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特許7326343ウルシオールを含むパッチ、それを含む試験パネル、及びそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ウルシオールを含むパッチ、それを含む試験パネル、及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20230807BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230807BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 36/22 20060101ALI20230807BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20230807BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20230807BHJP
   A61P 39/02 20060101ALN20230807BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K49/00
A61K9/70 401
A61K47/34
A61K47/32
A61K36/22
A61P17/00
A61P37/08
A61P39/02
【請求項の数】 53
(21)【出願番号】P 2020564819
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 US2019017835
(87)【国際公開番号】W WO2019160942
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】62/630,151
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520304790
【氏名又は名称】ハプテン・サイエンシーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カート・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】マフムード・アフマド・エルソリー
(72)【発明者】
【氏名】ワシーム・グル
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・ジェイ・ヘイグ
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103479400(CN,A)
【文献】Contact Dermatitis,2014年,Vol.70, Suppl.1,p.74, Abstract No.114
【文献】Package Insert - T.R.U.E. TEST, [online],2017年,[2022年10月14日検索], URL, https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/allergenics/true-test
【文献】T.R.U.E. TEST(R), Reference Manual, [online],2017年08月11日,INTERNETARCHIVE waybackmachine, [2022年10月14日検索], URL, https://www.smartpractice.com/dermatologyallergy/pdfs/truetest-reference-manual.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/00-49/22
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.支持体材料と、
b.支持体材料表面上のウルシオール含有フィルムと
を含むウルシオール含有皮膚パッチであって、
支持体材料表面が、ウルシオール含有フィルムで被覆されており、
ウルシオール含有フィルムが、約0.04μgから約0.8μgのウルシオールを含む、パッチ。
【請求項2】
ウルシオール含有フィルムが、支持体材料表面に固定されている、請求項1に記載のパッチ。
【請求項3】
ウルシオール含有フィルムが担体材料を含む、請求項2に記載のパッチ。
【請求項4】
ウルシオール含有フィルムがポリビニルピロリドンを含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項5】
ウルシオール含有フィルムが、約0.04μgから約0.3μgのウルシオールを含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項6】
ウルシオール含有フィルムが、約0.04μgから約0.5μgのウルシオールを含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項7】
ウルシオール含有フィルムが、約0.041μgのウルシオールを含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項8】
ウルシオール含有フィルムが、約0.075μgから約0.085μgのウルシオールを含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項9】
ウルシオール含有フィルムが、約0.081μgのウルシオールを含む、請求項8に記載のパッチ。
【請求項10】
ウルシオール含有フィルムが、約0.1μgから約0.2μgのウルシオールを含む、請求項3に記載のパッチ。
【請求項11】
ウルシオール含有フィルムが、約0.16μgのウルシオールを含む、請求項10に記載のパッチ。
【請求項12】
ウルシオール含有フィルムが、約0.3μgから約0.4μgのウルシオールを含む、請求項3に記載のパッチ。
【請求項13】
ウルシオール含有フィルムが、約0.32μgのウルシオールを含む、請求項12に記載のパッチ。
【請求項14】
ウルシオールが、ウルシオール含有フィルムの担体材料全体にわたって均一に分布している、請求項3及び10から13のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項15】
支持体材料がポリエステルを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項16】
支持体材料が、閉塞性ポリエステルを含む、請求項15に記載のパッチ。
【請求項17】
支持体材料が、閉塞性Melinex(登録商標)ポリエステルである、請求項16に記載のパッチ。
【請求項18】
パッチのサイズが、約0.2cm2から約1cm2である、請求項1から17のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項19】
パッチのサイズが、約0.5cm2から約0.9cm2である、請求項1から18のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項20】
パッチのサイズが約0.81cm2である、請求項19に記載のパッチ。
【請求項21】
ウルシオールへの曝露に起因するアレルギー性接触性皮膚炎を対象において評価するための試験パネルであって、少なくとも1つの請求項1から20のいずれか一項に記載のパッチを含む試験パネル。
【請求項22】
ウルシオールへの曝露に起因するアレルギー性接触性皮膚炎を対象において評価するための試験パネルであって、少なくとも2つの請求項1から20のいずれか一項に記載のパッチを含み、各パッチが異なる量のウルシオールを含む、試験パネル。
【請求項23】
ウルシオールへの曝露に起因するアレルギー性接触性皮膚炎を対象において評価するための試験パネルであって、少なくとも3つの請求項1から20のいずれか一項に記載のパッチを含み、各パッチが異なる量のウルシオールを含む、試験パネル。
【請求項24】
ウルシオールへの曝露に起因するアレルギー性接触性皮膚炎を対象において評価するための試験パネルであって、1~4つの請求項1から20のいずれか一項に記載のパッチを含み、各パッチが異なる量のウルシオールを含む、試験パネル。
【請求項25】
前記パッチと実質的に同一であるが、ウルシオールを含まない対照パッチを更に含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の試験パネル。
【請求項26】
前記パッチが、粘着性支持体の表面に固定されている、請求項21から25のいずれか一項に記載の試験パネル。
【請求項27】
前記粘着性支持体が粘着性テープを含む、請求項26に記載の試験パネル。
【請求項28】
前記粘着性テープが外科用テープである、請求項27に記載の試験パネル。
【請求項29】
約0.041μgのウルシオールを含む第1のパッチと、
約0.081μgのウルシオールを含む第2のパッチと、
約0.16μgのウルシオールを含む第3のパッチと、
約0.32μgのウルシオールを含む第4のパッチと、
前記第1、第2、第3、及び第4のパッチと実質的に同一であるが、ウルシオールを含まない対照パッチと
を含む、請求項24に記載の試験パネル。
【請求項30】
ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎に対する感受性の対象における評価において使用するための請求項21~29のいずれか一項に記載の試験パネルであって、
験パネルは、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用され、
試験パネルは、対象の皮膚から除去され、及び
対象の皮膚からの試験パネルの除去後、試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、1回又は複数回評価される、
試験パネル。
【請求項31】
所定の時間が、約1時間から約96時間である、請求項30に記載の試験パネル。
【請求項32】
所定の時間が、約24時間から約72時間である、請求項31に記載の試験パネル。
【請求項33】
所定の時間が約48時間である、請求項32に記載の試験パネル。
【請求項34】
試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度の評価が、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに行われる、請求項30から33のいずれか一項に記載の試験パネル。
【請求項35】
試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度の評価が、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2~30日目のうちの1日又は複数日で行われる、請求項30から34のいずれか一項に記載の試験パネル。
【請求項36】
試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度の評価が、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2、4、7、14、及び21日目にそれぞれ行われる、請求項30から35のいずれか一項に記載の試験パネル。
【請求項37】
ウルシオール曝露とその結果生じる対象におけるアレルギー性接触性皮膚炎の重症度とに関する用量応答の算出において使用するための請求項21~29のいずれか一項に記載の試験パネルであって、
