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特許7326417ポリエステル、フィルムおよび接着剤組成物、ならびに接着シート、積層体およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ポリエステル、フィルムおよび接着剤組成物、ならびに接着シート、積層体およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/123 20060101AFI20230807BHJP
   C08G 63/13 20060101ALI20230807BHJP
   C08G 63/137 20060101ALI20230807BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20230807BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230807BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230807BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230807BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C08G63/123
C08G63/13
C08G63/137
C09J167/00
H05K1/03 610M
C09J7/30
B32B27/00 D
B32B27/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021205735
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2021538819の分割
【原出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022050434
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2020060687
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 航
(72)【発明者】
【氏名】川楠 哲生
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/218348(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/218347(WO,A1)
【文献】特開平06-128363(JP,A)
【文献】特開2011-048926(JP,A)
【文献】特開2012-207207(JP,A)
【文献】特開平01-221469(JP,A)
【文献】特開2011-046771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00- 63/91
C09J 167/00
H05K 1/03
B32B 27/00- 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位として下記のモノマー(A)由来の基およびモノマー(B)由来の基を含有し、全構成単位の合計量を100モル%としたときに、モノマー(A)由来の基を25モル%以上、モノマー(B)由来の基を20モル%以上含有し、かつモノマー(A)由来の基およびモノマー(B)由来の基の合計が85モル%以上であり、10GHzにおける比誘電率(εc)が3.0以下、誘電正接(tanδ)が0.008以下である、ポリエステル(ただし、粉体塗料用を除く)。
モノマー(A):多環式構造を有する、多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分
モノマー(B):ダイマー酸、ダイマージオール、ダイマー酸エステル及び水酸基末端ポリイソプレンから選択される少なくとも1種以上の成分
【請求項2】
ガラス転移温度が-30℃以上である請求項1に記載のポリエステル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリエステルを含有するフィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリエステルを含有する接着剤組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の接着剤組成物により形成された層を有する接着シート。
【請求項6】
請求項4に記載の接着剤組成物により形成された層を有する積層体。
【請求項7】
請求項6に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルに関する。より詳しくは、誘電特性に優れるポリエステル、フィルムおよび接着剤組成物、ならびにそれにより形成される層を有する接着シート、積層体およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルはコーティング剤、インキおよび接着剤等に用いられる樹脂組成物の原料として広く使用されており、一般に多価カルボン酸と多価アルコールから構成される。多価カルボン酸と多価アルコールの選択と組合せによる柔軟性や、分子量の高低を自由にコントロールできるため、コーティング剤用途や接着剤用途をはじめ、様々な用途で広く使用されている。
【0003】
その中でもポリエステルは銅を含む金属との接着性に優れており、エポキシ樹脂などの硬化剤を配合してFPCなどの接着剤に使用されてきた。(例えば、特許文献1)。
【0004】
FPCは、優れた屈曲性を有することから、パソコン(PC)やスマートフォンなどの多機能化、小型化に対応することができ、そのため狭く複雑な内部に電子回路基板を組み込むために多く使用されている。近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、これらの流行から配線板(電子回路基板)の性能に対する要求がますます高度なものとなっている。特にFPCにおける伝送信号の高速化に伴い、信号の高周波化が進んでいる。これに伴い、FPCには、高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の要求が高まっている。また、FPCに用いられる基材についても、従来のポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)だけでなく、低誘電特性を有する液晶ポリマー(LCP)やシンジオタクチックポリスチレン(SPS)などの基材フィルムが提案されている。このような、低誘電特性を達成するため、FPCの基材や接着剤の誘電体損失を低減する方策がなされている。接着剤としてはポリオレフィンとエポキシの組み合わせ(特許文献2)等の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平6-104813
