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特許7326481サイクリックボルタンメトリー測定を用いて燃料電池を検査するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】サイクリックボルタンメトリー測定を用いて燃料電池を検査するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230807BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20230807BHJP
   H01M 8/04492 20160101ALI20230807BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230807BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20230807BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20230807BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230807BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04664
H01M8/04492
H01M8/04537
H01M8/0444
H01M8/02
H01M8/10 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021569996
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2020060844
(87)【国際公開番号】W WO2020239323
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】19177645.9
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ブラウネッカー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ライナー,アンドレアス
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0157693(US,A1)
【文献】特開2008-166189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0247818(US,A1)
【文献】再公表特許第2010/128555(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/04664
H01M 8/04492
H01M 8/04537
H01M 8/0444
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクリックボルタンメトリー測定を用いて燃料電池(5)を検査する方法であって、
前記燃料電池(5)内のガス組成がサイクリックボルタンメトリー測定を用いて決定され、前記燃料電池(5)が第1の反応物のための第1のガス室(6)および第2の反応物のための第2のガス室(7)を有しており、前記サイクリックボルタンメトリー測定の間、これら両方のガス室の内の少なくとも1つに、反応物が供給されない方法において、
前記サイクリックボルタンメトリー測定に基づき前記ガス室(6、7)内の水素濃度が決定される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サイクリックボルタンメトリー測定の少なくとも1つの測定値および/またはこれから導出された少なくとも1つの値について、閾値に関連する基準が満たされると、情報が生成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃料電池のサイクリックボルタンメトリー測定のための掃引速度が、0.7mV/s未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃料電池(5)内の電解質(10)の水分量が決定され、前記サイクリックボルタンメトリー測定のパラメータ、最小電位および/または最大電位が、前記決定された水分量に応じて設定されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記燃料電池(5)でのサイクリックボルタンメトリー測定の複数の測定値(Z)を生成するステップと、
前記測定値および/または前記測定値から導出された値を、評価装置(36)に送信するステップであって、前記評価装置(36)が、前記燃料電池(5)から空間的に離れており、前記送信された値に基づき前記燃料電池(5)内のガス組成を決定する、ステップと、
を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
