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特許7326294積層造形によって化粧品用のアプリケータを製造する方法
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  • 特許-積層造形によって化粧品用のアプリケータを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】積層造形によって化粧品用のアプリケータを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
A45D34/04 510Z
A45D34/04 510B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020538972
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 FR2019050031
(87)【国際公開番号】W WO2019138180
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】1850296
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506273087
【氏名又は名称】シャネル パルファン ボーテ
【氏名又は名称原語表記】CHANEL PARFUMS BEAUTE
【住所又は居所原語表記】135,avenue Charles de Gaulle,F-92200 Neuilly sur Seine,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サルシアリニ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトゥッキ,カンタン
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/098134(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179139(WO,A1)
【文献】特表2017-532433(JP,A)
【文献】特開2010-284745(JP,A)
【文献】特開2007-260926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057163(US,A1)
【文献】特表2012-515668(JP,A)
【文献】特表2016-527000(JP,A)
【文献】特開2004-181580(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105772712(CN,A)
【文献】特開2017-114840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
握持部と、毛又は歯を含む塗布部とを含み、目の付近への塗布のための化粧品アプリケータを製造する方法であって、前記握持部及び前記塗布部は一体に形成されており、
前記方法が、プラスチック材料の粉末を焼結することによる積層造形のステップ(S1)と、これに続く粉末除去のステップ(S2)及び前記化粧品アプリケータから分離されるか又は部分的に焼結された粒子の除去のための後処理とを含み、
前記後処理が、
- サンドブラスト(S4)、及び
- イオン化ブロー(S5)
の連続するステップを含み、
前記サンドブラストステップ(S4)及び前記イオン化ブローステップ(S5)が、バレルの内部に配置された内部イオン化バーと、バレルの外部に配置された外部イオン化バーを含む、同じ回転バレル内で実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記後処理が、洗浄の最終ステップ(S6)をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記プラスチック材料がポリアミドである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記積層造形ステップ(S1)の前に、前記ポリアミド粉末を処理するステップ(S0)を含み、前記粉末を処理するステップ(S0)が、
- 最大寸法が150ミクロン以下の粒状物のみを有する新しい粉末を提供するステップと、
- 前記積層造形ステップに既に供している、いわゆる使用済み粉末を提供し、前記最大寸法が150ミクロン以下の粒状物のみを有するようにするための前記使用済み粉末を較正する、ステップと、
- 70/30~50/50の間の新しい粉末/使用済み粉末比で、前記新しい粉末と前記較正した使用済み粉末とを混合するステップと
