(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】超電導接続部
(51)【国際特許分類】
H01R 4/68 20060101AFI20230807BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01R4/68
H01F6/06 140
H01F6/06 150
(21)【出願番号】P 2020566685
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2019058992
(87)【国際公開番号】W WO2019228698
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516298515
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Healthcare Limited
【住所又は居所原語表記】Parkview, Watchmoor Park, Camberley, GU15 3YL, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリウス ウォツニーク
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-182673(JP,A)
【文献】特開昭60-175383(JP,A)
【文献】実開昭58-159714(JP,U)
【文献】特開昭55-077109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/68
H10N 60/81
H01F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導磁石用の超電導接続構造であって、1つ以上の超電導コイル(3)の超電導ワイヤ(2)の超電導フィラメント(21)間に細長い接続部(1)が形成されており、余剰ワイヤ(30)が、電気的に前記細長い接続部と前記1つ以上の超電導コイルとの間に備えられている前記超電導接続構造において、前記細長い接続部は、電気的に前記1つ以上の超電導コイルと前記余剰ワイヤとの間の位置で、少なくとも1つの超電導ワイヤと熱的に接触して
おり、且つ前記細長い接続部は、電気的に前記1つ以上の超電導コイルと前記余剰ワイヤとの間の位置で、少なくとも1つの超電導ワイヤと電気的に接触していることを特徴とする、前記超電導接続構造。
【請求項2】
前記細長い接続部が、結合ワイヤ(14)によって少なくとも1つの超電導ワイヤに結合されている、請求項
1に記載の超電導接続構造。
【請求項3】
前記細長い接続部が、超電導はんだ(42)を含む、請求項
1または2に記載の超電導接続構造。
【請求項4】
前記細長い接続部が、少なくとも1つの超電導ワイヤにはんだ付けされている、請求項
3に記載の超電導接続構造。
【請求項5】
前記細長い接続部(1)および少なくとも1つの超電導ワイヤ(2)の隣接部分が、超電導合金または化合物の中実のブロック(42)へ埋め込まれている、請求項
3に記載の超電導接続構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つの超電導ワイヤ(2)に対して垂直な方向での、超電導合金または化合物の中実のブロック(42)の大きさが20mm未満である、請求項
5に記載の超電導接続構造。
【請求項7】
前記少なくとも1つの超電導ワイヤ(2)に対して垂直な方向での、超電導合金または化合物の中実のブロック(42)の大きさが10mm未満である、請求項
6に記載の超電導接続構造。
【請求項8】
前記余剰ワイヤが8の字型のループの構成で保持されている、請求項1から
7までのいずれか1項に記載の超電導接続構造。
【請求項9】
前記余剰ワイヤが複数のケーブルタイ(27)によって8の字型のループの構成で保持されている、請求項
3に記載の超電導接続構造。
【請求項10】
前記8の字型のループの構成が本質的に平面であり、且つ前記8の字型のループの構成の平面が超電導磁石の磁場に対して平行に配置されている、請求項
8または
9に記載の超電導接続構造。
【請求項11】
前記細長い接続部(1)が、電気的に前記1つ以上の超電導コイル(3)と前記余剰ワイヤ(30)との間の位置で2つの超電導ワイヤ(2)と電気的に接触しており、且つ、クエンチの場合、電流は、余剰ワイヤの長さを通って流れることなく、前記2つの超電導ワイヤの一方から前記超電導ワイヤの他方へと流れることができる、請求項
1に記載の超電導接続構造。
【請求項12】
超電導磁石用の超電導接続構造の形成方法であって、以下の段階:
・ 1つ以上の超電導コイル(3)から延伸する超電導ワイヤ(2)を準備する段階、ここで、各々の超電導ワイヤは熱伝導性のシース(22)内に包まれている超電導フィラメント(21)を含む、
・ 各々の超電導ワイヤの自由端で前記シースを除去することによって、ある長さの超電導フィラメントを露出する段階、
・ 前記超電導フィラメントを接続部(1)に形成する段階、
・ 前記接続部を、電気的に前記コイルと前記接続部との間の位置で、少なくとも1つのワイヤと熱的に接触させて取り付ける段階
を含み、
ある長さの余剰ワイヤ(30)を前記超電導コイルと前記超電導接続部との間に残し、且つ前記超電導接続部を、前記超電導ワイヤと熱的に接触させて、前記超電導コイルと前記余剰ワイヤとの間の位置で取り付ける、
方法。
【請求項13】
前記接続部を、電気的に前記コイル(3)と前記接続部との間の位置で、少なくとも1つのワイヤ(2)と熱的に接触させて取り付ける段階が、細長い超電導接続部(1)を形成すること、および前記細長い超電導接続部(1)を、対応する少なくとも1つのシース(22)の先端(23)と前記超電導コイルとの電気的な間において、少なくとも1つの超電導ワイヤ(2)の周りに巻き付けることを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記細長い接続部を、前記超電導接続部の先端(25)が折り返し点(24)よりもシースの先端(23)に近く位置するように、折り返し点(24)で折り返す、請求項
12または
13に記載の方法。
【請求項15】
前記細長い接続部を、はんだ(42)内で被覆された超電導フィラメントから形成し、そのように形成された前記細長い接続部を次に前記ワイヤの周りに巻き付けて、結合材(14)によって所定の位置に結合する、請求項
12から
14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細長い接続部を、前記ワイヤのシース(22)にはんだ付けする、請求項
12から
14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細長い接続部(1)および少なくとも1つの超電導ワイヤ(2)の隣接部分を、超電導合金または化合物の中実のブロック(42)へ埋め込む、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの超電導ワイヤ(2)に対して垂直な方向での、前記超電導合金または化合物の中実のブロック(42)の大きさが20mm未満である、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの超電導ワイヤ(2)に対して垂直な方向での、前記超電導合金または化合物の中実のブロック(42)の大きさが10mm未満である、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記余剰ワイヤ(30)を8の字型の構成に巻く、請求項
12に記載の方法。
【請求項21】
前記8の字型のループの構成が本質的に平面であり、且つ前記8の字型のループの構成の平面を超電導磁石の磁場に対して平行に配置する、請求項
20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばMRIシステム用の超電導磁石における超電導接続部の構造に関する。本発明は、そのような超電導接続部における余剰ワイヤを収納するための構造にも関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、MRIシステム用の従来の超電導磁石を示す。これは、寒剤容器12を含むクライオスタットを含む。冷却された超電導磁石10が寒剤容器12内に備えられ、前記寒剤容器自体は外側の真空チャンバ(OVC)
13内に保持されている。1つ以上の熱輻射シールド16が、寒剤容器12と外側の真空チャンバ
13との間の真空空間内に備えられている。いくつかの公知の構造においては、クライオスタットの側面に向かって、このために備えられたタレット18内に位置する冷凍機受け口15内に冷凍機17が取り付けられている。代替的に、冷凍機17は、クライオスタットの上部に取り付けられたアクセスネック(ベント管)20を保持するアクセスタレット19内に位置することもある。いくつかの構造においては、冷凍機17は、寒剤ガスを寒剤容器12内で液体に再凝縮することにより冷却するために、積極的な冷却をもたらす。冷凍機17は、輻射シールド16を冷却するためにも役立つことができる。
図1に示されるように、冷凍機17は2段階の冷凍機であってもよい。第1の冷却段階は、輻射シールド16に熱的につながっており、典型的には80~100Kの範囲である第1の温度への冷却をもたらす。第2の冷却段階は、典型的には4~10Kの範囲であるさらに低い温度への寒剤ガスの冷却をもたらす。
