IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7326274歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法
<>
  • 特許-歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法 図1
  • 特許-歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法 図2
  • 特許-歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法 図3
  • 特許-歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法 図4
  • 特許-歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法 図5
  • 特許-歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法 図6
  • 特許-歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法 図7
  • 特許-歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】歯科用補綴物形成ブロックおよびこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/083 20060101AFI20230807BHJP
   A61C 13/34 20060101ALI20230807BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A61C13/083
A61C13/34 Z
A61C8/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020529269
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082834
(87)【国際公開番号】W WO2019106007
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】102017221343.4
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、サーシャ
(72)【発明者】
【氏名】フォルノフ、ペーター
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0239021(US,A1)
【文献】特表2010-518991(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0248184(US,A1)
【文献】特開平08-117250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0323324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/08
A61C 13/083
A61C 13/09
A61C 13/34
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用補綴物部分(50)を製造するための歯科用補綴物形成ブロック(10)であって、前記歯科用補綴物形成ブロック(10)の第1の表面(11)においてセルフタッピング式の雄ねじを有するピン(20)が設けられ、
前記歯科用補綴物形成ブロック(10)は、少なくとも部分的に外部素材(14)によって包囲されている内部素材(13)を有し、
前記内部素材(13)は、前記外部素材(14)よりも低い硬度を有し、
前記歯科用補綴物形成ブロック(10)は、第1表面(11)と対向する第2表面(12)にブロックホルダー(31)を有し、前記歯科用補綴物形成ブロック(10)は、前記ブロックホルダー(31)によりCAD/CAMシステム(30)に固定することができる、歯科用補綴物形成ブロック(10)。
【請求項2】
前記内部素材(13)は金属であり、前記外部素材(14)はセラミックである、請求項1に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
【請求項3】
前記内部素材(13)と前記外部素材(14)は金属である、請求項1に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
【請求項4】
前記ピン(20)は、前記内部素材(13)と一体的に形成されている、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
【請求項5】
前記ピン(20)は骨結合コーティングを有する、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
【請求項6】
歯科用CAD/CAMシステム(30)において、素材除去器具(32、33)を用いて歯科用補綴物部分(50)を製造するための方法であって、
