(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】コーティングされた農薬組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/26 20060101AFI20230807BHJP
C05G 3/60 20200101ALI20230807BHJP
C08G 75/045 20160101ALI20230807BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20230807BHJP
【FI】
A01N25/26
C05G3/60
C08G75/045 ZBP
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020524192
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2018079682
(87)【国際公開番号】W WO2019086440
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-30
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512064505
【氏名又は名称】エヴァーリス・インターナショナル・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】トゥカルヤ,エヴゲーニー
(72)【発明者】
【氏名】ゴセンス,ロナルド・ペトルス・ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】シスターマンス,スーザン・ティネ・キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス,ミハエル・エルネスト・ヨセフィナ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス,マーティン・アンナ・フランシスカス・ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】ラーベ,カリナ
(72)【発明者】
【氏名】アウト,ヘラルゾス・ヤコブス・ジョセフ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0247541(US,A1)
【文献】特開2000-344877(JP,A)
【文献】特開平11-263689(JP,A)
【文献】特開2001-040074(JP,A)
【文献】特開2009-215565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00 - 75/32
A01N 25/00 - 25/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物のコーティングで封入された少なくとも部分的に水溶性である成形された農業用活性材料を含む生分解性放出制御農薬組成物であって、前記コーティング組成物が、モノマーAとモノマーBとの化学反応によって形成される付加物を含み、
ここで、モノマーAは2個~6個のメルカプトアルカノエート基を有し、200g/モル~1000g/モルの分子量である成分を含み、
モノマーBは、2個~50個のエステル基および2個~4個の不飽和炭素間二重結合を有し、200g/モル~2000g/モルの分子量であり、ここで、モノマーBはシクロペンタンおよび/またはシクロヘキサン部分を含み、
ここで、前記コーティングは約5μm~110μmの厚さで、および/または前記コーティングの量は1重量
部(pph)~20重量
部(pph)である、
前記生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の生分解性放出制御農薬組成物であって、
前記コーティング組成物が、ISO14855に従い、20℃~28℃の周囲温度で、約10カ月~24カ月の期間内で、少なくとも約16%の生分解を有し、
ここで、前記コーティングされた農薬組成物と水との周囲温度での初期接触後に、前記農業用活性材料の15wt%以下が最初の24時間以内に、前記材料の75wt%以下が28日以内に放出されるように、前記コーティング組成物が適合される、前記生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項3】
前記コーティング組成物が、水分または水への前記材料の初期曝露の日から30日以上で、初期重量の75wt%を上回る前記材料が、前記コーティングされた農薬組成物から放出される、請求項1に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項4】
前記コーティング組成物が、ISO14855に従い、20℃~28℃の周囲温度で、約10カ月~24カ月の期間内で、少なくとも約40%の生分解を有する、請求項1または2に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項5】
前記コーティング組成物が、約10カ月~24カ月の期間内で、少なくとも約90%の生分解を有する、請求項4に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項6】
前記モノマーAが、直鎖または分岐のアルキルポリメルカプトアルカノエート基を有する化合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項7】
前記モノマーAが、下記構造:
【化1】
[式中、
Dは、下記構造:
【化2】
(式中、X
1は、炭素原子1~20個の範囲の線状または分岐状脂肪族炭素鎖である)
によって表され、
R
1は、炭素原子2~36個および酸素原子0個~5個、窒素原子またはアルキル化窒素原子0個~3個、または硫黄原子0個~3個を含む)
によって表される]
によって表される構成成分を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項8】
前記モノマーAが、GDMA、TMPTMA、PETMA、PETMP、TMPTMP、GDMPおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される構成成分を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項9】
前記モノマーAが、PETMAを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項10】
前記モノマーBが、下記構造:
【化3】
[式中、
Fは、下記構造:
【化4】
(式中、
X
2は、ポリエステルであり、
Yは、HまたはCH
3である)
によって表され、
R
2は、下記構造:
【化5】
(式中、Zは、O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、およびN-イソプロピルからなる群から選択され、波線記号
【化6】
は、Fに連結される結合を示す)
によって表される]
によって表される構成成分を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項11】
本発明の前記モノマーBが、下記:
【化7】
{式中、
Xは、式
【化8】
[式中、
Y=HまたはCH
3であり、
m=0~20であり、
R
3は、下記構造:
【化9】
(式中、nは、0~20の整数である)
によって表され、
R
4は、下記構造:
【化10】
(式中、
pは、0~20の整数であり、
qは、0~34の整数である)
によって表される]
によって表され、
R
2は、下記構造:
【化11】
(式中、Zは、O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、およびN-イソプロピルからなる群から選択され、波線記号
【化12】
は、Xに連結される結合を示す)
によって表される}
によって表される一般構造を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項12】
前記モノマーBが、少なくとも2個の(メタ)アクリレート末端基を有する5員もしくは6員シクロアルキル部分、または1個~9個のエステル結合によって分離されて、かつ少なくとも2個のアクリレート末端基またはメタクリレート末端基を有する5員または6員シクロアルキル部分を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項13】
前記モノマーBが、下記構造:
【化13】
(式中、
R
1とYは、請求項11に記載した、それぞれR
2およびYと同じである)
によって表される構成成分を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項14】
前記モノマーBが、下記構造:
【化14】
(式中、
rは、0~20の整数であり、
Yは、HまたはCH
3である)
によって表される構成成分、および/または下記構造:
【化15】
(式中、
mは、0~20の整数であり、
qは、0~34の整数であり、
Yは、HまたはCH
3である)
によって表される構成成分を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項15】
前記付加物が、PETMAと下記構造:
【化16】
(式中、
rは、0~20の整数であり、
Yは、HまたはCH
3である)
によって表される構成成分、および/または下記構造:
【化17】
(式中、
mは、0~20の整数であり、
qは、0~34の整数であり、
Yは、HまたはCH
3である)
によって表される構成成分を含むモノマーBとの化学反応によって形成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項16】
コア材料が、肥料、硝化作用阻害剤、脱窒作用阻害剤、ウレアーゼ阻害剤、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、フェロモン、バイオスティミュラント、生育調節剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項17】