【文献】WO2016/047289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のポリエステル樹脂は、比誘電率および誘電正接が高く、上述の低誘電特性を有しておらず高周波領域のFPCに不適である。また、特許文献2に記載の接着剤は補強板や層間に使用される接着剤の耐熱性に優れるとは言い難い。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、溶剤溶解性、耐熱性、接着強度に優れ、比誘電率および誘電正接の低い、誘電特性に優れたポリエステル、フィルムおよび接着剤組成物、ならびにそれにより形成された層を有する接着シート、積層体およびプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0009】
構成成分として下記のモノマー(A)およびモノマー(B)を含有し、全構成成分の合計量を100モル%としたときに、モノマー(A)を25モル%以上、モノマー(B)を10モル%以上含有し、かつモノマー(A)およびモノマー(B)の合計が60モル%以上である、ポリエステル。
モノマー(A):多環式構造を有する、多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分
モノマー(B):連続して10以上の炭素鎖を有する、多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分
【0010】
前記ポリエステルは、ガラス転移温度が-30℃以上であることが好ましい。
【0011】
前記ポリエステルは、10GHzにおける比誘電率(εc)が3.0以下、誘電正接(tanδ)が0.008以下であることが好ましい。
【0012】
前記ポリエステルを含有するフィルム。
【0013】
前記ポリエステルを含有する接着剤組成物。
【0014】
前記接着剤組成物により形成された層を有する接着シート。
【0015】
前記接着剤組成物により形成された層を有する積層体。
【0016】
前記積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリエステルは、溶剤溶解性、耐熱性、接着強度に優れ、かつ誘電特性に優れている。このため、高周波領域のFPC用のベースフィルムおよびFPC用接着剤、ならびに接着シート、積層体およびプリント配線板に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態について以下に詳述する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、既述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できる。
【0019】
<ポリエステル>
本発明のポリエステルは、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との重縮合物によって得ることのできる化学構造からなり、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とはそれぞれ1種または2種以上の選択された成分からなるものである。
【0020】
本発明のポリエステルは、構成成分として下記のモノマー(A)およびモノマー(B)を含有する。
モノマー(A):多環式構造を有する、多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分
モノマー(B):連続して10以上の炭素鎖を有する、多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分
【0021】
<モノマー(A)>
モノマー(A)は、多環式構造を有する、多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分である。多環式構造とは、主に炭素で構成された環構造が複数結合した構造を指し、例えば、ナフタレン、アントラセン、インダン、テトラリンなどの芳香族骨格、デカリン、ノルボルナン、トリシクロデカンなどの脂環骨格を有する構造が挙げられる。多環式構造を有することで、ポリエステルの自由体積が増大し、低誘電特性を発揮する。
【0022】
多環式構造を有する多価カルボン酸成分または多価アルコール成分であるモノマー(A)としては、例えば、2、6-ナフタレンジカルボン酸、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロデカンジメタノール、ビスフェノールフルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレン、ビスフェノキシメタノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、スピログリコール、水素添加ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0023】
本発明のポリエステルは、全構成成分の合計量を100モル%としたときに、モノマー(A)を25モル%以上含有する。好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上である。モノマー(A)を前記の値以上含有することで、低誘電特性が向上する。特に誘電正接への効果が大きい。
【0024】
<モノマー(B)>
モノマー(B)は、連続して10以上の炭素鎖を有する、多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分である。炭素鎖とは炭素-炭素結合を連続して有する構造のことであり、モノマー(B)は多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分であるが、カルボン酸基同士、またはアルコール基同士が連続して10以上の炭素鎖を介していることで、ポリエステルの極性基濃度が低下し、低誘電特性に寄与する。炭素鎖中には環構造を有していてもよいが、カルボン酸基同士、またはアルコール基同士は炭素数で最短でも10以上離れている必要がある。また、低誘電特性の観点から、炭素鎖中にはカルボン酸基またはアルコール基以外に、窒素、酸素、硫黄などのヘテロ原子は含まない方が好ましく、炭素鎖はすべて炭化水素でなっているものが好ましい。
【0025】
連続して10以上の炭素鎖を有する多価カルボン酸成分または多価アルコール成分であるモノマー(B)としては、例えば、ダイマー酸、ダイマージオール、ダイマー酸エステル(ダイマー酸由来のポリエステルポリオール)、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端水素化ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソプレン、水酸基末端ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0026】
上記ダイマー酸とは、C10~24の不飽和脂肪酸を二量化して得られた炭素数20~48の重合体脂肪酸を指す。また、それらの不飽和基を水添して得られる飽和ダイマー酸も含む。ダイマージオールは上記ダイマー酸のカルボキシル基を還元することで得られる。ダイマー酸およびダイマージオールの原料としては、植物油を用いてもよい。さらにダイマージオールはC10~24の不飽和脂肪酸の三量体であるトリマーやトリマーを水添して得られる飽和トリマーを含んでいてもよい。
【0027】