験パネルは、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用され、
試験パネルは、対象の皮膚から除去され、
試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、定量化され、
験パネルの各パッチの接触位置における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の定量的な重症度が、各パッチのウルシオール含有量に対して相関され、及び
前記相関から、ウルシオール曝露とその結果生じる対象におけるアレルギー性接触性皮膚炎とに関する用量応答が算出される、
試験パネル。
【請求項38】
所定の時間が、約1時間から約96時間である、請求項37に記載の試験パネル。
【請求項39】
所定の時間が、約24時間から約72時間である、請求項38に記載の試験パネル。
【請求項40】
所定の時間が約48時間である、請求項39に記載の試験パネル。
【請求項41】
対象の皮膚上の1つ又は複数の位置における原因不明の皮膚炎を呈する対象の皮膚上の原因不明の皮膚炎が、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎であるかどうかの判定において使用するための請求項21~29のいずれか一項に記載の試験パネルであって、
試験パネルは、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用され、
試験パネルは、対象の皮膚から除去され、
対象のウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎が、試験パネルの各パッチの接触箇所において評価され、及び
試験パネルの各パッチの接触箇所におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎が、対象の皮膚上のもう1つの位置における原因不明の皮膚炎と比較され、
験パネルの各パッチの接触箇所におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎が、対象の皮膚上のもう1つの位置における原因不明の皮膚炎と実質的に同様である場合、原因不明の皮膚炎がウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎であると判定される、試験パネル。
【請求項42】
所定の時間が、約1時間から約96時間である、請求項41に記載の試験パネル。
【請求項43】
所定の時間が、約24時間から約72時間である、請求項42に記載の試験パネル。
【請求項44】
所定の時間が約24時間である、請求項43に記載の試験パネル。
【請求項45】
所定の時間が約48時間である、請求項43に記載の試験パネル。
【請求項46】
ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置が対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の重症度を予防するか又は阻害するかどうかの判定において使用するための請求項21~29のいずれか一項に記載の試験パネルであって、
験パネルは、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用され、
験パネルは、対象の皮膚から除去され、
試験パネルの対象の皮膚からの除去後、試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、1回又は複数回評価され、
置が対象に投与され、
置の投与後、第2の請求項21から29のいずれか一項に記載の試験パネルが、対象の皮膚に同じ所定の時間にわたって適用され、
第2の試験パネルが対象の皮膚から除去され、及び
第2の試験パネルの対象の皮膚からの除去後第2の試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、1回又は複数回評価され、
2の試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、試験パネルの対応する各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度よりも低い場合、処置が、対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の重症度を予防するか又は阻害すると判定される、試験パネル。
【請求項47】
所定の時間が、約1時間から約96時間である、請求項46に記載の試験パネル。
【請求項48】
所定の時間が、約24時間から約72時間である、請求項47に記載の試験パネル。
【請求項49】
所定の時間が約48時間である、請求項48に記載の試験パネル。
【請求項50】
試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度の評価が、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに行われる、請求項46から49のいずれか一項に記載の試験パネル。
【請求項51】
試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度の評価が、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2~30日目のうちの1日又は複数日で行われる、請求項46から50のいずれか一項に記載の試験パネル。
【請求項52】
試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度の評価が、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2、4、7、14、及び21日目にそれぞれ行われる、請求項46に記載の試験パネル。
【請求項53】
ルシオールが、ペンタデシルカテコール、3-n-ペンタデシルカテコール、ペンタデシルカテコールのモノ、ジ、若しくはトリ不飽和同族体、1、2、3個若しくはそれ以上のオレフィンを有する3-n-ペンタデシルカテコール、又はこれらの組合せのうちの1つ又は複数を含む、請求項1から52のいずれか一項に記載のパッチ又は試験パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年2月13日に出願された米国特許仮出願第62/630,151号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポイズンアイビー、ポイズンオーク、及びポイズンシュマックは、北米におけるアレルギー性接触性皮膚炎の最も一般的な原因であり、年間1千万~5千万人のアメリカ人に影響を与えている。1一般的な成人母集団におけるポイズンアイビー及びポイズンオーク感受性の有病率は、50~70%の範囲である。2,3ポイズンアイビー皮膚炎は、全ての人種及び皮膚タイプに影響を与え、米国における大部分の地理的領域が危険にさらされている。4植物皮膚炎は、農業及び林業において重大な職業上の危険をもたらすものであり、屋外又は荒地での活動に従事する多くの人を苦しめている。更にこのことは、労働者の身体障害及び医学的療法に関して多額の金銭的出費につながる場合がある。5
【0003】
ポイズンアイビー、ポイズンオーク及びポイズンシュマックは、植物のウルシ科(Anacardiaceae)のメンバーであり、トキシコデンドロン属(Toxicodendron)に属する。3ウルシ科の植物への曝露は、全ての他の植物科を組み合わせたものよりも多くのアレルギー性接触性皮膚炎の主要因となる。5ウルシオールと呼ばれるアレルゲンは、ポイズンアイビー、オーク、及びシュマックに対するアレルギー性接触性皮膚炎を引き起こす原因となり、植物の樹液材料で認められる。ウルシオールは、有機化合物の油性混合物であり(本明細書においてまとめて「ウルシオール(urushiol)」、「ウルシオール(urushiols)」及び/又は「ウルシオール油」と称する)、アレルゲン特性を示す。ウルシオールは、15又は17個のいずれかの炭素側鎖をC-3位置に有し、1、2、3個又はそれ以上のオレフィンを有するカテコールの混合物からなる。ポイズンアイビーウルシオールは、3-n-ペンタデシルカテコール(C-15)を主に含み、ポイズンオークは、3-n-ヘプタデシルカテコール(C-17)を主に含む2,3(例えば、図1を参照のこと)。ポイズンアイビー、ポイズンオーク、及びポイズンシュマックにおけるウルシオールは、構造がわずかに異なるのみであるため、これらは交差反応する場合があり、したがって、1つに感作した個体は、全てに反応する場合がある。
【0004】
ポイズンアイビー、オーク又はシュマックからのアレルギー性接触性皮膚炎は、古典的なIV型過敏性(細胞介在性)アレルギー性反応である。ウルシオールは強力な抗原であるため、1回の曝露で臨床的症状をもたらすのに十分な場合がある。ポイズンアイビーに再曝露すると、サイトカインの放出、及び臨床的症状が12から48時間で生じる。植物が皮膚を軽くかすめた場合、臨床的所見は、古典的には、紅斑性丘疹及び小胞の線条(linear streak)によって特徴付けられる急性湿疹性発疹である。二次的な変化としては、浸出、痂疲、浮腫、及び擦過創がある。発疹は、植物と接触してから24から48時間後に通常始まり、処置せずに放置した場合、発疹は最大3週間続く場合がある。3
【0005】
ウルシオールは水で分解されるが、ただちに洗い流すべきである。1410分で50%、15分で25%、30分で10%を除去することができる。1030分後、全ての油が吸収される。曝露後療法としては、応答を予防するもの及び症状を軽減するものがある。応答を予防することを目的とする治療法は、反応の進行を防ぐことが認められている。しかし、そのような治療法を評価した研究はサンプルサイズが小さかっただけではなく、これらの製品を使用した全ての対象を保護することができなかった。15,16掻痒の症状を軽減するものとしては、重曹又はコロイド状オートミールを用いた微温浴、冷却湿布剤、カラミンローション剤、局所用又は全身用抗ヒスタミン剤、収斂液、局所用カルシニューリン阻害剤及び局所用又は全身用ステロイドがある。10全身用コルチコステロイドは中等度から重度の接触性皮膚炎の処置の中心にあり、典型的には、7~10日間与えられ、続いて更に7~10日間漸減する。
【0006】
予防的方法としては、布地、バリアクリーム、及び脱感作プログラムがある。抗原が分解する前に生地に容易に染み込み、皮膚に堆積する場合がある、汗を吸った薄い衣服とは対照的に、乾燥した粗い織物布地は最も防御性がある。10理想的なバリアクリームは、効果的であり、非感作性であり、非刺激性であり、容易に適用され、除去され、美容的に許容でき、費用効率が高いことが記載されている。17FDAが承認する唯一のバリア製品であるクオタニウム-18-ベントナイトは、ウルシオールに対して実験的に作り出したアレルギー性接触性皮膚炎の予防において効果が高いことが示された。18残念ながら、クオタニウム-18-ベントナイト等のバリア製品の制約は、対象が、アレルゲンに曝露する前にこれらの製品を先制して使用しなければならないことである。更に、感作した個体のための脱感作プログラムは、現在にいたるまで予防の有望な方法であることは実証されていない。14,19
【0007】
