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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/10 20060101AFI20230807BHJP
   A61M 39/28 20060101ALI20230807BHJP
   F16K 31/08 20060101ALI20230807BHJP
   F16K 7/04 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
F16L55/10
A61M39/28
F16K31/08
F16K7/04 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020520309
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018077813
(87)【国際公開番号】W WO2019073016
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】102017218216.4
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018214989.5
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】バイサー、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ペータース、アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ハイデ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、ゲロメ
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0216516(US,A1)
【文献】特開昭56-039370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0019117(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/10
A61M 39/28
F16K 31/08
F16K 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプであって、
クランプ要素と、
第1の永久磁石であって、回転中心軸と、前記回転中心軸を取り囲む第1の中央開口部と、N極磁化セクタと、前記N極磁化セクタに径方向に隣接して配置されたS極磁化セクタと、上面と、を有する第1の永久磁石と、
第2の永久磁石であって、第2の回転中心軸と、前記第2の回転中心軸を取り囲む第2の中央開口部と、第2のN極磁化セクタと、前記第2のN極磁化セクタに径方向に隣接して配置された第2のS極磁化セクタと、底面と、を有する第2の永久磁石と、
前記第1の中央開口部に固定され、前記第1の永久磁石とともに移動するように構成されたガイドロッドであって、前記第2の中央開口部を通過し、前記第2の永久磁石を通して移動するように構成され、前記クランプ要素に閉鎖力を伝達するように構成されたガイドロッドと、
を備え、
前記第1の永久磁石の上面が、前記第2の永久磁石の底面と対向し、
前記クランプ要素は、流体搬送ダクトを収容するように構成され、
前記クランプ要素は、休止状態では、前記流体搬送ダクトを圧縮するように構成され、
前記クランプ要素は、作動状態では、前記流体搬送ダクトが圧縮されないように前記流体搬送ダクトを収容するように構成され、
前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石は、互いにある距離をおいて配置され、
前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石は、互いに対してある角度を回転するように構成され、それにより、前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石との互いに対する回転は、互いからの距離の低減または互いからの距離の増加のいずれかをもたらし、
前記休止状態は、第1の角度への相対回転によって起こり、前記作動状態は第2の角度への相対回転によって起こる、
クランプ。
【請求項2】
