(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】非回転対称の火花ギャップ、とくには消イオン室を備えるホーン火花ギャップ
(51)【国際特許分類】
H01T 1/08 20060101AFI20230807BHJP
H01T 4/04 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01T1/08
H01T4/04 Z
(21)【出願番号】P 2020532958
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2019058899
(87)【国際公開番号】W WO2019223928
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】102018112428.7
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018117275.3
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522067846
【氏名又は名称】デーン エスエー
【氏名又は名称原語表記】DEHN SE
【住所又は居所原語表記】Hans-Dehn-Strasse 1 92318 Neumarkt i.d.OPf. Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュトラングフェルド、ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒールル、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シェーン、シュテファン
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0235502(US,A1)
【文献】特表2008-527640(JP,A)
【文献】米国特許第04620126(US,A)
【文献】特開平07-135065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 1/08
H01T 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーン電極と、消イオン室
(2)と、
前記ホーン電極および前記消イオン室(2)のための支持収容体(1)としての複数の部分からなる絶縁材料製ハウジングと、アークに関連したガスの流れを導くための手段とを備え、前記絶縁材料製ハウジングは、前記ホーン電極によって定められる平面(3)において分割され、2つのハーフシェルを有し、端面にプラグまたはネジ接続部(4;5)が導出される、非回転対称の
ホーン火花ギャッ
プであって、
前記プラグまたはネジ接続部(4;5)の導出の部分を除き、前記絶縁材料製ハウジングは、前記ハウジングに近接して前記ハウジングの表面に対して位置する
鞘として形成される冷却面(7;14)によって、すべての面において囲まれ、前記
鞘として形成される冷却面(7;14)は、前記ハーフシェルの外面上のガスの流れを導くように設計されるウェブ(8)に少なくとも部分的に支持される、ことを特徴とする非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項2】
鞘として形成される前記冷却面(7;14)が、前記ハーフシェルに一緒に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項3】
鞘として形成される前記冷却面(7;14)が、安定性を高めるためのビードまたはエンボス(13;23)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項4】
前記鞘は、熱伝導の良好な材料で構成され
、
熱伝導の良好な材料は、金属材料又は熱伝導性プラスチックである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項5】
前記プラグ
またはネジ接続部(4;5)の導出の前側の端部において、前記鞘の一体の一部分である少なくとも1つの固定用ラグ(15)に少なくとも部分的にかぶさるスリップ体(16)を、前記ハーフシェル上にスライドさせることができる、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項6】
前記固定用ラグにかぶさる前記スリップ体(16)のかぶさり領域に、締まり嵌め接続のための穴または凹部(20;21)が
支持収容体(1)に設けられる、ことを特徴とする請求項5に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項7】
前記鞘(14)が導電性材料から実現される場合に、前記ハーフシェルの外面と前記鞘との間に絶縁層(22)が配置される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項8】
前記鞘
(14)の外側が、熱関連
で表面積を拡大す
る構造(23)を有する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項9】
前記固定用ラグ(15)に容易にかぶせることができるように、前記スリップ体(16)は、くさび傾斜部(17)を有する、ことを特徴とする請求項5~8のいずれか一項に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【請求項10】
前記鞘
(14)は、スライドさせて取り付けることができるフードとして実現される、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の非回転対称の
