(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】組織エンジニアリングおよびバイオプリンティングにおける使用のためのゲルを形成し得るペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 5/103 20060101AFI20230807BHJP
C07K 5/11 20060101ALI20230807BHJP
C07K 5/113 20060101ALI20230807BHJP
C07K 5/117 20060101ALI20230807BHJP
C07K 17/04 20060101ALI20230807BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20230807BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230807BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230807BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230807BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230807BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230807BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230807BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230807BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230807BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20230807BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230807BHJP
A61L 15/32 20060101ALI20230807BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20230807BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20230807BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230807BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C07K5/103
C07K5/11 ZNA
C07K5/113
C07K5/117
C07K17/04
C12N5/07
C12N15/11 Z
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/70
A61K9/70 401
A61K47/64
A61K49/00
A61L27/22
A61P17/02
A61L15/32 100
A61L31/14 300
A61L31/06
A61L27/52
A61K8/06
A61K8/64
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019561848
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2018052173
(87)【国際公開番号】W WO2018207036
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-09
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514285966
【氏名又は名称】キング アブドラ ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】ハウサー, シャーロット エー.イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャダブ, サンディップ
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0113053(US,A1)
【文献】特表2017-501136(JP,A)
【文献】特開2015-013850(JP,A)
【文献】A Non-Canonical NRPS Is Involved in the Synthesis of Fungisporin and Related Hydrophobic Cyclic Tetrapeptides in Penicillium chrysogenum,PLOS ONE,2014年06月02日,Vol. 9, Issue 6, e98212,P. 1-10
【文献】Macrocyclization of Peptide Side Chains by the Ugi Reaction: Achieving Peptide Folding and Exocyclic N-Functionalization in One Shot,J. Org. Chem,2015年06月01日,Vol. 80,P. 6697-6707
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己集合によってゲルを形成することができるペプチドであって、前記ペプチドが、
Ac-IVFK-NH
2 (配列番号1)
Ac-IVOK-NH
2 (配列番号2)
Ac-IFVK-NH
2 (配列番号3)
Ac-IOVK-NH
2 (配列番号4)
Ac-FIVK-NH
2 (配列番号5)
Ac-OIVK-NH
2 (配列番号6)
Ac-FVIK-NH
2 (配列番号7)
Ac-OVIK-NH
2 (配列番号8)
Ac-IVFD-COOH (配列番号9)
Ac-IVOD-COOH (配列番号10)
Ac-IFVD-COOH (配列番号11)
Ac-IOVD-COOH (配列番号12)
Ac-FIVD-COOH (配列番号13)
Ac-OIVD-COOH (配列番号14)
Ac-FVID-COOH (配列番号15)
Ac-OVID-COOH (配列番号16)
Ac-IVFE-COOH (配列番号17)
Ac-IVOE-COOH (配列番号18)
Ac-IFVE-COOH (配列番号19)
Ac-IOVE-COOH (配列番号20)
Ac-FIVE-COOH (配列番号21)
Ac-OIVE-COOH (配列番号22)
Ac-FVIE-COOH (配列番号23)
Ac-OVIE-COOH (配列番号24)
Ac-IVFS-NH
2 (配列番号25)
Ac-IVOS-NH
2 (配列番号26)
Ac-IFVS-NH
2 (配列番号27)
Ac-IOVS-NH
2 (配列番号28)
Ac-FIVS-NH
2 (配列番号29)
Ac-OIVS-NH
2 (配列番号30)
Ac-FVIS-NH
2 (配列番号31)
Ac-OVIS-NH
2 (配列番号32)
Ac-IVFR-NH
2 (配列番号33)
Ac-IVOR-NH
2 (配列番号34)
Ac-IFVR-NH
2 (配列番号35)
Ac-IOVR-NH
2 (配列番号36)
Ac-FIVR-NH
2 (配列番号37)
Ac-OIVR-NH
2 (配列番号38)
Ac-FVIR-NH
2 (配列番号39)
Ac-OVIR-NH
2 (配列番号40)
Ac-IVF(Dab)-NH
2 (配列番号41)
Ac-IVO(Dab)-NH
2 (配列番号42)
Ac-IFV(Dab)-NH
2 (配列番号43)
Ac-IOV(Dab)-NH
2 (配列番号44)
Ac-FIV(Dab)-NH
2 (配列番号45)
Ac-OIV(Dab)-NH
2 (配列番号46)
Ac-FVI(Dab)-NH
2 (配列番号47)
Ac-OVI(Dab)-NH
2 (配列番号48)
Ac-IVF(Dap)-NH
2 (配列番号49)
Ac-IVO(Dap)-NH
2 (配列番号50)
Ac-IFV(Dap)-NH
2 (配列番号51)
Ac-IOV(Dap)-NH
2 (配列番号52)
Ac-FIV(Dap)-NH
2 (配列番号53)
Ac-OIV(Dap)-NH
2 (配列番号54)
Ac-FVI(Dap)-NH
2 (配列番号55)
Ac-OVI(Dap)-NH
2 (配列番号56)
Ac-IVF(Orn)-NH
2 (配列番号57)
Ac-IVO(Orn)-NH
2 (配列番号58)
Ac-IFV(Orn)-NH
2 (配列番号59)
Ac-IOV(Orn)-NH
2 (配列番号60)