モノマー(B)の数平均分子量は、300以上であることが好ましい。より好ましくは400以上、さらに好ましくは500以上である。分子量が大きいほど極性基濃度が低下するため、低誘電特性が向上する。
【0028】
本発明のポリエステルは、全構成成分の合計量を100モル%としたときに、モノマー(B)を10モル%以上含有する。好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上である。モノマー(B)を前記の値以上含有することで、低誘電特性が向上する。また、ポリエステルの溶剤溶解性にも優れる。
【0029】
本発明のポリエステルは、全構成成分の合計量を100モル%としたときに、モノマー(A)とモノマー(B)の合計を60モル%以上含有する。より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは85モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。100モル%であっても差し支えない。前記のようにモノマー(A)を25モル%以上、モノマー(B)を10モル%以上含有し、かつモノマー(A)とモノマー(B)の合計量を前記の値以上含有することで、極めて優れた低誘電特性を発揮し、かつ溶剤溶解性やガラス転移温度などの各種物性のバランスのよいポリエステルとすることができる。
【0030】
本発明のポリエステルは、モノマー(A)およびモノマー(B)以外の多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を含有することができる。モノマー(A)およびモノマー(B)以外の多価カルボン酸成分としては、特に限定されないが、多価カルボン酸成分としては、芳香族多価カルボン酸成分または脂環族多価カルボン酸成分であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸成分または脂環族ジカルボン酸成分であることがより好ましい。共重合成分として芳香族多価カルボン酸成分または脂環族多価カルボン酸成分を使用することで優れた誘電特性を発現することができる。
【0031】
芳香族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などを使用することができる。
【0032】
脂環族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物などを使用することができる。
【0033】
モノマー(A)およびモノマー(B)以外の多価アルコール成分としては、特に限定されないが、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールなどの脂肪族多価アルコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族多価アルコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコールなどが使用でき、これらの内から、1種、または2種以上を使用できる。
【0034】
本発明におけるポリエステルには、3価以上の多価カルボン酸成分および/または3価以上の多価アルコール成分を共重合することもできる。3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)などの芳香族カルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族カルボン酸などが挙げられ、これらを1種、又は2種以上の使用が可能である。3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α-メチルグルコース、マンニトール、ソルビトールが挙げられ、これらより1種、又は2種以上の使用が可能である。ただし、3価以上の多価カルボン酸成分および/または3価以上の多価アルコール成分の共重合量が多いと、ポリエステルの誘電特性が悪化する場合があるため好ましくない。3価以上の多価カルボン酸成分および/または3価以上の多価アルコール成分を共重合する場合、全構成成分の合計100モル%のうち、3モル%以下が好ましく、より好ましくは2モル%以下である。
【0035】
本発明のポリエステルの10GHzにおける誘電正接は0.008以下が好ましく、0.005以下がより好ましい。誘電正接の低いポリエステルであることによって、低誘電特性の良好な接着剤組成物を形成することができる。
【0036】
本発明のポリエステルの10GHzにおける比誘電率は3.0以下が好ましく、2.6以下がより好ましい。比誘電率の低いポリエステルであることによって、低誘電特性の良好な接着剤組成物を形成することができる。
【0037】
本発明におけるポリエステルのガラス転移温度は-30℃以上であることが好ましく、より好ましくは-20℃以上である。ガラス転移温度を-30℃以上の範囲にすることで、良好な誘電特性を発現し、さらに樹脂表面のタック性(粘着性)が抑制される傾向にあり、樹脂の取り扱い性が向上する。また、ガラス転移温度は100℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度を100℃以下にすることで、80℃程度の低温でもラミネートすることができる。また、ガラス転移温度が低いほど、接着強度は良好となる傾向がある。
【0038】
本発明のポリエステルを製造する重合縮合反応の方法としては、例えば、1)多価カルボン酸と多価アルコールを公知の触媒存在下で加熱し、脱水エステル化工程を経て、脱多価アルコール・重縮合反応を行う方法、2)多価カルボン酸のアルコールエステル体と多価アルコールを公知の触媒存在下で加熱、エステル交換反応を経て、脱多価アルコール・重縮合反応を行う方法、3)解重合を行う方法などがある。前記1)2)の方法において、酸成分の一部またはすべてを酸無水物に置換しても良い。
【0039】
本発明におけるポリエステルを製造する際には、従来公知の重合触媒、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンオキシアセチルセトネートなどのチタン化合物、三酸化アンチモン、トリブトキシアンチモンなどのアンチモン化合物、酸化ゲルマニウム、テトラ-n-ブトキシゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物、その他、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、アルミニウムなどの酢酸塩などを使用することが出来る。これらの触媒は1種、または2種以上を併用することができる。
【0040】
本発明におけるポリエステルの数平均分子量は5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。また、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、30000以下であることがさらに好ましい。前記の範囲内であると、溶剤へ溶解した際の取り扱いがしやすく、接着強度が良好となり、また誘電特性に優れるため、好ましい 。
【0041】
