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特許7326250電源装置及びこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】電源装置及びこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20230807BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230807BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230807BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230807BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20230807BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230807BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230807BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6555
H01M50/209
H01M50/249
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020509606
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2018042377
(87)【国際公開番号】W WO2019187313
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018069571
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】内藤 公計
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-097693(JP,A)
【文献】特開2010-165597(JP,A)
【文献】特開2013-033668(JP,A)
【文献】特開2017-168780(JP,A)
【文献】特表2016-512376(JP,A)
【文献】特表2017-523584(JP,A)
【文献】特表2017-524240(JP,A)
【文献】特表2018-536824(JP,A)
【文献】特表2019-508632(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102585360(CN,A)
【文献】中国実用新案第204088432(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102009044997(DE,A1)
【文献】国際公開第2004/088774(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/032484(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/044133(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/106524(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/011384(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/80
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6555
H01M 10/658
H01M 50/209
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形である複数の電池セルと、
複数の前記電池セルを積層状態に固定している固定部材と、
前記電池セルの積層面に挟まれて隣接する電池セル間を断熱してなる断熱シートとを備える電源装置であって、
前記断熱シートが、
無機繊維が立体的に方向性なく集合されて前記無機繊維の間に微細な空隙を設けてなる無機繊維シートであって、
無機繊維の隙間に無機粒子が充填されてなる無機繊維シートであり、
前記断熱シートが、無機繊維シートの両面に保護シートを積層してなる積層シートであることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記断熱シートが、無機繊維の隙間に熱可塑性樹脂を含む無機繊維シートであることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載される電源装置であって、
前記無機粒子が、無機中空粒子又は無機発泡粒子であることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置であって、
前記保護シートが熱可塑性樹脂であることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載される電源装置であって、
前記保護シートがプラスチックシート、織布、あるいは不織布であることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載する電源装置であって、
前記保護シートが両面接着テープを介して前記電池セルの積層面に接着されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載される電源装置であって、
前記無機繊維シートが、湿式抄紙法により前記無機繊維が立体的に方向性なく集合されて、前記無機繊維の隙間に前記無機粒子が充填されてシート状に加工されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載される電源装置であって、
前記無機繊維シートが、正面視において縦横に配置された複数の開口部を備えており、
