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▶ ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】髪のボリュームを減らす方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20230807BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q5/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020521582
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018078118
(87)【国際公開番号】W WO2019076835
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】17197654.1
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ポール,プレム・クマール・チェヤラザガン
(72)【発明者】
【氏名】パイ,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,シャーロット・ブレオニー・タンディ
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/126030(WO,A2)
【文献】特開2006-290817(JP,A)
【文献】特表2003-508474(JP,A)
【文献】特表2014-523950(JP,A)
【文献】国際公開第2017/096153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮れ毛を抑制することで頭部のヘアボリュームを減少させる方法であって、以下の:
少なくとも1重量%のN-ホルミルアミノ酸を含む水相を含む水性トリートメント組成物で毛髪をトリートメントする工程;
を含み、ここでN-ホルミルアミノ酸がN-ホルミルアラニン、N-ホルミルプロリン、N-ホルミルメチオニン、N-ホルミルバリン、N-ホルミルロイシン及びN-ホルミルグリシンから選択される、前記方法。
【請求項2】
前記水相が少なくとも60重量%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
N-ホルミルアミノ酸が遊離酸の形態である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
N-ホルミルアミノ酸がN-ホルミルグリシンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水相が1重量%~6重量%のN-ホルミルアミノ酸を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水相が60重量%~98重量%の水を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水相が水性連続相である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
毛髪が、3~45分の範囲の期間、前記水性トリートメント組成物に浸漬される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
浸漬期間の終わりに、前記水性トリートメント組成物を毛髪からすすぐことなく、毛髪を乾かすかまたは毛髪が乾燥する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアトリートメント組成物の分野に係るものであり、特に、髪のボリュームを減らす方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、縮れ毛は、周囲の毛髪と整列せずに、独立して立ち上がったりカールしたりして毛羽立ったまたは不規則なテクスチャを形成することで、髪にボリューム感やぼさぼさした外観を与える毛髪として知られている。一般的に、毛髪は、湿度が高く空気中の水分量が多い日に縮れる。その結果、髪は、滑らかで光沢があり輪郭の明瞭なものではなくて、乾いて縮れたように見える。縮れた外観および光沢と滑らかさの喪失は、髪の健康状態が悪いとの認識に関連している。
【0003】
毛髪にコンディショニング効果をもたらす一般的な方法は、カチオン性界面活性剤およびポリマー、高融点脂肪化合物、低融点オイル、シリコーン化合物、およびそれらの混合物などのコンディショニング剤の使用によるものである。これらの材料が毛髪表面に沈着すると、毛髪にべたついた感触や外観が生じ、望ましくない。
【0004】
米国特許出願公開第2016/0158128号は、約0.2%~約20%の水分制御材料または水分制御材料の混合物を含む、毛髪縮れ低減のためのリンスオフコンディショナー組成物を開示している。
【0005】