保管中のまたは非運転中の燃料電池(5)の状態を監視するための、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項7】
燃料電池(5)の運転停止プロセスを監視および/または制御するための、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項8】
第1の反応物のための第1のガス室(6)および第2の反応物のための第2のガス室(7)を有する燃料電池(5)を検査するためのシステム(30)であって、
前記燃料電池(5)でのサイクリックボルタンメトリー測定用の測定装置(32)を含み、
さらに、前記燃料電池(5)内のガス組成を前記サイクリックボルタンメトリー測定に基づき決定するように構成された評価装置(36)を含み、かつ、前記サイクリックボルタンメトリー測定の間、前記ガス室(6、7)の内の少なくとも1つに、反応物が供給されないときに、前記評価装置(36)が、前記サイクリックボルタンメトリー測定に基づき前記ガス室(6、7)内の水素濃度を決定するように形成されていることを特徴とするシステム(30)。
【請求項9】
前記評価装置(36)が、前記サイクリックボルタンメトリー測定の少なくとも1つの測定値(Z)および/または前記測定値から導出された少なくとも1つの値について、閾値に関する基準が満たされると、情報が生成されるように形成されていることを特徴とする、請求項8に記載のシステム(30)。
【請求項10】
前記燃料電池(5)内の電解質(10)の水分量を決定するための装置(35)を備え、
前記測定装置(32)が、前記決定された水分量、最小電位および/または最大電位を設定することを特徴とする請求項8または9に記載のシステム(30)。
【請求項11】
少なくとも1つの燃料電池(5)と、前記燃料電池(5)を検査するための、請求項8から10の少なくとも1項に記載のシステムと、を備えた燃料電池装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ請求項1および11に記載の、サイクリックボルタンメトリー測定を用いて燃料電池を検査するための方法およびシステムに関する。
【0002】
燃料電池では、電極における水素(H)および酸素(O)の電気化学的結合により水(HO)を生成することにより高効率で電気を発生する。燃料電池には、運転中に運転ガス、すなわち、水素含有燃料ガスおよび酸素含有酸化ガスが供給される。この水素および酸素は「反応物」とも呼ばれる。
【0003】
1つの燃料電池は通常、1つのイオン透過性電解質、ならびに、両側にそれぞれ1つの触媒層および1つの電極を備える。高分子電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)の場合、電解質はプロトン透過性の膜である。この膜は触媒層および電極と共に、膜-電極ユニットを形成する。その両側に、燃料ガスおよび酸化ガスのためのガス室が接続されている。燃料ガスが流れるガス室に接した電極は通常は「アノード」と呼ばれ、そのガス室は「アノード側ガス室」と呼ばれる。酸化ガスが流れるガス室に接した電極は通常はカソードと呼ばれ、そのガス室は「カソード側ガス室」と呼ばれる。
【0004】
通常の、作動運転中の(すなわち、作動ガスがガス室に供給され、その作動ガスがガス室を通って流れる運転中の)複数の燃料電池を検査するための多種多様な方法は既に知られており、それらの方法においては、例えば、燃料ガスの供給状態および電解質の水分量を決定するために燃料電池のインピーダンスが測定される(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、サイクリックボルタンメトリー測定によって複数の燃料電池を検査することも知られている。以下において、サイクリックボルタンメトリー測定とは、規定された電圧または電位プロファイル(例えば、好ましくは一定の掃引速度または電位上昇速度を有する略三角波状の電圧または電位プロファイル)が燃料電池の電極に印加され、結果として生じる電流プロファイルが測定される測定法であると理解される。サイクリックボルタンメトリー測定は、サイクリックボルタンメトリー、周期的ボルタンペロメトリー、または、三角波電圧法と呼ばれることもある。
【0006】
特許文献2から或る診断装置が知られており、ここでは、システムが停止している状態の燃料電池が、それらの老化状態を決定するために、サイクリックボルタンメトリーによって試験される。公知の複数の診断装置では、カソードを測定するために、カソードガス室を通って窒素が流され、アノードガス室を通って水素が流される。アノードを測定するためには、これらのガスが交換される。
【0007】
燃料電池には、複数のガス室に燃料ガスおよび酸化ガスが流される通常の運転状態の他に、複数のガス室にガスが供給されず、従って、これらのガス室をガスが流れない運転状態もある。
【0008】
