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▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20230807BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20230807BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230807BHJP
   B29C 59/16 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02F1/13357
B32B7/023
B29C59/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019572113
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 IB2018054547
(87)【国際公開番号】W WO2019003056
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/526,790
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】フレイ,マシュー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン,メーガン エー.
(72)【発明者】
【氏名】プリオロ,モーガン エー.
(72)【発明者】
【氏名】クーンス,ベンジャミン アール.
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500865(JP,A)
【文献】特開2016-168803(JP,A)
【文献】特開2016-224401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0267107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02F 1/13357
B32B 7/023
B29C 59/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、発光ダイオードとを備える液晶ディスプレイのバックライトユニットであって、前記第1の主表面は、
前記基材内に部分的に埋め込まれた第1の光吸収ナノ粒子を備える第1の表面領域と、
(a)光吸収ナノ粒子を含まない第2の表面領域、又は
(b)前記第1の主表面上の、若しくは前記基材内に部分的に埋め込まれた、第2の光吸収ナノ粒子を少なくとも備える第2の表面領域、のうちの1つと、を有し、
前記第1及び第2の表面領域のそれぞれは少なくとも10平方マイクロメートルの面積を有し、前記第1の表面領域は少なくとも20nmの第1の平均表面粗さRa1を有し、前記第2の表面領域は100nm未満の第2の平均表面粗さRa2を有し、前記第1の平均表面粗さRa1は前記第2の平均表面粗さRa2より大きく、前記第1の平均表面粗さと前記第2の平均表面粗さとの間に少なくとも10nmの絶対差が存在する、液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項2】
前記ポリマーは、透明である、請求項1に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項3】
前記第1の表面領域は、半透明である、請求項1に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項4】
前記第2の表面領域は、光吸収ナノ粒子を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項5】
前記基材の前記第1の主表面は、前記第1の表面領域に結合層材料を有する、請求項4に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項6】
前記基材の前記第1の主表面は、前記第2の表面領域に結合層材料を含まない、請求項5に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項7】
前記第1の主表面上の、又は前記第1の主表面内に部分的に埋め込まれた、第2の光吸収ナノ粒子を少なくとも備える第2の表面領域を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項8】
前記第1の光吸収ナノ粒子は、全体としてパターンをなす、請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項9】
前記ポリマーは、熱可塑性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項10】
前記ポリマーは、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、アクリレート、又はメタクリレートのうちの少なくとも1つである、請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項11】
前記第1及び第2の光吸収ナノ粒子の少なくともある方向の大きさは、1nm~1マイクロメートルの範囲内である、請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項12】
前記第1及び第2の光吸収ナノ粒子は、金属である、請求項1~11のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項13】
前記第1及び第2の光吸収ナノ粒子の少なくとも一部分は、ナノワイヤである、請求項1~12のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項14】
光拡散体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニット
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の液晶ディスプレイのバックライトユニットの製造方法であって、
ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、
前記基材の前記第1の主表面の少なくとも一部分上に配列された光吸収ナノ粒子と、を含む、先行物品を提供することと、
前記光吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明して、前記基材の前記第1の主表面の前記部分を粗面化して、前記液晶ディスプレイのバックライトユニットを提供することと、を含み、
前記光吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明する前に、前記光吸収ナノ粒子がパターンで配列される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年6月29日に出願された米国特許仮出願第62/526790号の優先権を主張するものであり、その開示の全容が参照により本明細書に組み込まれる。
[背景技術]
光拡散物品は、例えば、バックライト付きディスプレイ、照明器具、ボタンパネル、照明された標識、及び器具パネルにおいて使用される。物品は、表面トポグラフィー(例えば、粗さ)、多相の配列(例えば、マトリックス中に分散された粒子(例えば、コーティングの形態)、又はその両方から光拡散特性を導出する。このような光拡散物品は、透明材料で製造されてもよく、透明であってもよい。すなわち、光の通路又は光出口の方向を変化させながら(例えば、屈折によって、又は散乱によって)、その体積を通って光の通過を可能にする有用な物品が知られている。光拡散表面トポグラフィーは、例えば、構造化されたツールに対して透明なポリマーを成形することによって、透明物品の一部として生成されている。光拡散表面トポグラフィーを成形することには、特定の制限がある。具体的には、成形のために、光拡散物品の各新設計は、新たな構造化ツールの生成を必要とする。また、成形物品に光拡散特性の勾配を付与することができる構造化ツールには、製作における課題が存在する。したがって、カスタム成形型ツールを製作する費用及び課題を回避し、光拡散特性の任意のパターンの生成を可能にし、かつ光拡散特性の勾配に好都合な経路を提供する、表面トポグラフィー(例えば、粗さ)を有する物品(例えば、透明物品)の製作方法が当該技術分野において必要とされている。
【0002】
ナノ粒子をその表面上に持つ物品基材に強いパルス光を適用できることが、当該技術分野において既知である。このような光への曝露は、望ましくない基材の損傷又は破壊を回避しながら、シート抵抗を低減し、ポリマー基材表面上の金属ナノワイヤの接着性を増加させることが報告されている(例えば、「Strongly Adhesive And Flexible Transparent Silver Nanowire Conductive Films Fabricated With A High-Intensity Pulsed Light Technique」,Jinting Jiu,Masaya Nogi,Tohru Sugahara,Takehiro Tokuno,Teppei Araki,Natsuki Komoda,Katsuaki Suganuma,Hiroshi Uchidab and Kenji Shinozaki,Journal of Materials Chemistry,Vol.22,pp.23561-23567,2012を参照されたい)。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面及び第2の主表面を有する基材を備える物品であって、第1の主表面は、
第1の主表面に部分的に埋め込まれた第1のナノ粒子を備える第1の表面領域と、
(a)ナノ粒子を含まない第2の表面領域、又は
(b)第1の主表面上の、若しくは第1の主表面内に部分的に埋め込まれた、第2のナノ粒子を少なくとも備える第2の表面領域、のうちの1つと、を有し、
各領域は少なくとも10平方マイクロメートルの面積を有し、第1の表面領域は少なくとも20(いくつかの実施形態では、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は更に少なくとも1000、いくつかの実施形態では、20~1000、25~1000、25~500、30~250、又は更に40~100の範囲内)nmの第1の平均表面粗さ(Ra1)を有し、第2の表面領域は100(いくつかの実施形態では、95、90、80、75、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10未満、又は更に5未満、いくつかの実施形態では、1~20、2~15、又は更に3~10の範囲内)nm未満の第2の平均表面粗さ(Ra2)を有し、第1の平均表面粗さ(Ra1)は第2の平均表面粗さ(Ra2)より大きく、第1の平均表面粗さと第2の平均表面粗さとの間に少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、又は更に少なくとも750、いくつかの実施形態では、10~750、20~700、又は更に25~500の範囲内)nmの絶対差が存在する、物品について記載する。いくつかの実施形態では、物品の第2の表面領域はナノ粒子を含まない(すなわち、ナノ粒子がない)。いくつかの実施形態では、第2の表面領域は、第1の主表面上の、又は第1の主表面内に部分的に埋め込まれた、第2のナノ粒子を少なくとも有する。いくつかの実施形態では、第1のナノ粒子は第2のナノ粒子と同一である(すなわち、同じ組成、微細構造、サイズ、及び形状)。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は光吸収ナノ粒子である(例えば、金属ナノ粒子、カーボンナノ粒子、又は光吸収セラミックナノ粒子)。いくつかの実施形態では、ポリマー及び物品は透明である。いくつかの実施形態では、物品の第1の表面領域は半透明である。
