムは、例えば、後述するように、支持シートと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0013】
本実施形態の保護膜形成用フィルムは、チップの裏面に保護膜を設けて、チップを保護するために用いるフィルムである。
前記保護膜形成用フィルムは、軟質であり、チップへと分割する前のウエハに対して貼付できる。
【0014】
本実施形態の保護膜形成用フィルムは、硬化性であってもよいし、非硬化性であってもよい。すなわち、前記保護膜形成用フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。
硬化性の保護膜形成用フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。
【0015】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
また、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。非硬化性の保護膜形成用フィルムは、目的とする対象物に設けられた(形成された)段階以降、保護膜であるとみなす。
【0016】
本明細書において、「ウエハ」とは、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
これらウエハの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のウエハの面を「回路面」と称する。そして、ウエハの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ウエハは、ダイシング等の手段により分割され、チップとなる。本明細書においては、ウエハの場合と同様に、回路が形成されている側のチップの面を「回路面」と称し、チップの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ウエハの回路面とチップの回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられている。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0017】
本実施形態の保護膜形成用フィルム、又はこれを備えた保護膜形成用複合シートを用いることにより、裏面に保護膜を備えたチップ(本明細書においては、「保護膜付きチップ」と称することがある)を製造できる。
【0018】
さらに、前記保護膜付きチップを用いることにより、基板装置を製造できる。
本明細書において、「基板装置」とは、保護膜付きチップが、その回路面上の突状電極において、回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続されて、構成されたものを意味する。例えば、ウエハとして半導体ウエハを用いた場合であれば、基板装置としては半導体装置が挙げられる。
基板装置の製造過程では、セラミックヒーターを搭載したリフロー炉を用いて、保護膜付きチップが搭載された回路基板を加熱することにより、保護膜付きチップ上の突状電極を融解させ、突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続を強固にすることがある。
【0019】
本実施形態の保護膜形成用フィルムから得られた保護膜は、Z150が0.12以上であり、かつ、Z200が0.11以上であることにより、前記加熱の際に、近赤外線及び中赤外線の吸収量が多く、通常よりも加熱時の温度が高くなる、そのため、より高温となったこの保護膜の作用により、保護膜付きチップ上の突状電極もより高温となり、その影響で突状電極が融解し易く、結果として、前記突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度が、通常よりも強固となる。
このようなチップが搭載された回路基板を用いることにより、信頼性がより高い基板装置を作製できる。
【0020】
前記保護膜のZ150(=Xmax/S150)は、150℃での保護膜の温度上昇のし易さを表す指標であり、0.12以上であり、例えば、0.3以上、0.5以上、0.7以上、0.9以上、1.1以上、1.3以上、1.5以上、1.7以上、及び1.9以上のいずれかであってもよい。Z150が前記下限値以上であることで、前記突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度が、より強固となる。
【0021】
150の上限値は、特に限定されない。Z150の上記の条件を満たす保護膜の形成がより容易である点では、Z150は3以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.6以下であることがさらに好ましい。
【0022】
150は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、Z150は、0.12~3であることが好ましく、例えば、0.3~3、0.5~3、0.7~3、0.9~3、1.1~3、1.3~3、1.5~3、1.7~3、及び1.9~3のいずれかであってもよい。ただし、これらは、Z150の一例である。
【0023】
前記保護膜のZ200(=Xmax/S200)は、200℃での保護膜の温度上昇のし易さを表す指標であり、0.11以上であり、例えば、0.3以上、0.5以上、0.7以上、0.9以上、1.1以上、1.3以上、1.5以上、1.7以上、及び1.9以上のいずれかであってもよい。Z200が前記下限値以上であることで、前記突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度が、より強固となる。
【0024】
200の上限値は、特に限定されない。Z200の上記の条件を満たす保護膜の形成がより容易である点では、Z200は3以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.6以下であることがさらに好ましく、2.4以下であることが特に好ましい。
【0025】
200は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、Z200は、0.11~3であることが好ましく、例えば、0.3~3、0.5~3、0.7~3、0.9~3、1.1~3、1.3~3、1.5~3、1.7~3、及び1.9~3のいずれかであってもよい。ただし、これらは、Z200の一例である。
【0026】
本実施形態の保護膜形成用フィルムを、保護膜の150℃と200℃における比熱を用いて特定する理由は、保護膜付きチップが搭載された回路基板を加熱するときに、250℃以上という高温で加熱するが、そのときに150℃、200℃という温度での加熱を、保護膜付きチップが必ず経るからである。
【0027】
前記保護膜の波長2000~3200nm(ただし、2701~2999nmを除く)における吸光度の最大値Xmaxは、上述のZ150及びZ200の条件を満たす限り、特に限定されない。
maxは、0.1以上であることが好ましく、例えば、0.4以上、0.7以上、1以上、1.3以上、1.6以上、1.9以上、及び2.2以上のいずれかであってもよい。
maxは、3.5以下であることが好ましく、例えば、3以下、2.5以下、2以下、1.5以下、1以下、及び0.5以下のいずれかであってもよい。Xmaxが前記上限値以下である前記保護膜は、その形成がより容易であり、また、近赤外線又は中赤外線が照射されたときに、照射部位の面とその近傍だけが瞬時に急加熱され、その結果、照射部位の面が変色したり、粗面化されたりする現象を高度に抑制できる。
【0028】
maxは、上述のいずれかの下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、Xmaxは、0.1~3.5であることが好ましく、例えば、0.4~3.5、0.7~3.5、1~3.5、1.3~3.5、1.6~3.5、1.9~3.5、及び2.2~3.5のいずれかであってもよい。ただし、これらはXmaxの一例である。
【0029】
maxを特定するにあたって、波長2701~2999nmにおける吸光度を対象外とする理由は、この波長域の光を大気が吸収し易く、この波長域で保護膜の吸光度を正確に測定することが困難なためである。
maxは、前記保護膜の、2000nm以上2701nm未満及び2999nm超3200nm以下の波長域での吸光度の最大値である。
【0030】
前記保護膜の150℃における比熱S150は、上述のZ150の条件を満たす限り、特に限定されない。
150は、1以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、例えば、1.2以上であってもよい。
150は、2以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましく、1.8以下であることがさらに好ましく、例えば、1.65以下、及び1.5以下のいずれかであってもよい。
【0031】
150は、上述のいずれかの下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、S150は、1~2であることが好ましく、1~1.9であることがより好ましく、1~1.8であることがさらに好ましく、例えば、1~1.65、及び1~1.5のいずれかであってもよい。ただし、これらはS150の一例である。
【0032】
前記保護膜の200℃における比熱S200は、上述のZ200の条件を満たす限り、特に限定されない。
200は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、例えば、1.3以上であってもよい。
200は、2.1以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.9以下であることがさらに好ましく、例えば、1.7以下、及び1.55以下のいずれかであってもよい。
【0033】
200は、上述のいずれかの下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、S200は、1.1~2.1であることが好ましく、1.1~2であることがより好ましく、1.1~1.9であることがさらに好ましく、例えば、1.1~1.7、及び1.1~1.5のいずれかであってもよい。ただし、これらはS200の一例である。
【0034】
150及びS200は、JIS K 7123:2012に準拠して、示差走査熱量計を用い、昇温速度を10℃/minとして得られた、保護膜の示差走査熱量の測定値から算出できる。
【0035】
前記保護膜の、波長400~750nmの光の透過率の最小値Tは、特に限定されないが、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましく、4%以下であることが特に好ましい。Tが前記上限値以下であることで、保護膜の存在の有無が、より容易に視認可能となる。
の下限値は特に限定されず、例えば、Tは0%以上であってもよい。
【0036】
前記保護膜の、波長2000~2600nmの光の反射率の最大値Uは、特に限定されないが、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、12%以下であることがさらに好ましい。Uが前記上限値以下であることで、上述の保護膜付きチップが搭載された回路基板を加熱したときに、保護膜の温度を容易に上昇させることができる。また、保護膜付きチップを用いたときに、近赤外線又は中赤外線反射センサ等の、近赤外線又は中赤外線を利用する装置が誤作動することを抑制できる。
の下限値は特に限定されず、例えば、Uは0%以上であってもよい。Uの上記の条件を満たす保護膜の形成がより容易である点では、Uは0.2%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましく、1%以上であることがさらに好ましい。
保護膜の光の反射率は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0037】
本実施形態において、上述のXmax、S150及びS200を規定する保護膜は、保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合には、保護膜形成用フィルムを145℃で2時間加熱処理することにより得られた硬化物であることが好ましく、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合には、照度280mW/cm、光量260mJ/cmの条件で、保護膜形成用フィルムにエネルギー線を2回照射することにより得られた硬化物であることが好ましい。
一方、保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、上述のXmax、S150及びS200を規定する保護膜は、保護膜形成用フィルムそのものである。
【0038】
本実施形態において、上述のZ150を算出するときには、Xmax及びS150としては、同一種の保護膜を用いて測定したものを採用する。同様に、上述のZ200を算出するときには、Xmax及びS200としては、同一種の保護膜を用いて測定したものを採用する。
【0039】
保護膜形成用フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成する場合には、エネルギー線の照射によって硬化させる場合とは異なり、保護膜形成用フィルムは、その厚さが厚くなっても、加熱によって十分に硬化するため、保護性能が高い保護膜を形成できる。また、加熱オーブン等の通常の加熱手段を用いることによって、多数の保護膜形成用フィルムを一括して加熱し、熱硬化させることができる。
保護膜形成用フィルムを、エネルギー線の照射によって硬化させて、保護膜を形成する場合には、熱硬化させる場合とは異なり、保護膜形成用複合シートは耐熱性を有する必要がなく、幅広い範囲の保護膜形成用複合シートを構成できる。また、エネルギー線の照射によって、短時間で硬化させることができる。
保護膜形成用フィルムを硬化させずに保護膜として用いる場合には、硬化工程を省略できるため、簡略化された工程で保護膜付きチップを製造できる。
【0040】
前記保護膜形成用フィルムは、熱硬化性又はエネルギー線硬化性であることが好ましい。
【0041】
前記保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成用フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
保護膜形成用フィルムが2層以上の複数層からなる場合には、各層間の密着性が劣っていたり、各層の伸縮のし易さの相違に基づいて、保護膜に反りが生じ、保護膜がチップの裏面から剥離する、などの不具合が生じる可能性があり、このような不具合が抑制される点では、保護膜形成用フィルムは、1層からなるものが好ましい。
【0042】
本明細書においては、保護膜形成用フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0043】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることが特に好ましく、例えば、10~50μm、15~40μm、17~38μm、及び20~30μmのいずれかであってもよい。保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成でき、また、吸光度が高い保護膜の形成がより容易である。保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられ、また、温度上昇時の保護膜の温度が、チップへと伝導し易くなる。
ここで、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルムの厚さとは、保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0044】