植物を全滅させるか又は対象を保護するための多くの方法及び処置が開発されてきたが、完全に効果的であると立証されたものはない。20唯一確実な方法は、完全に回避することである。ポイズンアイビー、オーク及びシュマックへの曝露に起因するウルシオール誘発性接触性皮膚炎を予防及び/又は軽減するための治療法を開発するために広範な努力が行われてきた。現在では、そのような治療法の有効性を評価するための米国で利用可能なウルシオール感受性パッチ試験は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Sawhney H S et al. (1993) Macromolecules 26:581-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウルシオール誘発性接触性皮膚炎を予防又は緩和するための新規の治療法の有効性を正確に評価するため、ウルシオール曝露に対するベースライン応答を定量化し、ウルシオール曝露に関する実験処置の効果を評価するのに適切な評価ツール及び方法が必要とされている。更に、ウルシオール誘発性接触性皮膚炎を同定し、他のタイプの皮膚炎からウルシオール誘発性接触性皮膚炎を識別し、原因不明の皮膚炎を呈する対象を効果的に処置するためのツール及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様において、本開示は、支持体材料と、支持体表面上のウルシオール含有フィルムとを含むウルシオール含有皮膚パッチであって、支持体材料表面が、ウルシオール含有フィルムで被覆されている、パッチを提供する。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、支持体材料表面に固定されている。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは担体材料を含む。いくつかの実施形態において、担体材料はポリビニルピロリドンを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、ウルシオールは、ペンタデシルカテコール、ペンタデシルカテコールのモノ、ジ、若しくはトリ不飽和同族体のうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.02μgから約100μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.04μgから約0.5μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.041μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.075μgから約0.085μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.081μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.1μgから約0.2μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.16μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.3μgから約0.4μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.32μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオールは、ウルシオール含有フィルムの担体材料全体にわたって均一に分布している。
【0012】
いくつかの実施形態において、支持体材料はポリエステルを含む。いくつかの実施形態において、支持体材料は、閉塞性ポリエステルを含む。いくつかの実施形態において、支持体材料は、閉塞性Melinex(登録商標)ポリエステルである。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.2cm2から約1cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.5cm2から約0.9cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.81cm2である。
【0013】
別の態様において、本開示は、ウルシオールへの曝露に起因するアレルギー性接触性皮膚炎を対象において評価するための試験パネルであって、少なくとも1つのウルシオール含有皮膚パッチを含む試験パネルを提供する。いくつかの実施形態において、試験パネルは、少なくとも2つのウルシオール含有皮膚パッチを含み、各パッチは異なる量のウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、試験パネルは、少なくとも3つのウルシオール含有皮膚パッチを含み、各パッチは異なる量のウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、試験パネルは、少なくとも4つのウルシオール含有皮膚パッチを含み、各パッチは異なる量のウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、試験パネルは、ウルシオール含有皮膚パッチと実質的に同一であるが、ウルシオールを含まない対照パッチを更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、ウルシオール含有皮膚パッチは、粘着性支持体の表面に固定されている。いくつかの実施形態において、粘着性支持体は粘着性テープを含む。いくつかの実施形態において、粘着性テープは外科用テープである。
【0015】
いくつかの実施形態において、試験パネルは、約0.041μgのウルシオールを含む第1のパッチと、約0.081μgのウルシオールを含む第2のパッチと、約0.16μgのウルシオールを含む第3のパッチと、約0.32μgのウルシオールを含む第4のパッチと、前記第1、第2、第3、及び第4のパッチと実質的に同一であるが、ウルシオールを含まない対照パッチとを含む。
【0016】
別の態様において、本開示は、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎に対する感受性を対象において評価する方法であって、本明細書において記載する試験パネルを、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用する工程と、試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、試験パネルを除去後、対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度を、試験パネルの各パッチの接触箇所において1回又は複数回評価する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約1時間から約96時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24時間から約72時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は約48時間である。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2~30日目のうちの1日又は複数日で行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2、4、7、14、及び21日目にそれぞれ行われる。
【0017】
別の態様において、本開示は、ウルシオール曝露とその結果生じる対象におけるアレルギー性接触性皮膚炎の重症度とに関する用量応答を算出する方法であって、本明細書において記載する試験パネルを、所定の時間にわたって適用する工程と、試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度を、前記試験パネルの各パッチの接触箇所において定量化する工程と、前記試験パネルの各パッチの接触位置におけるアレルギー性接触性皮膚炎の定量的な重症度を、各パッチの前記接触位置に対応する各パッチのウルシオール含有量に対して相関させる工程と、前記定量化された重症度に対応する位置における各パッチのウルシオール含有量に対する、アレルギー性接触性皮膚炎の前記定量化された重症度から、ウルシオール曝露とその結果生じる対象におけるアレルギー性接触性皮膚炎とに関する用量応答を算出する工程とを含む方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、所定の時間は、約1時間から約96時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24時間から約72時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は約48時間である。
【0019】
別の態様において、本開示は、対象の皮膚上の1つ又は複数の位置における原因不明の前記皮膚炎を呈する対象の皮膚上の原因不明の皮膚炎が、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎であるかどうかを判定する方法であって、本明細書において記載する試験パネルを、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用する工程と、対象のウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎を、試験パネルの各パッチの接触箇所において評価する工程と、試験パネルの各パッチの接触箇所におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎を、対象の皮膚上のもう1つの位置における原因不明の皮膚炎と比較する工程とを含み、試験パネルの各パッチの接触箇所における皮膚炎が、対象の皮膚上のもう1つの位置における皮膚炎と実質的に同様である場合、原因不明の皮膚炎が、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎である、方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、所定の時間は、約1時間から約96時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24時間から約72時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間が約24時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は約48時間である。
【0021】