本発明におけるポリエステルの酸価は特に限定されないが、併用する硬化剤により適宜設計できる。イソシアネート硬化の場合、200eq/10g以下であることが好ましく、100eq/10g以下であることがより好ましく、50eq/10g以下であることがさらに好ましく、40eq/10g以下であることが特に好ましく、30eq/10g以下であることが最も好ましい。エポキシ硬化の場合は、20eq/10g以上が好ましく、50eq/10g以上がさらに好ましく、最も好ましくは100eq/10g以上である。樹脂酸価を上記範囲内とすることによって良好なポットライフや基材密着性、架橋性が高まる効果が期待できる。低誘電特性の観点からは、イソシアネート硬化系が好ましい。
【0042】
本発明におけるポリエステルの酸価を上げる方法としては、例えば、(1)重縮合反応終了後に、3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の無水多価カルボン酸を添加し、反応させる方法(酸付加)や、(2)重縮合反応時に、熱、酸素、水などを作用させ、意図的に樹脂変質を行う、などの方法があり、これらを任意で行うことが出来る。前記酸付加方法での酸付加に用いられる多価カルボン酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、3,3,4,4-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートなどが挙げられ、これらを1種、又は2種以上の使用が可能である。好ましくは無水トリメリット酸である。
【0043】
本発明のポリエステルは、フィルムとして使用できる。本発明のポリエステルをフィルムとして使用する場合、ポリエステルをそのままフィルム状に加工して使用してもよいし、さらにガラス繊維やシリカなどの各種フィラーを分散したものをフィルム状に加工して使用することもできる。本発明のフィルムの厚みや形状は特に限定されず、しばしばシートと呼称される形態もこれに含む。
本発明のフィルムは誘電特性に優れるため、高速伝送用のリジッド基盤やFPCのCCLベースフィルムとして好適である。
【0044】
本発明のポリエステルは、接着剤として使用できる。特に、本発明のポリエステルは誘電特性に優れるため、高周波領域のFPC用接着剤に好適である。
本発明のポリエステルを接着剤として使用する場合、さらに硬化剤を含み、接着剤組成物とすることができる。
【0045】
<硬化剤>
前記硬化剤としては、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド等を用いることができる。これらの硬化剤で架橋することによって、樹脂の凝集力を高め、耐熱性を向上させることができる。中でも、耐熱性と誘電特性への影響が少ないことから、ポリイソシアネートが好ましい。
【0046】
<エポキシ樹脂>
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を有するものであれば、特に限定されないが、好ましくは分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである。具体的には、特に限定されないが、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、およびエポキシ変性ポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。好ましくは、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはエポキシ変性ポリブタジエンである。より好ましくは、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはノボラック型エポキシ樹脂である。
【0047】
本発明の接着剤組成物において、エポキシ樹脂の含有量は、ポリエステル100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上であり、特に好ましくは2質量部以上である。前記下限値以上とすることで、十分な硬化効果が得られ、優れた接着性およびハンダ耐熱性を発現することができる。また、60質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下であり、特に好ましくは35質量部以下である。前記上限値以下とすることで、ポットライフ性および低誘電特性が良好となる。すなわち、上記範囲内とすることで、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性に加え、優れた低誘電特性を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0048】
<ポリカルボジイミド>
本発明で用いるポリカルボジイミドとしては、分子内にカルボジイミド基を有するものであれば、特に限定されない。好ましくは分子内にカルボジイミド基を2個以上有するポリカルボジイミドである。ポリカルボジイミドを使用することによって、ポリエステルのカルボキシル基とカルボジイミド基とが反応し、接着剤組成物と基材との相互作用を高め、接着性を向上することができる。
【0049】
本発明の接着剤組成物において、ポリカルボジイミドの含有量は、ポリエステル100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上であり、特に好ましくは2質量部以上である。前記下限値以上とすることで基材との相互作用が発現し、接着性が良好となる。また、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは25質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以下であり、よりさらに好ましくは15質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以下である。前記上限値以下とすることで優れたポットライフ性および低誘電特性を発現することができる。すなわち、上記範囲内とすることで、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性に加え、優れた低誘電特性を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0050】
<ポリイソシアネート>
本発明に用いるポリイソシアネートは、ポリエステルと反応し、硬化するイソシアネート化合物であれば、特に限定されない。
【0051】
ポリイソシアネートとしては、芳香族又は脂肪族のジイソシアネート化合物、3価以上のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。これらイソシアネート化合物は、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、またはこれらのイソシアネート化合物の3量体が挙げられる。また、前記イソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物とを反応させた末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。さらに前記イソシアネート化合物の過剰量と、各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物等と反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。これらイソシアネート化合物を単独でまたは2種以上を併用することができる。なかでも、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物の3量体が特に好ましい。