Ac-FIV(Orn)-NH
2 (配列番号61)
Ac-OIV(Orn)-NH
2 (配列番号62)
Ac-FVI(Orn)-NH
2 (配列番号63)
Ac-OVI(Orn)-NH
2 (配列番号64)
(式中、I=イソロイシン、V=バリン、F=フェニルアラニン、K=リジン、D=アスパラギン酸、O=シクロヘキシルアラニン、(Dab)=2,4-ジアミノ酪酸、(Dap)=2,3-ジアミノプロピオン酸、(Orn)=オルニチン、
Ac=アセチル(N末端をアセチル化している)、NH
2=アミン(したがって、C末端をアミド化している)、および-COOH=無保護C末端)から選択される配列からなる、ペプチド。
【請求項2】
生理学的条件下、周囲温度にて、1日間から少なくとも6ヶ月間までの範囲の期間にわたって水溶液中で安定である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
生理学的条件下、90℃までの温度にて、少なくとも1時間にわたって水溶液中で安定である、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドを含むヒドロゲルまたはオルガノゲル。
【請求項5】
前記ヒドロゲルが、周囲温度にて、少なくとも1ヶ月間にわたって水溶液中で安定である、請求項4に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲル。
【請求項6】
前記ヒドロゲルが、貯蔵弾性率G'の損失弾性率G''に対する比が2~5を超えることを特徴とする、請求項4または5に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲル。
【請求項7】
前記ヒドロゲルまたはオルガノゲルが、0.1Hz~100Hzの範囲の周波数での貯蔵弾性率G'が500Pa~200,000Paであることを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲル。
【請求項8】
前記ヒドロゲルまたはオルガノゲルの機械的強度が、コラーゲンまたはその加水分解形体(ゼラチン)より高い、請求項4~7のいずれか1項に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲル。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドの繊維を含む請求項4~8のいずれか1項に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲルであって、前記繊維が、微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、オリゴサッカリド、ポリサッカリド、ビタミン、無機分子、合成ポリマー、マイクロ粒子もしくはナノ粒子、有機小分子、または薬学的に活性な化合物のうちの少なくとも1つを捕捉することができるネットワークを画定する、ヒドロゲルまたはオルガノゲル。
【請求項10】
前記ヒドロゲルが、前記繊維のネットワークによって捕捉された微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、オリゴサッカリド、ポリサッカリド、ビタミン、無機分子、合成ポリマー、有機小分子、マイクロ粒子もしくはナノ粒子、または薬学的に活性な化合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲル。
【請求項11】
注射可能である、請求項4~10のいずれか1項に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲル。
【請求項12】
請求項1に記載のペプチドを水溶液または有機溶液にそれぞれ溶解する工程を含む、ヒドロゲルまたはオルガノゲルを調製する方法。
【請求項13】
前記水溶液または有機溶液に溶解したペプチドをさらに加温し、ここで、前記
加温した温度が、20℃~90℃の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチドを、0.01μg/ml~100mg/mlの濃度で溶解する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項4~11のいずれか1項に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲルを含む細胞または組織移植片。
【請求項16】
請求項4~11のいずれか1項に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲルを含む創傷被覆材または創傷治癒剤。
【請求項17】
ペプチド足場を含む外科用インプラントまたはステントであって、前記ペプチド足場が請求項4~11のいずれか1項に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲルによって形成される、外科用インプラントまたはステント。
【請求項18】
請求項1に記載のペプチドを含む医薬組成物および/または化粧品組成物および/または生物医療機器および/または電子デバイスおよび/または溶液。
【請求項19】
薬学的に活性な化合物をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物および/または化粧品組成物および/または生物医療機器、および/または電子デバイスおよび/または溶液。
【請求項20】
前記医薬組成物および/または化粧品組成物および/または溶液が局所用のゲルもしくはクリーム、スプレー、散剤、またはシート、パッチもしくはメンブランの形態で提供されるか、
前記医薬組成物および/または化粧品組成物および/または溶液が、注射剤の形態で提供される、請求項18または19に記載の医薬組成物または化粧品組成物または溶液。
【請求項21】
薬学的に許容され得るキャリアをさらに含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の医薬組成物および/または化粧品組成物および/または溶液。
【請求項22】
キットであって、前記キットが、請求項1に記載のペプチドを有する第1の容器および水溶液または有機溶液を有する第2の容器を含む、キット。
【請求項23】
前記第2の容器の水溶液または有機溶液が薬学的に活性な化合物をさらに含み、そして/または前記ペプチドを有する第1の容器が薬学的に活性な化合物をさらに含む、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
請求項4~11のいずれか1項に記載のヒドロゲルまたはオルガノゲルを含む2Dまたは3D細胞培養基質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルを形成することができるペプチド、ならびに、例えば、組織工学およびバイオプリンティングにおけるその使用(単数または複数)に関する。本発明は、さらに、本発明のペプチドを含むゲル、かかるゲルを調製する方法、およびかかるゲルの使用に関する。1つの実施形態では、かかるゲルはヒドロゲルである。本発明は、さらに、本発明のゲルを含む創傷被覆材または創傷治癒剤、および本発明のゲルによって形成されたペプチド足場を含む外科用インプラントまたはステントに関する。さらに、本発明はまた、本発明のペプチド(単数または複数)を含む医薬組成物および/または化粧品組成物、生物医療機器または電子デバイスに関する。さらに、本発明は、本発明のペプチドを含む第1の容器、および水溶液または有機溶液を含む第2の容器を含むキットに関する。さらに、本発明は、本発明のゲルを使用した組織再生方法に関する。さらに、本発明はまた、本発明のペプチド(単数または複数)および/またはゲル(単数または複数)を使用したプリンティング方法に関する。さらに、本発明は、本発明のゲルおよび/またはペプチド(単数または複数)の使用を含む創傷の処置方法および/または創傷治癒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
3Dプリンティングテクノロジーを、例えば、医薬分野および組織工学分野において組織様構造体を構築するために適用することができる。一般に、これらの方法は、3Dバイオプリンティングと呼ばれる。典型的には、合成(例えば、ポリマー)または天然のプリンティングインクが使用される。また、アルギネートなどの植物由来材料を使用することができる。特に、天然材料を使用する場合、バッチ毎に大きなばらつきがある可能性があり、このばらつきは、バイオプリントされた3D構造体の再現性および持続可能性に影響を及ぼす。
【0003】