【0003】
負の電気接続部21aは通常、クライオスタットの本体を通じて磁石10に備えられる。正の電気接続部21は通常、ベント管20を通る導体によって備えられる。
【0004】
超電導磁石10は、電気的に相互接続された超電導ワイヤの多数のコイルを含む。それらの接続部、およびコイルおよび他の電気機器の電気的な相互接続を完成するために必要とされる他のものは、最小限の接続抵抗および効果的な冷却を確実にするように注意して構成される。本発明は、そのような用途において有用な方法および接続部に関する。
【0005】
本発明の方法および接続部は、少なくとも、超電導接続部の効率的な冷却および余剰ワイヤの収納の分野における利点をもたらす。余剰ワイヤは、超電導磁石の寿命の間に必要に応じて接続を解除したり、再構成したりすることを可能にするために、典型的には超電導接続部の構造内にあることが望ましい。
【0006】
超電導接続部を効果的に冷却するための従来の構造は、冷却手段と接続部との間に、電気的には絶縁しているが熱的には伝導性である界面を含む。しかしながら、そのような従来の構造は、典型的には、正確に組み立てるために必要な高価且つ複雑な部品を必要とするという欠点を有する。追加のコストおよび複雑さは、電気絶縁をもたらし且つ電圧破壊試験を行わなければならないことに起因する。そのような構造の例は、米国特許第8253024号明細書(US8253024)、米国特許出願公開第2013/0090245号明細書(US20130090245)、米国特許出願公開第2014/0024534号明細書(US20140024534)、米国特許出願公開第2016/0086693号明細書(US20160086693)、中国特許第101414742号明細書(CN101414742B)内に開示されている。
特開昭60-182673号公報および特開昭60-175383号公報は、超電導体接続部を製造および冷却するための構造および方法を記載している。
【0007】
他の公知の解決策においては、寒剤、例えば気体または液体のヘリウム、ネオンまたは窒素を含有する冷却管が、接続部と寒剤容器または他のいくつかの冷却部品との間に備えられている。冷却管と接続部との間で電気絶縁を確実にするために、電気的には絶縁しているが熱的には伝導性である要素が備えられなければならない。そのような構造は、寒剤ガスまたは液体と共に高価且つ複雑な管および容器を必要とするという欠点を有する。そのような部品は、漏れがなく、且つ圧力容器として使用するために認可されていなければならない。管と接続部との間の電気絶縁をもたらさなければならないことにより、さらなる複雑さが生じる。そのような構造の例は、米国特許第8315680号明細書(US8315680)内に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第8253024号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0090245号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0024534号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0086693号明細書
【文献】中国特許第101414742号明細書
【文献】米国特許第8315680号明細書
【文献】特開昭60-182673号公報
【文献】特開昭60-175383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの側面は、接続部付近での余剰の超電導ワイヤの収納に関する。通常は、余剰の超電導ワイヤを巻き、且つ接続部を埋め込むために使用されるのと同じ超電導合金を使用してそれを固定する。通常、余剰の超電導ワイヤは、液体の超電導合金で満たされた金属カップの内側で巻かれ、冷却して固められる。これは、大きな体積の円筒形の超電導合金を作り出す。しかしながら、そのような大きな体積の超電導合金の使用は、フラックスジャンプしやすい接続部を作り出しかねない。大きな塊の超電導合金は、長い冷却時間を必要とし、その合金を入れるためのカップが備えられなければならない。合金を溶融し、その中に接続部を浸漬するために、比較的高い温度の段階が行なわれなければならない。再接続の段階が必要とされる場合、余剰の超電導ワイヤを接続部のカップから抜き出すことも困難であり、且つ厄介であることがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、接続された超電導ワイヤの余剰長を接続部付近で収納するためのワイヤの収納構造を備える超電導接続構造を提供する。本発明の構造は、冷却寒剤浴の不在下であっても、接続部の効果的な冷却をもたらす。