<<保護膜形成用組成物>>
保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0045】
熱硬化性保護膜形成用フィルムは、熱硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、非硬化性保護膜形成用フィルムは、非硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。なお、本明細書においては、保護膜形成用フィルムが、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有する場合、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムの熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムを熱硬化性のものとして取り扱う。反対に、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムをエネルギー線硬化のものとして取り扱う。
【0046】
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0047】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、熱硬化性保護膜形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性保護膜形成用フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0048】
以下、熱硬化性保護膜形成用フィルム、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム及び非硬化性保護膜形成用フィルムについて、順次説明する。
【0049】
◎熱硬化性保護膜形成用フィルム
熱硬化性保護膜形成用フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、熱硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、110~170℃であることがより好ましく、120~150℃であることが特に好ましい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、0.5~4時間であることがより好ましく、1~3時間であることが特に好ましい。
熱硬化によって形成後の保護膜は、常温まで徐冷することが好ましい。徐冷方法は特に限定されず、放冷であってもよい。
【0050】
常温の保護膜形成用フィルムを、常温を超える温度になるまで加熱し、次いで常温になるまで冷却することにより、加熱・冷却後の保護膜形成用フィルムとし、加熱・冷却後の保護膜形成用フィルムの硬さと、加熱前の保護膜形成用フィルムの硬さと、を同じ温度で比較したとき、加熱・冷却後の保護膜形成用フィルムの方が硬い場合には、この保護膜形成用フィルムは、熱硬化性である。
【0051】
好ましい熱硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)及び光吸収剤(I)を含有するものが挙げられる。
重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。
熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0052】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)>
好ましい熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)及び光吸収剤(I)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)(本明細書においては、単に「組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0053】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性、可撓性、靱性、展延性等を付与し、保護膜に可撓性、靱性、展延性等を付与するための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0054】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0055】
重合体成分(A)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0056】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルム及びその硬化物の被着体との接着力が向上する。
【0057】
アクリル系樹脂がm種(mは2以上の整数である。)の構成単位を有し、これら構成単位を誘導するm種のモノマーに対して、それぞれ1からmまでのいずれかの重複しない番号を順次割り当てて、「モノマーm」と名付けた場合、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、以下に示すFoxの式を用いて算出できる。
【0058】
【数1】
(式中、Tgはアクリル系樹脂のガラス転移温度であり;mは2以上の整数であり;Tgはモノマーmのホモポリマーのガラス転移温度であり;Wはアクリル系樹脂における、モノマーmから誘導された構成単位mの質量分率であり、ただし、Wは下記式を満たす。)
【0059】
【数2】
(式中、m及びWは、前記と同じである。)
【0060】
前記Tgとしては、高分子データ・ハンドブック、粘着ハンドブック又はPolymer Handbook等に記載されている値を使用できる。例えば、アクリル酸メチルのホモポリマーのTgは10℃であり、メタクリル酸メチルのホモポリマーのTgは105℃であり、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのホモポリマーのTgは-15℃である。
【0061】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーと、の共重合体等が挙げられる。
【0062】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0063】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0064】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0065】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0066】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0067】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0068】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0069】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0070】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合)は、重合体成分(A)の種類によらず、5~80質量%であることが好ましく、8~70質量%であることがより好ましく、11~60質量%であることがさらに好ましく、14~50質量%であることが特に好ましく、例えば、17~45質量%、及び20~40質量%のいずれかであってもよい。
保護膜形成用フィルム及び保護膜は、通常、厚さが薄いため、靱性が低くて脆い保護膜形成用フィルム又は保護膜を用いた場合には、保護膜付きチップの製造時に、保護膜形成用フィルム又は保護膜に割れ(間隙)が発生してしまう。その場合、最終的に製造された保護膜付きチップを加熱したときに、高温になった保護膜からの、チップ上の突状電極への伝熱効果が低下してしまう可能性がある。しかし、前記割合が前記下限値以上であることで、保護膜形成用フィルム及び保護膜の靱性がより高くなり、このような不具合を抑制する効果が高くなる。
【0071】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III-1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0072】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化させるための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0073】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン系硬化性樹脂、不飽和ポリエステル系硬化性樹脂、シリコーン系硬化性樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0074】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0075】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0076】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0077】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0078】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに、その硬化物である保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0079】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0080】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0081】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0082】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
【0083】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0084】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0085】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、0.1~200質量部であることがより好ましく、0.1~100質量部であることがさらに好ましく、0.5~50質量部であることが特に好ましく、例えば、0.5~25質量部、0.5~10質量部、及び0.5~5質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0086】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましく、20~150質量部であることがより好ましく、例えば、30~100質量部、40~80質量部、及び50~70質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0087】
[光吸収剤(I)]
光吸収剤(I)は、保護膜中に存在している状態で、光を吸収することによって、保護膜の温度上昇を容易とする成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが、光吸収剤(I)を含有していることにより、保護膜のXmaxがより大きくなり、Z150及びZ200を大きくすることがより容易となる。また、保護膜の、波長400~750nmの光の透過率が小さくなることによって、保護膜の存在の有無を容易に視認できる。
【0088】
光吸収剤(I)としては、例えば、有機色素、無機顔料等が挙げられる。
【0089】
前記有機色素としては、例えば、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、スピロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0090】
前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック等の炭素材料;ランタン系材料;スズ系材料;アンチモン系材料;タングステン系材料等が挙げられる。ここで、ランタン系材料、スズ系材料、アンチモン系材料、タングステン系材料とは、それぞれ、ランタンを含む材料、スズを含む材料、アンチモンを含む材料、タングステンを含む材料を意味する。
これらの中でも、前記無機顔料は、分散性に比較的優れ、また、熱によるそれ自体の変質が少ないという観点では、炭素材料であることが好ましく、カーボンブラックであることがより好ましい。
【0091】
光吸収剤(I)は、可視光及び赤外線のいずれか一方又は両方を吸収可能であることが好ましい。
【0092】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光吸収剤(I)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。例えば、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、光吸収剤(I)として、有機色素のみを1種又は2種以上含有していてもよいし、無機顔料のみを1種又は2種以上含有していてもよいし、有機色素及び無機顔料をともに1種又は2種以上含有していてもよい。
【0093】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、可視光及び赤外線のいずれか一方又は両方を吸収可能な光吸収剤(I)を、2種以上含有することが好ましく、2~7種含有することがより好ましい。
【0094】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、光吸収剤(I)として、無機顔料を含有する場合、炭素材料を含有することが好ましく、その場合、例えば、炭素材料及び有機色素をともに含有していてもよい。
【0095】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、光吸収剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、光吸収剤(I)の含有量の割合)は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.3~17.5質量%であることがより好ましく、0.5~16質量%であることがさらに好ましく、1~15質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、光吸収剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、光吸収剤(I)の過剰使用が抑制される。
【0096】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0097】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0098】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成用フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付きチップの信頼性がより向上する。