3Dバイオプリンティングでは、通常、3Dでプリントするためにプレポリマー粘稠溶液が使用され、プリント後、3D構築物の重合のためにイニシエーターまたは(UVまたは可視)光のいずれかが使用される。代替方法として、ポリマーまたは他の高分子構造体は、自己集合によって形成することができる。バイオプリンティングのために使用される溶液(単数または複数)は、「バイオインク」とも呼ばれる。バイオインクが3Dバイオプリンティングに適切であるためには、いくつかの重要な要因がある。これらの要因には、取り扱いの容易さ、生体適合性、生物模倣構造、生分解性、多孔度、および機械的強度が含まれる。バイオインクは、容易に調製され、所望の空間中の位置および時点に高分子構造体を形成することが必要とされる。したがって、プリンティング方法および組織工学的方法において使用することができる有用なバイオインクが依然として必要である。
【0004】
多数の生物医学的適用(膏薬、軟膏、創傷被覆材など)のためにゲルが使用されている。多くの場合、ゲルは天然由来の化合物(ゼラチンまたはアルギン酸塩、またはカラギーナンなど)によって形成され、したがって、天然物固有の品質および組成のばらつきがある。それ故、ゲルを形成することができる新規の材料が当該分野で必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
発明の要旨
したがって、本発明の目的は、適切なバイオインクを調製するための手段を提供することであった。本発明のさらなる目的は、組織工学での使用に適切な手段を提供することであった。また、本発明の目的は、合成が容易であり、かつ天然のばらつきのないゲルを形成することができる材料を提供することであった。
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明は、自己集合によってゲルを形成することができるペプチドに関連し、前述のペプチドは、以下:
a)Zo-XnBXmW-Z’p、および
b)Zo-WXmBXn-Z’p、
(式中、
ZはN末端保護基であり、Z’はC末端保護基であり、ここで、oおよびpは、0および1から独立して選択され;
Xは、各存在で独立して、イソロイシン、ノルロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、グリシン、ホモアリルグリシン、およびホモプロパルギルグリシンから選択される脂肪族アミノ酸であり、ここで、nおよびmは、0、1、および2から独立して選択される整数であり、但し、m+n≦2であり、
Bは、フェニルアラニンおよびトリプトファンから選択される芳香族アミノ酸であるか、前述の芳香族アミノ酸の脂肪族対応物であり、前述の脂肪族対応物は、シクロヘキシルアラニン、4-ヒドロキシ-シクロヘキシルアラニン、3,4-ジヒドロキシシクロヘキシルアラニンから選択され、
【0007】
Wは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、5-N-エチル-グルタミン(テアニン)、シトルリン、チオ-シトルリン、システイン、ホモシステイン、メチオニン、エチオニン、セレノメチオニン、テルロメチオニン、トレオニン、アロトレオニン、セリン、ホモセリン、チロシン、ヒスチジン、アルギニン、ホモアルギニン、オルニチン、リジン、N(6)-カルボキシメチルリジン、ヒスチジン、2,4-ジアミノ酪酸(Dab)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、およびN(6)-カルボキシメチルリジンから選択される極性アミノ酸であり、
前述の極性アミノ酸は、好ましくは、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、トレオニン、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、オルニチン(Orn)、2,4-ジアミノ酪酸(Dab)、および2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)からなる群から選択される)から選択される一般式を有する。
【0008】
1つの実施形態では、oおよびpが各々1である。
1つの実施形態では、Zが一般式-C(O)-Rを有し、ここで、Rが、H、非置換または置換されたアルキル、および非置換または置換されたアリールからなる群から選択され、
ここで、Rが、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、およびイソブチルからなる群から選択され、そして
ここで、Z’が-NR1R2であり、R1およびR2が、HおよびC1~C10アルキルから独立して選択され、前記-NR1R2が、したがって、前記ペプチドのC末端にアミド基を形成し、
ここで、好ましくは、Zがアセチル基であり、ここで、好ましくはZ’がNH2である。
【0009】
1つの実施形態では、ペプチド中の前記アミノ酸が、L-アミノ酸またはD-アミノ酸のいずれかである。
【0010】
1つの実施形態では、記親水性アミノ酸の各々が、ヒドロキシル基、エーテル基、カルボキシル基、イミド基、アミド基、エステル基、アミノ基、グアニジン基、チオ基、チオエーテル基、セレノ基、およびテルロ基から独立して選択される極性基を有する。
【0011】
1つの実施形態では、ゲルがヒドロゲルであるか、オルガノゲルである。
【0012】
1つの実施形態では、ペプチドは、
IVFK (配列番号1)
IVOK (配列番号2)
IFVK (配列番号3)
IOVK (配列番号4)
FIVK (配列番号5)
OIVK (配列番号6)
FVIK (配列番号7)
OVIK (配列番号8)
IVFD (配列番号9)
IVOD (配列番号10)
IFVD (配列番号11)
IOVD (配列番号12)
FIVD (配列番号13)
OIVD (配列番号14)
FVID (配列番号15)
OVID (配列番号16)
IVFE (配列番号17)
IVOE (配列番号18)
IFVE (配列番号19)
IOVE (配列番号20)
FIVE (配列番号21)
OIVE (配列番号22)
FVIE (配列番号23)
OVIE (配列番号24)
IVFS (配列番号25)
IVOS (配列番号26)
IFVS (配列番号27)
IOVS (配列番号28)
FIVS (配列番号29)
OIVS (配列番号30)
FVIS (配列番号31)
OVIS (配列番号32)
IVFR (配列番号33)
IVOR (配列番号34)
IFVR (配列番号35)
IOVR (配列番号36)
FIVR (配列番号37)
OIVR (配列番号38)
FVIR (配列番号39)
OVIR (配列番号40)
IVF(Dab) (配列番号41)
IVO(Dab) (配列番号42)
IFV(Dab) (配列番号43)
IOV(Dab) (配列番号44)
FIV(Dab) (配列番号45)
OIV(Dab) (配列番号46)
FVI(Dab) (配列番号47)
OVI(Dab) (配列番号48)
IVF(Dap) (配列番号49)
IVO(Dap) (配列番号50)
IFV(Dap) (配列番号51)
IOV(Dap) (配列番号52)
FIV(Dap) (配列番号53)
OIV(Dap) (配列番号54)
FVI(Dap) (配列番号55)
OVI(Dap) (配列番号56)
IVF(Orn) (配列番号57)
IVO(Orn) (配列番号58)
IFV(Orn) (配列番号59)
IOV(Orn) (配列番号60)
FIV(Orn) (配列番号61)
OIV(Orn) (配列番号62)
FVI(Orn) (配列番号63)
OVI(Orn) (配列番号64)
KFVI (配列番号65)
KOVI (配列番号66)
KVFI (配列番号67)
KVOI (配列番号68)
KVIF (配列番号69)
KVIO (配列番号70)
KIVF (配列番号71)
KIVO (配列番号72)
DFVI (配列番号73)
DOVI (配列番号74)
DVFI (配列番号75)
DVOI (配列番号76)
DVIF (配列番号77)
DVIO (配列番号78)
DIVF (配列番号79)
DIVO (配列番号80)
EFVI (配列番号81)
EOVI (配列番号82)
EVFI (配列番号83)
EVOI (配列番号84)
EVIF (配列番号85)
EVIO (配列番号86)
EIVF (配列番号87)
EIVO (配列番号88)
SFVI (配列番号89)
SOVI (配列番号90)
SVFI (配列番号91)
SVOI (配列番号92)
SVIF (配列番号93)
SVIO (配列番号94)
SIVF (配列番号95)
SIVO (配列番号96)
RFVI (配列番号97)
ROVI (配列番号98)
RVFI (配列番号99)
RVOI (配列番号100)
RVIF (配列番号101)
RVIO (配列番号102)
RIVF (配列番号103)
RIVO (配列番号104)
(Dab)FVI (配列番号105)
