(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ジャケット製造装置、ジャケット製造方法およびホース製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/12 20060101AFI20230807BHJP
F16L 11/02 20060101ALI20230807BHJP
D03D 37/00 20060101ALI20230807BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230807BHJP
D03D 3/02 20060101ALI20230807BHJP
A62C 33/00 20060101ALN20230807BHJP
【FI】
F16L11/12 J
F16L11/02
D03D37/00
D03D1/00 Z
D03D3/02
A62C33/00 C
(21)【出願番号】P 2019218925
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩士
(72)【発明者】
【氏名】戸城 賢三
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 操
(72)【発明者】
【氏名】荒井 匠
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003995(JP,A)
【文献】実開昭58-113792(JP,U)
【文献】特開2005-179819(JP,A)
【文献】特開2014-004152(JP,A)
【文献】米国特許第5246040(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 33/00
D03D 37/00
D03D 1/00
D03D 3/02
F16L 11/12
F16L 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次供給される複数のたて糸とよこ糸とでホースのジャケットを織成する織機と、
前記織機による織成前の前記たて糸と繋がった状態の前記ジャケットの外面に塗料を付着させる着色装置と、
を備えるジャケット製造装置。
【請求項2】
前記着色装置は、前記塗料により前記ジャケットの外面にパターンを形成する、
請求項1に記載のジャケット製造装置。
【請求項3】
織成前の前記たて糸と繋がった状態の前記ジャケットは、前記着色装置による着色が行われる作業位置を通過する経路で連続的に搬送され、
前記着色装置は、前記作業位置を通過する搬送中の前記ジャケットに対して前記塗料を付着させる、
請求項1又は2に記載のジャケット製造装置。
【請求項4】
織成前の前記たて糸と繋がった状態の前記ジャケットに付着した前記塗料を乾燥させる乾燥装置をさらに備える、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のジャケット製造装置。
【請求項5】
順次供給される複数のたて糸とよこ糸とでホースのジャケットを織成する織機と、
前記ジャケットと繋がった織成前の前記たて糸に塗料を付着させる着色装置と、
を備えるジャケット製造装置。
【請求項6】
前記着色装置は、複数の前記たて糸に対して前記塗料を付着させることにより、これらたて糸を用いて織成された前記ジャケットの外面にパターンを形成する、
請求項5に記載のジャケット製造装置。
【請求項7】
前記ジャケットと繋がった織成前の複数の前記たて糸の少なくとも1本は、前記着色装置による着色が行われる作業位置を通過する経路で連続的に搬送され、
前記着色装置は、前記作業位置を通過する搬送中の前記たて糸に対して前記塗料を付着させる、
請求項5又は6に記載のジャケット製造装置。
【請求項8】
前記ジャケットと繋がった織成前の前記たて糸に付着した前記塗料を乾燥させる乾燥装置をさらに備える、
請求項5乃至7のうちいずれか1項に記載のジャケット製造装置。
【請求項9】
前記着色装置は、前記塗料を吐出するノズルと、前記ノズルに対向する対向部材と、をさらに備え、
前記ジャケットと繋がった織成前の複数の前記たて糸が前記ノズルと前記対向部材との間を搬送され、前記ノズルから吐出されてこれらたて糸の隙間を通った前記塗料が前記対向部材により受けられる、
請求項5乃至8のうちいずれか1項に記載のジャケット製造装置。
【請求項10】
前記着色装置は、前記ジャケットと繋がった全てのたて糸に対して前記塗料を付着させる、
請求項5乃至9のうちいずれか1項に記載のジャケット製造装置。
【請求項11】
複数のたて糸とよこ糸とでホースのジャケットを織成する織成工程と、
織成前の前記たて糸と繋がった状態の前記ジャケットの外面に塗料を付着させる着色工程と、
を含むジャケット製造方法。
【請求項12】
複数のたて糸とよこ糸とでホースのジャケットを織成する織成工程と、
前記ジャケットと繋がった織成前の前記たて糸に塗料を付着させる着色工程と、
を含むジャケット製造方法。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の前記織成工程および前記着色工程と、
前記塗料が付着した前記ジャケットを切断する切断工程と、
切断された前記ジャケットの内面にライニング層を形成するライニング形成工程と、