コア材料が肥料を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の生分解性放出制御農薬組成物。
【請求項18】
請求項1記載のコーティングされた生分解性制御放出農薬組成物の調製方法であって、a)少なくとも1つの水溶性肥料化合物を含むコア材料を提供する工程、
b)モノマーAとモノマーBとの化学反応により形成された付加物を含むコーティング組成物で材料をコーティングする工程であって、前記材料が、前記コア材料上に均一で実質的に連続したポリマーフィルムを形成するコーティング組成物の層で被覆される、
前記方法。
【請求項19】
請求項1記載のコーティングされた生分解性放出制御農薬組成物の調製方法であって、
肥料顆粒をモノマーAおよびモノマーBが液体となる温度である50~100℃に加熱し、所望の温度に達した時点で、モノマーAおよびモノマーBと触媒を前記顆粒に添加する、前記方法。
【請求項20】
モノマーAを顆粒に添加し、顆粒上に均一に分散させた後、触媒を含む実質的に等モル量のモノマーBを添加するか、またはモノマーBを顆粒に添加し、顆粒上に均一に分散させた後、触媒を含む実質的に等モル量のモノマーAを添加する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は一般に、ポリチオールを含有するモノマーと、1個または複数の不飽和炭素間結合を含有するモノマーとの化学反応によって形成される付加物を含むコーティング組成物に関し、より詳細には、上記コーティング組成物でコーティングされた農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]生育培地において栄養分を供給するために放出制御肥料組成物を使用することは、周知である。放出制御肥料(CRF)は、コーティング、通常はポリマーコーティングを有する肥料顆粒と一般に定義され、それにより、肥料への透水およびその放出を制御する。栄養分は、制御された速度で放出されるため、CRFは、生育中の植物に栄養分を供給するための非常に有効な供給源であり、植物への持続供給をもたらすことが知られている。CRFの単回散布は、コーティングされていない肥料の複数回散布を要する必要な栄養分を供給することができる。
【0003】
[0003]欧州における規制前線に関する最近の開発は、制御された放出特性を有する肥料コーティング組成物が生分解性特性をさらに有することを求めている。例えば、欧州委員会は、CEマークの施肥製品のドラフトEU規則(2016年3月)において、ポリマーコーティングは、その大部分が、二酸化炭素(CO2)、バイオマスおよび水へ分解するように、物理的生物学的分解を受けることが可能であるべきであるという要件を設定するよう提唱した。
【0004】
[0004]市場において現在入手可能なCRFは、アルキド化学、架橋された植物油(GB954555A、US3223518A、US4657576A)、ポリオレフィン(US4019890A)に基づいたポリマーコーティング組成物、またはポリウレタンのような反応性モノマーに基づいたポリマーコーティング組成物(US4772490A、US5538531A)を有する。かかるコーティング組成物は、非常にゆっくりと生分解し(Terlingenら、Proceedings International Fertilizer Society 781、1~24(2016))、EUドラフト規則と一致しない。
【0005】
[0005]US7989655B2およびUS7713326B2は、放出制御肥料に関してチオールエステル組成物ならびにそれらの製造方法および使用方法について記載している。チオールエステル組成物は、ラジカル開始によって、合成不飽和エステルおよびメルカプタンから調製されると記載されている。チオールエステル組成物は、イソシアネートと反応されて、ポリチオウレタンに封入された放出制御肥料を形成する。加水分解に対するチオウレタン結合の耐性に起因して、得られたポリチオウレタンコーティングが生分解性ではないことは、当業者に公知である。
【0006】
[0006]US5645624Aは、溶媒からのポリ乳酸(PLA)の第1の層の塗布、続く、非水溶性の徐々に分解する材料、例えばワックスのトップコーティングについて記載している。土壌中に埋められていた4.5カ月後に、2層コーティングの見て分かる生分解はほとんど見られなかった。
【0007】
[0007]US9266787B2は、融液からのPLA-オリゴマーのコーティングおよび肥料顆粒上のワックストップ層を用いた類似のアプローチを行った。しかしながら、20℃~25℃での水中の2時間の栄養分放出試験は、2.3%PLAおよび1%ポリ酢酸ビニルのコートレベルで、5%~80%の尿素放出、および4.7%PLAおよび2%パラフィンワックスのコートレベルで7%~70%の尿素放出を示し、非常にばらつきが大きい。さらに、生分解は示されなかった。
【0008】
[0008]EP931036は、肥料顆粒をコーティングするための、脂肪族単位および芳香族単位(例えば、アジピン酸およびテレフタル酸を有する1,4-ブタンジオール)に基づいた水中のポリエステル分散液について記載している。例は、7日で肥料の25%~35%放出を示すが、コーティングの量が開示されていない。さらに、生分解に関する情報が付与されず、かかるポリエステルベースのコーティングが、上述のアルキドコーティングに匹敵すると予測され得る。
【0009】
[0009]US6503288B1は、生分解性のポリウレタンに封入された肥料粒子に関する方法スを開示している。しかしながら、生分解性については記載されていない。さらに、ポリウレタンコーティングは、微生物によって生分解することが困難であることが知られている(例えば、N.Mahajan、P.Gupta:「New insights into the microbial degradation of polyurethanes」、RSC Adv.、2015、5、41839を参照のこと)。さらに、コーティングのバリア特性は乏しく、水中で室温にて20時間後に、すでに肥料の11%が、12%コーティングを有する肥料から放出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0010]したがって、水分に対して十分な保護を提供して、所望の制御された栄養分放出特性を獲得する肥料顆粒上の塗布用の生分解性コーティング組成物は、農薬製品の分野において必要とされている。
【0011】
[0011]特に、コーティングまたはコーティングされた農薬組成物全体が、所望の生分解性の挙動を有し、同時に、所望の期間にわたって制御可能な放出を付与するのに所望の力学特性を有する、コーティングされた農薬組成物を製造することは望ましい。
【0012】
[0012]より詳細には、所望の生分解性の挙動および所望の期間にわたって制御された栄養分放出の挙動を有するようにコーティングされた顆粒肥料組成物を製造することは望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0013]本発明は、上述の1つまたは複数の課題を解決するかかるコーティング組成物、コーティングされた農薬組成物、CRF、およびそれらの製造方法を提供する。本発明の他の特徴および利点は、下記の説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0014】
[0014]本発明の特徴および利点は、併記の図面を参照して理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】[0015]本発明によるコーティングであるペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセトン)(PETMA)およびポリエステル-アクリレート-1の反応生成物でコーティングされた肥料顆粒による21℃での栄養分の制御された放出を示すグラフである。
【
図2a】[0016]
図1に関する生成物において使用されるポリマーフィルムの経時的なpHの変化を示すグラフである。ポリマーフィルムを、58℃で水中に浸漬させて、周囲の水のpHを、15日間、一定間隔で測定する。
【
図2b】[0017]経時的な導電率の変化を示すグラフである。ポリマーフィルムを、58℃で水中に浸漬させて、周囲の水の導電率を、15日間、一定間隔で測定する。
【
図3】[0018]本発明によるポリマーであるエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)(GDMA)およびポリエステル-アクリレート-1の反応生成物の、および本発明によるコーティングであるペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)(PETMA)およびポリエステル-アクリレート-1の反応生成物の生分解曲線を示すグラフである。生分解は、ISO 14855に従って、ホームコンポストにおいて28℃で測定される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0019]本発明の一態様において、制御された放出速度を有する生分解性コーティング組成物が提供される。本発明のコーティング組成物は、少なくとも2個のメルカプトアルカノエート基を有する構成成分を含むモノマーAと、1個または複数のエステル部分および不飽和炭素間結合を有する構成成分を含むモノマーBとの化学反応によって形成される付加物を含む。
【0017】
[0020]好ましい実施形態において、コーティング組成物は、CEN法EN 13432、ASTM D-5338.98、ISO 17556、ASTM D5988、UNI 11462、またはNF U52-001の一部であるISO 14855に従って、好ましくは20℃~28℃の周囲温度で測定された場合に、約10カ月~24カ月の期間内で少なくとも約16%の生分解を示し、ここで、コーティング組成物は、制御された放出速度を有するように適合される。本発明のコーティング組成物は、肥料用の放出制御保護層として作用するのに十分な厚さおよび配合を有する。
【0018】
[0021]本明細書中で使用する場合、「付加物」という用語は、反応物、例えば、モノマーAおよびモノマーBの構成成分から形成される化学反応生成物である。付加物は、反応物とは別個の存在を有する新たな化合物である。化学反応は、例えば、マイケル付加またはラジカル重合により進行する。