【0004】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される物品の製造方法を記述し、この方法は、
ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、
基材の第1の主表面の少なくとも一部分上に配列された光吸収(すなわち、180nm~10,000nmの範囲内の光の少なくとも1つの波長を吸収する)ナノ粒子と、を備える、先行物品を提供することと、
光吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを含む第1の主表面の部分を照明して、第1の主表面の一部分内のポリマーをして、物品を提供することと、を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー及び物品は透明である。いくつかの実施形態では、物品は半透明である。いくつかの実施形態では、光吸収ナノ粒子は基材の第1の主表面の少なくとも一部分上に配列される。
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される物品は光拡散体である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本明細書に記載される例示的な物品の概略図である。
【0007】
図2】本明細書に記載される別の例示的な物品の概略図である。
【0008】
図3】本明細書に記載される別の例示的な物品の概略図である。
【0009】
図4】本明細書に記載される例示的な物品の例示的な製造方法の概略図である。
【0010】
図5】本明細書に記載される例示的な物品の別の例示的な製造方法の概略図である。
【0011】
図6A】それぞれ、本明細書に記載される例示的な先行物品及び例示的な物品の光学明視野顕微鏡画像である。
図6B】それぞれ、本明細書に記載される例示的な先行物品及び例示的な物品の光学明視野顕微鏡画像である。
【0012】
図7A】それぞれ、本明細書に記載される例示的なフォトマスク及び例示的な物品の写真である。
図7B】それぞれ、本明細書に記載される例示的なフォトマスク及び例示的な物品の写真である。
【0013】
図8A】それぞれ、本明細書に記載される例示的なフォトマスク及び例示的な物品の光学顕微鏡画像である。
図8B】それぞれ、本明細書に記載される例示的なフォトマスク及び例示的な物品の光学顕微鏡画像である。
【0014】
図9A】それぞれ、本明細書に記載される例示的な物品の微分干渉コントラスト及び暗視野光学顕微鏡画像である。
図9B】それぞれ、本明細書に記載される例示的な物品の微分干渉コントラスト及び暗視野光学顕微鏡画像である。
【0015】
図10】本明細書に記載される例示的な物品の原子間力顕微鏡画像である。
【0016】
図11A】実施例32サンプルの一部分の微分干渉コントラスト顕微鏡画像である。
【0017】
図11B】実施例32サンプルの明視野顕微鏡画像である。
【0018】
図12】実施例32サンプルの原子間力顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般に、本明細書に記載される方法は、例えば、強いパルス光による照明によって引き起こされる粗さの形態の制御された表面構造を有する物品を提供することができる。主表面上にナノ粒子を有する先行物品は、照明パラメータごとに照明されて、プロセスを開始し、先行物品のポリマーが粗さを生じる。「主表面上のナノ粒子」のために、ナノ粒子を主表面に保持し、主表面のナノ粒子間に介在し得るいくつかの結合剤又は接着剤が存在し得る。
【0020】
粗度は、例えば、ナノ粒子の種類、照明パラメータ、及びポリマーの選択(例えば、組成)に基づいて制御することができる。このような物品及びポリマーについて、透明又は半透明の場合、本明細書に記載される方法は、透過光の拡散特性を有する材料をもたらす。光拡散材料は、例えば、バックライト付きディスプレイ、照明器具、ボタンパネル、照明された標識、及び器具パネルにおいて有用である。
【0021】
図1を参照すると、例示的な物品9は基材10を含む。基材10は、ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面11及び第2の主表面12を有する。第1の主表面11は第1の主表面11に部分的に埋め込まれた第1のナノ粒子14a、14b、14c、及び14dを備える第1の表面領域13を有する。部分的に埋め込まれたナノ粒子14b及び14dは、第1の表面領域13内の第1の主表面11の外形に従う。第2の表面領域15はナノ粒子を含まない。第1の表面領域13は第1の主表面11上に埋め込まれていない粒子16a及び16bを任意選択的に含む。第1の表面領域13は第1の主表面11の下に完全に埋め込まれた粒子17を任意選択的に含む。第1の表面領域13内のポリマー基材10の第1の主表面11は、少なくとも20(いくつかの実施形態では、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は更に少なくとも1000、いくつかの実施形態では、20~1000、25~1000、25~500、30~250、又は更に40~100の範囲内)nmの第1の平均表面粗さ(Ra1)を有する。第2の表面領域15内のポリマー基材10の第1の主表面11は100(いくつかの実施形態では、95、90、80、75、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10未満、又は更に5未満、いくつかの実施形態では、1~20、2~15、又は更に3~10の範囲内)nm未満の第2の平均表面粗さ(Ra2)を有する。第1の平均表面粗さRa1は第2の平均表面粗さRa2より大きい。領域13、15は各々、少なくとも10平方マイクロメートルの面積を有する。第1の平均表面粗さRa1と第2の平均表面粗さRa2との間に少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、又は更に少なくとも750、いくつかの実施形態では、10~750、20~700、又は更に25~500の範囲内)nmの絶対差が存在する。
【0022】
図2を参照すると、例示的な物品19は基材20を含む。基材20は、ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面21及び第2の主表面22を有する。第1の主表面21は第1の主表面21に部分的に埋め込まれた第1のナノ粒子24a、24b、24c、及び24dを備える第1の表面領域23を有する。第1の表面領域23は第1の主表面21上に埋め込まれていない粒子26a及び26bを任意選択的に含む。第1の表面領域23は第1の主表面21の下に完全に埋め込まれた粒子27を任意選択的に含む。第2の表面領域25は、第1の主表面21上に少なくとも第2のナノ粒子28を有する。第1の表面領域23内のポリマー基材20の第1の主表面21は少なくとも20(いくつかの実施形態では、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は更に少なくとも1000、いくつかの実施形態では、20~1000、25~1000、25~500、30~250、又は更に40~100の範囲内)nmの第1の平均表面粗さ(Ra1)を有する。第2の表面領域25内のポリマー基材20の第1の主表面21は100(いくつかの実施形態では、95、90、80、75、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10未満、又は更に5未満、いくつかの実施形態では、1~20、2~15、又は更に3~10の範囲内)nm未満の第2の平均表面粗さ(Ra2)を有する。第1の平均表面粗さRa1は第2の平均表面粗さRa2より大きい。領域23、25は各々、少なくとも10平方マイクロメートルの面積を有する。第1の平均表面粗さRa1と第2の平均表面粗さRa2との間に少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、又は更に少なくとも750、いくつかの実施形態では、10~750、20~700、又は更に25~500の範囲内)nmの絶対差が存在する。任意選択的に、第2の表面領域25はまた、第1の主表面21上に少なくともいくらか部分的に埋め込まれた第2のナノ粒子を有する。
【0023】
図3を参照すると、例示的な物品29は基材30を含む。基材30は、ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面31及び第2の主表面32を有する。第1の主表面31は第1の主表面31に部分的に埋め込まれた第1のナノ粒子34a、34b、34c、及び34dを備える第1の表面領域33を有する。第1の表面領域33は第1の主表面31上に埋め込まれていない粒子36a及び36bを任意選択的に含む。第1の表面領域33は第1の主表面31の下に完全に埋め込まれた粒子37を任意選択的に含む。第2の表面領域35は第1の主表面31に部分的に埋め込まれた、第2のナノ粒子38を少なくとも有する。第1の表面領域33内のポリマー基材30の第1の主表面31は、少なくとも20(いくつかの実施形態では、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は更に少なくとも1000、いくつかの実施形態では、20~1000、25~1000、25~500、30~250、又は更に40~100の範囲内)nmの第1の平均表面粗さ(Ra1)を有する。第2の表面領域34内のポリマー基材30の第1の主表面31は、100(いくつかの実施形態では、95、90、80、75、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10未満、又は更に5未満、いくつかの実施形態では、1~20、2~15、又は更に3~10の範囲内)nm未満の第2の平均表面粗さ(Ra2)を有する。第1の平均表面粗さRa1は、第2の平均表面粗さRa2より大きい。領域33、34は各々、少なくとも10平方マイクロメートルの面積を有する。第1の平均表面粗さRa1と第2の平均表面粗さRa2との間に少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、又は更に少なくとも750、いくつかの実施形態では、10~750、20~700、又は更に25~500の範囲内)nmの絶対差が存在する。任意選択的に、第2の表面領域35はまた、第1の主表面31上に少なくともいくらか埋め込まれていない第2のナノ粒子を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、物品の第2の表面領域はナノ粒子を含まない(すなわち、ナノ粒子がない)。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2の表面領域は、第1の主表面上の、又は第1の主表面内に部分的に埋め込まれた、第2のナノ粒子を少なくとも備える。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1のナノ粒子は第2のナノ粒子と同一である(すなわち、同じ組成、微細構造、サイズ、及び形状)。