(Dab)OVI (配列番号106)
(Dab)VFI (配列番号107)
(Dab)VOI (配列番号108)
(Dab)VIF (配列番号109)
(Dab)VIO (配列番号110)
(Dab)IVF (配列番号111)
(Dab)IVO (配列番号112)
(Dap)FVI (配列番号113)
(Dap)OVI (配列番号114)
(Dap)VFI (配列番号115)
(Dap)VOI (配列番号116)
(Dap)VIF (配列番号117)
(Dap)VIO (配列番号118)
(Dap)IVF (配列番号119)
(Dap)IVO (配列番号120)
(Orn)FVI (配列番号121)
(Orn)OVI (配列番号122)
(Orn)VFI (配列番号123)
(Orn)VOI (配列番号124)
(Orn)VIF (配列番号125)
(Orn)VIO (配列番号126)
(Orn)IVF (配列番号127)
(Orn)IVO (配列番号128)
から選択される配列からなる。
【0013】
ここで、I=イソロイシン、L=ロイシン、V=バリン、F=フェニルアラニン、K=リジン、D=アスパラギン酸、O=シクロヘキシルアラニン、(Dab)=2,4-ジアミノ酪酸、(Dap)=2,3-ジアミノプロピオン酸、および(Orn)=オルニチンである;
ここで、配列の各々が、N末端で保護されていても未保護であってもよく、好ましくは、アセチル化または非アセチル化されていてよく、C末端でアミド化または非アミド化されていてよく、ここで、好ましくは、配列は、
Ac-IVFK-NH2 (配列番号1)
Ac-IVOK-NH2 (配列番号2)
Ac-IFVK-NH2 (配列番号3)
Ac-IOVK-NH2 (配列番号4)
Ac-FIVK-NH2 (配列番号5)
Ac-OIVK-NH2 (配列番号6)
Ac-FVIK-NH2 (配列番号7)
Ac-OVIK-NH2 (配列番号8)
Ac-IVFD-COOH (配列番号9)
Ac-IVOD-COOH (配列番号10)
Ac-IFVD-COOH (配列番号11)
Ac-IOVD-COOH (配列番号12)
Ac-FIVD-COOH (配列番号13)
Ac-OIVD-COOH (配列番号14)
Ac-FVID-COOH (配列番号15)
Ac-OVID-COOH (配列番号16)
Ac-IVFE-COOH (配列番号17)
Ac-IVOE-COOH (配列番号18)
Ac-IFVE-COOH (配列番号19)
Ac-IOVE-COOH (配列番号20)
Ac-FIVE-COOH (配列番号21)
Ac-OIVE-COOH (配列番号22)
Ac-FVIE-COOH (配列番号23)
Ac-OVIE-COOH (配列番号24)
Ac-IVFS--NH2 (配列番号25)
Ac-IVOS--NH2 (配列番号26)
Ac-IFVS--NH2 (配列番号27)
Ac-IOVS--NH2 (配列番号28)
Ac-FIVS--NH2 (配列番号29)
Ac-OIVS--NH2 (配列番号30)
Ac-FVIS--NH2 (配列番号31)
Ac-OVIS--NH2 (配列番号32)
Ac-IVFR-NH2 (配列番号33)
Ac-IVOR-NH2 (配列番号34)
Ac-IFVR-NH2 (配列番号35)
Ac-IOVR-NH2 (配列番号36)
Ac-FIVR-NH2 (配列番号37)
Ac-OIVR-NH2 (配列番号38)
Ac-FVIR-NH2 (配列番号39)
Ac-OVIR-NH2 (配列番号40)
Ac-IVF(Dab)-NH2 (配列番号41)
Ac-IVO(Dab)-NH2 (配列番号42)
Ac-IFV(Dab)-NH2 (配列番号43)
Ac-IOV(Dab)-NH2 (配列番号44)
Ac-FIV(Dab)-NH2 (配列番号45)
Ac-OIV(Dab)-NH2 (配列番号46)
Ac-FVI(Dab)-NH2 (配列番号47)
Ac-OVI(Dab)-NH2 (配列番号48)
Ac-IVF(Dap)-NH2 (配列番号49)
Ac-IVO(Dap)-NH2 (配列番号50)
Ac-IFV(Dap)-NH2 (配列番号51)
Ac-IOV(Dap)-NH2 (配列番号52)
Ac-FIV(Dap)-NH2 (配列番号53)
Ac-OIV(Dap)-NH2 (配列番号54)
Ac-FVI(Dap)-NH2 (配列番号55)
Ac-OVI(Dap)-NH2 (配列番号56)
Ac-IVF(Orn)-NH2 (配列番号57)
Ac-IVO(Orn)-NH2 (配列番号58)
Ac-IFV(Orn)-NH2 (配列番号59)
Ac-IOV(Orn)-NH2 (配列番号60)
Ac-FIV(Orn)-NH2 (配列番号61)
Ac-OIV(Orn)-NH2 (配列番号62)
Ac-FVI(Orn)-NH2 (配列番号63)
Ac-OVI(Orn)-NH2 (配列番号64)
Ac-KFVI-NH2 (配列番号65)
Ac-KOVI-NH2 (配列番号66)
Ac-KVFI-NH2 (配列番号67)
Ac-KVOI-NH2 (配列番号68)
Ac-KVIF-NH2 (配列番号69)
Ac-KVIO-NH2 (配列番号70)
Ac-KIVF-NH2 (配列番号71)
Ac-KIVO-NH2 (配列番号72)
Ac-DFVI-NH2 (配列番号73)
Ac-DOVI-NH2 (配列番号74)
Ac-DVFI-NH2 (配列番号75)
Ac-DVOI-NH2 (配列番号76)
Ac-DVIF-NH2 (配列番号77)
Ac-DVIO-NH2 (配列番号78)
Ac-DIVF-NH2 (配列番号79)
Ac-DIVO-NH2 (配列番号80)
Ac-EFVI-NH2 (配列番号81)
Ac-EOVI-NH2 (配列番号82)
Ac-EVFI-NH2 (配列番号83)
Ac-EVOI-NH2 (配列番号84)
Ac-EVIF-NH2 (配列番号85)
Ac-EVIO-NH2 (配列番号86)
Ac-EIVF-NH2 (配列番号87)
Ac-EIVO-NH2 (配列番号88)
Ac-SFVI-NH2 (配列番号89)
Ac-SOVI-NH2 (配列番号90)
Ac-SVFI-NH2 (配列番号91)
Ac-SVOI-NH2 (配列番号92)
Ac-SVIF-NH2 (配列番号93)
Ac-SVIO-NH2 (配列番号94)
Ac-SIVF-NH2 (配列番号95)
Ac-SIVO-NH2 (配列番号96)
Ac-RFVI-NH2 (配列番号97)
Ac-ROVI-NH2 (配列番号98)
Ac-RVFI-NH2 (配列番号99)
Ac-RVOI-NH2 (配列番号100)
Ac-RVIF-NH2 (配列番号101)
Ac-RVIO-NH2 (配列番号102)
Ac-RIVF-NH2 (配列番号103)
Ac-RIVO-NH2 (配列番号104)
Ac-(Dab)FVI-NH2 (配列番号105)
Ac- (Dab)OVI-NH2 (配列番号106)
Ac- (Dab)VFI-NH2 (配列番号107)
Ac- (Dab)VOI-NH2 (配列番号108)
Ac- (Dab)VIF-NH2 (配列番号109)
Ac- (Dab)VIO-NH2 (配列番号110)
Ac- (Dab)IVF-NH2 (配列番号111)
Ac- (Dab)IVO-NH2 (配列番号112)
Ac-(Dap)FVI-NH2 (配列番号113)
Ac-(Dap)OVI-NH2 (配列番号114)
Ac-(Dap)VFI-NH2 (配列番号115)
Ac-(Dap)VOI-NH2 (配列番号116)
Ac-(Dap)VIF-NH2 (配列番号117)
Ac-(Dap)VIO-NH2 (配列番号118)
Ac-(Dap)IVF-NH2 (配列番号119)
Ac-(Dap)IVO-NH2 (配列番号120)
Ac-(Orn)FVI-NH2 (配列番号121)
Ac-(Orn)OVI-NH2 (配列番号122)
Ac-(Orn)VFI-NH2 (配列番号123)
Ac-(Orn)VOI-NH2 (配列番号124)
Ac-(Orn)VIF-NH2 (配列番号125)
Ac-(Orn)VIO-NH2 (配列番号126)
Ac-(Orn)IVF-NH2 (配列番号127)
Ac-(Orn)IVO-NH2 (配列番号128)
から選択される。
【0014】
ここで、Ac=アセチル(N末端をアセチル化している)、NH2=アミン(したがって、C末端をアミド化している)、および-COOH=無保護C末端である。
【0015】
1つの実施形態では、前記N末端保護基Zが、天然および合成のアミノ酸誘導体が含まれるペプチド模倣分子であり、ここで、前記ペプチド模倣分子のN末端を、カルボン酸、アミド、アルコール、アルデヒド、アミン、イミン、ニトリル、尿素アナログ、ホスファート、カルボナート、スルファート、ニトラート、マレイミド、ビニルスルホン、アジド、アルキン、アルケン、炭水化物、イミド、ペルオキシド、エステル、アリール、ケトン、スルファイト、ニトライト、ホスホナート、およびシランからなる群から選択される官能基で改変することができる。