【0099】
[充填材(D)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムとその硬化物(すなわち保護膜)は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付きチップの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0100】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、ステンレス鋼、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ、アルミナ又はステンレス鋼であることが好ましい。アルミナを用いた場合には、保護膜のS150及びS200の調節が、より容易となり、また、保護膜に絶縁性が求められる場合には、保護膜への絶縁性の付与がより容易となる。ステンレス鋼を用いた場合には、保護膜のS150及びS200の調節が、特に容易となる。
【0101】
充填材(D)の平均粒子径は、特に限定されないが、10~4000nmであることが好ましく、30~3500nmであることがより好ましい。充填材(D)の平均粒子径がこのような範囲であることで、充填材(D)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。
例えば、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルム中での充填材(D)の量を容易に増大させることができ、保護膜のS150及びS200の調節が、より容易となる点では、充填材(D)の平均粒子径は、10~2500nmであることが好ましく、20~1000nmであることがより好ましく、30~600nmであることがさらに好ましい。
一方、いずれの場合も、平均粒子径が前記下限値以上である充填材(D)は、取り扱い性が良好であり、そのため、組成物(III-1)の品質が安定し、保護膜を用いたことによる効果を安定して得られる点で有利である。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0102】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0103】
充填材(D)を用いる場合、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合)は、15~75質量%であることが好ましく、18~70質量%であることがより好ましく、例えば、45~70質量%、50~70質量%、及び60~70質量%のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の、熱硬化性保護膜形成用フィルムとその硬化物(すなわち保護膜)の熱膨張係数の調節や、保護膜のS150及びS200の調節が、より容易となる。
【0104】
[カップリング剤(E)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化物は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0105】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0106】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0107】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0108】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0109】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0110】
重合体成分(A)として、上述の官能基を有するアクリル系樹脂等を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、架橋剤(F)として、加熱によって前記官能基と反応する架橋剤を含有していてもよい。加熱によって前記官能基と反応する架橋剤としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化したブロックイソシアネート系化合物、エステル交換反応性を有する多官能化合物等が挙げられる。
【0111】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0112】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III-1)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0113】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0114】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0115】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0116】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0117】
重合に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0118】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0119】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III-1)において、組成物(III-1)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0120】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0121】
組成物(III-1)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、光重合開始剤(H)としては、例えば、アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0122】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0123】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III-1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0124】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤等が挙げられる。
【0125】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0126】
[溶媒]
組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0127】
組成物(III-1)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(III-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0128】
組成物(III-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0129】
<熱硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(III-1)等の熱硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0130】
◎エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムをエネルギー線硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、60~320mW/cmであることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cmであることが好ましい。
【0131】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、エネルギー線硬化性成分(a)及び光吸収剤を含有するものが挙げられ、エネルギー線硬化性成分(a)、光吸収剤及び充填材を含有するものが好ましい。
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0132】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)>
好ましいエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)及び光吸収剤を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)(本明細書においては、単に「組成物(IV-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0133】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0134】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0135】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、ウエハやチップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0136】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0137】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0138】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0139】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0140】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0141】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0142】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0143】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0144】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0145】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0146】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に調節可能となる。
【0147】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0148】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合)は、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0149】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0150】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が、その1分子中に有する前記エネルギー線硬化性基の数は、特に限定されず、例えば、目的とする保護膜に求められる収縮率等の物性を考慮して、適宜選択できる。
例えば、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0151】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0152】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0153】
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの硬化物の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0154】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0155】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0156】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0157】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0158】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0159】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、組成物(IV-1)においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0160】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0161】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0162】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0163】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0164】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0165】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0166】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、先に説明した、アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマー(アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)と同じものが挙げられる。
【0167】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0168】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0169】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0170】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、ウエハやチップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0171】
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0172】
