(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】低粘度の油中水エマルションを得るための乳化コンビネーション
(51)【国際特許分類】
A61K 8/39 20060101AFI20230807BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230807BHJP
A23D 7/005 20060101ALI20230807BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20230807BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20230807BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/04
A61K8/60
A23D7/005
A23L29/10
B01J13/00 A
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020514169
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018074271
(87)【国際公開番号】W WO2019048665
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503206651
【氏名又は名称】オレオン ナームロゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデ ペーテルス
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-020247(JP,A)
【文献】特開2010-018560(JP,A)
【文献】特開2009-154121(JP,A)
【文献】特開2012-025706(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104734(WO,A1)
【文献】バイオ界面活性剤(マンノシルエリスリトールリピッド)量産技術の確立とスキンケア素材への実用化,オレオサイエンス,2015年,vol.15,no.12,pp.547-553
【文献】生物が作り出す自己組織化材料・バイオサーファクタントの多彩な機能とその応用,薬学雑誌,2008年,vol.128,no.5,pp.695-706
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のMELと、
少なくとも1種のPGPRと
を含む
油中水エマルション用乳化コンビネーションであって、
少なくとも1種のPGPRはポリリシノール酸ポリグリセロール-3(PG-3-PR)を含み、
MEL/PGPR重量比が
10/90~40/60の間に含まれ
、乳化コンビネーションの親水親油バランスが4~6である、乳化コンビネーション。
【請求項2】
請求項
1に記載の乳化コンビネーションを調製する方法であって、前記方法はMELとPGPRを混合する工程を含み、MEL/PGPR重量比が
10/90~40/60の間に含まれる、方法。
【請求項3】
少なくとも1種のマンノシルエリトリトール脂質(MEL)と、
ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)と、
疎水性物質と
を含む組成物であって、
ポリリシノール酸ポリグリセロールはポリリシノール酸ポリグリセロール-3(PG-3-PR)を含み、
MEL/PGPR重量比が
10/90~40/60の間に含まれ
、MELとPGPRのコンビネーションの親水親油バランスが4~6である、組成物。
【請求項4】
少なくとも50%の水を含む水相をさらに含む請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
油中水エマルションの形態である請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
前記エマルションが液体であることを特徴とする請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のMEL、PGPR及び疎水性物質を接触及び混合する工程iを含む、組成物を調製する方法
であって、PGPRはポリリシノール酸ポリグリセロール-3(PG-3-PR)を含み、MEL/PGPR重量比が10/90~40/60の間に含まれ、MELとPGPRのコンビネーションの親水親油バランスが4~6である、方法。
【請求項8】
以下の工程:
i.少なくとも1種のMEL、PGPR及び疎水性物質を接触及び混合して、組成物を得る工程と、
ii.撹拌しながら、工程i)で得られた前記組成物に水を添加する工程と
を含む、油中水エマルションを調製する方法
であって、
PGPRはポリリシノール酸ポリグリセロール-3(PG-3-PR)を含み、MEL/PGPR重量比が10/90~40/60の間に含まれ、MELとPGPRのコンビネーションの親水親油バランスが4~6である、方法。
【請求項9】
化粧製品、植物保護製品又は食物製品中の、請求項
1に記載の乳化コンビネーション、又は請求項
3~
6のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
請求項
1に記載の乳化コンビネーション、又は請求項
3~
6のいずれか1項に記載の組成物を含むエマルションを噴射するためのリザーバー及びシステムを含む噴霧可能な製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水エマルションなどのエマルションの調製に関し、より特別には共乳化剤としてのMELの使用に関する。本発明はまた、乳化コンビネーション、組成物及びそれを含むエマルション、並びにそれに関連する調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションは、粒子又は液滴形態の液体が別の液体の中に分散されたものであり、その2種の液体は互いに非混和性である。エマルションの2種の非混和性液体は、一般に「水相」及び「油相」と称される。本発明のエマルションは、より特別には、油相に分散された水相を含む油中水エマルションである。
【0003】
より特別には本発明のエマルションは、25℃で低い動粘度、即ち10Pa・s未満、好ましくは6Pa・s未満の動粘度を有する。そのようなエマルションは、化粧品及び食物製品の分野に見出され得るような噴霧可能な製品の調製に有利である。
【0004】