を含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記積層造形(S1)が、レーザーによる粉末床溶融結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記サンドブラストステップの前にプリブローステップ(S3)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記サンドブラストが、45ミクロン~90ミクロンの間にある直径のガラス球を用いる微小球処理によって実行される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記サンドブラスト(S4)が、2つのサンドブラストノズルを含む回転ドラム内で実行される、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記サンドブラスト(S4)及びイオン化ブロー(S5)のステップが、300個~10000個の化粧品アプリケータのバッチで実行される、請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法を含む化粧品アプリケータを生産する方法であって、所定の数の化粧品アプリケータのバッチで、500ミクロンよりも大きい最大寸法の、分離された又は部分的に焼結された残留粒子の数を測定することと、前記粒子の数がゼロではない場合に、後処理ステップにおける、サンドブラストの射出圧力、サンドブラストの持続時間、イオン化ブロー圧力、イオン化ブロー持続時間のうちの少なくとも1つのパラメータを修正することとを含む認定ステップ(S7)、次いで500ミクロンよりも大きい最大寸法の粒子の前記数がゼロになるまでこのような製造方法及び認定ステップ(S7)の連続をさらに含む、生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品用のアプリケータを得るための工業的方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
液体、流体、又は粉末形態にある化粧品の塗布は、一般に、絵筆の毛のように化粧品を保持することを可能にする毛又は歯を含むアプリケータを使用して、実行される。
【0003】
本発明は、マスカラの塗布の面で説明されているが、本文書記載の化粧品は、皮膚、唇、又は表面付属器のためのすべてのメークアップ製品を包含する。化粧品はまた、皮膚、唇、及び表面付属器への塗布のために提供されるケア製品、具体的には液体ケア剤も包含する。本発明は、目の付近、具体的にはまつ毛又はまぶたへの塗布の面を、特に対象とする。たとえば、化粧品は、マスカラ、アイシャドウ、又は一般に「アイライナー」と呼ばれる目の輪郭のメークアップであり得る。
【0004】
マスカラのアイテム、又は「マスカラ」は従来、ケース、マスカラリザーバ及びアプリケータを含む。「ボトルブラシ」タイプのもの、射出成形されたもの及び積層造形(additive manufacturing、「additive manufacture」と呼ばれることもある)によって生産されるものなど、いくつかのタイプのアプリケータが存在する。積層造形は、通常「三次元印刷」又は「3D印刷」の表現でも呼ばれる、物質の付加又は凝集による製造方法を指定する。
【0005】
ボトルブラシタイプのアプリケータは、アプリケータのコアを形成する撚られた金属線に固定された繊維によって形成された毛を有するブラシを含む。
【0006】
射出成形されたアプリケータは、一般に、一体に形成され、たとえばプラスチック材料の毛又は歯を含む。
【0007】
積層造形によって製造されたアプリケータもまた一般的に一体であり、たとえば熱可塑性ポリマーの粉末から形成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
積層造形によって部品を得る従来の方法は、非常に正確な寸法特徴を有する部品を得ることを可能にする。それにもかかわらず、得られた化粧品アプリケータは、特定の欠陥又は欠点を呈する可能性がある。具体的には、これらのアプリケータは、特に塗布用の毛又は歯の位置に、きちんと制御されない、不十分な、又は不規則な粗さを有する可能性がある。また、これらのアプリケータは、塗布が実行されるときに分離する又は分離しやすい粒子を有する可能性がある。これは、塗布の質を変え、特に目の付近、たとえばまぶたへの化粧品の塗布において問題があると判明する可能性がある。具体的には、特定のサイズを有する粒子が角膜を刺激する可能性がある。
【0009】
最後に、現在の方法は、大量生産にあまり適応していない。
【0010】