【0019】
[0022]「モノマー」という用語は一般に、本明細書中で使用する場合、マイケル付加またはラジカル重合等の化学的プロセスにおいて成長中のポリマー鎖に共有結合されるようになることが可能なモノマーを包含する。この用語はまた、ポリマー鎖の成長を達成することが可能なモノマー、ならびに鎖成長および分岐をもたらすことが可能なモノマーを包含する。「モノマー」という用語は、異なる特定のモノマー種の混合物をさらに包含する。当業者は、かかる混合物を周知しており、所望の分岐度に応じて、官能基を有するモノマーの特定の比を日常的に適用する。
【0020】
[0023]本明細書中で使用する場合、「生分解」、「生分解性の」、「生分解性」などの用語は、酸素の存在下で、微生物によって、二酸化炭素、水、および存在する任意の他の元素の鉱物塩(無機化)よび新たなバイオマスへとコーティング組成物を分解することを指す。幾つかのポリマー系に関して、生分解は、カルボン酸およびアルコールの形成下でのポリマー鎖の加水分解から始まる。
【0021】
[0024]生分解性速度は、種々の標準に従って、様々な公知の方法により測定され得る。本発明のコーティング組成物の生分解速度は、例えば、CEN法EN 13432-2000、ASTM D-5338.98(制御されたコンポスト条件下でプラスチック材料の好気性生分解を決定する標準試験方法)、DIN EN ISP ISO 17556-2012(酸素消費または発生した二酸化炭素による土壌中のプラスチック材料の最終的な好気性生分解性)、ASTM D5988-12(土壌中のプラスチック材料の好気性生分解を決定する方法)、UNI 11462-2012(土壌中で生分解可能なプラスチック材料-タイプ、要件および試験方法)、およびNF U52-001(2005年2月、農業および園芸における使用のための生分解性材料-マルチング製品-要件および試験方法)の一部であるISO 14855-2005(制御されたコンポスト条件下でのプラスチックの最終的な好気性生分解性および崩壊の決定)に従って決定される。上述の標準化された方法は全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
[0025]例えば、コーティング組成物またはコーティングされた農薬組成物(例えば、コーティングされた顆粒状肥料組成物)は、土壌中で混合される。混合物は、消費される酸素の量(生物学的酸素要求量(BOD))または発生した二酸化炭素量が決定される期間にわたって、フラスコ中で静置させる。発生したCO2が吸収される場合、BODは、例えば、呼吸計フラスコ中で一定のガス容量を維持するのに要される酸素の量を測定することによって、または容量もしくは圧力(またはその2つの組合せ)の変化を自動でまたは手動で測定することによって決定され得る。発生した二酸化炭素の量は、二酸化炭素を含まない空気を土壌の上に通すこと、続いて公知の方法によって空気の二酸化炭素含有量を決定することによって、試験物質の生分解動態に応じて間隔を置いて測定される。パーセントとして表される生分解のレベルは、BODを、理論上の酸素要求量(ThOD:分子式から算出される化学化合物を完全に酸化するのに要される酸素の最大理論量)と比較することによって、または発生した二酸化炭素の量を、理論量(ThCO2:総有機炭素(TOC)含有量から算出される化学化合物を完全に酸化した後に発生した二酸化炭素の最大理論量)と比較することによって決定される。一定レベルの生分解が、ある特定の数カ月以内で達成された場合に、試験は終結される。
【0023】
[0026]本発明のモノマーを用いて製造されるコーティング組成物は、「生分解」、「生分解性の挙動」等を示し、この用語は、少なくとも下記の基準:約10カ月~24カ月の期間内で、コーティング組成物および/またはコーティングされた組成物でコーティングされた農薬組成物の少なくとも約16%の生分解を満たす規定条件下の生分解性を指す。かかる生分解は、ISO 14855、ISO 17556、ASTM D5988、UNI 11462、またはNF U52-001等の実験方法に従って、20℃~28℃の周囲温度で測定され得る。
【0024】
[0027]好ましくは、本発明は、任意選択で20℃~28℃の温度で得られる、約10カ月~24カ月、任意選択で、約10カ月、約11カ月、約12カ月、約13カ月、約14カ月、約15カ月、約16カ月、約17カ月、約18カ月、約19カ月、約20カ月、約21カ月、約22カ月、約23カ月、または約24カ月の期間内での最低約16%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の生分解を有するコーティング組成物および/または上記コーティング組成物を有する農薬組成物を提供する。
【0025】
[0028]好ましくは、コーティング組成物、および/または上記コーティングを有する農薬組成物は、10カ月~24カ月で最低約40%の生分解、さらに好ましくは、10カ月~24カ月で最低約90%の生分解を示す。
【0026】
[0029]「約」という用語は、本明細書中で使用する場合、値の最大±10%の変動によって規定される範囲内に存する任意の値である。
[0030]本明細書中で使用する場合、「放出」という用語は、本発明によれば、コーティングされた農薬組成物から受容培地、例えば土壌または水への、材料(複数可)(例えば、栄養分、肥料)の移動を指す。本発明のモノマーを用いて調製されるコーティングは、「制御された放出速度」、「制御された放出特性」を示し、「制御された放出基準」等に従い、この用語は、少なくとも下記の基準を満たす規定条件下での放出を指す:
[0031](1)コア材料の15重量パーセント(wt%)以下が、周囲温度(20℃~28℃の温度)にて、コーティングされた農薬組成物と、水分または水との初期接触後の最初の24時間以内に、コーティングされた農薬組成物から放出されること、および
[0032](2)コア材料の75重量パーセント(wt%)以下が、周囲温度にて、コーティングされた農薬組成物と、水分または水との初期接触後の28日以内に、コーティングされた農薬組成物から放出されること、および
[0033](3)コア材料の少なくとも75重量パーセント(wt%)、任意選択で、少なくとも80wt%、または少なくとも90%が、周囲温度にて、コーティングされた農薬組成物と水分または水との初期接触後、予め決定されている時点で、好ましくは30日以上で、コーティングされた農薬組成物から放出されること。
【0027】
[0034]「長寿命」という用語は、本明細書中で用いられる場合、材料と、水分または水との初期接触と、肥料、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、フェロモン、バイオスティミュラント、生育調節剤等、およびそれらの混合物等の材料の約75重量パーセント(wt%)が放出される時間との間における30日目の時間を定義する。本発明のコーティングされた農薬組成物からの肥料等の材料の放出の決定は、好ましくは、参照によりそれらの全文が組み込まれるNEN-EN 13266(2001年11月)に従う。
【0028】
[0035]好ましくは、モノマーAは、少なくとも2個のメルカプトアルカノエート基を有する化合物を含む。好ましくは、モノマーAは、線状または分岐状アルキルポリメルカプトアルカノエート、線状または分岐状アルキレンオキシドポリメルカプトアルカノエートまたはポリエステルポリメルカプトアルカノエートを有する化合物を含む。
【0029】
[0036]概して、モノマーAのメルカプトアルカノエート基の数は、2個~8個、好ましくは、2個~6個、さらに好ましくは、2個~4個である。市販されるようなモノマーは、化合物の混合物である場合があり、モノマー混合物中のメルカプトアルカノエート基の平均数は、約3個であり得ることが理解されよう。このことは、上記混合物中の分子の約半分が、2個の数のメルカプトアルカノエート基を有し、分子の半分が、4個のメルカプトアルカノエート基を有することを意味する。
【0030】
[0037]モノマーAの分子量は、好ましくは、200g/モル~2000g/モル、好ましくは200g/モル~1000g/モルである。好ましくは、モノマーAは、セ氏(C)60度未満、好ましくは50℃未満の融点を有する。
【0031】
[0038]好ましくは、本発明のモノマーAは、下記構造:
【0032】
【0033】
[式中、
Dは、下記構造:
【0034】
【0035】
(X1は、炭素数1~20の範囲の線状または分岐状脂肪族炭素鎖である)
によって表され、
R1は、下記構造:
【0036】
【0037】
(式中、Z=O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-イソプロピルである)
によって表される]
によって表される。
【0038】
[0039]波線記号
【0039】
【0040】
は、直接的にまたは間接的にDに連結される結合を示す。任意選択で、Dは、R1に直接連結される。任意選択で、Dは、R1に間接的に結合される。「間接的に」という用語は、この文脈では、DとR1との間に少なくとも1つのさらなる炭素が存在することを意味する。
【0041】
[0040]R1は概して、炭素原子2~36個および酸素原子0個~5個、窒素原子またはアルキル化窒素原子0個~3個、または硫黄原子0個~3個を含む。好ましくは、R1は、炭素原子2~10個および酸素原子または窒素原子0個~1個を含む。
【0042】
[0041]好ましくは、モノマーAは、下記構造:
【0043】
【0044】
によって表される市販のエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)(GDMA)を含む。
[0042]好ましくは、モノマーAは、下記構造:
【0045】
【0046】
によって表される市販のトリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)(TMPTMA)を含む。
[0043]好ましくは、モノマーAは、下記構造:
【0047】
【0048】
によって表される市販のペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)(PETMA)を含む。