ホーン火花ギャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消イオン室と、ホーン電極および消イオン室のための支持収容体としての複数の部分からなる絶縁材料製ハウジングと、アークに関連したガスの流れを導くための手段とを備え、絶縁材料製ハウジングは、ホーン電極によって定められる平面において分割され、2つのハーフシェルを有し、端面にプラグまたはネジ接続部が導出される、請求項1に記載の非回転対称の火花ギャップ、とくにはホーン火花ギャップに基づく。
【背景技術】
【0002】
一般的な独国特許出願公開第102011102257号明細書から、複数の部分からなる絶縁材料製ハウジングを有する非吹き消し型の設計の消イオン室を備えるホーン火花ギャップが、すでに知られている。
【0003】
絶縁材料製ハウジングは、ホーン電極および消イオン室のための支持収容体を形成する。さらに、アークに関連したガスの流れを導くための手段が設けられ、絶縁材料製ハウジングは、ホーン電極によって定められる平面において分割され、第1および第2のハーフシェルを形成する。
【0004】
内部のホーン電極は、非対称の形態で実現される。電極間のアーク走行領域は、消イオン室の方向においてプレート状の絶縁材料によって境界付けられ、プレート状の絶縁材料は、嵌まり込みの様相でそれぞれのハーフシェルの第1の形成部にそれぞれ挿入されている。
【0005】
ハーフシェルは、嵌まり込みの様相で消イオン室部分を取り囲む第2の形成部をさらに含み、ブレークスルーまたは開口部が、それぞれのハーフシェルにおいて第1および第2の形成部の各々の間に配置され、短い方の電極の端部が、アークに関連したガスの流れが部分的にのみ消イオン室に到達するように、消イオン室部分の前方に位置している。消イオン室と複数の部分からなる絶縁材料製ハウジングとを備えるこのようなホーン火花ギャップは、費用効果的なやり方で製造でき、省スペースであり、モジュール式のやり方で構築でき、構造に関して柔軟に構成することが可能である。既知の火花ギャップの必須のアセンブリ、ならびに電極、おそらくは設けられるトリガ電極、および/または消イオン室は、交換可能であり、基本的な構造から逸脱することなく、それぞれの配電網の条件に容易に適合させることが可能である。
【0006】
すべての機能アセンブリを外側ハウジングを持たないユニットに統合することで、さまざまな配電網の構成に合わせた種々のデバイスの実現を、最も簡単なやり方で設計することが可能になる。火花ギャップの個々の部品を、例えばリベット、ネジ、または噛み合いなどの標準的な技術によって互いに接続することができる。ガスがいくつかの循環回路によって導かれるがゆえに、関連するすべての構成要素が、高温のイオン化ガスを冷却するために利用される。
【0007】
しかしながら、とりわけ12.5kA~25kAの範囲のサージ電流の場合のより大きな負荷において、生じるイオン化ガスが、きわめて高い熱エネルギを有することが示されている。関連するすべての構成要素が既知の火花ギャップにおいて冷却に利用されるが、より大きな負荷において限界が生じ、該当の火花ギャップが故障する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102011102257号明細書
【発明の概要】
【0009】
したがって、上述の状況から、本発明の課題は、12.5kA~25kAの範囲のより大きなサージ電流にさえも、機能を乱し、あるいは機能を危うくする損傷を生じることなく耐えることができるさらに発展した非回転対称のホーン火花ギャップ、とくには消イオン室を備えるホーン火花ギャップを提案することである。生み出されるべき解決策は、いくつかの火花ギャップからの積み重ねのモジュールにおいてさえも、全体として小さな空間しか占めず、あるいは小さな空間しか必要とせずに構成できるように、冒頭で示した既知のホーン火花ギャップの細い構造の具現形を維持するという態様の下で成し遂げられなければならない。
【0010】
本発明の課題の解決策は、消イオン室を備える請求項1に記載の特徴の組み合わせによる非回転対称の火花ギャップ、とりわけホーン火花ギャップによって成し遂げられ、従属請求項が、少なくとも適切な実現およびさらなる発展を表す。
【0011】
したがって、非回転対称の火花ギャップが基礎として選ばれる。この火花ギャップは、とくには、消イオン室と、ホーン電極および消イオン室のための支持収容体としての絶縁材料製の複数の部分からなる細い直方体のハウジングとを備えるホーン火花ギャップである。さらに、この火花ギャップは、アークに関連したガスの流れを導くための手段を含み、絶縁材料製ハウジングは、ホーン電極によって定められる平面において分割され、あるいは分割可能であり、2つのハーフシェルを有する。さらに、プラグまたはネジ接続部が、端面に導出される。
【0012】
本発明によれば、プラグまたはネジ接続部の導出の部分を除き、絶縁材料製ハウジングは、ハウジングに近接してハウジングの表面に対して位置する冷却面によって、すべての面において囲まれる。
【0013】
冷却面は、ハーフシェルの外面上のガスの流れを導くように設計されるウェブに少なくとも部分的に支持される。後者の方策により、望ましいガスの流れが妨げられることがなく、同時に、ガスの流れと冷却面との間の密接な接触が保証される。
【0014】
本発明のさらなる発展において、冷却面は鞘として形成され、ハーフシェルに一緒に接続される。この接続は、締まり嵌めのやり方で実行され得るが、嵌まり込みと締まり嵌めとの組み合わせ、あるいは材料嵌めによって実行されてもよい。
【0015】
鞘として形成される冷却面は、安定性を高めるビードまたはエンボスを有することができる。
【0016】
基本的に、鞘を熱伝導の良好な材料で実現すると有利であることに、注意すべきである。これは、金属材料であってよいが、熱伝導性プラスチックであってもよい。
【0017】