【0027】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は全体としてパターンをなす。いくつかの実施形態では、第1のナノ粒子は全体としてパターンをなす。いくつかの実施形態では、第2のナノ粒子は全体的にパターンをなす。
【0028】
表面領域内のナノ粒子は、本明細書では1つの組成を有するものとして記載される。本明細書に記載されるナノ粒子について、複数の組成を有するナノ粒子からなる組成を有することは、本開示の範囲内である。表面領域内のナノ粒子は、本明細書では1つのサイズ及び形状を有するものとして記載される。本明細書に記載される粒子について、サイズ分布及び様々な形状のうちの少なくとも1つを有するサイズ及び形状を有することは、本開示の範囲内である。
【0029】
表面粗さ(R)は、原子間力顕微鏡を使用して表面トポグラフィー(すなわち、高さ対位置)を決定し、次いで測定面積の平均平面から測定された表面高さの偏差の絶対値の算術平均を計算することによって測定される。ナノ粒子を含まない(すなわち、ナノ粒子がない)本明細書に記載される物品の表面領域の場合、表面トポグラフィーは、基材の露出表面(例えば、ポリマー表面)によって画定される。したがって、ポリマーを含むこのような表面領域の表面粗さ(R)は、ポリマー表面の表面粗さ(R)である(本明細書においては、ポリマーの表面粗さ(R)としてもまた参照される)。ナノ粒子を含む物品の表面領域の場合、表面トポグラフィーは、基材の露出表面(例えば、ポリマー表面)及び(存在する場合)ナノ粒子の露出表面によって画定される。ナノ粒子が基材の表面(例えば、ポリマー表面)に完全に埋め込まれている場合、表面領域の表面トポグラフィーは、基材の露出表面(例えば、ポリマー表面)によって画定され、ポリマーを含むこのような表面領域の表面粗さ(R)は、ポリマー表面の表面粗さ(R)である。ナノ粒子が埋め込まれていないか、又は表面に部分的に埋め込まれている場合、表面領域の表面トポグラフィーは、基材の露出表面(例えば、ポリマー表面)及びナノ粒子の露出表面によって画定される。ナノ粒子のサイズが測定された表面粗さ(R)と比較して小さい(例えば、ナノ粒子寸法は、測定された表面粗さ(R)の50パーセント未満(いくつかの実施形態では、25パーセント未満、10パーセント未満、又は更には5パーセント未満)である)場合、このような表面領域の測定された表面粗さ(R)は、ほぼポリマーの表面粗さRである。本明細書では、このような表面領域の測定された表面粗さ(R)は、ポリマー表面の測定された表面粗さ(R)とみなされる(本明細書においては、ポリマーの表面粗さ(R)としてもまた参照される)。
【0030】
基材の例示的なポリマーとしては、熱可塑性ポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート(ethlenenaphthalate))、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、アクリレート、又はメタクリレートのうちの少なくとも1つである。好適なポリマーは、例えば、DuPont(Chester,VA)から商品名「TEIJENフィルムST504」又は「TEIJENフィルムQ65FA」で市販されている。いくつかの実施形態では、ポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーは、150℃未満(いくつかの実施形態では、140℃、130℃、120℃、110℃、100℃、90℃未満、又は更に80℃未満、いくつかの実施形態では、50℃~150℃、60℃~140℃、70℃~130℃、又は更に85℃~125℃の範囲内)のガラス転移温度(本明細書においては、Tとしてもまた参照される)を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、物品は、透明材料(例えば、ポリマー)を含み、厚さ、及び少なくとも25%(いくつかの実施形態では、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は更に少なくとも90%)の厚さを通した可視光透過率を有する。いくつかの実施形態では、物品は少なくとも1つの表面領域(例えば、第1の表面領域)において半透明である。「透明」とは、90°入射光の少なくとも25パーセントが材料の表面を透過することを意味し、「半透明」とは、90°入射光の少なくとも25パーセントが材料の表面を拡散しながら透過することを意味し、拡散とは、5パーセントより大きいヘイズ(以下の実施例にて記載されるように決定される)又は95パーセント未満の透明度(以下の実施例にて記載されるように決定される)を有する透過を意味する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は光吸収ナノ粒子、例えば、金属ナノ粒子、カーボンナノ粒子、又は光吸収セラミックナノ粒子である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は有機ナノ粒子、例えば、有機色素粒子である。光吸収とは、ナノ粒子が、当該技術分野において既知であるように、180ナノメートル~10マイクロメートルの範囲内(いくつかの実施形態では、200ナノメートル~3マイクロメートル、又は更に250ナノメートル~1マイクロメートルの範囲内)の光の少なくとも1つの波長について、光の吸収の一次機構(例えば、電子遷移又はプラズモン共鳴)を有することを意味する。このような光吸収特性及び好ましい光吸収特性を有するナノ粒子を含めることにより、有利には、本明細書で開示される方法によって本明細書で開示される物品の実用的な製作を可能にする。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される物品を製造するためのナノ粒子は金属である(例えば、銀、金、パラジウム、白金、銅、又はアルミニウムのうちの少なくとも1つを含むナノ粒子)。好適なナノ粒子は、例えば、Cambrios,Inc.(Sunnyvale,CA)から商品名「INK A」で、又はSigma-Aldrich,Incorporated(St.Louis,MO)から商品名「753653」で市販されている。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の少なくとも一部分はナノワイヤである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、カーボンナノ粒子(例えば、カーボンブラック、剥離黒鉛、カーボンナノチューブ、単層グラフェン、多層グラフェン(例えば、2層グラフェン、3層グラフェン、4層グラフェン))である。カーボンナノ粒子は、同素体に関して限定されない。
【0034】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、光吸収セラミックナノ粒子(例えば、酸化ルテニウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化スズ、酸化銀、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、ランタニド系酸化物、これらの混合物、及びこれらのうちの少なくとも1つと他の金属酸化物又は半金属酸化物との混合物)である。
【0035】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子のサイズは、1nm~1マイクロメートル(いくつかの実施形態では、10nm~100nm、又は更に10nm~50nm)の範囲内である。本明細書で使用する場合、用語「ナノ粒子のサイズ」は、ナノ粒子の任意の寸法(例えば、ナノワイヤの直径、球状ナノ粒子の直径、又はナノ血小板の厚さ)を指す。ナノ粒子が規定の範囲内のサイズを有するために、ナノ粒子の全ての寸法がその範囲内にあることは必要ではない。ナノ粒子が規定の範囲内のサイズを有するために、ナノ粒子の少なくとも1つの寸法がその範囲内にあることが必要である。ナノ粒子が規定の範囲内のサイズを有するために、ナノ粒子の少なくとも2つの寸法がその範囲内にあることが可能である(例えば、扁長楕円体ナノ粒子の半径及び長さの両方が規定の範囲内にあり得る)。
【0036】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される物品の製造方法を記述し、この方法は、
互いに反対側の第1の主表面及び第2の主表面を含む基材であって、第1の表面はポリマーを含む、基材と、
基材の第1の主表面の少なくとも一部分上に配列された光吸収ナノ粒子と、を含む、先行物品を提供することと、
光吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを含む第1の主表面の部分を照明して、第1の主表面のポリマーの部分を粗面化して、物品を提供することと、を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー及び物品は透明である。いくつかの実施形態では、物品は半透明である。いくつかの実施形態では、光吸収ナノ粒子は基材の第1の主表面の少なくとも一部分上に配列される。
【0037】
いくつかの実施形態では、基材は、光吸収ナノ粒子を照明する前に、厚さ、及び基材の厚さを通した第1のヘイズを有し、物品は、物品の少なくともいくらかの部分(例えば、表面領域)の光吸収ナノ粒子を照明した後に、厚さ(基材の厚さを含む)及び第2のヘイズを有する。本明細書で使用する場合、ヘイズという用語(本明細書においては、透過ヘイズとしてもまた参照される)は、ASTM International Standard Designation D1003-11(その開示は、参考として本明細書に組み込まれている)によって定義されるように、物品を通過すると、少なくとも2.5°だけ偏向される透過光の割合である。ヘイズは以下の実施例にて記載されるように決定される。ヘイズはパーセントとして表現され、ゼロパーセントヘイズを有する物品は、その透過光のいずれも2.5°を超えて散乱しない。一般に、第2のヘイズは第1のヘイズより大きい。いくつかの実施形態では、第2のヘイズは第1のヘイズの少なくとも1.25(いくつかの実施形態では、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、又は更に少なくとも90、いくつかの実施形態では、1.25~90、1.5~80、2~70、3~60、又は更に5~50の範囲内)倍である。いくつかの実施形態では、第2のヘイズは第1のヘイズより大きく、第2のヘイズと第1のヘイズとの間の差は少なくとも2(いくつかの実施形態では、少なくとも3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、又は更に少なくとも90、いくつかの実施形態では、2~90、5~80、10~75、15~70、20~65、25~60、又は更に30~50の範囲内)パーセントである。