[0044]好ましくは、モノマーAは、下記構造:
【0049】
【0050】
によって表される市販のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PETMP)を含む。
[0045]好ましくは、モノマーAは、下記構造:
【0051】
【0052】
によって表される市販のトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(TMPTMP)を含む。
[0046]好ましくは、モノマーAは、下記構造:
【0053】
【0054】
によって表される市販のエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(GDMP)を含む。
[0047]好ましくは、本発明のモノマーBは、エステル部分および不飽和炭素間結合を有する構成成分を含む。好ましくは、本発明のモノマーBは、少なくとも2個のエステル部分を有する構成成分を含む。概して、モノマーBは、モノマーAと一緒にポリマーを提供するために少なくとも2個の不飽和炭素環二重結合を有する構成成分を含む。任意選択で、モノマーBの構成成分の不飽和炭素間結合は、(メタ)アクリレートおよび/またはマレエート官能基を含む。
【0055】
[0048]概して、モノマーBの不飽和基の数は、2個~8個、好ましくは、2個~6個、さらに好ましくは、2個~4個である。市販されるようなモノマーは、化合物の混合物である場合があり、モノマー混合物中の不飽和基の平均数は、約2.5個であり得ることが理解されよう。このことは、上記混合物中の分子の約半分が、2個の数の不飽和基を有し、分子の半分が、3個の不飽和基を有することを意味する。
【0056】
[0049]概して、モノマーBのエステル基の数は、2個~50個、好ましくは、2個~20個、さらに好ましくは、2個~8個である。モノマーBの分子量は、好ましくは、200g/モル~5000g/モル、好ましくは、200g/モル~2000g/モルである。好ましくは、モノマーBは、60℃未満、好ましくは、50℃未満の融点を有する。
【0057】
[0050]好ましくは、本発明のモノマーBは、下記:
【0058】
【0059】
[式中、
Fは、下記構造:
【0060】
【0061】
(式中、
X2は、任意選択で、1)不飽和炭素間結合(複数可)、アミド結合(複数可)、尿素結合(複数可)、ウレタン結合、エステル結合(複数可)、カーボネート結合(複数可)、エーテル結合、またはそれらの混合物を含有し得る、C2~C36の範囲の線状、分岐状、または脂肪族ポリ酸、および2)不飽和炭素間結合(複数可)、アミド結合(複数可)、尿素結合(複数可)、ウレタン結合(複数可)、カーボネート結合(複数可)、エーテル結合を含有し得る、C2~C36の範囲の線状、分岐状、または脂肪族ポリオールの化学反応によって形成されるか、または炭素数4~8を有するラクトンの化学反応によって形成されるか、または炭素原子2~8個を有する線状または分岐状ヒドロキシアルカン酸の化学反応によって形成されるオリゴまたはポリエステルであり、
Yは、HまたはCH3である)
によって表され、
R2は、下記構造:
【0062】
【0063】
(式中、Z=O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-イソプロピルである)
によって表される]
によって表される一般構造を有する構成成分を含む。
【0064】
[0051]波線記号
【0065】
【0066】
は、直接的にまたは間接的にFに連結される結合を示す。任意選択で、Fは、R2に直接連結される。任意選択で、Fは、R2に間接的に結合される。「間接的に」という用語は、この文脈では、FとR2との間に少なくとも1つのさらなる炭素が存在することを意味する。
【0067】
[0052]好ましくは、モノマーBは、下記構造:
【0068】
【0069】
[式中、
nは、1よりも大きい整数、任意選択で、1~50の整数であり、
Yは、HまたはCH3であり、
R1は、下記構造:
【0070】
【0071】
(式中、Z=O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-イソプロピルである)
によって表される]
によって表される官能基化されたカプロラクトンを有する構成成分を含む。
【0072】
[0053]波線記号
【0073】
【0074】
は、R1と、官能基化されたカプロラクトンとの間の結合を示す。
[0054]好ましくは、モノマーBは、エステル部分、シクロペンタンおよび/またはシクロヘキサン部分、および不飽和炭素間結合を有する構成成分を含む。
【0075】
[0055]好ましくは、モノマーBは、少なくとも2個の(メタ)アクリレート末端基を有する5員もしくは6員シクロアルキル部分を有するか、または1個~9個のエステル結合によって分離されて、かつ少なくとも2個のアクリレートもしくはメタクリレート末端基を有する5員もしくは6員シクロアルキル部分を有する構成成分を含む。
【0076】
[0056]好ましくは、本発明のモノマーBは、下記によって表される一般構造:
【0077】
【0078】
{式中、
Xは、式
【0079】
【0080】
[式中、
Y=HまたはCH3であり、
mは、0~20、好ましくは、1~10の整数であり、
R3は、下記構造:
【0081】
【0082】
(式中、nは、0~20、好ましくは、1~4の整数である)
によって表され、
R4は、下記構造:
【0083】
【0084】
(式中、
pは、0~20、好ましくは、1~4の整数であり、
qは、0~34の整数である)
によって表される]
によって表され、
R2は、下記構造:
【0085】
【0086】
(式中、Z=O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-イソプロピルである)
によって表される}
を有する構成成分を含む。
【0087】
[0057]R2の波線記号
【0088】
【0089】
は、直接的にまたは間接的にXに連結される結合を示す。任意選択で、Xは、R2に直接連結される。任意選択で、Xは、R2に間接的に結合される。「間接的に」という用語は、この文脈では、XとR2との間に少なくとも1つのさらなる炭素が存在することを意味する。
【0090】
[0058]一実施形態において、モノマーBは、下記構造:
【0091】
【0092】
(式中、
rは、0~20、好ましくは、1~10の整数であり、
Y=HまたはCH3である)
によって表される構成成分を含む。
【0093】
[0059]別の実施形態において、モノマーBは、下記構造:
【0094】
【0095】
(式中、
mは、0~20、好ましくは、1~10の整数であり、
qは、0~34、好ましくは、1~4の整数であり、
Y=HまたはCH3である)
によって表される構成成分を含む。
【0096】
[0060]一実施形態において、本発明は、下記構造:
【0097】
【0098】
(式中、
rは、0~20、任意選択で、1~10の整数であり、
Y=HまたはCH3である)
によって表されるようなPETMAとモノマーBとの化学反応によって形成される付加物を含むコーティング組成物を提供する。波線記号
【0099】
【0100】
は、PETMA中のメルカプトアセテート基と、モノマーB中の不飽和との間に形成される結合を示す。
[0061]別の実施形態において、本発明は、下記構造:
【0101】
【0102】
(式中、
mは、0~20、任意選択で、1~10の整数であり、
qは、0~34、任意選択で、1~4の整数であり、
Y=HまたはCH3である)
によって表されるようなPETMAとモノマーBとの化学反応によって形成される付加物を含むコーティング組成物を提供する。波線記号
【0103】
【0104】
は、PETMA中のメルカプトアセテート基と、モノマーB中の不飽和との間に形成される結合を示す。
[0062]一実施形態において、モノマーA中のメルカプトアルカノエート基およびモノマーB中の不飽和基は、0.5:1.5~1.5:0.5、好ましくは、0.9:1.1~1.1:0.9、例えば1:1のようなモル比で存在する。化学量論的ではない場合、例えば0.9:1.1のような過剰な不飽和基が好ましい。
【0105】
[0063]好ましくは、本発明のモノマーBは、下記によって表される一般構造:
【0106】
【0107】
{式中、
Gは、式:
【0108】
【0109】
[式中、
Y=HまたはCH3であり、
R5は、
【0110】
【0111】
(式中
nは、0~20の整数であり、
sは、2~36の整数である)
であり、
tは、0~20、任意選択で、1~10の整数であり、
X3=O、NH、S、CH2であり、
R6は、下記構造:
【0112】
【0113】
(式中、
R6の波線記号
【0114】
【0115】
は、R6とX3との間に形成される結合を示す)
によって表される]
によって表され、
R2は、下記構造:
【0116】
【0117】
(式中、Z=O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-イソプロピルである)
によって表される}
を有する構成成分を含む。
【0118】
[0064]R2の波線記号
【0119】
【0120】
は、直接的にまたは間接的にGに連結される結合を示す。任意選択で、Gは、R2に直接連結される。任意選択で、Gは、R2に間接的に結合される。「間接的に」という用語は、この文脈では、GとR2との間に少なくとも1つのさらなる炭素が存在することを意味する。
【0121】
[0065]好ましくは、本発明の付加物は、GDMA、TMPTMA、PETMA、PETMP、TMPTMP、GDMPおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される構成成分を含むモノマーAと、モノマーBとの化学反応によって形成される。例えば、付加物は、PETMAを含むモノマーAおよび本発明の実施形態のいずれかに記載のモノマーBの反応によって形成される。
【0122】
[0066]好ましくは、モノマーBは、モノマー種の混合物を含む。例えば、モノマーBは、5員または6員シクロアルキル部分を含むモノマーBおよび5員または6員シクロアルキル部分を含まない別のモノマーB種の混合物を含み、即ち、モノマーBは、上記で定義するような同じか、または異なる置換基を有する2個以上のモノマーBの混合物であり得る。