【0052】
本発明の接着剤組成物において、ポリイソシアネートの含有量は、ポリエステル100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上であり、特に好ましくは2質量部以上である。前記下限値以上とすることで基材との相互作用が発現し、接着性が良好となる。また、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは25質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以下であり、よりさらに好ましくは15質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以下である。前記上限値以下とすることで優れたポットライフ性および低誘電特性を発現することができる。すなわち、上記範囲内とすることで、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性に加え、特に優れた低誘電特性を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0053】
<有機溶剤>
本発明の接着剤組成物は、さらに有機溶剤を含有することができる。本発明で用いる有機溶剤は、ポリエステルおよび硬化剤を溶解させるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノiso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノt e r t - ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn -ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノiso-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等を使用することができ、これら1種または2種以上を併用することができる。特に作業環境性、乾燥性から、メチルシクロへキサンやトルエンが好ましい。
【0054】
有機溶剤は、ポリエステル100質量部に対して、100~1000質量部の範囲であることが好ましい。前記下限値以上とすることで液状およびポットライフ性が良好となる。また、前記上限値以下とすることで製造コストや輸送コストの面から有利となる。
【0055】
また、本発明の接着剤組成物には、さらに他の成分を必要に応じて含有してもよい。このような成分の具体例としては、難燃剤、粘着付与剤、フィラー、シランカップリング剤が挙げられる。
【0056】
<難燃剤>
本発明の接着剤組成物には必要に応じて難燃剤を配合しても良い。難燃剤としては、臭素系、リン系、窒素系、水酸化金属化合物等が挙げられる。中でも、リン系難燃剤が好ましく、リン酸エステル、例えば、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等、リン酸塩、例えばホスフィン酸アルミニウム等、ホスファゼン等の公知のリン系難燃剤を使用できる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。難燃剤を含有させる場合、ポリエステルと硬化剤成分の合計100質量部に対し、難燃剤を1~200質量部の範囲で含有させることが好ましく、5~150質量部の範囲がより好ましく、10~100質量部の範囲が最も好ましい。前記範囲内とすることで接着性、ハンダ耐熱性および電気特性を維持しつつ、難燃性を発現することができる。
【0057】
<粘着付与剤>
本発明の接着剤組成物には必要に応じて粘着付与剤を配合しても良い。粘着付与剤としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられ、接着強度を向上させる目的で用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。粘着付与剤を含有させる場合、ポリエステルと硬化剤成分の合計100質量部に対し、1~200質量部の範囲で含有させることが好ましく、5~150質量部の範囲がより好ましく、10~100質量部の範囲が最も好ましい。前記範囲内とすることで接着性、ハンダ耐熱性および電気特性を維持しつつ、粘着付与剤の効果を発現することができる。
【0058】
<フィラー>
本発明の接着剤組成物には必要に応じてフィラーを配合しても良い。有機フィラーとしては、耐熱性樹脂であるポリイミド、ポリアミドイミドなどの粉末が挙げられる。また、無機フィラーとしては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、酸化タンタル(Ta)、ジルコニア(ZrO)、窒化硅素(Si)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、有機ベントナイト、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、この中では分散の容易さや耐熱性向上効果からシリカが好ましい。
シリカとしては一般に疎水性シリカと親水性シリカが知られているが、ここでは耐吸湿性を付与する上でジメチルジクロロシランやヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン等で処理を行った疎水性シリカの方が良い。シリカを配合する場合、その配合量は、ポリエステルと硬化剤成分の合計100質量部に対し、0.05~30質量部の配合量であることが好ましい。前記下限値以上とすることで更なる耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることでシリカの分散不良や溶液粘度が高くなりすぎることを抑え、作業性が良好となる。
【0059】
<シランカップリング剤>
本発明の接着剤組成物には必要に応じてシランカップリング剤を配合しても良い。シランカップリング剤を配合することにより金属への接着性や耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されないが、不飽和基を有するもの、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するものなどが挙げられる。これらのうち耐熱性の観点からγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランやβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランやβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有したシランカップリング剤がさらに好ましい。シランカップリング剤を配合する場合、その配合量はポリエステルと硬化剤成分の合計100質量部に対して0.5~20質量部の配合量であることが好ましい。前記範囲内とすることでハンダ耐熱性や接着性を向上することができる。