前記無機繊維シートの両面に前記保護シートが積層された前記積層シートの内部に前記開口部による複数の空気層を形成してなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、該電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、該モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えることを特徴とする電源装置を備える電動車両。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えており、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを積層した電源装置に関し、特にハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両に搭載されて車両を走行させるモータの電源装置、あるいは家庭用、工場用の蓄電用途等に使用される大電流用の電源装置と、この電源装置を備える電動車両及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大出力が要求される電源装置は、多数の電池を直列や並列に接続している。たとえば、モータで走行する電気自動車、あるいはモータとエンジンの両方で走行するハイブリッド自動車等の自動車、自然エネルギーで充電される蓄電装置、停電のバックアップ電源に使用される電源装置等は、複数の電池セルを積層して電池ブロックとしている。電池ブロックは、電池セルを絶縁して積層している。直列に接続される電池セルに電位差が発生するからである。電池セルを絶縁するために、電池セルを絶縁フィルムで被覆し、さらに電池セルの間に絶縁セパレータを配置している。(特許文献1参照)
【0003】
この電源装置は、電池セルを絶縁フィルムで被覆して、隣接する電池セルを絶縁し、さらに、電池間に絶縁セパレータを配置して絶縁している。この構造の電源装置は、電池セル間を絶縁できるが、電池セル間を効果的に断熱できない欠点がある。多数の電池セルを積層している電源装置において、電池セル間の絶縁特性に加えて断熱特性は極めて大切である。とくに、近年、電池セルの高容量化が進み、電池セルの持つエネルギー量が増加することから、熱暴走の連鎖を防止する技術の重要性が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-33668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的の一つは、簡単な構造で電池セルの熱暴走の連鎖を効果的に阻止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明のある態様の電源装置は、角形である複数の電池セルと、複数の前記電池セルを積層状態に固定している固定部材と、前記電池セルの積層面に挟まれて隣接する電池セル間を断熱してなる断熱シートとを備える電源装置であって、前記断熱シートが、無機繊維が立体的に方向性なく集合されて前記無機繊維の間に微細な空隙を設けてなる無機繊維シートであって、無機繊維の隙間に無機粒子が充填されてなる無機繊維シートであり、前記断熱シートが、無機繊維シートの両面に保護シートを積層してなる積層シートであることを特徴とする。
【0007】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える電動車両は、前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、該電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、該モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えている。
【0008】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える蓄電装置は、前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラを備え、前記電源コントローラが外部からの電力による前記角形電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電源装置は、簡単な構造で電池セルの熱暴走の連鎖を効果的に阻止できる特徴がある。それは、以上の電源装置が、電池セルの間に積層している断熱シートを、無機繊維を立体的に方向性なく集合して無機繊維の間に微細な空隙を設けてなる無機繊維シートとして、電池セル間の断熱特性を著しく向上し、熱暴走して発熱する電池セルの熱エネルギーを有効に遮断して、隣接する電池セルへの熱エネルギーの伝導を遮断するからである。とくに、本発明の電源装置は、極めて優れた耐熱特性のある無機繊維を立体的に方向性なく集合して、無機繊維の間には無数の空隙を設けて、無機繊維による断熱性に加えて、繊維の間に無数の空隙を設けて空気層に匹敵する耐熱特性を実現するからである。さらに、以上の電源装置は、無機繊維を立体的に集合して繊維の間に微細な空隙を設けて空気層を設けているので、何れかの電池セルが熱暴走して、例えば400℃を越える異常な高温に加熱される状態においても、極めて優れた耐熱特性の無機繊維によって空隙が維持されて電池セル間を効果的に断熱して熱暴走の連鎖を確実に阻止できる特徴を実現する。とくに、無機繊維シートを立体的に方向性なく集合している無機繊維シートは、内部には繊維間に微細な空隙があって熱伝導率が小さく、さらに耐熱特性に優れた無機繊維は軟化したり、溶融することがないので、優れた耐圧縮強度を有し、何れかの電池セルが熱暴走して高温に加熱され、さらに電池セルが膨張して断熱シートを加圧する状態においても優れた断熱特性が失われず、熱暴走した電池セルの熱エネルギーが隣の電池セルに伝導するのを極めて有効に遮断して、熱暴走の誘発を効果的に阻止するという、電源装置において極めて大切な特性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態にかかる電源装置の斜視図である。
図2図1の電源装置の分解斜視図である。