【0038】
いくつかの実施形態では、基材は、光吸収ナノ粒子を照明する前に、厚さ、及び基材の厚さを通した第1の透明度を有し、物品は、物品の少なくともいくらかの部分(例えば、表面領域)の光吸収ナノ粒子を照明した後に、厚さ(基材の厚さを含む)及び第2の透明度を有する。本明細書で使用する場合、透明度という用語は、物品を通過するときに偏向されない透過光の、偏向されていない又は2.5°未満の角度で偏向された光の合計に対する割合に関する。透明度は、当該技術分野において既知の光学特性であり、BYK-Gardner(Columbia,MD)から商品名「HAZE-GARD I」で販売されているものなどの標準的な市販の器具を使用して測定することができる。透明度は以下の実施例にて記載されるように決定される。透明度はパーセントとして表現され、100パーセント透明度を有する物品は、2.5°の円錐内で透過される光の100パーセントが測定可能に偏向されていない(すなわち、0°偏向)ことによって特徴付けられる。100パーセント未満の透明度値を有する物品では、光の一部分が0度より大きい角度で測定可能に偏向される2.5°の円錐内を透過する。一般に、第2の透明度は第1の透明度以下である。いくつかの実施形態では、第2の透明度は第1の透明度の0.98(いくつかの実施形態では、0.95、0.9、0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2未満、又は0.15未満、いくつかの実施形態では、0.1~0.98未満、0.2~0.95、0.3~0.9、0.4~0.8、又は更に0.5~0.7の範囲内)倍未満である。いくつかの実施形態では、第2の透明度は第1の透明度未満であり、第1の透明度と第2の透明度との間の差は少なくとも2(いくつかの実施形態では、少なくとも3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は更に少なくとも50、いくつかの実施形態では、2~90、5~80、10~70、20~50、又は更に30~50の範囲内)パーセントである。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズは第1のヘイズより大きく、第2の透明度は第1の透明度未満である。いくつかのこのような実施形態では、第2のヘイズは第1のヘイズの2~70倍の範囲内であり、第2の透明度は第1の透明度の0.1~0.98倍の範囲内である。
【0040】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズは第1のヘイズの5~50倍の範囲内であり、第2の透明度は第1の透明度の0.2~0.95倍の範囲内である。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズは第1のヘイズの5~20倍の範囲内であり、第2の透明度は第1の透明度の0.2~0.6倍の範囲内である。
【0042】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズは第1のヘイズの2~4倍の範囲内であり、第2の透明度は第1の透明度の0.5~0.9倍の範囲内である。いくつかのこのような実施形態では、第2のヘイズと第1のヘイズとの間の差は2パーセント~90パーセントの範囲内であり、第1の透明度と第2の透明度との間の差は2パーセント~90パーセントの範囲内である。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズと第1のヘイズとの間の差は5パーセント~80パーセントの範囲内であり、第1の透明度と第2の透明度との間の差は5パーセント~80パーセントの範囲内である。
【0044】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズと第1のヘイズとの間の差は5パーセント~30パーセントの範囲内であり、第1の透明度と第2の透明度との間の差は40パーセント~80パーセントの範囲内である。
【0045】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズと第1のヘイズとの間の差は10パーセント~25パーセントの範囲内であり、第1の透明度と第2の透明度との間の差は50パーセント~70パーセントの範囲内である。
【0046】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズと第1のヘイズとの間の差は2パーセント~10パーセントの範囲内であり、第1の透明度と第2の透明度との間の差は5パーセント~50パーセントの範囲内である。
【0047】
いくつかの実施形態では、第2のヘイズと第1のヘイズとの間の差は2パーセント~5パーセントの範囲内であり、第1の透明度と第2の透明度との間の差は10パーセント~40パーセントの範囲内である。
【0048】
いくつかの実施形態では、基材は、主表面上にナノ粒子を有する主表面と、光吸収ナノ粒子を照明する前に第1の平均表面粗さ(Ra-before)とを有する。また、主表面は、物品の少なくともいくらかの部分(例えば、表面領域)について、光吸収ナノ粒子を照明した後に、第2の平均表面粗さ(Ra-after)を有する。Ra-afterはRa-beforeより大きい。Ra-afterとRa-beforeとの間の絶対差は、少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、又は更に少なくとも750、いくつかの実施形態では、10~750、20~700、又は更に25~500の範囲内)nmであり得る。
【0049】
本明細書に記載される物品を製造するためのいくつかの方法では、吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明する前に、光吸収ナノ粒子はパターンで配列される。例えば、光吸収粒子は物品表面上にパターンで配列されてもよく、それにより、選択的表面粗面化、したがって、そのパターンによって少なくとも部分的に後に画定される光拡散特性を、物品が統合されるシステムの他の構成要素に対して配置することができる。例えば、物品の光拡散領域を、このようなシステム内の別個の光源に対して配置することができる。一例示的実施形態では、パターン化された表面粗さ(したがって、パターン化された光拡散特性)を有する完成物品は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトユニット内で、点光源としての発光ダイオード(LED)と組み合わされてもよい。このようなバックライトユニットでは、点源から放出された光は、LCDセル(例えば、ランバートエミッタ)の背後に均一な面光源を生成するようにガイドされ、かつ再方向付けされなければならない。個別のLED(例えば、LCDセルの背後に2次元パターンで配列されるか、又はLCDセルの背後のバックライトユニットの周辺に沿って配列される)によって生成された非常に不均一な光強度分布を均一な面光源に変換するために、介在材料の光散乱(拡散)特性を、点光源に対するそれらの近接性に従って変化させるように設計することが有利であり得る。例えば、ポリマーフィルム基材上の光吸収粒子の配列は、LED及びフィルムを含むバックライトユニット内のLED点光源と位置合わせしたフィルム上の場所において、より高い光拡散特性(例えば、より高い透過ヘイズ又はより低い透明度)をもたらすように選択することができる。
【0050】
別の例示的実施形態では、ナノ粒子のパターン(したがって最終的には、パターンが強い光で照明されることによって加工されるときに作製される光拡散表面粗さのパターン)は、物品内でガイドされている光のパターンごとの抽出を支援するように選択することができる。例えば、生活空間又は作業空間を照明する照明器具、ディスプレイ、グラフィック、又はボタンパネルの照明のためのバックライトなどのいくつかのそのような用途では、第1の場所で生成され、物品(例えば、フィルム)内の導波路に方向付けられる光は、特定の場所で物品の表面から抽出され、かつ放出される必要がある。本明細書に記載されるものなどの表面構造(高透過ヘイズ値、低透明度値、又はその両方を有する)は、物品(例えば、フィルム)上の光抽出構造体として機能することができる。ナノ粒子のパターンを強い光に曝露し、それによって光抽出フィーチャをナノ粒子のパターンにパターニングすることにより、パターン化された光抽出体を製造する方法を提供する。
【0051】
基材の主表面(例えば、ポリマー基材表面)の少なくとも一部分上に配列された光吸収ナノ粒子のパターンは、任意の好適な方法によって製作され得る。好適な方法の例としては、インクジェット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及び転写印刷(例えば、熱転写印刷)などの付加型パターニング方法が挙げられる。好適なサブトラクティブパターニング方法の例には、表面上への粒子コーティング、パターンマスキング(例えば、フォトリソグラフィ又はマスク印刷による)、次いで化学エッチングを含む。好適なサブトラクティブパターニング方法の別の例には、表面上へのリフトオフマスクのパターニング、表面及びリフトオフマスク上への粒子コーティング、次いでマスクのリフトオフ除去を含む。
【0052】
本明細書に記載される物品を製造するための先行物品の調製のための、基材、例えばポリマー基材の主表面上への光吸収ナノ粒子のコーティングは、任意の好適なコーティングプロセスによって実施することができる。好適なコーティングプロセスの例としては、当該技術分野において既知のように、ダイコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロップコーティング、物理蒸着、粉末摩擦コーティング、及び化学蒸着が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子が部分的に埋め込まれた主表面は、そのような主表面の少なくとも一部分上に結合層を有する。結合層は、ナノ粒子と基材の主表面との間に改善された(例えば、固定された)結合を提供することができる。結合層は、粉末摩擦コーティングによって基材の表面上にナノ粒子を堆積させるのに特に有用である。結合層は、例えば、有機ポリマー(単数又は複数)又は無機材料(単数又は複数)のうちの少なくとも1つなどの任意の好適な材料を含んでもよい。
【0054】
結合層に含めるための例示的な材料としては、シリカ(有機シリカを含む)粒子及びコーティング、並びにポリウレタン(単数又は複数)、アクリルポリマー(単数又は複数)、ポリアミド(単数又は複数)、ポリエステル(単数又は複数)、ポリカーボネート(単数又は複数)、ゴム(単数又は複数)、ポリオレフィン(単数又は複数)(例えば、ブタジエンを有するポリスチレン及びスチレンブロックコポリマー)、これらのブレンド及びコポリマーが挙げられる。
【0055】