これは、例えば、保管状態、または、(一時的な)停止状態もしくは遮断状態である。この状態では、燃料ガスおよび酸化ガスは供給されず、電気も流れない。ガス室の入口側はガス引き込み装置またはガス供給装置から(例えば、遮断弁によって)分離されているか、または、これに全く接続されていない。
【0009】
燃料電池およびその構成部品における腐食および酸化を防止するために、ガス室はしばしば、漏れおよび気密不足により侵入する酸素に常に化学量論的に過剰の水素によって対抗すべく、水素で充填される。このいわゆる「水素過剰」は、例えば、試験運転中の燃料電池の遮断時に、燃料電池の製造業者によって行われる(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
この状態の燃料電池の電気負荷接続部は通常は燃料電池のカソードとアノードとの間の電位差を防止するために短絡されている。
【0011】
例えば、燃料電池はそれらの製造およびその後の試験の直後には使用されないことが多く、燃料電池の製造業者および/または顧客において、一時的に保管されなければならない。このことは、特に、燃料電池の故障時および交換が必要な場合に、燃料電池プラントの高い利用可能性を保証するために、利用可能に保たれる予備燃料電池または交換用燃料電池に当てはまる。したがって、これらの燃料電池は反応物の供給装置にも接続されていない。
【0012】
燃料電池を保管する際には、ガス室内が常に水素過剰状態であることが保証されなければならない。さらに、電解質(PEM燃料電池の場合には電解質膜)が乾燥しないことが保証されなければならない。
【0013】
特許文献4から、少なくとも第1および第2の周波数で燃料電池のインピーダンスを求めることによって、保管中にガス室に水素が供給されている燃料電池の保管状態を監視することが知られており、この場合、第1の周波数は第2の周波数よりも大きく、第1の周波数で検出されたインピーダンスから電解質の水分含有量が監視され、両方の周波数で検出されたインピーダンスからガス室内の水素濃度が監視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許出願公開第1898483A1号明細書
【文献】独国特許出願公開第102007002426A1号明細書
【文献】欧州特許第0914685B1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3151321A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このことに基づいて、本発明の課題は、燃料電池の検査のために、特に燃料電池の保管状態の検査または監視のために、従来よりもさらに効果的にサイクリックボルタンメトリー測定を使用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、請求項1に記載の方法および請求項11に記載のシステムによって解決される。本発明による方法の使用は請求項9および10の主題である。本発明による燃料電池装置は請求項15の主題である。評価システムおよび測定システムは、それぞれ請求項16および17の主題である。有利な実施形態はそれぞれ従属請求項の主題である。
【0017】
本発明は、サイクリックボルタンメトリー測定を用いて、燃料電池内の、つまり、その複数のガス室(すなわち、そのアノード側ガス室およびカソード側ガス室の両方)内のガス組成、特に過剰水素を決定することも、その結果、異なるガス組成を区別することも可能であるという驚くべき知見に基づいている。本発明者らによって認識され、実験的に証明されたことによれば、例えば、過剰水素を有するガス雰囲気と過剰酸素を有するガス雰囲気とを区別することが可能である。したがって、本発明は、例えば遠隔コンピュータネットワーク(クラウド)によって、特に遠隔からも、保管中のまたは非運転状態の燃料電池の状態を監視するために特に有利に使用することができる。しかしながら、本発明は、燃料電池の運転停止プロセスを監視および/または制御するために、特に、例えば過剰水素のような燃料電池内の所望のガス雰囲気を設定するために、非常に有利に使用することもできる。このことは、燃料電池内に侵入することなく、単に一つの測定装置のみを用いて行うことができる。必要なのは、燃料電池の負荷接続部にアクセスすることだけである。
【0018】
したがって、本発明による方法においては、サイクリックボルタンメトリー測定を用いて燃料電池内のガス組成、特に過剰水素が決定される。
【0019】
本方法の有利な実施形態によれば、燃料電池は第1の反応物のための第1のガス室と、第2の反応物のための第2のガス室とを有し、サイクリックボルタンメトリー測定中には、2つのガス室のうちの少なくとも1つ、特には両方のガス室に反応物が供給されない。例えば、保管中のまたは非運転状態の燃料電池の場合、反応物は両方のガス室に供給されない。燃料電池を運転停止する場合に、一定期間中、両方のガス室の一方のみに反応物を供給しないことも可能である。反応物が供給されない1つまたは両方のガス室は、例えば、それに接続されたガス供給部またはガス供給装置から(例えば、遮断弁によって)分離されるか、または、それに全く接続されない。