【0016】
1つの実施形態では、前記C末端基Z’が、小分子、官能基、およびリンカーの群から選択される。
【0017】
1つの実施形態では、前記C末端基Z’が、
-官能基、例えば、極性または無極性の官能基、
例えば、-COOH、-COOR、-COR、-CONHR、または-CONRR’(これらに限定されない)(RおよびR’が、H、非置換または置換されたアルキル、および非置換または置換されたアリールからなる群から選択される)、
-NH2、-OH、-SH、-CHO、マレイミド、イミドエステル、カルボジイミドエステル、イソシアナート;
-小分子、
例えば、糖、アルコール、ヒドロキシ酸、アミノ酸、ビタミン、ビオチン(これらに限定されない);
-極性官能基で末端化するリンカー、
例えば、エチレンジアミン、PEG、カルボジイミドエステル、イミドエステル(これらに限定されない);
-小分子またはビタミンにカップリングしたリンカー、
例えば、ビオチン、糖、ヒドロキシ酸
から選択される。
【0018】
1つの実施形態では、前記C末端基Z’が、
生物活性分子または生物活性部分、
例えば、成長因子、サイトカイン、脂質、細胞受容体リガンド、ホルモン、プロドラッグ、薬物、ビタミン、抗原、抗体、抗体フラグメント、オリゴヌクレオチド(DNA、伝令RNA、短ヘアピン型RNA短ヘアピン型RNA、低分子干渉RNA、マイクロRNA、ペプチド核酸、アプタマーが含まれるが、これらに限定されない)、サッカリド;
標識(単数または複数)、染料(単数または複数),
例えば、蛍光標識または放射性標識(単数または複数)、造影剤;
病原体、
例えば、ウイルス、細菌、および寄生虫;
マイクロ粒子またはナノ粒子
またはその組み合わせ
から選択される少なくとも1つの化合物の化学的結合またはカップリングのために使用するのに適切であり、
ここで、前記化学的結合を、前記ペプチドの自己集合前または後に行うことができる。
【0019】
1つの実施形態では、前記ペプチドのC末端が、
生物活性分子または生物活性部分、
例えば、成長因子、サイトカイン、脂質、細胞受容体リガンド、ホルモン、プロドラッグ、薬物、ビタミン、抗原、抗体、抗体フラグメント、オリゴヌクレオチド(DNA、伝令RNA、短ヘアピン型RNA、低分子干渉RNA、マイクロRNA、ペプチド核酸、アプタマーが含まれるが、これらに限定されない)、サッカリド;
標識(単数または複数)、染料(単数または複数),
例えば、蛍光標識または放射性標識(単数または複数)、造影剤;
病原体、
例えば、ウイルス、細菌、および寄生虫;
マイクロ粒子またはナノ粒子
またはその組み合わせ
から選択される少なくとも1つの化合物の化学的結合またはカップリングなどによって官能化され、
ここで、前記化学的結合を、前記ペプチドおよび/またはペプチド模倣物の自己集合前または後に行うことができる。
【0020】
1つの実施形態では、前記C末端基Z’が、天然および合成のアミノ酸誘導体が含まれるペプチド模倣分子であり、ここで、前記ペプチド模倣分子のC末端を、カルボン酸、アミド、アルコール、アルデヒド、アミン、イミン、ニトリル、尿素アナログ、ホスファート、カルボナート、スルファート、ニトラート、マレイミド、ビニルスルホン、アジド、アルキン、アルケン、炭水化物、イミド、ペルオキシド、エステル、アリール、ケトン、スルファイト、ニトライト、ホスホナート、およびシランからなる群から選択される官能基で改変することができる。
【0021】
1つの実施形態では、本発明に従うペプチドは、生理学的条件下、周囲温度にて、1日間から少なくとも6ヶ月間まで、好ましくは少なくとも8ヶ月間まで、より好ましくは少なくとも12ヶ月間までの範囲の期間にわたって水溶液中で安定である。
【0022】
1つの実施形態では、本発明に従うペプチドは、生理学的条件下、90℃までの温度にて、少なくとも1時間にわたって水溶液中で安定である。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、上記で規定されるような本発明に従うペプチドを含むヒドロゲルまたはオルガノゲルに関する。
【0024】
1つの実施形態では、ヒドロゲルは、周囲温度にて、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも2~4ヶ月間、より好ましくは少なくとも6~12ヶ月間にわたって水溶液中で安定である。
【0025】
1つの実施形態ではヒドロゲルは、貯蔵弾性率G’の損失弾性率G’’に対する比が2~5を超えることを特徴とする。
【0026】
1つの実施形態では、ヒドロゲルまたはオルガノゲルは、0.1Hz~100Hzの範囲の周波数での貯蔵弾性率G’が500Pa~200,000Paであることを特徴とする。
【0027】
1つの実施形態では、ヒドロゲルまたはオルガノゲルの機械的強度は、コラーゲンまたはその加水分解形体(ゼラチン)より高い。
【0028】
1つの実施形態では、本発明に従うヒドロゲルまたはオルガノゲルは、上記で規定されるような本発明に従うペプチドの繊維を含み、前記繊維は、微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、オリゴサッカリド、ポリサッカリド、ビタミン、無機分子、合成ポリマー、マイクロ粒子もしくはナノ粒子、有機小分子、または薬学的に活性な化合物のうちの少なくとも1つを捕捉することができるネットワークを画定する。
【0029】
1つの実施形態では、ヒドロゲルは、繊維のネットワークによって捕捉された微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、オリゴサッカリド、ポリサッカリド、ビタミン、無機分子、合成ポリマー、有機小分子、マイクロ粒子もしくはナノ粒子、または薬学的に活性な化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
1つの実施形態では、繊維は、繊維のネットワークによって捕捉された微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、オリゴサッカリド、ポリサッカリド、ビタミン、無機分子、合成ポリマー、有機小分子、マイクロ粒子もしくはナノ粒子、または薬学的に活性な化合物のうちの少なくとも1つにカップリングされている。
【0031】
1つの実施形態では、ヒドロゲルまたはオルガノゲルは、燃料電池、太陽電池、電子電池、バイオセンシングデバイス、医療機器、インプラント、医薬組成物、および化粧品組成物のうちの少なくとも1つ中に含まれている。
【0032】
1つの実施形態では、本発明に従うヒドロゲルまたはオルガノゲルは、注射可能である。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、以下:
医療用ツールキット、
燃料電池、
太陽電池、
電子電池、
再生医学および組織再生、
移植可能な足場
疾患モデル
創傷治癒、
2Dおよび3D合成細胞培養基質、
幹細胞療法、
注射療法、
バイオセンサー開発、
高スループットスクリーニング、
生体官能化表面、
プリンティング
バイオファブリケーション、例えば、バイオプリンティング、および
遺伝子療法
のうちの少なくとも1つにおける、上で規定されるような本発明に従うペプチドまたはヒドロゲルまたはオルガノゲルの使用に関する。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従うペプチドを水溶液または有機溶液にそれぞれ溶解する工程を含む、ヒドロゲルまたはオルガノゲルを調製する方法にも関する。
【0035】
1つの実施形態では、水溶液または有機溶液に溶解したペプチドは、さらに加温され、ここで、前記温度が、20℃~90℃、好ましくは20℃~70℃の範囲である。
【0036】
1つの実施形態では、ペプチドは、0.01μg/ml~100mg/mlの濃度、好ましくは1mg/ml~50mg/mlの濃度、より好ましくは約1mg/ml~約20mg/mlの濃度で溶解される。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従うヒドロゲルまたはオルガノゲルを含む細胞または組織移植片またはデバイスに関する。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従うヒドロゲルまたはオルガノゲルを含む創傷被覆材または創傷治癒剤にも関する。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、ペプチド足場を含む外科用インプラントまたはステントであって、ペプチド足場が本発明に従うヒドロゲルまたはオルガノゲルによって形成される、外科用インプラントまたはステントにも関する。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従うペプチドを含む医薬組成物および/または化粧品組成物および/または生物医療機器および/または電子デバイスおよび/または溶液にも関する。
