(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】面状ヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20230807BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20230807BHJP
H05B 3/26 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H05B3/10 A
H05B3/74
H05B3/26
(21)【出願番号】P 2020032779
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】土井 寛太
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-151237(JP,A)
【文献】特開2019-96617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0186110(US,A1)
【文献】特開平11-90569(JP,A)
【文献】特開2001-332373(JP,A)
【文献】特表2007-537582(JP,A)
【文献】特開2017-199640(JP,A)
【文献】特開2003-77623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02-3/86
H01L 21/26-21/268
H01L 21/322-21/326
H01L 21/42-21/428
H01L 21/477-21/479
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンワイヤー発熱体が基体内部に収容され、前記カーボンワイヤー発熱体に通電されることにより発熱する面状ヒータであって、
分離した複数本の前記カーボンワイヤー発熱体と、
前記分離した一のカーボンワイヤー発熱体と他のカーボンワイヤー発熱体を電気的に接続すると共に、一のカーボンワイヤー発熱体と他のカーボンワイヤー発熱体との接続位置を変更するため、一のカーボンワイヤー発熱体と他のカーボンワイヤー発熱体に沿って移動可能に構成された接続駒と、
前記接続駒に設けられた被吸着部材と、
を備え、
基体外部から吸着部材によって、接続駒を移動させることを特徴とする面状ヒータ。
【請求項2】
前記接続駒は、
円柱形状に形成された駒本体と、
前記駒本体に配置された鉄部材あるいは磁石部材からなる被吸着部材と、
前記駒本体の周面に設けられた、カーボンワイヤー発熱体と接続するカーボンリング部材と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の面状ヒータ。
【請求項3】
前記基体の内面に溝部が形成され、
前記接続駒の端部が、前記溝部内に移動可能に収容されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の面状ヒータ。
【請求項4】
カーボンワイヤー発熱体が収容される基体が石英ガラスからなり、かつ円柱形状に形成される駒本体が石英ガラスからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の面状ヒータ。
【請求項5】
基体外部から接続駒を移動させる吸着部材は、被吸着部材が鉄部材である場合には磁石部材であり、被吸着部材が磁石部材である場合には鉄部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の面状ヒータ。
【請求項6】
前記複数本の発熱体は互いに平行に配置され、かつ発熱体の両端部が基体に固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の面状ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は面状ヒータに関し、特に発熱エリアを変更できる面状ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
図8に示す面状ヒータ50が開示されている。この面状ヒータ50は、プレート状の石英ガラス支持部材51を有し、この石英ガラス支持部材51の一面側(上面)が円板平面状のヒータ面(加熱面)となる。
