(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】中圧および高圧使用用の真空切替器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/662 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
H01H33/662 J
H01H33/662 E
(21)【出願番号】P 2021549699
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020054814
(87)【国際公開番号】W WO2020173894
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】102019202741.5
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】シャシェラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フロイント,カルステン
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-015151(JP,U)
【文献】特表2004-519836(JP,A)
【文献】特開昭50-157879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60 - 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中圧または高圧用の真空切替器(20)であって、2つの接触子(22、24)を有し、そのうちの少なくとも1つの接触子(22)が駆動ロッド(26)を介して機械的に移動可能に支持されており、該駆動ロッド(26)と電気的に接続されており、両接触子(22、24)が内部に配置された真空空間(28)を有する、真空切替器(20)において、該真空切替器(20)が、前記真空空間(28)の外側に配置された弾性接触部(32)を有し、前記両接触子(22、24)の閉状態において前記駆動ロッド(26)が前記弾性接触部(32)を介して導電線と電気的に接続されていること、及び、前記両接触子(22、24)の開状態(34)において前記弾性接触部(32)が前記駆動ロッド(26)から電気的に絶縁されていること
、及び、
前記駆動ロッド(26)が、切替軸(36)に沿って電気絶縁領域(40)および導電領域(42)を有すること、
を特徴とする真空切替器。
【請求項2】
前記駆動ロッド(26)が、切替軸(36)に沿って変化する断面輪郭部(38-I、38-II、38-III、38-IV)を有することを特徴とする、請求項1に記載の真空切替器。
【請求項3】
前記弾性接触部が、前記両接触子(22、24)の開状態(34)において、前記駆動ロッド(26)の前記電気絶縁領域(40)に当接していることを特徴とする、請求項
1または2に記載の真空切替器。
【請求項4】
前記弾性接触部(32)が、前記両接触子(22、24)の開状態(34)において、前記駆動ロッド(26)に対して非接触に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の真空切替器。
【請求項5】
前記駆動ロッド(26)が切替軸(36)に沿って閉運動(46)するときに、前記駆動ロッド(26)と前記弾性接触部(32)との間に電気的接触が生じるように、前記駆動ロッド(26)の前記断面輪郭
部(38-I~38-III)が増大することを特徴とする、請求項2
、または、請求項2を引用する請求項3または4に記載の真空切替器。
【請求項6】
前記弾性接触部(32)が、電気的な接触時に弾性変形を受けることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の真空切替器。
【請求項7】
前記駆動ロッド(26)の前記断面輪郭
部(38-IV)が、切替軸(36)に沿って前記接触子(22)とは反対側(48)で最大輪郭部(50)の後で、再び先細りすることを特徴とする、請求項
5、または
、請求項2を引用する請求項6に記載の真空切替器。
【請求項8】
前記両接触子(22,24)の閉状態(44)において、前記弾性接触部(32)が弾性変形して、前記駆動ロッド(26)の前記断面輪郭
部(38-IV)の先細り領域(52)に当接していることを特徴とする、請求項
7に記載の真空切替器。
【請求項9】
前記駆動ロッド(26)の変化する
前記断面輪郭