【0020】
その後に確認されたように、サイクリックボルタンメトリー測定を用いて、ガス室内の水素濃度を決定し、その結果、ガス室内の異なる水素濃度を区別することすら可能である。
【0021】
別の有利な実施形態によれば、サイクリックボルタンメトリー測定の少なくとも1つの測定値についておよび/またはそれから導出された少なくとも1つの値について、閾値に関する基準(例えば、到達する、上まわる、下まわる)が満たされると、情報、特に光信号が生成される。特に、これは、ガス室内の最小許容水素濃度を表す閾値とすることができる。
【0022】
サイクリックボルタンメトリー測定の1サイクル内で測定された最大電流値および最小電流値、および/または、それらから導出されたこれら2つの電流値間の絶対距離は、特に容易に監視することができる。既に判っているように、この距離から水素量または水素濃度を決定することができる。したがって、水素濃度を監視するために、これら2つの電流値の間の最小許容絶対距離についての閾値は特に簡単に定義される。
【0023】
サイクリックボルタンメトリー測定のための掃引速度(電位上昇率とも呼ばれる)が0.7mV/s未満であると、特に高い測定精度を達成することができることが明らかになった。掃引速度が0.15mV/s~0.5mV/sの間、特に0.33mV/sであれば、測定精度と測定時間との間の最適値を得ることができる。1つの燃料電池スタックの複数の燃料電池を検査する場合、サイクリックボルタンメトリー測定のための掃引速度は、好ましくは、燃料電池の数に線形に比例する。この掃引速度は好ましくは0.7×ZmV/s未満であり、ここでZは燃料電池の数である。掃引速度が0.15×ZmV/s~0.5×ZmV/s、特に0.33×ZmV/sであれば、測定精度と測定時間との間の最適値を得ることができる。
【0024】
さらに、サイクリックボルタンメトリー測定の高い測定精度のために、サイクリックボルタンメトリー測定のパラメータの選択に際して電解質の水分量を考慮すると有利であることが確認された。これは、燃料電池のインピーダンスが、電解質の水分量が減少するにつれて増加するという知見に基づいている。これを補正するために、有利な一実施形態によれば、燃料電池内の電解質の水分量は、好ましくはインピーダンス分光法を用いて決定され、サイクリックボルタンメトリー測定のパラメータ(特に、掃引速度、最小電位および/または最大電位)は、この決定された水分量に基づいて設定される。例えば、水分量が減少し、したがってインピーダンスが増大するにつれて、掃引速度、および/または、最小電位および最大電位を増大させることができる。
【0025】
本発明はまた、燃料電池を検査するための以下のステップを有する方法を含む。
燃料電池でのサイクリックボルタンメトリー測定の複数の測定値および/またはそれらから導出された値を受信するステップ、
上記の受信した値に基づいて、燃料電池内のガス組成、特に過剰水素を決定するステップ。
【0026】
さらに、本発明は燃料電池を検査するための以下のステップを有する方法を含む。
燃料電池でのサイクリックボルタンメトリー測定の複数の測定値を生成するステップ、
上記の測定値および/またはこれらの測定値から導出された値を、送信された値に基づき該燃料電池内のガス組成、特に過剰水素を決定するための、該燃料電池から空間的に離れた、好ましくはクラウドベースの、評価装置に送信するステップ。
【0027】
燃料電池を検査するための本発明によるシステムは、燃料電池でのサイクリックボルタンメトリー測定のための測定装置、および、サイクリックボルタンメトリー測定に基づいて燃料電池内のガス組成、特に過剰水素を決定するために形成された評価装置を備える。
【0028】
この評価装置は、燃料電池内の水素濃度を決定するために形成することもできる。
【0029】
この評価装置は、サイクリックボルタンメトリー測定の少なくとも1つの測定値および/またはそれから導出される少なくとも1つの値に対して、閾値に関する基準、特にガス室内の最小許容水素濃度を表す閾値が満たされた場合に、情報、特に光信号を生成するように構成されることが好ましい。この目的のために、例えば、1サイクル内で測定される最小電流値と最大電流値との間の最小許容絶対距離に対する閾値を、この評価装置内に記憶することができる。
【0030】
有利な一実施形態によれば、サイクリックボルタンメトリー測定のための掃引速度は2mV/s未満、好ましくは1mV/sである。
【0031】
本発明によるシステムは好適に、好ましくはインピーダンス分光法によって燃料電池内の電解質の水分量を決定するための装置を含み、この場合、この測定装置は、決定された水分量に基づいてサイクリックボルタンメトリー測定のパラメータ(特に、掃引速度、最小電位および/または最大電位)を設定するように構成されている。
【0032】
本発明による燃料電池装置は、少なくとも1つの燃料電池と、その燃料電池を検査するための上述のシステムとを備えている。
【0033】