前記石英ガラス支持部材51の内部には、溝状の空間部Xが形成され、この溝状の空間部Xにカーボンワイヤー発熱体Wがジグザグパターン形状に配線されている。また、このカーボンワイヤー発熱体Wの両端部には、それぞれ封止端子52が接続され、前記空間部Xには不活性ガスが注入、封止されている。
尚、この石英ガラス支持部材51は、前記溝状の空間部Xを除いて融着一体化された構造となっている。
【0003】
この特許文献1に示されたカーボンワイヤー発熱体Wは、金属発熱体等に比べて小さく昇降温特性に優れ、また、非酸化性雰囲気中では高温耐久性にも優れている。しかも、細いカーボン単繊維の繊維束を複数編んで作製されたものであるため、カーボン材のみからなる発熱体に比べ形状柔軟性に富み、種々の構造、形状に容易に加工できるという利点を有している。
従って、このカーボンワイヤー発熱体Wを高純度な石英ガラス部材等のクリーンな耐熱性を有する石英ガラス支持部材51内に非酸化性ガスとともに封入した面状ヒータ50は、パーティクル等を発生させることがなく、半導体製造用ヒータとして極めて好適である。
【0004】
ところで、特許文献1に示された前記面状ヒータ50は、一の封止端子側52から他の封止端子52側まで、いわゆる一筆書きになるように、カーボンワイヤー発熱体Wが配置され、ヒータ面(加熱面)を形成している。
そのため、前記面状ヒータ50のヒータ面(加熱面)の一部のみを加熱することはできなかった。
【0005】
これに対して、特許文献2では、ヒータユニットを複数のセグメントに分け、各々のセグメントの加熱部材を独立して制御できるヒータユニットが提案されている。このヒータユニットにあっては、加熱部材を独立して制御できるため、ヒータ面の一部のみ(一のセグメンのみ)を加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-332373号公報
【文献】特表2007-537582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、特許文献1に示された面状ヒータは、前記面状ヒータのヒータ面全体を加熱することとなり、ヒータ面の一部のみを加熱することはできなかった。即ち、特許文献1に示された面状ヒータにあっては、カーボンワイヤーの発熱長を変更できず、また発熱エリアも変更できなかった。
【0008】
また、特許文献2に示されたヒータユニットにあっては、予め設定されたセグメントの加熱部材を制御するため、ヒータ面(加熱面)をセグメントごと変えることができる。即ち、特許文献2に示されたヒータユニットにあっては、予め設定されたセグメントの範囲内において、カーボンワイヤーの発熱長を変更でき、また発熱エリアも変更できる。
【0009】
しかしながら、特許文献2に示されたヒータユニットであっても、カーボンワイヤーの発熱長を任意に変更できず、また発熱エリアも任意に変更できないという技術的課題があった。
【0010】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、カーボンワイヤーの発熱長を任意に変更でき、発熱エリアも任意に変更できる面状ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するためになされた、本発明に係る面状ヒータは、カーボンワイヤー発熱体が基体内部に収容され、前記カーボンワイヤー発熱体が通電されることにより発熱する面状ヒータであって、分離した複数本の前記カーボンワイヤー発熱体と、前記分離した一のカーボンワイヤー発熱体と他のカーボンワイヤー発熱体を電気的に接続すると共に、一のカーボンワイヤー発熱体と他のカーボンワイヤー発熱体との接続位置を変更するため、一のカーボンワイヤー発熱体と他のカーボンワイヤー発熱体に沿って移動可能に構成された接続駒と、前記接続駒に設けられた被吸着部材と、を備え、基体外部から吸着部材によって、接続駒を移動させることを特徴としている。
【0012】
このように、接続駒が移動可能に構成されているため、一のカーボンワイヤー発熱体と他のカーボンワイヤー発熱体との接続位置を、基体外部から吸着部材によって変えることができる。
その結果、カーボンワイヤー発熱体の発熱長を任意の長さに変更でき、また発熱エリアを変更することができる。
【0013】
ここで、前記接続駒は、円柱形状に形成された駒本体と、前記駒本体に配置された鉄部材あるいは磁石部材からなる被吸着部材と、前記駒本体の周面に設けられた、カーボンワイヤー発熱体と接続するカーボンリング部材と、を備えていることが望ましい。