図3】電池セルと断熱シートの積層構造を示す分解斜視図である。
図4】断熱シートの他の一例を示す分解斜視図である。
図5】断熱シートの他の一例を示す分解斜視図である。
図6】断熱シートの他の一例を示す分解斜視図である。
図7】断熱シートの他の一例を示す展開図である。
図8図7に示す断熱シートを電池セルを被覆する工程を示す斜視図である。
図9図7に示す断熱シートで電池セルを被覆する工程を示す斜視図である。
図10】エンジンとモータで走行するハイブリッドカーに電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図11】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図12】蓄電装置に電源装置を使用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のある態様の電源装置は、以下の構成により特定されてもよい。電源装置は、角形である複数の電池セル1と、複数の電池セル1を積層状態に固定している固定部材6と、電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱してなる断熱シート2とを備えており、断熱シート2を、無機繊維を立体的に方向性なく集合して無機繊維の間に微細な空隙を設けている無機繊維シート2Xとしている。
【0012】
断熱シート2は、無機繊維の隙間に熱可塑性樹脂を含む無機繊維シート2Xとしてもよい。以上の電源装置は、断熱シートの無機繊維シートが熱可塑性樹脂を含むので、電池セルが熱暴走して発熱すると、電池の発熱温度が熱可塑性樹脂の融点よりも高くなって熱可塑性樹脂を融解する。融解された熱可塑性樹脂は融解熱を吸収して断熱シートの実質的な耐熱特性を改善する。解熱熱による熱エネルギーの吸熱は、優れた断熱特性を示す無機繊維シートの断性をさらに向上して、熱暴走の誘発をさらに効果的に防止する。
【0013】
断熱シート2は、無機繊維の隙間に無機粒子を充填してなる無機繊維シート2Xとしてもよい。以上の電源装置は、無機繊維の隙間に充填している無機粒子によって圧縮強度が向上するので、電池セルが熱暴走して膨張する状態においても優れた断熱特性を維持して熱暴走の誘発を防止できる特徴がある。それは、無機繊維の隙間に充填している無機粒子が繊維の隙間を確保して、微細な空気が押し潰されるのを防止するからである。この特性は熱暴走の誘発に特に大切である。それは、熱暴走した電池セルが膨張して断熱シートを強く加圧するので、この状態で押し潰されると空隙の空気量が減少して断熱特性が低下するからである。
【0014】
無機粒子は、無機中空粒子又は無機発泡粒子としてもよい。以上の電源装置は、無機繊維の隙間に充填している無機中空粒子や無機発泡粒子によって圧縮強度が向上するので、熱暴走して膨張した電池セルに加圧されて断熱特性が低下するのを防止できることに加えて、さらに無機粒子が中空あるいは発泡状態にあるので、さらに無機粒子自体が含有する空気によって断熱特性が向上して、熱暴走の誘発をさらに有効に防止できる特徴がある。
【0015】
断熱シート2は、無機繊維シート2Xの表面に保護シート4を積層してなる積層シート5としてもよい。以上の電源装置は、表面に保護シートを積層しているので、保護シートによって、繊維を集合したシートよりも表面を滑らかな層にできるので、保護シートを介して断熱シートを電池セルの表面に確実に付着して、電池セルとの相対的な位置ずれを防止できる。とくに、両面に保護シートを積層することで、無機繊維や無機粒子などの脱落を防止できる特徴も実現する。
【0016】
保護シート4は、熱可塑性樹脂としてもよい。以上の電源装置は、表面に熱可塑性樹脂の保護シートを積層しているので、保護シートで表面を平滑面にできることに加えて、熱暴走した電池セルの発熱で熱可塑性樹脂の保護シートを融解し、その融解熱で電池セルの熱エネルギーを吸収して実質的な耐熱特性を改善できる。したがって、断熱シートが特に優れた断熱特性を実現して、電池の熱暴走の誘発をさらに効果的に防止する。
【0017】
保護シート4は、プラスチックシート、織布、あるいは不織布としてもよい。また、保護シート4は、両面接着テープ3を介して電池セル1の積層面11Aに接着してもよい。なお、本明細書において接着は粘着を含む広い意味に使用する。
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
本発明の実施の形態に係る電源装置を図1図3に示す。これらの図において、図1は電源装置の斜視図、図2図1の電源装置の分解斜視図、図3は電池セルと断熱シートの積層構造を示す分解斜視図をそれぞれ示している。この電源装置100は、主としてハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載されて、車両の走行モータに電力を供給して、車両を走行させる電源に使用される。ただ、本発明の電源装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車以外の電動車両に使用でき、また電動車両以外の大出力が要求される用途、例えば蓄電装置用の電源としても使用できる。
【0020】
図1図3に示す電源装置100は、角形である複数の電池セル1と、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体9を積層状態に固定している固定部材6と、電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱してなる断熱シート2とを備えている。図に示す電源装置100は、隣接する電池セル1を断熱シート2を介して積層して電池積層体9とし、この電池積層体9を固定部材6で締結して電池ブロック10としている。電源装置100は、図示しないが、電池ブロック10を冷却プレートの上に載せて、各電池セル1を冷却プレートで強制冷却することができる。
【0021】
(電池セル1)