従来技術にもかかわらず、ヘアトリートメント組成物によりもたらされるコンディショニング効果を増加させる契機が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2016/0158128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、縮れ毛を低減する方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、湿気に曝された後でも形状を保持し、縮れ毛を低減する方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、髪を洗った後でも、髪の形状への利点および縮れ毛の減少を与える方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、N-ホルミルアミノ酸を使用することにより、湿気に曝された後でも毛髪の縮れ低減と毛髪形状の保持が得られることが判明した。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、ヘア(毛髪)ボリュームを減少させる方法を提供し、この方法は、少なくとも0.5重量%のN-ホルミルアミノ酸を含む水相を含む水性トリートメント組成物で毛髪をトリートメントする工程を含む。
【0012】
本発明の文脈において、「毛髪」への言及は、典型的には、頭皮の毛、顔の毛および体毛を含む哺乳動物の毛、より好ましくはヒトの頭部および頭皮の毛を意味する。
【0013】
これらおよび他の態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。誤解を避けるために、本発明の一態様の任意の特徴を、本発明の他の任意の態様で利用することができる。「含む」という用語は、「包含」を意味することを意図しているが、必ずしも「から成る」または「成り立つ」という意味ではない。言い換えると、列挙されている工程または選択肢は、網羅的である必要はない。以下の記載で与えられる例は、本発明を明確にすることを意図しており、本発明をそれらの例自体に限定することを意図していないことに留意されたい。同様に、特に明記しない限り、すべてのパーセントは重量/重量パーセントである。実施例および比較例を除いて、または他に明確に示されていない限り、材料の量または反応条件、材料の物理的特性および/または使用を示す本明細書中のすべての数字は、「約」という語によって修飾されると理解されるべきである。「xからyまで」という形式で表された数値範囲には、xとyが含まれることが理解される。特定の特徴について、複数の好ましい範囲が「xからy」の形式で記述されている場合、異なる終点を組み合わせるすべての範囲も企図されることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の態様では、本発明は、N-ホルミルアミノ酸を含む水相を含む水性トリートメント組成物で毛髪を処理することを含む、ヘアボリュームを減少させる方法に関する。
【0015】
「水相」とは、その基礎として水を有する相を意味する。したがって、本発明の水性トリートメント組成物は、全組成物の重量に対して、一般に少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも75%、いっそうより好ましくは少なくとも80%、またはさらには少なくとも90%の水を含む。好ましくは、当該組成物は、組成物全体の99.5重量%未満、より好ましくは98重量%未満の水しか含まない。低級アルキルアルコールおよび多価アルコールなどの他の有機溶媒も存在し得る。低級アルキルアルコールの例には、エタノールおよびイソプロパノールなどのC1~C6一価アルコールが含まれる。多価アルコールの例には、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、およびプロパンジオールが含まれる。上記の有機溶媒のいかなる混合物も使用することができる。
【0016】
好ましくは、水相は水性連続相である。「水性連続相」とは、その基礎として水を有する連続相を意味する。
【0017】
本発明の水性トリートメント組成物は、全組成物の少なくとも0.5重量%のN-ホルミルアミノ酸を含む。
【0018】
適切なN-ホルミルアミノ酸には、N-ホルミル標準アミノ酸およびそれらの誘導体が含まれる。典型的な例は、N-ホルミルアラニン、N-ホルミルプロリン、N-ホルミルメチオニン、N-ホルミルバリン、N-ホルミルロイシンおよびN-ホルミルグリシンである。最も好ましいN-ホルミルアミノ酸はN-ホルミルグリシンである。
【0019】
N-ホルミルアミノ酸は、遊離酸の形、或いはナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩または低級アルカノールアミン塩(モノ、ジおよびトリエタノールアミン塩ならびにモノ、ジおよびトリイソプロパノールアミン塩など)等の塩の形で使用できる。上記の形態のいかなる混合物も適切であり得る。
【0020】
好ましくは、N-ホルミルアミノ酸は、遊離酸の形態で、全組成物の0.5~6重量%、より好ましくは1~3重量%、最も好ましくは1.5~2.5重量%の範囲のレベルで使用される。
【0021】
シャンプー組成物
本発明による方法で使用するのに特に好ましい水性トリートメント組成物は、シャンプー組成物である。
【0022】