この燃料電池は、有利には、第1の反応物のための第1のガス室と、第2の反応物のための第2のガス室とを有し、これらのガス室の内の少なくとも1つ、好ましくは両方のガス室は、サイクリックボルタンメトリー測定のために入口側で閉鎖可能となっている。
【0034】
燃料電池を検査するための本発明による評価システムは、燃料電池でのサイクリックボルタンメトリー測定からの複数の測定値および/またはそれらから導出された複数の値を受信するように構成された受信装置、および、この受信された値に基づいて燃料電池内のガス組成、特に過剰水素を決定するように形成された評価装置を備えている。
【0035】
燃料電池を検査するための本発明による測定システムは、燃料電池でのサイクリックボルタンミメトリー測定のための測定装置、および、サイクリックボルタンミメトリー測定の複数の測定値および/またはそれらから導出された複数の値を、測定装置から空間的に離れた、好ましくはクラウドベースの、評価装置に送信するように設計された送信装置を備えており、この評価装置が送信された値に基づいて燃料電池内のガス組成、特に過剰水素を決定する。
【0036】
本発明による方法およびその有利な形態について挙げられた効果および利点は、本発明によるシステムおよびその有利な形態に対応して適用される。
【0037】
本発明および従属請求項の特徴による本発明のさらなる有利な形態を、図面の実施例に基づいて以下でより詳細に説明する。対応する部分には同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】燃料電池スタックを有し、従来技術から知られている燃料電池モジュールの概略図
図2】PEM燃料電池の原理的な構成
図3】燃料電池または燃料電池スタックの保管状態を監視するための本発明によるシステムの原理的な構成
図4図3による監視システムの外観図の一例
図5図3による監視システムの図1の燃料電池モジュールへの取り付け例
図6】過剰酸素と過剰水素を含む、燃料電池内のガス雰囲気のボルタモグラム
図7】燃料電池内における窒素中の異なる水素濃度ないし水素含有量を示すボルタモグラム
図8】測定された電荷量と、サイクリックボルタンメトリー測定の掃引速度との関係のグラフ表示
図9】異なった水素濃度に対するサイクリックボルタンメトリー測定における経時的な電流プロファイル
図10】計算された水素量と設定された水素濃度のグラフ比較
図11】クラウドベースの評価装置を備えた監視システム
図12】複数の燃料電池モジュールを監視する図11の監視システム
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、燃料電池スタック3および操作部4を備えた燃料電池モジュール1の簡略化された図であり、このモジュールはハウジング2によって取り囲まれている。
【0040】
次に、燃料電池スタック3は、互いに積層され電気的に直列に接続された複数の個々の燃料電池5、ここではPEM燃料電池、で構成されている。
【0041】
各燃料電池は、図2の断面図に簡略化して示すように、膜10、ならびに、その両側にそれぞれ触媒層11および電極12またはガス拡散層を有する。これに、次の燃料電池5への電気的接続を行うバイポーラプレート13が接続されており、その内部にガス分配ストラクチャー14が導入されており、これにより反応物である水素および酸素のためのガス室6、7が形成されている。水素のためのガス室6に接する電極12はアノードとも呼ばれ、酸素のためのガス室7に接する電極12はカソードとも呼ばれる。燃料電池、シール等に反応物を供給したり、燃料電池から反応物を排出したりするためのチャネルは、図を簡略化するために示されていない。
【0042】
操作部4は、燃料電池モジュール1の接続部、センサ、バルブ、水分離器等を含む。
【0043】
燃料電池モジュール1の操作部側の端部には、水素供給または排出のための接続部16、17と、酸素供給または排出のための接続部18、19とが設けられている(図1参照)。
【0044】
また、燃料電池モジュール1の操作部側の端部には、電気負荷接続部20、21が外向きに導かれており、これに、燃料電池モジュール1の電流が供給される電気負荷(図示せず)を接続することができる。
【0045】
さらに、燃料電池モジュール1の操作部側の端部には、複数の燃料電池5のガス室6、7内の圧力を測定する圧力センサからの信号を取り出すための接続部、および/または、燃料電池スタック3の温度を測定する温度センサからの信号を取り出すための接続部を設けることもできる。
【0046】
この燃料電池モジュール1は、燃料電池モジュール用の倉庫に保管された非運転状態の
モジュールである。したがって、接続部16、17、18、19は、水素および酸素のための対応する供給および排出システムから分離されている。例えば、これらの接続部は、ねじ止めされたカバーで気密に封止されている。さらに、負荷接続部20、21は負荷と接続されていない。ガス室6、7には、腐食および酸化を回避するために水素が満たされている。
【0047】
図3は、燃料電池モジュール1を検査するための、特に燃料電池モジュール1の保管状態を監視するための、本発明によるシステム30の原理図を示す。