電池セル1は、図3に示すように、その外形を構成する外装ケース11を、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形としている。角形の電池セル1は、外装ケース11を、有底の外装缶11xの開口部を封口板11aで閉塞している。ここで、外装ケース11の外形を角形とする電池セル1は、有底の外装缶11xの底側の面となる底面11Dと、互いに積層される電池セル1同士の対向面となる、幅方向に広がる積層面11Aと、電池積層体9の両側面を構成する面となる、電池セル1の厚さ方向に広がる側面11Bと、外装缶11xの開口部を閉塞する封口板11aで構成される面となる天面11Cとを備えている。角形の電池セル1は、複数個が厚さ方向に積層されて電池積層体9を構成している。
なお、本明細書において、電池セル1の上下方向は、図面で示す方向、すなわち、外装缶11xの底側を下方向、封口板11a側を上方向とする。
【0022】
電池セル1は、リチウムイオン電池である。ただし、電池セル1は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の充電可能な二次電池とすることもできる。電池セル1にリチウムイオン二次電池を使用する電源装置は、電池セル全体の体積や質量に対する充電容量を大きくできる特長がある。
【0023】
さらに、電池セル1は、外装缶11xを閉塞する封口板11aの両端部に正負の電極端子11bを設けると共に、一対の電極端子11bの間に安全弁11cを設けている。安全弁11cは、外装缶11xの内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。この電池セル1は、安全弁11cの開弁により、外装缶11xの内圧上昇を停止することができる。
【0024】
ここで、電池セル1は、外装缶を金属製としている。このため、隣接する電池セル1の外装缶同士が接触してショートするのを防止するために、各電池セル1の積層面11Aの間には絶縁性を有する断熱シート2を介在させている。このように、絶縁性を有する断熱シート2で断熱して積層される電池セル1は、外装缶をアルミニウムなどの金属製にできる。
【0025】
(固定部材6)
複数の電池セル1を積層してなる電池積層体9は、固定部材6を介して積層方向に締結して電池ブロック10としている。図1の電池ブロック10の例では、18個の電池セル1を積層している。固定部材6は、電池積層体9を、両端面から挟着する一対のエンドプレート7と、このエンドプレート7を連結するバインドバー8とを備える。電池積層体9は、図2の分解斜視図に示すように、隣接する電池セル1の積層面11Aの間に断熱シート2を挟んで積層している。ただ、固定部材は、必ずしもエンドプレート7とバインドバー8とに特定しない。固定部材は、電池積層体を積層方向に締結できる他の全ての構造が使用できる。
【0026】
(エンドプレート7)
エンドプレート7は、図2に示すように、電池ブロック10の両端であって、エンドセパレータ14の外側に配置されている。エンドプレート7は、電池セル1の外形とほぼ同じ形状と寸法の四角形として、積層している電池積層体9を両端面から挟着している。エンドプレート7は、全体を金属で製作している。金属製のエンドプレート7は、優れた強度と耐久性を実現できる。電池ブロック10の両端に配置される一対のエンドプレート7は、図1図2に示すように、電池積層体9の両側面に配置される一対のバインドバー8を介して締結される。
【0027】
(バインドバー8)
バインドバー8は、電池積層体9の両端面に配置されたエンドプレート7に固定されて、このエンドプレート7を介して電池積層体9を積層方向に締結する。バインドバー8は、電池積層体9の表面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板である。このバインドバー8には、鉄などの金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなるバインドバー8は、図1図2に示すように、電池積層体9の側面に沿って配置されて、両端が一対のエンドプレート7に固定されて、電池積層体9を積層方向に締結する。
【0028】
(断熱シート2)
断熱シート2は、図2及び図3に示すように、電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱する。断熱シート2は、無機繊維を立体的に方向性なく集合して、無機繊維の間には微細な空隙を設けている無機繊維シート2Xである。無機繊維は、無機物からなる繊維であって断熱特性に優れた繊維が使用される。無機繊維は、たとえば、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)、ロックウール、セラミック繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム等が単一であるいは複数の繊維を混合して使用される。ケイ酸マグネシウム(セピオライト)は、成分をタルクと同じケイ酸マグネシウムとするが、タルクとは分子構造が異なってミクロの微細な孔があって優れた断熱特性を示し、また、表面には、叩解されたパルプのように無数の微細な繊維があるので、バインダーを使用することなく湿式抄紙してシート状にできるので、無機繊維として適している。また、ロックウールは、主成分が二酸化ケイ素と酸化カルシウムで優れた断熱性と断熱特性を示す不燃材で、しかも安価に多量生産しているので原料コストを低減できる。
【0029】
断熱シート2は、湿式抄紙法で、無機繊維を立体的に方向性なく集合してシート状の無機繊維シート2Xとする。断熱シート2は、好ましくは、無機繊維に熱可塑性樹脂や無機粒子等を添加して製造される。無機繊維シート2Xに添加される熱可塑性樹脂は、耐熱温度を200℃以上とするプラスチックが使用できるが、耐熱温度の高いアラミド樹脂が適しており、その他のほとんどの熱可塑性樹脂も使用できる。熱暴走した電池セルは400℃以上の高温に発熱するので、無機繊維シート2Xに添加されたほとんどの熱可塑性樹脂を融解し、融解熱で断熱シート2を強制冷却する。無機繊維シート2Xに添加された熱可塑性樹脂は、熱暴走して異常な高温に発熱した電池セル1で溶融され、溶融熱で強制冷却して断熱シート2の断熱特性を向上するので、添加量を多くして溶融熱による冷却効果を高くできるが、添加量が多くなると無機繊維シート2Xの空隙率が低下して空気による断熱特性が低下するので、熱可塑性樹脂の添加量は30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは約10重量%とする。