前記流体搬送ダクトが前記クランプ要素に収容され、流体が前記流体搬送ダクト内にあり、前記流体が液体である、請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記第1の永久磁石および/または前記第2の永久磁石が、ポリマグネット化された磁石であり、ここにおいて、前記ポリマグネット化された磁石は、第1の磁化の複数のセクタおよび第2の磁化の複数のセクタを有する、請求項1に記載のクランプ。
【請求項4】
前記第1の角度と前記第2の角度との間のの差が、360°を前記2つの複数のセクタの合計で割ったもの以下である、請求項3に記載のクランプ。
【請求項5】
前記クランプは、前記流体搬送ダクトを収容するように前記クランプを開放するように構成されたレバーをさらに備える、請求項1に記載のクランプ。
【請求項6】
前記クランプは、前記作動状態が維持されるように、起動した場合に前記永久磁石のうちの少なくとも1つに対して作用するように構成される電磁石をさらに備える、請求項1に記載のクランプ。
【請求項7】
磁石が、前記作動状態が達成されるように、起動した場合に前記永久磁石のうちの少なくとも1つに対して作用する、請求項に記載のクランプ。
【請求項8】
前記第1の永久磁石は、前記休止状態から前記作動状態への遷移において前記第2の永久磁石に対して螺旋経路上でガイドされる、請求項に記載のクランプ。
【請求項9】
前記第1の永久磁石は、ディスク形状である、請求項1に記載のクランプ。
【請求項10】
前記第2の永久磁石は、ディスク形状である、請求項1に記載のクランプ。
【請求項11】
前記第1の永久磁石は、ディスク形状であり、前記第2の永久磁石は、ディスク形状である、請求項1に記載のクランプ。
【請求項12】
前記第1の永久磁石および前記第2の永久磁石は、互いに回転対称である、請求項1に記載のクランプ。
【請求項13】
クランプであって、
クランプ要素と、
回転中心軸を有する第1の永久磁石と、
第2の回転中心軸を有する第2の永久磁石と、
を備え、
前記クランプ要素は、流体搬送ダクトを収容するように構成され、
前記クランプ要素は、休止状態では、前記流体搬送ダクトを圧縮するように構成され、
前記クランプ要素は、作動状態では、前記流体搬送ダクトが圧縮されないように前記流体搬送ダクトを収容するように構成され、
前記休止状態は、前記第2の永久磁石に対する第1の角度への前記第1の永久磁石の相対回転によって起こり、
前記作動状態は、前記第2の永久磁石に対する第2の角度への前記第1の永久磁石の相対回転によって起こり、
前記流体搬送ダクトは、前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石との間に配置される、
クランプ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
クランプは、カセット内に封入され、可撓性壁によって境界がつけられた、例えばチューブライン、または流路などの流体搬送流路を通る流れを切り替えることを可能にするために、医療技術の多くの分野で使用される。
【0002】
そのような切り替え可能なクランプは、クランプ要素、ばね要素、および電流制御された保持要素を有する。ばね要素は、保持要素の無電流状態でクランプを遮断するための閉鎖力を供給する。この状態では、閉位置にあるクランプ要素が流体搬送流路を遮断し、流体分配ラインが抑制される。
【0003】
この場合、流体は液体または気体であり得る。
【0004】
例えば停電の場合、無電流状態での遮断位置は、特に、人間または動物の身体への物質のさらなる(制御されていない)供給が抑制されるべきであるので、有利である。
【0005】
クランプが開位置にあるとき、電流が保持要素、例えば電磁石に対して作用する。したがって、保持要素は、ばね力に反作用してクランプ要素を開位置に保持する保持力を供給する。
【0006】
この構成の1つの欠点は、線形の力-距離特性により、保持力が、ばね要素によって供給される閉鎖力よりも基本的に高くなければならないことである(図6参照)。
【0007】
加えて、より高い閉鎖力は、それに応じてより高い保持力を必要とする。
【0008】
より高い閉鎖力は、より大きい寸法、したがってより大きい重量を有するばね要素と、したがって重い電磁石、より高い保持電流、より高いエネルギー消費も必要とする。
【0009】
一方でこれは製造コストを増加させ、他方では運転コストも増加させる。
【目的】
【0010】
したがって本発明の1つの目的は、より安価に製造することができ、運転コストがより低いクランプを提供することである。本発明のさらなる目的は、既知のクランプと比較して、その動作に必要なエネルギーが著しく少ないクランプを提供することである。
【発明の概要】
【0011】