そのようなシャンプー組成物は、化粧品として許容可能であり、毛髪への局所適用に適した1つまたは複数のクレンジング界面活性剤を含む。シリコーン成分の乳化剤としてクレンジングの目的に十分なものが提供されていない場合、追加の界面活性剤が追加の成分として存在してもよい。本発明のシャンプー組成物は、洗浄効果を提供するために、(シリコーン成分の乳化剤として使用されるものに加えて)少なくとも1つのさらなる界面活性剤を含むことが好ましい。
【0023】
単独でまたは組み合わせて使用することができる適切なクレンジング界面活性剤は、アニオン性、両性および双性イオン性界面活性剤、ならびにそれらの混合物から選択される。クレンジング界面活性剤は、乳化剤と同じ界面活性剤であってもよく、または異なっていてもよい。
【0024】
本発明によるシャンプー組成物は、典型的には、化粧品として許容可能であり、毛髪への局所適用に適した1つまたは複数のアニオン性クレンジング界面活性剤を含む。
【0025】
適切なアニオン性クレンジング界面活性剤の例は、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルカリルスルホネート、アルカノイルイセチオネート、アルキルスクシネート、アルキルスルホコハク酸塩、N-アルキルサルコシン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、およびアルファ-オレフィンスルホン酸塩、特にそれらのナトリウム、マグネシウム、アンモニウムならびにモノ-、ジ-およびトリエタノールアミン塩である。アルキル基およびアシル基は、一般に8~18個の炭素原子を含み、不飽和であってもよい。アルキルエーテルサルフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルエーテルカルボキシレートは、1分子あたり1~10個のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド単位を含み得る。
【0026】
本発明のシャンプー組成物で使用するための典型的なアニオン性クレンジング界面活性剤には、オレイルコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウムおよびN-ラウリルサルコシンナトリウムが含まれる。最も好ましいアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(n)EO(nは1から3の範囲)、ラウリル硫酸アンモニウムおよびラウリルエーテル硫酸アンモニウム(n)EO(nは1から3の範囲)である。
【0027】
前述のアニオン性クレンジング界面活性剤のいかなる混合物も適切であり得る。
【0028】
本発明のシャンプー組成物中のアニオン性クレンジング界面活性剤の総量は、一般に5~30重量%、好ましくは6~20重量%、より好ましくは8~16重量%である。
【0029】
シャンプー組成物は、組成物に美的、物理的またはクレンジング特性を付与するのを助けるために、任意で共界面活性剤を含むことができる。
【0030】
好ましい例は、両性または双性イオン性界面活性剤であり、0~約8重量%、好ましくは1~4重量%の範囲の量で含めることができる。
【0031】
両性および双性イオン性界面活性剤の例としては、アルキルアミンオキシド、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン(スルタイン)、アルキルグリシネート、アルキルカルボキシグリシネート、アルキルアンホプロピオネート、アルキルアンホグリシネート、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、タウリン酸アシルおよびグルタミン酸アシルであり、該アルキル基およびアシル基は8~19個の炭素原子を有する。本発明のシャンプーで使用するための典型的な両性および双性イオン性界面活性剤には、ラウリルアミンオキシド、ココジメチルスルホプロピルベタイン、好ましくはラウリルベタイン、コカミドプロピルベタインおよびコカンホプロピオン酸ナトリウムが含まれる。
【0032】
別の好ましい例は、非イオン性界面活性剤であり、0~8重量%、好ましくは2~5重量%の範囲の量で含まれ得る。
【0033】
例えば、本発明のシャンプー組成物に含有させることができる代表的な非イオン性界面活性剤には、脂肪族(C-C18)の一級または二級の直鎖または分岐鎖アルコール或いはフェノールと、通常はエチレンオキシドであり、一般に6~30個のエチレンオキシド基を有するアルキレンオキシドとの縮合生成物が含まれる。
【0034】
他の代表的な非イオン性界面活性剤には、モノまたはジアルキルアルカノールアミドが含まれる。例には、ココモノまたはジエタノールアミドおよびココモノイソプロパノールアミドが含まれる。
【0035】
本発明のシャンプー組成物に含有させることができるさらなる非イオン性界面活性剤は、アルキルポリグリコシド(APG)である。典型的には、APGは、1つ以上のグリコシル基のブロックに(任意に架橋基を介して)接続されたアルキル基を含むものである。好ましいAPGは、以下の式によって定義される:
【化1】