歯科用CAD/CAMシステム(30)において、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)を準備するステップと、
歯科用CAD/CAMシステム(30)によって、前記歯科用補綴物部分(50)の形状を決定するステップと、
歯科用CAD/CAMシステム(30)によって、ブロックホルダー(31)を介して前記CAD/CAMシステム(30)内に前記歯科用補綴物形成ブロック(10)を挿入および固定するステップと、
歯科用CAD/CAMシステム(30)によって、CAD/CAM方法を用いて前記歯科用補綴物形成ブロック(10)から素材を除去することによって前記ピン(20)が完成した前記歯科用補綴物部分(50)の一部を形成するように前記歯科用補綴物部分(50)を製造するステップと、
を有する方法。
【請求項7】
前記ピン(20)は、素材を除去する間カバー(40)によって覆われている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記CAD/CAM方法は、前記ピン(20)の周りにバーチャルな保護ボリュームを設け、この保護ボリュームには素材除去器具(32、33)が進入することができない、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用補綴物形成ブロックに関する。さらに本発明はこの歯科用補綴物形成ブロックを用いて歯科用補綴物部分を形成するための方法に関する。加えて本発明はコンピュータ上で実行された場合に当該方法の全てのステップを実施するコンピュータプログラムと、このコンピュータプログラムを記憶する媒体に関する。最後に本発明は当該方法を実行するように構成されている歯科用CAD/CAMシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アバットメント部分がインプラントに固着されている一体型の歯科用インプラントは、従来は標準形に予め製造される。これら標準インプラントは、例えばセラミックまたはチタン製であり得、直線的あるいは角度を有するものであり得る。しかしながら一体型の標準インプラントの個別化が困難であるのはそのために予め製造された部分を後のねじ止め回転やねじ止め高さを考慮しつつ口腔外に保持して加工する必要があるためである。標準インプラントを顎に挿入および内殖してからはじめて個別化することが極めて困難なのは導入すべきエネルギーが当該部分を加熱したり緩めたりする可能性があるためである。
【0003】
したがって標準インプラントに代わるものとして複数の部分からなるインプラントがある。この場合、インプラントねじが個別化可能なアバットメント構造内にねじ止めすることができる別個の標準部分となる。こうしてアバットメント構造は問題なく口腔外で加工することが可能である。しかしながら複数部分からなるインプラントの場合、個々の要素の間に隙間が形成されることがある。これら隙間を通って細菌がインプラント内部へ移動し、そこから咀嚼の構造的な影響により時間を経て間欠的に外に移動して骨を侵す可能性がある。これにより骨の減少とこれに伴うインプラントの損傷という形で現れるインプラント周囲炎につながる。加えて複数部分からなるインプラントの場合、各要素の連結部における構造的な摩耗が生じ得る。数百万回の咀嚼運動周期の後、ねじとともに構造物が緩んだりあるいはねじが折れたりすることまであり得る。
【0004】
複数部分からなるインプラントの構造を製造する上で自動化されたCAD/CAM方法が用いられることが増えつつあり、これらにおいては歯科用補綴物形成ブロックを用いてそれぞれの歯科用補綴物部分が加工製造される。これにより製造者らは高く不変である品質や歯科用補綴物の正確なフィット感と同時に安価な価格を提供することが可能となる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、CAD/CAM方法を用いて複数部分からなるインプラントの前述の欠点を有しない歯科用補綴物部分を製造することが可能な歯科用補綴物形成ブロックを提供することにある。本発明の別の課題は、このような歯科用補綴物部分を製造するための方法を提供することにある。
【0006】
この課題は、とりわけインプラントである歯科用補綴物部分を製造するための歯科用補綴物形成ブロックであってセルフタッピング式の雄ねじを有するピンを有する歯科用補綴物形成ブロックによって解消される。このピンは、歯科用補綴物形成ブロックの第1の表面に配置されている。ピンが既に歯科用補綴物形成ブロックの一部であることにより、これを用いて口腔外においてCAD/CAM方法を用いてインプラントの形を有する一体型の歯科用補綴物部分を製造することが可能である。これによって個々の構成要素の弛緩が生じ得ず、インプラントにおいて細菌が入り込む隙間が生じないという標準インプラントの一体型の構造の利点と、構造を口腔外において完成させ得るという複数部分からなるインプラントの利点とを組み合わせることとなる。この完成を歯科技工室において実施する必要がなく、歯科医院においても実施し得る。
【0007】
ピンは、とりわけチタンなどの金属からなることが好ましい。歯科用補綴物形成ブロックは、少なくとも部分的にとりわけ二酸化ジルコニウムなどのセラミックからなることが好ましい。これによって一方では金属ピンによって歯科用補綴物部分が顎内において確実に係留されるとともに他方ではセラミックによる審美的に魅力的な構造のデザインが可能となる。
