(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20230807BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
E04H1/02
E04B1/348 Q
E04B1/348 S
E04B1/348 V
(21)【出願番号】P 2020068937
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】藤田 重夫
(72)【発明者】
【氏名】梶原 崇
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲司
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-004597(JP,A)
【文献】特開2016-186152(JP,A)
【文献】特開2018-131760(JP,A)
【文献】特開平10-280547(JP,A)
【文献】特開2017-227347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
E04B 1/00-1/36
E04B 1/38-1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に隣接する下階部及び上階部を備えるとともに、平面視の形状が所定方向に長い長方形状とされた多層階建ての住宅であって、
前記下階部に設けられた居室空間と、
前記上階部に設けられ、前記居室空間の上方で前記所定方向に延びる廊下空間を形成する廊下構成体とを備え、
前記廊下構成体は、平面視にて、廊下幅方向において前記居室空間の中間部に位置するように配置されており、
前記居室空間は、その一部が、前記廊下構成体を挟んだ両側でそれぞれ前記下階部から前記上階部へと吹き抜けた一対の吹き抜け空間となっており、
前記廊下構成体は、前記廊下空間の床面を形成する廊下床部と、前記廊下空間を挟んだ両側に立設された一対の廊下側部とを有しており、
前記上階部では、前記各廊下側部が腰壁又は手摺りにより構成されていることで、前記廊下空間と前記各吹き抜け空間とが互いに連通して
おり、
前記住宅は、柱、天井大梁及び床大梁を有してなる直方体状の建物ユニットが複数組み合わせられることにより構成されるユニット式の住宅であって、
前記下階部は、前記建物ユニットとしての下階ユニットが平面視における短手方向を前記所定方向に向けた状態で当該所定方向に一列に並べられることにより構成されており、
前記上階部は、前記建物ユニットとしての上階ユニットが平面視における短手方向を前記所定方向に向けた状態で当該所定方向に一列に並べられることにより構成されており、
上下に隣接する前記下階ユニット及び前記上階ユニットの組み合わせをユニットセットとした場合、前記居室空間は、前記所定方向に並ぶ複数の前記ユニットセットに跨がって形成されており、
前記居室空間を形成する前記各ユニットセットはそれぞれ居室用ユニットセットであり、
前記廊下構成体は、前記各居室用ユニットセットに跨がって延びているとともに、前記居室用ユニットセットにおいて平面視における長手方向の中間部に配置され、
前記各居室用ユニットセットにおいては、前記下階ユニットの前記天井大梁と前記上階ユニットの前記床大梁とが上下に対向配置されることで大梁部が構成され、その大梁部により囲まれた内側領域が、平面視において前記廊下構成体により複数の開口部に分割されており、
前記各居室用ユニットセットの前記開口部を通じて上下階に吹き抜けた前記吹き抜け空間が形成されており、
隣り合う前記居室用ユニットセットにおいて互いに隣接する前記大梁部により大梁集合部が構成され、
前記大梁集合部は、前記廊下構成体を支持している支持部分と、その支持部分を挟んだ両側において前記隣り合うユニットセットの前記各開口部の境界部に配置されている境界配置部分とを有し、
前記各境界配置部分ではそれぞれ、前記大梁集合部を囲むように化粧材が取り付けられていることを特徴とする住宅。
【請求項2】
前記上階部には、前記所定方向における前記廊下空間を挟んだ両側にそれぞれ当該廊下空間を通じて行き来可能とされた上階居室空間が設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の住宅。
【請求項3】
前記上階部の天井部では、前記廊下空間の天井が、それ以外の天井よりも低い位置に設定された下がり天井とされており、