この目的は、クランプが流体搬送流路を収容することができ、休止状態ではクランプが流体搬送流路を圧縮することができ、作動状態ではクランプが、流体搬送ダクトが圧縮されないように流体搬送ダクトを収容することができるようになっているクランプによって達成され、ここにおいて、クランプは、第1の永久磁石および第2の永久磁石を有し、永久磁石は、永久磁石が互いに対して少なくともある角度だけ回転することができるように互いにある距離をおいて配置され、永久磁石の互いに対する相対回転は、距離の低減をもたらし、休止状態は第1の角度で提供され、作動状態は第2の角度で提供される。
【0012】
永久磁石は、特に、互いに対して移動可能となるように配置されることができ、ここにおいて、永久磁石が互いに対して少なくともある角度だけ回転することができ、永久磁石が互いに対して直線的に移動することができ、その結果、永久磁石間の距離が変動することができ、永久磁石の互いに対する回転は、永久磁石の極の互いに対する相対的な配置の変化につながり、これは次に、磁石間の磁気吸引の変化をもたらし、その結果、永久磁石の距離の変化が起こり、クランプは、永久磁石の互いに対する第1の相対回転位置では休止状態をとり、永久磁石の互いに対する第2の相対回転位置では作動状態をとる。
【0013】
流体搬送流路は、例えばカセット内につくられ、可撓性壁によって画定された、チューブラインまたは流路であり得る。
【0014】
本発明によって保持電流が低減された単純な機械的設計を同時に可能にするクランプを提供することが可能である。
【0015】
ここで提案されるクランプ(1)の1つの実施形態の場合では、クランプ(1)は、休止状態では流体搬送流路(L)の圧縮によって流れを遮断し、作動状態では圧縮を解放することによって流れを使用可能にする。これによってクランプ(1)は、第1の磁石(M1)および第2の磁石(M2)を有し、ここにおいて、磁石(M1、M2)は、磁石(M1、M2)が互いに対して少なくともある角度だけ回転することができるように、互いにある距離をおいて配置され、磁石(M1、M2)の互いに対する相対回転は、距離(d)の低減をもたらし、休止状態は第1の角度で提供され、作動状態は第2の角度で提供される。
【0016】
本発明の1つの特定の実施形態では、流体は液体であり、すなわち、本発明は、例えば透析液または他の物質の供給の制御を可能にする。
【0017】
本発明の別の特定の実施形態では、(挿入された)流体搬送流路が永久磁石間に配置される。
【0018】
本発明の別の特定の実施形態によれば、第1の永久磁石および/または第2の永久磁石は、いわゆるポリマグネット化された(polymagnetized)磁石であり、そのような磁石は、第1の磁化の第1の数のセクタおよび反対の第2の磁化の第2の数のセクタを有する。
【0019】
互いに対して回転可能および/または変位可能な要素は、ポリマグネット化された磁石によって小さい空間で特に容易に実装されることができる。
【0020】
本発明の別の特定の実施形態では、第1の角度と第2の角度との間の量の差は、360°をセクタの数で割ったもの以下であり、すなわち、必要な力は、180°未満の回転でも加えられることができる。
【0021】
本発明のさらに別の特定の実施形態では、クランプを開放するためにレバーも設けられ、その結果、流体搬送流路がクランプに挿入されることができる。
【0022】
クランプはまた、流体搬送流路が挿入されることができるように、無電流状態でレバーによって開放されることもできる。
【0023】
本発明の別の特定の実施形態によれば、作動状態が維持されるように、起動した場合に永久磁石のうちの少なくとも1つに対して作用する電磁石も設けられ、すなわち、電磁石は、流体搬送流路を通る連続的な流れが可能となるように設計される。
【0024】
本発明の改良形態によれば、電磁石は、作動状態に達するように、起動した場合に永久磁石のうちの少なくとも1つに対して作用し、すなわち、電磁石は、休止状態から作動状態に切り替わることが可能となるように設計される。
【0025】
この特定の実施形態は、血液または注入液などの医療用流体がそこを通り患者に注入または患者から排出される流路のためのクランプに特に好適である。クランプは、例えば、血液処理装置、腹膜透析装置、または注入ポンプの一部として設計され得る。このような装置で障害状況が生じた場合、特に装置への電力供給が中断された場合に、一般に、患者への流体接続が中断される安全状態を引き起こすことが必要である。電磁石として設計され、電力消費による起動によって休止状態から作動状態に切り替わる保持要素であれば、電源異常の場合に作動状態から休止状態に必ず切り替わり、流路を通る流れを遮ることになる。
【0026】
本発明の1つの改良形態によれば、第1の永久磁石は、休止状態から作動状態への遷移において螺旋経路上で第2の永久磁石に対してガイドされる。
【0027】