【0008】
構造に対して特別な安定性を付与するにはこの構造が少なくとも部分的に外部素材によって包囲されている内部素材を有することが好ましい。内部素材が金属であり、外部素材がセラミックであることが特に好ましい。これによって歯科用補綴物形成ブロックのこのような実施形態を用いても構造の表面がセラミック製である、審美的に魅力的な歯科用補綴物部分を製造しながら金属コアが歯科用補綴物部分に特別な安定性を付与することが可能となる。この場合、ある実施形態において内部素材は外部素材よりも低い硬度を有する。なお、硬度とはとりわけDIN規格EN ISO6507-1:2005からDIN規格EN ISO6507-4:2005によるビッカース硬度(HV10)である。内部素材としては金属、とりわけその良好な生物的適合性および内殖特性を鑑みて例えばチタン(ビッカース硬度:約200HV10)が、また外部素材としてはセラミック、とりわけ審美性を鑑みて例えば二酸化ジルコニウム(ZrO、ビッカース硬度:約1250HV10)または二珪素リチウムセラミック(ビッカース硬度:約650HV10)またはガラスセラミックが好ましい。
【0009】
これに代えて内部素材と外部素材が金属であることが特に好ましい。この場合、外部素材の金属は内部素材の金属よりも硬い。内部素材としてはその良好な生物的適合性および内殖特性を鑑みてチタン(ビッカース硬度:約200HV10)が好ましく、また外部素材としては経済性を鑑みてコバルトクロム合金(CoCr、ビッカース硬度:約300HV10)が好ましい。
【0010】
さらに別の実施形態において内部素材と外部素材の硬度が同じである。とりわけ内部と外部の素材が同一のものである。この場合、内部素材と外部素材としては生物的適合性と審美性を鑑みて二酸化ジルコニウム(ZrO、ビッカース硬度:約1250HV10)が好ましい。
【0011】
さらに別の実施形態において内部素材は外部素材よりも高い硬度を有する。内部素材としては生物的適合性と審美性を鑑みて二酸化ジルコニウム(ZrO、ビッカース硬度:約1250HV10)が好ましく、外部素材としては審美性と加工可能性を鑑みて二珪素リチウムセラミックまたはガラスセラミックが好ましい。
【0012】
ピンが歯科用補綴物形成ブロックにおいて特に確実に係留されることを確証するためにはピンが内部素材と一体的に形成されていることが好ましい。
【0013】
ピンの顎骨への内殖を加速するためには、このピンが骨結合コーティングを有することが好ましい。このコーティングはとりわけヒドロキシルアパタイトからなる。ヒドロキシルアパタイトは骨組織の天然成分である。したがってピンの素材は生体同一性を有するカバーコートによってコーティングされるため、ピンの顎骨への内殖は骨折の治癒過程に等しい。この種のコーティングは原則として歯科技工室や歯科医院において製造され得ないため、この骨結合コーティングを既に形成ブロックのピンへと塗布することは好ましいことである。さらにCAD/CAM方法を用いて歯科用補綴物形成ブロックを加工することによって骨結合コーティングの損傷が生じ得ないことを確証することが可能である。例えば一体型の標準インプラントの場合にこれが確証されないのは一体型標準インプラントを加工するには自身のピンによって留める必要があるからである。
【0014】
歯科用補綴物ブロックの好ましい形態において、歯科用補綴物ブロックは第2の表面から歯科用補綴物形成ブロックを通ってピンまで貫通する雌ねじを有する。この第2の表面は、第1の表面に対向する。これによって一体型のインプラントを完成させてから別の要素をこの上にねじ止めすることが可能となる。
【0015】
この課題はさらに歯科用補綴物部分を製造するための方法によって解消される。この方法ではまず本発明による歯科用補綴物形成ブロックを準備する。歯科用補綴物部分は、歯科用補綴物形成ブロックから素材を除去することによって製造される。この素材除去はCAD/CAM方法を用いて実施される。この場合、ピンが完成した歯科用補綴物部分の一部を形成するように素材除去の方向が選択される。よってこの方法は、歯科用補綴物形成ブロックから一体型の歯科用補綴物部分、とりわけインプラントを製造するために公知であるCAD/CAM方法を用いることを可能にする。
【0016】
自身のピンを介して留められる必要がある一体型の標準インプラントの加工とは異なり、CAD/CAM方法において歯科用補綴物形成ブロックは自身の表面のうち1つによって固定され得る。素材除去の際にピンを素材除去器具との接触から保護することが好ましい。これによってピンの雄ねじが破損したり場合によっては存在する骨結合コーティングの損傷が生じたりすることを防止することが可能である。
【0017】
本方法の好ましい実施形態においてこのピンの保護は、素材を除去する間ピンをカバーによって覆うことによって得られる。
【0018】
本方法の別の好ましい実施形態においてCAD/CAM方法においてピンの周りにバーチャルな保護ボリュームを設ける。その後素材除去器具が保護ボリューム内に挿入し得ないように制御される。
【0019】
歯科用補綴物形成ブロックが第2の表面からピンまで貫通する雌ねじを有する場合、歯科用補綴物供給要素が歯科用補綴物部分の雌ねじにねじ入れ可能であるように歯科用補綴物部分を製造することが好ましい。歯科用補綴物供給要素とは例えばアバットメントであり得る。そうするとこの実施形態において一体型の歯科用補綴物部分は単にアバットメントのベースのみを形成するものである。