前記下がり天井は前記廊下空間に沿って設けられ、その下がり天井の上方の天井裏空間には、空調用又は換気用の空気を搬送するダクトが配設されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部等では、間口の小さい狭小敷地に住宅が建てられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。狭小敷地に建てられる住宅では、間口(幅)を確保することが難しいため、住宅が間口の小さい狭小住宅として建てられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような狭小住宅では、間口が小さいことから住宅内において開放感を得ることが困難であると考えられる。そのため、その点において、従来の住宅は改善の余地があるといえる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、狭小敷地に建てられる場合であっても開放感を得ることができる住宅を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の住宅は、上下に隣接する下階部及び上階部を備えるとともに、平面視の形状が所定方向に長い長方形状とされた多層階建ての住宅であって、前記下階部に設けられた居室空間と、前記上階部に設けられ、前記居室空間の上方で前記所定方向に延びる廊下空間を形成する廊下構成体とを備え、前記廊下構成体は、平面視にて、廊下幅方向において前記居室空間の中間部に位置するように配置されており、前記居室空間は、その一部が、前記廊下構成体を挟んだ両側でそれぞれ前記下階部から前記上階部へと吹き抜けた一対の吹き抜け空間となっており、前記廊下構成体は、前記廊下空間の床面を形成する廊下床部と、前記廊下空間を挟んだ両側に立設された一対の廊下側部とを有しており、前記上階部では、前記各廊下側部が腰壁又は手摺りにより構成されていることで、前記廊下空間と前記各吹き抜け空間とが互いに連通していることを特徴とする。
【0007】
間口の小さい狭小敷地に建てられる住宅では、その平面視形状が所定方向に長い長方形状とされる場合がある。そこで、上記の構成では、こうした住宅において、下階部には居室空間を設け、上階部には居室空間の上方で上記所定方向に延びる廊下空間を形成する廊下構成体を設けている。居室空間は、その一部が、廊下構成体を挟んだ両側で下階部から上階部へと吹き抜けた一対の吹き抜け空間となっている。また、上階部では、廊下構成体の各廊下側部が腰壁又は手摺りにより構成されていることで、廊下空間と各吹き抜け空間とが互いに連通されている。この場合、各吹き抜け空間が下階部及び上階部のそれぞれで連続されるため、居室空間を開放感のある空間とすることができる。そのため、狭小敷地に建てられる住宅であっても、開放感を得ることができる。
【0008】
第2の発明の住宅は、第1の発明において、柱、天井大梁及び床大梁を有してなる直方体状の建物ユニットが複数組み合わせられることにより構成されるユニット式の住宅であって、前記下階部は、前記建物ユニットとしての下階ユニットが平面視における短手方向を前記所定方向に向けた状態で当該所定方向に一列に並べられることにより構成されており、前記上階部は、前記建物ユニットとしての上階ユニットが平面視における短手方向を前記所定方向に向けた状態で当該所定方向に一列に並べられることにより構成されており、上下に隣接する前記下階ユニット及び前記上階ユニットの組み合わせをユニットセットとした場合、前記居室空間は、前記所定方向に並ぶ複数の前記ユニットセットに跨がって形成されており、前記居室空間を形成する前記各ユニットセットはそれぞれ居室用ユニットセットであり、前記廊下構成体は、前記各居室用ユニットセットに跨がって延びているとともに、前記居室用ユニットセットにおいて平面視における長手方向の中間部に配置され、前記各居室用ユニットセットにおいては、前記下階ユニットの前記天井大梁と前記上階ユニットの前記床大梁とが上下に対向配置されることで大梁部が構成され、その大梁部により囲まれた内側領域が、平面視において前記廊下構成体により複数の開口部に分割されており、前記各居室用ユニットセットの前記開口部を通じて上下階に吹き抜けた前記吹き抜け空間が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、下階部及び上階部がいずれも複数の建物ユニットが一列に並べられることにより構成されている。この場合、所定方向に長い細長形状の住宅を得ることができるため、ユニット住宅を狭小敷地に建てる上で好適な構成とすることができる。また、こうしたユニット式住宅において、一対の吹き抜け空間を有する居室空間が所定方向に並ぶ複数のユニットセットに跨がって形成されているため、建物ユニットにより吹き抜け空間周辺の剛性確保を図りながら、居室空間の開放感を好適に高めることができる。
【0010】