を含むホース製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースのジャケットを製造するジャケット製造装置、当該ジャケットを製造するためのジャケット製造方法およびホース製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば消防用ホースなどのホースは、補強層であるジャケットと、ジャケットの内面を覆うライニング層(内張り)とを備えている。ジャケットは、複数のたて糸とよこ糸によって織成されている。
【0003】
ジャケットの外面には、たて糸およびよこ糸の地色と異なる色で文字または図形などのパターンが形成されることがある(例えば特許文献1,2参照)。また、ジャケットの全体が塗料により着色されることもある。一般的に、このようなパターンの形成や着色は、ジャケットの内面にライニング層を設けた後に、ジャケットの外面に塗料を吹き付けること、当該外面にスクリーン印刷すること、当該外面にパターンを貼り付けること、ジャケットを塗料に浸漬させること等により行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-150522号公報
【文献】特開2002-139182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような方法でジャケットの外面にパターンを形成したり着色したりする場合、当然ながらホースの製造工程が増える。すなわち、織機にて織成されたジャケットを切断し、切断したジャケットにライニング層を形成した後に当該ジャケットを特定の作業場に運び、パターン形成や着色のための作業を施す必要がある。
【0006】
また、特に消防用ホースにおいては、過酷な環境下で使用されるためにジャケットが損傷しやすい。そのため、パターンが損傷して見えにくくなったり、剥がれたりする可能性がある。
【0007】
本発明の一態様における目的は、ホースの製造効率を高めることが可能なジャケット製造装置、ジャケット製造方法およびホース製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るジャケット製造装置は、順次供給される複数のたて糸とよこ糸とでホースのジャケットを織成する織機と、前記織機による織成前の前記たて糸と繋がった状態の前記ジャケットの外面に塗料を付着させる着色装置と、を備えている。
【0009】
前記着色装置は、前記塗料により前記ジャケットの外面にパターンを形成してもよい。また、織成前の前記たて糸と繋がった状態の前記ジャケットが前記着色装置による着色が行われる作業位置を通過する経路で連続的に搬送され、前記着色装置が前記作業位置を通過する搬送中の前記ジャケットに対して前記塗料を付着させてもよい。
【0010】
ジャケット製造装置は、織成前の前記たて糸と繋がった状態の前記ジャケットに付着した前記塗料を乾燥させる乾燥装置をさらに備えてもよい。
【0011】
他の実施形態に係るジャケット製造装置は、順次供給される複数のたて糸とよこ糸とでホースのジャケットを織成する織機と、前記ジャケットと繋がった織成前の前記たて糸に塗料を付着させる着色装置と、を備えている。
【0012】
前記着色装置は、複数の前記たて糸に対して前記塗料を付着させることにより、これらたて糸を用いて織成された前記ジャケットの外面にパターンを形成してもよい。また、前記ジャケットと繋がった織成前の複数の前記たて糸の少なくとも1本が前記着色装置による着色が行われる作業位置を通過する経路で連続的に搬送され、前記着色装置が前記作業位置を通過する搬送中の前記たて糸に対して前記塗料を付着させてもよい。
【0013】
ジャケット製造装置は、前記ジャケットと繋がった織成前の前記たて糸に付着した前記塗料を乾燥させる乾燥装置をさらに備えてもよい。
【0014】
前記着色装置は、前記塗料を吐出するノズルと、前記ノズルに対向する対向部材と、をさらに備えてもよい。この場合において、前記ジャケットと繋がった織成前の複数の前記たて糸が前記ノズルと前記対向部材との間を搬送され、前記ノズルから吐出されてこれらたて糸の隙間を通った前記塗料が前記対向部材により受けられてもよい。
【0015】
前記着色装置は、前記ジャケットと繋がった全てのたて糸に対して前記塗料を付着させてもよい。
【0016】
一実施形態に係るジャケット製造方法は、複数のたて糸とよこ糸とでホースのジャケットを織成する織成工程と、織成前の前記たて糸と繋がった状態の前記ジャケットの外面に塗料を付着させる着色工程と、を含む。
【0017】
他の実施形態に係るジャケット製造方法は、複数のたて糸とよこ糸とでホースのジャケットを織成する織成工程と、前記ジャケットと繋がった織成前の前記たて糸に塗料を付着させる着色工程と、を含む。
【0018】
一実施形態に係るホース製造方法は、前記織成工程と、前記着色工程と、前記塗料が付着した前記ジャケットを切断する切断工程と、切断された前記ジャケットの内面にライニング層を形成するライニング形成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ホースの製造効率を高めることが可能なジャケット製造装置、ジャケット製造方法およびホース製造方法を提供することができる。
【0020】
また、これらジャケット製造装置、ジャケット製造方法およびホース製造方法を用いてジャケットやホースを製造することにより、視認性や耐久性に優れた着色部を有するホースを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る消防用ホースの端部近傍を示す概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る消防用ホースの中腹部分を示す概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る消防用ホースの製造方法の概要を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るジャケット製造装置の概略的な斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るジャケット製造装置の概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、環状織機が備えるたて糸供給装置およびよこ糸供給装置を拡大して示す正面図である。