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0173】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0174】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0175】
組成物(IV-1)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0176】
組成物(IV-1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、組成物(IV-1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0177】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量の前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0178】
[光吸収剤]
前記光吸収剤は、保護膜中に存在している状態で、光を吸収することによって、保護膜の温度上昇を容易とする成分である。
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが、光吸収剤を含有していることにより、保護膜のXmaxがより大きくなり、Z150及びZ200を大きくすることがより容易となる。
【0179】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記光吸収剤は、先に説明した組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光吸収剤(I)と同じである。
【0180】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの光吸収剤の含有の態様は、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの光吸収剤(I)の含有の態様と同様であってよい。
【0181】
例えば、組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光吸収剤は、可視光及び赤外線のいずれか一方又は両方を吸収可能であることが好ましい。
【0182】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光吸収剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。例えば、組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、光吸収剤として、有機色素のみを1種又は2種以上含有していてもよいし、無機顔料のみを1種又は2種以上含有していてもよいし、有機色素及び無機顔料をともに1種又は2種以上含有していてもよい。
【0183】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、可視光及び赤外線のいずれか一方又は両方を吸収可能な光吸収剤を、2種以上含有することが好ましく、2~7種含有することがより好ましい。
【0184】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、光吸収剤として、無機顔料を含有する場合、炭素材料を含有することが好ましく、炭素材料及び有機色素をともに含有することがより好ましい。
【0185】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、光吸収剤の含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、光吸収剤の含有量の割合)は、0.1~20質量%であってよい。前記割合が前記下限値以上であることで、光吸収剤を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、光吸収剤の過剰使用が抑制される。
【0186】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、目的に応じて、前記エネルギー線硬化性成分(a)と、前記重合体(b)と、前記光吸収剤と、のいずれにも該当しない、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0187】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III-1)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0188】
例えば、組成物(IV-1)が熱硬化性成分を含有する場合、このような組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、このエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
【0189】
組成物(IV-1)において、前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0190】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0191】
組成物(IV-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV-1)が含有する溶媒としては、例えば、組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
組成物(IV-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0192】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(IV-1)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0193】
◎非硬化性保護膜形成用フィルム
好ましい非硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂、光吸収剤及び充填材を含有するものが挙げられる。
【0194】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)>
好ましい非硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記熱可塑性樹脂、光吸収剤及び充填材を含有する非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)(本明細書においては、単に「組成物(V-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0195】
[熱可塑性樹脂]
前記熱可塑性樹脂は、特に限定されない。
前記熱可塑性樹脂として、より具体的には、例えば、上述の組成物(III-1)の含有成分として挙げた、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等の、硬化性ではない樹脂と同様のものが挙げられる。
【0196】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0197】
組成物(V-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合)は、25~75質量%であることが好ましい。
【0198】
[光吸収剤]
前記光吸収剤は、保護膜中に存在している状態で、光を吸収することによって、保護膜の温度上昇を容易とする成分である。
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが、光吸収剤を含有していることにより、保護膜のXmaxがより大きくなり、Z150及びZ200を大きくすることがより容易となる。
【0199】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記光吸収剤は、先に説明した組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光吸収剤(I)と同じである。
【0200】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムの光吸収剤の含有の態様は、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの光吸収剤(I)の含有の態様と同様であってよい。
【0201】
例えば、組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光吸収剤は、可視光及び赤外線のいずれか一方又は両方を吸収可能であることが好ましい。
【0202】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光吸収剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。例えば、組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムは、光吸収剤として、有機色素のみを1種又は2種以上含有していてもよいし、無機顔料のみを1種又は2種以上含有していてもよいし、有機色素及び無機顔料をともに1種又は2種以上含有していてもよい。
【0203】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムは、可視光及び赤外線のいずれか一方又は両方を吸収可能な光吸収剤を、2種以上含有することが好ましく、2~7種含有することがより好ましい。
【0204】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムは、光吸収剤として、無機顔料を含有する場合、炭素材料を含有することが好ましく、炭素材料及び有機色素をともに含有することがより好ましい。
【0205】
組成物(V-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、光吸収剤の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、光吸収剤の含有量の割合)は、0.1~20質量%であってよい。前記割合が前記下限値以上であることで、光吸収剤を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、光吸収剤の過剰使用が抑制される。
【0206】
[充填材]
充填材を含有する非硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有する熱硬化性保護膜形成用フィルムと、同様の効果を奏する。
【0207】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材としては、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)と同じものが挙げられる。
【0208】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0209】
組成物(V-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材の含有量の割合)は、25~75質量%であることが好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、組成物(III-1)を用いた場合と同様に、非硬化性保護膜形成用フィルム(すなわち保護膜)の熱膨張係数の調整が、より容易となる。
【0210】
組成物(V-1)は、目的に応じて、前記熱可塑性樹脂と、前記光吸収剤と、前記充填材と、のいずれにも該当しない、他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0211】
組成物(V-1)において、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0212】
組成物(V-1)の前記他の成分の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0213】
組成物(V-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(V-1)が含有する溶媒としては、例えば、上述の組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(V-1)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
組成物(V-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0214】
<非硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(V-1)等の非硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
非硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0215】
図1は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムの一例を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0216】
ここに示す保護膜形成用フィルム13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
このような保護膜形成用フィルム13は、例えば、ロール状として保存するのに好適である。
【0217】
保護膜形成用フィルム13は、上述の特性を有する。
保護膜形成用フィルム13は、上述の保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
【0218】
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、フィルム状接着剤13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
【0219】
図1に示す保護膜形成用フィルム13は、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152のいずれか一方が取り除かれ、生じた露出面が、ウエハ(図示略)の裏面への貼付面となる。そして、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152の残りの他方が取り除かれ、生じた露出面が、後述する支持シート又はダイシングシート(本明細書においては「ダイシングテープ」と称することもある)の貼付面となる。例えば、前記第1面13aがウエハの裏面への貼付面である場合には、前記第2面13bが支持シート又はダイシングシートの貼付面となる。
【0220】
図1においては、剥離フィルムが保護膜形成用フィルム13の両面(第1面13a、第2面13b)に設けられている例を示しているが、剥離フィルムは、保護膜形成用フィルム13のいずれか一方の面のみ、すなわち、第1面13aのみ、又は第2面13bのみに、設けられていてもよい。
【0221】
本実施形態の保護膜形成用フィルムは、後述する支持シートと併用せずに、ウエハの裏面に貼付できる。その場合には、保護膜形成用フィルムのウエハへの貼付面とは反対側の面には、剥離フィルムが設けられていてもよく、この剥離フィルムは、適切なタイミングで取り除けばよい。この剥離フィルムを取り除いた後の保護膜形成用フィルムの露出面には、ダイシングシートを貼付し、ダイシング、すなわちウエハの分割、及び保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断を行うことによって、保護膜付きチップを作製できる。