しかしそのような低粘度エマルションは、不安定である。
これらのエマルションを安定化するために、シリコーン油及び/又はシリコーン乳化剤を使用することが知られている。
【0005】
国際公開第2003/039508号には、8以下のHLBを有するシリコーン乳化剤、7未満のHLBを有する乳化剤及び10を超えるHLBを有する乳化剤に基づく乳化剤系を含有し、エマルションの総重量に対して表されるパーセンテージで、液相が25重量%未満の量のシリコーン油を含有し、好ましくはその量が2~25重量%の間に含まれる、流体で噴霧可能な油中水エマルションが記載されている。
【0006】
油中水エマルションが多量の水相を含む場合、油中水エマルションの安定性を得ることは、よりいっそう困難になる。
【0007】
米国特許出願公開第2002/0102282号明細書には、PEG-45ポリマー(ドデシルグリコール)及びPEG-22コポリマー(ドデシルグリコール)などのポリエーテルから選択される乳化剤を使用することにより、エマルションの重量に対して少なくとも70重量%の水相を含む油中水エマルションを得ることが記載されている。これらのエマルションは、25℃で5000mPa・s未満の動粘度を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2003/039508号
【文献】米国特許出願公開第2002/0102282号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、シリコーン系物質及びPEGは、論争の的である。それらが非常に残留性であるという事実に加え、シリコーン系物質は生分解性でなく、したがって環境に負の影響を及ぼす。PGEは、ヒトの健康にとって危険になり得る外来物質を、皮膚へより浸透可能にする疑いがある。
【0010】
それゆえ現在、これらの危険物質に取って代わる乳化剤系が依然として必要とされている。
【0011】
事実、それらを用いるどのタイプの業界でも、乳化系が環境に優しくユーザーに非毒性であることが好ましい。これは、それらが化粧品、植物検疫又は食物用のエマルションの調製に用いられる場合に、特に重要である。
【0012】
さらに、以下の特色:
- 少量で良好な乳化能力を有する、
- 安定したエマルションを得ることができる、
- 低粘度エマルションを得ることができる、
- 小さな分散粒子径を有するエマルションを得ることができ、周囲温度及び大気圧で実施され得る工程を利用して、エマルションの獲得が実行され得る、
のうちの1つ又は複数をも有する乳化剤系を開発することが有利となろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)のための共乳化剤としての少なくとも1種のマンノシルエリトリトール脂質(MEL)の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
共乳化剤は、乳化剤で得られるエマルション特性(安定性など)を最適化することが可能な化合物を意味する。
【0015】
「マンノシルエリトリトール脂質」又は「MEL」は、マンノシルエリトリトール基により形成された親水性部分と、少なくとも1つのアシル基により形成された疎水性部分とを含む分子を意味する。
【0016】
MELは、より特別には、以下の一般式(I):
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、同一又は異なっていてもよく、不飽和又は飽和アシル性炭素鎖を含むアシル基を表し、
R
3及びR
4は、同一又は異なっていてもよく、アセチル基又は水素原子を表す。)
を有する分子を示す。
【0017】
式(I)の2つのMEL立体異性体は、公知であり、以下の式(II)及び(III):
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は、式(I)で示されたものと同一である。)
で表される。
【0018】
上記の式(I)~(III)は、各分子がMELである複数の分子を表すことができる。「MEL」は、置換基(アシル基、アセチル基)又は立体異性が異なる式(I)、(II)又は(III)で示される少なくとも2分子、より特別には式(II)で示される少なくとも2つの異なる分子を表す。
【0019】
その上、MELは、R3及びR4でのアセチル化度に応じて、A~Dで示される4つの分子クラスに概ね分類される。MEL-Aクラスは、R3及びR4に2つのアセチル基を有する式(I)で示される分子を含む。MEL-Bクラス及びMEL-Cクラスは、それぞれR4及びR3に1つのアセチル基を有する式(I)で示される分子を含む。そしてMEL-Dは、アセチル基を有さない式(I)で示される分子を含む(R3=R4=H)。
【0020】
MELは、アセチル化度により多様であることに加え、疎水性部分を構成する脂肪酸の性質により構造が多様になり得る。この多様性は一般に、MELを得るために用いられるプロセスの関数である。
【0021】
MELは一般に、真菌、より特別には酵母の培養を利用したプロセスにより得られる。
【0022】
有利には、本出願が対象とする1つのMEL又は複数のMELは、以下の工程:
- 炭素供給源の存在下で真菌株、より特別には酵母株を培養してMELを得る工程と、及び
- そのようにして得られたMELを回収する工程
を含む発酵プロセスにより得られる。
【0023】
MELを得ることが可能な菌株は、当業者に周知である。例として、担子菌科(family Basidiomycetes)の菌株、好ましくはシュードザイマ・アンタークティカ、シュードザイマ・パランタールティカ(Pseudozyma parantartica)、シュードザイマ・アフィディス、シュードザイマ・ルグローサ、シュードザイマ・グラミニコラ、シュードザイマ・シアメンシス、シュードザイマ・ツクバエンシス、シュードザイマ・クラッサなどのシュードザイマ属、又はウスティラゴ・マイディス、ウスティラゴ・シノドンティス及びウスティラゴ・スキタミネアなどウスティラゴ属の菌株を使用することが知られている。
【0024】
一般に該菌株によれば、MELの1クラス(MEL-A、MEL-B、MEL-C又はMEL-D)が、他のMELクラスに対して主に生成される、又は専ら生成される。例として、シュードザイマ・アンタークティカ、シュードザイマ・アフィディス、シュードザイマ・ルグローサ、及びシュードザイマ・パランタークティカは、主に、式(III)で示されるMEL-Aを生成する。シュードザイマ・グラミニコラ、シュードザイマ・シアメンシス、シュードザイマ・フベイエンシスは、主に、式(III)で示されるMEL-Cを生成する。シュードザイマ・ツクバエンシスは、主に、式(IV)で示されるMEL-Bを生成し、シュードザイマ・クラッサは、主に、式(IV)で示されるMEL-Aを生成する。