第3の発明の住宅は、第2の発明において、前記隣り合うユニットセットにおいて互いに隣接する前記大梁部により大梁集合部が構成され、前記大梁集合部は、前記廊下構成体を支持している支持部分と、その支持部分を挟んだ両側において前記隣り合うユニットセットの前記各開口部の境界部に配置されている境界配置部分とを有し、前記各境界配置部分ではそれぞれ、前記大梁集合部を囲むように化粧材が取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、隣り合うユニットセットにおいて互いに隣接する大梁部により大梁集合部が構成され、その大梁集合部において隣り合うユニットセットの各開口部の境界部に配置されている部分に当該大梁集合部を囲む化粧材が取り付けられている。この場合、大梁集合部を構成する4本の大梁が化粧材により覆い隠されるとともに、全体として1本の化粧梁として見せることができる。これにより、複数のユニットセットに跨がって居室空間を形成した構成にあって、意匠性が損なわれるのを抑制することができる。
【0012】
第4の発明の住宅は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記上階部には、前記所定方向における前記廊下空間を挟んだ両側にそれぞれ当該廊下空間を通じて行き来可能とされた上階居室空間が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、各上階居室空間が廊下空間を挟んで反対側に配置されているため、それら各上階居室空間を利用する居住者同士のプライバシを好適に確保することができる。
【0014】
第5の発明の住宅は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記上階部の天井部では、前記廊下空間の天井が、それ以外の天井よりも低い位置に設定された下がり天井とされており、前記下がり天井は前記廊下空間に沿って設けられ、その下がり天井の上方の天井裏空間には、空調用又は換気用の空気を搬送するダクトが配設されていることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、上階部の天井部において、廊下空間の天井が下がり天井とされ、その下がり天井の上方の天井裏空間に空調用又は換気用のダクトが配設されている。この場合、吹き抜け空間の天井高さを下げることなく、つまり居室空間の開放感を確保しながら、ダクトを天井裏に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図7】隣り合うユニットセットに跨がって廊下構成体が設けられた構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、住宅が二階建てのユニット式住宅として具体化されている。ユニット式住宅は、複数の建物ユニットが互いに組み合わされることにより構成され、本実施形態では、そのユニット式住宅が間口(幅)の小さい細長の狭小敷地に建てられている。
図1はその住宅の一階部分の間取りを示す平面図であり、
図2は二階部分の間取りを示す平面図である。
図3及び
図4はいずれも住宅内部を示す概略縦断面図であり、
図3が
図1のA-A線断面図及び
図2のB-B線断面図に相当し、
図4が
図1のC-C線断面図及び
図2のD-D線断面図に相当する。
【0018】
図3及び
図4に示すように、住宅10は、一階部分11と二階部分12とを有する建物本体13と、その建物本体13の上方に設けられた屋根部14とを備える。建物本体13は、複数の建物ユニットが互いに組み合わされることにより構成されている。また、屋根部14は、陸屋根により構成されている。なお、一階部分11が下階部に相当し、二階部分12が上階部に相当する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、住宅10は、その平面視の形状が南北方向に長い長方形状とされており、詳しくは南北方向に長い細長形状とされている。より詳しくは、住宅10は、平面視にて長手方向(南北方向)の長さが短手方向(東西方向)の長さの2倍以上となっている。
【0020】
続いて、一階部分11の間取りについて
図1に基づき説明する。
【0021】
図1に示すように、住宅10の一階部分11には、屋内空間として、玄関21と、玄関ホール22と、LDK23と、パントリー24と、浴室25と、洗面室26と、トイレ27とが設けられている。玄関21は、一階部分11において南側に設けられている。玄関21には玄関口28が設けられ、その玄関口28は住宅10の南側に開口している。したがって、本住宅10では、住宅10の南面が住宅正面となっており、住宅10の奥行き方向が南北方向、住宅10の間口方向(幅方向)が東西方向となっている。
【0022】
なお、以下の説明では、住宅10の奥行き方向を住宅奥行方向Xといい、住宅10の間口方向を住宅間口方向Yという。本住宅10は、住宅奥行方向X(所定方向に相当)に長い細長の狭小住宅とされており、したがって、平面視において住宅奥行方向Xが長手方向、住宅間口方向Yが短手方向とされている。
【0023】