【0222】
一方、本実施形態の保護膜形成用フィルムは、後述する支持シートと併用することで、保護膜の形成とダイシングを共に行うことができる、保護膜形成用複合シートを構成可能である。以下、このような保護膜形成用複合シートについて、説明する。
【0223】
◇保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、を備えており、前記保護膜形成用フィルムが、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムである。
【0224】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、前記保護膜形成用フィルムを備えていることにより、保護膜付きチップとして、その中の突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度を、基板装置の製造過程において、より強固にできる。
【0225】
本明細書においては、保護膜形成用フィルムが硬化した後であっても、支持シートと、保護膜形成用フィルムの硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0226】
以下、前記保護膜形成用複合シートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0227】
◎支持シート
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0228】
支持シートは、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0229】
支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材のみからなるもの;等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成用フィルムとの間に配置される。
【0230】
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートと保護膜形成用フィルムとの間の粘着力又は密着性を容易に調節できる。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
【0231】
本実施形態の保護膜形成用複合シートの例を、このような支持シートの種類ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。
【0232】
図2は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に設けられた保護膜形成用フィルム13と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面(すなわち第1面)11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成用フィルム13との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート10の保護膜形成用フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
【0233】
保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成用フィルム13上に、治具用接着剤層16及び剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の保護膜形成用フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。
【0234】
保護膜形成用複合シート101の場合に限らず、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルム(例えば、図1に示す剥離フィルム15)は任意の構成であり、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、剥離フィルムを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0235】
保護膜形成用複合シート101においては、剥離フィルム15と、この剥離フィルム15と直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
例えば、ここでは、治具用接着剤層16の側面16cに、剥離フィルム15が接触(積層)している状態を示しているが、前記側面16cには、剥離フィルム15が接触していないこともある。また、ここでは、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16の近傍領域に、剥離フィルム15が接触(積層)している状態を示しているが、前記領域には、剥離フィルム15が接触していないこともある。
また、治具用接着剤層16の第1面16a及び側面16cの境界は、明確に区別できない場合もある。
以上の点は、治具用接着剤層を備えた、他の実施形態の保護膜形成用複合シートにおいても、同様である。
【0236】
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造を有していてもよい。
【0237】
保護膜形成用複合シート101から得られた保護膜においては、先の説明のとおり、Z150が0.12以上であり、かつ、Z200が0.11以上である。
【0238】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aにウエハの裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0239】
図3は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成用フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用接着剤層が保護膜形成用フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0240】
より具体的には、保護膜形成用複合シート102において、保護膜形成用フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(図3における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。そして、保護膜形成用フィルム23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、治具用接着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。
【0241】
図4は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート103は、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、図3に示す保護膜形成用複合シート102と同じである。
【0242】
図5は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート104は、支持シート10に代えて支持シート20を備えて構成されている点以外は、図2に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
支持シート20は、基材11のみからなる。
すなわち、保護膜形成用複合シート104は、基材11及び保護膜形成用フィルム13が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート20の保護膜形成用フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)20aは、基材11の第1面11aと同じである。
基材11は、少なくともその第1面11aにおいて、粘着性を有する。
【0243】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、図1図5に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1図5に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。より具体的には、以下のとおりである。
【0244】
ここまでは、基材のみからなる支持シートを備えた保護膜形成用複合シートについては、図5に示す保護膜形成用複合シート104のみを示しているが、基材のみからなる支持シートを備えた保護膜形成用複合シートとしては、例えば、図3に示す保護膜形成用複合シート102、又は図4に示す保護膜形成用複合シート103において、粘着剤層12を備えていないものも挙げられる。ただし、これは、基材のみからなる支持シートを備えた他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0245】
ここまでは、治具用接着剤層を備えていない保護膜形成用複合シートについては、図4に示す保護膜形成用複合シート103のみを示しているが、治具用接着剤層を備えていない保護膜形成用複合シートとしては、例えば、図2に示す保護膜形成用複合シート101において、治具用接着剤層16を備えていないもの;図5に示す保護膜形成用複合シート104において、治具用接着剤層16を備えていないもの;も挙げられる。ただし、これは、治具用接着剤層を備えていない他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0246】
ここでまでは、保護膜形成用複合シートを構成する層として、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムを示しているが、これらのいずれにも該当しない他の層を、保護膜形成用複合シートは備えていてもよい。
前記他の層の種類は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層の配置位置、形状、大きさ等も、その種類に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0247】
前記他の層としては、例えば、支持シートと保護膜形成用フィルムとの間に配置され、保護膜形成用フィルム又はその硬化物の、支持シートからの剥離性を調節するなど、保護膜形成用複合シートに何らかの特性を付与する中間層等が挙げられる。
ただし、これは、前記他の層を備えた他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0248】
本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、各層の大きさ及び形状は、目的に応じて任意に選択できる。
【0249】
次に、支持シートを構成する各層について、さらに詳細に説明する。
【0250】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0251】
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0252】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0253】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、ウエハへの貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0254】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0255】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0256】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、保護膜形成用フィルム、又は前記他の層)との接着性を調節するために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;親油処理;親水処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
【0257】
基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくとも一方の面において、粘着性を有するものであってもよい。
【0258】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0259】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
【0260】
本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0261】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0262】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0263】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。すなわち、粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。
【0264】
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0265】
粘着剤組成物の塗工は、例えば、上述の保護膜形成用組成物の塗工の場合と同じ方法で行うことができる。
【0266】
基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層すればよい。また、基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0267】
粘着剤層がエネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。
【0268】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0269】
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
【0270】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)、粘着剤組成物(I-3)及び粘着剤組成物(I-4)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-4)」と略記する)における前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0271】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0272】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0273】
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0274】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0275】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、前記アクリル系重合体等の前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0276】