このようにして、異なる経路プロファイルが利用可能にされることができる。
【0028】
別の特定の実施形態では、ロッド型形状の閉鎖力が利用可能であり、ここにおいて、第1の永久磁石および第2の永久磁石によって形成される磁石対の力特性が実施され、ここにおいて、吸引力は、永久磁石間の距離が短いときに大きく、クランプが閉鎖されるときに大きい閉鎖力の力特性に変換される。
【0029】
追加の有利な実施形態は、従属請求項の主題および詳細な説明である。
【0030】
本発明は、以下の図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の特定の実施形態による、第1の状態のポリマグネット化された永久磁石の配向の一例を示す図。
図2】本発明の特定の実施形態による第2の状態のポリマグネット化された永久磁石の配向の一例を示す図。
図3】第1の状態での本発明によるクランプの要素の断面図の一例を示す図。
図4】第2の状態での本発明によるクランプの要素の断面図の一例を示す図。
図5】本発明によるクランプの要素の分解図の一例を示す図。
図6】技術水準のねじクランプおよび本発明の特定の実施形態による力-距離図を示す図。
【詳細な説明】
【0032】
本発明は、図面を参照して以下により詳細に説明される。ここで、個別または任意の組合せで使用され得る様々な態様が説明されており、すなわち、各態様が、厳密な代替物として明示的に特定されない限り、本発明の特定の異なる実施形態で使用され得ることが指摘されるべきである。
【0033】
さらに、簡潔にするために、以下では1つの実体のみに常に言及する。しかしながら、明示的に指摘されない限り、本発明は、そのように影響を受ける複数の実体も備え得る。この点で、単語「a」、「an」、および「one」の使用は、少なくとも1つの実体が単純な特定の実施形態において使用されるということを言及するものとしてのみ理解されるべきである。
【0034】
クランプ1が、本発明にしたがって利用可能にされる。
【0035】
休止状態では、クランプ1は、挿入された流体搬送流路Lを圧縮することによって貫流を遮断する。しかしながら、クランプ1の作動状態では、挿入された流体搬送流路Lを通る流れは、圧縮を逆にすることによって使用可能にされる。
【0036】
これは、クランプ1が、クランプ1が流体搬送流路Lを収容することができるようになることができ、ここにおいて、休止状態では、クランプ1が、収容された流体搬送流路Lを圧縮することができ、作動状態では、クランプ1が、圧縮されないように流体搬送流路を収容することができることを意味する。
【0037】
この目的のために、クランプ1は、第1の磁石、すなわち永久磁石M1と、第2の磁石、すなわち永久磁石M2とを有し、磁石M1、M2は、磁石M1、M2が互いに対して少なくともある角度だけ回転することができるように、互いにある距離をおいて配置され、ここにおいて、磁石M1、M2の互いに対する回転は、距離dの低減をもたらし、休止状態は第1の角度で利用可能にされ、作動状態は第2の角度で利用可能にされる。
【0038】
1つの実施形態では、永久磁石M1、M2は、特に、永久磁石M1、M2が互いに対して少なくともある角度だけ回転することができ、永久磁石M1、M2が互いに対して直線的に移動することができ、その結果、永久磁石M1、M2間の距離dが変動することができるように、互いに対して移動可能となるように配置されることもでき、ここにおいて、永久磁石M1、M2の互いに対する回転は、永久磁石M1、M2の極の互いに対する相対的な配置の変化につながり、これは次に、永久磁石M1、M2間の磁気吸引の変化をもたらし、その結果、永久磁石M1、M2の距離dの変化が起こり、クランプ1は、永久磁石M1、M2の互いに対する第1の相対回転位置では休止状態をとり、永久磁石M1、M2の互いに対する第2の相対回転位置では作動状態をとる。換言すれば、この実施形態によるクランプは、
・流体搬送流路を収容することができ、
・休止状態では、収容された流体搬送流路(L)を圧縮することができ、
・作動状態では、圧縮されないように流体搬送流路を収容することができる、
ようになっており、
・ここにおいて、クランプ(1)は、第1の永久磁石(M1)および第2の永久磁石(M2)を有し、
・磁石(M1、M2)が互いに対して少なくともある角度だけ回転することができ、磁石(M1、M2)が互いに対して直線的に移動することができ、その結果、磁石間の距離が変動することができるように、磁石M1、M2は、互いに対して移動可能となるように配置され、
・磁石(M1、M2)の互いに対する回転は、磁石の極の互いに対する相対的な配置の変化につながり、これは次に、磁石間の磁気吸引の変化をもたらし、その結果、磁石の距離(d)の変化が起こり、