【0123】
[0067]モノマーAおよびモノマーBを含むコーティングを調製するための組成物は、概して1個~5個の不飽和基および約100g/モル~2000g/モル、好ましくは、150g/モル~1000g/モルの分子量を有する不飽和化合物をさらに含んでもよい。このさらなるモノマーは、可塑剤として作用してもよく、前記モノマーの一方の融点を下げる。
【0124】
[0068]さらなるモノマーの例として、不飽和または修飾された不飽和植物油(例えば、ダイズ油、アマニ油、ヒマシ油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、魚油、キリ油、綿実油、キャノーラ油、菜種油、ヒマワリ油等)、アルケンおよびポリエン、アルキンおよびポリイン、線状または分岐状アルキル-ジ、-トリまたは-テトラ(メタ)アクリレート、シクロアルキル-ジ、-トリまたは-テトラ-(メタ)アクリレート、線状または分岐状アルキレンオキシド-ジ、-トリまたは-テトラ(メタ)アクリレート、ジアルキルアセチレンジカルボキシレート、1個、2個、3個またはそれ以上の(メタ)アクリレート基で修飾されたヒマシ油、1個、2個、3個もしくはそれ以上のビニルまたはアリル基で修飾されたヒマシ油、2個以上の(メタ)アクリレート、ビニルまたはアリル基を有する脂肪族ポリエステル、2個以上の(メタ)アクリレート、ビニルまたはアリル基を有する脂肪族コポリエステル、2個以上の(メタ)アクリレート、ビニルまたはアリル基を有する脂肪族ポリエーテル、任意選択でアセテート、プロパノエート、ブタノエート、ペンタノエート、ヘキサノエート、オクタノエート、デカノエート、1-ウンデセノエート、ドデカノエート、テトラデカノエート、オレエート、パルミテート、ステアレート、ベヘネート、(メタ)アクリレート、ビニルまたはアリル基で修飾されるマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、アセチレン酸等の不飽和モノマーを含有するポリエステルが挙げられる。
【0125】
[0069]本発明の別の態様において、先述の実施形態のいずれかによる付加物を製造する方法が提供される。
[0070]「重合」という用語は、先述の実施形態のいずれかによるモノマー化合物を化学的に反応させて、ポリマー鎖を形成する方法を指す。重合方法のタイプは、多種多様な方法から選択され得る。かかる方法として、フリーラジカル重合法およびマイケル付加による反応が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
[0071]重合プロセスから生じる「ポリマー」は、ホモポリマーおよび/または非ホモポリマーを包含する。「非ホモポリマー」という用語は、2個以上の重合性モノマーから形成されるポリマーを指し、ホモポリマーではない本質的に全てのポリマーを包含する。
【0127】
[0072]一実施形態において、モノマーAは、ラジカル重合によって、実施形態のいずれかに従って、モノマーBと反応して、線状ポリマーまたは架橋ネットワークを形成する。「ラジカル重合」等の用語は、本発明のモノマーが、例えば熱開始剤または光開始剤によって誘発されるラジカル重合の化学的プロセスにおいて重合され得ることを示す。当業者は、かかる化学プロセスを認識しており、ラジカル重合法により、本発明のモノマーを日常的にラジカル重合することができる。例えば、参照によりその全体が組み込まれるThiol-Ene Click Chemistry;Charles E. Hoyleand Christopher N.Bowman;Angew.Chem.Int.Ed.,2010、49、1540~1573を参照のこと。
【0128】
[0073]「ラジカル開始剤」は、ラジカル種を生成することが可能な化合物であり、それにより、ラジカル反応を促進する。ラジカル開始剤は通常、低い結合解離エネルギーを有する結合を保有する。ラジカル開始剤は、ポリマー合成において特に有用である。
【0129】
[0074]本発明のラジカル開始剤として、過酸化ジラウロイル、過酸化ジベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、ペルオキシ安息香酸tert-アミル、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキサン、ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸tert-ブチル、過酸化tert-ブチル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、過炭酸tert-ブチルペルオキシイソプロピル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化シクロヘキサノン、過酸化ジクミル、過酸化2,4-ペンタンジオン、過酢酸、過硫酸カリウム等が挙げられる。
【0130】
[0075]本発明のラジカル開始剤はまた、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、ベンゾフェノン(BP)、チオキサントン(TX)、カンファーキノン(CQ)、ジベンゾスベレノン、アルファ-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、アシルホスフィンオキシド、オキシムエステル、アルファアミノケトン、ベンジルジメチルケタール等を包含する。
【0131】
[0076]「マイケル付加」または「マイケル反応」という用語は、カルボアニオンまたは別の求核試薬の、アルファ、ベータ不飽和カルボニル化合物(求電子試薬)への求核付加を一般的に指す。例えば、この用語は、-SH官能基を有する化合物が、炭素間二重結合に付加するチオ-マイケル付加を指す。
【0132】
[0077]好ましくは、本発明の付加物は、触媒の存在下で形成され、ここで、化合物Aは、マイケル付加によって化合物Bと反応して、線状ポリマーまたは架橋ネットワークを形成する。当業者は、マイケル付加反応を認識しており、この方法により本発明のモノマーを日常的に重合することができる。例えば、参照によりその全体が組み込まれるThe Thiol-Michael Addition Click Reaction:A Powerful and Widely Used Tool in Materials Chemistry;Devatha P.Nair et al.、American Chemical Society、2013を参照のこと。
【0133】
[0078]マイケル付加によるモノマーAとモノマーBとの化学反応によって形成される先述の実施形態のいずれかによる付加物は、これが、不飽和炭素間結合の、ポリビニルアルコールではない炭素主鎖ポリマーへの単独重合のリスクを回避するため好適である。当業者に公知であるように、炭素主鎖ポリマーは、ポリビニルアルコールを除いて、生分解するのが困難である。さらに、当業者に公知であるように、マイケル付加は、酸化的条件下で生分解するのが困難であることが知られているジスルフィド結合の形成のリスクを回避する。任意選択で、マイケル付加反応は、触媒の存在下で行われる。任意選択で、触媒として、下記:1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノン-5-エン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン、1-ペンチルアミン、1-ヘキシルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、イミダゾール、ジメチル(フェニル)ホスフィン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンが挙げられる。
【0134】
[0079]本発明の別の態様において、コーティングされた農薬組成物が提供される。
[0080]本明細書中で使用する場合、「農薬組成物」という用語は、殺虫剤、除草剤、肥料、生育調節剤、フェロモン、バイオスティミュラント、ダニ駆除剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤等を含む生物学的に活性な成分または植物保護製品を包含する。農薬組成物は、害虫および疾患を制御するのに、また農業において植物の生育を促進するのに一般的に使用される。
【0135】
[0081]本明細書中で使用する場合、「コーティングされた農薬組成物」等の用語は、農薬組成物を、水分または水との接触時に肥料等のその成分または材料の放出速度を低減させるために、即ち、制御された放出速度を示すために、本発明のいずれかの実施形態によるコーティング組成物で覆うことによって封入される農薬組成物を指す。
【0136】
[0082]一実施形態において、生物学的に活性な成分または植物保護製品は、コーティングの実質的な生分解後にのみ活性になり得る。
[0083]本発明のコーティングされた農薬組成物は、規定領域において、植物生育栄養分などのコーティングされた農薬組成物を植物に散布することを目標とするのに使用される顆粒、錠剤または他の形態などの様々な成形された製剤であり得る。好ましくは、本発明のコーティングされた農薬組成物は、同じ製剤または異なる製剤の混合物であり得る。
【0137】
[0084]好ましくは、本発明は、肥料の顆粒製品上に塗布される。
[0085]一実施形態において、コーティングされた農薬組成物は、コーティング組成物で封入された材料を含み、ここで、コーティング組成物は、少なくとも2個のメルカプトアルカノエート基を有する構成成分を含むモノマーAと、1個または複数のエステル部分、および不飽和炭素間結合を有する構成成分を含むモノマーBとの化学反応によって形成される付加物を含む。材料を封入するコーティング組成物は、本発明によれば、放出制御保護層として作用するのに、また生分解性の挙動を有するのに十分な厚さおよび配合を有する。
【0138】
