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特許7326110カテーテルの位置及び方位のオンザフライ較正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】カテーテルの位置及び方位のオンザフライ較正
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/06 20060101AFI20230807BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20230807BHJP
【FI】
A61B5/06
A61B5/367 100
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019192501
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2020065928
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】16/169,524
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】ラン・ペレド
(72)【発明者】
【氏名】ファレス・セーフ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・イズラエリ
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-052646(JP,A)
【文献】特開2005-007166(JP,A)
【文献】特開2004-174244(JP,A)
【文献】特開2014-021111(JP,A)
【文献】特表2014-502911(JP,A)
【文献】特表平10-507104(JP,A)
【文献】国際公開第2000/068637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06
A61B 5/367
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気位置センサの読み取り値を測定された磁場と関連付ける感度テーブルを記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサであって、
前記メモリから前記記憶された感度テーブルを読み出し、
カテーテルの遠位端に装着された前記磁気位置センサが患者の器官内に配置されるカテーテル法処置の間、(i)前記記憶された感度テーブル、及び(ii)前記器官内にある間に前記磁気位置センサによって取得された前記読み取り値に基づいて、前記磁気位置センサの1つ又は2つ以上の較正値を推定し、
前記1つ又は2つ以上の較正値に基づいて、前記器官内の前記遠位端の位置を磁気的に追跡するように構成された、プロセッサと、を含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記メモリ内に前記1つ又は2つ以上の較正値を記憶するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、費用関数を最小化して、前記磁気位置センサによって取得された前記読み取り値を前記測定された磁場と関連付ける方程式を得ることによって前記1つ又は2つ以上の較正値を推定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、得られた前記方程式を解くことにより前記器官内の前記遠位端の前記位置及び方位を追跡することによって、前記位置を追跡するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には医療用プローブの較正に関し、特に、磁気カテーテルベースの位置及び方位追跡システムの較正に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサを較正するための様々な方法が提案されている。例えば、別の分野では、米国特許第8,577,637号が、磁場及び磁気コンパスの較正を決定するシステム及び方法を記載している。一実施形態は、磁場ベクトルを決定する方法である。本方法は、複数のセンサ方位のそれぞれに関して、1つ又は2つ以上の較正構成要素を記憶することを含む。続いて、複数のセンサ方位に含まれないセンサ方位に関して、磁場ベクトル及び重力ベクトルを決定すること。続いて、記憶された構成要素に基づいて1つ又は2つ以上の較正係数を反復して推定し、決定された磁場ベクトルを推定し、かつ決定された重力ベクトルを推定することであって、較正係数は、複数の反復のそれぞれの間に更新される、こと。最後に、較正係数のうちの少なくとも1つに基づいてセンサの方位に依存しない磁場ベクトルを決定すること。
【0003】