このように、駒本体に被吸着部材を設けることにより、基体外部から吸着部材によって、接続駒を容易に移動させることができる。
【0014】
また、前記基体の内面に溝部が形成され、前記接続駒の端部が、前記溝部内に移動可能に収容されていることが望ましい。
前記接続駒の端部が前記溝部内に移動可能に収容されるため、接続駒は安定して移動させることができる。
【0015】
また、カーボンワイヤー発熱体が収容される基体が石英ガラスからなり、かつ円柱形状に形成される駒本体が石英ガラスからなることが望ましい。
このように、基体、接続駒が石英ガラスで構成されている場合には、不純物の拡散を抑制でき、半導体製造用ヒータとして好適に用いることができる。
【0016】
また、基体外部から接続駒を移動させる吸着部材は、被吸着部材が鉄部材である場合には磁石部材であり、被吸着部材が磁石部材である場合には鉄部材であることが望ましい。
【0017】
また、前記複数本の発熱体は互いに平行に配置され、かつ発熱体の両端部が基体に固定されることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カーボンワイヤー発熱体の発熱長を任意に変更でき、またエリアを任意に変更できる面状ヒータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明にかかる面状ヒータの実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した面状ヒータに用いられているカーボンワイヤー発熱体を、模式的に示す概略図である。
【
図8】
図8は、従来の面状ヒータを示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる面状ヒータの一実施形態について図面に基づいて説明する。
この面状ヒータ1は、
図1に示すように、カーボンワイヤー発熱体Wが基体2の内部に収容されたヒータであって、封止端子3を介して、前記カーボンワイヤー発熱体Wに通電することにより発熱するヒータである。
尚、
図1において、カーボンワイヤー発熱体Wは直線状に5本配置され、カーボンワイヤー発熱体Wのうちヒータを構成する部分は黒太線で示し、ヒータを構成しない部分は斜線で示している。
【0021】
このカーボンワイヤー発熱体Wの基本構造は、
図2に示すように、直径2乃至15μmのカーボン繊維、例えば、直径7μmのカーボン長繊維を約3000乃至3500本程度束ねたファイバー束W1を10束程度用いて直径約2mmの編紐、或いは組編形状に編み込んだ等のカーボンワイヤーが用いられる。尚、前記の場合において、ワイヤーの編み込みスパンは2乃至5mm程度になされる。
【0022】
図1乃至
図6に示すように、カーボンワイヤー発熱体Wが収容される面状ヒータ1の基体2は、石英ガラスからなる第1の基体21及び第2の基体22から構成される。
図1乃至
図6に示すように、第1の基体21及び第2の基体22は平面視上、矩形形状に形成される。そして、第1の基体21と第2の基体22の周縁部Yが融着されることにより(
図1中、2点鎖線で融着部分を示している)、前記面状ヒータ1内部(基体2の内部)に、カーボンワイヤー発熱体W、接続駒4を収容する空間部Sが形成される。
【0023】
前記カーボンワイヤー発熱体Wは分離した複数本の発熱体であり、前記したように、
図1には5本のカーボンワイヤー発熱体Wが示されている。
夫々の発熱体Wの両端部は、
図1、
図3に示すように、ヒータを構成する基体21と基体22の周縁部Yに挟持され、固定される。
【0024】
この複数本の発熱体Wは互いに平行に配置され、かつ複数本の発熱体Wのうち両側の発熱体Wは、封止端子3まで延設されている。
そして、
図1に示すように、一のカーボンワイヤー発熱体Wと他のカーボンワイヤー発熱体Wの間に接続駒4を配置することにより、一のカーボンワイヤー発熱体Wと他のカーボンワイヤー発熱体Wを電気的に接続するように構成されている。
【0025】
具体的には、
図1に黒太線で示すように、一の封止端子部3から接続駒4を介してカーボンワイヤー発熱体Wが接続され、他の封止端子部3に至るヒータが形成される。
即ち、カーボンワイヤー発熱体の両側に位置する発熱体は、それぞれ前記封止端子部3に接続されている。前記封止端子部3は、石英ガラス管の中にカーボンワイヤーからなる接続線3aが収容されてなり、前記接続線3の一端は前記カーボンワイヤー発熱体Wに接続され、他端は金属の電源供給端子3bに接続されている。そして、前記電源供給端子3bから前記接続線3aを介してカーボンワイヤー発熱体Wに通電することにより、カーボンワイヤー発熱体Wが発熱するように構成されている。