[0086]一実施形態において、コーティングされた農薬組成物は、コーティング組成物で封入された材料を含み、ここで、コーティング組成物は、少なくとも2個のメルカプトアルカノエート基を有する構成成分を含むモノマーAと、1個または複数のエステル部分、および不飽和炭素間結合を有する構成成分を含むモノマーBとの化学反応によって形成される付加物を含む。任意選択で、モノマーBは、a)1個または複数のエステル部分、b)シクロペンタンおよび/またはシクロヘキサン部分、およびc)不飽和炭素間結合を有する構成成分を含む。任意選択で、付加物は、本発明のいずれかの実施形態に従って、モノマーAとモノマーBとの反応によって形成される。任意選択で、モノマーAは、ラジカル重合により、またはマイケル付加により、モノマーBと反応する。
【0139】
[0087]一実施形態において、コーティングされた農薬組成物は、農業用活性材料およびコーティング組成物を含み、ここで、コーティング組成物は、農業用活性材料を封入し、コーティング組成物は、少なくとも2個のメルカプトアルカノエート基を有する構成成分を含むモノマーAと、エステル部分、および不飽和炭素間結合を有する構成成分を含むモノマーBとの化学反応によって形成される付加物を含み、コーティング組成物および/またはコーティングされた農薬組成物は、水分または水への材料の初期曝露の日から30日以上の日数にわたって、材料の制御された放出速度を示し、材料の初期重量の少なくとも75wt%が、コーティングされた農薬組成物から放出される。
【0140】
[0088]一実施形態において、本発明のコーティング組成物および/またはコーティングされた農薬組成物は、材料の制御された放出速度を示し、ここで、材料の15wt%以下が最初の24時間以内に、材料の75wt%以下が28日以内に、材料の少なくとも75wt%が30日以上で、20℃~80℃の温度にて、好ましくは25℃にて(好ましくは、NEN-EN 13266に従って)、農薬組成物と、水分または水との初期接触後に放出され、コーティング組成物は、好ましくは、20℃~28℃の周囲温度にて、好ましくは28℃にて、試験法ISO 14855、ISO 17556、ASTM D5988、UNI 11462、またはNF U52-001によって測定された、約10カ月~24カ月の期間内の少なくとも約16%の生分解を有する。
【0141】
[0089]任意選択で、コーティング組成物および/またはコーティングされた農薬組成物は、任意選択で20℃~28℃の温度で得られる、約10カ月~24カ月、任意選択で、約10カ月、約11カ月、約12カ月、約13カ月、約14カ月、約15カ月、約16カ月、約17カ月、約18カ月、約19カ月、約20カ月、約21カ月、約22カ月、約23カ月、または約24カ月の期間内の約16%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の生分解を有する。
【0142】
[0090]一実施形態において、農業用活性材料は、少なくとも部分的に水溶性であり、浸透作用により組成物層を通って水等の培地を材料へ輸送することを保証する。材料の「浸透作用」輸送は、浸透圧の蓄積をもたらす、より高い溶質濃度の方向への、組成物を通っての水の正味の動きの結果として起きる。浸透圧は、コーティングされた農薬組成物からの溶液の制御された放出を可能にし、材料全てが放出されるまで続く。したがって、水溶解性材料は、一旦溶解されると、コーティングされた農薬組成物から輸送される。
【0143】
[0091]本明細書中で使用する場合、「可溶性」という用語は、所定の温度にて、所定量の流体中に実質的に溶解させることができ、2g/Lを超える溶解度を有する材料を指す。一実施形態において、本発明の流体は、水または材料を実質的に溶解することが可能な任意の液体溶媒から選択される。
【0144】
[0092]本明細書中における使用に適した例示的な材料は、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、尿素、硝酸アンモニウム、硫酸一カリウム、リン酸アンモニウム、過リン酸塩、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化カリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ドロマイト等の肥料またはこれらに肥料の混合物を配合することから得られる任意の肥料である。任意選択で、本発明の材料は、様々な周知の標準的なNPKまたはEuropean Community Regulation(EC) No.2003/2003に記載されるもののような他の肥料顆粒を含む。あるいは、材料は、水溶性塩または他のかかる材料、例えば、ナトリウム塩またはカルシウム塩であり得る。また、糖等の非活性材料および他の顆粒材料は、望ましい場合には、本明細書中のコア材料として用いられてもよい。
【0145】
[0093]一実施形態において、材料は、少なくとも1個の二次栄養分および/または微量栄養分を含む。適切な二次栄養分として、カルシウム、マグネシウム、硫黄、ナトリウムおよびそれらの混合物が挙げられる。キレート形態またはキレートされていない形態の適切な微量栄養分として、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ホウ素、コバルト、塩素、モリブデンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0146】
[0094]一実施形態において、材料は、1種または複数の硝化作用阻害剤、脱窒作用阻害剤、ウレアーゼ阻害剤、バイオスティミュラント、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、植物生育調節剤、フェロモン、動物忌避剤、昆虫忌避剤またはそれらの混合物を含む。
【0147】
[0095]概して、材料は、約2g/L~約1200g/L、好ましくは、約120g/L~450g/Lの溶解度を有する。任意選択で、材料は、製品のより良好な分布のために、約0.35mm~約6mm、好ましくは、約0.72mm~4mmの直径を有する顆粒として成形される。
【0148】
[0096]本明細書中で使用する場合、「溶解度」という用語は、所定の温度にて、所定量の水等の流体中に溶解させることができる本発明の材料の最大量を指す。例えば、所定の温度での材料の溶解度の尺度は、飽和溶液を形成するのに流体1リットル中にどれくらい多くのグラムが溶解するかどうかである。
【0149】
[0097]実施形態のいずれかによるコーティング組成物は、多数の方法によって材料(例えば、顆粒肥料)に塗布され得る。例えば、一実施形態において、コーティングプロセスは、例えばWursterプロセスにおけるパグミル、コーティングドラムまたは流動床のいずれかで実施される。
【0150】
[0098]肥料顆粒等の材料上に塗布されるコーティング(複数可)の(全体的な)厚さは概して、約5μm~110μm、好ましくは、約25μm~90μmである。通常、これらの値は、それぞれ、約1重量パーセント(pph)~約20重量パーセント(pph)、および約4重量pph~15重量pphの塗布されたコーティング材料の量に相当する。
【0151】
[0099]別の実施形態において、コーティングされた農薬組成物を調製する方法が提供される。上記方法は、a)材料、任意選択で、少なくとも1種の水溶性肥料化合物を含む材料を供給するステップと、b)好ましくは、材料が、コア材料上に一様な実質的に連続的なポリマーフィルムを形成するコーティング組成物の層でコーティングされ、任意選択で、材料(例えば、顆粒肥料)全ての少なくとも約90%がフィルムでコーティングされるように、材料を本発明の任意の実施形態によるコーティング組成物でコーティングすステップとを含み、コーティング組成物および/または農薬組成物は、材料の制御された放出を示し、本発明の規定基準に従って生分解性である。
【0152】
[00100]一実施形態において、本発明は、先述の実施形態のいずれかによる2種以上のコーティングされた農薬組成物(例えば、コーティングされた顆粒肥料組成物)および約50℃~約160℃の範囲の溶融温度を有するC1~C4ポリアルキレンオキシドを含む熱可塑性ポリマー結合剤を含む、コーティングされた農薬製品を提供し、ここで、コーティングされた農薬組成物は、機械的に安定な成形された放出制御製品中で、結合剤によって一緒に保持(結合)され、上記の成形された放出制御製品は、水との接触後に、別々の顆粒へと分散される。
【0153】
[00101]一実施形態において、C1~C4ポリアルキレンオキシドは、C1~C4ホモポリマー、C1~C4ポリアルキレンオキシドブロック共重合体またはタ-ポリマー、またはポリオレフィン-C1~C4ポリアルキレンオキシドブロック共重合体である。
【0154】
[00102]任意選択で、製品は、約0.1重量パーセント~40重量パーセントの結合剤を含む。任意選択で、結合剤は、約50℃~100℃の範囲の溶融温度を有する。
[00103]一実施形態において、結合剤として、ポリエチレンオキシドホモポリマー、ポリエチレンオキシド-ブロック-ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリエチレンオキシド-ブロック-ポリプロピレンオキシド-ブロック-ポリエチレンオキシドターポリマー、ポリプロピレンオキシド-ブロック-ポリエチレンオキシド-ブロック-ポリプロピレンオキシドタ-ポリマー、ポリエチレン-ブロック-ポリエチレンオキシド共重合体、ポリエチレン-ブロック-ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリプロピレン-ブロック-ポリエチレンオキシド共重合体、ポリプロピレン-ブロック-ポリプロピレンオキシド共重合体またはそれらの混合物が挙げられる。ブロック共重合体は、湿潤特性を示すホモポリマーを上回るさらなる利点を有し、それは、土壌中の水吸収の速度を高める。
【0155】
[00104]一実施形態において、少なくとも1つの他の構成成分は、コーティングされた農薬組成物(例えば、コーティングされた肥料顆粒)および結合剤と混合され、他の構成成分は、水吸収性ゲル、硝化作用阻害剤、ウレアーゼ阻害剤、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、フェロモン、動物忌避剤、昆虫忌避剤またはそれらの混合物を含む。
【0156】