部(38-I、38-II、38-III、38-IV)が回転対称に形成されていることを特徴とする、請求項2
、または、請求項2を引用する請求項3から
8のいずれか1項に記載の真空切替器。
【請求項10】
前記駆動ロッド(26)の導電領域(42)が、電位制御部(56)を介して該駆動ロッド(26)において規定の電位を調整可能であることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか1項に記載の真空切替器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の中圧または高圧使用用の真空切替器(独:Vakuumschaltgeraet、英:vacuum switching device)に関する。
【0002】
中圧および高圧用の切替器では、電路を閉じたり開いたりするために、互いに対向している2つの接触子を含む接触システムが使用され、2つの接触子のうちの1つは通常は固定状態にある接触子(固定接触子)で、もう1つの接触子は可動接触子である。切替器を閉じるために、可動接触子は駆動部により固定接触子に向けて移動される。この切替プロセスは、両接触子が衝突する直前に、いわゆる「メイキング(making)」の直前に、アークが発生するので、任意に低速で進行してはならない。これにより、接触面が溶ける可能性がある。次いで、両接触子は互いに機械的に衝突し、残った運動エネルギは基本的には両接触子の変形および反跳によって消失する。両接触子が衝突する直前に接触子表面でわずかな溶融が生じているので、溶融したこれらの接触子が機械的に閉じられた後、それらは互いに溶着する可能性がある。これらの接触子が再び開かれる際に、これらの接触子はいわゆる分離衝撃(独:Trennschlag、英:separating shock)によって損傷をうける可能性がある。
【0003】
この閉運動は限定されたケースでは弾道運動として記述することができ、この弾道運動では、可動接触子が最初は強い駆動ばねによって強く加速され、次いで基本的には慣性によって相手側に向かって移動される。実際には、このばね駆動は移動中にも接触子にある程度の駆動力F駆動を及ぼす。しかし、この場合、この加速度は運動中に減少し、ゼロに向かい得る。
【0004】
接触システムでの開かれた両接触子間の電気絶縁のためには、基本的に異なる複数のアプローチが存在し、これらはいわゆるパッシェンの法則(独:Paschen-Gesetz、英:Paschen’s law)で説明できる。パッシェンの法則によれば、均一場における降伏電圧はガス圧力と電極間隔の積の関数である。これは、高圧ガスまたは高圧混合ガスを用いて接触子を可能な限り小さい接点間隔で良好に絶縁できること、を意味する。2つ目の可能性は、ガス圧力が非常に低い約10-6bar(abs)の技術的真空である。これらに対応して、これらの切替器は、ガス開閉器(独:Gasschalter、英:gas switch)または真空開閉器(独:Vakuumschalter、英:vacuum switch)と呼ばれる。
【0005】
真空開閉器では、開閉器ハウジングまたは真空管の電気接続部に対する電気絶縁のために、複数の切替接触子を備えた複数の真空管が、それらを取り囲むガス空間内に、設置される。真空管はガス開閉器に比べて、遮断性能が非常に高く、且つ、相対的に接触子の間隔が小さい、という利点がある。さらに、真空封止によって分解・溶融生成物が、遮断操作時に周囲の絶縁に悪影響を与えない。真空管の接触子は、特には可動接触子に、通常、可撓性の電流帯を介して接続される。
【0006】
真空管の1つの欠点は、互いに平行に対向する接触面である。可動接触子があまりにも高速で、或いは、大き過ぎる運動エネルギで、固定接触子に衝突すると、上述のように、真空切替管が損傷する可能性がある。さらに、衝突速度が速すぎると、閉じた後にこれらが溶着する可能性がある。遅すぎる閉動作では、接触面で燃焼が生じる可能性がある。
【0007】
真空絶縁区間のもう1つの欠点は、いわゆる非持続性破壊放電(NSDD(英:non-sustained disruptive discharges)の発生を避けることができないことである。この放電の原因は様々であり、これらの原因は従来の構造様態では避け難い。これは、とりわけ真空中の平均自由行程長さによる。というのは、一方の接触子から他方の接触子への電荷減衰を抑制したり又は電荷を吸収したりするかもしれない分子または粒子が、10-6barの圧力では両接触子間に、殆ど存在しないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、真空管の上記2つの欠点、すなわち、1つはNSDDの発生、もう1つはアークによって引き起こされる可能性のある両接触子の溶着、を防止または低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの課題は、請求項1の特徴を有する中圧または高圧使用用の真空切替器により解決される。