【0011】
従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に定義される超電導接続部および超電導接続部の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の上記およびさらなる対象、特徴および利点は、例示的な目的としてのみ記載される以下の特定の実施態様の説明と、関連する添付の図面からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】クライオスタット内に超電導コイルを含む従来のMRI磁石システムの例を示す図である。
【
図2】本発明の実施態様による超電導接続部の例を示す図である。
【
図3】
図2に示された図面の一部の拡大図を示す図である。
【
図4】接続部が中実のブロックに埋め込まれている実施態様を示す図である。
【
図5】コイル間の相互インダクタンスの問題を説明するための、本発明の実施態様を示す図である。
【
図7】特定の環境下での余剰ワイヤおよび超電導接続部を通じた電流の経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従って、本発明は、超電導磁石用の超電導接続部であって、1つ以上の超電導コイルの超電導ワイヤの超電導フィラメント間に細長い接続部が形成されており、余剰ワイヤが、電気的に前記細長い接続部と前記1つ以上の超電導コイルとの間に備えられており、ここで、前記細長い接続部は、電気的に前記1つ以上の超電導コイルと前記余剰ワイヤとの間の位置で、少なくとも1つの超電導ワイヤと熱的に接触している、前記超電導接続部を提供する。
【0015】
図2は、本発明の例示的な実施態様による超電導接続部を模式的に説明する。超電導ワイヤのコイル3が超電導磁石の部分を形成する。それらは冷却手段で冷却され、図示されていないが、
図1を参照して説明されるとおり、寒剤材料および冷凍機を含み得る。代替的に、いくつかの現代の超電導磁石システムの場合のように、液体の寒剤の浴を含有する寒剤容器は備えられない。冷却は、例えば中実のサーマルバスに沿って低温の冷凍機に伝導することによって超電導ワイヤのコイル3にもたらされてもよいし、または冷却は冷却ループ、つまりループ内を循環し且つ低温の冷凍機によって冷却される寒剤の閉じられたサイホンによるものであってもよい。そのような磁石システムにおいては、接続部を超電導温度で維持するための液体の寒剤の浴はない。本発明は、超電導磁石システム内の超電導ワイヤ間の接続部を冷却する効果的な方式を提供する一方で、必要な場合、接続部を再構成するために要される余剰の超電導ワイヤの収納部を提供することを目的としている。
【0016】
接続部1は、自身が超電導ワイヤのコイル3の部分を形成する2つの超電導ワイヤ2から、典型的には超電導ワイヤのそれぞれのコイル3からの各々1つのワイヤから構成されている。
図2に示されるとおり、ワイヤ2の「尾部」は、それらの長さの一部にわたってそれぞれの絶縁スリーブ20内に包まれている(encased)ことがある。絶縁スリーブはPVC管、ナイロン組紐またはエナメルコーティングであってよい。接続部1は尾部の端部で形成されている。
【0017】
当該技術分野において周知のとおり、且つ
図3に示されるとおり、超電導ワイヤ2は典型的には、導電体、例えば銅、銀、アルミニウム等のシース22内に埋め込まれた細長い超電導フィラメント21を含む。各々のワイヤの自由端では、シース22は有意な長さ、例えば10~30cmにわたって除去されて、フィラメント21が露出される。これを例えばフッ化水素によるエッチングによって達成して、シース22の材料を除去し、フィラメント21の表面を洗浄できる。それにより、超電導フィラメントが特定の長さにわたって露出される。
【0018】
接続されるべきワイヤのフィラメントを合わせて撚り合わせるかまたは編組して、細長い超電導接続部1を形成する。次いで、編組または撚り合わせられたフィラメントを、例えばインジウムと共にスズめっきして、超電導合金によって超電導フィラメントの表面の濡れを補助することができる。次いで、前記細長い超電導接続部1をはんだ、好ましくは超電導はんだ、例えば鉛ビスマス内で被覆できる。次いで、前記細長い超電導接続部1を、超電導ワイヤ2の少なくとも1つと熱的に接触させて、この例においては超電導ワイヤ2の周りに巻き付けることによって、
電気的に対応する少なくとも1つのシース22の先端23と超電導コイル3との間で配置する。
図2に示されるとおり、前記接続部1は、