[00105]本発明の成形された栄養分製品は、各種方法により調製され得る。例えば、上記方法は、本発明の実施形態のいずれかによるコーティングされた農薬組成物(例えば、コーティングされた顆粒肥料)を供給するステップと;農薬組成物を、約50℃~100℃の範囲の温度に予熱するステップと;上記農薬組成物を、予熱された約50℃~約160℃の範囲の融解温度を有するC1~C4ポリアルキレンオキシドを含む熱可塑性ポリマー結合剤と混合して、融解物を形成するステップであって、混合物が、約0.1重量パーセント~40重量パーセントの結合剤を含む、ステップと;混合物を型に導入して、混合物を型中で冷却して、成形された植物生育栄養分製品を形成するステップであって、コーティングされた植物生育栄養分顆粒が、機械的に安定な成形された放出制御植物生育栄養分製品中で、結合剤によって一緒に保持される、ステップとを含み、上記の成形された生分解性で放出制御植物生育栄養分製品は、US8399020B2に記載されるように、水との接触後に、別々の顆粒へと迅速に分散される。
【0157】
[00106]本発明のモノマーAおよびモノマーBは、市販されているか、または当業者によって日常的に製造することができる。下記の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、本発明を下記の実施例に限定するとは意図しない。
【実施例】
【0158】
肥料顆粒をコーティングする方法の一般的な説明
[00107]肥料顆粒を、回転ドラムコーター中で50℃~100℃に加熱する。温度は、モノマーが液体であるように選択される。所望の温度に達すると、モノマーA(チオール)をシリンジで顆粒床に添加して、その後、顆粒床を約2分間回転させて、顆粒上にモノマーAを均質に分布させる。次に、触媒を含むモノマーB(エン)を等モル量で添加する。3分~4分以内で、スルフィド含有ポリエステルコーティング層が形成される。2種のモノマーの添加は、所望のコーティング厚が得られるまで継続する。
【0159】
実施例1および実施例2:ポリエステル-アクリレート1およびPETMAを使用したコーティングされた肥料顆粒
[00108]まず、ポリエステルアクリレートを、市販のポリエステルジオールから調製した。
【0160】
[00109]ポリエステル-ジオール-1(モノマーB)は、下記構造:
【0161】
【0162】
によって表されるような1,4-シクロヘキサンジメタノールならびにアジピン酸(q=4)、グルタル酸(q=3)およびコハク酸(q=2)の混合物のポリエステルである。ポリエステル-ジオール-1は、末端水酸基を有し、K-Pol 8211という商品名で市販されており、King Industries Ltd.によって供給される。下付きのmは、K-Pol 8211の平均分子量が280g/モルであるように変化する。
ポリエステル-アクリレート1の調製
[00110]ポリエステル-アクリレート-1は、下記の手順に従って、ポリエステル-ジオール-1を、塩化アクリロイルと反応させることによって調製された:ポリエステル-ジオール-1(50グラム、0.1785モル)を、1000mLの三ツ口フラスコに入れて、クロロホルム(300mL)で希釈して、続いて、トリエチルアミン(45グラム、0.466モル)を溶液に添加した。塩化アクリロイル(35.5グラム、0.3928モル)を滴下漏斗に入れて、クロロホルム(10mL)で希釈した。フラスコを氷浴で0℃に冷却して、窒素雰囲気下で攪拌した。塩化アクリロイル溶液を、攪拌したポリエステル-ジオール-1溶液に0℃にて滴加した。塩化アクリロイル溶液の添加後、混合物を一晩攪拌しながら、混合物を室温に到達させた。得られた懸濁液を、濾紙に通して濾過して、濾液を、ロータリーエバポレーターで、真空中で150mLの容量にまで濃縮した。濃縮液を、ビーカー中で攪拌下、ヘプタン600mLに滴加して、茶色い不純物を沈殿させた。ポリエステルアクリレート1を含有するヘプタン溶液を、減圧下で、ポア3グラスフィルターに通して濾過した。沈殿物をヘプタン25mLで洗浄して、濾液を真空中で濃縮した。濾液をクロロホルム200mL中に溶解して、分液漏斗に移した。有機層をブライン(250mL)で1回、1M HCl(250mL)で1回、および1M NaOH(250mL)で1回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、続いて、濾過して、真空中で乾燥させた。帯黄色油状物質が得られ、それは部分的に、白色固体に結晶化した。
肥料顆粒のコーティング
[00111]ポリエステル-アクリレート-1を、流体になるまで、ホットプレート上で約50℃に加熱し、その後、ポリエステル-アクリレート-1は、バッチの調製中、流体のままであった。ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)(PETMA)をホットプレート上で約50℃にて融解させた。触媒である1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)を、4.0Mの濃度になるようにジクロロメタン中に溶解させた。肥料顆粒750gのバッチに関して、PETMA 6.7gおよび等モル量のポリエスエステル-アクリレート-1 12.0gを各コーティング層に使用した。肥料顆粒750gのバッチを、回転ドラムコーター中で80℃に加熱した。シリンジで、PETMAを顆粒床に添加して、その後、顆粒床を約2分間回転させて、顆粒上に均質に分布させた。4.0M DBN触媒溶液を、ポリエステル-アクリレート1と混合した。次に、ポリエステル-アクリレート-1/DBN混合物を添加した。DBN触媒投与は、最初のコーティング層から次の層まで減少させた:第1の層:4.0M DBN 635μl(15mg/g(コーティング))、層2~層8:4.0M DBN触媒(4.5mg/g(コーティング))。3分~4分以内で、スルフィド含有ポリエステルコーティング層が形成され、プロセス中に幾分粘着性であった顆粒床は、再び流動性になった。2種のモノマーの添加は、約100μmの所望のコーティング厚が得られるまで続けた。顆粒は、15分間、後硬化された後、室温に冷却した。
制御された放出特性を決定する、コーティングされた肥料顆粒の栄養分浸出試験
[00112]水-浸出試験に関して、コーティングされた肥料の試料20gを、21℃で脱イオン水(導電率<0.03mS/cm)400mL中に入れる。ある特定の期間で、上清溶液の導電率を測定し、水を新鮮な水と取り換えた。測定した導電率に基づいて、栄養分の濃度を算出した。
【0163】
[00113]コーティングされた肥料顆粒の2つの試験試料のセットを、ポリエステル-アクリレート-1およびPETMAを使用して、実施例に記載する手順に従って調製した。第1の試料のコーティング量は、15重量部パーセント(pph)であり(実施例1)、第2の試料に関しては、20pphであった(実施例2)。これらの試料は、21℃で水-浸出試験に従って分析し、栄養分の累積放出を
図1に付与し、ポリエステル-アクリレート-1/PETMAでコーティングされた肥料顆粒に関しては、60日後に、15pph試料は、栄養分の90%を放出したのに対して、20pph試料は、栄養分の約80%を放出したことを示す。
【0164】
[00114]実施例3
コーティング組成物の自立型フィルムの調製
[00115]ポリエステル-アクリレート-1(2,054g、5,298ミリモル)を、クロロホルム中のDBNの0.05M溶液0.5mlの添加によって、それが流体になるまで、ホットプレート上で約50℃に加熱した。ポリエステル-アクリレート-1および触媒溶液の混合物を、モノマーにおける触媒の均質な分布のためにしばらく攪拌した。次に、50℃で予め融解させたPETMA(1,144g、2,649ミリモル)を、ポリエステル-アクリレート-1に添加して、モノマー混合物を周囲温度で1分間攪拌した。最終的な混合物を、その半分を異なるカップに移すことによって、2つの部分に分けた。カップはともに、ホットプレートに移して、80℃で約1時間、そこで維持した。
コーティングフィルムの加水分解:生分解における第1のステップ
[00116]コーティング組成物のポリマーフィルムを、上記実施例に従って、ポリエステル-アクリレート-1およびPETMAをベースとして調製した。コーティングフィルムの加水分解速度を検査するために、ポリマーフィルムを58℃で水中に浸漬させて、周囲の水の導電率およびpHを、15日間、一定間隔で測定した。
図2aは、pHの変化を示し、
図2bは、導電率の変化を示す。
図2aおよび
図2bから分かるように、加水分解に起因して、pHは下がり、導電率は上がる。加水分解は、放出される酸によって自己触媒されるため、加水分解は、時間が経つと加速することに留意されたい。水中で2カ月後、フィルムは完全に分解された。
コーティング組成物の生分解性
[00117]コーティング組成物のポリマーフィルムを、上記実施例3に従って、それぞれ、ポリエステル-アクリレート-1およびPETMAをベースとして、ポリエステル-アクリレート-1およびGDMAをベースとして調製した。生分解は、ISO 14855に従って、家庭用コンポスト条件下で、28℃にて試験した。生分解のパーセントは、試験材料によって生成される二酸化炭素の量対試験材料から生成され得る二酸化炭素の最大理論量の比によって付与される。
図3は、両方の試料の生分解の線形進行を示す。比較のため、標準アルキドコーティングの生分解を、ISO 17556に従って、20℃および25℃にて土壌中で、ならびにISO 14855に従って、58℃にて産業用コンポスト条件下で試験した。結果(表2)は、標準アルキドコーティングと比較して、本発明のコーティング組成物に関して、生分解の改善を明らかに示している。
表2.コーティング組成物の生分解
【0165】
【0166】
他の実施形態
[00118]上述の詳細な説明は、本発明を実施する際に当業者を補助するよう提供される。しかしながら、本明細書中に記載され、また本明細書中で特許請求される本発明は、これらの実施形態が、本発明の幾つかの態様の例と意図されるため、本明細書中に開示する特定の実施形態によって、範囲が限定されるべきではない。上述の実施形態は、実施することができ、本発明に記載される他の開示した実施形態と組み合わせることができる。任意の等価な実施形態は、本発明の範囲内であると意図される。実際に、本発明の様々な修飾は、本明細書中に示され、また本明細書中に記載されるものに加えて、先述の説明から当業者に明らかとなり、本発明の様々な修飾は、本発明の発見の趣旨または範囲から逸脱しない。かかる修飾はまた、併記の特許請求の範囲の範疇に収まると意図される。本出願で引用される刊行物、特許、特許出願および他の参照文献は全て、個々の刊行物、特許、特許出願または他の参照文献が、全ての目的で参照によりその全体が組み込まれるように、具体的にかつ個別に示されるのと同程度に、全ての目的で参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書中での参照文献の引用は、それが本発明に対する従来技術であると認めることと解釈されるべきではない。