別の態様において、本開示は、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置が、対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の重症度を予防するか又は阻害するかどうかを判定する方法であって、本明細書において記載する試験パネルを、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用する工程と、試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、試験パネルを除去後、対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度を、試験パネルの各パッチの接触箇所において1回又は複数回評価する工程と、処置を対象に投与する工程と、処置を投与後、本明細書において記載する試験パネルを、対象の皮膚に同じ所定の時間にわたって適用する工程と、試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、処置を投与後、対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度を、試験パネルの各パッチの接触箇所において1回又は複数回評価する工程とを含み、前記投与する工程後に適用された試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、前記投与する工程前に適用された試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度よりも低い場合、処置が、対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の重症度を予防するか又は阻害することを判定する、方法を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態において、所定の時間は、約1時間から約96時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24時間から約72時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は約48時間である。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2~30日目のうちの1日又は複数日で行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2、4、7、14、及び21日目にそれぞれ行われる。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載するパッチ、試験パネル、又は方法におけるウルシオールは、ペンタデシルカテコール、ペンタデシルカテコールのモノ、ジ、若しくはトリ不飽和同族体、又はこれらの組合せのうちの1つ又は複数を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ウルシオール化合物の構造を示す図である。
図2】試験パネルを適用してから2日後の、対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチを含む試験パネルからの様々な用量のウルシオールに関するウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎応答のスコアリングを示す棒グラフである。
図3】試験パネルを適用してから4日後の、対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチを含む試験パネルから様々な用量のウルシオールに関するウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎応答のスコアリングを示す棒グラフである。
図4】試験パネルを適用してから7日後の、対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチを含む試験パネルからの様々な用量のウルシオールに関するウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎応答のスコアリングを示す棒グラフである。
図5】試験パネルを適用してから14日後の、対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチを含む試験パネルからの様々な用量のウルシオールに関するウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎応答のスコアリングを示す棒グラフである。
図6】試験パネルを適用してから21日後の、対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチを含む試験パネルからの様々な用量のウルシオールに関するウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎応答のスコアリングを示す棒グラフである。
図7】試験パネルを適用した後の、全ての対象に関し、全ての評価時における、対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチを含む試験パネルからの、様々な用量のウルシオールに関するウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎応答の強度を複合したスコアリングを示す棒グラフである。
図8】試験パネルを適用してから7日後の、対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチを含む試験パネルの各パッチの接触箇所における対象の皮膚を示す写真である。対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチに関する反応はそれぞれ、0、2+、2+、3+、及び3+である。
図9】試験パネルを適用してから2日目、4日目、7日目、14日目、及び21日目の全ての対象に関する、対照パネル、0.041μgのウルシオールを含むパッチ、0.081μgのウルシオールを含むパッチ、0.16μgのウルシオールを含むパッチ、及び0.32μgのウルシオールを含むパッチを含む試験パネルからの、全てのウルシオール濃度に関し、全ての対象に関する、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎応答の強度を複合したスコアリングを示す棒グラフであり、応答の重症度のピークは4又は7日目であったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において記載する組成物及び方法に対する他の好適な改良及び適応は、当業者であれば既知の情報を考慮して、本明細書に含まれる発明の説明から容易に明らかであり、発明又はその任意の実施形態の範囲から逸脱することなく行ってもよいことは当業者であれば理解するであろう。
【0026】
定義
「約」という用語は、値の±10%を意味する。したがって、例えば、約100は、90から110を意味し、約100から約200は、90から220を含む。
【0027】
本開示全体にわたって、様々な特許、特許出願及び出版物を参照する。これらの特許、特許出願及び出版物の開示は、その全体が、本開示の日付で当業者に既知の最新技術をより完全に説明するために参照により本開示に組み込まれる。本開示は、特許、特許出願及び出版物と本開示との間に任意の不一致がある場合に優先されることになる。
【0028】
本明細書において使用する「ウルシオール」という用語は、15又は17個のいずれかの炭素側鎖をC-3位置に有し、1つ又は複数の不飽和度を含んでいてもよいカテコールの混合物を意味する。ポイズンアイビーウルシオールは、3-n-ペンタデシルカテコール(C-15)を主に含み、ポイズンオークは、3-n-ヘプタデシルカテコール(C-17)を主に含む2,3(例えば、図1を参照のこと)。ポイズンアイビー、ポイズンオーク、及びポイズンシュマックにおけるウルシオールは構造がわずかに異なるのみであるため、これらは交差反応する場合があり、したがって、1つに感作した個体は、全てに反応する場合がある。
【0029】
本明細書において使用する「阻害する」又は「阻害すること」は、客観的に測定可能な量又は程度が対照と比較して減少することを意味する。1つの実施形態において、阻害又は阻害することは、少なくとも統計的に有意な量が対照と比較して減少することを意味する。1つの実施形態において、阻害又は阻害することは、対照と比較して少なくとも5パーセント減少することを意味する。様々な個々の実施形態において、阻害又は阻害することは、対照と比較して、少なくとも10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、90、又は95パーセント(%)減少することを意味する。
【0030】
本明細書において使用する「処置する」及び「処置すること」という用語は、(a)状態又は疾患を発症するリスクがあるか又はこれらに罹りやすい場合があるが、それを有するとはまだ診断されていない対象において状態又は疾患の発生を予防すること、(b)状態又は疾患を阻害すること、例えば、その発症を遅らせること又は停止させること、又は(c)状態又は疾患を軽減するか又は回復させること、例えば、状態又は疾患の退行をもたらすことにつながる介入を行うことを指す。1つの実施形態において、「処置すること」及び「処置する」という用語は、(a)状態又は疾患を阻害すること、例えば、その発症を遅らせること又は停止させること、又は(b)状態又は疾患を軽減すること又は回復させること、例えば、状態又は疾患の退行をもたらすことにつながる介入を行うことを指す。
【0031】
本明細書において使用する「対象」は、生存している哺乳動物を指す。様々な実施形態において、対象は、非ヒト哺乳動物であり、限定するものではないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、又は非ヒト霊長類を含む。ある特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0032】
ある特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0033】
本明細書において使用する「投与すること」は、その通常の意味を有し、限定するものではないが、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、眼内(例えば、硝子体内)、皮下、直接注射(例えば、腫瘍内)、粘膜、吸入、経口、及び局所を含む任意の好適な投与経路によって投与することを包含する。
【0034】
非生分解性及び生分解性ポリマー材料は、本明細書において記載するパッチの製造において使用してもよい。そのようなポリマーは、天然又は合成ポリマーであってもよい。生体接着性ポリマーとしては、Sawhney H S et al. (1993) Macromolecules 26:581-7に記載されている生体内分解性ヒドロゲルがあり、その教示は本明細書に組み込まれる。これらとしては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、及びポリ(オクタデシルアクリレート)がある。
【0035】
ウルシオール含有皮膚パッチ
第1の態様において、本開示は、支持体材料と、支持体表面上のウルシオール含有フィルムとを含むウルシオール含有皮膚パッチ(又は「パッチ」)であって、支持体材料表面が、ウルシオール含有フィルムで被覆されている、パッチを提供する。
【0036】
いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは担体材料を含む。いくつかの実施形態において、担体材料は、ヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリビニルピロリドン、又はこれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、担体材料はポリビニルピロリドンである。
【0037】
いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.001μgから約100μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.001、約0.005、約0.010、約0.015、約0.020、約0.025、約0.030、約0.035、約0.040、約0.045、約0.050、約0.060、約0.070、約0.080、約0.090、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約3、約4、約5、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、又は約100μgのウルシオールを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.04μgから約0.5μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.041μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.075μgから約0.085μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.081μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.1μgから約0.2μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.16μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.3μgから約0.4μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、約0.32μgのウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、ウルシオールは、ウルシオール含有フィルムの担体材料全体にわたって均一に分布している。
【0039】
いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、支持体材料表面に適用される。スクリーニング印刷、オフセット印刷、ロール印刷、又は液体又はゲルを基材に適用するための他の周知の技術を含む任意の好適な適用法を用いてもよい。いくつかの実施形態において、ウルシオール含有フィルムは、支持体材料表面に固定されている。フィルムは、フィルム材料を支持体材料と接触させることによって固定してもよい。
【0040】
支持体材料は、ウルシオール含有フィルムが適用され、その後切断され、所望のサイズを有するパッチを得るのに好適な特性を有する任意の不透過性材料を含んでいてもよい。
【0041】
任意の好適な材料を、支持体材料として使用してもよい。いくつかの実施形態において、支持体材料は、ウルシオール含有フィルムが支持体材料に粘着するのを改善するための静電的特性を示す。他の実施形態において、支持体材料は静電的特性を示さない。いくつかの実施形態において、支持体材料は、セルロースプラスチック(CA、CP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリル、及びポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、フルオロポリマー(例えば、PTFE)、又はポリビニルピロリドンを含むポリマーを含んでいてもよい。
【0042】
支持体材料は、剛性であっても可撓性であってもよく、親水性であってもなくてもよく、半透明であってもなくてもよく、材料による。1つの実施形態において、透明支持体材料が選択され、したがって、ある特定の状況において(例えば、本明細書において記載する試験パネルにおけるパッチ用の半透明粘着性支持体と組み合わせて)パッチに対する皮膚反応の外観を直接観察することが可能になり、必ずしも試験パネルのパッチを除去する必要はない。
【0043】
いくつかの実施形態において、支持体材料はポリエステルを含む。いくつかの実施形態において、支持体材料は、閉塞性ポリエステルを含む。いくつかの実施形態において、支持体材料は、閉塞性Melinex(登録商標)ポリエステルである。
【0044】
パッチは、本明細書において記載する試験パネルの粘着性支持体上の配置に従った任意の寸法を有していてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約1cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約0.9cm2である、いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約0.8cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約0.7cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約0.6cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約0.5cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約0.4cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約0.3cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.1cm2から約0.2cm2である。
【0045】
いくつかの実施形態において、パッチのサイズは、約0.5cm2から約0.9cm2である。いくつかの実施形態において、パッチのサイズは約0.81cm2である。パッチは、正方形の形状、長方形の形状、円形の形状、楕円形の形状、又はその他の好適な形状を有していてもよい。いくつかの実施形態において、パッチは正方形の形状を有する。更に、複数のパッチが固定された試験パネルに関しては、いくつかの実施形態において、各パッチは、同じサイズを有していてもよい。いくつかの実施形態において、各パッチは、同じ形状を有していてもよい。他の実施形態において、各パッチは、特定のサイズを個々に有していてもよい。同様に、他の実施形態において、各パッチは、特定の形状を個々に有していてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、パッチは、その中に含まれるウルシオールの濃度に対応する特定の形状及び/又はサイズを有していてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、ウルシオールの第1の量を有するパッチは、第1の形状及び/又はサイズを有していてもよく、ウルシオールの第2の量を有するパッチは、第2の形状及び/又はサイズを有していてもよく、ウルシオールの第1及び第2の量は異なる。異なる形状又はサイズのパッチに含まれる異なる量のウルシオールと相関する異なる形状及びサイズを使用すると、パッチ濃度の同定を容易にすることを可能にし得る。例えば、約0.1μgのウルシオールを含む第1のパッチは、正方形であり、約0.5cm2のサイズを有していてもよく、約0.3μgのウルシオールを含む第2のパッチは、円形であり、約0.5cm2のサイズを有していてもよい。或いは、約0.1μgのウルシオールを含むパッチは、正方形であり、約0.5cm2のサイズを有していてもよく、約0.3μgのウルシオールを含む第2のパッチも正方形であり、約1.0cm2のサイズを有していてもよい。当業者であれば容易に理解することができるように、ウルシオールの特定の量に対応するサイズ及び形状を組み合わせると、単独で、又は1つ又は複数の他のパッチ試験パネル上でのいずれかで、パッチ濃度の同定を容易にすることを可能にし得る。
【0047】
試験パネル
別の態様において、本開示は、ウルシオールへの曝露に起因するアレルギー性接触性皮膚炎を対象において評価するための試験パネルであって、少なくとも1つの本明細書において記載するウルシオール含有皮膚パッチ(「パッチ」)を含む試験パネルを提供する。
【0048】
いくつかの実施形態において、試験パネルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のウルシオール含有皮膚パッチを含む。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、本明細書において記載する試験パネルの粘着性支持体上の配置に従った任意の寸法を有していてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約1cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約0.9cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約0.8cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約0.7cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約0.6cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約0.5cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約0.4cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約0.3cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.1cm2から約0.2cm2のサイズを有する。
【0049】
いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、約0.5cm2から約0.9cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、約0.81cm2のサイズを有する。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは正方形の形状を有する。複数のパッチが固定された試験パネルに関しては、試験パネル上の各パッチは、同じサイズを有していてもよい。いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは同じ形状を有する。他の実施形態において、試験パネル上の各パッチは、特定のサイズを個々に有していてもよい。同様に、他の実施形態において、試験パネル上の各パッチは、独立して、特定の形状を有していてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、試験パネル上の各パッチは、パッチの各形状に含まれるウルシオールの濃度に対応する特定の形状及び/又はサイズを有していてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、試験パネルは、ウルシオールの第1の量及び第1の形状及び/又はサイズを有していてもよい第1のパッチ、並びにウルシオールの第2の量及び第2の形状及び/又はサイズを有する第2のパッチを含んでいてもよく、ウルシオールの第1及び第2の量は異なる。異なる形状又はサイズのパッチに含まれる異なる量のウルシオールと相関する異なる形状及びサイズを使用すると、パッチ濃度の同定を容易にすることを可能にし得る。例えば、約0.1μgのウルシオールを含む試験パネル上の第1のパッチは、正方形であり、約0.5cm2のサイズを有していてもよく、約0.3μgのウルシオールを含む同じ試験パネル上の第2のパッチは、円形であり、約0.5cm2のサイズを有していてもよい。