【
図7】
図7は、ジャケットにライニング層が挿入された状態を示す概略的な平面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る消防用ホースの製造方法の概要を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るジャケット製造装置の概略的な斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る製造方法にて製造される消防用ホースの概略的な断面図である。
【
図11】
図11は、比較例に係る消防用ホースの概略的な断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るジャケット製造装置の概略的な上面図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態に係る着色装置の概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、いくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。各実施形態においては、消防用ホースのジャケットを製造するジャケット製造装置およびジャケット製造方法、さらにはホース製造方法を例示する。ただし、各実施形態に開示するジャケット製造装置、ジャケット製造方法およびホース製造方法の構成は、工業用のホースや農業用のホースなどの各種のホースやそのジャケットの製造装置および製造方法にも適用できる。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る消防用ホース1の端部近傍を示す概略的な斜視図である。
図2は、消防用ホース1の中腹部分を示す概略的な平面図である。
図1に示すように、消防用ホース1は、円筒状のジャケット2と、ジャケット2の内面を覆うライニング層3とを備えている。ライニング層3は、例えばゴムまたは合成樹脂などの樹脂材料で形成され、液密性を有している。
【0024】
ジャケット2は、複数のたて糸Mおよびよこ糸Lにより織成されている。織成の態様としては、平織や綾織が存在するが、本実施形態においてはどのような方法であってもよい。
図1においては説明の便宜のためにジャケット2の外面によこ糸Lを示しているが、当該外面によこ糸Lが露出しなくてもよい。たて糸Mは、消防用ホース1(ジャケット2)の長さ方向に延びている。よこ糸Lは、消防用ホース1(ジャケット2)の周方向に延びている。
【0025】
よこ糸Lは、例えば複数の長繊維から構成されたフィラメント糸(長繊維糸)である。フィラメント糸は強度に優れるため、耐圧性能に優れた消防用ホース1およびジャケット2を得ることができる。たて糸Mは、例えば複数の短繊維から構成されたスパン糸(短繊維糸)である。スパン糸を用いれば、滑りにくく取り扱い易い消防用ホース1およびジャケット2を得ることができる。
【0026】
消防用ホース1は、図示したように扁平に潰された状態にも円筒形に膨らんだ状態にもなり得る柔軟性を有している。消防用ホース1は、扁平に潰された状態で屈曲する一対の耳部10a,10bと、これら耳部10a,10bの間の一対の腹部11a,11bとを有している。各耳部10a,10bは、糸材(例えばたて糸M)の密度を腹部11a,11bの糸材の密度よりも高くすることで強度が高められているとともに、折れ癖が付与されている。したがって、消防用ホース1は、内圧が加わっていない状態においては、各耳部10a,10bが積極的に屈曲して、各腹部11a,11bが扁平面となるように潰れる。
【0027】
図1および
図2に示すように、各耳部10a,10bと各腹部11a,11bのおおよその境界に沿って、ジャケット2の外面に境界線21が設けられている。境界線21は、ジャケット2の外面の大部分を構成するたて糸Mの地色(例えば白色)とは異なる色(例えば緑色)に着色されたたて糸Mによって構成されている。
図1および
図2においては腹部11a側の2本の境界線21を示しているが、腹部11bにも同様に2本の境界線21が設けられている。各境界線21を構成するたて糸Mは、消防用ホース1の一端から他端にわたって同じ色である。
【0028】
図2に示すように、消防用ホース1の腹部11aには、着色部の一例である複数のパターン22が設けられている。パターン22は、たて糸Mの地色(例えば白色)とは異なる色の塗料で形成されている。ここでは各パターン22の一例として、同じ方向を指した矢印形状を示している。一例として、消防用ホース1の長さ方向におけるパターン22の配列ピッチは、30cm程度である。消火活動において、これらのパターン22が水源側を指すように消防用ホース1を用いれば、当該ホースにより避難経路を示すことができる。腹部11bに同様のパターン22が形成されてもよい。
【0029】
なお、着色部はこのようなパターン22に限られず、例えば消防用ホース1の所有者や保管場所などの識別標識となり得る他の図形や文字であってもよいし、消防用ホース1の長さ方向に連続する1本または複数本のラインであってもよい。また、パターン22や他の態様の着色部は、光の反射能に優れた塗料や、蓄光性を有した塗料によって形成されてもよい。パターン22や他の態様の着色部を構成する塗料の色は一色に限られず、2色以上であってもよい。