別の例として、米国特許第8,818,747号は、重畳信号を使用して磁場センサの記録された測定値のオフセットを判定する工程と、第1の測定軸に沿った磁場センサの感度を判定する工程と、を含む、三軸磁場センサを較正するための方法を記載している。感度の判定は、第1の測定軸に沿って磁場センサの感度を判定する工程と、第1の測定軸の感度及び判定されたオフセットに基づいて、他の測定軸に沿った磁場センサの感度を判定する工程と、を含む。
【0004】
米国特許8,082,020号は、物体に関連付けられた磁場センサを用いて、2つ以上の磁場発生器により生成された磁場の強度を測定することを含み、この磁場強度のうち少なくとも1つの測定値が、歪みの対象となる、物体の位置を追跡する方法を記載している。物体の回転不変の位置座標は、測定された磁場の強度に応じて計算される。物体の較正された位置座標は、座標補正関数を回転不変の位置座標に適用して、測定された磁場強度の歪みに応答して補正された位置座標に対する測定された磁場強度の各々の相対的寄与率を調整することによって決定される。
【0005】
別の分野では、米国特許第7,835,879号が、予め順序付けされていない動きの間に磁気センサから取得される測定値、及び地球の磁場の強度のそれぞれ予想される値について決定される複数の解のセットを記載している。この解は、磁気センサの各検出軸に対する少なくとも1つのゲイン値を含む複数のパラメータによって定義される。各解について、較正誤差と相関する性能指数が決定され、部分解が、性能指数に基づいて、解の各セット内で選択される。ゲインの信頼区間が定義されると、較正解が、全てゲイン信頼区間内に入るそれぞれのゲイン値を有する部分解の中から、性能指数に基づいて選択される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、磁気位置センサの読み取り値を測定された磁場と関連付ける記憶された感度テーブルをメモリから読み出すことを含む方法を提供する。磁気位置センサの1つ又は2つ以上の較正値は、カテーテルの遠位端に装着された磁気位置センサが患者の器官内に配置されるカテーテル法処置の間、(i)記憶された感度テーブル、及び(ii)器官内にある間に磁気位置センサによって取得された読み取り値に基づいて推定される。1つ又は2つ以上の較正値に基づいて、器官内の遠位端の位置が磁気的に追跡される。
【0007】
いくつかの実施形態では、方法は、メモリ内に1つ又は2つ以上の推定された較正値を記憶することを更に含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の較正値を推定することは、費用関数を最小化して、センサ読み取り値を測定された磁場と関連付ける方程式を得ることを含む。
【0009】
一実施形態では、位置を追跡することは、得られた方程式を解くことにより、器官内の遠位端の位置及び方位を追跡することを含む。
【0010】
また、本発明の実施形態によれば、メモリ及びプロセッサを有するシステムが更に提供される。メモリは、磁気位置センサの読み取り値を測定された磁場と関連付ける感度テーブルを記憶するように構成されている。プロセッサは、メモリから記憶された感度テーブルを読み出し、かつ、カテーテルの遠位端に装着された磁気位置センサが患者の器官内に配置されるカテーテル法処置の間、(i)記憶された感度テーブル、及び(ii)器官内にある間に磁気位置センサによって取得された読み取り値に基づいて、磁気位置センサの1つ又は2つ以上の較正値を推定するように構成されている。プロセッサは、1つ又は2つ以上の較正値に基づいて、器官内の遠位端の位置を磁気的に追跡するように更に構成されている。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルベースの磁気位置及び方位追跡並びにアブレーションシステムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、位置及び方位(L&O)較正プロセスのフロー図である。
図3】本発明の一実施形態による、図2に示すL&O較正プロセスを用いたカテーテルの製造方法を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
カテーテルの遠位端の位置及び方位(L&O)は、カテーテル遠位端に含まれる磁気センサのL&Oを追跡する磁気カテーテルベースのシステムを使用して、患者の器官内で磁気的に追跡することができる。カテーテルがこうした方法で患者に使用できるようになる前に、センサは、例えば工場で完全に較正されるべきである。較正プロセスは、典型的には、既知の磁場の存在下で取られた、コイルなどのセンサ素子からの電圧読み取り値と、遠位端の既知の方位と、の間の関係を確立することを伴う。結果として得られる関係、例えば、本明細書のこれ以降ではセンサの「感度係数」と呼ばれる較正関数は、メモリに記憶され、カテーテルと共に供給され、これはカテーテルに固有である。
【0014】