【0041】
1つの実施形態では、本発明に従う医薬組成物および/または化粧品組成物および/または生物医療機器、および/または電子デバイスおよび/または溶液は薬学的に活性な化合物をさらに含む。
【0042】
1つの実施形態では、医薬組成物および/または化粧品組成物および/または溶液は局所用のゲルもしくはクリーム、スプレー、散剤、またはシート、パッチもしくはメンブランの形態で提供されるか、
医薬組成物および/または化粧品組成物および/または溶液は、注射剤の形態で提供される。
【0043】
1つの実施形態では、本発明に従う医薬組成物および/または化粧品組成物および/または溶液は、薬学的に許容され得るキャリアをさらに含む。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、パーツのキットであって、キットが、本発明に従うペプチドを有する第1の容器および水溶液または有機溶液を有する第2の容器を含む、パーツのキットにも関する。
【0045】
1つの実施形態では、第2の容器の水溶液または有機溶液が薬学的に活性な化合物をさらに含み、そして/またはペプチドを有する第1の容器が薬学的に活性な化合物をさらに含む。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、組織再生のin vitro法またはin vivo法であって、
(a)上で定義されるヒドロゲルを提供する工程、
(b)前記ヒドロゲルまたはオルガノゲルを再生組織の形成を意図する細胞に暴露する工程、
(c)前記細胞を前記ヒドロゲルまたはオルガノゲル上で成長させる工程
を含む、方法にも関する。
【0047】
1つの実施形態では、方法はin vivoで実施され、工程a)において、ヒドロゲルが組織再生を目的とする体内の位置に提供され、
ここで、工程a)を、好ましくは、組織再生を目的とする体内の位置にヒドロゲルを注射することによって行う。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、創傷の処置および創傷治癒のための方法であって、
有効量の本発明に従うヒドロゲルまたはオルガノゲルまたは本発明に従う医薬組成物を創傷に適用する工程を含む、方法にも関する。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、in vitroおよび/またはin vivoでの使用、好ましくは経口適用、注射および/または局所適用のための、本発明に従うヒドロゲルまたはオルガノゲルを含むバイオイメージングデバイスにも関する。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従うヒドロゲルまたはオルガノゲルを含む2Dまたは3D細胞培養基質にも関する。
【0051】
本発明者らは、驚いたことに、溶液、特に水溶液中で超ゲル化剤を形成することができる直鎖ペプチドの最小配列を発明し、したがって、このペプチドは、生物学的適用および生物医学的適用に特に有用である。これらのペプチドは、合理的に設計および発明されたアミノ酸組成が2~4アミノ酸である極めて短いペプチドである。極めて短いペプチドは、合成が非常に容易でありかつ経済的であるというさらなる利点を有する。
【0052】
本発明者らは、特定の両親媒性ペプチド配列が、溶媒(例えば、水または他の水溶液(生理学的緩衝液など))を99重量%を超えて捕捉することによって低分子量ゲル(LMWG)を形成する真の超ゲル化特性を示すことを見出した。興味深いことに、これらの両親媒性ペプチドは、ヒドロゲルの形態の三次元(3D)繊維状網に自己集合可能な固有の性質を有する。これらのゲルは、ゲルの繊維網の単一の繊維の直径がナノメートルであるので、ナノゲルとも呼ぶことができる。これらのペプチド化合物は、非共有結合性相互作用によって自己駆動されて柔軟な固体材料を形成する。一般に天然アミノ酸から構成される関与ペプチドの性質に基づいて、これらの柔軟な材料を、生物医学的適用、特に組織工学のために容易に使用することができる。
【0053】
自己集合プロセスの性質が専ら配列情報に依存するので、無極性芳香族残基が非芳香族の対応残基と交換される(すなわち、フェニルアラニンがシクロヘキシルアラニンと交換される)ときに、少なくとも1つの芳香族アミノ酸とともに脂肪族アミノ酸と芳香族アミノ酸との混合物を含む両親媒性ペプチドが自己集合性を示すことが認められた。いかなる理論や機序に拘束されることを望まないが、疎水性芳香族残渣が非芳香族残基と交換されるとペプチドのゲル化特性が改善されるというこの効果は、自己集合プロセスの改善によるものであると説明される。また、いかなる機序や理論に拘束されることを望まないが、集合機序は、無作為な構造体から開始され、らせん状の中間体、その後のβシート構造体、次いでβターンまたはクロスβ末端構造体に至る異なる構造体への移行工程を含む段階的プロセスで生じるようである。かかる移行では、より強固な芳香族構造体は柔軟性が低く、したがって、足場形成中に必要な二次構造の変化が妨害される。
【0054】
本発明者らは、繊維および集合したネットワークのトポグラフィが細胞外基質(ECM)に非常に類似することを示すことができた。両親媒性ペプチド構造体の一部である極性アミノ酸部分の性質に依存して、ナノゲルをin situで形成することができる。ゲルのin situ形成により、療法関連分子(療法薬、細胞、ナノ粒子、小分子、および核酸など)を非経口適用することが可能である。アミノ酸側鎖の性質に依存して、ペプチド構造体を側鎖特異的に生体官能化することができるが、これは、ゲル化および超分子構造体の形成が不可能であるという前提のもとに行われなければならない。
【0055】
したがって、官能基(グリカン(すなわち、グリコシル化による)、アルデヒド基またはケト基など)、リン酸化、硫化、ナノ粒子官能化、親和性アンカー(ストレプトアビジンなど)のためのビオチン官能化、さらに、生物活性配列(RGD接着促進モチーフ、架橋モチーフなど)の付加。
【0056】
さらに、本発明のペプチドはまた、本明細書中で時折「インク」または「バイオインク」とも呼ばれ、構造体、特に、三次元(「3D」)構造体をプリントするために使用することができる水性組成物または他の溶媒組成物の処方に特に有用である。かかるプリントされた構造体は、本発明のペプチドのゲル化特性を利用し、この構造体自体が、細胞、化合物、粒子、特に、ナノ粒子などの他の実体のための足場として働くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
発明の実施形態の技術的特徴をより明確にさらに例証するために、種々の実施形態の説明のために提供した添付の図面を以下に示す。これらは、本発明の例示的な実施形態にすぎず、これに限定することを意図するものではない。特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態の修正が可能である。
【0058】
【
図1A】
図1Aは、極めて短いペプチドIVZKおよびIVFKが高分子ナノ繊維状ヒドロゲルに自己集合することを示す。
【0059】
【
図1B】
図1Bは、極めて短いペプチドIVZKおよびIVFKの化学構造ならびに対応するヒドロゲルならびに高分解能透過型電子顕微鏡法(TEM)画像を示す。 IVFKペプチド繊維の平均直径を、13枚のTEM画像から収集したデータを使用した分布曲線のプロットによって計算した。平均直径は、10.3nmである(左下のパネル)。 IVZK TEMは、3つの異なるタイプの平均直径を示す(4.0nm、8.6nm、および15.5nm)(右下のパネル)。平均直径を計算するための画像の使用枚数は10であった。8.6nmの繊維直径が、他の繊維直径と比較して最も多かった。単一のモノマー繊維の平均直径は4.0nmである。
【0060】
【
図2】
図2は、異なる倍率で示すFESEMによる自己集合しているペプチドIVFKおよびIVZKヒドロゲルの形態学的特徴を示す。
【0061】
【
図3】
図3は、ペプチドヒドロゲルの機械的強度が高いことが証明されたことを示す。25℃で0.1%ひずみ下での角周波数の関数としての異なるヒドロゲル(20mg/mL)の貯蔵弾性係数(G’)。角周波掃引を、0.1%歪みで行った。
【0062】
【
図4】
図4は、ペプチドヒドロゲル上での3D細胞培養のために使用したHeLa細胞、HEK293T細胞、およびヒト皮膚線維芽細胞の細胞形態学を示す。
【0063】
【
図5】
図5は、IVFKペプチドを用いたHeLaのMTT生体適合性アッセイのグラフ図を示す。
【0064】
【
図6】
図6は、IVFKペプチドで処置したHeLa細胞の生/死染色を示す。