【0025】
有利にはMELは、式(II)で示されるMELを生成する菌株を用いた発酵プロセスにより得られる。
【0026】
より特別には、MELは、シュードザイマ・アフィディス、シュードザイマ・ルグローサ、シュードザイマ・アンタークティカ、又はシュードザイマ・パランタークティカから、好ましくはシュードザイマ・アフィディス、シュードザイマ・アンタークティカ、又はシュードザイマ・パランタークティカから選択される菌株を用いた発酵プロセスにより得られ、より好ましくは、菌株は、シュードザイマ・アフィディスである。
【0027】
炭素含有基質は、典型的には、特に再生可能な起源の、グリセロール、n-アルカン又は油である。
【0028】
トリグリセリドで構成され、発酵プロセスの温度で液体である任意の油が、炭素含有基質として用いられてもよい。好ましくは再生可能な油は、植物性又は動物性油、より好ましくは植物性油である。特に植物性油は、大豆油、ヒマワリ油、オリーブ油及びナタネ油からなる群から選択される。より特別には、植物性油は、大豆油又はナタネ油、さらにより特別にはナタネ油である。
【0029】
これらの再生可能な油は、オレイン酸、リノール酸及び/又はリノレン酸から生じたアシル基など、18個の炭素原子を有する炭素鎖を含むアシル基が特に豊富である。
【0030】
発酵プロセスは、一般に、少なくとも3日、好ましくは少なくとも7日かかる。
【0031】
好ましい実施形態によれば、MELは、
- シュードザイマ属の菌株、好ましくはシュードザイマ・アンタークティカ、シュードザイマ・パランタークティカ、又はシュードザイマ・アフィディス、
- 炭素含有基質としての植物性油、好ましくはナタネ油又は大豆油
を用いた発酵プロセスにより得られる。
【0032】
そのような菌株は、通常、反応器において、グルコース、水及び/又は塩(硫酸マグネシウム、リン酸一カリウム、硝酸ナトリウム及び/又は硝酸アンモニウムなど)を含む培地中で生育される。この生育培地は、発酵プロセスにも用いられる。実際のところ、一般に発酵プロセスの発酵培地は、生育培地及び炭素含有基質を含む。
【0033】
有利には、培地の異なる成分(特にグルコース及び菌株)は、反応器に導入する前に別個に滅菌される。
【0034】
培地の温度は、好ましくは20℃~40℃の間、より好ましくは25℃~35℃の間に含まれる。本出願の状況で、そして他に明記されなければ、示された値の範囲が包括的であることは留意されよう。
【0035】
本出願において、発酵プロセスの終了時に得られた粗反応生成物は、粗発酵生成物と呼ばれる。
【0036】
粗発酵生成物は、一般に、少なくとも2種のMELと、少なくとも残留する炭素含有基質及び/若しくは炭素含有基質の副生物と、菌株と、発酵から生じた炭素含有基質の副生物である水とを含む。
【0037】
MELを回収する工程は、残留する炭素含有基質及び/若しくは炭素含有基質の副生物、菌株並びに/又は水などの粗発酵生成物の他の成分の1種又は複数から1種のMEL又は複数のMELを分離することを対象とする。
【0038】
上記の好ましい実施形態によれば、粗発酵生成物は、少なくとも2種のMELと、少なくとも1種のトリグリセリド及び/又は少なくとも1種の脂肪酸と、水と、シュードザイマ属の菌株とを含む。
【0039】
実際のところ、炭素含有基質が、再生可能な供給源からの油である場合、炭素含有基質の副生物は、脂肪酸である。さらに、植物性油は、主に(90重量%超)トリグリセリドによって構成されるので、残留する植物性油は少なくとも1種のトリグリセリドからなる。
【0040】
粗発酵生成物の1種又は複数の他の成分からの1種のMEL又は複数のMELの分離は、当業者に知られる任意の分離方法により実行されてもよい。
【0041】
有利には、1種又は複数の他の成分からの1種のMEL又は複数のMELの分離は、以下の方法:
- 傾斜法、
- 遠心分離、
- 濾過、
- 蒸発、
- 液体/液体抽出の実施、
- 鉱物基質又は樹脂への透過
の1つ又は複数を含み得る。
【0042】
特に、
- 菌株は、傾斜法、濾過、及び/又は遠心分離により分離されてもよい、
- 水は、吸着剤である鉱物基質を傾斜法、蒸発、遠心分離、及び/又は透過することにより分離されてもよい、
- 脂肪酸及びトリグリセリドは、液体/液体抽出を実施することにより、及び/又は鉱物基質若しくは樹脂に透過することにより、分離されてもよい。
【0043】
したがって、回収されたMELは、
- 少なくとも1種のトリグリセリド及び/又は少なくとも1種の脂肪酸と、
- 場合により菌株と
を含んでいてもよい。
【0044】
「脂肪酸」は、遊離した脂肪酸及び/又は塩の形態の脂肪酸を意味する。
【0045】
回収されたMEL中に存在する脂肪酸及び/又はトリグリセリドの量は、回収されたMELの総重量に対して、0.5~60重量%の間、好ましくは1~50重量%の間に含まれていてもよい。
【0046】
有利には、1種の脂肪酸又は複数の脂肪酸は、8~24個の間の炭素原子、好ましくは8~20個の間の炭素原子を含む炭素鎖を含む。
【0047】
有利には、1種のトリグリセリド又は複数のトリグリセリドは、飽和又は不飽和アシル性炭素鎖が8~24個の間の炭素原子、好ましくは16~18個の間の炭素原子を含む、アシル基を含む。より特別には、炭素鎖は、直鎖状であり、炭素原子及び水素のみを含み、場合によりヒドロキシル官能基(OH)で置換されている。
【0048】
したがって、回収されたMELは、より大きな、又はより小さな度合いに精製された形態であってもよく、即ち、発酵培地の他の成分との混合物であってもよい。
【0049】
より特別には、本出願において、そして特に実施例において、回収されたMELが、少なくとも1種の脂肪酸と、少なくとも1種のトリグリセリドと、所望により水及び/又は菌株との混合物である場合、この混合物は、「MEL混合物」と呼ばれる。
【0050】
第一のMEL混合物は、粗発酵生成物、即ち、粗発酵生成物の他の成分を含む少なくとも2種のMELである。
【0051】
粗発酵生成物は、1つ又は複数の分離法に供されて、以下の特色を有する他の好ましいMEL混合物に誘導されてもよい。
MEL混合物の重量に対して与えられた重量のパーセンテージとして、
- 30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上のMEL量、
- 70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下の他の成分(脂肪酸、トリグリセリド、水及び/又は菌株など)の量。