【0060】
<積層体>
本発明の積層体は、基材に接着剤組成物を積層したもの(基材/接着剤層の2層積層体)、または、さらに基材を貼り合わせたもの(基材/接着剤層/基材の3層積層体)である。ここで、接着剤層とは、本発明の接着剤組成物を基材に塗布し、乾燥させた後の接着剤組成物の層をいう。本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種基材に塗布、乾燥すること、およびさらに他の基材を積層することにより、本発明の積層体を得ることができる。
【0061】
<基材>
本発明において基材とは、本発明の接着剤組成物を塗布、乾燥し、接着剤層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、フィルム状樹脂等の樹脂基材、金属板や金属箔等の金属基材、紙類等を挙げることができる。
【0062】
樹脂基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。好ましくはフィルム状樹脂(以下、基材フィルム層ともいう)である。
【0063】
金属基材としては、回路基板に使用可能な任意の従来公知の導電性材料が使用可能である。素材としては、SUS、銅、アルミニウム、鉄、スチール、亜鉛、ニッケル等の各種金属、及びそれぞれの合金、めっき品、亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属等を例示することができる。好ましくは金属箔であり、より好ましくは銅箔である。金属箔の厚みについては特に限定はないが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは、3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。厚さが薄すぎる場合には、回路の充分な電気的性能が得られにくい場合があり、一方、厚さが厚すぎる場合には回路作製時の加工能率等が低下する場合がある。金属箔は、通常、ロール状の形態で提供されている。本発明のプリント配線板を製造する際に使用される金属箔の形態は特に限定されない。リボン状の形態の金属箔を用いる場合、その長さは特に限定されない。また、その幅も特に限定されないが、250~500cm程度であるのが好ましい。基材の表面粗度は特に限定はないが、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは2μm以下であり、さらに好ましくは1.5μm以下ある。また実用上好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは、0.5μm以上であり、さらに好ましくは0.7μm以上である。
【0064】
紙類として上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙等を例示することができる。また複合素材として、ガラスエポキシ等を例示することができる。
【0065】
接着剤組成物との接着力、耐久性から、基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、SUS鋼板、銅箔、アルミ箔、またはガラスエポキシが好ましい。
【0066】
<接着シート>
本発明において、接着シートとは、前記積層体と離型基材とを接着剤組成物を介して積層したものである。具体的な構成態様としては、積層体/接着剤層/離型基材、または離型基材/接着剤層/積層体/接着剤層/離型基材が挙げられる。離型基材を積層することで基材の保護層として機能する。また離型基材を使用することで、接着シートから離型基材を離型して、さらに別の基材に接着剤層を転写することができる。
【0067】
本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種積層体に塗布、乾燥することにより、本発明の接着シートを得ることができる。また乾燥後、接着剤層に離型基材を貼付けると、基材への裏移りを起こすことなく巻き取りが可能になり操業性に優れるとともに、接着剤層が保護されることから保存性に優れ、使用も容易である。また離型基材に塗布、乾燥後、必要に応じて別の離型基材を貼付すれば、接着剤層そのものを他の基材に転写することも可能になる。
【0068】
<離型基材>
離型基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたものが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、及びポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものも挙げられる。離型基材と接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、またはポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0069】
なお、本発明において接着剤組成物を基材上にコーティングする方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。もしくは、必要に応じて、プリント配線板構成材料である圧延銅箔、またはポリイミドフィルムに直接もしくは転写法で接着剤層を設けることもできる。乾燥後の接着剤層の厚みは、必要に応じて、適宜変更されるが、好ましくは5~200μmの範囲である。接着フィルム厚を5μm以上とすることで十分な接着強度が得られる。また、200μm以下とすることで乾燥工程の残留溶剤量を制御しやすくなり、プリント配線板製造のプレス時にフクレが生じにくくなる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は1質量%以下が好ましい。1質量%以下とすることで、プリント配線板プレス時に残留溶剤が発泡することを抑え、フクレが生じにくくなる。
【0070】
<プリント配線板>
本発明におけるプリント配線板は、導体回路を形成する金属箔と樹脂基材とから形成された積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、例えば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、或いは全面的にカバーフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などを総称している。
【0071】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の4層から構成されるプリント配線板とすることができる。また例えば、基材フィルム層、接着剤層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の5層から構成されるプリント配線板とすることができる。
【0072】
さらに、必要に応じて、上記のプリント配線板を2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。
【0073】