【0048】
このシステム30はハウジング31で取り囲まれており、燃料電池モジュール1の燃料電池スタック3でのサイクリックボルタンメトリー測定のための測定装置32を備えている。この目的のために測定装置32は、接点33、34を介して燃料電池スタック3の電気負荷接続部20、21に電気的に接続可能である。測定装置32は接点33、34または電気負荷接続部20、21に対して測定電圧を発生し、それによって発生した燃料電池スタック3を通る電流を測定する。この目的のために、測定装置32は、サイクリックボルタンメトリー測定電圧(すなわち、定義された電位範囲を周期的に掃引する)を発生するための単に輪郭だけが示された電圧源71と、測定装置32および接点34を介して接点33から流れる電流を測定するための装置72とを備えている。
【0049】
システム30はさらに、サイクリックボルタンメトリー測定に基づいて燃料電池スタック3内のガス組成、特に過剰水素を決定するために形成された評価装置36を含む。
【0050】
さらに、システム30は、インピーダンス分光法によって燃料電池の電解質の水分量を測定するための装置35を備えている。このような装置は、例えば特許文献4に記載されている。
【0051】
サイクリックボルタンメトリー測定の測定値Zは評価装置36に伝達され、水分量測定の測定値Fは評価装置36と測定装置32の両方に伝達される。測定装置32は、水分量測定の測定値Fに基づいてサイクリックボルタンメトリー測定における電圧の掃引速度を設定するように形成されている。
【0052】
スイッチ38を有する電気分岐回路37を介して短絡器39が作動され、これにより、接点33、34を、その結果、負荷接続部20、21を電気的に短絡することができ、または、短絡から解除することができる。電気分岐回路37と電流測定装置35との間に接続されたスイッチ49を介して、測定装置32の測定電圧または測定装置35の測定電流を、接点33、34または負荷接続部20、21に印加することができ、または、それらから解除することができる。
【0053】
制御装置40は個々の構成要素32、35、36、38、49を制御し、特に、エネルギ蓄積器41(例えば、バッテリー)から電気エネルギを供給する。このエネルギ蓄積器41によりシステム30に対して一定期間、例えば1年間、電源系統に依存しない自給の電力供給が可能である。
【0054】
制御装置40は、測定が行われていないときに接点33、34ないし負荷接続部20、21が短絡されるように、短絡器39を制御する。エネルギを節約するために、制御は好適に、電圧励起がないときには負荷接続部20、21が制御装置40により短絡され、電圧励起があるときには制御装置40により短絡されないように、行われる。
【0055】
制御装置40は、不連続的に、好ましくは周期的な時間間隔で、最初に装置35による水分量測定を、次に測定装置32によるサイクリックボルタンメトリー測定を、次々に起こさせる。この場合、測定装置32は、その前に得られた水分量測定の測定値Fに基づいて、サイクリックボルタンメトリー測定における電圧の掃引速度を設定する。
【0056】
制御装置40は、このような測定の間、スイッチ38を開き、スイッチ49を閉じる。測定終了後、制御装置40は再びスイッチ38を閉じ、スイッチ49を開く。
【0057】
システム30はオプションとして、上位の監視装置との無線通信のために評価装置36と結合された送信装置42、および、上位の監視装置との有線通信のための送信装置43を備える。
【0058】
また、システム30のハウジング31は、システム30を燃料電池モジュール1の操作部側の端部に着脱可能に機械的に固定するための、特に着脱可能にねじ止めまたは差し込むための、および、接続接点33、34を燃料電池モジュール1の電気負荷接続部20、21と電気的に接触させるための、複数のインターフェースを有する。さらに、燃料電池5のガス室6、7内の圧力を測定する圧力センサの接続のための、および/または、燃料電池スタック3の温度を測定する温度センサの接続のための、複数のインターフェースを設けることもできる。逆に、燃料電池モジュール1もシステム30を収容するための1つのインターフェースを有する。これらのインターフェースのために、例えば、プラグ接続またはねじ接続の形態の、無数の実施形態が存在する。例えば、図4によれば、ハウジング31は、モジュール1の端板45(図1参照)に孔あけ加工された複数のねじ孔44に複数のねじ48でねじ込むことができる。図5は、燃料電池モジュール1に取り付けられたシステム30の一例を示す。
【0059】
次に、システム30によって実施される検査および監視方法における本発明およびその適用について、図6から10を用いて例として説明する。一例として、3つの燃料電池5からなる燃料電池スタック3を想定する。以下に記載する測定の開始前に、燃料電池5を遮断した、すなわち、電流の取り出しおよび反応物の供給を停止した。ガス室を湿りガスで5分間フラッシュした。次いで、供給側および排出側で直列に接続された複数の燃料電池のガス室を、入口側、すなわち流れ方向において最初に配置された燃料電池の入口側で、および、出口側、すなわち流れ方向において最後に配置された燃料電池の出口側で遮断した。すなわち、測定中に反応ガスは供給または排出されなかった。サイクリックボルタンメトリー測定は、燃料電池スタックの外側極板を介して負荷接続部を用いて行われる。