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましい。
【0277】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0278】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)において、粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0279】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着剤組成物(I-2)及び(I-3)における前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0280】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0281】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0282】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0283】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0284】
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I-1)及び(I-3)における前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0285】
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
【0286】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0287】
前記粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましい。
【0288】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0289】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士又は粘着性樹脂(I-2a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0290】
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)又は(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0291】
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
【0292】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0293】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0294】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0295】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0296】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制する成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0297】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0298】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0299】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0300】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0301】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0302】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0303】
○粘着剤組成物の製造方法
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)等の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
粘着剤組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0304】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0305】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせる方法でも、基材上に粘着剤層を積層できる。このとき、粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に中間層又は前記他の層を積層する場合にも適用できる。
【0306】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成用フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成用フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に中間層又は前記他の層を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
【0307】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0308】
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成用フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートが得られる。
【0309】
◇保護膜付きチップの製造方法(保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートの使用方法)
前記保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートは、前記保護膜付きチップの製造に用いることができる。
【0310】
<<製造方法1>>
前記保護膜形成用フィルムを支持シートと併用せずに、ウエハへ貼付して、保護膜付きチップを製造する方法としては、例えば、
保護膜形成用フィルムを、ウエハの裏面へ貼付するプロセスを経て、ウエハと、前記ウエハの裏面に設けられた保護膜形成用フィルムと、を備えた積層体(1)、又は、ウエハと、前記ウエハの裏面に設けられた保護膜と、を備えた積層体(1’)、を得る第1積層工程と、
前記積層体(1)における前記保護膜形成用フィルムの前記ウエハ側とは反対側の面、又は、前記積層体(1’)における前記保護膜の前記ウエハ側とは反対側の面に、ダイシングシートを貼付するプロセスを経て、前記ダイシングシートと、前記保護膜形成用フィルムと、前記ウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層体(2)、又は、前記ダイシングシートと、前記保護膜と、前記ウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層体(2’)、を得る第2積層工程と、
前記積層体(2)中の前記ウエハを分割してチップを作製し、前記ウエハの分割箇所に沿って前記保護膜形成用フィルムを切断するプロセスを経て、前記チップと、前記チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜形成用フィルムと、を備えた複数個の保護膜形成用フィルム付きチップが、前記ダイシングシート上で保持されて構成された、保護膜形成用フィルム付きチップ集合体を得るか、又は、前記積層体(2’)中の前記ウエハを分割してチップを作製し、前記ウエハの分割箇所に沿って前記保護膜を切断するプロセスを経て、前記チップと、前記チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜と、を備えた複数個の保護膜付きチップが、前記ダイシングシート上で保持されて構成された、保護膜付きチップ集合体を得る、分割/切断工程と、
前記保護膜形成用フィルム付きチップ集合体中の保護膜形成用フィルム付きチップ、又は、前記保護膜付きチップ集合体中の保護膜付きチップ、を前記ダイシングシートから引き離して、ピックアップするプロセスを経て、保護膜付きチップを得る保護膜付きチップ取得工程と、を有し、
前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記第1積層工程における、前記保護膜形成用フィルムの前記ウエハの裏面への貼付後から、前記保護膜付きチップ取得工程における、前記保護膜形成用フィルム付きチップのピックアップ後までのいずれかの段階で、前記積層体(1)、積層体(2)、保護膜形成用フィルム付きチップ集合体、又は保護膜形成用フィルム付きチップ中の保護膜形成用フィルムを硬化させて、保護膜を形成することにより、前記積層体(1’)、積層体(2’)、保護膜付きチップ集合体、又は保護膜付きチップを作製する硬化工程を有する、保護膜付きチップの製造方法(本明細書においては、「製造方法1」と称する)が挙げられる。
【0311】
前記製造方法1の第1積層工程で用いる前記保護膜形成用フィルムは、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムである。
【0312】
製造方法1の第1積層工程においては、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、ウエハの裏面に保護膜形成用フィルムを貼付した後、この貼付後の保護膜形成用フィルムを硬化させることができ、これにより前記積層体(1’)を得ることができる。
一方、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、ウエハの裏面に保護膜形成用フィルムを貼付することにより、直ちに前記積層体(1’)を得る。
【0313】
製造方法1の第2積層工程で用いる前記ダイシングシートは、公知のものであってよい。
【0314】
前記硬化工程は、前記第1積層工程における、保護膜形成用フィルムのウエハの裏面への貼付後であれば、いずれの段階でも行うことができる。例えば、硬化工程は、第1積層工程中で積層体(1)を得た後;第1積層工程と第2積層工程との間;第2積層工程中で積層体(2)を得た後;第2積層工程と分割/切断工程の間;分割/切断工程中で保護膜形成用フィルム付きチップ集合体を得た後;分割/切断工程と保護膜付きチップ取得工程との間;保護膜付きチップ取得工程中で保護膜形成用フィルム付きチップをピックアップした後;のいずれかで行うことができる。
前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、製造方法1は、前記硬化工程を有しない。
【0315】
製造方法1において、保護膜形成用フィルムの硬化は、いずれの段階においても、熱硬化又はエネルギー線硬化である。このときの熱硬化の条件、及びエネルギー線硬化の条件は、先に説明したとおりである。
【0316】
製造方法1における、前記第1積層工程、第2積層工程、分割/切断工程、保護膜付きチップ取得工程、及び硬化工程は、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムを用いる点を除けば、従来の保護膜付きチップの製造方法の場合と同じ方法で行うことができる。
例えば、保護膜形成用フィルムの貼付対象であるウエハの厚さは、特に限定されないが、20~600μmであることが好ましく、40~400μmであることがより好ましい。
【0317】
製造方法1においては、分割/切断工程での、ウエハの分割と、保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断と、の順序を入れ替えてもよい。本明細書においては、このような保護膜付きチップの製造方法を、製造方法2と称する。
【0318】
<<製造方法2>>
すなわち、製造方法2は、前記積層体(2)中の前記保護膜形成用フィルムを切断し、前記保護膜形成用フィルムの切断箇所に沿って前記ウエハを分割してチップを作製するプロセスを経て、前記チップと、前記チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜形成用フィルムと、を備えた複数個の保護膜形成用フィルム付きチップが、前記ダイシングシート上で保持されて構成された、保護膜形成用フィルム付きチップ集合体を得るか、又は、前記積層体(2’)中の前記保護膜を切断し、前記保護膜の切断箇所に沿って前記ウエハを分割してチップを作製するプロセスを経て、前記チップと、前記チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜と、を備えた複数個の保護膜付きチップが、前記ダイシングシート上で保持されて構成された、保護膜付きチップ集合体を得る、切断/分割工程、を有する。
製造方法2は、分割/切断工程に代えて切断/分割工程を有する点を除けば、製造方法1と同じである。すなわち、製造方法2は、前記第1積層工程と、前記第2積層工程と、前記切断/分割工程と、前記保護膜付きチップ取得工程と、を有し、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記第1積層工程における、前記保護膜形成用フィルムの前記ウエハの裏面への貼付後から、前記保護膜付きチップ取得工程における、前記保護膜形成用フィルム付きチップのピックアップ後までのいずれかの段階で、前記積層体(1)、積層体(2)、保護膜形成用フィルム付きチップ集合体、又は保護膜形成用フィルム付きチップ中の保護膜形成用フィルムを硬化させて、保護膜を形成することにより、前記積層体(1’)、積層体(2’)、保護膜付きチップ集合体、又は保護膜付きチップを作製する硬化工程を有する。
【0319】
<<製造方法3>>
前記保護膜形成用フィルムを支持シートと併用して、保護膜形成用複合シートとしてウエハへ貼付し、保護膜付きチップを製造する方法としては、例えば、
保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、ウエハの裏面へ貼付するプロセスを経て、支持シートと、保護膜形成用フィルムと、ウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層体(3)、又は、支持シートと、保護膜と、ウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層体(3’)、を得る積層工程と、
前記積層体(3)中の前記ウエハを分割してチップを作製し、前記ウエハの分割箇所に沿って前記保護膜形成用フィルムを切断するプロセスを経て、前記チップと、前記チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜形成用フィルムと、を備えた複数個の保護膜形成用フィルム付きチップが、前記支持シート上で保持されて構成された、保護膜形成用フィルム付きチップ集合体を得るか、又は、前記積層体(3’)中の前記ウエハを分割してチップを作製し、前記ウエハの分割箇所に沿って前記保護膜を切断するプロセスを経て、前記チップと、前記チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜と、を備えた複数個の保護膜付きチップが、前記支持シート上で保持されて構成された、保護膜付きチップ集合体を得る、分割/切断工程と、