したがって、本発明は、前述の問題のうちの少なくとも1つを解決する、化粧品用のアプリケータを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、握持部と、毛又は歯を含む塗布部とを含む化粧品アプリケータを製造する方法に関し、握持部及び塗布部は一体に形成されている。方法は、プラスチック材料の粉末を焼結することによる積層造形のステップと、これに続く粉末除去のステップ、及び前記化粧品アプリケータから分離するか又は部分的に焼結した粒子を除去するための後処理とを含む。後処理は、サンドブラスト(S4)及びイオン化ブロー(S5)のステップを含む。
【0012】
したがって、化粧品アプリケータを製造する方法は、その連続によってアプリケータの所望の特性を得られるようにする一連のステップとして、本発明により想定される。特に、請求される方法の一連のステップは、アプリケータの使用時に分離する又は分離し得る、(たとえばユーザの目にとって)潜在的に刺激性の粒子の不存在を保証しながら、アプリケータの塗布部(毛又は歯を含む)の位置で所望の粗さを得るために必要である。
【0013】
後処理は、好ましくは非水性溶媒中での洗浄という最終ステップ(S6)を、さらに含み得る。
【0014】
製造方法で利用されるプラスチック材料は、ポリアミド、好ましくは脂肪族ポリアミド、たとえばポリアミド11であってもよい。
【0015】
製造方法は、積層造形ステップの前に、ポリアミド粉末を処理するステップであって、
- 最大寸法が150ミクロン以下の粒状物のみを有する新しい粉末を提供するステップと、
- 積層造形ステップに既に供している、いわゆる使用済み粉末を提供し、最大寸法が150ミクロン以下の粒状物のみを有するようにするための、前記使用済み粉末を較正するステップと、
- 70/30~50/50の間、好ましくは60/40程度の新しい粉末/使用済み粉末比で、新しい粉末と較正した使用済み粉末とを混合するステップと、
を含むステップを、含んでいてもよい。
【0016】
積層造形は、レーザーによる粉末床溶融結合を含み得る。
【0017】
製造方法は、サンドブラストステップの前にプリブローのステップを含んでよい。サンドブラストは、45ミクロン~90ミクロンの間にある直径のガラス球を用いる微小球処理によって実行され得る。サンドブラストは、2つのサンドブラストノズルを含む回転ドラム内で実行され得る。
【0018】
イオン化ブロー(S5)は、内部イオン化バー及び外部イオン化バーを含む回転ドラム内で実行され得る。
【0019】
サンドブラスト(S4)及びイオン化ブロー(S5)のステップは、たとえば300個~10000個の化粧品アプリケータのバッチで実行され得る。
【0020】
本発明はまた、先に説明された製造方法を含み、所定の数の化粧品アプリケータのバッチで、500ミクロンよりも大きい最大寸法で分離又は部分的に焼結された残留粒子の数を測定すること、及び前記粒子の数がゼロではない場合に、後処理ステップの少なくとも1つのパラメータを修正することとを含む認定ステップ(S7)、次いで500ミクロンよりも大きい最大寸法の粒子の前記数がゼロになるまでこのような製造方法及び認定ステップ(S7)の連続をさらに含む、化粧品アプリケータを生産する方法にも関する。
【0021】
本発明のさらに別の特徴及び利点は、以下の説明で明らかになるだろう。
【0022】
添付図面において、非限定例として与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による方法をブロック図の形式で表す。
図2図1の方法及び任意選択的な追加ステップを含む、本発明の一実施形態による方法を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示される製造方法は、本発明による化粧品アプリケータを製造する方法のステップを有する。この方法は、未処理部品を得るための、積層造形のステップS1を含む。
【0025】
積層造形(S1)
積層造形ステップS1は、粉末、特にプラスチック材料の粉末に基づいて実行される。利用される積層造形法は、有利には、「選択的レーザー焼結」とも呼ばれる粉末床溶融結合、粉末結合の方法である。
【0026】
粉末床溶融結合法は、閉鎖チャンバ内で1層ずつ粉末床の表面で粉末の粒子を選択的に溶融するために、1種以上のレーザーを使用して粉末形態の物質から物体を生産することからなる。使用される粉末のタイプは、このような方法で使用できるいずれのタイプの粉末であってもよい。
【0027】
利用される粉末は、具体的には熱可塑性ポリマーの粉末、又はポリアミドの、好ましくは脂肪族ポリアミド、たとえばPA11とも呼ばれるポリアミド11、又はポリアクリルアミドの粉末であってもよい。
【0028】
PA11の方が、順応性があるため好ましいが、ポリアミド12又はPA12もまた成功裏に利用され得る。