【0010】
本発明による中圧または高圧使用用の真空切替器は、2つの接触子を有し、そのうちの少なくとも1つは、駆動ロッドを介して機械的に移動可能に支持されており、この駆動ロッドと電気的に接続されている。さらに、この真空切替器は1つの真空空間を有し、その中に複数の接触子が配置されている。本発明は、この真空切替器が前記真空空間の外側に配置された1つの弾性接触部を有し、両接触子の閉状態では前記駆動ロッドが弾性接触部を介して電気的に導電線と接続されていること、を特徴とする。さらに、両接触子の開状態では、弾性接触部は、前記駆動ロッドから電気的に絶縁されている。
【0011】
上述の特徴の組み合わせは、一方では、駆動ロッドに当接している弾性接触部により弾性接触部と駆動ロッドとの間に狙った摩擦を生じさせることができ、その結果駆動ロッドが移動するときに適切な抵抗が発生し、両接触子が衝突するときにそれらの衝突反跳を最小化することができる、という効果を有する。他方、両接触子が開状態にある場合、電流路が2重に遮断される。1つは両接触子の間、もう1つは弾性接触部と駆動ロッドの間である。これは、開状態では弾性接触部と駆動ロッドは互いに電気的に絶縁されているからである。このようにして、いわゆる非持続性破壊放電という問題を統計的にはほぼゼロまで減少させることができる。
【0012】
両接触子を閉じる動作において、弾性接触部と駆動ロッドとの間の狙った機械的抵抗を制御及び調節するために、駆動ロッドが切替軸に沿って変化する断面輪郭を有すること、が合目的である。従って、例えば、駆動ロッドの断面積が移動方向に沿って大きくなると、この弾性接触部は圧縮されるので、駆動ロッドの並進運動に対する抵抗は増加する。
【0013】
さらに、駆動ロッドが、切替軸に沿って、電気絶縁領域および導電領域を有すると合目的である。両接触子の開状態では、弾性接触部は、駆動ロッドの電気絶縁領域に当接しており、閉状態では導電領域に当接している。このように、閉プロセスに際して、この弾性接触部は駆動ロッドに沿って単純な摺動運動で移動することができる。
【0014】
本発明の代替の一実施形態では、両接触子の開状態では、この弾性接触部は、駆動ロッドに対して非接触に配置されている。このことは、このばね接点が真空空間の外側に配置されているので、弾性接触部と駆動ロッドとの間に絶縁ガスの形態での絶縁部が存在することを意味する。
【0015】
本発明の別の一実施形態では、駆動ロッドの断面輪郭が以下のように増大すること、すなわち、駆動ロッドが切替軸に沿って閉運動する際に、駆動ロッドと弾性接触部との間に電気的接触が生じるように、駆動ロッドの断面輪郭が増大することが合目的である。断面輪郭のこの増大は、駆動ロッドの1つの増大する領域で行われ、これは、弾性接触部を圧縮し、その結果、その摩擦により閉動作の減速を行うのに、役立つ。これは、特に、両接触子が衝突する直前に、この増大領域が弾性接触部と干渉するように、構成されている。この場合、電気的な接触時にこの弾性接触部が弾性変形を受けることも合目的である。というのは、この弾性変形により駆動ロッドの動きに可逆的な摩擦エネルギを導入することができ、そのことが制動運動にプラスの影響を及ぼすからである。
【0016】
さらに、駆動ロッドの断面或いは断面輪郭が、切替軸に沿って、接触子に離背する側において、最大の増大部の後で再び先細りすることが合目的である。これは以下のように作用する、すなわち、最大増大と最大制動の後で、弾性接触部が駆動ロッドを持続的に押圧し、その結果、閉じられた両接触子に押圧力が働く状態で、この弾性接触部が駆動ロッドに当接するように、作用する。これは、特に、弾性接触部が、駆動ロッドの断面或いは断面輪郭の先細り領域に、弾性変形した状態で接触しているとき、に生じる。
【0017】
駆動ロッドの変化する断面輪郭は、好ましくは、回転対称に形成されているが、駆動ロッドの弾性接触部との干渉を導く非対称的な他の断面変化とすることも可能である。
【0018】
本発明の別の実施形態では、駆動ロッドの導電領域が、電位制御器を介して駆動ロッドにおいて規定された電位に調整可能であることが合目的である。
【0019】