本発明の接着剤組成物はプリント配線板の各接着剤層に好適に使用することが可能である。特に本発明の接着剤組成物を接着剤として使用すると、プリント配線板を構成する従来のポリイミド、ポリエステルフィルム、銅箔だけでなく、LCPなどの低極性の樹脂基材と高い接着性を有し、耐ハンダリフロー性を得ることができ、接着剤層自身が低誘電特性に優れる。そのため、カバーレイフィルム、積層板、樹脂付き銅箔及びボンディングシートに用いる接着剤組成物として好適である。
【0074】
本発明のプリント配線板において、基材フィルムとしては、従来からプリント配線板の基材として使用されている任意の樹脂フィルムが使用可能である。基材フィルムの樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。特に、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の低極性基材に対しても、優れた接着性を有する。
【0075】
<カバーフィルム>
カバーフィルムとしては、プリント配線板用の絶縁フィルムとして従来公知の任意の絶縁フィルムが使用可能である。例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の各種ポリマーから製造されるフィルムが使用可能である。より好ましくは、ポリイミドフィルムまたは液晶ポリマーフィルムである。
【0076】
本発明のプリント配線板は、上述した各層の材料を用いる以外は、従来公知の任意のプ
ロセスを用いて製造することができる。
【0077】
好ましい実施態様では、カバーフィルム層に接着剤層を積層した半製品(以下、「カバーフィルム側半製品」という)を製造する。他方、基材フィルム層に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側2層半製品」という)または基材フィルム層に接着剤層を積層し、その上に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側3層半製品」という)を製造する(以下、基材フィルム側2層半製品と基材フィルム側3層半製品とを合わせて「基材フィルム側半製品」という)。このようにして得られたカバーフィルム側半製品と、基材フィルム側半製品とを貼り合わせることにより、4層または5層のプリント配線板を得ることができる。
【0078】
基材フィルム側半製品は、例えば、(A)前記金属箔に基材フィルムとなる樹脂の溶液を塗布し、塗膜を初期乾燥する工程、(B)(A)で得られた金属箔と初期乾燥塗膜との積層物を熱処理・乾燥する工程(以下、「熱処理・脱溶剤工程」という)を含む製造法により得られる。
【0079】
金属箔層における回路の形成は、従来公知の方法を用いることができる。アディティブ法を用いてもよく、サブトラクティブ法を用いてもよい。好ましくは、サブトラクティブ法である。
【0080】
得られた基材フィルム側半製品は、そのままカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後にカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0081】
カバーフィルム側半製品は、例えば、カバーフィルムに接着剤を塗布して製造される。必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0082】
得られたカバーフィルム側半製品は、そのまま基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0083】
基材フィルム側半製品とカバーフィルム側半製品とは、それぞれ、例えば、ロールの形態で保管された後、貼り合わされて、プリント配線板が製造される。貼り合わせる方法としては、任意の方法が使用可能であり、例えば、プレスまたはロールなどを用いて貼り合わせることができる。また、加熱プレス、または加熱ロ-ル装置を使用するなどの方法により加熱を行いながら両者を貼り合わせることもできる。
【0084】
補強材側半製品は、例えば、ポリイミドフィルムのように柔らかく巻き取り可能な補強材の場合、補強材に接着剤を塗布して製造されることが好適である。また、例えばSUS、アルミ等の金属板、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化させた板等のように硬く巻き取りできない補強板の場合、予め離型基材に塗布した接着剤を転写塗布することによって製造されることが好適である。また、必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0085】
得られた補強材側半製品は、そのままプリント配線板裏面との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0086】
基材フィルム側半製品、カバーフィルム側半製品、補強材側半製品はいずれも、本発明におけるプリント配線板用積層体である。
【実施例
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本実施例および比較例において、単に部とあるのは質量部を示すこととする。
【0088】
(物性評価方法)
ポリエステルの組成の測定
400MHzのH-核磁気共鳴スペクトル装置(以下、NMRと略記することがある)を用い、ポリエステルを構成する多価カルボン酸成分、多価アルコール成分のモル比定量を行った。溶媒には重クロロホルムを使用した。なお、酸後付加によりポリエステルの酸価を上げた場合には、酸後付加に用いた酸成分以外の酸成分の合計を100モル%として、各成分のモル比を算出した。
【0089】
ガラス転移温度の測定
示差走査型熱量計(SII社、DSC-200)を用いて測定した。試料(ポリエステル)5mgをアルミニウム抑え蓋型容器に入れ密封し、液体窒素を用いて-50℃まで冷却した。次いで150℃まで20℃/分の昇温速度にて昇温させ、昇温過程にて得られる吸熱曲線において、吸熱ピークが出る前(ガラス転移温度以下)のベースラインの延長線と、吸熱ピークに向かう接線(ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線)との交点の温度をもって、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)とした。
【0090】
数平均分子量の測定
ポリエステルの試料を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランで溶解および/または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料とした。テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF-802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
【0091】
酸価の測定
ポリエステルの試料0.2gを40mlのクロロホルムに溶解し、0.01Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、ポリエステル10gあたりの当量(eq/10g)を求めた。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。
【0092】
比誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ)
トルエンに固形分濃度が30質量%となるように溶解したポリエステルを厚さ100μmのテフロン(登録商標)シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。次いでテフロン(登録商標)シートを剥離して試験用の樹脂シートを得た。その後得られた試験用樹脂シートを8cm×3mmの短冊状にサンプルを裁断し、試験用サンプルを得た。比誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ)は、ネットワークアナライザー(アンリツ社製)を使用し、空洞共振器摂動法で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。
<比誘電率の評価基準>
◎:2.3以下
○:2.3を超え3.0以下
×:3.0を超える
<誘電正接の評価基準>
◎:0.005以下
○:0.005を超え0.008以下
×:0.008を超える
【0093】
タック性
トルエンに固形分濃度が30質量%となるように溶解したポリエステルワニスをポリエステルフィルム(東洋紡製E5101、厚み50μm、コロナ処理面)に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。室温(23℃)にて、乾燥した接着剤シートを幅25mm、長さ200mmに切断し、接着剤層面を圧延銅箔基材(JX金属株式会社製、BHYシリーズ)に貼り付け、上から2kgのゴムローラーで20mm/秒の速度で2往復させ、接着剤シートを圧着させた。その後、剥離速度300mm/分の条件で180°剥離し、剥がれた基材の状態を確認した。基材に糊残りが無く界面剥離したものを○、接着剤層が基材側に転写されるものを×とした。
<タック性の評価基準>
○:糊残りが無く界面剥離
×:糊残りがある、または接着剤層が基材側に転写
【0094】
溶剤溶解性
ポリエステルをトルエンへ固形分濃度が60質量%または50質量%となるように80℃で6時間攪拌しながら溶解した際の溶解性について次の基準で評価した。
<溶剤溶解性の評価基準>
◎:固形分濃度60質量%で溶け残りなく完全に溶解
○:固形分濃度50質量%で溶け残りなく完全に溶解
×:固形分濃度50質量%で樹脂の溶け残りあり
【0095】
ピール強度(接着性)
本発明のポリエステルに硬化剤を配合して接着剤組成物とし、接着性評価を実施した。硬化剤としては、以下のものを用いた。
(b1):ポリイソシアネート(スミジュールN3300(住化コベストロウレタン社製))
(b2):エポキシ樹脂(エピクロンHP-7200H(DIC社製))
ポリエステルをトルエンで溶解して作成した固形分濃度30質量%のトルエンワニスに、硬化剤をポリエステル100部に対し表1に示す割合(質量部)となるように配合し、接着剤組成物とした。
接着剤組成物を厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル(登録商標))に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を厚さ18μmの圧延銅箔(JX金属株式会社製、BHYシリーズ)と貼り合わせた。貼り合わせは、圧延銅箔の光沢面が接着剤層と接する様にして、160℃で2MPaの加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで170℃で3時間熱処理して硬化させて、ピール強度評価用サンプルを得た。ピール強度は、25℃において、フィルム引き、引張速度50mm/minで90°剥離試験を行ない、ピール強度を測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。
<評価基準>
◎:1.0N/mm以上
○:0.8N/mm以上1.0N/mm未満
△:0.5N/mm以上0.8N/mm未満
×:0.5N/mm未満
【0096】
耐熱性
示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所、DTG-60)を用いて測定した。ポリエステル50mgを白金セルに入れ、流速20ml/minの窒素雰囲気下、5℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温した。高温での分解が進行し、重量が初期の95%となる温度を5%重量減少温度とし、耐熱性の指標とした。
<耐熱性の評価基準>
○:5%重量減少温度が300℃以上
×:5%重量減少温度が300℃未満
【0097】
以下、本発明のポリエステル、および比較例となるポリエステルの製造例を示す。
【0098】
(実施例1)
ポリエステル(a1)の製造例
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器に2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル326部、ダイマージオール(Croda社、Pripol2033)1520部、触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全酸成分に対して0.03モル%仕込み、160℃から220℃まで4時間かけて昇温、脱水工程を経ながらエステル化反応を行った。次に重縮合反応工程は、系内を20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに250℃まで昇温を進めた。次いで、0.3mmHg以下まで減圧し、60分間の重縮合反応を行った後、これを取り出した。得られたポリエステル(a1)はNMRによる組成分析の結果、モル比で2,6-ナフタレンジカルボン酸/ダイマージオール=100/100[モル比]であった。また、ガラス転移温度は-17℃であった。得られたポリエステル(a1)について、溶剤溶解性、タック性、耐熱性、比誘電率、誘電正接および接着性の各評価を実施した。評価結果を表1に記載した。
【0099】
(実施例2~10、比較例1~6)
ポリエステル(a2)~(a16)の製造例
ポリエステル(a1)の製造例に準じ、原料の種類と配合比率を変更して、ポリエステル(a2)~(a16)を合成した。なお、ポリエステル(a9)は重合反応終了後さらに無水トリメリット酸8質量部を投入し、230℃で30分間反応させて酸後付加を実施した。物性および評価結果を表1に記載した。なお、PTMG1000はポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)である。
【0100】
実施例で使用したモノマー(B)は、以下のとおりである。
ダイマー酸:Croda社製、Pripol1013(数平均分子量565)
ダイマージオール:Croda社製、Pripol2033(数平均分子量約560)
ダイマー酸エステル:Croda社製、Priplast3197(数平均分子量約2000、ダイマー酸由来のポリエステルポリオール)
【0101】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のポリエステルは溶剤溶解性、耐熱性、接着強度に優れ、低誘電特性に特に優れているため、高周波領域のFPC用接着剤やベースフィルム等として有用である。