【0030】
続いて、消防用ホース1の製造方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る消防用ホース1の製造方法の概要を示すフローチャートである。本実施形態においては、先ずジャケット2を織成し(P11:織成工程)、このジャケット2の外面に塗料を付着させることによりパターン22等の着色部を形成する(P12:着色工程)。ジャケット2に付着した塗料は、乾燥装置により乾燥されてもよい(P13:乾燥工程)。織機から連続的に排出されるジャケット2のうちパターン22等の着色部が形成された部分を所定長さで切断し(P14:切断工程)、これにより1本の消防用ホース1に使用されるジャケット2が完成する。
【0031】
その後、ジャケット2の内部にライニング層3を形成して(P15:ライニング形成工程)、消防用ホース1が完成する。ライニング層3は、例えばジャケット2の内面に接着剤によって貼り付けられる。他の例として、ジャケット2の内面と外面を裏返し、この状態で外部に露出するジャケット2の表面に樹脂を塗布することでライニング層3を形成し、その後にジャケット2の内面と外面とを元に戻してもよい。
【0032】
図4は、本実施形態における織成工程および着色工程で使用されるジャケット製造装置4の概略的な斜視図である。ジャケット製造装置4は、たて糸Mおよびよこ糸Lからジャケット2を織成する環状織機5と、環状織機5にたて糸Mを供給するクリール(糸巻軸架)6と、ジャケット2の外面に塗料を付着させる着色装置100とを備えている。
【0033】
図4の例においては、環状織機5と着色装置100が建屋の上階に配置され、クリール6が当該上階の床Fの下方に位置する下階に配置されている。ただし、環状織機5、クリール6および着色装置100の配置態様はこの例に限られない。
【0034】
クリール6は、複数(例えば数十~数百)の糸巻6Aを備えている。各々の糸巻6Aには、たて糸Mが巻かれている。たて糸Mは、床Fに設けられた開口を通じて上階に送られる。複数の糸巻6Aには、上述の境界線21に相当するたて糸Mも含まれる。
【0035】
図5は、ジャケット製造装置4の概略的な断面図である。
図5に示すように、環状織機5は、織機本体50と、コーン51と、たて糸供給装置(整経装置)70と、よこ糸供給装置(よこ入装置、投ひ装置)80とを備えている。たて糸供給装置70は、コーン51を中心にした放射状にたて糸Mを整経する。よこ糸供給装置80は、放射状に整経されたたて糸Mによこ糸Lを螺旋状に織り込む。
【0036】
織機本体50は、架台52と、架台52に回転自在に支持された回転盤53と、回転盤53を駆動するモータ54とを備えている。架台52は、円盤状の底板55と、底板55の中央から上方に突出した円筒状のドラム56と、底板55の周縁に等間隔に複数配置されたフレーム57とを備えている。コーン51は、ドラム56の上端部56Aに取り付けられている。
【0037】
コーン51は、先細りの円筒状に形成され、先端及び基端にそれぞれ開口51A,51Bを有している。環状織機5は、コーン51を交換して開口51Aの直径を変更することにより、種々の直径のジャケット2を織成できる。回転盤53は、ドラム56の外周面に設けられたベアリングを介してドラム56に支持されている。モータ54は、例えば回転盤53、底板55、ドラム56およびフレーム57で囲われた空間に収容されている。
【0038】
たて糸供給装置70は、複数の整経ローラ71と、環状リード(筬)72とを備えている。
図4に示すように、複数(例えば12本)の整経ローラ71は、環状織機5の側周面、すなわちフレーム57よりも外側に設けられている。各々の整経ローラ71は、隣接した整経ローラ71と互いに端部同士が対向した状態で環状織機5の周方向に並んでいる。複数の整経ローラ71は、クリール6から供給される複数のたて糸Mを、コーン51を中心にした放射状に整経する。
【0039】
図5に示すように、環状リード72は、たて糸Mの搬送経路において整経ローラ71とコーン51との間に配置され、フレーム57に固定されている。環状リード72は、フレーム57に固定された下リング73と、下リング73に対向する上リング74と、下リング73および上リング74の間で上下に延びる複数のピン75と、上リング74に設けられたトラックリング76とを備えている。
【0040】
図6は、たて糸供給装置70およびよこ糸供給装置80を拡大して示す正面図である。
図6に示すように、複数のピン75は、環状リード72の周方向に等間隔で配置されている。隣接するピン75の隙間には、整経ローラ71により整経されたたて糸Mが通される。たて糸Mは、下リング73と上リング74との間を上下方向に移動できる一方、ピン75により環状リード72の周方向への移動が規制されている。
【0041】
よこ糸供給装置80は、シャトル(杼)81と、シェディングホイール(綜絖歯車、開口装置)82とを備えている。
図5に示す例では、よこ糸供給装置80が2組のシャトル81およびシェディングホイール82を備えている。なお、シャトル81およびシェディングホイール82は、1組であってもよいし、3組以上であってもよい。2組のシャトル81およびシェディングホイール82は、コーン51を中心とした点対称の位置に配置されている。
【0042】
各々のシャトル81は、織機本体50の回転盤53と環状リード72のトラックリング76との間に配置され、環状リード72のピン75と対向している。