結合層は、例えば、溶媒(例えば、有機溶媒(単数又は複数)又は水のうちの少なくとも1つ)なしでコーティングされ、続いて乾燥されてもよい。あるいは、例えば、結合層は不活性溶媒の存在なしでコーティングされてもよい。例示的な有機溶媒はアルコール(単数又は複数)、エーテル(単数又は複数)、又はケトン(単数又は複数)のうちの少なくとも1つを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、結合層は少なくとも1つの硬化性材料を含む。例示的な硬化性材料は、熱、電子ビーム、紫外線、可視光のうちの少なくとも1つに曝露されたとき、又は化学触媒、光開始剤、又は水分のうちの少なくとも1つの添加時に重合及び/又は架橋することを含む。製造中、硬化性材料は、硬化性材料の少なくとも部分的硬化を開始するために適切な条件に曝露される。例示的な硬化性材料は、硬化性化合物(例えば、フリーラジカル重合性モノマー(単数又は複数)及び/又はエポキシモノマー(単数又は複数)のうちの少なくとも1つ)の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、結合層は周囲温度で非粘着性である。
【0057】
いくつかの実施形態では、硬化性材料は部分的に硬化した(メタ)アクリルモノマー(単数又は複数)及び/又はオリゴマー(単数又は複数)を含む。理論に束縛されるものではないが、重合度を制御することにより、同一の粉末摩擦コーティング条件下で結合層上に堆積した粉末の量に影響を及ぼすことが可能であると考えられる。したがって、有利には、単純に硬化条件を調整することによって、比較的単純な先行組成物から多種多様な結合層を調製することが可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、硬化性材料は粉末摩擦工程後に更に硬化される(例えば、完全に硬化される)。
【0059】
硬化性材料の例としては、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(例えば、アミノプラスト樹脂、アルキル化尿素-ホルムアルデヒド樹脂など)、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、アルキル化ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、アクリレート(アクリレート及びメタクリレートを含む)樹脂、アクリル化エポキシ、アクリル化ウレタン、アクリル化ポリエステル、アクリル化ポリエーテル、ビニルエーテル、アクリル化油、及びアクリル化シリコーン、ウレタンアルキド樹脂などのアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、反応性ウレタン樹脂、レゾール及びノボラック樹脂などのフェノール樹脂、フェノール/ラテックス樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、イソシアネート、イソシアヌレート、ポリシロキサン樹脂(アルキルアルコキシシラン樹脂を含む)、並びに反応性ビニル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組み合わせの形態であってもよい。
【0060】
基材の主表面上への光吸収ナノ粒子のコーティング及びパターニングは、例えば、最初に結合層材料を主表面の一部分上に所定のパターンで配置し、結合層配置領域及び非結合層配置領域(すなわち、結合層パターン)を得ることによって達成することができる。結合層パターンは、例えば印刷によって、主表面上に配置されてもよい。例示的な印刷方法としては、フレキソ印刷、凹版印刷、リソグラフィ、インクジェット、バルブジェット、及びスプレージェット印刷が挙げられる。結合層パターンを基材の主表面上に配置することにより、第1の表面領域に結合層材料を含み、かつ第2の表面領域に結合層材料を含まない基材の主表面をもたらすことができる。結合層パターンが基材の主表面上に配置された後、光吸収ナノ粒子粉末は、結合層パターンの少なくとも一部分(すなわち、結合層配置領域である第1の表面領域)上に粉末摩擦コーティングされてもよい。任意選択的に、非結合層配置領域(すなわち、第2の表面領域)上に粉末摩擦コーティングされた任意の光吸収ナノ粒子粉末は、例えば、洗浄パッドで物理的に擦る、超音波洗浄、又はすすぎによって除去されてもよい。光吸収ナノ粒子粉末を結合層パターン(すなわち、結合層配置領域)上に粉末摩擦コーティングすること、及び任意選択的に光吸収ナノ粒子粉末(すなわち、ナノ粒子)を非結合層配置領域から除去することにより、基材の主表面の少なくとも一部分上に配列された光吸収ナノ粒子のパターンをもたらす。上述の工程を使用して、基材の第1の主表面上に配置された結合層パターンに従うパターンで配列される光吸収ナノ粒子をもたらす。このような先行物品は、例えば、強いパルス光を用いる照明によって更に加工されて、元の結合層パターンに従って第1の表面領域内に表面粗さ及び光拡散特性のパターンを有する物品を得ることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明することは、180nm~3000nmの範囲内の少なくとも1つの波長で実施される。いくつかの実施形態では、光吸収ナノ粒子を照明することは、キセノンフラッシュランプを少なくとも部分的に使用して実施される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子を照明するために使用される光の波長は、ナノ粒子によって強く吸収される波長を含むように選択される。例えば、60ナノメートル直径の金ナノ粒子は、商品名「753653」でSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から入手可能であり、532ナノメートル~544ナノメートルの範囲内の波長を強く吸収する。別の例は、50ナノメートル直径の銀ナノワイヤであり(例えば、「Preparation and Optical Properties of Silver Nanowires and Silver Nanowire Thin Films」,Quocanh N.Luu et al.,Journal of Colloid and Interface Science,Volume 356,Pages 151-158(2011)に報告されている)、350ナノメートル~400ナノメートルの範囲内の波長を強く吸収する。ナノ粒子の吸収特性(例えば、強く吸収される波長)がわかると、ナノ粒子を照明して基材表面を粗面化するために使用される光の波長を、所望に応じて、強く吸収されるそれらの波長に合致するように選択することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明するのに先立って、先行物品と、吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明するための照明光源との間にマスクが配置される。有用なフォトマスクとしては、フォトリソグラフィ技術において既知のもの、例えば、バイナリシャドウ、グレースケール、又は干渉型が挙げられる。一般に、フォトマスクは、それらを通過するように方向付けられた光の面積強度分布を調節する。そのようなものであるから、本開示の材料、例えばフォトレジスト又はナノ粒子被覆基材表面を照射する光の面積強度分布を調節するのに有用である。典型的なバイナリシャドウマスクは、金属薄膜、例えばクロムのパターンを含む。薄膜パターンはガラス板上に担持されている。クロム薄膜を有する領域は、入射光がほとんど又は本質的に全く通過しない高い光学密度を有する。クロム薄膜を含まない領域は、入射光の大部分が通過する低い光学密度を有する。したがって、入射光は(マスクのクロムフリー領域のパターンと同一のパターンを有する)光のパターンの形態でマスクを通過する。本開示では、フォトマスクを使用して、基材の表面上のナノ粒子の光曝露のパターン(又は本明細書では照明パターン、照射パターンとして記載される)を作製する。光曝露のパターンは、表面粗面化のパターン、ひいては基材表面に生じる光拡散特性のパターンをもたらす(例えば、透過ヘイズの増加、透明度の低下)。いくつかの実施形態では、光の不均一な強度分布によって特徴付けられる光曝露のパターンを生成するためにグレースケールマスクが使用される。光曝露のパターンについての光の不均一な強度分布とは、ナノ粒子を有する先行物品表面上に入射する光の強度が、表面上の位置に基づいて、例えば連続的に、非ゼロ値の範囲にわたって制御可能に変化することを意味する。グレースケールマスクの使用は、段階的強度を有する光のパターンに先行物品を曝露するための、多数の異なる可能なアプローチのいずれかの例である。
【0063】
更に、光の不均一な変動する(例えば、非バイナリ)強度分布又はパターンを、本明細書に記載される先行物品の表面上に照射することができる。この条件を達成するために、グレースケールマスクを使用することができる。他のアプローチとしては、光を集束又は焦点ずれさせる反射又は透過光学素子を備える光学システムの使用が挙げられる。当該技術分野において既知であるように、反射光学素子(例えば、鏡)は、源(例えば、発光器(例えば、フラッシュチューブ))からの光を加工して、表面上(例えば、本明細書に記載される先行物品の表面上)で光の強度分布が不均一かつ空間的に変化する(すなわち、段階的)ように設計することができる。光の不均一な強度分布を生成するのに有用なこのような鏡の例としては、米国特許第6,376,806号(Yoo)に記載されているものを含む、楕円形鏡が挙げられる。当該技術分野においてもまた既知であるように、透過光学素子(例えば、レンズ)は、源(例えば、発光器(例えば、フラッシュチューブ))からの光を加工して、表面上(例えば、本明細書に記載される先行物品の表面上)で光の強度分布が不均一かつ空間的に変化する(すなわち、段階的)ように設計することができる。光の不均一な強度分布を生成するのに有用なこのようなレンズの例としては、米国特許出願公開第2016/0351424号(Fuseら)に記載されているものを含む、凸状コンデンサーレンズが挙げられる。
【0064】
図4は、本明細書に記載される物品400の例示的な製造方法を示す。ナノワイヤ430をその上に有する主表面420を有する先行物品410が提供される。シャドウ領域450及び開口領域460を有するフォトマスク440が提供される。この方法では、パルス光470は、フォトマスク440の領域460内を通過し、先行物品410の領域480内を照明するが、領域490は照明されない。領域480内のナノワイヤ430上でのパルス光470の光熱加熱作用は、物品410の表面420の粗面化495をもたらすが、照明されていない物品410の領域480内には粗面化495をもたらさない。いくつかの実施形態では、領域480は領域490より高い透過ヘイズを呈す。
【0065】