玄関21の北側には玄関ホール22が連続して設けられている。玄関ホール22には、トイレ27が隣接しているとともに、二階部分12へ延びる階段29が隣接して設けられている。また、玄関ホール22の北側にはLDK23(リビングダイニングキッチン)が隣接して設けられている。LDK23は、リビングとダイニングとキッチンとが連続する連続空間となっており、その平面視の形状が矩形形状とされている。LDK23は、一階部分11において南北方向の中央部に位置しており、一階部分11における東西方向の全域に亘って形成されている。なお、LDK23が「居室空間」に相当する。
【0024】
LDK23の北側には、パントリー24と浴室25と洗面室26とが設けられている。これら各屋内空間24~26は一階部分11の北側に位置しており、東西方向に並んで配置されている。
【0025】
続いて、二階部分12の間取りについて
図2に基づき説明する。
【0026】
図2に示すように、二階部分12には、屋内空間として、主寝室31と、2つの子供部屋32と、トイレ33と、廊下34とが設けられている。主寝室31は、親用の寝室とされ、二階部分12において南側に設けられている。主寝室31には押入れ35が設けられており、主寝室31の南側にはインナバルコニー39が設けられている。また、各子供部屋32は、二階部分12において北側に設けられ、東西に並んで配置されている。なお、主寝室31及び各子供部屋32がそれぞれ「上階居室空間」に相当する。
【0027】
廊下34は、主寝室31と各子供部屋32との間に設けられ、南北方向に延びている。二階部分12では、この廊下34を通じて主寝室31と各子供部屋32との行き来が可能となっている。換言すると、廊下34は、住宅奥行方向Xに直線状に延びている。そして、住宅奥行方向Xにおいて廊下34を挟んだ両側に主寝室31と各子供部屋32とがそれぞれ配置されている。なお、廊下34が「廊下空間」に相当する。
【0028】
廊下34の南側にはホール47が連続して設けられ、そのホール47を介して廊下34から主寝室31への出入りが可能となっている。ホール47には、トイレ33が隣接しているとともに、一階部分11へ延びる階段29が隣接している。
【0029】
図2~
図4に示すように、廊下34は、廊下構成体36により形成されている。廊下構成体36は、廊下34の床面を形成する廊下床部37と、その廊下床部37の幅方向の両側に立設された一対の腰壁38とを有する。各腰壁38は廊下34を挟んで対向配置されており、それら各腰壁38がそれぞれ「廊下側部」に相当する。
【0030】
廊下構成体36は、二階部分12において住宅間口方向Yの中間部に位置しており、詳しくは中央部に位置している。廊下構成体36は、一階部分11のLDK23の上方(真上)に配置されている。この場合、廊下構成体36は、平面視にて、LDK23における住宅間口方向Y(換言すると廊下幅方向)の中央部に位置するよう配置されている。
【0031】
LDK23は、廊下構成体36を挟んだ両側において一階部分11から二階部分12へと吹き抜けている。つまり、LDK23は、廊下構成体36を挟んだ両側でそれぞれ一階部分11と二階部分12とに跨がって形成された一対の吹き抜け空間23a,23bを有している。これら各吹き抜け空間23a,23bは、平面視にて、住宅奥行方向Xに延びる長方形状をなしており、その大きさが同じとされている。また、各吹き抜け空間23a,23bはそれぞれ腰壁38の上方で廊下34と連通している。これにより、二階部分12では、各吹き抜け空間23a,23bと廊下34とが互いに連続する連続空間となっている。
【0032】
ここで、上述したように、本住宅10は、直方体状の建物ユニット40が複数組み合わせられることで構成されるユニット式住宅となっている。以下では、そのユニット式住宅を構成する建物ユニット40に関する構成について
図1及び
図2に加え
図5を用いながら説明する。
図5は、建物ユニット40の構成を示す斜視図である。なお、
図1及び
図2では便宜上、建物ユニット40の四隅に配置された柱41のみ図示している。
【0033】
まず、建物ユニット40の構成について
図5を用いながら説明する。
図5に示すように、建物ユニット40は、その四隅に配設される4本の柱41と、各柱41の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁42及び床大梁43とを備える。建物ユニット40では、それら柱41、天井大梁42及び床大梁43により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱41は四角筒状の角形鋼よりなる。天井大梁42及び床大梁43は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
【0034】
建物ユニット40の長辺部の相対する天井大梁42の間には、所定間隔で複数の天井小梁45が架け渡されている。同じく建物ユニット40の長辺部の相対する床大梁43の間には、所定間隔で複数の床小梁46が架け渡されている。天井小梁45はリップ溝形鋼よりなり、床小梁46は角形鋼よりなる。天井小梁45によって天井材(図示略)が支持され、床小梁46によって床材(図示略)が支持されるようになっている。