図6に示すように、シャトル81は、紡錘形のシャトル本体83と、シャトル本体83に内蔵されたボビン(小管)84と、シャトル本体83の端部83A寄りおよび他方の端部83B寄りにそれぞれ接続された一対のロッド85とを備えている。
【0043】
ボビン84には、よこ糸Lが巻かれている。各々のロッド85の先端は、織機本体50のドラム56に摺接している。シャトル81は、ロッド85およびピン75によって環状リード72の径方向への移動が規制され、トラックリング76および回転盤53によって上下方向の移動を規制されている。シャトル本体83の端部83Bの近傍には、回転盤53に設けられた押圧ローラ(隆起部)58が配置されている。
【0044】
シェディングホイール82は、シャトル本体83の端部83Aの近傍に配置され、回転盤53の外周面から斜め下方に突出した軸59により回転自在に支持されている。シェディングホイール82は、環状リード72のピン75とかみ合う歯先部82Aと、隣接する歯先部82Aの谷間の歯底部82Bとを有している。
【0045】
回転盤53がモータ54により回転駆動されると、シャトル81およびシェディングホイール82がコーン51を中心に周回(公転)する。さらに、環状リード72と噛合したシェディングホイール82が軸59を中心に回転(自転)する。
【0046】
シェディングホイール82は、歯先部82Aに乗ったたて糸Mと、歯底部82Bに落ちたたて糸Mとを上下二層に開口させる(綜絖する)。シャトル81は、たて糸Mの開口を通過することにより、たて糸Mの間によこ糸Lを織り込む。
【0047】
このようにたて糸Mとよこ糸Lとで織成されるジャケット2を搬送するための要素として、環状織機5は、
図5に示すローラ91~96を備えている。ローラ91,92は、コーン51の下方に配置されている。ローラ93~96は、ジャケット2の搬送方向においてローラ91,92の下流側に配置されている。
【0048】
ジャケット2は、ローラ91,92のニップ、ローラ93,95のニップ、ローラ93,94のニップ、ローラ95,96のニップを順に通る。例えば、各ニップを構成するローラの一方がモータにより回転駆動される駆動ローラであり、他方が従動ローラである。ジャケット2は、各ニップを通ることにより、扁平な形状に成形される。
【0049】
ローラ95,96のニップを出たジャケット2は、床Fに設けられた搬送口OPを通じて下階に送られる。搬送口OPの周囲において、床Fから枠状の壁部材Wが突出している。下階にも、ジャケット2を搬送するためのローラ等が設けられてもよい。また、ジャケット2は、自重により搬送口OPを通じて下階に送られてもよい。ローラ95,96のニップと壁部材Wとの間において、ジャケット2には張力が加わっている。これにより、当該ニップと壁部材Wとの間において、ジャケット2は殆ど撓んでいない。
【0050】
搬送口OPを通過するジャケット2は、環状織機5による織成前のたて糸Mおよびよこ糸Lと繋がっている。上述の切断工程は、例えば下階において実施される。切断工程においては、環状織機5により織成され且つ織成前のたて糸Mおよびよこ糸Lと繋がった状態のジャケット2のうち、着色装置100によりパターン22等の着色部が形成された部分が切り離される。
【0051】
着色装置100は、ヘッド110と、コントローラ120と、対向部材130とを備えている。ヘッド110は、作業位置Pにおいてジャケット2の外面に塗料を付着させることで、上述のパターン22等の着色部を形成する。本実施形態における作業位置Pは、ローラ95,96のニップと壁部材Wとの間にある。ジャケット2は、作業位置Pを含む経路で連続的に搬送される。
【0052】
ヘッド110の構造は、着色部を形成可能なものであれば特に限定されない。一例として、ヘッド110はインクジェットプリンタであり、作業位置Pにおいて張力が加わった扁平なジャケット2の腹部に対向する複数のノズル111を備えている。複数のノズル111は、搬送中のジャケット2の外面に対して塗料(インク)を吐出する。複数のノズル111は、ジャケット2の幅方向に一列に並んでいてもよいし、マトリクス状に並んでいてもよい。ノズル111は、塗料を噴霧するスプレーノズルであってもよい。
【0053】
複数のノズル111は、いずれも同じ色の塗料を吐出するものであってもよい。他の例として、複数のノズル111は、異なる色の塗料を吐出するノズルを含んでもよい。この場合においては、多色構成の着色部を形成することができる。
【0054】
対向部材130は、作業位置Pにおいて、ジャケット2を介してヘッド110と対向している。例えば、対向部材130は、ヘッド110から吐出され、ジャケット2に付着しなかった塗料を受ける箱状の部材である。対向部材130は、作業位置Pにおいてジャケット2の裏面を支持するプレートやローラであってもよい。
【0055】
コントローラ120は、ヘッド110を制御してノズル111から選択的に塗料を吐出させる。例えば、コントローラ120は、予め定められたタイミングで周期的に各ノズル111に塗料を吐出させ、
図2に示したように一定間隔で並ぶパターン22を形成してもよい。
【0056】
また、コントローラ120は、環状織機5の制御パラメータに基づいてヘッド110の駆動タイミングを演算してもよい。制御パラメータとしては、例えばコーン51に向けたたて糸Mの供給速度、モータ54の回転数、織成されたジャケット2の搬送速度などが挙げられる。これらの制御パラメータに基づけば、前のパターン22を形成してからのジャケット2の送り量を演算することが可能であり、この送り量に基づき次のパターン22の形成タイミングを決定することができる。
【0057】