いくつかの実施形態では、光吸収ナノ粒子を照明することは、0.1ミリ秒~100ミリ秒の範囲内(いくつかの実施形態では、1ミリ秒~10ミリ秒の範囲内)の持続時間を有するパルスで、光吸収ナノ粒子にエネルギーを送達することを含む。光パルスは、レーザー及びフラッシュランプを含む、当該技術分野において既知の多くの方法のうちのいずれかで提供され得る。フラッシュランプ(本明細書においては時々、フラッシュチューブ、フラッシュライト、又はフラッシュバルブとしてもまた参照される)は、例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1cm、少なくとも10cm、又は更に少なくとも100cmなどの大面積を有する物品(例えば、本明細書に記載される先行物品)を曝露するのに特に有用である。フラッシュランプを使用して、例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1cm、少なくとも10cm、又は更に少なくとも100cmなどの大面積を一度に曝露することができる。フラッシュランプの放電を制御するための電源(放電の持続時間を含む)は、当該技術分野において既知である(例えば、米国特許第4,071,808号(Zentmyer)及び同第7,501,773号(Tipton)を参照されたい)。
【0066】
いくつかの実施形態では、光吸収ナノ粒子を照明することは、0.5(いくつかの実施形態では、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5より大きい、又は更に10より大きい、いくつかの実施形態では、0.5~50、0.75~25、1~15、又は更に3.5~10.0の範囲内)J/cmより大きいエネルギー密度(本明細書においては、フルエンス又は線量としてもまた参照される)を有するパルスで、光吸収ナノ粒子にエネルギーを送達することを含む。特定のエネルギー密度を有する光のパルスは、例えば、上述されたようなフラッシュランプを使用して送達することができる。あるいは、エネルギー密度(又はフルエンス、又は線量)は、当該技術分野において既知のように、レーザー、連続アークランプ、又は連続赤外線ランプを使用して送達され得る。
【0067】
図5は、本明細書に記載される物品500の別の例示的な製造方法を示す。銀ナノワイヤ530をその上に有する主表面520を有する先行物品510が提供される。先行物品510を不均一な強度のパルス光540で照明して、複数のレベルの表面粗さ及び複数のレベルの透過ヘイズを有する物品500を得る。パルス光540は強度560の空間分布550を有する。光強度が空間的に変化すると、主表面520の粗さ595が空間的に変化し、領域570では比較的高い粗度、領域580では比較的低い粗度を有し、及び領域590では光によって引き起こされた粗さを有さない。粗度が変化すると、透過ヘイズのレベルが変化し得る。入射光の強度の空間的変動、表面粗さの空間的変動、及び透過ヘイズの空間的変動のうちの少なくとも1つは、それらの変動において連続的又は不連続的であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、照明することはフルエンスが空間的に変化する光を照明することを含み、第1の領域は第1のフルエンスで照明され、かつ第2の異なる領域は第2のフルエンスで照明され、第1のフルエンスは第2のフルエンスより大きく、これにより、第1の領域は第1の大きさの表面粗さを付与され、かつ第2の領域は第2の大きさの表面粗さを付与され、第1の大きさは第2の大きさより大きい。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される物品は光拡散体である、
例示的な実施形態
1A.ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面及び第2の主表面を有する基材を備える物品であって、第1の主表面は、
第1の主表面に部分的に埋め込まれた、第1のナノ粒子を備える第1の表面領域と、
(a)ナノ粒子を含まない第2の表面領域の、又は
(b)第1の主表面上の、若しくは第1の主表面内に部分的に埋め込まれた、第2のナノ粒子を少なくとも備える第2の表面領域、のうちの1つと、を有し、
各領域は少なくとも10平方マイクロメートルの面積を有し、第1の表面領域は少なくとも20(いくつかの実施形態では、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は更に少なくとも1000、いくつかの実施形態では、20~1000、25~1000、25~500、30~250、又は更に40~100の範囲内)nmの第1の平均表面粗さ(Ra1)を有し、第2の表面領域は100(いくつかの実施形態では、95、90、80、75、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10未満、又は更に5未満、いくつかの実施形態では、1~20、2~15、又は更に3~10の範囲内)nm未満の第2の平均表面粗さ(Ra2)を有し、第1の平均表面粗さ(Ra1)は第2の平均表面粗さ(Ra2)より大きく、第1の平均表面粗さと第2の平均表面粗さとの間に少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、又は更に少なくとも750、いくつかの実施形態では、10~750、20~700、又は更に25~500の範囲内)nmの絶対差が存在する、物品。
2A.ポリマーは透明である、例示的実施形態1Aに記載の物品。
3A.第1の表面領域は半透明である、例示的実施形態1Aに記載の物品。
4A.第2の表面領域は、ナノ粒子を含まない、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
5A.基材の第1の主表面は、第1の表面領域に結合層材料を有する、例示的実施形態4Aに記載の物品。
6A.基材の第1の主表面は、第2の表面領域に結合層材料を含まない、例示的実施形態5Aに記載の物品。
7A.第1の主表面上の、又は第1の主表面内に部分的に埋め込まれた、第2のナノ粒子を少なくとも備える第2の表面領域を備える、例示的実施形態1A~3Aのいずれか1つに記載の物品。
8A.第1のナノ粒子は、全体としてパターンをなす、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
9A.第2のナノ粒子は、全体としてパターンをなす、例示的実施形態1A~3A、7A、又は8Aのいずれか1つに記載の物品。
10A.ナノ粒子は、全体としてパターンをなす、例示的実施形態1A~3A、又は7Aのいずれか1つに記載の物品。
11A.ポリマーは、熱可塑性である、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
12A.ポリマーは、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、アクリレート、又はメタクリレートのうちの少なくとも1つである、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
13A.ナノ粒子のサイズは、1nm~1マイクロメートル(いくつかの実施形態では、10nm~100nm、又は更に10nm~50nm)の範囲内である、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
14A.ナノ粒子は、金属である、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
15A.ナノ粒子は、銀、金、パラジウム、白金、銅、又はアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
16A.ナノ粒子の少なくとも一部分は、ナノワイヤである、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
17A.拡散体である、先行するAの例示的実施形態のいずれか1つに記載の物品。
1B.いずれかの先行するAの例示的実施形態の物品の製造方法であって、
ポリマーを含み、かつ互いに反対側の第1の主表面及び第2の主表面を有する基材と、
基材の第1の主表面の少なくとも一部分上に配列された光吸収ナノ粒子と、を含む、先行物品を提供することと、
光吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを含む第1の主表面の部分を照明して、第1の主表面の一部分を粗面化して、物品を提供することと、を含む、方法。
2B.光吸収ナノ粒子は、基材の第1の主表面の少なくとも一部分上に配列される、例示的実施形態1Bに記載の方法。
3B.ポリマーは透明である、例示的実施形態1B又は2Bに記載の方法。
4B.物品は半透明である、例示的実施形態1B又は2Bに記載の方法。
5B.光吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明する前に、光吸収ナノ粒子はパターンに配列される、例示的実施形態1B~4Bのいずれか1つに記載の方法。
6B.光吸収ナノ粒子は基材の第1の主表面上に配置された結合層パターンに従うパターンで配列される、例示的実施形態5Bに記載の方法。
7B.吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明することは、180nm~3000nmの範囲内の少なくとも1つの波長で実施される、先行するBの例示的実施形態のいずれか1つに記載の方法。
8B.吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明するのに先立って、先行物品と、吸収ナノ粒子の少なくともいくらかを照明するための照明光源との間にマスクが配置される、先行するBの例示的実施形態のいずれか1つに記載の方法。
9B.光吸収ナノ粒子を照明することは、0.1ミリ秒~100ミリ秒の範囲内(いくつかの実施形態では、1ミリ秒~10ミリ秒の範囲内)の持続時間を有するパルスで、光吸収ナノ粒子にエネルギーを送達することを含む、先行するBの例示的実施形態のいずれか1つに記載の方法。
10B.光吸収ナノ粒子を照明することは、0.5~50(いくつかの実施形態では、0.75~25、1~15、又は更に3.5~10の範囲内)J/cmのエネルギー密度を有するパルスで、光吸収ナノ粒子にエネルギーを送達することを含む、先行するBの例示的実施形態のいずれか1つに記載の方法。
11B.光吸収ナノ粒子を照明することは、キセノンフラッシュランプを少なくとも部分的に使用して実施される、先行するBの例示的実施形態のいずれか1つに記載の方法。
12B.基材は、厚さ、及び少なくとも25%(いくつかの実施形態では、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は更に少なくとも90%)の厚さを通した可視光透過率を有する、先行するBの例示的実施形態のいずれか1つに記載の方法。
13B.基材は、光吸収ナノ粒子を照明する前に、厚さ、及び基材の厚さを通した第1のヘイズを有し、物品は、物品の少なくともいくらかの部分の光吸収ナノ粒子を照明した後に、厚さ(基材の厚さを含む)及び第2のヘイズを有し、第2のヘイズは第1のヘイズより大きい、先行するBの例示的実施形態のいずれか1つに記載の方法。
14B.照明することはフルエンスが空間的に変化する光を照明することを含み、第1の領域は第1のフルエンスで照明され、かつ第2の異なる領域は第2のフルエンスで照明され、第1のフルエンスは第2のフルエンスより大きく、これにより、第1の領域は第1の大きさの表面粗さを付与され、かつ第2の領域は第2の大きさの表面粗さを付与され、第1の大きさは第2の大きさより大きい、先行するBの例示的実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