・クランプは、磁石の互いに対する第1の相対回転位置では休止状態をとり、磁石の互いに対する第2の相対回転位置では作動状態をとる。
【0039】
流体搬送流路Lは、例えば、カセット内につくられ、可撓性壁によって画成された、チューブラインまたは流路であり得る。
【0040】
ここでこれを図1図5を参照してより詳細に説明するが、それら図は、本発明によるクランプ1の特定の実施形態の一例を示すが、要素のすべてが可視または例示されているわけではない。
【0041】
図3および図4は、本発明によるクランプ1を断面図で示す。対応する分解図が図5に示される。図3は、ポリマグネット化された永久磁石を有する1つの実施形態を例示する。
【0042】
ポリマグネット化された永久磁石は、様々な実施形態において得ることができる。ポリマグネット化された磁石は、異なる磁化(N/S)の複数(偶数個)のセクタを有する。換言すれば、S磁極Sを有するセクタは、N磁極Nを有するセクタの隣にある。このようなポリマグネット化された磁石は、例えば、Correlated Magnetics Research LLC社(Huntsville, AL 35806 USA)から入手可能である。
【0043】
一般に知られているように、反対の磁極は引き合うが、同一の磁極は反発しあう。
【0044】
本発明の適用例では、例えば、2つのディスク形状の永久磁石M1、M2が設置され、各ディスクは、少なくとも1つのS極Sおよび1つのN極Nを有する。図1および図2の例では、永久磁石M1およびM2の各々は、2つのS極及び1つのN極を有する。
【0045】
図1に示されるように、永久磁石M1が永久磁石M2の真上に位置する場合、それぞれの極は引き合い、永久磁石M1、M2は、それらの間の距離dを低減させる傾向にある。
【0046】
しかしながら、図1に示す永久磁石M1が図2に示す永久磁石M2の真上に配置された場合、それぞれの極は互いに反発しあい、永久磁石M1、M2はそれらの間の距離dを増加させる傾向にある。
【0047】
永久磁石M1およびM2が図1および図2のこれらの両極端の間に配置された場合、反発効果または吸引効果のいずれかが優勢であり、および/または配置に基づいて1点で生じる。
【0048】
図1図5には回転対称の永久磁石M1、M2が例示されているが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
強制経路が、好適な拘束およびガイドによって予め決定されることができる。
【0050】
図3は、休止状態を示し、永久磁石M1、M2の吸引により距離が短く、挿入された流体搬送流路Lが圧縮され、その結果、流れが抑制されている。
【0051】
しかしながら、図4では、永久磁石M1、M2は、休止状態に対して回転しており、距離dは、強制経路上でのガイドによって増加される。作動状態への回転の増加と共に2つの永久磁石M1、M2間の力が減少するので、そのような分離状態を維持するために必要な力も低下する。
【0052】
ここに例示される実施形態では、例えば、永久磁石M1は、垂直方向の並進運動のみを実行できるように溝内に保持される。永久磁石M2もまた、第2の永久磁石M2の回転軸が第1の永久磁石M1の並進運動の垂直方向と合うような回転運動のみを実行することができるように、溝N内に保持される。これは、一例として強制経路を予め決定する。
【0053】
これら図は、(好ましくはポリマグネット化された)一対の永久磁石によってばね要素が提供される1つの実施形態を示す。永久磁石M1、M2は、永久磁石のうちの1つ、ここでは永久磁石M1がz方向の移動を実行することができ、永久磁石のうちの少なくとも1つ、ここでは永久磁石M2が回転運動を実行することができるように取り付けまたはガイドされる。他の運動構成要素/強制経路は、永久磁石M1、M2の支持/ガイドを可能にしない。換言すれば、ここに示す実施形態では、第1の永久磁石M1は、z方向の移動を実行することはできるが、回転運動を実行することはできず、一方、第2の永久磁石M2は、回転運動を実行することはできるが、z方向の移動を実行することはできない。
【0054】
代替的な実施形態では、第1の永久磁石M1は、回転運動およびz方向の移動を実行することができるように取り付け/ガイドされる。この実施形態での第2の永久磁石M2は、回転運動もz方向の移動も不可能となるように固定されることができる。
【0055】
両方の実施形態は、永久磁石M1、M2の互いに対する運動がz成分と回転成分の両方を有するということを共通に有する。
【0056】
そのような強制経路が必ずしも「直線」であるように設計される必要がないことが指摘されるべきである。代わりに強制経路は、保持力を供給するための任意の好適な形態を有し得る。