【0035】
図1に示すように、建物本体13の一階部分11は、住宅奥行方向Xに一列に並べて設けられた複数の建物ユニット40により構成されている。これら各建物ユニット40はいずれも平面視における短手方向が住宅奥行方向Xを向くように配置されている。また、各建物ユニット40はいずれも、平面視における長手方向の長さが同じ長さとなっている。
【0036】
図2に示すように、建物本体13の二階部分12は、一階部分11と同様、住宅奥行方向Xに一列に並べて設けられた複数の建物ユニット40により構成されている。これら各建物ユニット40はいずれも平面視における短手方向が住宅奥行方向Xを向くように配置されている。また、各建物ユニット40はいずれも、平面視における長手方向の長さが同じ長さとなっており、その長さは一階部分11の建物ユニット40における同方向の長さとも同じとなっている。
【0037】
なお、以下の説明では、一階部分11の建物ユニット40を下階ユニット40、二階部分12の建物ユニット40を上階ユニット40ともいう。
【0038】
建物本体13は、上下に隣接する下階ユニット40及び上階ユニット40の組み合わせからなるユニットセット50を複数備え、それら各ユニットセット50が住宅奥行方向Xに一列に並べられることにより構成されている。上述した吹き抜け空間23a,23bを有するLDK23は、隣り合う2つのユニットセット50に跨がって形成されている。これら2つのユニットセット50は、LDK23を形成するためのLDK用のユニットセット50(以下、この符号にaを付す)となっており、「居室用ユニットセット」に相当する。
【0039】
続いて、LDK用のユニットセット50aに関する構成について
図6及び
図7に基づいて説明する。
図6は、LDK用のユニットセット50aを示す斜視図である。
図7は、隣り合うユニットセット50aに跨がって廊下構成体36が設けられた構成を示す平面図である。なお、
図7では、各ユニットセット50aの上階ユニット40の下面部をその上方から見た状態を示している。
【0040】
図6に示すように、LDK用のユニットセット50aを構成する下階ユニット40(以下、その符号にaを付す)及び上階ユニット40(以下、その符号にbを付す)は、その構成が
図5に示す通常の建物ユニット40と一部相違している。下階ユニット40aは、その上面部に、各天井大梁42により囲まれた囲み領域52を有している。囲み領域52には天井小梁45が配設されておらず、それにより囲み領域52は矩形の開口領域とされている。また、上階ユニット40bは、その下面部に、各床大梁43により囲まれた囲み領域53を有している。囲み領域53には床小梁46が配設されておらず、それにより、囲み領域53は矩形の開口領域とされている。
【0041】
LDK用のユニットセット50aにおいて、下階ユニット40aの天井大梁42と上階ユニット40bの床大梁43とは上下に対向配置されている。この場合、それら上下に対向配置された天井大梁42及び床大梁43により大梁部55が構成されている。LDK用のユニットセット50aには、4辺の各大梁部55により囲まれた内側領域56が形成されている。この内側領域56は、下階ユニット40aの囲み領域52と上階ユニット40bの囲み領域53とを含んで形成されている。
【0042】
図7に示すように、隣り合うLDK用のユニットセット50aには、それら各ユニットセット50aに跨がって廊下構成体36が設けられている。廊下構成体36は、住宅奥行方向Xにおいて各ユニットセット50aの全域に跨がって延びている。廊下構成体36は、各ユニットセット50aにおいて、その平面視における長手方向(ユニット長手方向)の中間部に配置され、詳しくは中央部に配置されている。
【0043】
各ユニットセット50aの内側領域56は、平面視において、廊下構成体36により複数(具体的には2つ)の開口部58に分割されている。これらの開口部58は、平面視において、3辺の大梁部55と廊下構成体36とに囲まれた矩形の開口領域となっている。
図7では、これら各開口部58の外縁を二点鎖線で示している。各ユニットセット50aでは、これらの開口部58を通じて一階部分11から二階部分12へと吹き抜ける吹き抜け空間23a,23bが形成されている(
図2も参照)。この点について詳しくは、各ユニットセット50aではそれぞれ、複数(2つ)の開口部58が住宅間口方向Y(換言すると廊下幅方向)における廊下構成体36を挟んだ両側にそれぞれ形成されている。そして、各ユニットセット50aにおいて、住宅間口方向Y(換言すると廊下幅方向)における廊下構成体36の一方側に形成された各々の開口部58を通じて吹き抜け空間23aが形成され、廊下構成体36の他方側に形成された各々の開口部58を通じて吹き抜け空間23bが形成されている。