【0052】
より特別には、上記の1つの分離法又は複数の分離法により、より高い又はより低いMEL濃度のMEL混合物が、得られてもよい。
【0053】
第一の実施形態によれば、MEL混合物は、以下の特色を有する。
MEL混合物の重量に対して与えられた重量のパーセンテージとして、
- 55重量%以上のMEL量、
- 45重量%以下の他の化合物(脂肪酸、トリグリセリド、水及び/又は菌株など)の量。
【0054】
有利には、この第一の実施形態において、水及び/又は菌株の量は、MEL混合物の重量に対して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0055】
特に好ましい第二の実施形態によれば、MEL混合物は、以下の特色を有する。
MEL混合物の重量に対して与えられた重量のパーセンテージとして、
- 90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上のMEL量、
- 10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下の他の成分(脂肪酸、トリグリセリド、水及び/又は菌株など)の量。
【0056】
有利にはこの第二の実施形態において、水及び/又は菌株の量は、MEL混合物の重量に対して、2重量%以下である。
【0057】
そのようなMEL混合物は、例えば、上記のような複数の分離工程を含む、上記のような発酵プロセスを用いて得られてもよく、これらの分離工程は、好ましくは液体/液体抽出を実施すること、及び/又は鉱物基質に透過すること、を含む。
【0058】
鉱物基質への透過は、適切な溶媒を用いて実施される、シリカカラムでの吸着クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーであってもよい。そのような溶媒は、当業者に知られている。
【0059】
MELの混合物、及びそれを得るためのプロセスの例は、以下の刊行物にも記載されている。“Downstream processing of mannosylerythritol lipids produced by Pseudozyma aphidis”「」;Rau et al.;European Journal of Lipids Science and Technology(2005)、107,373-380。
【0060】
ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)は、PGPR分子、又は異なるPGPR分子の混合物を意味する。
【0061】
実際のところ、グリセロール及びポリグリセロール中に存在する多くのヒドロキシル官能基を考慮し、PGPRを得るためのプロセスに応じて、数多くの反応生成物が形成されてもよく、一般には
- ポリグリセロールを形成するグリセロール単位の数及びそれらの単位の配列、
- エステル化度(即ち、ポリグリセロール上のエステル化されたヒドロキシル官能基の数)、並びに/又は
- ポリリシノレアートを形成するリシノール酸の単位の数
により互いに異なり得る複数のPGPR分子の混合物を形成する。
【0062】
好ましくは、PGPRは、少なくとも1つの非エステル化ヒドロキシルを含む。
【0063】
好ましくは、PGPRは、主にポリリシノール酸ポリグリセロール3(PG-3-PR)又はポリリシノール酸ポリグリセロール4(PG-4-PR)を(PGPRの総重量に対して少なくとも50重量%)含む。ポリグリセロール(又はPG)に続く整数は、ポリグリセロールを形成するグリセロール単位の数を表す。
【0064】
好ましくは、PGPRは、2~12の間、より好ましくは3~10の間、さらにより好ましくは4~6の間に含まれる、ポリリシノレアート(PR)を形成するリシノール酸単位の数を含み、特にリシノール酸の単位数は、5である。
【0065】
好ましくは、PGPRの親水親油バランス(HLB)は、2~6の間に含まれる。
【0066】
HLB(親水親油バランス)は、界面活性剤の親水性基のサイズ及び強度と、親油性基のサイズ及び強度とのバランスを意味する。GRIFFINによるHLBは、J.Soc.Cosm.Chem.1954(第5巻)、249-256頁に定義されている。
【0067】
PGPRは、油中水エマルションを作製するための良好な乳化剤であることが知られている。
【0068】
米国特許出願公開第2010/0112170号明細書には、食用に適するエマルションを調製するためのPGPRの使用が記載されている。しかし、その出願に例示された最終生成物は、可塑性構造を有するペーストであり、低粘度の液体エマルションではない。
【0069】
PGPR単独では、少量で使用されると、液体エマルションを経時的に安定化させることができない。
【0070】
対照的に、PGPRの共乳化剤としてのMELの使用は、低粘度の油中水エマルションを安定化させることができる。これはおそらく、この共乳化剤の添加により分散相(水相)の粒子径を減少させることができる、という事実によるものであろう。
【0071】
実際のところ、少量のMEL及びPGPRであれば、25℃で10Pa・s未満、好ましくは6Pa・s未満の動粘度の液体で安定している油中水エマルションを得るのに充分であるため、即ち、周囲温度では、エマルションの表面に出現し得る疎水性物質の体積は、エマルションの調製後14日間を通してエマルションの体積に対して2体積%未満であるため、MELの使用は特に有利である。
【0072】
さらに、PGPRの共乳化剤としてのMELの使用は、相乗効果を有する。MELが単独で用いられると、油中水エマルションを得ることができない。PGPRとMELとのコンビネーションにより、同等の結果を得るのに必要となるPGPRの量よりも少ない乳化剤量で、液体で低粘度かつ安定した油中水エマルションを得ることができる。
【0073】
したがって、より特別には、本発明は、
- 少なくとも1種のMELと、
- 少なくとも1種のPGPRと
を含み、
MEL/PGPR比が1/99~50/50の間に含まれる、乳化コンビネーションに関する。
【0074】
MEL及びPGPRの特色は、先に示された通りである。
【0075】
好ましくは、本発明の乳化コンビネーションは、少なくとも2種のMELを含む。
【0076】
本発明の乳化コンビネーションにより、PGPR単独で得られたエマルションに比較して、改善された特性を有する油中水エマルションを得ることができる。
【0077】