【0057】
特に、強制経路は、調整可能な弁機能を実施するように具現化された作動状態および休止状態だけでなく、1つまたは複数の中間状態も可能となるようにも設計され得る。
【0058】
一般性を制限することなく、流体搬送流路L内の流体は、透析液、(動脈または静脈)血液、または気体などの流体であり得る。
【0059】
これら図は、ロッド型形状を有する1つの実施形態を示し、(図に対して)垂直方向にあるロッド型形状Sは、垂直方向に移動可能な磁石M1によって起動される。ロッド型形状Sは、第2の磁石M2を通る開口部Oを通される。ロッド型形状Sは、閉鎖力を、例えばクランプブレードに伝達することができ、すなわち、第1の磁石M1および第2の磁石M2の相互の(吸引)力は、閉鎖力に変換される。閉鎖力は、もはや(疲労を受ける)ばねによって利用可能とされない。第1の磁石M1および第2の磁石M2によって形成された対の磁石の力特性であって、吸引力が磁石間の短いまたは最小の距離において大きいまたは最大である力特性は、クランプが閉鎖されるときに大きいまたは最大である閉鎖力の力特性に変換される。この効果は、ロッドによる閉鎖力の伝達に基づいている。
【0060】
流体搬送流路Lが磁石間に位置しない構成が上述されたが、代わりに、ロッド型形状Sが磁石M1によって停止部の方向に押され、それによってそれらの間に挿入された流体搬送流路Lを圧縮してもよく、しかし、これが唯一の可能な実施形態ではない。代わりに、流体搬送流路は、磁石M1、M2間に配置されてもよい。また、休止状態が流体搬送流路Lを開放し、作動状態が流体搬送流路L内の流体流れを遮るように、休止状態と作動状態の関連付けが異なるように選択されてもよく、すなわち、本発明が、ある特定の形態に限定されるものではなく、むしろどの適用で使用されてもよいことも指摘されるべきである。
【0061】
本発明の1つの実施形態では、第1の磁石M1および/または第2の磁石M2はポリマグネット化された磁石であり、その結果、ポリマグネット化された磁石は、第1の磁化Nを有する第1の数nNのセクタおよび第2の磁化Sを有する第2の数nSのセクタを有する。通例、セクタの数は同じであり、すなわち、n=nS=nNである。1つの実施形態では、磁化パターンは、ポリマグネット化された磁石の方法(www.polymagnet.com)によって特徴付けられる。
【0062】
角度範囲は、通常、(図1および図2にあるように)2つの極端位置間に論理的に位置する。しかしながら、範囲をより小さく設計することも適切であり得る。通例、回転の角度範囲、すなわち第1の角度αMaxと第2の角度αMinとの間の量の差は、360°をセクタの数nで割ったもの以下であり、すなわち以下である。
【0063】
【数1】
【0064】
図5の実施形態では、クランプ1の機械的開放のためにレバーHも設けられ、その結果、流体搬送流路Lがクランプ1に挿入されることができる。レバーHは、磁石M1、M2のうちの1つおよび/またはそのホルダ上に配置され得る。図5の例では、レバーHは、磁石M2のホルダに一体的に成形され、溝N内で移動し、すなわち、レバーHは、強制経路上でのガイドの機能を有する。
【0065】
クランプは、無電流状態で開放されることもでき、流体搬送流路Lが、挿入または取り外されることができる。
【0066】
今や容易に供給されることができる電磁石が、クランプ1上またはその中の好適な場所に配置され得る。起動した場合、この電磁石は、作動状態が維持されるように磁石M1、M2のうちの少なくとも1つに対して作用し、すなわち、起動した電磁石は、吸引力に反作用し、流体搬送流路Lを開放した状態に保つ。
【0067】
電磁石はまた、起動した場合に、作動状態に達するように2つの磁石M1、M2のうちの少なくとも1つに対して作用することによって、少なくとも1つの切替え期間にわたってクランプを開放するように作用するような寸法でもあり得る。作動状態に達した後、加えられる力がここで小さくなり得るので、電流は電磁石によって低減されることができる。例えば、クランプ1の要素の特定の位置に到達したという事実は、マイクロスイッチによる電流低減のために使用され得、および/または電流は、ある特定の時間期間が経過した後に低減される。ある特定の時間が経過した後にある特定の位置に到達したかどうかをモニタすることも明らかに可能である。その位置に到達していない場合には、誤動作が想定され得、これは例えばシグナリングされることができる。
【0068】
既に上述したように、強制経路は様々な実施形態を有し得る。しかしながら、強制経路が、第1の磁石M1の相対的な経路が、休止状態から作動状態への遷移において第2の磁石M2に対して螺旋経路上に描かれ得ることを特徴とすることは、特に簡単である。