【0029】
特に適切なPA11粉末の例は、EOS Materials社によって「PA1101」の問い合わせ番号で商品化された粉末である。
【0030】
好ましくは、粉末は、最大寸法が150ミクロン以下の粒状物を有する。好ましくは、最大寸法は80ミクロン以下、又はさらに好ましくは60ミクロン以下である。
【0031】
積層造形ステップに利用される機械は、EOS Materials社によってFORMIGA P110の名称で商品化された機械、又はいずれかの同等の機械であり得る。
【0032】
製造ステップにおいて、最初に積層造形機に粉末が投入される。
【0033】
たとえば、製造は、約10kgの粉末(通常はPA11の場合)を含むタンク内で実行され得る。製造は、いくつかのレベル、たとえば2~10の間のレベル、特に10を超えるレベルにわたって実行されてもよい。
【0034】
次に、レーザー焼結による未処理部品の形成が始まる。例として与えられる一実施形態によれば、タンク内の粉末は、およそ150℃に維持される。次に、1種又は複数種のレーザーが、粉末の局所的な溶融に必要な追加エネルギーを与える。たとえば、25Wのレーザーが成功裏に利用され得る。
【0035】
レーザーの数回の通過が必要なことがあり得る。
【0036】
3~4千個の部品のバッチの積層造形による形成は、これらの条件下でおよそ15時間かかり得る。未処理部品を形成するこのフェーズの最後に、グループを冷却しなければならない。上で挙げられた例では、冷却は、15時間程度続くことがあり得る。したがって、積層造形ステップの合計時間は、30時間程度であり得る。
【0037】
酸化を回避するために、冷却は、中性ガス下、たとえばアルゴン下で有利に実行される。
【0038】
サイクルタイム、より簡単には未処理部品の形成のための積層造形機の使用時間を最適化するために、冷却は、タンクの中身を中性ガス下に(具体的にはアルゴン下に)配置して、機械の外部で実行されてもよい。
【0039】
積層造形のステップS1は、化粧品アプリケータを幾何学的に表すデジタルファイルを使用する機械内で実行される。ファイルは、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアアプリケーション上でアプリケータを設計した後に取得される。このファイルは、STL形式、又は粉末床溶融結合による積層造形に使用され得るその他いずれかの標準ファイル形式であり得る。次にファイルは、積層造形に使用される機械の製造元によって供給されたソフトウェアアプリケーションによって処理される。このソフトウェアは、たとえばSU又はBFF形式のデジタル画像(たとえば100の画像)の形態のセクションにファイルを切断し、その各々が印刷するモデルの層、つまり縦軸に対して垂直な平面で取られたアプリケータの断面に対応する。次に、これらのデータは、アプリケータを生産するために積層造形機に送信される。
【0040】
したがって、積層造形のステップは、粉末中に埋め込まれた及び粉末で詰まった未処理部品、すなわち化粧品用の未処理アプリケータを形成することになる。
【0041】
なお、これに関連して、本出願人は、こうして粉末から得られた化粧品用の未処理アプリケータを分離する必要があるだけでなく、特に目の付近への化粧品の塗布のためのアプリケータでは、(たとえばその毛に保持された)アプリケータから分離した又は使用時に分離しやすい、並びに最大寸法が所与のサイズを超え、眼の刺激を生じやすい粒状物が完全に存在しないことを保証することが重要であることも、見いだした。以下で説明される後処理は、これらの粒状物の完全な除去を目的とする。通常、後処理は、500ミクロンより大きいすべての粒子を除去することを目的とする。実際のところ、粉末の初期粒状物の寸法より大きい寸法の粒子は、たとえば特定の粒状物の焼結が不完全な場合、積層造形のときに生成される可能性がある。
【0042】
粉末除去(S2)
積層造形のステップS1の後に、粉末除去のステップS2が続く。このステップは、粉末から未処理部品を分離できるようにする。
【0043】
回収された粉末は、図2を参照して以下で説明されるように、再利用され得る。このために、回収された粉末は、最大寸法が所与のサイズ(たとえば150ミクロン、80ミクロン、又は60ミクロン)以下である粒状物のみを維持するための分類方法を受けてもよい。
【0044】
粉末除去ステップは、未処理部品が埋め込まれた粉末から未処理部品を分離すること、及び未処理部品が(たとえば未処理部品の隅、化粧品アプリケータの未処理部品の毛に)担持する粉末を最大限除去することからなる。このステップは、手動で実行され得る。手動とは、オペレータが個別に又はグループごとに未処理部品を把持し、攪拌、ブロー及び/又はブラッシングによってそこから粉末を除去しなければならないことを意味する。