【0020】
本発明によるコンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行された場合に本方法の全てのステップを実施するように構成されている。このコンピュータプログラムによって歯科用CAD/CAMシステムに対する構造的な変更を実施する必要がないまま歯科用CAD/CAMシステムのコンピュータ上で本方法の異なる実施形態を実施することが可能となる。このためこのコンピュータプログラムは、とりわけコンピュータで読み取ることができる媒体上に記録されている。
【0021】
このコンピュータプログラムを従来の歯科用CAD/CAMシステム上でロードすることにより、本方法を実施するように構成されている本発明による歯科用CAD/CAMシステムを得ることが可能となる。
【0022】
本発明の実施例は、各図面において図示されており、以下に続く説明において詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例による歯科用補綴物形成ブロックの等角図である。
図2図1による歯科用補綴物形成ブロックの横断面図である。
図3】本発明の別の実施例による歯科用補綴物形成ブロックの等角図である。
図4図3による歯科用補綴物形成ブロックの横断面図である。
図5】本発明の実施例による方法における歯科用補綴物形成ブロックの第1の加工ステップを示す図である。
図6】本発明の別の実施例による方法における歯科用補綴物形成ブロックの第1の加工ステップを示す図である。
図7】本発明の実施例による方法における歯科用補綴物形成ブロックの第2の加工ステップを示す図である。
図8】本発明による方法の実施例によって製造可能な歯科用補綴物部分を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施例による歯科用補綴物形成ブロック10は、図1および図2において図示されている。この歯科用補綴物形成ブロック10は長方形であり、一つの表面11とこの表面に対向する第2の表面12を有する。歯科用補綴物形成ブロック10のコアは、内部素材13としてチタン製である。この内部素材13の上に外部素材14として二酸化ジルコニウムがプレス嵌めされている。これによって第1の表面11は部分的にはチタン、また部分的には二酸化ジルコニウムからなるのに対して歯科用補綴物形成ブロック10のその他全ての表面は二酸化ジルコニウムのみからなる。内部素材13は、ピン20と一体的に形成されており、このピンはセルフタッピング式の雄ねじを有し、第1の表面11から突出している。ピン20の雄ねじは、ヒドロキシアパタイトでコーティングされている。
【0025】
歯科用補綴物形成ブロック10の第2の実施例において歯科用補綴物形成ブロック10のコアは、内部素材13としてチタンからなる。外部素材14はコバルトクロム合金(CoCr)である。
【0026】
歯科用補綴物形成ブロック10の第3の実施例において歯科用補綴物形成ブロック10のコアは、内部素材13としてチタンからなる。外部素材14は二珪素リチウムセラミックまたはガラスセラミックである。
【0027】
図3および図4において図示されている歯科用補綴物形成ブロック10の第4の実施例において、この歯科用補綴物形成ブロックは完全に二酸化ジルコニウムからなり、これに対して第1の表面11にピン20が取り付けられている。第4の実施例においてこの歯科用補綴物形成ブロック10は、ヒドロキシアパタイトでコーティングされたチタンからなる。第1の表面11と第2の表面12の間に雌ねじ15を有する開口部が歯科用補綴物形成ブロック10の中を貫通する。
【0028】
歯科用補綴物形成ブロック10の第5の実施例において、この歯科用補綴物形成ブロック10もまた図3および図4に図示される構造を有する。歯科用補綴物形成ブロック10とピン20の両方が二酸化ジルコニウムからなる。ピンはヒドロキシアパタイトでコーティングされている。
【0029】
本発明による方法の第1の実施例において歯科用CAD/CAMシステム30において歯科用補綴物部分の所望する形状が決定される。その後、前述の実施例のうちいずれか1つによる歯科用補綴物形成ブロック10が歯科用CAD/CAMシステム30内に設置されてそこで自身の第2の表面12においてブロックホルダー31を介して固定される。これは図5において図示されている。素材除去器具32、33が歯科用補綴物形成ブロック10の上部および下部に位置付けられる。ピン20の周りにはバーチャルな保護ボリュームが画定されてこの保護ボリュームの中には素材除去器具32、33が進入することができない。
【0030】
本発明による方法の第2の実施例は、第1の実施例とはバーチャルな保護ボリュームが省略される点で異なる。代わりにピン20の上にカバー40をこのカバー40がピン20を完全に覆うようにかぶせることでピン20を物理的に保護する。これは図6において図示されている。
【0031】
本発明による方法の両方の実施例において素材除去器具32、33によって第1の表面11から開始しつつ歯科用補綴物形成ブロック10から素材除去が実施されることにより歯科用補綴物部分50を形成する。図7において図示されるように素材除去の最後には歯科用補綴物部分50がタッピング51でのみ歯科用補綴物形成ブロック10と連結されている。このタッピング51を取り除いた後、ピン20と一体的に形成されている完成した歯科用補綴物部分50をCAD/CAMシステム30から取り出すことが可能となる。