或いは、約0.1μgのウルシオールを含む試験パネル上の第1のパッチは、正方形であり、約0.5cm2のサイズを有していてもよく、約0.3μgのウルシオールを含む試験パネル上の第2のパッチも、正方形であり、約1.0cm2のサイズを有していてもよい。当業者であれば容易に理解することができるように、ウルシオールの特定の量に対応するパッチのサイズ及び形状の組合せを使用すると、2つ以上のパッチを含む試験パネル上でパッチ濃度の同定を容易にすることを可能にし得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、試験パネルは、少なくとも2つのウルシオール含有皮膚パッチを含み、各パッチは異なる量のウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、試験パネルは、少なくとも3つのウルシオール含有皮膚パッチを含み、各パッチは異なる量のウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、試験パネルは、少なくとも4つのウルシオール含有皮膚パッチを含み、各パッチは異なる量のウルシオールを含む。いくつかの実施形態において、試験パネルは、ウルシオール含有皮膚パッチと実質的に同一であるが、ウルシオールを含まない対照パッチを更に含む。いくつかの実施形態において、試験パネルは、4つのウルシオール含有皮膚パッチを含み、各パッチは異なる量のウルシオール及び対照パッチを含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、ウルシオール含有皮膚パッチは、粘着性支持体の表面に固定されている。粘着性支持体は、支持体表面に固定されている粘着剤を有する任意の好適な支持体であってもよい。いくつかの実施形態において、粘着性支持体は粘着性テープを含む。いくつかの実施形態において、粘着性テープは外科用テープである。当業者であれば理解するであろうように、好適なテープは、1つ又は複数のパッチを固定することができるものでなくてはならず、パッチで覆われていない表面は、対象の皮膚に付着させることができる。したがって、粘着性支持体のサイズは、所望の数のパッチを試験パネルの表面に付着させるのに十分な任意の寸法のものとすることができ、試験パネルが対象の皮膚に付着させるのに十分な表面を有する。1つの実施形態において、試験パネルの粘着性支持体は、対象の皮膚に対して十分な粘着性を示し、試験パネルに固定されているパッチに含まれるウルシオールの皮膚送達を可能にする。
【0053】
パッチは、試験パッチの粘着性支持体の表面上に任意のパターンで固定されていてもよい。例えば、パッチは、試験パネルの粘着性支持体に沿って実質的に縦に整列させてもよい。或いは、いくつかの実施形態において、パッチは、粘着性支持体の表面に固定し、不規則な向きにしてもよい。
【0054】
任意の2つの隣接するパッチ間の距離は、各パッチと対象の皮膚との接触を維持するのに十分である必要がある。更に、隣接するパッチ間の距離は、各パッチの部位における対象の皮膚上の皮膚炎の独立した評価を明確にすること可能にするのに十分である必要がある。したがって、いくつかの実施形態において、隣接するパッチ間の距離は、約0.1cmから約5cmであってもよい。いくつかの実施形態において、隣接するパッチ間の距離は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、又は約5cmであってもよい。3つ以上のパッチが存在する実施形態において、例えば、第1と第2との隣接するパッチ間の距離は、試験パネル上の第2と第3との隣接するパッチ間の距離と同じであってもよい。3つ以上のパッチが存在する実施形態において、例えば、第1と第2との隣接するパッチ間の距離は、試験パネル上の第2と第3との隣接するパッチ間の距離と異なっていてもよい。
【0055】
更に、任意のパッチの端部と粘着性支持体の端部との間の距離は、試験パネルが対象の皮膚に粘着することを可能にするのに十分である必要がある。したがって、いくつかの実施形態において、任意のパッチの端部と粘着性支持体の端部との間の距離は、約0.1cmから約5cmであってもよい。いくつかの実施形態において、任意のパッチの端部と粘着性支持体の端部との間の距離は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、又は約5cmであってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、試験パネルは、約0.041μgのウルシオールを含む第1のパッチと、約0.081μgのウルシオールを含む第2のパッチと、約0.16μgのウルシオールを含む第3のパッチと、約0.32μgのウルシオールを含む第4のパッチと、及び前記第1、第2、第3、及び第4のパッチと実質的に同一であるが、ウルシオールを含まない対照パッチとを含む。いくつかの実施形態において、4つのパッチ及び対照パッチはそれぞれ、正方形の形状及び約0.81cm2のサイズを有する。
【0057】
使用方法
別の態様において、本開示は、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎に対する感受性を対象において評価する方法であって、本明細書において記載する試験パネルを、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用する工程と、試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、試験パネルを除去後、対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度を、試験パネルの各パッチの接触箇所において1回又は複数回評価する工程とを含む方法を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態において、試験パネルは、約1時間から約96時間までの所定の時間にわたって対象の皮膚と接触して配置する。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24時間から約72時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24、約48、約72、又は約96時間である。対象の皮膚から試験パネルを除去後、試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の重症度を評価する。そのような評価は、試験パネル上の各パッチと接触しているエリアを目視検査し、視診に基づいて各パッチと関連する反応に対してスコアを割り当てることを含む場合がある。試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の反応の重症度は、標準的な形態:0(反応なし)、1+(小胞なし、紅斑、浸潤、及び場合により丘疹を伴う)、2+(浮腫又は小胞反応)、3+(びまん型水泡性潰瘍性反応)、+/-(斑状紅斑)に従って独立して採点される。
【0059】
いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに行われる。いくつかの実施形態において、評価は、1回又は複数回行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに、かつ対象の皮膚から試験パネルを除去後、2~30日目のうちの1日又は複数日で行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2、4、7、14、及び21日目にそれぞれ行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、又は30日目のうちの1日又は複数日で行われる。
【0060】
別の態様において、本開示は、ウルシオール曝露とその結果生じる対象におけるアレルギー性接触性皮膚炎の重症度とに関する用量応答を算出する方法であって、本明細書において記載する試験パネルを、所定の時間にわたって適用する工程と、試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度を、前記試験パネルの各パッチの接触箇所において定量化する工程と、前記試験パネルの各パッチの接触位置におけるアレルギー性接触性皮膚炎の定量的な重症度を、各パッチの前記接触位置に対応する各パッチのウルシオール含有量に対して相関させる工程と、前記定量化された重症度に対応する位置における各パッチのウルシオール含有量に対する、アレルギー性接触性皮膚炎の前記定量化された重症度から、ウルシオール曝露とその結果生じる対象におけるアレルギー性接触性皮膚炎とに関する用量応答を算出する工程とを含む方法を提供する。
【0061】
いくつかの実施形態において、試験パネルは、約1時間から約96時間までの所定の時間にわたって対象の皮膚と接触して配置する。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24時間から約72時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24、約48、約72、又は約96時間である。対象の皮膚から試験パネルを除去後、試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の重症度を評価する。そのような評価は、試験パネル上の各パッチと接触しているエリアを目視検査し、視診に基づいて各パッチと関連する反応に対してスコアを割り当てることを含む場合がある。試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の反応の重症度は、標準的な形態:0(反応なし)、1+(小胞なし、紅斑、浸潤、及び場合により丘疹を伴う)、2+(浮腫又は小胞反応)、3+(びまん型水泡性潰瘍性反応)、+/-(斑状紅斑)に従って独立して採点される。
【0062】
いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに行われる。いくつかの実施形態において、評価は、1回又は複数回行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに、かつ対象の皮膚から試験パネルを除去後、2~30日目のうちの1日又は複数日で行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2、4、7、14、及び21日目にそれぞれ行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、又は30日目のうちの1日又は複数日で行われる。
【0063】
いくつかの実施形態において、各パッチの接触位置におけるアレルギー性接触性皮膚炎の定量的な重症度を、対応する各パッチのウルシオール含有量に対して相関させる工程は、各パッチに関する反応重症度スコアと各パッチのウルシオール濃度とを表にすることを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、ウルシオール曝露に関する用量応答を算出する工程は、統計分析プログラム、例えば、SAS PROC GENMOD(SAS 9.4、SAS Institute社、Cary、NC)で表にした各パッチに関する反応重症度スコアと各パッチのウルシオール濃度とを分析し、ウルシオール曝露とその結果生じる対象におけるアレルギー性接触性皮膚炎とに関する用量応答を算出することによって行うことができる。
【0065】