【0044】
隣り合うユニットセット50aの境界部には、それら各ユニットセット50aにおいて互いに隣接する大梁部55により大梁集合部61が構成されている。以下では、この大梁集合部61に関する構成について
図7に加え、
図8を用いながら説明する。なお、
図8は大梁集合部61の構成を示す縦断面図であり、
図7のE-E線断面図に相当する。
【0045】
図7及び
図8に示すように、大梁集合部61は、各ユニットセット50aの隣接する大梁部55を含んで構成されている。したがって、大梁集合部61は、これら各大梁部55を構成する床大梁43及び天井大梁42をそれぞれ含んで構成され、つまりは計4本の大梁42,43を含んで構成されている。
【0046】
大梁集合部61は、廊下構成体36と交差する方向に延びており、詳しくは廊下構成体36と直交する方向に延びている。大梁集合部61は、廊下構成体36と交差する交差部分において当該廊下構成体36を支持する支持部分61aを有している。この支持部分61aには廊下構成体36の廊下床部37が連結されている(
図4も参照)。これにより、支持部分61aにより廊下床部37が支持され、ひいては廊下構成体36が支持されている。
【0047】
大梁集合部61において支持部分61aを挟んだ両側の部分はそれぞれ隣り合うユニットセット50aの隣接する各開口部58の境界部に沿って配置された境界配置部分61bとなっている。大梁集合部61の各境界配置部分61bにはそれぞれ大梁集合部61を囲むように化粧材63が取り付けられている。化粧材63は、大梁集合部61を構成する4本の大梁42,43をまとめて囲むように四角筒状に形成されている。化粧材63は、各境界配置部分61bにおいてそれぞれ、境界配置部分61bの長さ方向全域に亘って延びている。また、化粧材63は、例えば断面コ字状をなす複数の部材により構成され、それら各部材により全体として四角筒状に形成されている。このように、各境界配置部分61bでは、大梁集合部61が化粧材63により囲まれることで化粧梁64(あらわし梁)が形成されている。
【0048】
図4の説明に戻って、二階部分12の天井部では、廊下34の天井が他の天井よりも低い位置に設定された下がり天井71となっている。下がり天井71は、廊下34に沿って設けられており、詳しくは廊下34の長さ方向全域に亘って設けられている。これにより、二階部分12では、廊下34の天井(つまり下がり天井71)が各吹き抜け空間23a,23bの天井よりも低い位置に設定されている。また、下がり天井71の幅は、廊下34の幅と略同じとされている。但し、下がり天井71の幅は廊下34の幅より小さい幅であってもよい。
【0049】
下がり天井71の上方の天井裏空間72には、空調用のダクト74が配設されている。図示は省略するが、本住宅10には、二階部分12に全館空調システムが設けられている。全館空調システムは、共通の空調装置により主寝室31や子供部屋32、吹き抜け空間23a,23bの空調(冷暖房)を行うものである。全館空調システムでは、空調装置により生成される空調空気(冷気又は暖気)が上記のダクト74を通じて各屋内空間31,32,23a,23bに供給され、その供給される空調空気により各屋内空間31,32,23a.23の空調が行われるようになっている。
【0050】
ダクト74は、天井裏空間72において廊下34に沿って延びるように配設されている。ダクト74には、その側面部に空調空気を吹き出す吹出口(図示略)が設けられており、その吹出口より各屋内空間31,32,23a.23に空調空気が吹き出されるようになっている。
【0051】
図3及び
図4に示すように、屋根部14には、各吹き抜け空間23a,23bの上方位置(真上位置)にそれぞれトップライト76(天窓)が設けられている。トップライト76は、屋根部14における各吹き抜け空間23a,23bの上方位置にそれぞれ複数ずつ(具体的には2つ)配置されている。これにより、これらのトップライト76より吹き抜け空間23a,23bへの採光が可能となっている。また、詳しくは、吹き抜け空間23aの上方に配置された各トップライト76については、吹き抜け空間23aを構成する各開口部58の真上位置に配置され、吹き抜け空間23bの上方に配置された各トップライト76については、吹き抜け空間23bを構成する各開口部58の真上位置に配置されている。
【0052】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0053】
住宅10の一階部分11にはLDK23を設け、二階部分12にはLDK23の上方で住宅奥行方向X(所定方向に相当)に延びる廊下34を形成する廊下構成体36を設けた。また、LDK23の一部を、廊下構成体36を挟んだ両側で一階部分11から二階部分12へと吹き抜ける一対の吹き抜け空間23a,23bとして形成した。また、二階部分12では、廊下構成体36を、廊下34を挟んだ両側に立設された一対の腰壁38を有して構成することで、廊下34と各吹き抜け空間23a,23bとを互いに連通させた。この場合、各吹き抜け空間23a,23bが一階部分11及び二階部分12のそれぞれで連続されるため、LDK23を開放感のある空間とすることができる。そのため、狭小敷地に建てられる住宅10であっても、開放感を得ることができる。