具体例を挙げると、ジャケット2の搬送速度が1分あたり50cmであり、形成すべきパターン22の間隔が30cmである場合、コントローラ120は、36秒の周期でパターン22を形成するための駆動を繰り返す。
【0058】
例えばジャケット2の外面に形成すべき着色部がジャケット2の長さ方向に連続するラインである場合、コントローラ120は、連続的に特定のノズル111から塗料を吐出させてもよい。
【0059】
ジャケット製造装置4は、上述の乾燥工程を行う乾燥装置140をさらに備えてもよい。
図5の例においては、下階に乾燥装置140が配置されている。例えば、乾燥装置140は、塗料が付着したジャケット2の外面(腹部)に熱風を当てて当該塗料を乾燥させる。なお、上述の乾燥工程は、乾燥装置140を用いない自然乾燥であってもよい。
【0060】
ライニング形成工程においては、ライニング層3がジャケット2の内部に挿入され、例えば接着剤を介してジャケット2の内面に貼り付けられる。
図7は、ジャケット2にライニング層3を形成した後の消防用ホース1の概略的な平面図である。
【0061】
耳部10a,10bの各々は、他の領域とはたて糸Mの密度が異なる領域A(斜線を付した部分)を有している。例えば、各領域Aにおけるたて糸Mの密度は、他の領域におけるたて糸Mの密度よりも高い。各領域Aは、切断されたジャケット2の両端の間で、ジャケット2の長さ方向に連続して延びている。一方の領域Aは耳部10aの境界に設けられた2本の境界線21の間に位置し、他方の領域Aは耳部10bの境界に設けられた2本の境界線21の間に位置している。
【0062】
着色装置100を用いて各領域Aに塗料を付着させることで、文字や図形などのパターン25やその他の着色部を各領域Aに形成することもできる。パターン25は、ジャケット2の長さ方向において断続的に設けられてもよいし、連続的に設けられてもよい。また、領域Aの全体が特定の色に着色されてもよい。
【0063】
以上説明した本実施形態に係るジャケット製造装置4およびホースの製造方法においては、切断前のジャケット2、すなわち織成前のたて糸Mおよびよこ糸Lと繋がった状態のジャケット2の外面に塗料を付着させることにより、パターン等の着色部が当該外面に形成される。
【0064】
仮に切断後のジャケット2に対して着色部を形成する場合には、ジャケット2を特定の作業場に運んで着色作業を施す必要がある。この場合には、織成とは異なるタイミングで着色作業が行われるので消防用ホース1乃至ジャケット2の製造工程が増えるとともに、工場内に着色のための作業場を確保する必要がある。これに対し、本実施形態においては織成工程と着色工程とを並行して実行でき、消防用ホース1乃至ジャケット2の製造効率を高めることが可能である。さらには、着色のための作業場も省略できる。
【0065】
また、
図5に示したようにローラ95,96と搬送口OPとの間においてはジャケット2が張られているので、この部分に対し着色装置100により塗料を付着させる場合には着色の精度を高めることができる。また、ジャケット製造装置4のオペレータは、上階において環状織機5および着色装置100の双方の稼働状態を確認することができる。
その他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
【0066】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。特に言及しない構成や効果については、第1実施形態と同様である。
【0067】
図8は、本実施形態に係る消防用ホース1の製造方法の概要を示すフローチャートである。本実施形態においては、先ずたて糸Mに対して塗料を付着させる(P21:着色工程)。たて糸Mに付着した塗料は、乾燥装置により乾燥されてもよい(P22:乾燥工程)。その後に、当該たて糸Mを用いてジャケット2を織成する(P23:織成工程)。このとき、着色工程にて着色された部分により、パターン22等の着色部が形成される。
【0068】
続いて、織機から連続的に排出されるジャケットのうち着色部が形成された部分を所定長さで切断し(P24:切断工程)、ジャケット2の内部にライニング層3を形成して(P25:ライニング形成工程)、消防用ホース1が完成する。
【0069】
図9は、本実施形態における織成工程および着色工程で使用されるジャケット製造装置4の概略的な斜視図である。ジャケット製造装置4は、第1実施形態と同じく、環状織機5と、クリール6と、着色装置100とを備えている。
【0070】
本実施形態においては、着色装置100のヘッド110および対向部材130が環状織機5の側周面に対向している。環状織機5の高さ方向において、ヘッド110は、整経ローラ71と床Fの間に位置している。
【0071】
ヘッド110と対向部材130の間には、コーン51に送られる全てのたて糸Mのうちの少なくとも1本が通る。
図9の例においては、ヘッド110の直上に位置する整経ローラ71により整経される複数のたて糸Mがヘッド110と対向部材130の間に通されている。
【0072】
すなわち、本実施形態においては、環状織機5により織成されるジャケット2と繋がった織成前のたて糸Mが、着色装置100による着色が行われる作業位置Pを通過する経路で連続的に搬送される。着色装置100は、この作業位置Pを通過する搬送中のたて糸Mに対して塗料を付着させる。
【0073】
ジャケット製造装置4は、上述の乾燥工程を行う乾燥装置140をさらに備えてもよい。
図9の例においては、ヘッド110の上方に乾燥装置140が配置されている。例えば、乾燥装置140は、塗料が付着したたて糸Mに熱風を当てて当該塗料を乾燥させる。なお、上述の乾燥工程は、乾燥装置140を用いない自然乾燥であってもよい。