いくつかの実施形態では、磁気位置センサは、単一のコイル(M=1)、又は2つの直交するコイル(M=2)、又は3つの相互に直交するコイル(M=3)のいずれかを含む。一般に、コイルの相互直交性は必須ではないが、コイルは、(2つのコイルを使用して)平面、又は(3つのセンサを使用して)体積に広がるように設定されるべきである。1つ又は2つ以上のMコイルを使用して、センサは、以下に記載されるように、実空間内で空間軸を符号化する別個の搬送周波数でそれぞれ変調されるM個の異なる電圧を測定する。6つの未知数、すなわち、位置座標及び方位座標x、y、z、α、β、γが存在するとき、最後の3つはコイルの方位角、仰角、及びロール角に対応し、磁気位置センサの感度係数は、以下に記載されるように、6つの独立したパラメータを有する3×3マトリックスとして書かれてもよい。
【0015】
その較正のために、各カテーテルは、工場内の磁気較正装置内に個別に配置され、センサコイルの電圧が読み取られて、読み取られた電圧がセンサの感度係数を計算するのに用いられてもよい。センサ感度係数は、医療処置中に取得された電圧読み取り値を磁場値に変換することを可能にする。次に、磁場値は、例えば、磁場の既知のモデルを使用して、器官内の遠位端の位置及び方位を記述する空間座標に変換される。上記の方法を適用するカテーテルベースの位置追跡システムの例は、Carto(登録商標)3システム(Biosense-Webster(Irvine,California)製)である。しかしながら、上述の較正プロセスは、時間がかかり、費用がかかるため、このような較正要件を有するカテーテルの大量生産は制限され得る。
【0016】
本明細書の以下に記載される本発明の実施形態は、カテーテルが患者の器官内に挿入された後に磁気センサを較正するための技術を提供する。例えば、カテーテル法処置の開始時に行われる開示された較正は、各カテーテルの個々の工場での較正の必要性を排除する。いくつかの実施形態では、プロセッサは、(i)記憶された感度係数(例えば感度テーブル)、及び(ii)器官内にある間に磁気位置センサによって取得された読み取り値に基づいて磁気位置センサの1つ又は2つ以上の較正値を推定する。
【0017】
較正を可能にするために、開示された方法の実施形態は、感度係数の近似値を提供する初期の粗い「工場」較正を使用する。2回以上行われる必要のないこの較正は、同じタイプの全てのセンサに対して有効な感度係数の概略値をもたらす(すなわち、初期較正は、カテーテル開発段階中、すなわち、生成段階のライン外で定義された概略的な「平均」感度係数をもたらす)。
【0018】
較正を確定するために、開示された方法は、カテーテル法中の磁気測定における大きな冗長性を利用する。例えば、3組の三軸磁場発生器を備えたカテーテルベースの位置及び方位CARTO(登録商標)システムの磁場の磁気位置パッド発生器は、単軸センサ(SAS)で9個の電圧を、二軸センサ(DAS)で18個の電圧を、及び三軸センサ(TAS)で27個の電圧を生成するが、カテーテルの位置及び方位の6つの未知数に加えて感度係数マトリックスには未知数が6つのみ存在する。
【0019】
このため、一部の実施形態では、カテーテル法処置が開始してすぐ、プロセッサは、上記の磁気測定における冗長性を用いたL&O較正プロセスを実行して概略的「平均」感度係数を反復的に補正する。このようにして、プロセッサは感度係数の正確な表現を効果的に生成して、センサ読み取り値を空間座標へと正確に変換することができる。センサの読み取り値は、典型的には、数十ヘルツの速度で取られるため、プロセッサがL&O較正プロセスを実行し、遠位端に関する正確な位置及び方位を生成するのにかかる時間は、典型的には1秒未満である。
【0020】
開示されたL&O較正法は、例外なく初期較正された(例えば工場で部分的に較正された)カテーテルの効率的な大量生産及び多数のユーザへの配送を可能にし、これの完全な較正は、オンサイトで、カテーテル法処置の開始時に1秒未満しかかからないプロセスで完了することができる。開示される方法はまた、各カテーテルをその個々の較正結果と共に供給する必要性を排除する。開示される方法によって回避される問題とは、例えば、臨床処置中にカテーテルの位置及び方位の誤差から生じるリスクが低減されることである。更に、開示される技術は、カテーテル内に小型の不揮発性メモリを含むこと、及び初期化時にそれから生成されるカテーテル較正結果を読み取るための追跡システムを構成することを省く。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルベースの磁気位置及び方位追跡並びにアブレーションシステム20の概略描写図である。システム20は、医師30によって血管系を介して患者28の心臓26内に誘導される、シャフト遠位端22(挿画25に示される)を有するカテーテル21を備える。図示される例では、医師30は、カテーテルの近位端付近のマニピュレータ32を使用して、シャフト遠位端22の遠位端を操作しながら、シース23を通してシャフト遠位端22を挿入する。挿画25に示されるように、M個のコイル(すなわち、M=1、又はM=2、又はM=3であるM軸センサ)を有する磁気センサ51、並びにアブレーション先端部50がシャフト遠位端22内に収容される。