【0026】
また、第1の基体21の下面側には、
図4、
図5、
図6に示すように、リブ21a,21b,21c,21d,21eが設けられている。
そして、前記リブ21aとリブ21bの間、リブ21bとリブ21cの間、リブ21cとリブ21dの間、リブ21dとリブ21eの間には、溝部21f、21g、21h、21iが設けられている。
【0027】
同様に、この第2の基体22の上面側には、
図4、
図5、
図6に示すように、第1の基体21のリブ21a,21b,21c,21d,21eの対応する位置に、リブ22a,22b,22c,22d,22eが設けられている。
そして、リブ22aとリブ22bの間、リブ22bとリブ22cの間、リブ22cとリブ22dの間、リブ22dとリブ22eの間には、溝部22f、22g、22h、22iが設けられている。
【0028】
この溝部21f、21g、21h、21iと、溝部22f、22g、22h、22iは、
図1、
図6に示すように、第1の基体21、第2の基体22の一端部側から他端部側に直線状に延設され、接続駒4の上端部、下端部が移動可能に収容されている。
【0029】
また、
図1、
図4~6に示すように、第1の基体21のリブ21a,21b,21c,21d,21eと、第2の基体22のリブ22a,22b,22c,22d,22eとの間に、前記カーボンワイヤー発熱体Wが配置される。
【0030】
また、
図4に示すように、第1の基体21のリブ21a,21b,21c,21d,21eと、第1の基体22のリブ22a,22b,22c,22d,22eとの間にガラスビーズ5が配置され、このガラスビーズ5によってカーボンワイヤー発熱体Wが保持される。
尚、
図1では、1か所にガラスビーズ5が設けられている場合を示したが、ガラスビーズ5は、カーボンワイヤー発熱体Wを上下方向から保持するものであるため、複数個所、適宜設けても良い。
【0031】
また、
図1、
図6に示すように、基体2内部に接続駒4が設けられ、分離した一のカーボンワイヤー発熱体Wと他のカーボンワイヤー発熱体をW電気的に接続する。そして、この接続駒4と、一のカーボンワイヤー発熱体Wと他のカーボンワイヤー発熱体Wとの接続位置を変更するため、前記したように、接続駒4はカーボンワイヤー発熱体Wに沿って移動可能に構成されている。
【0032】
この接続駒4は、
図7に示すように、石英ガラスからなる円柱形状に形成された駒本体4aと、前記駒本体に配置された鉄部材あるいは磁石部材からなる被吸着部材4bと、前記駒本体の周面に設けられた、カーボンワイヤー発熱体Wと接続するカーボンリング部材4cとを備えている。
この被吸着部材4bは、円柱状の接続駒4の中心軸の線上に配置されている。また、カーボンリング部材4cは、接続駒4にカーボン繊維を巻き付けて構成されている。
【0033】
そして、前記カーボンリング部材4cが、分離した一のカーボンワイヤー発熱体Wと他のカーボンワイヤー発熱体Wとに接触し、電力が供給され、カーボンワイヤー発熱体Wは発熱する。尚、
図1にあっては、黒太線で示されたカーボンワイヤー発熱体Wがヒータとして発熱する。
【0034】
次に、カーボンワイヤー発熱体の発熱長、発熱エリアを変更方法について説明する。
面状ヒータ1の基体2の外部から吸着部材(図示せず)を被吸着部材4bに近づける。この吸着部材は、被吸着部材4bが鉄部材である場合には磁石部材であり、被吸着部材4bが磁石部材である場合には鉄部材である。
そして、前記吸着部材を矢印T1,T2方向に移動させることにより、夫々の接続駒4を、溝部21f、21g、21h、21iと、溝部22f、22g、22h、22iに沿って、移動させる。
【0035】
これにより、この接続駒4と、一のカーボンワイヤー発熱体Wと他のカーボンワイヤー発熱体Wとの接続位置を変えることができ、カーボンワイヤー発熱体の発熱長、発熱エリアが変更される。
尚、この実施形態にあっては、カーボンワイヤー発熱体が5本、接続駒が4個の場合について説明したが、本発明ではこれに限定されるものではなく、カーボンワイヤー発熱体の本数、接続駒の個数は、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 面状ヒータ
2 基体
21 第1の基体
22 第2の基体
3 封止端子部
4 接続駒
4a 駒本体
4b 被吸着部材
4c カーボンリング部材
5 ガラスビーズ