【0045】
粉末除去ステップは自動的に実行されてもよく、これは部品の生産、特に化粧品アプリケータなどの複雑な形状の小さい部品を、工業的規模で製造するのに有利である。
【0046】
好ましくは、この作業は、工業的規模、つまり毎週200000個を超える部品の生産を保証するために、粉末除去キャビン内で実行される。
【0047】
それでもなお、手動粉末除去、及び自動粉末除去はなおのこと、残留粉末を残す可能性があり、これにより未処理部品、つまり粉末除去後に得られた化粧品用の未処理アプリケータの後処理がさらに重要になる。
【0048】
実際のところ、本出願人は、特に目の付近への化粧品の塗布のための、化粧品のアプリケータの生産に関して、こうして粉末から得られた化粧品用の未処理アプリケータを分離する必要があるだけでなく、(たとえばその毛に保持された)アプリケータから分離した、又は使用時に分離しやすい、並びに最大寸法が所与のサイズを超え、眼の刺激を生じやすい粒状物が完全に存在しないことを保証することが重要であることも、見いだした。以下の後処理は、これらの粒状物の完全な除去を目的とする。通常、後処理は、500ミクロンより大きいすべての粒子を除去することを目的とする。実際のところ、粉末の初期粒状物の寸法より大きい寸法の粒子は、たとえば特定の粒状物の焼結が不完全な場合、積層造形のときに生成される可能性がある。
【0049】
サンドブラスト(S4)
サンドブラストは、表面を清浄するための既知の技術であり、ノズルによる圧縮ガス(通常は空気)を使用して、清浄すべき表面上に高速で噴射される研磨剤を使用する。
【0050】
それにもかかわらず、化粧品アプリケータのサンドブラストは、最適化されたパラメータでの実施を必要とする。それは、アプリケータのサイズが小さく、非常に細かい部材(すなわちアプリケータの毛)を破壊せずにサンドブラストする必要があり、大量の部品(たとえば300個~10000個の部品)を同時にサンドブラストする利点があり、及びサンドブラストすることによってアプリケータの使用時に分離しやすいすべての粒子を未処理部品から分離する重要性があるという理由による。
【0051】
プリブローステップS3は、サンドブラストステップS4に先行することができ、図2を参照して詳述される。
【0052】
サンドブラストステップS4は、特に粉末の部分的に焼結された粒状物を除去できるようにする。サンドブラストは、45~90ミクロンの直径を有するガラス球を噴射する少なくとも1つのノズルを含むサンドブラスターで実行される。サンドブラストはまた、化粧品アプリケータ上で所望の表面状態を得ることも可能にする。たとえばバイカーボネート、又は圧縮された果実の種など、他の研磨媒体も想定され得る。
【0053】
研磨剤粒子の性質及びサイズに加えて、サンドブラスト機のタイプ、射出圧力、バレルの表面に対するノズルの距離及び配向は、所望の結果を得るために重要なパラメータである。
【0054】
大量バッチのアプリケータ(たとえば3000個~4000個程度の部品)の処理では、以下のパラメータが成功裏に決定された。サンドブラストは、回転バレルを有するサンドブラスターで実行される。選択されたバレルは500mmの直径を有する。バレルは、部品の攪拌を保証するために、毎分3回転で回転する。サンドブラストは、35~45分、たとえば40分続いてもよい。球体は、2.5バールの空気圧で射出される。
【0055】
当業者は当然ながら、本発明が、例示として与えられたこれら前述のパラメータに限定されないことを理解するだろう。
【0056】
攪拌は、バレル内に横方向に吹き込む、及び/又はバレルの表面に対して部品を持ち上げる、第2のノズルの使用によって改善され得る。
【0057】
イオン化ブロー(S5)
方法は、サンドブラストステップS4の後に、イオン化ブローステップS5を含む。実際のところ、サンドブラストは、化粧品アプリケータの毛又は他の隙間に粒子を滞留させることがある。粒子は、主に化粧品アプリケータを構成する材料の粒子、たとえばPA11であるが、サンドブラストステップS4で利用する研磨剤の粒子であり得る。
【0058】
一般的な用語でのイオン化は、原子又は分子に電荷を除去又は追加することからなる。したがって、一般にイオナイザーと呼ばれるイオン化システムは、荷電原子であるイオンを生成する。イオナイザーは、様々な形態を取る。最もよくある形態は、バーの形態である。イオン化バーは、イオン化される媒体の近く、通常50mm未満に配置されなければならない。本出願人は、イオン化ブローステップの実施が化粧品アプリケータの積層造形の方法に特に関連していることを確認した。実際のところ、イオン化ブローによる清浄において、イオン化は、化粧品アプリケータが担持する静電気の効果を排除することができる。ブローからの空気流は残留粒子をアプリケータから分離させることができ、その表面において、粒子はもはや静電気によって保持されなくなる。こうしてアプリケータから分離した粒子は、イオン化ブローチャンバから吸い出される。