【0022】
本明細書に記載されている実施形態では、カテーテル21は、心臓26の組織のアブレーションに使用される。図示された実施形態は、特に心臓組織のアブレーションのためのアブレーション先端部50の使用に関しているが、本明細書に記載されるシステム20の要素及び方法は、代わりに超音波カテーテル及び電気生理学的マッピングカテーテル(例えば、どちらもBiosense-Webster Inc.製のLASSO(登録商標)位置追跡カテーテル又はPENTARAY(登録商標)マッピングカテーテル)などの他の種類のカテーテルの位置追跡に適用されてもよい。
【0023】
カテーテル21の近位端は、制御コンソール24に接続されている。コンソール24は、カテーテル21からのシグナルを受信するとともに、カテーテル21を介してエネルギーを印加して心臓26内の組織をアブレーションし、更にシステム20の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインターフェース回路38を有する、プロセッサ39、典型的には汎用コンピュータを備える。コンソール24は、プロセッサ39がL&O較正プロセス中に計算した感度係数を記憶するメモリ41を備える。コンソール24はまた、磁場発生器36を駆動するよう構成されているドライバ回路34を備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、システム20は3つの磁場発生器36を含み、各発生器は3つの磁場送信機を含む(すなわち、合計でK=9個の送信機)。一般に、磁気センサの各軸に対してK個の変調電圧を誘導する、合計でK個の送信機が存在する(Kは整数である)(すなわち、SASに対してK個の電圧、DASに対しての2K個の電圧、及びTASに対して3K個の電圧)。
【0025】
シャフト遠位端22を心臓26内で誘導する間、例えば、心臓内のアブレーション先端部50の位置及び方位を測定し、また任意選択的に、追跡された位置をディスプレイ27上に提示するために、コンソール24は、位置パッドの外部磁場発生器36からの磁場に応答した磁気センサ51から信号を受信する。磁場発生器36は、例えば、患者台29の下など、患者28の外部の位置に配置される。これらの位置信号は、位置追跡システムの座標系におけるアブレーション先端部50の位置及び方位を示す。
【0026】
外部磁場を用いるこの位置感知法は、例えばBiosense-Webster Inc.によって製造されるCARTO(商標)システムなどの様々な医療用アプリケーションで実施されており、また米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号で詳細に説明されており、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
プロセッサ39は、典型的には、本明細書に説明される機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアを備える汎用コンピュータを含む。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に若しくは追加的に、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0028】
カテーテルの位置及び方位のオンザフライ較正方法
図2は、本発明の実施形態による、位置及び方位(L&O)較正プロセスのフロー図である。L&O較正プロセスは、遠位端22が心臓26に挿入される際にシステム30のプロセッサ39によって適用されてもよい。
【0029】
位置を示す測定値(例えば電圧読み取り値)がM個のコイル磁気センサ51から利用可能になった直後、ゼロ次位置工程60で、プロセッサ39は、センサ51の概略的位置及び方位q=(x,y,z,α,β,γ)を最初に見つけるためにL&O較正プロセスを実行する。
【0030】
上記で参照により本明細書に組み込まれている特許内で説明されるように、r=(x,y,z)の計算は、既知の3×3工場感度マトリックス(すなわち、工場感度係数)S、及びセンサ51のM個のコイルによって測定された電圧(本明細書ではK×MマトリックスVによって提供される)に基づく。
【0031】
加えて、L&O較正プロセスを適用する間の以下の入力値が既知である。
1.N個の異なる心内位置(r=[x,y,z];i=1...N)及び方位(o=[α,β,γ]、方位角、仰角、及びロール角に対応する)における磁気センサからの電圧測定値のセット。センサはM個の磁気コイルを含む(上述したように、典型的にはMは1、2、又は3のいずれかである)。したがって、位置rで測定される電圧は、各送信機jのベクトル
【0032】
【数1】
によって与えられる。Kは、j=1、...、Kなどの送信機の数である。
1.各送信機jからの各位置iにおける磁場モデルB(r)。Kは、j=1、...、Kなどの送信機の数である。