別の態様において、本開示は、対象の皮膚上の1つ又は複数の位置における原因不明の前記皮膚炎を呈する対象の皮膚上の原因不明の皮膚炎が、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎であるかどうかを判定する方法であって、本明細書において記載する試験パネルを、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用する工程と、試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、対象のウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎を、試験パネルの各パッチの接触箇所において評価する工程と、試験パネルの各パッチの接触箇所におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎を、対象の皮膚上のもう1つの位置における原因不明の皮膚炎と比較する工程とを含み、試験パネルの各パッチの接触箇所における皮膚炎が、対象の皮膚上のもう1つの位置における皮膚炎と実質的に同様である場合、原因不明の皮膚炎が、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎であることを判定する、方法を提供する。
【0066】
一部の場合において、対象は、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎と類似しているように見える原因不明の皮膚炎を示す場合がある。皮膚炎のうちの一部の形態は処置可能であるが、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎に関しては曝露後の処置の選択肢がほぼないために、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎と他の処置可能なタイプの皮膚炎とを区別すると、原因不明の皮膚炎がウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎であるかどうかを除外するか又は確認することができる。原因不明の皮膚炎がウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎ではない場合、更なる診断及び/又は処置が示される。
【0067】
いくつかの実施形態において、試験パネルは、約1時間から約96時間までの所定の時間にわたって対象の皮膚と接触して配置される。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24時間から約72時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24、約48、約72、又は約96時間である。対象の皮膚から試験パネルを除去後、試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の重症度を評価する。そのような評価は、試験パネル上の各パッチと接触しているエリアを目視検査し、視診に基づいて各パッチと関連する反応に対してスコアを割り当てることを含む場合がある。試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の反応の重症度は、標準的な形態:0(反応なし)、1+(小胞なし、紅斑、浸潤、及び場合により丘疹を伴う)、2+(浮腫又は小胞反応)、3+(びまん型水泡性潰瘍性反応)、+/-(斑状紅斑)に従って独立して採点される。
【0068】
いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに行われる。いくつかの実施形態において、評価は、1回又は複数回行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、ただちに、かつ対象の皮膚から試験パネルを除去後、2~30日目のうちの1日又は複数日で行われる。
【0069】
いくつかの実施形態において、試験パネルの各パッチの接触箇所における皮膚炎と対象の皮膚上の1つ又は複数の位置における原因不明の皮膚炎とが実質的に類似している場合、対象は、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎と診断される。いくつかの実施形態において、試験パネルの各パッチの接触箇所における皮膚炎と対象の皮膚上の1つ又は複数の位置における原因不明の皮膚炎とが実質的に異なる場合、対象は、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎ではない皮膚炎と診断される。いくつかの実施形態において、対象が、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎ではない皮膚炎と診断された場合、更なる診断を行い、及び/又は処置を投与してもよい。
【0070】
別の態様において、本開示は、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置が、対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の重症度を予防するか又は阻害するかどうかを判定する方法であって、本明細書において記載する第1の試験パネルを、対象の皮膚に所定の時間にわたって適用する工程と、第1の試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、試験パネルを除去後、対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度を、第1の試験パネルの各パッチの接触箇所において1回又は複数回評価する工程と、処置を対象に投与する工程と、処置を投与後、本明細書において記載する第2の試験パネルを、対象の皮膚に同じ所定の時間にわたって適用する工程と、試験パネルを対象の皮膚から除去する工程と、処置を投与後、対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度を、第2の試験パネルの各パッチの接触箇所において1回又は複数回評価する工程とを含み、第2の試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、第1の試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度よりも低い場合、処置が、対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の重症度を予防するか又は阻害することを判定する、方法を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態において、第1の試験パネルは、約1時間から約96時間までの所定の時間にわたって対象の皮膚と接触して配置される。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24時間から約72時間である。いくつかの実施形態において、所定の時間は、約24、約48、約72、又は約96時間である。第1の試験パネルを対象の皮膚から除去後、試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の重症度を評価する。そのような評価は、試験パネル上の各パッチと接触しているエリアを目視検査し、視診に基づいて各パッチと関連する反応に対してスコアを割り当することを含む場合がある。第1及び第2の試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の反応の重症度は、標準的な形態:0(反応なし)、1+(小胞なし、紅斑、浸潤、及び場合により丘疹を伴う)、2+(浮腫又は小胞反応)、3+(びまん型水泡性潰瘍性反応)、+/-(斑状紅斑)に従って独立して採点される。
【0072】
いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から第1の試験パネルを除去後、ただちに行われる。いくつかの実施形態において、評価は、1回又は複数回行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から第1の試験パネルを除去後、ただちに、かつ対象の皮膚から試験パネルを除去後、2~30日目のうちの1日又は複数日で行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2、4、7、14、及び21日目にそれぞれ行われる。いくつかの実施形態において、評価は、対象の皮膚から試験パネルを除去後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、又は30日目のうちの1日又は複数日で行われる。
【0073】
第1の試験パネルを適用し、評価すると、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置で処置するより前の、試験パネルに対する対象のベースライン応答の判定が可能になる。
【0074】
次いで、本方法は、第1の試験パネルを適用し、それに対する応答を評価した後の、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置を対象に投与する工程を含む。処置は、小分子、ペプチド、酵素、抗体、オリゴヌクレオチド、ワクチン、又は対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の重症度を予防するか又は阻害することを意図する任意の治療法であってもよい。
【0075】
ある特定の実施形態において、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置を対象に投与し、その結果、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎が予防される。ある特定の実施形態において、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置を対象に投与し、その結果、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎が阻害される。
【0076】
本方法における使用に関しては、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置は、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置を所望の位置又は表面に送達する任意の様式によって対象に投与することができる。ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置を含む医薬組成物の投与は、当業者に既知の任意の手段によって達成してもよい。投与経路としては、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直接注射(例えば、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の部位における)、粘膜、吸入、及び局所があるが、これらに限定されない。
【0077】