【0030】
無機繊維シート2Xに添加される無機粒子には、シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用できるが、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適している。無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現する。この断熱シート2は、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用する。シラスバルーンは、シリカ(SiO)を主成分とするシラスを1000℃で急速加熱して発泡させて製造されることから、極めて優れた耐熱性があり、さらに、気泡を抱いた微細な粒子であって、熱伝導率を約0.06~0.08W/mkとする優れた断熱特性を示す。このことから、シラスバルーンを含有する断熱シート2も、含有するシラスバルーンの優れた耐熱性によって、電池セル1が高温に加熱される状態にあっても優れた断熱特性を維持し、さらに、熱暴走して高温に発熱する電池セル1の熱エネルギーを効果的に遮断して、隣接する電池セル1の熱暴走の誘発を効果的に阻止する。断熱シート2は、無機繊維を立体的に集合している多孔質基材の隙間に多孔質シリカ粒子を充填して製作される。無機繊維シート2Xは、無機中空粒子等を添加して断熱特性を改善できるが、多すぎると強度が低下するので、添加量は、たとえば30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは約10重量%以下とする。
【0031】
熱可塑性樹脂や無機粒子は、湿式抄紙法で無機繊維シート2Xを製造する工程で抄紙スラリーに添加される。熱可塑性樹脂は抄紙用スラリーに繊維の状態で添加される。繊維の状態で抄紙用スラリーに添加され熱可塑性樹脂は、湿式抄紙されてシート状に加工された後、加熱・加圧されて溶融して無機繊維を交点で結合することができる。
【0032】
無機繊維シート2Xは、湿式抄紙法で製造されて無機繊維を立体的に方向性なく集合し、繊維の隙間に無機粒子等の添加物を充填してシート状に加工される。抄紙用スラリーは、無機繊維と添加物などを液中に均一に分散し、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の濃度を0.01~0.5質量%に調整する。無機繊維に添加物を懸濁している抄紙用スラリーは、湿式抄紙されてシート状に加工した後、乾燥し、その後、熱プレスして所定の厚さとして無機繊維シート2Xとする。
【0033】
湿式抄紙した後、熱プレスしてシート状に製造された無機繊維シート2Xは、好ましくは表面に保護シート4を積層して使用される。保護シート4は熱可塑性樹脂からなるプラスチックシート、あるいは織布や不織布が使用されるが、好ましくはプラスチックシートが使用される。保護シート4は、接着剤を介して無機繊維シート2Xの表面に接着される。ただし、熱可塑性樹脂を添加して湿式抄紙して製造された無機繊維シート2Xは、表面に熱可塑性樹脂製のプラスチックシートや織布あるいは不織布を積層し、両面から加熱・加圧して保護シート4を無機繊維シート2Xに熱溶着することもできる。
【0034】
表面に保護シート4を接合している断熱シート2は、保護シート4で無機繊維シート2Xの表面を補強できる。したがって、無機繊維を結合する熱可塑性樹脂を添加することなく湿式抄紙して無機繊維シート2Xを製造し、この無機繊維シート2Xの表面に保護シート4を接着して充分な強度の断熱シート2にできる。また、無機繊維の隙間に、無機粒子や粒状熱可塑性樹脂等を添加している無機繊維シート2Xにあっては、バインダーを使用することなく、あるいはバインダーの使用量を少なくして製造し、その表面に保護シート4を接着して無機粒子等の添加物が外部に漏れるのを防止できる。ただ、熱可塑性樹脂で無機繊維の交点を結合して無機繊維シート2Xを製造し、この無機繊維シート2Xの表面に保護シート4を接着してより強靭な断熱シート2にできる。
【0035】
図3に示す断熱シート2は、無機繊維シート2Xの両面に保護シート4を積層して接着している積層シート5である。保護シート4は、熱可塑性樹脂のプラスチックシートや織布又は不織布である。この断熱シート2は、両面に接着している保護シート4によって、無機中空粒子の漏れを防止できることに加えて、保護シート4を両面接着テープ3などで電池セル1の積層面11Aに接着して、電池セル1に密着できる。保護シート4は、両面接着テープ3によらず、接着剤や粘着剤を介して電池セル1の積層面11Aに接着することもできる。
【0036】
無機繊維シート2Xの両面に保護シート4を接着して、保護シート4を隣接する電池セル1の積層面11Aに接着している電池ブロック10は、断熱シート2を介して隣接する電池セル1の相対的な位置ずれ、すなわち電池セル1の変位を抑制して、電池ブロック10としての剛性を向上できる。とくに、無機繊維の交点を熱可塑性樹脂で結合していない無機繊維シート2Xは、充分な強度にできず、脆性の大きい物質であるため、電池セル1の変位を規制するのが難しいが、両面に保護シート4を接着してこの弊害を防止できる。
【0037】
剛性が低くて平面状に保持する保形性が弱い断熱シート2は、電池セル1の間に挟んで使用すると、位置ずれしたり、皺がよったりするおそれがあって、作業性が著しく低下する問題があるが、この断熱シート2は、無機繊維シート2Xの表面に積層、接着する保護シート4を、無機繊維シート2Xよりも剛性の高い形状維持性のある保形シートとして問題を解消できる。保形シートを無機繊維シートの表面に接着している断熱シートは、保形力を高くして、保形シートを電池セルの積層面に貼り付けて組み付けして、電池ブロックの剛性を高くできる。また、電池セルに断熱シートを貼り付けてから組み付けることで、複数の電池セルを集合化して電池ブロックとする際に、断熱シートが電池セルに対して位置ずれしたり、皺がよったりすることを防止できる。また、断熱シート2は、無機繊維シートよりも剛性の高い形状維持性の保形シートを積層して積層シートとすることで、断熱シートの断熱性能を損なうことなく、剛性を高めることができるので、作業性をさらに向上させることができる。