【0033】
センサ51の概略的(即ちゼロ次)位置及び方位qを見つけるために、プロセッサ39は開示されたL&O計算サブ工程を実行し、これは、
ゼロ次位置及び方位qのための方程式を導出するサブ工程60aと、
方程式を解いてゼロ次位置及び方位qを見つけるサブ工程60bと、を含む。
【0034】
サブ工程60aは、(x,y,z)を計算するための椎体間位置の座標が、磁場のマトリックスモデルB(r)に暗黙のうちに含まれ、一方で角度は別個の回転マトリックスR(o)に含まれることを留意することから開始する。
【0035】
したがって、各推定された位置
【0036】
【数2】
における推定された磁場マトリックス
【0037】
【数3】
と電圧マトリックスVとの間の関係は、一般にマトリックス乗算:
【0038】
【数4】
によって記述され得る。
【0039】
見て分かるように、方程式1は、測定された電圧を、電圧を生成する磁場の空間分布と相互に関連付けする。Vは、N個の未知の位置で取られた電圧測定値である。マトリックス
【0040】
【数5】
は、要素
【0041】
【数6】
(すなわち、較正値
【0042】
【数7】
)を含む未知のセンサ感度マトリックスである。Sは、対称、上三角、又は下三角(6個の未知数から構成される)のいずれかである。6個の未知数のベクトル
【0043】
【数8】
を備えるSマトリックス(所定の構造(predefine structure)に従う)。一実施形態では、
【0044】
【数9】
は、センサ測定電圧からシステム20(すなわち発生器36)の座標系内の正規直交磁場(orthonormal magnetic field)への変換マトリックスである。
【0045】
【数10】
は、推定位置
【0046】
【数11】
におけるセンサのシステム20(すなわち発生器36)の座標系の方位を提供する回転マトリックスである。マトリックスRは、3つの未知の回転角度(α、β、γ)を含む。
【0047】
R内には合計で12個の未知数、すなわち、Sの6個の感度要素(すなわち、推定する較正値)、3個の位置座標x、y、及びz、並びに3個の方位角α、β、γが存在する。
【0048】
ゼロ次解qは、最初に方程式1からx、y、z、α、β、γの不均質マトリックス方程式を含む双極子位置計算を導出することによって得られる。
【0049】
【数12】
【0050】
方程式2の導出は、回転マトリックスRの直交性、(すなわち、R=R-1)、及び利用可能な工場較正された感度係数
【0051】
【数13】
に基づく。
【0052】
方程式2は物理的実体を表し、したがって固有の有効解を有するべきである。解を得るためには、サブ工程60bにおいて、不均質系を三角測量し、続いて得られた方程式を解く。計算結果は、磁気センサの近似ゼロ次位置、すなわちq=(x,y,z,α,β,γ)である。
【0053】
次に、計算プロセス62で、プロセッサ39は、L&O較正プロセスを用いて必要な感度マトリックス
【0054】
【数14】
を計算し、これは臨床調査セッションでセンサ51磁気(sensor 51 magnetic)の位置及び方位を追跡するために使用される。プロセス62は、費用関数Jを定義することで開始し、これは費用関数構成工程62aにある。
【0055】
【数15】
【0056】
費用関数Jは、各推定位置
【0057】
【数16】
における、実際の測定された磁場とその推定値
【0058】
【数17】
との間の「距離」つまりノルムを表す。
【0059】
次に、プロセッサ39は、Jを最小化するN×(3つの位置+3の方位)+6(感度)の未知数、すなわち
【0060】
【数18】
を見つける。
【0061】
【数19】
【0062】
このように
【0063】
【数20】
(すなわち、6個の未知数較正値)を導出することは、典型的には、例えばMATLAB(登録商標)などのソフトウェアのライブラリ関数を使用して、最大尤度ベースのソルバ又はモンテカルロベースのソルバを使用して実施される。この解は、N個の位置のセットにおける既知の磁場
【0064】
【数21】
と磁場推定値
【0065】
【数22】
との間の差のノルム(「距離」)を最小化し、N個のそれぞれの方位は、上記の未知数の最良の推定である(上記の費用関数の意味で)。
【0066】
方程式4によって示されるように、Jの最小化によって、
【0067】
【数23】
に加えて、L&Oプロセス中に用いられるカテーテルのN個の推定位置
【0068】
【数24】
及びN個の対応する推定方位
【0069】
【数25】
からなる副産物を含む解がもたらされる。しかしながら、これらの初期値は、典型的には、例えば、解剖学的マップを生成するために使用されない。
【0070】
いくつかの実施形態では、L&O較正プロセスを実行するために必要とされる電圧読み取り値は、30Hzの速度で受信される。したがって、L&O法は、カテーテルが発生器磁場の作業容積内にある後の、患者の心臓に挿入する前に、カテーテルを1秒未満で完全に較正する。これ以降、位置追跡システムは正確な磁気読み取り値を生成する。