本発明のさらなる実施形態およびさらなる特徴を、以下の図面を参照して、より詳細に説明する。これらは概略的で、純粋に例示的な例であり、保護の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】両接触子が開かれた状態の真空遮断管、および、駆動ロッドと弾性接触部間の電気的なガス絶縁部を示す。
【
図2】両接触子が半分閉じられた状態で、かつ、弾性接触部が当接している、
図1に従う真空遮断管を示す。
【
図3】両接触子が閉じられた状態の
図1、
図2に従う真空遮断管を示す。
【
図4】隣接するそれぞれの断面を有する駆動ロッドの変化する断面輪郭の断面図を示す。
【
図5】
図1と同様な図を示しており、図1のような開かれた状態で導電性の駆動ロッドと弾性接触部との間に固体絶縁を有している。
【
図6】
図2と同様な図を示しており、図2のような半分閉じられた状態で導電性の駆動ロッドと弾性接触部との間に固体絶縁を有している。
【
図7】
図3と同様な図を示しており、図3のような閉じられた状態で導電性の駆動ロッドと弾性接触部との間に固体絶縁を有している。
【
図8】弾性接触部、および、駆動ロッドの断面輪郭の変化、の代替図の概略図を示す。
【
図9】従来技術による駆動ロッドの対応的な接触部を有する、従来技術による真空遮断管を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、1つの真空空間28を有する真空切替器20が示されており、この真空空間内には2つの接触子、すなわち、可動接触子22および固定接触子24が配置されている。可動接触子22は駆動ロッド26と接続されており、この駆動ロッド26を介して接触子22は電気的にも接触されている。また、可動接触子22の駆動ロッド26も、ここには不図示の駆動装置との機械的な作用係合の状態にある。この真空切替器20は、さらに、ハウジング60を有し、このハウジング60には複数の蒸気シールド62が配置されている。さらに、真空空間28は複数の絶縁部64を有し、これらは通常は回転対称のセラミック部品の形態で作られている。さらに、真空ベローズ66が、真空空間28の外側に存在するガス空間30に対して駆動ロッド26を密封する役割を果たす。ガス空間30は内部に特定の絶縁ガスが存在する密閉空間とすることもでき、この絶縁ガスは、例えば、純粋な空気であるか、または、フルオロケトンもしくはフルオロニトリルのような追加的に誘電的に作用する絶縁ガスであってもよい。しかしながら、基本的には、真空切替器20の真空空間28は開放された環境にあることも可能であり、従って、真空切替器が存在する外部雰囲気はガス空間30として見なすことができる。
【0022】
この限りにおいては、
図1による上述の真空切替器20は、例として
図9に示されている従来技術による真空切替器に類似して構成されている。
図9による真空切替器は導体バンド70を有しており、この導体バンド70は駆動ロッド26と直接に接続され、従ってこの駆動ロッドと持続的に電気的に接触している。
【0023】
図9および従来技術による実施形態とは異なり、
図1に概略的に示す弾性接触部32が電気的な接触の役割を担い、この弾性接触部32は他方で別の電導体、例えば上述した、従来技術で公知の導体バンド70、と電気的に接続されている。
図1には、接触子22および24の開状態34が示されており、この状態では、真空空間28の外側でガス空間3
0に位置する弾性接触部32が、駆動ロッド26から離間して配置されている。弾性接触部32と駆動ロッド26との間隔は、この状態34において電気接触が生じないような、大きさである。弾性接触部32と駆動ロッド26との間には、絶縁ガス、例えば、合成空気、が存在している。
【0024】
弾性接触部の接触子22および24とは反対側では、駆動ロッド26の断面輪郭38が変化している。
図2に示すように、矢印F
aに沿った移動が生じると、弾性接触部32は駆動ロッド26、すなわち、その増大している断面輪郭部38-Iと機械的に干渉する。これにより弾性接触部32は弾性変形し、これがばね力F
sで表されている。更に、これによって、別の力F
bが生じ、この力F
bは、制動力と呼ばれ得て、切替軸36に沿った閉運動46に抵抗する。
【0025】
上述の干渉により生じる制動力Fbは、可動接触子22の固定接触子24への強過ぎる衝突を防止し、このことは従来技術から知られている2つの接触子22および24の望ましくない反跳を大幅に減少させる。
【0026】
さらに、
図3には接触子22および24の閉状態44が示されており、断面輪郭38は最大の増大部50(