実際のところ、MEL及びPGPRの使用により、PGPR単独で得られたエマルションよりも小さな粒子径及び大きな安定性を有する油中水エマルションを得ることができる。
【0078】
乳化コンビネーションは、少量で良好な乳化能を有する。エマルションの重量に対して表される重量のパーセンテージとして、少なくとも0.1重量%の量は、油中水エマルションを形成するのに充分であり、好ましくはその量は、少なくとも0.2%、さらにより好ましくは少なくとも0.3%である。
【0079】
乳化コンビネーションにより、液体で低粘度の油中水エマルションを得ることができる。「低粘度」は、25℃で10Pa・s未満、好ましくは6Pa・s未満の動粘度を意味する。
【0080】
特に、MELの割合が高いほど、粘度が低い。
【0081】
乳化コンビネーションにより、安定した油中水エマルションを得ることができる。「安定した」は、周囲温度で、エマルションの表面に出現し得る疎水性物質の体積がエマルションの調製後14日間を通してエマルションの体積に対して2体積%未満であることを意味する。
【0082】
特に、1重量%の乳化コンビネーションにより、エマルションの安定性の時間を、1%PGPRで調製された同一エマルションと比較して二倍にすることができる。
【0083】
乳化コンビネーションにより、油中水エマルションを小さな分散粒子径で得ることができる。
【0084】
特に、粒子の体積の50%を表す粒子群の平均径(「Dv50」)は、20μm未満、好ましくは15μm未満、より好ましくは12μm未満である。
【0085】
本発明の乳化コンビネーションは、特に油中水エマルションの調製時に、周囲温度及び大気圧で用いられてもよい。
【0086】
本発明の乳化コンビネーションのこれらの特色は、以下の実施例2に、より完全に記載される。
【0087】
有利には、MEL及びPGPRは、再生可能な供給源から得られ、環境及びユーザーに対して毒性がない。
【0088】
好ましくは、本発明の乳化コンビネーションにおいて、MEL/PGPR重量比は、5/95~45/55の間、より好ましくは10/90~40/60の間、さらにより好ましくは15/85~35/65の間に含まれる。
【0089】
有利には、MEL/PGPR重量比は、20/80~30/70の間に含まれる。そのような比により、本発明の乳化コンビネーションで得られた油中水エマルションの安定性をさらに改善することができる。
【0090】
有利には、乳化コンビネーションのHLBは、2~6の間、好ましくは4~6の間に含まれる。
【0091】
有利には、コンビネーションは、乳化コンビネーションの総重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%のPGPRを含む。
【0092】
本発明の乳化コンビネーションの第一の好ましい実施形態によれば、それは、
- 少なくとも10重量%の少なくとも1種のMELと、
- 少なくとも60重量%のPGPRと
を含み、又はそれらからなり、
MEL/PGPR重量比は、10/90~40/60の間に含まれる。
【0093】
上記の本発明の乳化コンビネーションの好ましくかつ有利な特色は、この実施形態に適用される。
【0094】
本発明はまた、MELとPGPRとを混合する工程を含み、MEL/PGPR重量比が1/99~50/50の間に含まれる、本発明の乳化コンビネーションを調製する方法に関する。
【0095】
有利には、混合は、40~60℃の間に含まれる温度、好ましくは60℃で実施される。
【0096】
MEL及びPGPRは、混合の前に互いに独立して加熱されてもよく、又は混合の間に加熱されてもよい。
【0097】
有利には、本発明の乳化コンビネーションを調製する方法において用いられる乳化剤及び共乳化剤は、上記の好ましい特色の1つ又は複数を有する。
【0098】
得られた乳化コンビネーションは、周囲温度で流体であり、したがって、特に組成物及びエマルションの調製のために、容易に取り扱うことができる。
【0099】
その上、本発明は、
- 少なくとも1種のマンノシルエリトリトール脂質(MEL)と、
- ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)と、
- 疎水性物質と
を含む組成物であって、
MEL/PGPR重量比が1/99~50/50の間に含まれる、組成物にも関する。
【0100】
Mel及びPGPRは、上記の通りである。特に本発明の組成物は、少なくとも2種のMELを含む。
【0101】
「疎水性物質」は、エマルションの油相中に存在し得る物質を意味する。ただし、乳化剤及び共乳化剤、特に本発明の乳化コンビネーションで言及された乳化剤及び共乳化剤は除く。
【0102】
疎水性物質は、鉱物油、シリコーン、脂肪酸、脂肪族アルコール、エステル(PGPR以外)、それらのエトキシル化誘導体及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0103】
より特別には、鉱物油は、流動パラフィンである。
【0104】
より特別には、シリコーンは、ジメチコン及びシクロペンタシロキサンから選択される。
【0105】
より特別には、脂肪酸は、ステアリン酸、セチル酸及びセテアリル酸から選択される。
【0106】
より特別には、脂肪族アルコールは、ステアリルアルコール、セチルアルコール及びセテアリルアルコールから選択される。
【0107】
より特別には、PGPR以外のエステルは、
- メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、オクタノール、ヘプタノール、エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ドデカノール、イソデカノール、イソノナノール、イソオクタノールなどのモノアルコール、並びにカプリル酸、カプリン酸、ヘプタン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、イソステアリン酸及びオレイン酸などのモノカルボン酸から得られるモノエステル、
- 先に記載されたモノアルコールと、フマル酸、アジピン酸、コハク酸及びセバシン酸などのジカルボン酸とから得られるジエステル、
- 上記のモノプロピレングリコール及びモノカルボン酸から得られるジエステル、
- グリセロール及び脂肪酸から得られるトリエステル、特にトリグリセリド、
- 上記のペンタエリトリトールなどのテトラアルコール及びモノカルボン酸から得られるテトラエステル、
並びにそれらの混合物
からなる群から選択される。
【0108】
より特別には、トリグリセリドは、炭化水素鎖が直鎖状であるアシル基を含む。
【0109】