電気的に超電導コイル3と細長い超電導接続部1の第1の端部との間で、ワイヤ2の金属シースに熱的に結合されている。前記細長い超電導接続部1は、
電気的に対応する少なくとも1つのシース22の先端23(
図3)と超電導コイル3との間で、巻き付ける以外の方式で超電導ワイヤ2の少なくとも1つに熱的に結合されることができるが、細長い接続部1と超電導ワイヤ2の少なくとも1つのシース22との間での効果的な熱接触が、対応する少なくとも1つのシース22の先端23と超電導コイル3との間で確立されるべきである。記載された熱接触に加えて、細長い接続部1を機械的にしっかりと所定の位置に保持すべきであり、なぜなら、自由に動くと、ワイヤのシース材料内で誘導される渦電流に起因して、接続部のクエンチを引き起こしかねないからである。例えば銅、アルミニウムまたは銀の細い結合ワイヤ14を使用して、接続部をワイヤに結合することにより、熱結合を改善できる。それにより、接続部1と超電導ワイヤのコイル3との間で、良好な熱接触が確実になる。接続部1において発生した熱はワイヤ2に伝導され、次いでそのワイヤに沿って伝導されることにより、超電導ワイヤのコイル3へと伝導される。そのような熱は、超電導ワイヤのコイル3を冷却するために備えられる冷却装置によって運び去られる。
【0019】
本発明によれば、この構造は、細長い超電導接続部1から冷却されたコイル3への、比較的短い伝熱経路をもたらす。本発明の構造がないと、熱は、冷却されたコイルに達するために、細長い接続部1から、余剰ワイヤ30の長さに沿って通過しなければならない。本発明は、細長い超電導接続部と冷却コイルとの間の遙かに低減された熱の経路をもたらし、細長い超電導接続部の冷却効率を高め、細長い超電導接続部において生じるクエンチの確度を低減する。
【0020】
細長い超電導接続部1を、該接続部において使用されたものと同じはんだを使用してワイヤ2にはんだ付けすることにより、接続部とワイヤ2との間の非常に効果的な熱のつながり、および接続部についての非常に効果的な機械的支持をもたらすことができる。結合ワイヤ14の使用は、それらの利点をある程度もたらす。特定の実施態様において、結合ワイヤおよびはんだを使用できる。
【0021】
接続部1は超電導フィラメントの有意な長さにわたって、例えば10~30cmにわたって形成される。これは、低い接続抵抗および高い電流処理能力を確実にする。
【0022】
好ましくは、接続部1は、超電導ワイヤのコイル3の比較的近くでワイヤ2に熱的につなげられて、接続部1と超電導ワイヤのコイル3との間の効果的な熱結合を確実にする。
【0023】
代替的な実施態様において、細長い接続部1と、少なくとも1つの超電導ワイヤ2との間の熱的および機械的な接触を、クランプ留め、プレス、または適した接着剤、例えばHenkel Ltd.から得られるLOCTITE(登録商標) STYCAST(登録商標)樹脂を用いた接着によって得ることができる。
【0024】
前記接続部を、
図1に示される真空領域または寒剤容器内に配置することができる。しかしながら、寒剤容器内に配置すれば、隣接する寒剤材料の沸騰または対流により、接続部に冷却をもたらすことができる。
【0025】
上記で説明したとおり、超電導コイル3は、図示されない冷却手段によって、超電導コイル3の超電導動作を可能にするために十分な冷たさの低温に冷却される。ワイヤ2のシース22と熱的に接触されている接続部1は、それらのシースに沿った、冷却された超電導コイル3への熱伝導によって冷却される。
【0026】
シース22は熱伝導性の材料、例えば銅、アルミニウム、銀、またはそれらの金属のいくつかまたは全ての組み合わせ製である。細長い接続部1は、超電導ワイヤ2のシース22と、電気的接触、並びに熱的および機械的接触を成すことができ、なぜなら、シース22と細長い接続部1とは同電圧となるからである。シース22の熱伝導性により、細長い接続部1から超電導コイル3に向かって熱が運ばれる。
【0027】
図7は、超電導動作中、およびクエンチ(quench)後の本発明の超電導接続部を通る電流の経路を示す。通常の超電導動作中、電流は経路71に沿って流れる。経路71は、一方の接続された超電導ワイヤ2に従って細長い超電導接続部1に至り、前記細長い超電導接続部1を通過して、他方の接続された超電導ワイヤ2に従って出る。
【0028】
クエンチ後、超電導ワイヤ2および細長い超電導接続部1は抵抗性になる。典型的には、金属シース22は、この状態でフィラメント21より低抵抗である。クエンチ後、電流は経路72に沿って流れる。経路72は、一方の接続された超電導ワイヤ2に従うが、フィラメント21よりも金属シース22に沿う。細長い超電導接続部1で、電流は一方のワイヤの金属シース22から他方のワイヤの金属シース22へと好ましく伝達し、存在する場合ははんだを通って、他方の接続された超電導ワイヤ2に従って出る。