対象に投与後、ウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎のための処置であり、第1の試験パネルと実質的に同じである第2の試験パネルは、第1の試験パネルのものとは異なる位置において対象の皮膚に適用する。いくつかの実施形態において、第2の試験パネルは、第1の試験パネルと同じ所定の時間にわたって対象の皮膚と接触して配置される。第2の試験パネルを対象の皮膚から除去後、第2試験パネル上の各パッチによって誘発されたウルシオール誘発性接触性皮膚炎の重症度。そのような評価は、第1の試験パネルのために用いたものと同じである。
【0078】
いくつかの実施形態において、第2の試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、第1の試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度よりも低い場合、処置が、対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の重症度を予防するか又は阻害することを判定する。いくつかの実施形態において、第2の試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度が、第1の試験パネルの各パッチの接触箇所における対象のアレルギー性接触性皮膚炎の重症度と同じである場合、処置が、対象におけるウルシオール誘発性アレルギー性接触性皮膚炎の処置又は阻害に無効であることが判定する。
【実施例
【0079】
本開示を詳細に記載してきたが、これは、以下の例を参照することによってより明らかに理解され、これらの例は、例示のみを目的として本願に含まれており、限定することを意図しない。
【0080】
(実施例1)
T.R.U.E.TEST(登録商標)システムを使用したウルシオールパッチ試験
この研究の目的は、T.R.U.E.試験によって利用されるヒドロゲル送達システム(SmartPractice(登録商標)、Phoenix社、AZ)に基づくパッチ試験に必要なウルシオールの安全性及び適切な用量を評価することであった。T.R.U.E.試験は、生物学的製剤/デバイスの組合せ製品として米国食品医薬品局(FDA)によって承認されており、パッチ試験の使用は、接触アレルギーを診断することを目的とする。更に、ウルシオールの用量と応答の重症度との用量応答関係を調べた。
【0081】
方法及び材料
Penn State College of Medicineの治験審査委員会から研究プロトコールの承認を得た後、ポイズンアイビー、オーク又はシュマックに対するアレルギー性接触性皮膚炎の既往歴を有する9名のボランティア対象が、対象からインフォームドコンセントを得た後に研究に参加した。免疫不全の対象はいなかった。対象は、研究に参加する少なくとも1カ月前から全身用又は局所用コルチコステロイドを用いた処置又は研究に参加する少なくとも2週間前から研究期間の最後まで抗ヒスタミン剤を用いた処置は行われなかった。
【0082】
ウルシオールは、ElSohly Laboratories, Inc.社(Oxford、MS)より提供された。ウルシオールは、ElSohlyらによって先述されている一般手順に従って精製する。6簡潔には、ポイズンアイビーの葉及び小さな茎を有機溶媒(エタノール)抽出し、続いて抽出物を水とクロロホルムとの間で分割し、溶出溶媒としてクロロホルムを使用したシリカゲルクロマトグラフィーをクロロホルムフラクションで行った。カラム溶出液の選択したフラクションを乾燥し、分配によって有機溶媒(アセトニトリル及びヘキサン)中に更に抽出し、アセトニトリル部分を収集し、乾燥した。最終的な抽出物は、61.5%w/wのウルシオールを含み、多少のPDCのモノ及びジ不飽和同族体並びに少量のPDCとともにペンタデシルカテコール(PDC)のトリ不飽和同族体を主に含む。皮膚試験パッチの調製に関しては、ウルシオール抽出物をエタノール中に溶解し、5mg/mLのウルシオール溶液を生成する(61.5%のウルシオール含有量に基づく)。ウルシオールエタノール溶液を褐色ガラスバイアル中、2~8℃で貯蔵し、安定性に関して12カ月にわたって評価した。ウルシオール濃度に関して、0、7、14、29、57、97、185、275及び365日目にGC-FIDによって分析されたウルシオール溶液の冷蔵及び凍結試料は、少なくとも12カ月間分解を受けることなく安定であることを示した。
【0083】
適切な量のウルシオールエタノール溶液とPVPとを混合し、閉塞性ポリエステルシートを、ウルシオールエタノール溶液及びPVPの混合物でコーティングすることによって、ウルシオールパッチを調製した。所望の量のウルシオールエタノール溶液を、ゲルのウルシオール濃度が均一に達するまでPVP賦形剤と混合した。次いで、ゲルを適切に膨潤させ、必要に応じて遠心分離し、気泡を除去した。閉塞性ポリエステルシートを前処置し、帯電させ、次いでウルシオールゲル混合物をポリエステルシートに適用した。ウルシオールゲル被覆シートを乾燥し、切り取り、ラベル付きラミネートホイル袋に詰め、2~8℃で貯蔵した。2~8℃で貯蔵した場合のウルシオール-ゲル被覆シート中のウルシオールの安定性を少なくとも12カ月間観察した。
【0084】
パネル試験を準備するために、0.041μg、0.081μg、0.16μg、0.32μgの4つの強度のウルシオールパッチ、及び陰性対照の1つのパッチを、小さな正方形パッチ(およそ0.81cm2)に切断し、外科用テープの粘着性支持体上に不規則に配置した。完成した試験パネルを保護シートで覆い、ラミネートホイル袋に密封した。次いでこれらにラベルを貼り、研究対象の使用用に分配した。7,8,9
【0085】
4つの強度及び陰性対照のウルシオールの不規則に位置するパッチを含むパネルを、各対象の背中の皮膚に適用した。一度投与すると(0日目)、パッチ試験を2日間対象に残し、その後除去した。2日目の除去時に、結果の最初の評価及び解釈を行った。4、7、14、及び21日目に、追加の評価及び解釈を行った。研究対象及び調査員は各試験パネル上の試験パッチ及びプラセボの配置は知らされていなかった。反応の重症度を、標準的な形態:0(反応なし)、1+(小胞なし、紅斑、浸潤、及び場合により丘疹を伴う)、2+(浮腫又は小胞反応)、3+(びまん型水泡性潰瘍性反応)、+/-(斑状紅斑)に従って採点した。掻痒及び灼熱感等の症状、並びに任意の有害事象を評価し、文書化した。刺激性を、反応の持続時間によって、真のアレルギー性接触性皮膚炎応答と区別した。0、+/-、1、2、3として最初にコード化した処置に対する応答を、以下のとおり:0=応答なし、全ての他の値=応答の2値(binary)方式で再びコード化した。反復測定2値ロジスティック回帰モデルを、自己回帰相関構造を使用してSAS PROC GENMOD(SAS 9.4、SAS Institute社、Cary、NC)とフィットさせた。投薬量と時間の両方が、カテゴリー説明変数として含まれていた。しかし、対象の人数が限られていたために、モデルは、相互作用の項を含んでいなかった。適切なパラメータ推定値を累乗することによって、各非ゼロ投薬量対対照に関するオッズ比推定値を得た。
【0086】
結果
9名の対象が研究に登録され、対象には、個々の年齢が22から59歳(平均年齢46歳)の3名の男性及び6名の女性が含まれ、全ての対象が研究を完了した。1名の対象が異汗性手湿疹の軽度の発赤を有し、これはクロベタゾールクリームで1日処置した。
【0087】
試験パネル上のプラセボと比較して、ウルシオールの各用量で反応がもたらされた。サンプルサイズが小さいという制約にもかかわらず、各用量に関するオッズ比は、1(ゼロ値)よりもはるかに大きくかつそれを含んでおらず、これは、試験パネル上の各パッチ用に使用したウルシオールの各用量が反応をもたらしたことを裏付ける(Table 1(表1))。更に、オッズ比は、ウルシオールの用量が増加するにつれ大きくなり、これは、高用量が、全ての日においてプラセボと比較してより重度の反応をもたらすことを示す。
【0088】
【表1】
【0089】
2日目では、反応は+/-から2+へ変化した(図2)。4日目では(図3)、反応は2日目よりも強くなった(図2)。7日目では(図4)、1名の対象のみが3+の反応を有した。14日目では(図5)、反応は4日目(図3)及び7日目(図4)よりも弱く、21日目(図6)では、全ての対象が最も弱い反応を有していた。
【0090】
図7は、様々な用量に関する反応の強度を示す。ウルシオールの用量とそれがもたらす反応との間には用量応答関係があると思われる。例えば、最も強い用量である0.32μgは、最も強い反応をもたらすと思われ、弱い用量と比較して、1+、2+、又は3+の反応を呈する対象の人数が最も多いことによって反映される。更に、3+の反応があった唯一の時間は、2つの高用量の0.16μg及び0.32μgであった。4日目における1名の対象は、2つの高用量に対して3+の反応を有し、2つの低用量に対して2+の反応を有した(図8)。更に、図9は、応答の重症度のピークは全ての対象に関して4又は7日目であったことを実証する。
【0091】
考察
アレルギー性接触性皮膚炎の病態生理は、T-リンパ球介在性遅延型過敏性反応である。ポイズンアイビー、ポイズンオーク、ポイズンシュマックとの最初の接触時に、ウルシオールカテコールは、皮膚に貪欲に(avidly)結合し、貫通し、そこでキノン中間体に酸化されるようになり、ランゲルハンス細胞及びマクロファージの表面タンパク質に結合する。これらの抗原提示細胞は、抗原を内在化し、処理し、局所リンパ節に遊走させ、処理した抗原をCD4 Tヘルパーリンパ球に提示し、それがウルシオール特異的Tエフェクター及びTメモリーリンパ球のクローンを形成する活性化T細胞をもたらす。10その後、ポイズンアイビー、ポイズンオーク、及びポイズンシュマックと接触すると、クローンリンパ球によって細胞介在性細胞毒性免疫応答が生じ、表皮細胞の破壊及び真皮血管系の活性化につながる。
【0092】
典型的には、感作した個体は、24から48時間以内に激しい掻痒性紅斑性発疹を発症するが、5時間から15日まで変動する場合がある。11この反応は、小胞及び水疱に先行する紅斑及び浮腫性丘疹の線条又はエリアとして説明されている。最も軽度の反応(+/-又は1+)は、一般的に小胞はない。一方、重度の反応(2+又は3+)は、小胞から融合した水疱によって特徴付けることができる。以前に感作した成人におけるウルシオールからの実験的に誘発されたアレルギー性接触性皮膚炎の進行には個人差がある。1つの研究では、個体間の基本的な免疫応答における差異を表す可能性が最も高い反応時間と重症度の両方の個人差の範囲が文書化された。11例えば、反応の発症は4時間から4日の範囲であり、ピーク反応は1から14日で発生し、反応の最大重症度は2+から3+(紅斑、浮腫、小胞形成、潰瘍性崩壊(ulcerative breakdown))の範囲であった。この研究は、反応の重症度と反応時間の両方において個人差があることを同様に確認している。大部分の対象は、軽度から中等度の反応(+/-、1+、2+)を有していた。1名の対象のみが、びまん型水泡性潰瘍性反応によって特徴付けられる3+の反応を有していた。反応のピーク強度は、ウルシオールの用量にかかわらず、全ての対象に関して4又は7日で認められた。これはまた、典型的には96時間で刺激性応答はなくなる場合があり、同時にアレルギー性のものは減少せずに継続する場合があるため、誘発された反応が、刺激性接触性皮膚炎反応ではなく真のアレルギー性接触性皮膚炎反応であることを実証する。12更に、試験パネルにおけるウルシオールの4つの用量に関する用量応答関係を観察した。ウルシオールの高用量が強力な反応を誘発すると思われる。同様に、Epsteinらは、陽性反応を呈する対象の数においてウルシオールの希釈の用量応答関係を見い出した。13
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