【0065】
【
図7】
図7は、IVZKペプチドを用いたHeLaのMTT生体適合性アッセイのグラフ図を示す。
【0066】
【
図8】
図8は、IVZKペプチドで処置したHeLa細胞の生/死画像を示す。
【0067】
【
図9】
図9は、IVFKペプチドを用いたHEK293TのMTT生体適合性アッセイのグラフ図を示す。
【
図10】
図10は、バイオプリントした構築物の3D細胞生存度アッセイを示す。IVFKペプチドで処置したHEK293T細胞の生/死染色。
【0068】
【
図11】
図11は、バイオプリントした構築物の3D細胞生存度アッセイを示す。IVFKペプチドで処置したHEK293T細胞の生/死染色。
【0069】
【
図12】
図12は、IVZKペプチドを用いたHEK293TのMTT生体適合性アッセイのグラフ図を示す。
【0070】
【
図13】
図13は、バイオプリントした構築物の3D細胞生存度アッセイを示す。IVZKペプチドで処置したHEK293T細胞の生/死染色。
【0071】
【
図14】
図14は、バイオプリントした構築物の3D細胞生存度アッセイを示す。IVZKペプチドで処置したHEK293T細胞の生/死染色。
【0072】
【
図15】
図15は、ヒト筋芽細胞と1週間培養したペプチドヒドロゲルを示す。
【0073】
【
図16】
図16は、バイオインクとしてIVZKペプチド溶液を使用したヒト皮膚線維芽細胞の3Dバイオプリンティングを示す(ヒト皮膚線維芽細胞-400万/ml;ペプチド-10mg/ml)。
【0074】
【
図17】
図17は、ヒト皮膚線維芽細胞が包埋されたIVZKペプチドヒドロゲルの蛍光画像を示す(ヒト皮膚線維芽細胞-400万/ml;ペプチド-10mg/ml)。ファロイジンを使用した緑色のアクチン細胞骨格染色、DAPIを使用した青色の核染色。
【0075】
【
図18】
図18は、3Dヒト皮膚線維芽細胞が包埋されたIVZKペプチドヒドロゲルの蛍光画像を示す(ヒト皮膚線維芽細胞-400万/ml;ペプチド-10mg/ml)。ファロイジンを使用した緑色のアクチン細胞骨格染色、DAPIを使用した青色の核染色。
【0076】
【
図19】
図19は、異なる細胞培養日数でIVZKバイオインクを使用して3Dバイオプリントしたヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)の蛍光共焦点顕微鏡法を示す(核を青色で示し、F-アクチンを赤色で示し、ビンキュリンを緑色で示す)。
【発明を実施するための形態】
【0077】
さらに、本発明の実施形態を、ここに、以下の実施例を参照してさらに説明し、これらの実施例は例として示されており、本発明を制限しない。
【実施例】
【0078】
実施例
ペプチド合成
ペプチドを、固相ペプチド合成を使用して手作業で合成し、HPLCによって95%超まで精製した。アミノ酸およびペプチドの含有量を分析した。ペプチド分子を、MBHA Rinkアミド樹脂での標準的な固体ペプチド合成を使用して手作業で合成した。DCMを使用して反応容器内の樹脂を30分間膨潤させた。次いで、容器を減圧することによって溶媒を除去した。樹脂を10mLの20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液で20分間処理することによって樹脂上のFmoc保護基を除去した。引き続いてDMFおよびDCMを使用して各反応後に樹脂をリンスして、容器から過剰な材料を除去した。次いで、各1モル当量の樹脂について3当量のN保護アミノ酸、2.9当量のTBTU、および6当量のDIPEAを含むアミノ酸残基溶液を注ぎ、少なくとも2時間撹拌した。各カップリング後にKaiser試験を行って、ペプチドカップリングの成功を試験した。N末端ペプチド配列のFmoc保護基を、10mLの20%(v/v)ピペリジン/DMFの添加および20分間の撹拌によって除去した。アミノ酸カップリング、洗浄、Kaiser試験、およびFmoc切断であるこれらの連続工程を、最後のアミノ酸配列まで繰り返した。ペプチド配列をキャッピングするために無水酢酸、DIPEA、およびDMFの混合溶液を容器に注ぐことによってアセチル化した。次いで、95%TFA、2.5%水、および2.5%トリイソプロピルシランを含む酸溶液と2時間混合することによって樹脂からペプチド配列を切断した。次いで、樹脂を、DCMのみでリンスし、丸底フラスコに回収した。回転蒸発を使用して回収したペプチド溶液から過剰なTFAおよびDCMを除去した。ジエチルエーテルをフラスコ中に添加して、ペプチドを分散させ、一晩静置した。次いで、この溶液を遠心分離して、ジエチルエーテルから固体形態のペプチドを分離した。引き続いて、回収した白色固体を水に溶解し、凍結乾燥させて、ふわふわした形態のペプチドを得た。最後に、ペプチドを、使用前に分取HPLCを使用して精製した。
【0079】
9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護されたアミノ酸、Rink Amide MBHA樹脂、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、および1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)を、GL Biochemから購入した。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)、ジエチルエーテル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピペリジン、およびトリイソプロピルシランを、Sigma-Aldrichから購入した。無水酢酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリルを、Fisher Scientificから購入した。トリフルオロ酢酸(TFA)をAcrosから購入した。化学物質を、いかなる精製も行わずに購入時のまま使用した。
【0080】
ペプチドヒドロゲルの調製
凍結乾燥させたペプチドを、milliQ水に溶解し、ボルテックスして均一な溶液を得た。引き続いて、10倍リン酸緩衝生理食塩水を最終濃度1倍でペプチド溶液に添加し、短時間ボルテックスした。ペプチド配列に応じて、数秒間から数分間または数時間以内にゲル化した。
【0081】
レオロジー解析
ペプチドヒドロゲルの機械的強度を、8mm平行平板を備えたARES-G2レオメーター(TA instruments)を22℃で使用して測定した。150μLヒドロゲルを、直径9.6mmのポリプロピレンリングの内側に、各リングキャストの上部および下部をパラフィルムで被覆し、組織培養皿を密封状態で内側に一晩保持することによって調製した。レオメーターのペルチェプレート上にヒドロゲルをローディング後、周囲の領域に水を滴下して、ヒドロゲルの蒸発を抑えた。ギャップ測定値を、1.6mmと1.9mmとの間に調整した。時間掃引を実施後、それぞれ0.1%および1rad/秒の一定歪みおよび角周波数を用いて900秒間にわたって角周波掃引および振幅掃引を実施した。時間掃引解析の終了時点の係数の値を、各ヒドロゲルの標準平衡弾性率として使用した。発振周波数-掃引解析を、歪み1%にて0.1~100rad/秒の範囲で行った。振動振幅-掃引の測定を、0.1~100%の歪みで一定の角周波数1rad/秒を用いて行った。
【0082】
透過型電子顕微鏡法(TEM)研究
TEM研究を以下の2つの異なる装置にて行った;120kVの加速電圧を用いたTecnai G2 Spirit Twinおよび300kV放出銃を備えたFEI Titan G2 80-300CT。300kVで操作するFEIのTitan Kriosを使用して低用量モードでCryoTEM画像化を行った。ペプチドナノ繊維のTEM試料を、希釈ペプチドヒドロゲル水溶液から調製した。次いで、この溶液の1滴を、使用前にグロー放電プラズマで処理済みの炭素コーティングした銅グリッド上に導入した。次いで、この液滴を10分間保持後、濾紙を使用して吸い取った。より良いコントラストを得るために、2%酢酸ウラニルを使用してグリッドを1分間染色し、次いで、少なくとも1日間乾燥後、画像化した。IVFKペプチドナノ繊維およびIVZKペプチドナノ繊維の直径を、画像解析ソフトウェアImageJを使用して、それぞれ13枚および10枚のTEM画像から測定した。各ペプチドナノ繊維のサイズ分布のヒストグラムをOriginで作成して、両ペプチドの平均直径を計算した。例えば、
図1Bを参照のこと。
【0083】
FESEM分析