【0032】
歯科用補綴物部分50が第4の実施例による歯科用補綴物形成ブロック10を用いて形成された場合、歯科用補綴物部分50はまだピン20と素材除去の途中で生成された、ピン20に対向する表面との間に雌ねじ15を有している。図8に図示されるようにアバットメントの形を有する歯科用補綴物供給要素60を雌ねじ内にねじ61を用いてねじ止めすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
歯科用補綴物形成ブロックと方法の前述された例によりインプラントの形を有する歯科用補綴物部分の一体的で個別化された製造が可能となる。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 歯科用補綴物部分(50)を製造するための歯科用補綴物形成ブロック(10)であって、前記歯科用補綴物形成ブロック(10)の第1の表面(11)においてセルフタッピング式の雄ねじを有するピン(20)が設けられていることを特徴とする歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[2] 前記歯科用補綴物形成ブロック(10)は、少なくとも部分的に外部素材(14)によって包囲されている内部素材(13)を有することを特徴とする、[1]に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[3] 前記内部素材(13)は、前記外部素材(14)よりも低い硬度を有することを特徴とする、[2]に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[4] 前記内部素材(13)は金属であり、前記外部素材(14)はセラミックであることを特徴とする、[3]に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[5] 前記内部素材(13)と前記外部素材(14)は金属であることを特徴とする、[3]に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[6] 前記内部素材(13)は、前記外部素材(14)よりも高い硬度を有することを特徴とする、[2]に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[7] 前記内部素材(13)と前記外部素材(14)は同じ硬度を有することを特徴とする、[2]に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[8] 前記ピン(20)は、前記内部素材(13)と一体的に形成されていることを特徴とする、[2]から[7]のうちいずれか一項に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[9] 前記ピン(20)は骨結合コーティングを有することを特徴とする、[1]から[8]のうちいずれか一項に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[10] 前記歯科用補綴物形成ブロック(10)は、前記第1の表面(11)に対向する第2の表面(12)から歯科用補綴物形成ブロック(10)を通って前記ピン(20)まで貫通する雌ねじ(15)を有することを特徴とする、[1]から[9]のうちいずれか一項に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)。
[11] 歯科用補綴物部分(50)を製造するための方法であって、
[1]から[10]のうちいずれか一項に記載の歯科用補綴物形成ブロック(10)を準備するステップと、
CAD/CAM方法を用いて前記歯科用補綴物形成ブロック(10)から素材を除去することによって前記ピン(20)が完成した前記歯科用補綴物部分(50)の一部を形成するように前記歯科用補綴物部分(50)を製造するステップを有する方法。
[12] 前記ピン(20)は、素材を除去する間カバー(40)によって覆われていることを特徴とする、[11]に記載の方法。
[13] 前記CAD/CAM方法は、前記ピン(20)の周りにバーチャルな保護ボリュームを設け、この保護ボリュームには素材除去器具(32、33)が進入することができないことを特徴とする、[12]に記載の方法。
[14] [10]による歯科用補綴物形成ブロック(10)を準備し、歯科用補綴物供給要素(60)が前記歯科用補綴物部分(50)の前記雌ねじ(15)内にねじ止めされ得るように前記歯科用補綴物部分(50)が製造されることを特徴とする、[11]から[13]のうちいずれか一項に記載の方法。
[15] コンピュータ上で実行された場合、[11]から[14]のうちいずれか一項に記載の方法の全てのステップを実施するコンピュータプログラム。
[16] [15]に記載のコンピュータプログラムを記憶することを特徴とする媒体。
[17] [11]から[14]のうちいずれか一項に記載の方法を実行するように設けられていることを特徴とする歯科用CAD/CAMシステム(30)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8