前記保護膜形成用フィルム付きチップ集合体中の保護膜形成用フィルム付きチップ、又は、前記保護膜付きチップ集合体中の保護膜付きチップ、を前記支持シートから引き離して、ピックアップするプロセスを経て、保護膜付きチップを得る保護膜付きチップ取得工程と、を有し、
前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記積層工程における、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムの前記ウエハの裏面への貼付後から、前記保護膜付きチップ取得工程における、前記保護膜形成用フィルム付きチップのピックアップ後までのいずれかの段階で、前記積層体(3)、保護膜形成用フィルム付きチップ集合体、又は保護膜形成用フィルム付きチップ中の保護膜形成用フィルムを硬化させて、保護膜を形成することにより、前記積層体(3’)、保護膜付きチップ集合体、又は保護膜付きチップを作製する硬化工程を有する、保護膜付きチップの製造方法(本明細書においては、「製造方法3」と称する)が挙げられる。
【0320】
前記製造方法3の積層工程で用いる前記保護膜形成用フィルムは、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムである。
【0321】
製造方法3の積層工程においては、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、ウエハの裏面に保護膜形成用複合シートを貼付した後、この貼付後の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを硬化させることができ、これにより前記積層体(3’)を得ることができる。
一方、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、ウエハの裏面に保護膜形成用複合シートを貼付することにより、直ちに前記積層体(3’)を得る。
【0322】
製造方法3の積層工程で得る積層体(3)は、実質的に、製造方法1の第2積層工程で得る積層体(2)と同じである。
同様に、製造方法3の積層工程で得る積層体(3’)は、実質的に、製造方法1の第2積層工程で得る積層体(2’)と同じである。
【0323】
前記硬化工程は、前記積層工程における、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムのウエハの裏面への貼付後であれば、いずれの段階でも行うことができる。例えば、硬化工程は、積層工程中で積層体(3)を得た後;積層工程と分割/切断工程の間;分割/切断工程中で保護膜形成用フィルム付きチップ集合体を得た後;分割/切断工程と保護膜付きチップ取得工程との間;保護膜付きチップ取得工程中で保護膜形成用フィルム付きチップをピックアップした後;のいずれかで行うことができる。
前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、製造方法3は、前記硬化工程を有しない。
【0324】
製造方法3において、保護膜形成用フィルムの硬化は、いずれの段階でも、熱硬化又はエネルギー線硬化である。このときの熱硬化の条件、及びエネルギー線硬化の条件は、先に説明したとおりである。
【0325】
製造方法3における、前記積層工程、分割/切断工程、保護膜付きチップ取得工程、及び硬化工程は、本実施形態に係る保護膜形成用複合シートを用いる点を除けば、従来の保護膜付きチップの製造方法の場合と同じ方法で行うことができる。
例えば、保護膜形成用複合シートの貼付対象であるウエハの厚さは、特に限定されないが、20~600μmであることが好ましく、40~400μmであることがより好ましい。
【0326】
<他の工程>
製造方法1は、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記第1積層工程、第2積層工程、分割/切断工程、保護膜付きチップ取得工程、及び硬化工程、の各工程以外に、これらのいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
同様に、製造方法2は、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記第1積層工程、第2積層工程、切断/分割工程、保護膜付きチップ取得工程、及び硬化工程、の各工程以外に、これらのいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
同様に、製造方法3は、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記積層工程、分割/切断工程、保護膜付きチップ取得工程、及び硬化工程、の各工程以外に、これらのいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
製造方法1~3のいずれの場合も、前記他の工程の種類と、これを行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0327】
◇基板装置の製造方法
上述の製造方法により、保護膜付きチップを得た後は、この保護膜付チップを用いる点を除けば、従来の製造方法と同じ方法で、基板装置を製造できる。
このような基板装置の製造方法としては、例えば、
前記保護膜形成用フィルムを用いて得られた保護膜付きチップ上の突状電極を、回路基板上の接続パッドに接触させることにより、前記回路基板上に前記保護膜付きチップを配置するチップ配置工程と、
セラミックヒーターを用いて、前記回路基板上に配置した前記保護膜付きチップを加熱することにより、前記保護膜付きチップ上の突状電極を融解させ、前記突状電極と、前記回路基板上の接続パッドと、の接続強度を向上させるフリップチップ接続工程と、を有する製造方法が挙げられる。
【0328】
前記製造方法で得られた基板装置においては、前記保護膜付きチップを用いていることにより、突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度が、通常よりも強固となる。そのため、このような基板装置は、高い信頼性を有する。
これは、前記フリップチップ接続工程において、先に説明したように、加熱時の保護膜付きチップ中の保護膜の、近赤外線及び中赤外線の吸収量が多く、通常よりも加熱時の保護膜の温度が高くなるためである。より高温となったこの保護膜の作用により、保護膜付きチップ上の突状電極もより高温となり、その影響で突状電極が融解し易く、結果として、突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度が、通常よりも強固となる。
【0329】
フリップチップ接続工程においては、加熱時の保護膜の最高到達温度を、例えば、250℃以上とすることが可能であり、260℃以上、270℃以上、及び280℃以上のいずれかとすることも可能である。
【0330】
図6は、前記フリップチップ接続工程において、保護膜付きチップと回路基板とが、電気的に接続された状態を模式的に示す断面図である。
ここでは、保護膜付きチップ901と回路基板8とが、電気的に接続された状態を示している。
保護膜付きチップ901は、チップ9と、その裏面9bに設けられた、切断後の保護膜130’と、を備えて構成されている。チップ9の回路面9a上には、複数個の突状電極91が設けらている。
回路基板8の回路面8a上には、複数個の接続パッド81が設けられている。
チップ9上の1個の突状電極91と、回路基板8上の1個の接続パッド81とは、互いに接触しており、保護膜付きチップ901が保護膜130’を備えていることにより、加熱時の突状電極91が通常よりも融解し易いため、突状電極91と接続パッド81との接触面が通常よりも広くなっている。
なお、ここに示すのは、保護膜付きチップと回路基板との、電気的に接続された状態の一例であり、接続状態はここに示すものに限定されない。
【0331】
前記製造方法における、前記チップ配置工程及びフリップチップ接続工程は、前記保護膜付きチップを用いる点を除けば、従来の基板装置の製造方法の場合と同じ方法で行うことができる。
例えば、前記フリップチップ接続工程における、保護膜付きチップの加熱は、例えば、セラミックヒーターを搭載したリフロー炉を用いて、行うことができる。このとき、セラミックヒーターを用いて、例えば、2000~3200nmのいずれか又はすべての波長域の光を照射することにより、保護膜付きチップを加熱できる。そして、2000~3200nmのいずれかの波長域の光を保護膜付きチップに照射する場合には、2000nm以上2701nm未満及び2999nm超3200nm以下の、いずれか又はすべての波長域の光のみを照射してもよいし、2701~2999nmのいずれか又はすべての波長域の光のみを照射してもよいし、2000nm以上2701nm未満及び2999nm超3200nm以下の波長域と、2701~2999nmの波長域と、をともに含み、かつ、2000~3200nmのいずれかの波長域を含まない光を照射してもよい。
保護膜付きチップ中の保護膜が、Z150が0.12以上であり、かつ、Z200が0.11以上である、という上述の条件を満たしていれば、上記のように近赤外線又は中赤外線を照射することによって、本発明の効果が得られる。
【実施例
【0332】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0333】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び参考例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
BA:アクリル酸n-ブチル
MA:アクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
2EHA:アクリル酸-2-エチルヘキシル
【0334】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:BA(45質量部)、MA(40質量部)及びHEA(15質量部)を共重合して得られたアクリル系樹脂(重量平均分子量500000、ガラス転移温度-26℃)。
[熱硬化性成分(B1)]
(B1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(B1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量255~260g/eq)
[熱硬化剤(B2)]
(B2)-1:ジシアンジアミド(ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」、熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
[充填剤(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたシリカフィラー、平均粒子径0.5μm)
(D)-2:球状アルミナ(昭和電工社製「CB-P02J」、平均粒子径3.0μm)
(D)-3:シリカフィラー(アドマテックス社製「YA050C-MJA」、平均粒子径50nm)
(D)-4:ステンレス鋼製粒子(SUS304を砕いて平均粒径2.0μmとした粒子)
[カップリング剤(E)]
(E)-1:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製「A-1110」)
[光吸収剤(I)]
(I)-1:フタロシアニン系青色色素(Pigment Blue 15:3)32質量部と、イソインドリノン系黄色色素(Pigment Yellow 139)18質量部と、アントラキノン系赤色色素(Pigment Red 177)50質量部とを混合し、前記3種の色素の合計量/スチレンアクリル樹脂量=1/3(質量比)となるように顔料化して得られた顔料。
(I)-2:カーボンブラック(三菱化学社製「MA600」、平均粒径20nm)
(I)-3:銅(II)2,3,9,10,16,17,23,24,-オクタキス(オクチルオキシ)-29H,31H,フタロシアニン(シグマアルドリッチ社製)
(I)-4:銅(II)2,9,16,23-テトラ-tert-ブチル-29H,31H-フタロシアニン(シグマアルドリッチ社製)
(I)-5:2,11,20,29-テトラ-tert-ブチル-2,3-ナフタロシアニン(シグマアルドリッチ社製)
(I)-6:ジイモニウム系色素(日本カーリット社製「CIR-1085F」、可視光及び赤外線吸収剤)
【0335】
[実施例1]
<<保護膜形成用フィルムの製造>>
<保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-1(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(60質量部)、(B1)-2(20質量部)、(B1)-3(20質量部)、(B2)-1(2.2質量部)、硬化促進剤(C)-1(2.2質量部)、充填剤(D)-1(320質量部)、カップリング剤(E)-1(3質量部)、光吸収剤(I)-1(10質量部)及び光吸収剤(I)-2(2.7質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)を得た。なお、ここに示す前記溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0336】
<保護膜形成用フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET50 1031」、厚さ50μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III-1)を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmの熱硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
【0337】
さらに、得られた保護膜形成用フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET38 1031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの一方の面に設けられた第1剥離フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された積層フィルムを得た。
【0338】
<<保護膜の評価>>
<保護膜のXmaxの測定>
上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。
次いで、空気雰囲気下で、第1剥離フィルムが取り除かれ、第2剥離フィルムを備えた保護膜形成用フィルムを、145℃で2時間加熱処理することにより、熱硬化させ、保護膜を形成した。
次いで、前記保護膜から第2剥離フィルムを取り除き、保護膜について、UV-Vis分光光度計(島津製作所製「UV-VIS-NIR SPECTROPHOTOMETER UV-3600」)を用いて、その付属の積分球は用いずに、近赤外域及び中赤外域を含む1400~3200nmの波長域において、1nmごとに吸光度を測定した。そして、そのうちの2701~2999nmを除く波長域での測定結果から、Xmaxを求めた。結果を表1に示す。
【0339】
<保護膜のS150及びS200の測定>
上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。
次いで、エスペック社製オーブンを用いて、第1剥離フィルムが取り除かれ、第2剥離フィルムを備えた保護膜形成用フィルムを、145℃で2時間加熱処理することにより、熱硬化させ、保護膜を形成した。