ペプチドヒドロゲルを、液体窒素中で衝撃凍結させ、直ちに-80℃で一晩保存した。次いで、試料を、凍結乾燥器(Labconco,USA)中で2~3日間減圧乾燥させた。引き続いて、凍結乾燥させたヒドロゲル試料を、伝導性カーボンテープを使用してアルミニウム製のサンプルホルダー上に固定し、スパッタコーター中で白金を用いてスパッタリングした。確実に完全にコーティングされるように、異なる角度で3回コーティングした。次いで、目的の表面を、電解放出走査型電子顕微鏡(FEI Nova Nano630 SEM,Oregon,USA)にて加速電圧5~10kVを使用して試験したか、加速電圧2~3kVを用いたFEI Quanta200 FEG SEMを使用して可視化した。凍結乾燥させた試料を、SEMスタブ上のカーボン導電性テープに接着し、3nmの白金を用いてスパッタコーティングした。
【0084】
細胞培養
細胞を、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補足した培地106(Thermo Fisher Scientific,USA)において培養した。T175またはT75の細胞培養フラスコ(Corning,USA)のいずれかにおいて、95%空気および5%CO2を有する加湿インキュベーター中にて37℃で細胞を維持した。およそ80%コンフルエンスでのトリプシン処理によって細胞を継代した。培養培地を48時間毎に再供給した。
【0085】
MTTアッセイ
生体適合性研究を、96ウェルプレート(Corning,USA)で行った。HDFn細胞(10,000細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、200μL完全成長培地中で一晩インキュベートした。インキュベーション後、ウェル中の培地を交換した。ペプチドを量り分け、milliQ水に溶解した。適合性を試験するために、異なる濃度、すなわち、5mg/mL、4mg/mL、2mg/mL、1mg/mL、および0.5mg/mLのペプチドを、ウェルに添加した。無処理のウェルを、ポジティブコントロールとして使用した。プレートを、24時間インキュベートした。細胞生存度を、製造者のプロトコールにしたがって比色ミクロ培養アッセイ(Vybrant(登録商標)MTT細胞増殖アッセイキット、Thermo Fisher Scientific,USA)を使用して決定した。簡潔に述べれば、プレートを取り、培地を慎重に取り出し、10%MTT試薬を含む新鮮な無血清培地を添加した。37℃で2時間のインキュベーション後、培地上清を除去し、200μLのDMSOを各ウェルに添加して、ホルマザン結晶を溶解した。最後に、各ウェルの吸収を、プレートリーダー(PHERAstar FS,Germany)を使用して540nmで読み取った。
【0086】
生/死染色
上記のプロトコールにしたがって細胞を播種し、ペプチドで処理した。24時間のインキュベーション後、消費した培地を除去し、およそ2mMカルセインAMおよび4mMエチジウムホモ二量体-1を含むDPBS溶液(LIVE/DEAD(登録商標)生存度/細胞傷害性キット、Life TechnologiesTM)と置換し、暗所で40分間インキュベートした。画像化前に、染色液を除去し、新鮮なDPBSを添加した。染色された細胞を、倒立共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710倒立共焦点顕微鏡,Germany)下で画像化した。
【0087】
細胞(25,000細胞/プレート)を、ガラスベースの共焦点皿中にヒドロゲルを有する3D培養物に包埋し、コントロールとして無処理細胞を使用して24時間インキュベートした。24時間後、培地をおよそ2μMカルセインおよび4μMエチジウムホモ二量体-1を含むPBS(1X)溶液(LIVE/DEAD生存度/細胞傷害性キット,Molecular Probe,L3224)と置換し、30分間インキュベートした。ZEISS蛍光顕微鏡を使用して、生細胞を緑色チャネルで画像化し、死細胞を赤色チャネルで画像化した。
図8に示すように、得られた写真を、ImageJを使用して重ね合わせた。
【0088】
細胞骨格染色
培養24時間後に免疫染色を行った。簡潔に述べれば、細胞を3.7%パラホルムアルデヒド溶液で30分間固定し、冷細胞骨格緩衝液(3mM MgCl2、300mMスクロース、および0.5%TritonX-100を含むPBS溶液)中で10分間インキュベートして細胞膜を透過処理した。透過処理した細胞を、ブロッキング緩衝液(5%FBS、0.1%Tween-20、および0.02%アジ化ナトリウムを含むPBS)中にて37℃で30分間インキュベートし、その後に抗ビンキュリン(1:100)中にて37℃で1時間インキュベートし、引き続いて、抗マウスIgG(全分子)-FITCおよびローダミン-ファロイジン(1:200)と37℃で1時間インキュベートした。さらに、細胞をDAPI中にて37℃で1時間インキュベートして核を対比染色した。これらの蛍光色素で処理した細胞を観察し、レーザー走査型共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710倒立共焦点顕微鏡,Germany)を使用して画像化した。
【0089】
ペプチドヒドロゲル中の細胞の3D培養
細胞を、24ウェル組織培養プレート中にてペプチドヒドロゲル中に封入した。ペプチド溶液を、200μL/ウェルでプレートに添加した。細胞を3×PBSに再懸濁し、100,000細胞/ウェルで各ウェルに添加し、穏やかに混合した。細胞を含む3×PBS添加後のペプチドヒドロゲルの最終濃度は1×であった。3~5分以内にゲル化し、引き続いて、培養培地をウェルに添加した。予め決定した時点で、3D細胞生存度アッセイ、生/死アッセイ、および細胞骨格染色を実施した。
【0090】
確実に細胞が3D構築物中で成長するようにプレートの底部にベースを作製することによって3D細胞培養を実施し、ここで、ベースを、共焦点プレート中にペプチド溶液(水を有するペプチド)ピペッティングすることによって作製し、(PBS)と混合した。ゲル形成後、ペプチド溶液をこのベースの上に添加した。培養したヒト皮膚線維芽細胞をトリプシン処理し、遠心分離し、PBS(2×)で再懸濁し、ベースの上に配置したペプチド溶液と混合した。ゲルが形成された時点で、
図5に示すようにDMEMを上に添加し、37℃のインキュベーター中にて5%CO2で48時間インキュベートし、次いで、この構築物に対して異なる生体適合性アッセイを適用した。
【0091】
3D細胞増殖アッセイ
CellTiter-Glo(登録商標)発光3D細胞生存度アッセイは、代謝的に活性な細胞の存在を示すATPの存在の定量に基づいて3Dヒドロゲル中の生存細胞数を決定する方法である。各時点後、細胞と培養したヒドロゲルを、DPBSで2回洗浄した。新鮮な培地を各ウェルに添加し、等量のCellTiter-Glo(登録商標)発光試薬もゲルに添加した。内容物を2分間混合してヒドロゲルを消化し、次いで、10分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートリーダー(PHERAstar FS,Germany)を使用して発光を記録した。
【0092】
3Dバイオプリンティング
3Dバイオプリンターを使用して、ペプチドバイオインクを用いて構築物をプリントした。ペプチドバイオインクをプリントするために、本発明者らは、3つの入口を有する同軸ニードルを設計した。上の入口を10×PBS溶液に連結し、右の入口を無血清培地に懸濁した細胞に連結し、左の入口をmilliQ水に溶解したペプチド(15mg/mL)に連結した。管、コネクタ、および同軸ノズルを、プリント前にオートクレーブした。プリント中、シリンジポンプを活用して3つの溶液をノズルにポンピングした。ペプチド溶液および細胞溶液の流速は25μL/分であった一方で、10×PBSの流速は20μL/分に維持した。ペプチド溶液は、排出直前に、同軸ノズルの内側の接合部で細胞および10×PBSと混合する。即時にゲル化し、ペプチドバイオインクをプリントした。直径約8mmおよび厚さ約2mmの簡潔な環構造が多層様式でバイトプリントされた。構築物を、35mm組織培養ペトリ皿上にプリントした。バイオプリンティング後、構築物を、ペプチドバイオインクの自己集合をさらに促進するためにバイオセーフティキャビネット中に3分間入れた。次いで、構築物を、培養培地で2回または3回穏やかに洗浄した。各皿に、3mLの培養培地を添加し、加湿インキュベーター中にて37℃、5%CO2で培養した。予め決定していた時点で、構築物を取り出し、上記のように3Dアッセイおよび細胞の細胞骨格染色を実施した。
【0093】
本発明のペプチドは、優れたゲル化剤であり、形成されたゲルを多数の異なる目的および用途のために使用することができる。前述の説明中、特許請求の範囲中、または添付の図面中に開示の特徴は、個別およびその任意の組み合わせの両方で、本発明をその多様な形態で実現するための材料であり得る。
【0094】
特許請求の範囲によってのみ定義された本発明の範囲を逸脱することなく、好ましい実施形態のさらなる修正が可能である。
【配列表】