有利には、トリグリセリドは、トリグリセリドの混合物の形態であり、飽和直鎖状炭化水素鎖、特に8~16の炭素原子の鎖、より特別には6~12の炭素原子の鎖を含むトリグリセリドの混合物の形態である。
【0110】
好ましくは、トリグリセリドの混合物は、植物性油、植物性ワックス、植物性バター、動物性油及び脂肪、上記物質の1つの特別な画分、又はそれらの混合物からなる群から選択される物質を介して組成物中に導入される。特別な画分又は物質は、考慮される特別な画分又は物質の重量に対して少なくとも90重量%のトリグリセリドからなる。上記物質の1つの特別な画分は、当業者に知られる任意の方法、特に蒸留により得られる。
【0111】
より好ましくは、トリグリセリドは、植物性油、植物性ワックス、植物性バター、それらの特別な画分、又はそれらの混合物を介して該組成物に導入される。さらにより好ましくは、トリグリセリドは、植物性油を介して、又は植物性油の特別な画分を介して組成物中に導入される。
【0112】
植物性油の例としては、ココナッツオイル、パーム核油、パーム油、オリーブ油、クルミ油、ナタネ又はカンジュラ(candula)油、トウモロコシ油、大豆油、ヒマワリ油、グレープオイル、アマニ油、樟脳油、杏仁油、アボカド油、マカダミアナッツオイル、及びスイートアーモンドオイルを挙げることができる。
【0113】
植物性ワックスの例として、大豆ワックスを挙げることができる。
【0114】
植物性バターの例として、シアバター、ココアバター、マンゴーバター、オリーブバター及びコクムバターを挙げることができる。
【0115】
動物性脂肪及び油の例として、魚油及び獣脂を挙げることができる。
【0116】
好ましくは、疎水性物質は、PGPR以外のエステルから、より好ましくは上記のエステルの群から選択される。
【0117】
特に疎水性物質は、コハク酸ジイソステアリル、テトラオクタン酸ペンタエリトリトール、テトライソステアリン酸ペンタエリトリトール、ジヘプタン酸モノプロピレングリコール、ラウリン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソアミル、トリエチルヘキサノイン及びそれらの混合物から選択される。
【0118】
好ましくは、疎水性物質は、鉱物油、脂肪酸、脂肪族アルコール、エステル(PGPR以外)、それらのエトキシル化誘導体及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0119】
事実、化粧品適用の状況において、疎水性物質は、シリコーンでない。
【0120】
有利には、疎水性物質は、動物の体、より特別にはヒトの体の表面部分と接触することが予定された物質から選択される。
【0121】
有利には、疎水性物質は、食用に適する。
【0122】
有利には、疎水性物質は、周囲温度及び大気圧で液体である。
【0123】
有利には、組成物は、少なくとも2種の疎水性物質を含む。
【0124】
好ましくは、PGPRの量は、組成物の総重量に対して少なくとも0.15重量%である。
【0125】
好ましくは、MEL及びPGPRの総量は、組成物の重量に対して少なくとも0.3重量%、より好ましくは少なくとも0.5%である。
【0126】
有利には、本発明の組成物は、水相の総重量に対して、少なくとも50重量%の水を含む水相をさらに含む。
【0127】
好ましくは、水相は、水相の総重量に対して、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%の水を含む。
【0128】
好ましくは、水相の量は、組成物の総重量に対して10~90重量%の間、より好ましくは15~85重量%の間、さらにより好ましくは20~80重量%の間に含まれる。
【0129】
水相は、アルコールをさらに含んでいてもよい。
【0130】
アルコールの例としては、グリセロール、エタノール、モノプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール及びオクチルドデカノールを挙げることができる。
【0131】
有利には、水相は、電解質をさらに含んでいてもよい。電解質は、油中水エマルションを安定化させることが知られている。
【0132】
電解質の例としては、硫酸マグネシウム(MgSO4)又は塩化マグネシウム(MgCl2)を挙げることができる。
【0133】
好ましくは、電解質は、硫酸マグネシウムなどの二価電解質から選択される。
【0134】
有利には、組成物が、水相を含む場合、水相は、油中水エマルションの形態である。
【0135】
有利には、MELとPGPRのコンビネーションにより、多量の水、即ち90%までの水を含むエマルションを得ることができる。
【0136】
好ましくは、エマルション形態の組成物は、液体である。特にエマルションは、25℃で10Pa・s未満、好ましくは6Pa・s未満の動粘度を有する。
【0137】
本発明はまた、少なくとも1種のMEL、PGPR及び疎水性物質を接触及び混合する工程i)を含む、組成物を調製する方法に関する。
【0138】
有利には、本発明の組成物を調製する方法で用いられるMEL、PGPR及び疎水性物質は、上記の好ましい特色の1つ又は複数を有する。
【0139】
好ましくは、混合工程は、撹拌しながら実行される。
【0140】
混合は、周囲温度で、或いは40~60℃の間に含まれる温度、好ましくは60℃で実行されてもよい。
【0141】
MEL、PGPR及び疎水性物質は、接触の前に互いに独立して40~60℃の間、好ましくは60℃で加熱されてもよく、又は混合の間に加熱されてもよい。
【0142】
第一の実施形態によれば、乳化コンビネーションが、疎水性物質との接触に先立って調製される。
【0143】
乳化コンビネーションは、疎水性物質との接触に先立って加熱することができる。
【0144】
第二の実施形態によれば、疎水性物質を、最初にMEL及び/又はPGPRと接触させる。
【0145】
疎水性物質及びMEL及び/又はPGPRは、接触に先立って加熱されてもよい。
【0146】
本発明はまた、以下の工程:
i.少なくとも1種のMEL、PGPR及び疎水性物質を接触及び混合して組成物を得る工程と、
ii.撹拌しながら、工程i)で得られた組成物に水を添加する工程と
を含む、油中水エマルションを調製する方法に関係する。
【0147】
有利には、本発明のエマルションを調製する方法で用いられるMEL、PGPR、疎水性物質及び水は、上記の好ましい特色の1つ又は複数を有する。
【0148】
好ましくは、工程ii)の撹拌は、少なくとも6000rpm、より好ましくは少なくとも8000rpmの速度で実行される。
【0149】
工程ii)は、組成物の成分の融解温度に従って適合させるために加熱を必要とする場合がある。