【0074】
図9には示していないが、着色装置100は、第1実施形態と同じくコントローラ120を備えている。さらに、ヘッド110は、例えば複数のノズル111を備えたインクジェットプリンタである。
【0075】
本実施形態において、コントローラ120は、例えば予め定められたタイミングで周期的に各ノズル111に塗料を吐出させてもよい。例えば、この吐出のタイミングは、複数のたて糸Mのうち
図2に示したようなパターン22等の着色部に対応する部分が作業位置P(ヘッド110と対向部材130の間)を通過するときである。
【0076】
コントローラ120は、環状織機5の制御パラメータに基づいてヘッド110の駆動タイミングを演算してもよい。制御パラメータとしては、例えばコーン51に向けたたて糸Mの供給速度、モータ54の回転数、織成されたジャケット2の搬送速度などが挙げられる。これらの制御パラメータに基づけば、前のパターン22に対応する吐出動作からのたて糸Mの送り量を演算することが可能であり、この送り量に基づき次のパターン22に対応する吐出動作のタイミングを決定することができる。
【0077】
例えばジャケット2の外面に形成すべき着色部がジャケット2の長さ方向に連続するラインである場合、コントローラ120は、連続的に特定のノズル111から塗料を吐出させてもよい。これにより、コーン51に供給される一部のたて糸Mを連続的に着色できる。上述の境界線21をこの方法で形成してもよい。
【0078】
図7に示した領域Aを構成するたて糸Mに塗料を付着させることにより、パターン25等の着色部を形成してもよい。パターン25は、ジャケット2の長さ方向において断続的に設けられてもよいし、連続的に設けられてもよい。また、領域Aの全体が特定の色に着色されてもよい。この場合においては、連続的に特定のノズル111から塗料を吐出させ、領域Aを構成する各たて糸Mを着色すればよい。
【0079】
本実施形態においては織成前のたて糸Mを着色するため、織成後には正確な着色が困難な位置に対して着色部を形成することもできる。
【0080】
作業位置Pを通過する複数のたて糸Mの間には、隙間が存在する。したがって、ヘッド110から吐出された塗料の一部は、当該隙間を通って環状織機5の側周面に向かう可能性がある。対向部材130は、このような塗料を受ける。これにより、環状織機5の側周面などが塗料で汚れにくくなる。
【0081】
図10は、本実施形態に係る製造方法にて製造される消防用ホース1の概略的な断面図である。この消防用ホース1は、たて糸Mおよびよこ糸Lで平織されたジャケット2と、ライニング層3と、ジャケット2およびライニング層3を接着する接着層ADとを備えている。なお、ジャケット2は、綾織などの他の構造を有してもよい。
【0082】
パターン22等の着色部を構成するたて糸Mにおいて、塗料が付着した部分にドットを付している。着色装置100がたて糸Mに付着させた塗料は、たて糸Mの内部にも浸透する。したがって、着色部において、たて糸Mは、よこ糸Lよりもジャケット2の外面側に位置する部分、よこ糸Lとライニング層3との間に位置する部分、隣り合うよこ糸Lの間に位置する部分のいずれにおいても全体的に着色されている。一方、よこ糸Lには塗料が浸透していない。
【0083】
図11は、比較例に係る消防用ホース201の概略的な断面図である。この消防用ホース201は、
図10の例と同じく平織のジャケット2と、ライニング層3と、接着層ADとを備え、ジャケット2の外面にパターン22等の着色部が形成されている。
【0084】
消防用ホース201の着色部は、ジャケット2が織成された後に塗料をジャケット2の外面に付着させることにより形成されている。この場合、例えば図示したように塗料がたて糸Mの表層にのみ浸透し、隣り合うよこ糸Lの間やよこ糸Lとライニング層3の間には浸透しにくい。
【0085】
図11に示す消防用ホース201においてジャケット2が擦れるなどした場合、たて糸Mの塗料が浸透した部分が損傷してパターン22等の着色部が見えにくくなる可能性がある。これに対し、
図10に示す消防用ホース1においては、ジャケット2の厚さ方向の全体にわたりたて糸Mに塗料が浸透しているために、ジャケット2の表層が損傷した場合であってもパターン22等の着色部の視認性を保つことができる。他の観点からいえば、着色部の耐久性を高めることができる。
【0086】
なお、例えばジャケット2の全体あるいは広範囲を着色する場合において、仮によこ糸Lにも塗料が浸透していると、ジャケット2の損傷の状況が把握しにくくなる。これに対し、
図10の例においてはよこ糸Lに塗料が浸透していないので、表層のたて糸Mが擦り切れた場合には地色のよこ糸Lが露出する。したがって、ジャケット2の損傷個所を容易に把握できる。
【0087】
以上の本実施形態のように、織成前のたて糸Mに対して塗料を付着させる場合であっても、第1実施形態と同様に消防用ホース1乃至ジャケット2の製造効率を高めることが可能である。また、着色のための作業場も省略することができる。さらに、
図10および
図11を用いて説明したように、視認性および耐久性に優れた着色部を有する消防用ホース1を得ることができる。
【0088】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。特に言及しない構成や効果については、上述の各実施形態と同様である。
【0089】
図12は、本実施形態に係るジャケット製造装置4の概略的な上面図である。ジャケット製造装置4は、第1および第2実施形態と同じく、環状織機5と、着色装置100とを備えている。本実施形態においては、着色装置100が複数のヘッド110を備えている。各ヘッド110は、