【0069】
2つの磁石M1、M2の互いに対する吸引力は、例示的な配置においてクランプ1の閉鎖力を利用可能にする。適用された磁化パターンは、磁石M1、M2の互いに対する残りの運動自由度に螺旋成分を持たせる。
【0070】
z方向の移動が可能な磁石M1は、流体搬送流路Lをクランプすることを可能にするクランプ要素に接続される。回転運動が可能な磁石M2は、保持要素に接続されることができる。
【0071】
両方の運動自由度は、組み合わされると、相対的な螺旋運動をもたらす。z成分およびクランプ要素の運動と、磁石M2および/またはそれに接続され得る保持要素の角運動との関係の螺旋性質により、結果として、開位置での保持要素に対する保持力は、閉位置でのクランプ力よりもさらに小さくなる。
【0072】
図6は、機械的ばねで応力がかけられた従来のクランプ(実線)および本発明の実施形態によるクランプ1(破線)についての力-距離図を示す。距離s=0mmにおいて、クランプ1は、流体搬送流路Lを開放する。従来のクランプを用いると、ばねは、この位置に張力下の保持要素によって保持される。保持要素がばねを解放した場合、ばねは、流体搬送流路が完全に閉鎖される(ここではs=6mm)まで弛緩し、ここにおいて、ばねの残留張力は、閉位置での十分な閉鎖を確実にする。ポリマグネット化された磁石M1、M2を用いる本実施形態では、一方では閉位置で同等の閉鎖力を達成するが、他方では開位置での保持力のために保持要素によって加えられる必要がある力は明確により小さい。換言すれば、ここでは流体搬送流路Lを開放した状態に保つために必要な力がより小さいので、クランプ1によるエネルギー消費も従来のクランプと比較して低減される。
【0073】
流体搬送流路Lは、保持要素に接続されたレバーでクランプ1を手動で開放することによって使用されることができる。少ない保持力により、電磁石は、小さい寸法で設計され得、より軽量で、かつ必要な保持電流が少なくなり得、これは、より少ないエネルギー消費に関連する。
【0074】
保持電流がオフにされた場合、2つの磁石は、閉位置に入る、クランプ要素上の螺旋移動経路に沿う互いに対する吸引運動に従う。
【0075】
この実施形態は、流体搬送流路Lのためのクランプ1に特に好適であり、それによって、血液または注入液などの医療用流体は、患者へとまたは患者から遠ざかるように方向付けられることができる。この場合クランプ1は、例えば、血液処理装置、腹膜透析装置、または注入ポンプの一部として具体化され得る。このような装置で不具合状況が生じた場合、特に装置またはクランプ1への電力供給が中断された場合に、患者への流体接続が中断される安全状態を引き起こすことが必要である。電磁石として設計され、起動による電力取り込みによって休止状態から作動状態に切り替わる保持要素は、電源異常の場合に作動状態から休止状態に必ず切り替わることになり、したがって流体搬送流路Lを通る流れを遮り、安全状態を達成することになる。
【0076】
さらなる実施形態では、本発明によるクランプ1は、例えば、1つまたは複数のスライドブッシュOなどの摩擦低減要素を有する。そのようなスライドブッシュOは、例えばプッシャ状成形物Sの周り、例えばピンまたはプランジャSの周りに配置されることができ、それは、このブッシュOを通してガイドされ、その移動は、2つの永久磁石M1、M2の互いに対する回転および永久磁石の互いに対する距離の変化に関連付けられる。それによって、スライドブッシュOとその中に支持されたプッシャ/ピン/プランジャSとの材料の組合せが特に有利であり、これは、休止時に可能な限り低い静止摩擦を有し、すなわち、いわゆるスティックスリップ効果を有さず、したがって可能な限り小さい離脱トルクを有する。このような材料の組合せの1つの例は、例えば、プラスチック製のスライドブッシュO内に配置される、プッシャ/ピン/プランジャSである。この組合せにおいて、PTFE、グラファイト、または窒化ホウ素の混合剤を有するプラスチックが特に有利である。鋼は、特にステンレススチールであり得る。セラミックおよび炭化ケイ素が、スライドブッシュOのための材料としてさらに可能である。そのようなスライドブッシュOは、その中に支持され、クランプ1の係止要素/クランプ要素に直接接続され得るプッシャ/ピン/プランジャSのより低摩擦の移動を有利に提供する。それによって、そのようなクランプ1のより迅速な閉鎖時間、より少ない摩耗、およびより長い耐用年数が、特に有利な様式で可能にされる。
【0077】