【0038】
保形シートには、たとえば熱可塑性樹脂のプラスチックシートを使用する。プラスチックシートは厚さで保形性を調整できるので、保形シートには、たとえば、厚さを0.1mmとする硬質プラスチックシートを使用する。断熱シート2は、無機繊維シート2Xの両面に保形シートを接着して保形性をより高くできる。ただ、保形シートは、無機繊維シート2Xの片側面にのみ接着することもできる。
【0039】
また、保形シートは、必ずしも無機繊維シートよりも剛性の高い形状維持性を有していなくてもよい。上記実施形態における保形シートは、無機繊維シート2Xの表面を平らにする役割も有している。無機繊維シート単体では、吸引型の自動機を使用する場合は吸着させることが困難であるが、保形シートにより表面の平滑性を向上させることで、吸引型の自動機を使用することが可能となる。また、保形シートを備えることで、無機繊維シート2Xの紙粉の脱落を防止できるので、自動機の清掃頻度を抑制できるという効果もある。これらは、保形シートを無機繊維シート2Xの片側面にのみ接着する構成で実現できる。
【0040】
さらに、断熱シート2は、表面を撥水処理することで、吸湿性を少なくすることで表面に結露水が付着する漏電等の弊害を防止できる。また、断熱シート2は、電池セル1の外装ケース11の稜線11rに沿って折り溝を設けることで、電池セル1の稜線11rに沿って折り曲げて確実に密着できる。さらに、断熱シート2は、複数枚の無機繊維シート2Xを積層して厚くすることで、断熱特性をより向上できる特徴もある。複数の無機繊維シート2Xは接着剤や粘着剤を介して接着し、あるいは多孔質基材の繊維を部分的に溶融して接着できる。
【0041】
さらに、断熱シート2は、図4及び図5に示す構造とすることもできる。これらの図に示す断熱シート2は、無機繊維シート2Xに開口部2aを設けている。図4に示す無機繊維シート2Xは、正面視において、上下左右に区画された4つの領域に開口部2aを設けている。この無機繊維シート2Xは、四角形状の外周縁部2bと中央部を縦横に伸びる連結部2cとにより全体をシート状に保形しながら、4つの開口部2aを設けている。図5に示す無機繊維シート2Xは、全体にわたって多数の開口部2aを設けている。この無機繊維シート2Xは、四角形状の外周縁部2bと中央部を縦横に格子状に伸びる複数列の連結部2cとにより全体をシート状に保形しながら、多数の開口部2aを縦横に均等に分散させる状態で設けている。ただ、断熱シート2は、無機繊維シート2Xに設ける開口部2aの数、形状、大きさ、配置等を以上には限定せず、種々に変更することができる。
【0042】
図4図5の断熱シート2は、開口部2aを有する無機繊維シート2Xの両面に保護シート4を積層して積層シート5とすることで、内部に開口部2aによる空気層を形成している。以上のように、無機繊維シート2Xに開口部2aを有する断熱シート2は、積層される電池セル1の間に、開口部2aによる空気層を形成することでき、この空気層によって断熱特性を発揮できる特徴がある。また、無機繊維シート2Xに開口部2aを設けることで、製造コストを低減しながら、軽量にできる特徴がある。とくに、断熱シートは、互いに積層される多数の電池セル1の間に積層されるので、多数の電池セル1を積層してなる電源装置においては、使用される枚数も多くなる。このため、各無機繊維シート2Xに開口部2aを設けることにより、電源装置全体として製造コストや重量を有効に低減できる。
【0043】
さらに、図6に示す断熱シート2は、無機繊維シート2Xを、複数の分割シート2x、2yに分割している。図に示す無機繊維シート2Xは、図において上下方向に裁断して、両側部の分割シート2xと中央部の分割シート2yからなる3枚の分割シート2x、2yに分割している。図の断熱シート2は、両側の分割シート2xが電池セル1の積層面11Aの両側部に対向すると共に、中央部の分割シート2yが電池セル1の左右の中央に対向する姿勢となるように、互いに離間した状態で両面に保護シート4が積層されて積層シート5が形成されている。この断熱シート2は、複数の分割シート2x、2yを離間して配置することで、隣接する分割シート2x、2y同士の間に空気層が形成されており、この空気層によって電池セル1間を断熱できるようにしている。また、使用する無機繊維シート2Xを少なくすることで、電源装置全体の製造コストや重量を低減できる特徴もある。さらに、この断熱シート2は、分割シート2x、2y同士の間に形成される空気層により、積層される電池セル1間に、上下に貫通する通気隙間が形成されるので、この通気隙間により、電池セル1間で上下方向に空気を通過させて自然対流で電池セル1を冷却できる特徴もある。
【0044】
以上の断熱シート2は、以下に示す構造で、積層される電池セル1の積層面11Aに挟まれて、隣接する電池セル1を断熱する。図3図6に示す断熱シート2は、無機繊維シート2Xの両面に保護シート4を積層してなる板状の積層シート5としている。この断熱シート2は、全体の外形を、四角形である電池セル1の積層面11Aの外形に略等しい四角形状、あるいは、やや小さい四角形状としている。この形状の断熱シート2は、隣接する電池セル1の間に挟着されて、隣接する電池セル1同士を断熱する。
【0045】
隣接する電池セル1の間に配置される断熱シート2は、両面接着テープ3を介して電池セル1の積層面11Aの定位置に配置される。図3に示す断熱シート2は、2列の両面接着テープ3を介して電池セル1の積層面11Aに接着している。図3において、2列の両面接着テープ3は、電池セル1の積層面11Aの横幅方向に離して配置している。ただ、2列の両面接着テープ3は、積層面11Aの上下方向に離して配置することもできる。このように、断熱シート2を2列の両面接着テープ3を介して接着する構造は、断熱シート2をピンと張った状態で貼着することで、断熱シート2に皺が生じるのを防止しながら電池セル1の積層面11Aに密着状態で配置できる。さらに、断熱シート2は3列以上の両面接着テープ3を介して電池セル1の積層面11Aに接着することもできる。ただ、断熱シート2は、両面接着テープ3によらず、接着剤や粘着剤を介して接着することもできる。