次いで、前記保護膜から第2剥離フィルムを取り除き、JIS K 7123:2012に準拠して、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「PYRIS1」)を用い、昇温速度を10℃/minとして、40~250℃の温度範囲で、大気圧下で、保護膜の示差走査熱量を測定した。そして、得られた熱流のチャートから、各温度での熱流を算出し、保護膜の使用量を考慮して、保護膜のS150とS200を算出した。結果を表1に示す。
【0340】
<保護膜のZ150及びZ200の算出>
上記で得られた、Xmax、S150及びS200の値から、Z150及びZ200を算出した。結果を表1に示す。
【0341】
<保護膜のTの測定>
上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。
次いで、空気雰囲気下で、第1剥離フィルムが取り除かれ、第2剥離フィルムを備えた保護膜形成用フィルムを、145℃で2時間加熱処理することにより、熱硬化させ、保護膜を形成した。
次いで、前記保護膜から第2剥離フィルムを取り除き、保護膜について、UV-Vis分光光度計(島津製作所製「UV-VIS-NIR SPECTROPHOTOMETER UV-3600」)を用いて、その付属の積分球は用いずに、400~750nmの波長域(すなわち可視光域)において、1nmごとに光の透過率を測定した。そして、その測定結果から、Tを求めた。結果を表1に示す。
【0342】
<保護膜のUの測定>
上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。
次いで、空気雰囲気下で、第1剥離フィルムが取り除かれ、第2剥離フィルムを備えた保護膜形成用フィルムを、145℃で2時間加熱処理することにより、熱硬化させ、保護膜を形成した。
次いで、前記保護膜から第2剥離フィルムを取り除き、保護膜について、UV-Vis分光光度計(島津製作所製「UV-VIS-NIR SPECTROPHOTOMETER UV-3600」)を用いて、近赤外域及び中赤外域を含む1400~2600nmの波長域において、1nmごとにSCI方式によって、鏡面反射光(正反射光)と拡散反射光をあわせた全光線反射光の光量を測定した。さらに、硫酸バリウム製の基準板についても、同じ方法で全光線反射光の光量を測定した。いずれの場合も、試料フォルダーとしては島津製作所社製「大型試料室MPC-3100」を用い、積分球としては島津製作所社製「積分球付属装置ISR-3100」を用いて、測定対象物への入射光の入射角を8°とした。そして、前記基準板での測定値に対する、前記保護膜での測定値の比率([保護膜での全光線反射光の光量の測定値]/[基準板での全光線反射光の光量の測定値]×100)、すなわち前記保護膜の相対全光線反射率を求め、これを光の反射率として採用した。そして、その測定結果から、Uを求めた。結果を表1に示す。
【0343】
<加熱時における保護膜の最高到達温度の測定>
上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面を、バンプ(突状電極)を有していない8インチシリコンウエハ(厚さ350μm)の裏面に相当する研磨面に貼付した。さらに、この貼付後の保護膜形成用フィルムから第2剥離フィルムを取り除き、保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとが積層されて構成された、積層体(1)を得た(第1積層工程)。
【0344】
次いで、エスペック社製オーブンを用いて、この積層体(1)を145℃で2時間加熱処理することにより、保護膜形成用フィルムを熱硬化させ、保護膜を形成した(硬化工程)。
次いで、この熱硬化後の積層体(1)を徐冷した後、そのうちの前記保護膜の露出面(すなわち、シリコンウエハが設けられている側とは反対側の面)にダイシングテープを貼付することにより、ダイシングテープ(支持シートに相当)、保護膜及びシリコンウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層体(2’)を得た(第2積層工程)。
【0345】
次いで、ダイシングブレードを用いて、前記積層体(2’)中のシリコンウエハを20mm×20mmの大きさに分割(ダイシング)するとともに、保護膜も同じ大きに切断することにより、切断後の保護膜を裏面に備えたシリコンチップが、前記ダイシングテープ上で多数整列した状態で保持されている、保護膜付きシリコンチップ集合体を作製した(分割/切断工程)。
次いで、この保護膜付きシリコンチップ集合体中の保護膜付きシリコンチップをダイシングテープから引き離してピックアップした(保護膜付きチップ取得工程)。
【0346】
ピックアップした保護膜付きシリコンチップをコンベア上に載せた。このとき、保護膜付きシリコンチップ中のシリコンチップを下向きとしてコンベアに接触させて、保護膜を上向きとし、この保護膜に熱電対を接触させつつ固定した。この状態の保護膜付きシリコンチップをリフロー炉(千住金属社製「STR-2010N2M型」)の内部に搬送し、この内部にあるセラミックヒーターを用いて、保護膜付きシリコンチップを加熱した。このとき、セラミックヒーターの出力最大値を390℃に設定し、2000~3200nmのすべての波長域の光を照射することによって、実用で供される加熱処理条件と同等とした。
そして、前記熱電対を用いて、このセラミックヒーターによる加熱時の、保護膜の最高到達温度を測定した。結果を表1に示す。
【0347】
<<保護膜形成用フィルムの製造、及び保護膜の評価>>
[実施例2~24、参考例1~3]
保護膜形成用組成物(III-1)の含有成分の種類及び含有量が、表1~4に示すとおりとなるように、保護膜形成用組成物(III-1)の製造時における、配合成分の種類及び配合量のいずれか一方又は両方を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用フィルムを製造し、保護膜を評価した。結果を表1~4に示す。
【0348】
【表1】
【0349】
【表2】
【0350】
【表3】
【0351】
【表4】
【0352】
上記結果から明らかなように、実施例1~24においては、Xmax測定時の保護膜の最高到達温度は、252℃以上であり、顕著に高かった。これは、保護膜の、近赤外域及び中赤外域を含む波長域の光の吸収量が多いからであった。回路基板に搭載された保護膜付きチップの温度が、このような領域に到達した場合、チップ上のはんだ製バンプが融解して、チップと、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度が強固になることを、事前に確認しておいた。すなわち、実施例1~24の保護膜を裏面に備え、回路面にはんだ製バンプを有する保護膜付きチップは、回路基板との接続強度が強固であり、信頼性が顕著に高い基板装置を構成可能であることを確認できた。
【0353】
実施例1~24においては、Z150が0.121以上であり、Z200が、0.114以上であった。
実施例1~24においては、保護膜形成用フィルム(組成物(III-1))が含有する光吸収剤(I)は、2~7種であった。
実施例1~24においては、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、光吸収剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、光吸収剤(I)の含有量の割合)は、2質量%以上であり、近赤外域又は中赤外域を含む波長域の光の吸収量が多かったと推測された。
【0354】
実施例1~24においては、Tが3%以下であり、可視光の透過率が低く、保護膜の存在の有無を容易に視認可能であった。
また、実施例1~24においては、Uが10%以下であり、近赤外線又は中赤外線の反射率が低かった。すなわち、実施例1~24の保護膜形成用フィルムは、加熱時の温度上昇が容易な保護膜と、近赤外線又は中赤外線を利用する装置の誤作動を抑制できる保護膜と、の形成が可能であった。
【0355】
これに対して、参考例1~3においては、Xmax測定時の保護膜の最高到達温度は、248℃以下であり、上記実施例の場合よりも低かった。これは、保護膜の、近赤外域及び中赤外域を含む波長域の光の吸収量が多いとはいえないからであった。回路基板に搭載された保護膜付きチップの温度が、このような領域の場合、チップ上のはんだ製バンプが全く融解しないか、又は融解が不十分であり、チップと、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続強度の向上が認められないことを、事前に確認しておいた。すなわち、参考例1~3の保護膜を裏面に備え、回路面にはんだ製バンプを有する保護膜付きチップは、回路基板との接続強度が向上せず、基板装置の信頼性の向上が認められないことを確認できた。
【0356】
参考例1~3においては、Z150が0.11以下であり、Z200が、0.1以下であった。
参考例1~3においては、保護膜形成用フィルム(組成物(III-1))が含有する光吸収剤(I)は、2~4種であった。
参考例1~3においては、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、光吸収剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、光吸収剤(I)の含有量の割合)は、6.6質量%以下であり、近赤外域又は中赤外域を含む波長域の光の吸収量が少なかったと推測された。
【0357】
<<保護膜形成用複合シートの製造>>
[実施例1]
上述の実施例1で得られた保護膜形成用フィルムを用い、引き続き、保護膜形成用複合シートを製造した。より具体的には、以下のとおりである。
なお、本明細書においては、以降、保護膜形成用複合シートの製造時における実施例及び参考例の番号として、上述の保護膜形成用フィルムの製造時と保護膜の評価時における実施例及び参考例の番号を、そのまま引き続き使用する。
【0358】
<粘着剤組成物(I-4)の製造>
アクリル系樹脂(100質量部)、及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネートD110N」)(10質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
前記アクリル系樹脂は、アクリル酸-2-エチルヘキシル(80質量部)、及びアクリル酸-2-ヒドロキシエチル(20質量部)を共重合して得られた、重量平均分子量800000のアクリル系樹脂である。
【0359】
<支持シートの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET38 1031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-4)を塗工し、100℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ5μmの非エネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
【0360】
次いで、基材として、一方の面が平滑面で、他方の面が凹凸面であるポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色)を用い、その前記平滑面に、上記で得られた非エネルギー線硬化性の粘着剤層の露出面を貼り合せた、これにより、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層シート、すなわち、剥離フィルム付きの支持シートを製造した。
【0361】
<保護膜形成用複合シートの製造>
上記で得られた支持シートから剥離フィルムを取り除いた。また、実施例1で得られた積層フィルム(すなわち、第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムを備えた保護膜形成用フィルム)から第1剥離フィルムを取り除いた。そして、上記の剥離フィルムを取り除いて生じた粘着剤層の露出面と、上記の第1剥離フィルムを取り除いて生じた保護膜形成用フィルムの露出面と、を貼り合わせることにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び第2剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護膜形成用複合シートを製造した。
【0362】
[実施例2~24、参考例1~3]
実施例1で得られた積層フィルムに代えて、実施例2~24、参考例1~3で得られた積層フィルムを用いた点以外は、上記の実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造した。
【0363】
<<保護膜の評価>>
<保護膜のXmax、S150、S200、T及びUの測定、並びに保護膜のZ150及びZ200の算出>
先の実施例4における積層フィルムに代えて、上記の実施例4で得られた保護膜形成用複合シートを用いた点以外は、先の実施例4の場合と同じ方法で、保護膜のXmax、S150、S200、T及びUを測定し、保護膜のZ150及びZ200を算出した。
例えば、Xmaxの測定時には、保護膜形成用複合シートから第2剥離フィルムを取り除き、この状態の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、145℃で2時間加熱処理することにより、熱硬化させ、保護膜を形成した。そして、前記保護膜から、基材及び粘着剤層の積層物(すなわち支持シート)を取り除き、この保護膜について、1400~3200nmの波長域において、吸光度を測定した。S150、S200、T及びUの測定時にも、同様に、保護膜の形成と、保護膜のこれら物性の測定と、を行った。
【0364】
<加熱時における保護膜の最高到達温度の測定>
上記の実施例4で得られた保護膜形成用複合シートから第2剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面を、バンプ(突状電極)を有していない8インチシリコンウエハ(厚さ350μm)の裏面に相当する研磨面に貼付した。
【0365】
次いで、エスペック社製オーブンを用いて、この保護膜形成用複合シートを備えたシリコンウエハを、145℃で2時間加熱処理することにより、保護膜形成用フィルムを熱硬化させ、保護膜を形成した(硬化工程)。これにより、支持シート、保護膜及びシリコンウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、積層体(3’)を得た(積層工程)。
以降、この積層体(3’)を用いた点以外は、先の実施例4の場合と同じ方法で、シリコンウエハの分割(ダイシング)、保護膜の切断(以上、分割/切断工程)、保護膜付きシリコンチップのピックアップを行い(保護膜付きチップ取得工程)、保護膜の最高到達温度を測定した。
【0366】
その結果、ここでの保護膜形成用複合シートを用いた場合の保護膜の評価結果は、すべて、積層フィルムを用いた先の実施例4での評価結果と比較すると、全く同じであるか、又は、無視し得るほどの誤差しかないほぼ同等のものとなっており、実質的に同じとなった。
【産業上の利用可能性】
【0367】
本発明は、半導体装置をはじめとする各種基板装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0368】
101,102,103,104・・・保護膜形成用複合シート、10,11・・・支持シート、10a,20a・・・支持シートの一方の面(第1面)、11・・・基材、11a・・・基材の一方の面(第1面)、12・・・粘着剤層、13,23・・・保護膜形成用フィルム、130’・・・切断後の保護膜、9・・・チップ、9b・・・チップの裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6