(式中、Rは、飽和または不飽和であり得る分枝鎖または直鎖アルキル基であり、Gは、糖基である。)
【0036】
Rは、約C~約C20の平均アルキル鎖長を表し得る。好ましくは、Rは、約C~約C12の平均アルキル鎖長を表す。最も好ましくは、Rの値は、約9.5と約10.5の間である。Gは、CまたはC単糖残基から選択されてよく、好ましくはグルコシドである。Gは、グルコース、キシロース、ラクトース、フルクトース、マンノースおよびそれらの誘導体を含む群から選択され得る。好ましくは、Gはグルコースである。
【0037】
重合度nは、約1~約10以上の値を有し得る。好ましくは、nの値は、約1.1~約2の範囲にある。最も好ましくは、nの値は、約1.3~約1.5の範囲にある。
【0038】
本発明のシャンプー組成物に含有させることができる他の糖由来の非イオン性界面活性剤には、例えば、国際公開第9206154号および米国特許第5194639号に記載されている、C12-C18N-メチルグルカミドなどのC10-C18N-アルキル(C-C)ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、およびC10-C18N-(3-メトキシプロピル)グルカミドなどのN-アルコキシポリヒドロキシ脂肪酸アミドが含まれる。
【0039】
本シャンプー組成物はまた、場合により、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%、最も好ましくは0.05~2重量%の範囲の量で含まれる1つ以上のカチオン性共界面活性剤を含んでもよい。
【0040】
本発明のシャンプー組成物中の界面活性剤(任意の共界面活性剤および/またはシリコーン成分用の任意の乳化剤を含む)の総量は、一般に0.1~50重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~25重量%である。
【0041】
コンディショナー
本発明による方法で使用するための水性トリートメント組成物は、毛髪のトリートメント(通常はシャンプー後)およびその後のすすぎのためのコンディショナーとして配合することもできる。
【0042】
本発明の水性トリートメント組成物は、コンディショニングゲル相を適切に含み得、これは、一般に、界面活性剤二重層からなるゲル(Lβ)界面活性剤中間相(mesophase)として特徴付けられ得る。このようなコンディショニングゲル相は、カチオン性界面活性剤、高融点脂肪アルコールおよび水性担体から形成され得る。典型的には、これらの成分は加熱されて混合物を形成し、剪断下で室温まで冷却される。混合物は冷却中に多くの相転移を起こし、通常、界面活性剤の二重層からなるゲル(Lβ)界面活性剤中間相になる。
【0043】
コンディショニングゲル相の形成に有用な適切なカチオン性界面活性剤の例には、以下の一般式に対応する第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤が含まれる:
【化2】
(式中、R、R、R、およびRは、互いに独立して、(a)1から22の炭素原子の脂肪族基、或いは(b)芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたは22個までの炭素原子を有するアルキルアリール基から選択され;Xは、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物)、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびアルキル硫酸根から選択されるものなどの塩形成アニオンである。)
【0044】
脂肪族基は、炭素原子および水素原子に加えて、エーテル結合、およびアミノ基などの他の基を含むことができる。より長い鎖の脂肪族基、例えば、約12個以上の炭素のものは、飽和または不飽和であり得る。上記の一般式のそのような第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤の具体例は、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(BTAC)、塩化セチルピリジニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化デシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化獣脂トリメチルアンモニウム、塩化ココトリメチルアンモニウム、塩化ジパルミトイルエチルジメチルアンモニウム、塩化PEG-2オレイロアンモニウムおよびこれらの塩であり、これらの塩酸塩は、他のハライド(例えば、ブロミド)、アセテート、シトレート、ラクテート、グリコレート、ホスフェート、ニトレート、サルフェート、またはアルキルサルフェートで置き換えられる。
【0045】
上記の一般式のカチオン性界面活性剤の好ましいクラスにおいて、Rは、C16~C22飽和または不飽和、好ましくは飽和のアルキル鎖であり、R、RおよびRは、それぞれ独立して、CHおよびCHCHOH、好ましくはCHから選択される。コンディショニングゲル相の形成に使用するためのそのような好ましい第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤の具体例は、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(BTAC)およびそれらの混合物である。