【0046】
さらに、図7図9は、電池セル1の外装ケース11の外周面を被覆する断熱シート2の一例を示している。この断熱シート2は、電池セル1の外装ケース11の天面11Cを除く面を被覆して断熱する。断熱シート2は、好ましくは、積層面11Aと側面11Bと底面11Dの全面を被覆する。ただし、断熱シート2は、底面11Dの全面と、積層面11Aの全面を被覆し、あるいは、積層面11A及び側面11Bの全面を被覆する構造とすることもできる。
【0047】
図7の展開図に示す断熱シート2は、電池セル1の外装ケース11の稜線11rに沿って折曲されて、外装ケース11を被覆する。図7において、内折りされる折曲線となる境界線L1、L2、L3、及び折曲線S1を一点鎖線で、外折りされる折曲線となる境界線L4を2点鎖線で、切断される切断線C1を実線でそれぞれ示している。内折りされ、あるいは外折りされる折曲線は、折曲しやすくするために折り溝を設けている。図示しないが、外装ケース11の稜線11rに沿って折曲される折曲部においては、断面視が三角形状となるように折り溝を設けることで、断熱シート2を折り目において直角に折曲して外観よく被覆することができる。電池セル1の外装ケース11に沿って折曲された断熱シート2は、ラップ部分を接着することで袋状に成形されて外装ケース11の表面を被覆する。
【0048】
図7の展開図に示す断熱シート2は、全体の外形を長方形状とすると共に、交差する複数の境界線L1、L2、L3により複数の領域に区画している。図7に示す断熱シート2は、外装缶11xの積層面11Aを被覆する積層面被覆部21と、外装缶11xの底面11Dを被覆する底面被覆部22と、外装缶11xの側面11Bを被覆する側面被覆部23とに区画している。この断熱シート2は、一対の積層面被覆部21の間に底面被覆部22を設けて、連続する積層面被覆部21と底面被覆部22の両側から側面被覆部23を突出させる形状としている。側面被覆部23は、積層面被覆部21の両側に設けられて、積層面被覆部21の側縁から外側に突出している第1の側面被覆部23Aと、底面被覆部22の両側に設けられて、底面被覆部22の側縁から外側に突出している第2の側面被覆部23Bとからなる。
【0049】
図7の展開図で示すように、第1の側面被覆部23Aと第2の側面被覆部23Bは、その境界で切り離されることなく連続している。図の断熱シート2は、第2の側面被覆部23B上において、第1の側面被覆部23Aと第2の側面被覆部23Bとの境界線L4と、底面被覆部22と第2の側面被覆部23Bとの境界線L2との交点Kから斜め方向に延びる折曲線S1を設けると共に、これらの折曲線S1の中間部から外側方向に向かって切断線C1を設けて切り込みを設けている。図に示す断熱シート2は、交点Kから延びる折曲線S1がなす角を約45度としている。
【0050】
図7の断熱シート2は、図8に示すように、底面被覆部22に電池セル1の底面11Dを載せると共に、図9に示すように、底面被覆部22と積層面被覆部21との境界線L1を内折りして、底面被覆部22で外装缶11xの底面11Dを、積層面被覆部21で外装缶11xの積層面11Aを被覆する。さらに、第1の側面被覆部23Aと積層面被覆部21との境界線L3を内折りし、また、第1の側面被覆部23Aと第2の側面被覆部23Bとの境界線L4を外折りし、さらにまた、第2の側面被覆部23B上において、折曲線S1を内折りして、一方の第1の側面被覆部23Aを外装缶11xの側面11B上に折り畳む。同様にして、隣合う第1の側面被覆部23Aを外装缶11xの側面11B上に折り畳んで、隣合う第1の側面被覆部23A同士を外装缶11xの側面11Bでラップさせて接着する。さらに、第2の側面被覆部23Bと底面被覆部22との境界線L2を内折りし、第2の側面被覆部23Bを折り畳んでできる連結部24を、ラップされた第1の側面被覆部23Aに積層状態で接着して、第1の側面被覆部23Aと第2の側面被覆部23Bとで、外装缶11xの側面11Bの全面を被覆する。
【0051】
以上のようにして外装ケース11の天面11Cを除く外周面を、断熱シート2の積層面被覆部21、底面被覆部22、及び側面被覆部23で被覆する。積層面被覆部21、底面被覆部22、及び側面被覆部23は、両面接着テープを介して、あるいは接着剤や粘着剤を介して電池セルの外装ケースの表面に接着する。断熱シート2は、積層面被覆部21、底面被覆部22、及び側面被覆部23の全てを電池セル1の外装ケース11に接着することもできるが、外装ケース11を被覆する断熱シート2が外れない範囲内で、部分的に接着してもよい。
【0052】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源装置に最適である。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの電動車両の電源として使用される。
【0053】
(ハイブリッド車用電源装置)
図10に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体90と、車両本体90を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94と、モータ93とエンジン96で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0054】
(電気自動車用電源装置)
また、図11に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体90と、車両本体90を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0055】
(蓄電用電源装置)
さらに、本発明は電源装置の用途を電動車両に搭載する電源装置には特定せず、たとえば、太陽光発電、風力発電などの自然エネルギーを蓄電する蓄電装置用の電源装置として使用でき、また深夜電力を蓄電する蓄電装置用の電源装置のように、大電力を蓄電する全ての用途に使用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を図12に示す。なお、図12に示す蓄電装置としての使用例では、所望の電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の蓄電装置80を構築した例として説明する。