本発明のさらなる発展においては、スリップ体を、プラグおよびネジ接続部の導出の前側の端部において、ハーフシェル上にスライドさせることができる。この場合、スリップ体は、鞘の一体の一部分である少なくとも1つ、好ましくは2つの対面する固定用ラグにかぶさる。
【0018】
固定用ラグにかぶさるスリップ体のかぶさり領域に、締まり嵌め接続のための穴または凹部が設けられる。
【0019】
鞘が導電性材料から製作される具現形において、例えば紙状の絶縁材料からなる絶縁層が、ハーフシェルの外面と鞘との間に配置される。
【0020】
熱関連の表面積を拡大するために、鞘の外側を構造化することができる。
【0021】
本発明のさらなる発展において、スリップ体は、固定用ラグに容易にかぶせることができるように、対応するそれぞれのくさび傾斜部を備える。
【0022】
冷却面として言及された鞘を、好ましくは、スライドさせて取り付けることができるフードとして実現することができる。
【0023】
本発明を、典型的な実施形態に基づき、図面を参照して、以下でさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】スライドさせて取り付けることができるフードの形態にて鞘として形成された冷却面を備える本発明の第1の実施形態を示しており、フードを消イオン室を備えるホーン火花ギャップへとスライドさせて取り付ける前の状態を示す。
【
図2】
図1による図と同様の図を示しているが、フードを途中までスライドさせた状態を示す。
【
図3】
図1および
図2と同様の図を示しているが、フードを最後までスライドさせた状態かつリベット締め作業の実行前を示す。
【
図4】冷却面としての金属製フードならびに中間絶縁体およびスリップ体を備える本発明の第2の典型的な実施形態を、スライドによって実現される取り付け作業の前の分解図にて示す。
【
図5】
図4による図と同様の図を示しているが、金属製フードをすでに途中までスライドさせた状態を示す。
【
図6】
図4および
図5の後続の手順としての図を示しており、金属製フードが最後までスライドさせられたときに、スリップ体が、フードの側面の固定用ラグを囲み、やはり最終位置にあるが、例えば依然として実行が必要なリベット締めによる確実な接続の前の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~
図3による本発明の非回転対称の火花ギャップは、まず第一に、図においては見て取ることができないホーン電極のための支持収容体と、一部分を見て取ることができる消イオン室2とを基礎として選んでいる。さらに、アークに関連したガスの流れを導くためのすき間空間を見て取ることができる。絶縁材料製ハウジング、すなわち支持収容体は、ホーン電極によって定められる平面において線3に沿って分割され、したがって2つのハーフシェルがもたらされる。
【0026】
プラグまたはネジ接続部4;5が、端面に導き出されている。
【0027】
側方の狭い面に設けられた案内溝6が、正しい位置において冷却面として形成された鞘7上をスライドするように機能し、したがってこの鞘は、対応する相補的な突起(図示せず)を内側に有している。
【0028】
さらに、ハーフシェルとして形成された支持収容体1の外面に、ガスの流れを導くように機能するウェブ8が存在する。図示の例において、ガスの流れは、ここでは少なくとも一部がホーン火花ギャップ電極の発弧領域へと戻される。
【0029】
鞘として形成された冷却面7は、フードの形態で実現される。
【0030】
したがって、プラグまたはネジ接続部4;5の導出の部分を除き、支持収容体1は、ハウジングに近接してハウジング表面に対して位置する冷却面によって、すべての面において囲まれている。
【0031】
この場合に、冷却面、すなわちフード7は、内面によってウェブ上に部分的に支持され、これらのウェブは、対応するハーフシェルの外面上にガスの流れを導くように形成されている。
【0032】
この実現形態により、一方では、必要とされる機械的安定性が達成される。他方では、ガスの流れが依然として妨げられず、冷却面に密接に接触することができる。
【0033】
鞘7または対応するフードは、対応するハーフシェルに一緒に接続されてよい。この点で、ネジまたはリベットを受け入れる通し穴9および10あるいは11および12が存在する。
【0034】
鞘として形成された冷却面は、安定性を高めるエンボス13を有することができる。
【0035】
図4~
図6による実施形態によれば、鞘として形成された冷却面のさらなる発展が成し遂げられる。
図4~
図6による例においては、金属フード14が基礎として選ばれている。
【0036】
この金属フード14は、その前側および後側に、固定用ラグ15をそれぞれ含んでいる。
【0037】
さらに、スリップ体16が存在する。
【0038】
このスリップ体を、支持収容体の下端側の領域において、支持収容体へとスライドさせることができる。
【0039】
図4~
図6の順序において、スリップ体16が、スリップ体に設けられたくさび傾斜部17によってフードのそれぞれの固定用ラグ15にかぶさり、それぞれの固定用ラグ15をさらに固定することが明らかである。ここで、穴または凹部20;21が、上述の部品およびそれらからもたらされる構成の確実な接続として機能する。
【0040】
さらに、この典型的な実施形態において、鞘として形成された冷却面14を、発弧後に現れるガスの流れを妨げることなく支持することができるウェブ8が存在する。
【0041】
図4~
図6に示されるとおり、フード14による金属材料の鞘が形成されるとき、この材料自体が導電性である場合に、例えばU字形パターンとして形成されてよい絶縁中間層22が、支持収容体1とフード14との間に配置される。
【0042】
すでに示したように、鞘の外側を、安定性を高めるエンボス加工の他に、熱関連の表面積を拡大するように構造付けることができる。このような構造23が、
図4~
図6に示されている。