【0046】
上記のカチオン性界面活性剤のいかなる混合物も適切であり得る。
【0047】
カチオン性界面活性剤のレベルは、適切には、0.1~10%、好ましくは0.2~5%、より好ましくは0.25~4%(組成物の総重量に基づく重量)の範囲である。
【0048】
本発明の文脈における「高融点」とは、一般に、25℃以上の融点を意味する。一般に、融点は、25℃から90℃まで、好ましくは40℃から70℃まで、より好ましくは50℃から約65℃までの範囲である。
【0049】
高融点脂肪アルコールは、単一の化合物として、または少なくとも2つの高融点脂肪アルコールのブレンドまたは混合物として使用することができる。脂肪アルコールのブレンドまたは混合物が使用される場合、融点は、ブレンドまたは混合物の融点を意味する。
【0050】
このタイプの適切な脂肪アルコールは、一般式R-OHを有し、Rは脂肪族炭素鎖である。好ましくは、Rは、8~30個の炭素原子、より好ましくは14~30個の炭素原子、最も好ましくは16~22個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭素鎖である。
【0051】
Rは、炭素原子と水素原子に加えて、エーテル結合、およびアミノ基などの他の基を含むことができる。
【0052】
最も好ましくは、脂肪アルコールは、一般式CH(CHOHを有し、ここで、nは7~29、好ましくは15~21の整数である。
【0053】
適切な脂肪アルコールの具体例は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、およびそれらの混合物である。セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびそれらの混合物が特に好ましい。
【0054】
上記の脂肪アルコールのいかなる混合物も適切であり得る。
【0055】
脂肪アルコールのレベルは、適切には、0.01~10%、好ましくは0.1~8%、より好ましくは0.2~7%、最も好ましくは0.3~6%(組成物の総重量に基づく重量)の範囲である。
【0056】
カチオン性界面活性剤と脂肪アルコールの重量比は、適切には、1:1~1:10、好ましくは1:1.5~1:8、最適には1:2~1:5である。
【0057】
スタイリングコンポジション
本発明による方法で使用するための水性トリートメント組成物は、スタイリング組成物の形態を取ることもできる。
【0058】
好ましい製品形態は、ゲル、ワックスおよびクリームなどのリーブオン配合物である。
【0059】
別のスタイリングフォームには、ムース、スプレー、エアゾールが含まれる。
【0060】
このようなスタイリング製品には、多くの場合、担体とさらに追加の成分が含まれる。そのような製品を配合するために必要な担体および追加の成分は、製品の種類によって異なり、当業者が機械的に選択することができる。以下は、いくつかのそれらの担体と追加の成分の説明である。
【0061】
本発明のヘアケア組成物は、毛髪への適用に適した担体またはそのような担体の混合物を含むことができる。担体は、組成物の約0.5%~約99.5%、好ましくは約5.0%~約99.5%、より好ましくは約10.0%~約98.0%で存在する。本明細書で使用する場合、「毛髪への適用に適している」という語句は、担体が毛髪に美的損傷や悪影響を与えたり、毛髪の下にある皮膚に刺激を引き起こしたりしないことを意味する。
【0062】
本発明による組成物は、緩衝剤またはpH調整剤を含む。好ましい緩衝剤またはpH調整剤には、グリシン/水酸化ナトリウム、クエン酸、乳酸、コハク酸、酢酸塩およびそれらの塩などの弱酸および塩基が含まれる。多くの場合、クエン酸ナトリウムとクエン酸などの緩衝系の混合物が使用される。
【0063】
本発明のヘアケア組成物と共に使用するのに適した担体には、例えば、ヘアスプレー、ムース、トニック、水、クリームゲル、シャンプー、コンディショナーおよびリンスの製剤に使用されるものが含まれる。適切な担体の選択は、処方される特定の製品に依存する。本発明で使用される担体は、ヘアケア組成物で従来使用されている広範囲の成分を含むことができる。担体は、使用されているスタイリング化合物を溶解または分散させるための溶媒を含むことができ、水、C-Cアルコール、低級アルキルアセテートおよびそれらの混合物が好ましい。担体は、アセトン、炭化水素(イソブタン、ヘキサン、デセンなど)、ハロゲン化炭化水素(フロンなど)、およびシクロメチコンなどの揮発性シリコーンなどの、さまざまな追加の材料を含むこともできる。
【0064】