【0056】
図12に示す蓄電装置80は、複数の電源装置100をユニット状に接続して電源ユニット82を構成している。各電源装置100は、複数の電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電源装置100は、電源コントローラ84により制御される。この蓄電装置80は、電源ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため蓄電装置80は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して蓄電装置80と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、蓄電装置80の電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから蓄電装置80への充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、蓄電装置80から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、蓄電装置80への充電を同時に行うこともできる。
【0057】
蓄電装置80で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して蓄電装置80と接続されている。蓄電装置80の放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、蓄電装置80からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、蓄電装置80の電源コントローラ84によって制御される。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。図12の例では、UARTやRS-232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0058】
各電源装置100は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、入出力端子DIと、異常出力端子DAと、接続端子DOとを含む。入出力端子DIは、他の電源装置100や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、接続端子DOは他の電源装置100に対して信号を入出力するための端子である。また異常出力端子DAは、電源装置100の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電源装置100同士を直列、並列に接続するための端子である。また電源ユニット82は、並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。
【実施例1】
【0059】
以上の電源装置に使用する断熱シート2は、以下のようにして製作される。
80重量%のケイ酸マグネシウム(セピオライト)に、10重量%のガラス繊維と、10重量%のナイロン繊維を懸濁し、分散して抄紙用スラリーとし、これを湿式抄紙してシート状とし、これを乾燥した後熱プレスして厚さを0.7mm、重量を5gとする無機繊維シート2Xを製造し、得られた無機繊維シート2Xの両面に、厚さ50μmのポリエチレンフィルムを接着して断熱シート2を製作する。
【0060】
以上の断熱シート2を電池セル1の積層面11Aの外形に裁断し、隣接する電池セル1の積層面11Aに挟んで電池ブロック10とする電源装置を試作し、ひとつの電池セル1を強制的に熱暴走させて、隣の電池セル1が熱暴走するかどうかを試験すると、以上の断熱シート2を積層面11Aに挟んだ電池ブロック10は、熱暴走した隣の電池セルの熱暴走が阻止された。
ただし、電池セル1には、積層面11Aの外形を9.0cm×15.0cm、厚さを2.6cmとする角形電池セルを使用した。
【実施例2】
【0061】
両面にプラスチックシートを積層しない以外、実施例1の方法で断熱シートを製作した。この断熱シート2も、実施例1と同様の試験方法において、熱暴走した隣の電池セルの熱暴走を阻止できた。
【比較例】
【0062】
厚さを1mmとするポリエチレン製の断熱シートを使用する電池ブロックは、特定の電池セルを熱暴走させる状態で、隣の電池セルが熱暴走した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る電源装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0064】
100…電源装置、1…電池セル、2…断熱シート、2X…無機繊維シート、2a…開口部、2b…外周縁部、2c…連結部、2x、2y…分割シート、3…両面接着テープ、4…保護シート、5…積層シート、6…固定部材、7…エンドプレート、8…バインドバー、9…電池積層体、10…電池ブロック、11…外装ケース、11A…積層面、11B…側面、11C…天面、11D…底面、11a…封口板、11b…電極端子、11c…安全弁、11r…稜線、11x…外装缶、21…積層面被覆部、22…底面被覆部、23…側面被覆部、23A…第1の側面被覆部、23B…第2の側面被覆部、24…連結部、80…蓄電装置、82…電源ユニット、84…電源コントローラ、85…並列接続スイッチ、90…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、HV…車両、EV…車両、LD…負荷、CP…充電用電源、DS…放電スイッチ、CS…充電スイッチ、OL…出力ライン、HT…ホスト機器、DI…入出力端子、DA…異常出力端子、DO…接続端子、L1…境界線、L2…境界線、L3…境界線、L4…境界線、S1…折曲線、C1…切断線、K…交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12