【0150】
工程i)は、上記(有利で好ましい特色及び実施形態)の通りである。
【0151】
本発明の組成物及び乳化コンビネーション、特に油中水エマルション形態の組成物は、様々な用途における製品の調製に使用することができる。
【0152】
本発明はまた、化粧品、植物保護製品又は食品における、特にエマルション形態の、本発明の乳化コンビネーション又は本発明の組成物の使用に関する。
【0153】
本発明の乳化コンビネーションを含むエマルションは、有利には20μm未満の径の微細な液滴の形態で噴霧され得るという利点を有する。したがって、本発明により得られたエマルションは、噴霧可能な製品又は含浸ワイプ中で用いられてもよい。
【0154】
実際のところ、微細な液滴のエマルションにより、エマルションを表面に均一に堆積させて、エマルションの散布を改善することができ、小さな液滴に含まれる活性剤を堆積された表面により容易に浸透させることができる。
【0155】
本発明はまた、本発明の組成物、特にエマルション形態の組成物を含む化粧品、植物医薬製品又は食品に関する。
【0156】
「化粧品」は、より特別には日光又は抗UV製品、セルフタンニング製品、化粧落とし製品、ヘアケア製品、保湿スプレー、脱臭ワイプ及びクレンジング又は化粧落としワイプを意味する。
【0157】
本発明の化粧品はまた、1種又は複数の化粧品、香水、顔料、色素及び防腐性有効成分を含んでいてもよい。
【0158】
「植物保護製品」は、より特別には、防虫剤、殺虫剤、殺真菌剤及び除草剤を意味する。
【0159】
本発明の植物保護製品はまた、防虫剤、殺虫剤、殺真菌剤及び除草剤有効成分などの植物保護製品を1種又は複数含んでいてもよい。
【0160】
「食品」は、より特別には、低脂肪量の調理油及びマーガリンを意味する。
【0161】
本発明の食品は、1種又は複数の防腐剤をも含んでいてもよい。
【0162】
Mel及びPGPRを含むエマルションは、平均径Dv50が有利には20μm未満、好ましくは15μm未満、より好ましくは12μm未満である微細な液滴の形態で噴霧され得るという利点を有する。したがって、本発明により得られたエマルションは、噴霧可能な製品又は含浸ワイプ中で用いられてもよい。
【0163】
最後に、本発明は、本発明の乳化コンビネーション又は本発明の組成物を含むエマルションを噴射するためのリザーバー及びシステムを含む噴霧可能な製品に関する。
【0164】
本発明は、例示として与えられた以下の実施例により良好に理解されよう。
【実施例】
【0165】
実施例1:実施例で用いた原料及び方法
以下の実施例で用いられる成分は、以下の通りである。
- 乳化剤及び共乳化剤:
・ 下記1.で調製されたMEL 1Bの混合物(HLB=9)
・ ポリリシノール酸ポリグリセリル-3であるOleonのRADIAMULS POLY 2251K(HLB=3.5)(本明細書では以下「PGPR」と称する。)
- 疎水性物質(油相):
・ カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドであるOleonのRadia 7104(本明細書では以下「MCT」と称する。)
・ ラウリン酸イソアミルであるOleonのJolee 7750
・ ジヘプタン酸プロピレングリコールであるOleonのJolee 7202
・ Lesieurのナタネ油
- 親水性物質(水相):
・ 脱塩水
実施例で用いられる特定の材料:
- IKA(登録商標)RW20メカニカルスターラー
- Ultra Turrax(登録商標)T25 IKA-Labortechnikホモジナイザー
- ブルックフィールド粘度計
- MalvernのMastersizer2000粒度計
【0166】
1.MELの獲得
MELを、以下の工程:
- 植物性油(ナタネ)の存在下でシュードザイマ・アフィディスなどの酵母株を培養して、MELを得る工程と、
- そのようにして得られたMELを回収する工程と
を含む発酵プロセスにより得た。
MELを回収する工程の最後に、以下の特色:
得られたMEL混合物の重量に対して与えられる重量のパーセンテージとして、
・ MEL量:55重量%
・ 他の成分の量:45重量%(42重量%のトリグリセリド及び遊離脂肪酸と、3重量%の水及び菌株)
を有する第一のMEL混合物(MEL混合物1A)を得る。
その後、MEL混合物1Aを精製する工程を、極性勾配を増加させた溶媒混合物を用いたシリカカラムでの吸着クロマトグラフィーにより実施した。こうして以下の特色:
・ MEL量:得られたMEL混合物の総重量に対して少なくとも98重量%
を有する第二のMEL混合物(MEL混合物1B)を得た。
特にMEL 1Aと1Bの混合物のそれぞれは、MELの総量の重量に対して与えられた重量のパーセンテージとして、48重量%の量のMEL-A、24重量%の量のMEL-B、27重量%の量のMEL-C、及び1重量%の量のMEL-Dを含む。
【0167】
実施例2:本発明の乳化剤のコンビネーションの調製
MEL混合物1B及びPGPRを60℃に加熱し、均質な混合物が得られるまで500rpmの速度のメカニカルスターラーを利用して、以下の表1に示された割合で混合する。調製された乳化剤の異なるコンビネーションを、以下の表1に要約する。
【0168】
【0169】
周囲温度及び大気圧では、コンビネーション1~4は、液体である。
【0170】
実施例3:本発明の組成物及びエマルションの調製
1.組成物の調製
組成物及びエマルションを、以下の表2に記載された量で調製する。操作手順は、1及び下記2に記載されたものである。
【0171】
【0172】
本発明の乳化コンビネーション又はPGPRと、油相の1種の疎水性物質又は複数の疎水性物質(この実施例ではMCT)を、均質な混合物が達成され、それぞれ本発明の組成物及び比較組成物が得られるまで、周囲温度、即ちおよそ25℃±5℃で機械的撹拌により混合する。
このプロセスは、疎水性物質の全てが周囲温度及び大気圧で液体であれば実行されてもよい。これは、MCTにあてはまる。反対の例として、1種の疎水性物質又は複数の疎水性物質を、乳化コンビネーション又はPGPRと混合する前に存在する物質の最高融解温度以上の温度まで加熱してもよい。
【0173】
2.エマルション形態の組成物の調製
800rpmで機械的撹拌を行いながら、以前に調製された組成物に水相を添加する(520秒で69g)。添加が終了したら、油中水エマルション(実施例では以下「エマルション」と称する。)の形態をとる組成物を得るために、ホモジナイザーを用いて組成物を10000rpmで1分間撹拌する。