ヘアケア組成物がヘアスプレー、トニック、ゲルまたはムースである場合、好ましい溶媒には、水、エタノール、揮発性シリコーン誘導体およびそれらの混合物が含まれる。そのような混合物で使用される溶媒は、お互いに混和性または非混和性であり得る。ムースおよびエアゾールヘアスプレーはまた、従来の噴射剤のいずれかを利用して、フォーム(ムースの場合)または細かく均一なスプレー(エアゾールヘアスプレーの場合)として材料を送達することができる。適切な噴射剤の例には、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジフルオロエタン、ジメチルエーテル、プロパン、n-ブタンまたはイソブタンなどの材料が含まれる。低粘度を有するトニックまたはヘアスプレー製品は、乳化剤を利用することもできる。適切な乳化剤の例には、非イオン性、カチオン性、アニオン性界面活性剤またはそれらの混合物が含まれる。そのような乳化剤が使用される場合、それは、好ましくは、組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約7.5重量%のレベルで存在する。噴射剤のレベルは、所望に応じて調整することができるが、一般的には、ムース組成物の総重量に基づいて、約3重量%~約30重量%であり、エアゾールヘアスプレー組成物の総重量に基づいて約15重量%~約50重量%である。
【0065】
ヘアスタイリングワックス、クリームまたはゲルはまた、典型的には構造剤または増粘剤を、典型的には0.01重量%~10重量%の量で含む。
【0066】
適切なスプレー容器は当該技術分野で周知であり、従来の非エアゾールポンプスプレー、すなわち「噴霧器」や、上述のように噴射剤を含むエアゾール容器または缶、および噴射剤として圧縮空気を利用するポンプエアゾール容器を含む。
【0067】
本発明の水性トリートメント組成物はまた、性能および/または消費者の受容性を高めるために他の任意の成分を含有してもよい。適切な任意成分には、防腐剤、着色剤、キレート剤、抗酸化剤、香料、抗菌剤、フケ防止剤、カチオン性コンディショニングポリマー、日焼け止め、タンパク質および加水分解タンパク質が含まれる。
【0068】
本発明の水性トリートメント組成物はまた、ヘアケアに適した補助剤を含み得る。一般に、そのような成分は、個別に、組成物全体の最大2重量%、好ましくは最大1重量%のレベルで含まれる。適切なヘアケア補助剤は、アミノ酸、糖およびセラミドを含む。
【0069】
本発明の方法で使用するための水性トリートメント組成物には、性能および/または消費者の受容性を高めるために、他の任意の成分を組み込むこともできる。適切な任意成分には、防腐剤、着色剤、キレート剤、抗酸化剤、香料、抗菌剤、フケ防止剤、カチオン性コンディショニングポリマー、スタイリング成分、日焼け止め、タンパク質および加水分解タンパク質が含まれる。
【0070】
本発明の方法では、水性トリートメント組成物で毛髪を処理する前に、毛髪を水単独でまたはシャンプーで洗浄することができる。
【0071】
本発明の方法では、洗浄された毛髪は、水性トリートメント組成物に浸される。一般に、処理しようとする髪を覆う適用量であれば、いかなる水性トリートメント組成物の適用量でも十分である。たとえば、髪の一部だけまたは髪の毛の先端だけを処理する場合は、より少ない量を使用できる。水性トリートメント組成物は、例えば、毛髪の根元端から先端端にそれを作用させることによって、均一に送達されることが好ましい。
【0072】
好ましくは、毛髪は、1~60分の範囲、より好ましくは3~45分の範囲の期間、水性トリートメント組成物に浸される。浸漬期間の終わりに、毛髪から水性トリートメント組成物をすすぐことなく、毛髪を乾かすかまたは毛髪が乾燥することが好ましい。浸した髪は、空気への曝露、加熱された髪乾燥器具の使用、吸水性物品での摩擦、またはこれらの方法のいずれかの組み合わせによって自然に乾燥させることができる。
【0073】
したがって、水性トリートメント組成物は、最初の適用後少なくとも1分間、好ましくは次の洗浄まで、例えば最初の塗布から24~72時間毛髪と接触したままであり得る。
【0074】
本発明は、以下の非限定的な例を参照してさらに説明される。
【実施例
【0075】
実施例1:N-ホルミルグリシンの髪への効果
長さ25cm、重さ2gのダークブラウンのヨーロッパ人のウェーブ状ヘアスイッチは次のように処置された。
対照:最初の洗浄後、水に30分間浸した。
比較例A:最初の洗浄後、1%グリシンの水溶液に30分間浸した。
実施例1:1%N-ホルミルグリシンの水溶液に30分間浸した。
【0076】
浸漬期間の最後に、ヘアスイッチを20℃、50%RHで乾燥させた。乾燥の際、ヘアスイッチにFHIアイロン(FHI Brands、29003・アヴェニュー・シャーマン・バレンシア、カリフォニア・91355、米国)を5回あててまっすぐにした。次に、ヘアスイッチを~30C/80%RHの湿度チャンバーに1時間置き、画像を取り込んで分析した。それらのそれぞれと水処理対照を比較したボリュームのパーセンテージ効果を表1に示す。
【表1】
【0077】
上記の表から、N-ホルミルグリシンで処置されたヘアスイッチでは、高湿度に曝された後でも形状を維持し、縮れ毛が抑制されることがわかる。一方、グリシンは対照より優れるものではない。
【0078】
実施例2:持続的で耐久性のあるボリューム減少に関する髪へのN-ホルミルグリシンの効果
上記の実施例のヘアスイッチはその後洗浄され、画像が取り込まれた。対照と比較して、N-ホルミルグリシン処置ヘアスイッチは、対照よりも32%効果を維持し、ボリュームを減少するための長期的で耐久性のある効果を示した。グリシンの対応する効果はわずか-10%であった。