【0167】
[00119]下記の番号付けしたパラグラフは、本開示の特定の実施形態に関するとみなされる特徴の特定の組合せを明記する。
1)コーティング組成物で封入された農業用活性材料を含むコーティングされた農薬組成物であって、前記コーティング組成物が、少なくとも2個のメルカプトアルカノエート基を有する構成成分を含むモノマーAと、エステル部分および不飽和炭素間結合を有する構成成分を含むモノマーBとの化学反応によって形成される付加物を含む、コーティングされた農薬組成物。
2)前記コーティング組成物が、水分または水への前記材料の初期曝露の日から30日以上で、前記材料の制御された放出速度を示し、初期重量の75wt%を上回る前記材料が、前記コーティングされた農薬組成物から放出される、前記パラグラフに記載のコーティングされた農薬組成物。
3)前記コーティング組成物が、約10カ月~24カ月の期間内で、少なくとも約16%の生分解を有する、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
4)周囲温度にて、好ましくは25℃にて、前記コーティングされた農薬組成物と水との初期接触後に、前記農業用活性材料の15wt%以下が最初の24時間以内に、前記材料の75wt%以下が28日以内に、前記材料の少なくとも75wt%が30日以上で、放出されるように、前記コーティング組成物が適合される、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
5)前記モノマーAが、2個~8個のメルカプトアルカノエート基および200g/モル~2000g/モルの分子量および60℃未満の融点を有する化合物を含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
6)前記モノマーAが、下記構造:
【0168】
【0169】
[式中、
Dは、下記構造:
【0170】
【0171】
(X1は、炭素原子1~20個の範囲の線状または分岐状脂肪族炭素鎖である)
によって表され、
R1は、下記構造:
【0172】
【0173】
(式中、Zは、O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、およびN-イソプロピルからなる群から選択され、波線記号
【0174】
【0175】
は、Dに直接的にまたは間接的に連結される結合を示す。任意選択で、Dは、R1に直接的に連結される。任意選択で、Dは、R1に間接的に結合される。「間接的に」という用語は、この文脈では、DとR1との間に少なくとも1つのさらなる炭素が存在することを意味する)
によって表される]
によって表される構成成分を含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
7)前記モノマーAが、GDMA、TMPTMA、PETMA、PETMP、TMPTMP、GDMPおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される構成成分を含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
8)前記モノマーAが、PETMAを含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
9)前記モノマーBが、2個~50個のエステル基および2個~8個の不飽和炭素間二重結合を有し、200g/モル~5000g/モルの分子量および60℃未満の融点を有する構成成分を含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
10)前記モノマーBが、下記構造:
【0176】
【0177】
[式中、
Fは、下記構造:
【0178】
【0179】
(式中、
X2は、ポリエステルであり、
Yは、HまたはCH3である)
によって表され、
R2は、下記構造:
【0180】
【0181】
(式中、Zは、O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、およびN-イソプロピルからなる群から選択され、波線記号
【0182】
【0183】
は、Fに直接的にまたは間接的に連結される結合を示す)
によって表される]
によって表される構成成分を含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。任意選択で、Fは、R2に直接的に連結される。任意選択で、Fは、R2に間接的に結合される。「間接的に」という用語は、この文脈では、FとR2との間に少なくとも1つのさらなる炭素が存在することを意味する。
11)前記モノマーBが、シクロペンタンおよび/またはシクロヘキサン部分をさらに含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
12)本発明の前記モノマーBが、下記によって表される一般構造:
【0184】
【0185】
{式中、
Xは、式
【0186】
【0187】
[式中、
Y=HまたはCH3であり、
m=0~20、任意選択で1~10であり、
R3は、下記構造:
【0188】
【0189】
(式中、nは、0~20の整数である)
によって表され、
R4は、下記構造:
【0190】
【0191】
(式中、
pは、0~20の整数であり、
qは、0~34の整数である)
によって表される]
によって表され、
R2は、下記構造:
【0192】
【0193】
(式中、Zは、O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、およびN-イソプロピルからなる群から選択され、波線記号
【0194】
【0195】
は、Xに直接的にまたは間接的に連結される結合を示す)
によって表される}
を有する、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。任意選択で、Xは、R2に直接的に連結される。任意選択で、Xは、R2に間接的に結合される。「間接的に」という用語は、この文脈では、XとR2との間に少なくとも1つのさらなる炭素が存在することを意味する。
13)前記モノマーBが、少なくとも2個の(メタ)アクリレート末端基を有する5員もしくは6員シクロアルキル部分、または1個~9個のエステル結合によって分離されて、かつ少なくとも2個のアクリレート末端基またはメタクリレート末端基を有する5員または6員シクロアルキル部分を含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
14)前記モノマーBが、下記構造:
【0196】
【0197】
(式中、
rは、0~20、任意選択で1~10の整数であり、
Yは、HまたはCH3である)
によって表される構成成分、および/または下記構造:
【0198】
【0199】
(式中、
mは、0~20、任意選択で1~10の整数であり、
qは、0~34、任意選択で1~4の整数であり、
Yは、HまたはCH3である)
によって表される構成成分を含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
15)前記付加物が、PETMAと下記構造:
【0200】
【0201】
(式中、
rは、0~20、任意選択で0~10の整数であり、
Yは、HまたはCH3である)
によって表される構成成分、および/または下記構造:
【0202】
【0203】
(式中、
mは、0~20、任意選択で1~10の整数であり、
qは、0~34、任意選択で1~4の整数であり、
Yは、HまたはCH3である)
によって表される構成成分を含むモノマーBとの化学反応によって形成される、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。
16)前記付加物が、モノマーAとモノマーBとの化学反応によって形成され、前記モノマーBが、下記:
【0204】
【0205】
{式中、
Gは、下記:
【0206】
【0207】
[式中、
Y=HまたはCH3であり、
R5は、
【0208】
【0209】
(式中、
nは、0~20の整数であり、
sは、2~36の整数である)
であり、
tは、0~20、任意選択で1~10の整数であり、
X3=O、NH、S、CH2であり、
R6は、下記構造:
【0210】
【0211】
(式中、R6の波線記号
【0212】
【0213】
は、R6とX3との間に形成される結合を示す)
によって表される]
によって表され、
R2は、下記構造:
【0214】
【0215】
(式中、Zは、O、S、NH、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、およびN-イソプロピルからなる群から選択され、波線記号
【0216】
【0217】
は、Gに直接的にまたは間接的に連結される結合を示す)
によって表される}
によって表される構造を有する構成成分を含む、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。任意選択で、Gは、R2に直接的に連結される。任意選択で、Gは、R2に間接的に結合される。「間接的に」という用語は、この文脈において、GとR2との間に少なくとも1つのさらなる炭素が存在することを意味する。
17)コア材料は、肥料、硝化作用阻害剤、脱窒作用阻害剤、ウレアーゼ阻害剤、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、フェロモン、バイオスティミュラント、生育調節剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される、前記パラグラフのいずれかに記載のコーティングされた農薬組成物。