図9に示した例と同じく、環状織機5の側周面に対向している。
【0090】
図12の例においては、複数のヘッド110が環状に配置されている。コーン51に供給される複数のたて糸Mは、全ていずれかのヘッド110と対向している。すなわち、各ヘッド110により、円形の作業位置Pが形成される。各ヘッド110に対して、
図9の例と同様の対向部材130や乾燥装置140が設けられてもよい。
【0091】
着色装置100は、各ヘッド110により、作業位置Pを通る各たて糸Mに対して塗料を付着させることが可能である。このような構成であれば、ジャケット2の外周のどの位置に対してもパターン22のような着色部を形成することができる。着色装置100のコントローラ120によるヘッド110の駆動方法は、例えば第2実施形態と同様のものを適用し得る。
【0092】
例えば各ヘッド110のノズル111から連続的に塗料を吐出させることにより、全てのたて糸M、あるいは境界線21を構成するたて糸M以外のたて糸Mに対して塗料を付着させてもよい。この場合においては、外面全体が着色されたジャケット2を得ることができる。
【0093】
以上の本実施形態に係るジャケット製造装置4を用いれば、第1実施形態および第2実施形態に比べ、ジャケット2の外面の広い範囲を着色することができる。これにより、種々の態様の着色部が形成された消防用ホース1乃至ジャケット2を製造することが可能となる。
【0094】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。特に言及しない構成や効果については、上述の各実施形態と同様である。
【0095】
図13は、本実施形態に係る着色装置100の概略的な構成を示す図である。上述の各実施形態においては、着色装置100が主にインクジェットプリンタである場合を例示した。これに対し、
図13に示す着色装置100は、いわゆるローラースタンプである。
【0096】
具体的には、着色装置100は、第1ローラ150と、第2ローラ160とを備えている。第1ローラ150は、ジャケット2に形成すべき着色部(上述のパターン22等)に対応した形状の突出部151を外周面に有している。第2ローラ160は、例えば塗料が染み込んだスポンジ状の部材である。
【0097】
着色装置100は、対向部材130をさらに備えてもよい。
図13に示す対向部材130はローラであり、第1ローラ150の外周面に対向している。対向部材130は、例えばプレートなどのローラ以外の部材であってよい。
【0098】
例えば本実施形態に係る着色装置100を第1実施形態に係るジャケット製造装置4に適用する場合、環状織機5により織成されたジャケット2が第1ローラ150と対向部材130のニップを通る経路で搬送される。このニップが作業位置Pに相当する。
【0099】
ジャケット2が搬送されると、これに従動して第1ローラ150および対向部材130が回転する。この回転に伴い、突出部151が第2ローラ160に接触し、突出部151に塗料が付着する。その後、突出部151が作業位置Pに到達すると、突出部151に付着した塗料がジャケット2の外面に転写される。
【0100】
このような構成においては、第1ローラ150の外周の長さに相当するピッチでジャケット2の外面に着色部が形成される。第1ローラ150の外周面に複数の突出部151が形成されてもよい。また、これら複数の突出部151の形状や、ジャケット2の幅方向における位置が異なってもよい。
【0101】
本実施形態に係る着色装置100の構成は、第2および第3実施形態に係るジャケット製造装置4にも適用できる。この場合においては、作業位置Pに織成前のたて糸Mを通過させればよい。
【0102】
突出部151を設けずに第1ローラ150の外周面全体にわたって第2ローラ160の塗料を付着させてもよいし、第1ローラ150自体をスポンジ状に形成して塗料を染み込ませてもよい。これらの場合には、ジャケット2やたて糸Mを連続的に着色することができる。
【0103】
以上の第1乃至第4実施形態は、本発明の範囲を各実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明は、上記各実施形態に開示した構成を種々の態様に変形して実施することができる。
【0104】
着色装置100の配置位置は、各実施形態に例示したものに限られない。例えば第1実施形態のように織成されたジャケット2に対して塗料を付着させる場合において、着色装置100は、環状織機5とは異なる階(例えば下階)に配置されてもよい。また、着色装置100は、環状織機5の内部に配置されてもよい。この場合における作業位置Pは、例えば
図5に示したローラ91,92のニップとローラ93,95のニップとの間に設定されてもよいし、ローラ91,92のニップとコーン51との間に設定されてもよい。
【0105】
また、第2および第3実施形態のように織成前のたて糸Mに対して塗料を付着させる場合において、着色装置100は、環状織機5とは異なる階(例えば下階)に配置されてもよい。また、着色装置100は、環状織機5の上方に配置されてもよい。
【0106】
着色装置100の構成は、上述したインクジェットプリンタやローラースタンプに限られない。その他にも、着色装置100には、切断前のジャケット2に対してスクリーン印刷を行うものなど、種々の構成を適用できる。
【符号の説明】
【0107】
1…消防用ホース、2…ジャケット、3…ライニング層、4…ジャケット製造装置、5…環状織機、6…クリール、100…着色装置、110…ヘッド、111…ノズル、120…コントローラ、130…対向部材、P…作業位置、F…床、OP…搬送口、W…壁部材。