図4)の領域の後方で再び先細りになり、その結果、接触子22および24を備えたこの接触システムが押し閉じられるように、弾性接触部32が駆動ロッド26に当接し、これによりまたしても閉状態での反跳が防止される。これは、押圧力F
bが、接触子22および24が再び開くのを妨げるからである。
【0027】
図4は駆動ロッド26およびその断面輪郭部38I~IVの拡大概略図であり、
図1から
図3までの個々の状態をより詳細に説明するものである。ここで、分かり易くするために
図4には示されていない弾性接触部は、
図1に示されているような接触子22および24の開状態34で、、ほぼ断面輪郭部38-Iの高さにある。この場合、弾性接触部32と駆動ロッド26との間も電気的な絶縁部が存在する。次に、駆動ロッド26は、
図4による図示においては切替軸36に沿って、上方へ移動し、その結果、断面輪郭部38-IIにおいて弾性接触部32は駆動ロッド26と接触する。このとき、駆動ロッド26は矢印46の方向での閉運動を実行する。この段階で、輪郭部38-IIにおける弾性接触部32の弾性変形および押圧に基づいて、駆動ロッド26は制動を受ける。領域38-IIには、閉運動46に沿って、駆動ロッド26の最大の断面輪郭部である領域38-IIIが続く。ここには最大の増大部50の領域が存在している。弾性接触部32は、閉運動46が続くにつれて、領域50を越えて摺動し、先細りしてゆく断面構造を有する領域52に入る。この領域52には参照符号38-IVが付されている。この領域52では、弾性接触部32は引続き弾性変形されたまま駆動ロッド26に当接し、接触子22および24に対して閉鎖力を与える。
【0028】
図1から
図4で説明した真空切替器20は、従来技術に比べて以下のような利点を有する。一つには、電流経路が2重に、すなわち、接触子22と24との間、および、駆動ロッド26と弾性接触部32との間、で遮断される。これにより、統計的に見れば、NSDDをほぼ排除することができる。他方、駆動ロッドの特殊な構造と上記の形態での弾性接触部32との干渉とにより、衝突時の接触子22と24の反跳が、、接触子22および24の接触面58での溶着および損傷を大幅に低減することができるように、大幅に低減される
【0029】
図5、
図6および
図7において、
図1から3で既に詳細に説明したのと類似した接触子22および24の相互の動きが説明される。
図5~
図7の
図1~
図3と差異は、接触子22および24の開状態34における弾性接触部32と駆動ロッド26との間の電気絶縁が、固体絶縁によって、例えばポリテトラフルオロエチレンによって、行われることである。従って、駆動ロッド26での電気的に絶縁された領域40は、例えばこの固体絶縁材料から作製されたスリーブによって、取り囲まれており、弾性接触部32はそこに絶縁状態で当接する。駆動ロッド26の移動の際、弾性接触部は、
図2と同様に、電気的に絶縁された領域40から導電性の領域42へと移動する。こうして、駆動ロッド26は電流路と接触する。
【0030】
図5から
図7には、
図1から
図3の場合と同様の断面変化38-Iから38-IVが示されている。このことは、基本的には、接触子2
4へ衝突する前の、駆動ロッド26および接触子2
2の制動効果を獲得するために、必ずしも必要ではない。この目的のために、他の手段、例えば、弾性接触部32が駆動ロッド26に押し付けられる力Fsを増大させることも利用できるだろう。
【0031】
さらなる代替的な実施形態が、
図8に非常に概略的に示されている。
図8には、ここでは全体としては示されていない真空切替器20の、接触子22および24、ならびに、駆動ロッド26および弾性接触部32のみが、示されている。矢印46の方向での閉運動が生じる際、板ばねの形状で構成された弾性接触部32が、駆動ロッド26に取り付けられたディスクに対して押し付けられ、その際、この構成も断面輪郭部38-Iから38-IVの変化を有する。先細りしている領域52および増大している領域54は、切替軸に沿って非常に短く構成されていてもよく、ゼロまで減少されていてもよい。重要なことは、駆動ロッド26および接触子22の狙った制動が行われ得るように、弾性接触部32が構成されていることである。
【0032】
基本的に、接触子の開状態34では電力系統から生じる規定された電位が駆動ロッドに印加される見込みであることにも、留意されたい。また、
図1から
図9に記載されている接触子の構造は、純粋に例示的なものであり、基本的には、カップ状接触子またはピン-チューリップ型接触子(独:Stift-Tulpen-Kontakt、英:pin-tulip contact)も、上述の技術を実施するために使用され得ることに留意されたい。