【0071】
一実施形態では、メモリ工程64の記憶において、プロセッサ39は、プロセッサ39が工程62bで算出した感度マトリックスSをメモリ41内に記憶する(すなわち、プロセッサ39は、推定較正値をメモリ41に記憶する)。以下の臨床調査セッション中、システム20は、記憶された推定較正値を使用して、位置及び方位追跡工程66でセンサ51の位置及び方位を追跡する。
【0072】
図2に示すフロー図は、単に概念を明確化する目的で選択されたものである。図2は、本発明の実施形態に関連する計算工程の一部のみ、及び結果の導出を示す。較正プロセスで使用される費用関数は、他のノルムタイプが使用される場合は変化し得る。
【0073】
図3は、本発明の一実施形態による、図2に示すL&O較正プロセスを用いたカテーテルの製造方法を概略的に示すフロー図である。工場は、工場較正工程70において、全て例外なく(すなわち、最初に、又は部分的に)工場較正された何十万個ものカテーテルを製造することができる。続いて、これらの工場較正されたカテーテルは、出荷工程72で、通常は世界中の多数のユーザに向けて出荷される。部分的に較正されたカテーテルは、L&O法を適用する位置追跡システムが、カテーテル法処置を開始した途端、すなわち典型的には1秒未満だけ継続する期間で、かつ、カテーテルが患者の心臓に挿入され、システムが測定値を取得し始める直前に、L&O較正工程74でカテーテルを完全に較正するという意味で、顧客施設で使用する準備がほぼ整っている。
【0074】
本明細書に記載される実施形態は、主に心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、神経や耳鼻咽喉などの他の用途で用いることもできる。
【0075】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形形態及び修正形態を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0076】
〔実施の態様〕
(1) 磁気位置センサの読み取り値を測定された磁場と関連付ける記憶された感度テーブルをメモリから読み出すことと、
カテーテルの遠位端に装着された磁気位置センサが患者の器官内に配置されるカテーテル法処置の間、(i)前記記憶された感度テーブル、及び(ii)前記器官内にある間に前記磁気位置センサによって取得された読み取り値に基づいて、前記磁気位置センサの1つ又は2つ以上の較正値を推定することと、
前記1つ又は2つ以上の較正値に基づいて、前記器官内の前記遠位端の位置を磁気的に追跡することと、
を含む、方法。
(2) 前記メモリ内に前記1つ又は2つ以上の推定された較正値を記憶することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記1つ又は2つ以上の較正値を推定することは、費用関数を最小化して、前記センサ読み取り値を前記測定された磁場と関連付ける方程式を得ることを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記位置を追跡することが、前記得られた方程式を解くことにより、前記器官内の前記遠位端の前記位置及び方位を追跡することを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 磁気位置センサの読み取り値を測定された磁場と関連付ける感度テーブルを記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサであって、
前記メモリから前記記憶された感度テーブルを読み出し、
カテーテルの遠位端に装着された磁気位置センサが患者の器官内に配置されるカテーテル法処置の間、(i)前記記憶された感度テーブル、及び(ii)前記器官内にある間に前記磁気位置センサによって取得された読み取り値に基づいて、前記磁気位置センサの1つ又は2つ以上の較正値を推定し、
前記1つ又は2つ以上の較正値に基づいて、前記器官内の前記遠位端の位置を磁気的に追跡するように構成された、プロセッサと、を含む、システム。
【0077】
(6) 前記プロセッサは、前記メモリ内に前記1つ又は2つ以上の推定された較正値を記憶するように更に構成されている、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサは、費用関数を最小化して、前記センサ読み取り値を前記測定された磁場と関連付ける方程式を得ることによって前記1つ又は2つ以上の較正値を推定するように構成されている、実施態様5に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサは、得られた前記方程式を解くことにより前記器官内の前記遠位端の前記位置及び方位を追跡することによって、前記位置を追跡するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
図1
図2
図3