【0054】
一階部分11及び二階部分12をそれぞれ住宅奥行方向Xに一列に並べた複数の建物ユニット40により構成した。この場合、住宅奥行方向Xに長い細長形状の住宅10を得ることができるため、ユニット式住宅を狭小敷地に建てる上で好適な構成とすることができる。また、こうしたユニット式住宅において、一対の吹き抜け空間23a,23bを有するLDK23を住宅奥行方向Xに並ぶ複数のユニットセット50aに跨がって形成したため、建物ユニット40により吹き抜け空間23a,23b周辺の剛性確保を図りながら、LDK23の開放感を好適に高めることができる。
【0055】
隣り合うユニットセット50aにおいて互いに隣接する大梁部55により大梁集合部61を構成し、その大梁集合部61において隣り合うユニットセット50aの各開口部58の境界部に配置されている部分、つまり境界配置部分61bに大梁集合部61を囲むようにして化粧材63を取り付けた。この場合、大梁集合部61を構成する4本の大梁42,43が化粧材63により覆い隠されるとともに、全体として1本の化粧梁64として見せることができる。これにより、複数のユニットセット50aに跨がってLDK23を形成した構成にあって、意匠性が損なわれるのを抑制することができる。
【0056】
二階部分12において、主寝室31と子供部屋32とを、住宅奥行方向X(換言すると廊下長さ方向)における廊下34を挟んだ両側にそれぞれ配置した。この場合、主寝室31を利用する親と子供部屋32を利用する子供との互いのプライバシを好適に確保することができる。
【0057】
二階部分12の天井部において、廊下34の天井を他の天井よりも天井高さが低くされた下がり天井71とし、その下がり天井71上方の天井裏空間72に空調用のダクト74を配設した。この場合、吹き抜け空間23a,23bの天井高さを下げることなく、つまりLDK23の開放感を確保しながら、ダクト74を天井裏に配設することができる。
【0058】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、廊下構成体36が一対の腰壁38を有して構成されていたが、廊下構成体36が一対の手摺りを有して構成されていてもよい。この場合、各手摺りが「廊下側部」に相当する。
【0060】
・上記実施形態では、一対の吹き抜け空間を有する居室空間がLDK23とされていたが、一対の吹き抜け空間を有する居室空間がリビングやリビングダイニング等、LDK以外の空間であってもよい。
【0061】
・上記実施形態では、LDK23(及び廊下34)を住宅奥行方向Xに並ぶ2つのユニットセット50(つまりLDK用のユニットセット50a)に跨がって形成したが、LDK23(及び廊下34)を住宅奥行方向Xに並ぶ3つ以上のユニットセット50aに跨がって形成してもよい。そうすれば、LDK23の開放感をより高めることが可能となる。
【0062】
・上記実施形態では、下がり天井71の上方の天井裏空間72に空調空気を搬送する空調用のダクト74を配設したが、これを変更して、かかる天井裏空間72に換気用の空気を搬送する換気用ダクトを配設してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、二階建ての住宅10に本発明を適用したが、三階建て以上の住宅10に本発明を適用してもよい。例えば、三階建ての住宅において、二階部分にLDK23を設け、そのLDK23の吹き抜け空間23a,23bを二階部分と三階部分とに跨がって形成することが考えられる。そして、三階部分に廊下34を設けることが考えられる。
【0064】
・上記実施形態では、本発明をユニット式住宅に適用したが、鉄骨軸組工法や在来木造工法等、他の工法で構築された住宅に適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…住宅、11…下階部としての一階部分、12…上階部としての二階部分、23…居室空間としてのLDK、23a.23b…吹き抜け空間、31…上階居室空間としての主寝室、32…上階居室空間としての子供部屋、34…廊下空間としての廊下、36…廊下構成体、37…廊下床部、38…廊下側部としての腰壁、40…建物ユニット、41…柱、42…天井大梁、43…床大梁、50…ユニットセット、50a…居室用ユニットセットとしてのLDK用のユニットセット、55…大梁部、56…内側領域、58…開口部、61…大梁集合部、61a…支持部分、61b…境界配置部分、63…化粧材、71…下がり天井、72…天井裏空間、74…ダクト。