本発明の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に説明するが、これらの実施例において述べられる特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。全ての部及びパーセント(%)は、特に指示のない限り、重量に基づく。
パルス光処理の方法
【0071】
ポリマー基材フィルム(素のフィルム、及び以下に記載されるように調製されたその表面上がナノ粒子でコーティングされたフィルム(すなわち、先行物品))を、キセノンフラッシュランプシステム(Xenon Corporation(Wilmington,MA)からType Cバルブを備える商品名「SINTERON S-2100」で入手)を使用して、様々なパルス光条件下で処理した。
【0072】
パルス光処理方法の第1の変形形態(例示的方法1)では、より大きな領域を処理するために、バルブの繰り返しフラッシュと同期して、先行物品をバルブの下で平行移動させた。特定の実施例のための例示的方法1の適用に関連する特定のパラメータ(又は条件)について以下に記載する。
【0073】
パルス光処理方法の第2の変形形態(例示的方法2)では、基材がバルブの下で静止したままである間、エネルギー密度が空間的に変化する単一パルスを先行物品に方向付けた。特定の実施例のための例示的方法2の適用に関連する特定のパラメータ(又は条件)について以下に記載する。
【0074】
パルス光処理方法の第3の変形形態(例示的方法3)では、クロム/ガラスフォトマスクをキセノンフラッシュランプと先行物品との間に介在させた。フォトマスクを、基板上にクロム側を下向きに置き、基板及びフォトマスクの両方を下方照明キセノンフラッシュランプの下に置いた。フォトマスクは、クロム層内に、約250マイクロメートルの幅を有する又は約500マイクロメートルの幅を有する線形状の開口部を含んだ。特定の実施例のための例示的方法3の適用に関連する特定のパラメータ(又は条件)について以下に記載する。
試験方法
【0075】
可視光透過率、透過ヘイズ、及び透明度を、卓上型計器(BYK Additives and Instruments(Wesel,Germany)から商品名「HAZE-GARD PLUS 4725」で入手)を使用して測定した。
【0076】
エネルギー密度が空間的に変化する単一パルスで照明されたサンプルについて、処理された物品のヘイズの空間分布を特徴付けるために、3ミリメートル幅のスロット開口(黒色アルマイト)を、サンプルと、サンプル表面に隣接する卓上型計器の光源との間に介在させた。これにより、器具は、サンプルの狭い領域に対してのみ散乱した透過光を捕捉することができた。開口を処理されたサンプルの異なる領域(異なる大きさの局所パルスエネルギー密度で処理された)上に置き、それらの領域に対する相対ヘイズを決定した。スロット開口が使用されたときに器具によって報告されるヘイズ値は、本明細書では「相対ヘイズ」と呼ばれ、3ミリメートル幅の開口を含めることにより、計器-サンプルの配列の光学的構成が変化するため、開口を通して見える小さなサンプルエリアについてヘイズの正確な絶対値を決定する器具の機能を損なうことがあることを認める。
【0077】
シート抵抗を、非接触シート抵抗計(モデル20J3、Delcom Instruments,Inc.(Prescott,WI)から商品名「20J3 SHEET RESISTANCE METER」で入手)を使用して測定した。
【0078】
選択されたサンプルを、微分干渉コントラスト光学素子を備える光学顕微鏡(モデルDM4000M、Leica Microsystems Inc.(Buffalo Grove,IL)から入手)を用いて試験した。
【0079】
選択されたサンプルを、タッピングモードで原子間力顕微鏡(モデルDimension D3100、Bruker Corporation(Billerica,MA)から入手)を使用して試験した(粗さパラメータを測定することを含む)。
銀ナノワイヤコーティングされたPET基材(PET先行物品)の調製方法
【0080】
銀ナノワイヤコーティング層をポリエチレンテレフタレート(PET)基材(76℃のガラス転移温度(T)を有する125マイクロメートル厚のフィルム、DuPont Teijin Films(Chester,VA)から商品名「MELINEX ST505」で入手)上に形成した。10フィート/分(3.05m/分)のウェブ速度で、約15マイクロメートルの予め計量された湿潤フィルム厚を標的として、基材上にナノワイヤ層を形成するスロットダイコーティングプロセスを使用した。次いで、ナノワイヤ層を空気衝突オーブン内で105℃の温度まで約2分間加熱し、これにより、コーティングされかつ乾燥された、透明かつ導電性のナノワイヤ層が得られた。銀ナノワイヤコーティング層を銀ナノワイヤ(直径30ナノメートル未満及び長さ10マイクロメートル超を有する、Cambrios Inc.(Sunnyvale,CA)から商品名「INK W」で入手)の水性分散体からコーティングした。分散体、つまり銀ナノワイヤ層は、ポリマー材料を含んでいた。
【0081】
得られたPET先行物品は、約50オーム/スクエアのシート抵抗を有し、以下に記載の実施例及び比較例に従ってパルス光処理に使用した。
【0082】
銀ナノワイヤコーティングされたシクロオレフィンポリマー(COP)基材(COP先行物品)の調製
銀ナノワイヤコーティングをシクロオレフィンポリマー(COP)基材(163℃のTを有する100マイクロメートル厚のフィルム、Zeon Chemicals L.P(Louisville,KY)から商品名「ZEONORFILM ZF16-100」で入手)上に形成したこと以外はPET先行物品について上述されたようにCOP先行物品を形成した。
【0083】
得られたCOP先行物品を以下に記載の実施例及び比較例に従ってパルス光処理に使用した。
銀ナノワイヤコーティングされたPEN基材(PEN先行物品)の調製
【0084】
銀ナノワイヤコーティング層をポリエチレンナフタレート(PEN)基材(120℃のガラス転移温度(T)を有する100マイクロメートル厚のフィルム、DuPont Teijin Filmsから商品名「TEONEX Q65FA」で入手)の素の(接着促進剤で処理されていない)側上に、以下のとおりスピンコーティングを使用して形成した。取り外し可能な両面テープ(3M Company(St.Paul,MN)から商品名「3M SCOTCH DOUBLE SIDED REMOVABLE TAPE 238」で入手可能)を使用して、約50ミリメートル×75ミリメートルのフィルム片をスライドガラスに取り付けた。取り付けられたフィルム片に銀ナノワイヤの分散体(直径30ナノメートル未満及び長さ10マイクロメートル超を有する(Cambrios,Inc.から商品名「INK A」で入手)、90重量%の水と10重量%のイソプロピルアルコールとの混合物を使用して半分の濃度に希釈した)を毎分1000回転でスピンコーティングした。
【0085】
得られたPEN先行物品を以下に記載の実施例及び比較例に従ってパルス光処理に使用した。
銀ナノワイヤコーティングされたPI基材(PI先行物品)の調製
【0086】
銀ナノワイヤコーティングをポリイミド(PI)基材(50マイクロメートル厚のフィルム、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から商品名「KAPTON 200E」で入手)上に形成したこと以外は上述されたPEN先行物品と同様にPI先行物品を形成した。
【0087】
得られたPI先行物品を以下に記載の実施例及び比較例に従ってパルス光処理に使用した。
金ナノ粒子コーティングされたPET2基材(PET2先行物品)の調製
【0088】
金ナノ粒子コーティング層を、ドロップキャスティングプロセスを使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET2)基材(76℃のTを有する50マイクロメートル厚のフィルム)のコロナ処理された表面上に形成した。その第1の主表面を押し出し、次いで1平方センチメートル当たり1000ミリジュールの線量でコロナ処理することによって、PET2フィルムを調製した。光学的に透明な接着剤(3M Companyから商品名「3M OPTICALLY CLEAR ADHESIVE 8172」で入手)を使用して、PET2フィルムをスライドガラス上に取り付け、薄膜を平坦に保持した。1ミリリットルの水性金ナノ粒子分散体(球状金ナノ粒子、直径約60ナノメートル、Sigma-Aldrich,Incorporated(St.Louis,MO)から商品名「753653」で入手)をPET2フィルム表面上に供給し、室温で乾燥して、同一の金ナノ粒子を含まない第2の表面領域によって囲まれた金ナノ粒子を備える第1の表面領域を得た。室温で乾燥した後、ドロップキャストパターンコーティングされたフィルムサンプルを更にオーブン内で90℃の温度で30分間乾燥した。
【0089】
得られたPET2先行物品を以下に記載の実施例及び比較例に従ってパルス光処理に使用した。
黒鉛コーティングされたPET3基材(PET3先行物品)の調製
【0090】
黒鉛コーティング層を、粉末摩擦コーティングプロセスを使用して、ポリエチレンテレフタレート基材(76℃のガラス転移温度(T)を有する125マイクロメートル厚のフィルム、DuPont Teijin Filmsから商品名「MELINEX ST505」で入手)上に形成した。PETフィルム基材上に少量の黒鉛粉末を置くことによって、PET3フィルムを調製した。次いで、黒鉛を、ボンネット研磨ウールを用いる10インチ(約25.5cm)のランダム軌道ワックスがけ器/研磨器(商品名「WEN 10PMC」でWEN Products(Elgin,IL)から入手)を使用して、フィルム上に堆積させた。使用した黒鉛粉末は、Asbury Carbons(Asbury,NJ)から商品名「MICRO850」で入手した。
【0091】
得られたPET3先行物品を以下に記載の実施例及び比較例に従ってパルス光処理に使用した。
比較例CE1~CE7及び実施例E8~E12
【0092】
例示的方法1及び下の表1にまとめられている条件に従って、素のPETフィルム(すなわち、その上に銀ナノワイヤコーティングがない)をパルス光処理することによって、CE1を調製した。
【表1】
【0093】
上の表1にまとめられている条件に従って、上記で調製したPET先行物品シートをパルス光処理することによって、CE2~CE7及びE8~E12を調製した。
【0094】
フィルムサンプルの平行移動と同期して(すなわち、上述されたパルス光処理方法の第1の変形形態(例示的方法1))、12ミリメートルの空間周期及び5ミリメートル/秒の並進速度での一連のフラッシュランプ曝露で、CE1~CE7及びE8~E12フィルムを処理した。
【0095】
上の表1は、CE1~CE7及びE8~E12サンプルについてのパルス光処理条件、測定された光学特性、及びシート抵抗値についてまとめている。
比較例CE13及びCE14並びに実施例E15及びE16
【0096】
下の表2にまとめられている条件に従って、素のPENフィルム(すなわち、その上に銀ナノワイヤコーティングがない)を使用したこと以外は上述されたCE1と同様にCE13を調製した。