本発明の組成物1~4に対応するエマルション1~4、及び比較組成物1に対応する比較エマルション1が、こうして得られる。
【0174】
実施例4:実施例3で調製されたエマルションの特性の評価
1.動粘度及び外観
本発明のエマルション1~4及び比較エマルション1の動粘度を、調製の1日後に、25℃の温度及び10rpmの速度のブルックフィールド粘度計を用いて評価した。
結果を以下の表3に表す。
【0175】
【0176】
MELの量が多いほど、粘度が低い。
異なるエマルションの外観を、裸眼で評価した。エマルションは全て、白色エマルションである。
【0177】
2.安定性
試料15mLを、15mL目盛り付きガラス試験管において、以前に調製されたエマルションから調製し、周囲温度で放置した。
エマルションの上部に現れることができる1種の疎水性物質又は複数の疎水性物質(この実施例ではMCT)の体積を測定することにより、安定性を経時的に観察する。得られた結果を、以下の表4にまとめている。
【0178】
【0179】
結果は、ある量のPGPRをMELに置き換えることにより、安定性が上昇することを示している。本発明のエマルション2及び3は、MEL及びPGPRを1重量%含み、MEL/PGPR重量比がそれぞれ20/80及び30/70で、より大きな安定性を表している。
【0180】
3.分散粒子径
油相中に分散された水相の粒子径の測定を、前記エマルション調製の5日後に粒度計を用いて測定する。
粒子の体積平均径は、用語「Dv50」によって与えられる。「Dv50」は、粒子の体積の50%を表す粒子全ての平均径を表す。
【0181】
【0182】
ある量のPGPRをある量のMELに置き換えることにより、分散された水相の粒子径が減少する。
【0183】
実施例5:乳化コンビネーションの量の影響
異なる量の、実施例2で調製された本発明の乳化コンビネーション2、MCT及び水を含むエマルションを、実施例3に記載された方法により調製した。
調製された異なる乳化剤を、以下の表6に要約する。
【0184】
【0185】
動粘度、安定性の測定、及び外観の評価を、実施例4と同じ手法で行った。
そのようにして調製されたエマルションの周囲温度での外観、粘度及び安定性についての結果を、以下の表7に示す。
【0186】
【0187】
乳化コンビネーションの量が、エマルションの重量に対して0.1~0.8重量%であれば、エマルションは白色であり、同等の動粘度を有する。
前記結果は、エマルションの重量に対して0.1重量%の、MEL/PGPR重量比が20/80の乳化コンビネーションがエマルションを得るのに充分であることを示す。しかし、周囲温度では、そのようなエマルションは、3日後に不安定になる。
より安定なエマルションは、少なくとも0.3重量%の本発明の乳化コンビネーション2を用いて得られる。
【0188】
実施例6:水相の量の影響
異なる量の水相(この実施例では脱塩水)及び油相(この実施例ではMCT)を含むエマルションを、実施例2で調製された本発明の乳化コンビネーション2を用いて、実施例3に記載された方法を用いて調製した。
調製された異なる乳化剤を、以下の表8に要約する。
【0189】
【0190】
動粘度、安定性の測定、及び外観の評価を、実施例4と同じ手法で行った。
そのようにして調製されたエマルションの周囲温度での外観、粘度及び安定性についての結果を、以下の表9に示す。
【0191】
【0192】
油中水エマルションが含む水の量が多いほど、粘度が高い。
周囲温度及び大気圧では、89重量%までの多量の分散水を含むエマルションは、少なくとも14日間は安定なままである。
【0193】
実施例7:化粧品エマルション
1.化粧品エマルションの調製
エマルションを、以下の表10に記載されたエマルション重量に対する重量%の量に従って調製した。操作手順は、最終均質化がこの実施例では9000rpmで2分間であることを除き、実施例3に記載されたものである。
【0194】
【0195】
2.化粧品エマルションの特性
エマルションA、B及びCは、白色である。
動粘度、分散粒子径及び安定性の測定を、実施例4と同じ手法で行った。
そのように調製されたエマルションの周囲温度での粘度、分散粒子径及び安定性に関する結果を、以下の表11に示す。
【0196】
【0197】
本発明のエマルションB及びCは、25℃で比較エマルションAよりも低い動粘度、より特別には500mPa・s未満の動粘度を有する。本発明のエマルションB及びCは、比較エマルションのDv50径よりも小さいDv50粒子径を有し、周囲温度でより安定である。
本発明のエマルションB及びCは、化粧品、特に噴霧可能な化粧品を調製するための基剤として役立つ。
【0198】
実施例8:調理油
1.調理油として使用するためのエマルションの調製
エマルションを、以下の表12に記載されたエマルションの重量に対する重量%での量に従って調製した。操作手順は、最終均質化が9000rpmで1分であることを除き、実施例3に記載されたものである。その後、エマルションの温度は、15℃にする。
【0199】
【0200】
2.調理油の特性
2.1.粒子の外観、動粘度、平均径及び安定性
2種のエマルションの外観を、裸眼で評価した。本発明のエマルションEは白色であるが、比較エマルションE′は黄色がかっている。
動粘度、平均径Dv50及び安定性を、実施例4に記載された通り評価した。
結果を、以下の表13にまとめている。
【0201】
【0202】
2種のエマルションの動粘度は、同等である。
PGPRに加えてMELを使用することにより、粒子の体積の50%を表す粒子の平均径を減少させて、油中水エマルションを安定化させることができる。
【0203】
2.2.飛散防止テスト
このテストは、先に調製されたエマルションを加熱する間、及び加熱した後に形成された飛散のパーセンテージを計測することを対象とする。
平鍋を300℃に加熱する。15℃のエマルション20gを、平鍋の中央部に乗せて、予め計量された濾紙を、ホットプレートから6cmの位置にあたる平鍋の上に配置する。濾紙への飛散が停止したら、再度、濾紙を計量する。重量差は、調理油20gから飛散した調理油の質量に等しい。
このテストを3回繰り返す。両方のエマルションで計算された平均飛散率を、以下の表14に示す。
【0204】
【0205】
結果は、本発明の乳化コンビネーションの使用によりPGPR単独の使用に比較して飛散率をおよそ5低下させ得ることを示す。
このことは、本発明のエマルション中の粒子が、比較エマルションE′中に存在するより大きな粒子に比較してより小さく、飛散の高さがより低いという事実により説明される。したがって、飛散の際に平鍋から6cmの位置にある濾紙に達しなかったより小さな粒子は、再び平鍋に落ちる。