【0029】
図3に示すとおり、細長い接続部1は、細長い超電導接続部1の先端25が折り返し点24よりもシース22の先端23に近く位置するように、折り返し点24のところで折り返すことができる。折り返し点24では、曲率半径が、細長い接続部1の超電導フィラメント21に損傷が生じ得るほどにはきつくないように注意しなければならない。
【0030】
ワイヤ2を合わせて保持するための例えば銅ワイヤの結合材26、および/または細長い超電導接続部1をワイヤ2のシース22と機械的に接触させて保持するための例えば銅ワイヤの結合材
14を使用することによって、本発明の接続部の組み立てを容易にすることができる。1つの実施態様において、細長い超電導接続部1を、はんだ、例えば超電導はんだにおいて被覆された超電導フィラメントから形成でき、次いで、
図2に示すようにその細長い超電導接続部1をワイヤ2の周りに巻き付け、結合材
14によって所定の位置で結合することができる。
【0031】
代替的な実施態様において、さらなるはんだ付け段階を適用して、細長い接続部をワイヤ2のシース22にはんだ付けして、細長い接続部1とワイヤ2との間で改善された熱伝導性をもたらすことができる。超電導はんだ、例えば鉛ビスマスまたはインジウムスズが好ましく使用される。そのようなさらなるはんだ付け段階は、結合材27による細長い接続部1の、ワイヤ2のシース22への結合に先立ち、それに続いて、またはその代わりに行うことができる。
【0032】
1つの実施態様において、
図4に示されるとおり、鋳型40を準備し、細長い接続部1および少なくとも1つの超電導ワイヤ2の隣接部分を前記鋳型内に配置し、前記鋳型を超電導はんだ42、例えば鉛ビスマスまたはインジウムスズまたは他の超電導合金または化合物で充填し、細長い接続部1および少なくとも1つの超電導ワイヤ2の隣接部分を、超電導合金または化合物の中実のブロック42へと埋め込む(cast)。特定の実施態様において、鋳型40は、溶融した合金または化合物を注ぎやすくするために、U字形状の鋳型であるが、他の形状の鋳型も適宜使用できる。
【0033】
本発明の特徴によれば、
図2に示されるとおり、ある長さの余剰ワイヤ30が存在し、
電気的に超電導コイル3と細長い接続部1との間でワイヤ2の一部を形成する。本発明の1つの実施態様において、余剰ワイヤ30は、約90cmの長さを有することができ、これは細長い接続部1を3回まで再構成するために十分な長さである。示されるとおり、1つ以上の長さのスリーブ20を、余剰ワイヤ30にわたって配置できる。
【0034】
余剰ワイヤ30は、ワイヤ2を含むループとして、電気的に細長い接続部1と超電導コイル3との間に備えられる。示される実施態様において、且つ好ましくは、余剰ワイヤ30は8の字型の構成に巻かれ、余剰ワイヤ30により作り出される電流ループと、MRIシステムの主たる永続性の回路により作り出される電流ループとの間の磁場結合(相互インダクタンス)を低減する。これを、
図5、6を参照してさらに説明する。
【0035】
当該技術分野において周知のとおり、且つ
図2に示される8の字型の構造の2つのループ32、34を参照して、第1のループ32に囲まれた面積が第2のループ34によって囲まれた面積と等しい場合に、最小の磁場結合が生じる。他の実施態様は3つまたは4つのループを有することがあり、ただし、第1のループおよび第3のループで囲まれた全体の面積は、第2のループおよび存在する場合、第4のループによって囲まれた面積に等しい。8の字型の構造の交差点では電気絶縁が備えられ、その点でのそれぞれのワイヤの電気シース間の電気伝導を防ぐ。
【0036】
図5に示される実施態様において、且つ好ましくは、第1のループ32は第2のループ34によって囲まれる面積と同じ面積を囲む。これは、超電導磁石全体を表す電流の経路を含む磁石のループL1 35と、第1のループ32と第2のループ34とを合わせた影響を含むL2との間の相互インダクタンスを最小化する。第1のループ32および第2のループ34は囲む面積が等しいが、反対方向に電流を運ぶので、それらの影響は本質的に相殺される。
図6は単独のループL2’ 37を示し、これは、第1のループ32および第2のループ34を含むL2の代わりに使用される場合、ループL1とループL2’との間の望ましくない磁場結合をもたらすことがある。
【0037】
上記のように構成される場合、ループL2の第1のループ32および第2のループ34は本質的に無誘導性であるが、ただし、細長い超電導接続部1で接続された2つのワイヤ2は、互いに近く且つ平行である。
【0038】
他の実施態様において、