【0059】
イオン化ブローは、サンドブラストバレルと同一のバレル又はドラム内で、又はサンドブラストステップS4で使用されるのと同じバレル内でも、実行され得る。したがって、バレルは、サンドブラストステップS4について述べた寸法上の特徴及び回転速度を有することができる。
【0060】
イオン化ブローステップS5では、装置は有利に2つのイオン化システム、たとえば2つのイオン化バーを含む。1つのバーはバレル(又は別のチャンバ)の内部に配置され、1つのバーは外部に設けられる。
【0061】
以下のブローパラメータは、成功裏に利用され得る。イオン化ブローは、4バールの圧力下で実行されてもよい。イオン化ブローステップS5は、30~40分続いてもよい。
【0062】
イオン化ブローステップS5は、たとえば300個~10000個、具体的には3000個~4000個の化粧品アプリケータのバッチで実行されてもよい。
【0063】
当然ながら、近いパラメータも成功裏に利用され得る。たとえば、非限定的に、ブロー圧力は3~5バールであってもよく、ブロー持続時間は著しく減少してもよく、たとえば15分程度又はそれ以下であってもよい。
【0064】
イオン化ブローに加えて、最先端の技術で知られる欠点(不十分な表面状態、目を刺激する粒子が存在する可能性)を示さない化粧品アプリケータが得られる可能性がある。
【0065】
図1と同様のやり方で、図2は化粧品アプリケータを製造する方法を表し、この方法は、図1の方法及び追加ステップを含む本発明の一実施形態による。以下に示される追加ステップは、積層造形ステップの前に粉末を調製又は処理する先行ステップ(粉末を処理するステップS0)に関し、さらに方法に加えて得られたアプリケータが所望の特性を有すること、特に使用時に分離する、又は分離しやすい粒子が存在しないことをより確実に保証できるようにする、後処理ステップに関する。
【0066】
以下で説明される任意選択的なステップは、別のステップを実行するための最適なパラメータを変化させ得るが、これらは図1の方法に互いに独立して組み込まれてもよい。
【0067】
粉末の処理(S0)
所望の最終表面状態を得るために、たとえばPA11又はPA12の、積層造形ステップS1で利用される粉末が、最初に適切な特性を有することが重要である。
【0068】
最も重要であると考えられる特性は、利用する粉末の粒径である。
【0069】
典型的には、本出願人は、方法の最終製品としての化粧品アプリケータの欠陥を回避するために微細で均質な粉末を利用することの重要性に気づいた。利用される粉末は、最大寸法が150ミクロン未満の粒状物のみを有利に有していなければならない。有利には、粒状物の最大寸法が80ミクロン又は60ミクロン未満の、さらに細かい粉末が利用されてもよい。
【0070】
所望の特性、特に粒径は、これらの特性を有する市販の粉末を選択することによって保証され得る。それにもかかわらず、コストという明らかな理由のため、使用済みと呼ばれる粉末、つまり積層造形のステップS1で既に利用された粉末を再利用できることは有利である。具体的には、粉末除去ステップS2で回収された粉末の特定の一部が、化粧品アプリケータを製造する次のサイクル(又はバッチ)で再利用され得る。
【0071】
使用済み粉末は、未処理部品と結びついていなくても、新しい粉末と比較して、積層造形のときに変化している可能性がある。粉末の粒状物は、熱によって変形したり、結合したり、又は部分的に焼結している可能性がある。
【0072】
最終製品の特性を損なわずに使用済み粉末を再利用するためには、回収された使用済み粉末は、適切な分類又は較正方法によって較正される。具体的には、使用済み粉末の選別が実行され得る。回収された粉末から、所望の最大寸法より大きい寸法を有する粒状物を分離するために、いくつかのタイプの選別が想定され得る。具体的には、超音波による、微振動による、及び/又はブローによる選別を使用することが可能である。
【0073】
粒状物の最大寸法の望ましい最大寸法は、たとえば150ミクロン、又は80ミクロン、又は60ミクロンであってもよい。
【0074】
分類又は選別は、較正された使用済み粉末の回収を可能にし、これは化粧品アプリケータの積層造形に再利用するのに適している。
【0075】
したがって、粉末を処理するステップS0で、新しい粉末と較正された使用済み粉末との混合が実行される。使用済み粉末を最大限に再利用することが求められる。PA11を用いて、100/0~50/50の間、特に70/30~50/50の間、たとえば60/40程度に含まれる、新しい粉末/使用済み粉末比で、満足な結果が得られた。