さらなる発展形態では、本発明によるクランプ1は、スライドブッシュOの代わりに、可動部分の周りに配置された1つまたは複数のスライド要素を有する。これにより、スライド要素を、例えば可動プッシャ/ピン/プランジャSの全周に配置するのではなく、全体として360度未満をカバーする円セグメントのみに配置することが特に有利であり得る。これによって、円周の部分に、その中でスライドすることができる部分の周りのスライド要素が区分的に装備されるという点で、スライド要素材料の必要が特に有利な様式で低くされることができる。
【0078】
特に好ましくは、クランプ1の永久磁石M1、M2は、例えばアルミニウムまたはプラスチックなどの非磁気性材料のハウジング内に配置される。
【0079】
本発明の態様は、次のように組み合わせることができる。互いに対して移動されることができる対の永久磁石M1、M2によって、例えば回転面に垂直な追加の直線運動が回転運動によってトリガされる。永久磁石M1、M2の互いに対する磁気結合により、相対的な回転運動が相対的な持ち上げ運動につながり、すなわち、永久磁石M1、M2間の直線距離が相対的な回転運動の結果として変化する。
【0080】
このプロセスは可逆的である。第1の回転方向の相対的な回転運動は、永久磁石M1、M2の距離の低減につながり、第2の(反対の)回転方向の相対的な回転運動は、距離の増加につながる。
【0081】
本発明によれば、永久磁石M1、M2が、第1の回転位置では永久磁石M1、M2間の吸引の和が第2の回転位置の場合よりも小さくなるように設計され、移動可能に支持され、および配置されるという点で、回転運動が追加の持ち上げ運動に変換されることを遂げることができる。例えば、第1の回転位置における引き合う極の距離が、第2の回転位置におけるものよりも平均して大きいという点で、これを遂げることができるが、しかしながら、これは、極の数、形状、および設計によって代替または追加的に行われることができる。クランプを開位置に保つために、このような相対的な回転運動およびある特定の回転位置の保持に費やされる必要がある電気エネルギーは、既知のクランプを用いる場合よりもさらに少ない。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
クランプであって、
・前記クランプが、流体搬送ダクトを収容することができ、
・前記クランプが、休止状態では、前記収容された流体搬送流路を圧縮することができ、
・作動状態では前記クランプが、前記流体搬送流路が圧縮されないように前記流体搬送流路を収容することができる、
ようになっており、
・ここにおいて、前記クランプは、第1の永久磁石および第2の永久磁石を有し、
・前記永久磁石は、前記永久磁石が互いに対して少なくともある角度を回転することができるように、互いにある距離をおいて配置され、前記永久磁石の互いに対する相対回転は、距離の低減をもたらし、前記休止状態は、第1の角度で利用可能にされ、前記作動状態は第2の角度で利用可能にされる、
クランプ。
[C2]
前記流体が液体であることを特徴とする、C1に記載のクランプ。
[C3]
前記第1の永久磁石および/または前記第2の永久磁石が、ポリマグネット化された磁石であることを特徴とし、ここにおいて、ポリマグネット化された磁石は、第1の磁化の第1の数のセクタおよび第2の磁化の第2の数のセクタを有する、C1または2に記載のクランプ。
[C4]
前記第1の角度と前記第2の角度との間の量の差が、360°をセクタの数で割ったもの以下である、C3に記載のクランプ。
[C5]
流体搬送流路が前記クランプに挿入されることができるように、前記クランプを開放するためのレバーが追加的に設けられることを特徴とする、C1~4のいずれか一項に記載のクランプ。
[C6]
前記作動状態が維持されるように、起動した場合に前記永久磁石のうちの少なくとも1つに対して作用する電磁石が追加的に設けられることを特徴とする、C1~5のいずれか一項に記載のクランプ。
[C7]
前記電磁石が、前記作動状態が達成されるように、起動した場合に前記永久磁石のうちの少なくとも1つに対して作用することを特徴とする、C6に記載のクランプ。
[C8]
前記第1の永久磁石は、前記休止状態から前記作動状態への遷移において前記第2の永久磁石に対して螺旋経路上でガイドされることを特徴とする、C1~7のいずれか一項に記載のクランプ。
[C9]
ロッド型凹部が閉鎖力を利用可能にすることを特徴とし、ここにおいて、前記第1の永久磁石および前記第2の永久磁石によって形成された前記対の磁石の力特性であって、前記磁石間の距離が短いときに吸引力が大きい力特性は、前記クランプが閉鎖されるときに大きい前記閉鎖力の力特性に変換される、C1~8のいずれか一項に記載のクランプ。
[C10]
前記流体搬送流路が、前記永久磁石間に配置されることを特徴とする、C1~9のいずれか一項に記載のクランプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6