図6に示されるような単独のループL2’ 37の使用が可能であるが、ただし、前記単独のループL2’ 37は、磁石のループL1 35によって生成される磁場と正確に平行に配列される。そのような場合、余剰ワイヤ30の8の字型のループへの構成は必要とされないことがあり、なぜなら、磁石のループL1 35と単独のループL2’ 37の余剰ワイヤとの間の相互インダクタンスがゼロに近くなり得るからである。単独のループL2’ 37と、磁石外部の任意の磁場源との間の相互誘導を回避するように注意しなければならない。
【0039】
上記のように配置され得る小さな相互インダクタンスの結果、8の字型の構造の余剰ワイヤ30上の、超電導磁石の磁場から生じる正味の力も最小化される。これは、取り付ける構造を簡単にし、且つ有益である。
【0040】
好ましくは、いかなる場合でも、余剰ワイヤ30を含有するループは、平坦な、本質的に平面の構造として形成される。特定の実施態様において、余剰ワイヤ30を含有するループは、超電導磁石10によって生成される磁場が余剰ワイヤ30を含有するループの平面に対して実質的に平行であるように、OVC14の内側に配置されて、超電導磁石10と余剰ワイヤ30を含有するループとの間の磁気結合を最小化する。
【0041】
合計の局所磁場が非誘導性に巻かれた巻線の面に対して実質的に平行であるように、他の磁場の影響も考慮に入れることがある。そのような構造物は、超電導磁石および前記超電導磁石と関連する他のコイルの通電の結果としての外部場の変化に起因する、非誘導性に巻かれた巻線において誘導される電流を最小化する。例えば、勾配磁場コイルは素早く変化する磁場を生成し、これは主たる磁場において生じ得る変化よりも、余剰ワイヤ30のループにおける電流を誘導することについて、より大きな可能性を有し得る。
【0042】
超電導ワイヤ2は、実施可能である限り、所定の位置に固定されることが重要である。超電導ワイヤが自由に動けると、超電導コイルの磁場内で動きが起こり、従って該ワイヤ内で電圧が誘導され、それが磁石の磁場との干渉を引き起こすことがあり、且つ磁場のクエンチすらみちびきかねない。
【0043】
示された実施態様において、これはナイロンのケーブルタイ27を使用することによって達成される。
【0044】
代替的な実施態様において、余剰ワイヤ30を、このために備えられた保持支柱の周りに巻き付けることができる。当業者には明らかなとおり、余剰ワイヤを所定の位置に保持するための他の手段を用いることができる。
【0045】
例示的な実施態様において、発明者らは、本発明による接続部が、超電導状態での使用において、10-12オーム未満の抵抗を有し、1000アンペアまでの電流で10-6ワット以下の電力散逸をもたらすことを見出した。この低レベルの電力散逸は、接続部と超電導ワイヤ3のコイルとの間の高い熱伝導性と相まって、接続部の温度が非常にわずかにしか上昇しないことを意味する。
【0046】
フラックスジャンプの現象はE.W.CollingsおよびM.D.Sumption、“Stability and AC Losses in HTSC/Ag Multifilamentary Strands” Applied Superconductivity Vol. 3、No.11/12、551~557ページ、1995内で議論されている。
【0047】
磁石接続部のフラックスジャンプは、磁石全体のクエンチをみちびくことがあるので、合理的に可能な限り回避すべきである。
【0048】
フラックスジャンプの断熱理論から、特徴的なフラックスジャンプの大きさは、比熱C、臨界温度T
cと動作温度Tとの間の差に比例し、且つ超電導体の臨界電流密度J
cに反比例することが示され得る(式1):
【数1】
超電導合金のサイズがa
FJを上回る場合、フラックスジャンプが可能である。
【0049】
超電導接続部において使用される超電導合金42のC、Tc、動作温度TでのJcの組み合わせは、特徴的な大きさaFJが10~20mm未満であることを必要とすることが多い。この大きさの制限は、超電導合金42内に埋め込まれた接続された超電導ワイヤの余剰長30を収納することを非常に困難にする。
【0050】
本発明の少なくとも1つの実施態様によれば、余剰ワイヤ30は8の字型のループに収納される。このようにワイヤ収納部30を構成すると、超電導合金42の大きさを、特徴的な大きさa
FJ未満に減少することが可能である。
図4の実施態様の場合、これは、ワイヤ2に垂直な方向の超電導材料の大きさが20mm未満、好ましくは10mm未満であることを意味する。超電導合金42のサイズが減少すると、接続部の超電導材料42におけるフラックスジャンプの傾向が減少する。局所磁場の方向で超電導材料42の大きさを20mm未満、好ましくは10mm未満に制限することは、フラックスジャンプに対する断熱安定性をもたらす。