【0076】
プリブロー(S3)
プリブローステップS3は、粉末除去ステップS2の後、サンドブラストステップS4の前に実行される。
【0077】
プリブローのステップは、未処理の粉末除去された部品を圧力下で空気流に曝すことによる粉末除去に加えて、粒子を最大限除去することを目的とする。プリブローステップは、サンドブラストステップS4で使用されるサンドブラスト機のバレル内で有利に実行され得る。プリブローは、2.5バールで空気を吹き出す2つのノズルを用いて、5~10分間、たとえば7分間実行され得る。
【0078】
洗浄/清浄(S6)
補足的な清浄は、洗浄又は清浄と呼ばれるステップS6で実行され得る。
【0079】
清浄とは、化粧品アプリケータの表面から、又はこれらの部品の毛又は隙間からの粒状物、粒子、又はその他の残留物質の除去を可能にするあらゆるタイプの作業を意味する。洗浄は、水性であるか否かにかかわらず、製品の洗浄を実施するタイプの清浄に対応する。
【0080】
適切な溶液中での洗浄が実行される。洗浄は、還流による洗浄の原理に基づいて実行され得る。
【0081】
利用される洗浄装置はいくつかのセクション、たとえば
・ボイラーと呼ばれる洗浄タンク、
・すすぎタンク、
・蒸発ゾーン、
・乾燥ゾーン、及び
・4℃で洗浄製品を収集及びリサイクルできるようにする凝縮コイル
を含み得る。
【0082】
洗浄タンクは、メッシュを含む回転バスケット、及び/又は浸漬ジェットを含み得る。
【0083】
洗浄及び/又はすすぎタンク内で、部品は超音波に曝されてもよい。使用される超音波は、25kHz~45kHzの間の周波数を有し得る。
【0084】
洗浄は特に、イソプロピルアルコールの50%溶液中で、又は好ましくはフルオロケトン溶液中で実行され得る。この溶液は、化粧品アプリケータの機械的特性を変化させずに、残留サンドブラスト球の除去、及びより一般的には80ミクロン未満の寸法の粒子の除去において優れたレベルの効果を有する。
【0085】
付加的又は代替的に、化粧品アプリケータの選別を想定した部品の選別が、微振動及び/又はブローの下で行われる。これはまた乾燥した環境で実行されるという利点も有する。
【0086】
認定(S7)
認定ステップS7は、実際の製造方法の最後に得られた化粧品アプリケータが特定の認定基準を満たすことを保証できるようにし得る。
【0087】
具体的には、認定ステップは、潜在的に刺激性の粒子が完成品に存在しないことを保証することを可能にできる。
【0088】
認定ステップは、生産中に定期的に、規則的又は不規則な間隔で、又はより好ましくは部品の各バッチにおける特定の数の化粧品アプリケータのランダムサンプリングによって、実行され得る。バッチはたとえば10000個~100000個の部品のグループで構成されてもよく、又は8個~100個の部品が各バッチからサンプリングされてもよい。
【0089】
認定ステップでは、サンプリングされた部品のいずれも、最大寸法が500ミクロンより大きい(又は別の所定の寸法より大きい)、使用時に分離する又は分離しやすい粒子を含まないことが確認できる。
【0090】
より小さい寸法の、使用時に分離する、又は分離しやすい粒子の数もまた確認され得る。たとえば、最大寸法が150ミクロン~500ミクロンの間の粒子の数を確認することができる。たとえば、認定ステップは、所与の数量のアプリケータに対して所定の最大数のこのような粒子(消費者にとって重要ではない)を存在させることができるだろう(たとえば、10000個~100000個の部品のバッチにおける32個のアプリケータのサンプルで7粒子、又は、たとえば500000個を越える部品のグループにおける50個の部品のサンプルで10粒子)。
【0091】
認定ステップで準拠しないことが検出された場合、関連するバッチは拒絶又は破棄され得る。方法を確認する措置、及び/又は製造パラメータを補正する措置が取られてもよい。
【0092】
したがって、本発明は、握持部及び塗布部を含む化粧品アプリケータの、積層造形による工業的規模での製造方法を提供する。この製造方法は、特に化粧品を保持するための毛又は歯を含む塗布部から分離する、又は分離しやすい粒子が存在しないことを保証する。これは、マスカラブラシタイプのアプリケータ、より一般的には目の付近への化粧品の塗布のためのアプリケータにとって重要である。したがって、方法は、所与の寸法(たとえば500ミクロン)より大きい寸法の粒子が存在しないことを保証する。方法はまた、特定の範囲内の寸法(たとえば、150ミクロン~500ミクロンの間)の最大数の粒子を保証することも可能にする。
【0093】
本発明で提供される製造方法は、積層造形に限らず、利用される材料の前処理又は処理、並びに適切な後処理ステップも含む一連のステップとして、製造方法を考慮することによって、これを可能にする。
図1
図2