【表2】
【0097】
上の表2にまとめられている条件に従って、上述されたPEN先行物品を使用したこと以外は上述されたCE2~CE7及びE8~E12と同様にCE14及びE15~E16を調製した。
【0098】
上の表2は、CE13、CE14、E15、及びE16サンプルについての使用されたパルス光処理条件、測定された光学特性、及びシート抵抗値についてまとめている。
比較例CE17~CE20
【0099】
下の表3にまとめられている条件に従って、素のCOPフィルム(すなわち、その上に銀ナノワイヤコーティングがない)を使用したこと以外は上述されたCE1と同様にCE17を調製した。
【表3】
【0100】
上の表3にまとめられている条件に従って、上述されたCOP先行物品を使用したこと以外は上述されたCE2~CE7及びE8~E12と同様にCE18~CE20を調製した。
【0101】
上の表3は、CE17~CE20サンプルについての使用されたパルス光処理条件、測定された光学特性、及びシート抵抗値についてまとめている。
比較例CE21~CE24
【0102】
下の表4にまとめられている条件に従って、素のPIフィルム(すなわち、その上に銀ナノワイヤコーティングがない)を使用したこと以外は上述されたCE1と同様にCE21を調製した。
【表4】
【0103】
上の表4にまとめられている条件に従って、上述されたPI先行物品を使用したこと以外は上述されたCE2~CE7及びE8~E12と同様にCE22~CE24を調製した。
【0104】
上の表4は、CE21~CE24サンプルについての使用されたパルス光処理条件、測定された光学特性、及びシート抵抗値についてまとめている。
実施例E25及びE26
【0105】
下の表5にまとめられている条件に従って、例示的方法2を使用して、上述されたPET先行物品をパルス光処理することによって、E25及びE26を調製した。
【表5】
【0106】
基材が静止したままである間(すなわち、上述されたパルス光処理方法の第2の変形形態(例示的方法2))、E25及びE26サンプルの各々を、光の単一パルスで処理して、上の表5にまとめられている不均一な空間分布のエネルギー密度を得た。
【0107】
表5はパルス光処理前後のフィルムの測定されたヘイズ値を含む。「位置」とは、バルブ(すなわち、「0」位置)直下のスポットからの入射光の場所(単位はミリメートル)を指し、ひいては(上述された3ミリメートル開口法を使用して測定した)ヘイズの増加を指すことに留意されたい。
【0108】
図5に概略的に示されるように、パルスエネルギー密度の不均一な分布は、表面粗さの不均一な分布、ひいては各フィルムのヘイズ分布をもたらした。
比較例CE27及び実施例E28~E30
【0109】
下の表6にまとめられている条件に従って、素のPET2基材(すなわち、その上に金ナノ粒子コーティングがない)を使用したこと以外はCE1と同様にCE27を調製した。
【表6】
【0110】
上の表6にまとめられている条件に従って、上述されたPET2先行物品を使用したこと以外は上述されたCE2~CE7及びE8~E12と同様にE28~E30を調製した。E28~E30サンプルの各々は、上述したように、金ナノ粒子を備える第1の表面領域と、同一の金ナノ粒子を含まない第2の表面領域とを有した。
【0111】
上の表6は、CE27及びE28~E30サンプルについて測定された光学特性についてまとめている。E28~E30について、光学特性は第1の表面領域(その上に金ナノ粒子を有する領域)で測定された。
【0112】
図6A及び図6Bは、それぞれ、E28サンプルのフィルム基材の第1の表面領域の、パルス光処理前のPET2先行物品601及びパルス光処理後のPET2先行物品604の光学明視野顕微鏡画像である。PET2先行物品601は金ナノ粒子603でコーティングされた第1の主表面602を含み、したがって金ナノ粒子603は、第1の主表面602上に堆積しており、第1の主表面602に隣接する。パルス光処理後、PET2先行物品の透明ポリマーは、その中に少なくとも部分的に埋め込まれた金ナノ粒子606を備える第1の表面領域内に表面粗さ605が付与された。
【0113】
顕微鏡分析により、E28の強いパルス光処理された物品の第1の表面領域は、強いパルス光処理の結果として表面粗さを生じたが、一方、物品の第2の表面領域は、強いパルス光処理の結果として表面粗さを生じなかったことを明らかにした。
【0114】
更に、強いパルス光(1平方センチメートル当たり1.74ジュール、1平方センチメートル当たり3.56ジュール、及び1平方センチメートル当たり5.74ジュールのエネルギー密度を有する単一パルス)の大きな線量の適用により、E28~E30の処理されたフィルム物品について、測定されたヘイズを、それぞれ、12.7%、22.3%、及び59.5%増加させた。
実施例31
【0115】
上述したように調製したPET先行物品フィルムをクロム/ガラスフォトマスクの下に接触するように置いた。このフォトマスク-フィルムアセンブリを、例示的方法3に従って、キセノンフラッシュランプを用いて(E12に使用されるものと同一のパルスパラメータを使用して)処理し、フラッシュランプ光は、マスク内の開口部を通過し、フィルムの領域上に到達して(すなわち、上述されたパルス光処理方法の第3の変形形態)、E31(処理済み)サンプルを調製した。
【0116】
図7Aは、フォトマスク701の写真であり、フォトマスクパターン内の直線及びテキストフィーチャ(開口部)702を示す。
【0117】
図7Bは、得られたE31サンプルの部分703の写真であり、フォトマスクパターンに従って光拡散(すなわち、曇った又は高ヘイズ)領域(テキスト)704を示す。
【0118】
図8Aは、透過光モードで捕捉されたフォトマスク801内の文字「S」開口部802の顕微鏡画像である。相補的領域803は不透明であり、光が通過しない。
【0119】
図8Bは、得られたE31サンプルの部分804の微分干渉コントラスト顕微鏡画像であり、文字「S」パターン805(第1の表面領域)における高平均表面粗さ807を示す。相補的領域806(強いパルス光で照明されていない第2の表面領域)はより低い平均表面粗さ808を呈した。
【0120】
図9Aは、得られたE31サンプルの部分901の微分干渉コントラスト顕微鏡画像であり、この部分は、2つの直線フィーチャの間の角部の形態の第1の表面領域902と、第2の表面領域903とを含む。強いパルス光でフォトマスクを通して照明された第1の表面領域902は、強いパルス光で照明されなかった第2の表面領域903の平均表面粗さ905(本明細書においては、Ra2としてもまた参照される)と比較して、高平均表面粗さ904(本明細書においては、Ra1としてもまた参照される)を含む。
【0121】
図9Bは、E31サンプルの、図9Aで撮像されたのと同一領域の暗視野顕微鏡画像である。銀ナノワイヤ906は、(強いパルス光で照明されており、高(より高い)平均表面粗さRa1を含んだ)第1の表面領域902に存在した。銀ナノワイヤ907はまた、(強いパルス光で照明されておらず、より低い平均表面粗さRa2を呈した)第2の表面領域903に存在した。
【0122】
表7(以下)は、第1の表面領域902(銀ナノワイヤでコーティングされ、かつ強いパルス光で処理された)及び第2の表面領域903(銀ナノワイヤでコーティングされ、かつ強いパルス光で処理されていない)について測定された粗さパラメータR(測定面積の平均平面から測定された表面高さの偏差の絶対値の算術平均)及びR(高さ値の2乗平均平方粗さ又は標準偏差)を列挙している。
【表7】
【0123】
各々が50マイクロメートル×50マイクロメートルである、第1の表面領域902及び第2の表面領域903の各々について、5つのサンプルエリアでパラメータを測定した。表7(上記)は、1つの領域種類当たり5つのサンプルエリアに基づく、R及びRの測定値の平均値及び標準偏差値を列挙している。
【0124】
図10は、E31サンプルの部分1001の第1の表面領域1002と第2の表面領域1003との間の境界の原子間力顕微鏡画像である。第1の表面領域1002はポリマー基材主表面の平均表面1004粗さの増加を含んだ。銀ナノワイヤ1005は、強いパルス光への曝露によって引き起こされたポリマー主表面の表面粗さ1004の外形に従った。
実施例32
【0125】
上述したように調製したPET3先行物品フィルムをクロム/ガラスフォトマスクの下に接触するように置いた。このフォトマスク-フィルムアセンブリを、例示的方法3に従って、キセノンフラッシュランプを用いて(下の表8に記載されるパルスパラメータを使用して)処理し、フラッシュランプ光は、マスク内の開口部を通過し、フィルムの領域上に到達して、E32(処理済み)サンプルを調製した。
【表8】
【0126】
図11Aは、得られたE32サンプルの部分1101の微分干渉コントラスト顕微鏡画像であり、この部分は、2つの直線フィーチャの間の角部の形態の第1の表面領域1102と、第2の表面領域1103とを含む。強いパルス光でフォトマスクを通して照明された第1の表面領域1102は、強いパルス光で照明されなかった第2の表面領域1103の平均表面粗さ1105(本明細書においては、Ra2としてもまた参照される)と比較して、高平均表面粗さ1104(本明細書においては、Ra1としてもまた参照される)を含んだ。
【0127】
図11Bは、E32サンプルの、図11Aで撮像されたのと同一領域の明視野顕微鏡画像である。黒鉛粒子1106は、(強いパルス光で照明されており、高(より高い)平均表面粗さRa1を含んだ)第1の表面領域1102に存在した。黒鉛粒子1107はまた、(強いパルス光で照明されておらず、より低い平均表面粗さRa2を呈した)第2の表面領域1103にも存在した。
【0128】
図12は、E32サンプルの部分1201の第1の表面領域1202と第2の表面領域1203との間の境界の原子間力顕微鏡画像である。第1の表面領域1202はポリマー基材主表面の平均表面1204粗さの増加を含んだ。黒鉛粒子1205は、強いパルス光への曝露によって引き起こされたポリマー主表面の表面粗さ1204の外形に従った。
【0129】
表9(以下)は、第1の表面領域1102(図12の表面領域1202で例示される(黒鉛粒子でコーティングされ、かつ強いパルス光で処理された))及び第2の表面領域1103(図12の表面領域1203で例示される(黒鉛粒子でコーティングされ、かつ強いパルス光で処理されていない))について測定された粗さパラメータR(測定面積の平均平面から測定された表面高さの偏差の絶対値の算術平均)及びR(高さ値の2乗平均平方粗さ又は標準偏差)を示している。
【表9】
【0130】
各々が50マイクロメートル×50マイクロメートルである、第1の表面領域1102及び第2の表面領域1103の各々について、5つのサンプルエリアでパラメータを測定した。表9は、1つの領域当たり5つのサンプルエリアに基づく、R及びRの測定値の平均値及び標準偏差値を示している。802.4nmのRa1(第1の表面領域の平均表面粗さ)は53.6nmのRa2(第2の表面領域の平均表面粗さ)より大きく、748.8nmの絶対差を有する。
【0131】
本発明の範囲及び趣旨から外れることなく、本開示の予測可能な修正及び変更が当業者にとって自明であろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12