【0060】
数時間後、複数の燃料電池5の両方のガス室6、7の間で温度、濃度および圧力は平衡状態となる。複数の燃料電池3の全てのガス室6、7に過剰水素が存在する場合には、全ての酸素が消費されるまで反応が進むので、ガス室6、7内にはもはや酸素は存在しない。過剰酸素の場合も同様である。
【0061】
サイクリックボルタンメトリー測定は以下の設定で行われた。
サイクル数: 2
開始電位と終了電位: 0V
保留時間: 1s
最小および最大電位: -10mV~+10mV
掃引速度: 3×0.33mV/s≒1mV/s
温度: 約25℃
【0062】
図6は、サイクリックボルタンメトリー測定について設定電位Uに対する測定電流Iを示す。22は燃料電池3の全てのガス室6、7内に過剰酸素を有する雰囲気についてのボルタモグラムの形態の測定曲線を示し、23は燃料電池3の全てのガス室6、7内に過剰水素を有する場合のボルタモグラムを示す。図6から分かるように、過剰酸素および過剰水素のボルタモグラムは非常に異なって見える。こうして、サイクリックボルタンメトリー測定の助けを借りて、燃料電池中のガス組成を決定することができ、または、異なるガス組成(ここでは、過剰水素と過剰酸素)を区別することができる。1つの燃料電池の両方のガス室が主に窒素で満たされている場合には、過剰酸素に対するボルタモグラム22と同様のボルタモグラムが生じる。しかしながら、運転停止後に実質的に窒素のみが存在するケースは極めてありそうにない、というのは、その場合には、その燃料電池内に正確に一致する化学量論量の水素と酸素とが存在していなければならないからである(実際には存在しない)。
【0063】
図7は、複数の燃料電池3内の異なる水素濃度、すなわち、窒素中の水素含有量に対するボルタモグラムを示す。ここで、24は窒素と比較して低い水素含有量についてのボルタモグラムであり、25は窒素と比較して高い水素含有量についてのボルタモグラムであり、26はガス室6中に窒素が存在しない場合についてのボルタモグラムである。図から分かるように、このボルタモグラムは水素含有量が減少するにつれてより平坦になり、より小さい電流に近づく。この結果、サイクリックボルタンメトリー測定の助けを借りて、異なる水素濃度または水素含有量を区別することが可能である。
【0064】
掃引速度がサイクリックボルタンメトリー測定の結果にどのような影響を及ぼすかを確定するために、異なる掃引速度で試験を行った。図8には、幾つかの測定点における掃引速度Gに対する電荷量Lが示されている。水素輸送は掃引速度Gの低下に伴って明らかに増加する。これは、掃引速度Gが小さいほど、触媒への水素の吸着時間が長くなるためである。触媒上のより多くの場所が占有され、より多くの水素が置換される。一方、より高い掃引速度Gでは、移送される電荷量がより少ないので、測定精度が低下する。約1mV/s(約Z×0.33mV/sに相当し、ここでは、3つの燃料電池に対してZ=3である)の領域に、測定精度と測定期間との間の最適値が存在する。
【0065】
図9は、複数の燃料電池3のガス室6、7内の水素/窒素混合物中の異なる濃度の水素に対するボルタモグラムの1サイクルの時間tにわたる電流Iを示す。異なる測定のために、複数の燃料電池の入口にそれぞれ同じ圧力レベルを設定した。
【0066】
次いで、関連する水素量nHを、以下のように、最小電流値Iuntenおよび最大電流値Iobenから計算することができる。
Q:電荷量
t:1サイクルの時間t、ここでは20秒
z:反応中に移動した電子の数、ここでは2
F:ファラデー定数
【0067】
その結果を表1に示す。
【0068】
この結果は図10にもグラフで示されている。これは、それぞれの設定された水素濃度KHに対する水素量Wの計算値を示す。絶対距離(すなわち、最小電流値Iuntenと最大電流値Iobenとの間の距離)またはそれらから計算された水素量と、設定された水素濃度との間にほぼ線形の関係が見られる。こうして、サイクリックボルタンメトリー測定の1サイクル中の最小電流値と最大電流値との間の距離に基づき水素量を、および、この水素量から水素濃度を特に容易かつ迅速に決定することができる。
【0069】
あるいは、水素量Wの計算は、例えば、ボルタンメトリーサイクルの1サイクル中のガス室6、7内の初期圧力および最終圧力を考慮に入れて理想的なガス法則を使用して、または、電流の時間積分による電荷量の決定に基づいて置換された水素量を導出することによって、行うこともできる。
【0070】
異なるボルタモグラムを比較する場合には基本的に、比較可能性を保証するために、圧力が同じであることに留意しなければならない。相対的に高い圧力では、膜を通してポンプ輸送することができるより多くの水素分子がシステム中に存在する。より高い圧力はより高い水素濃度を意味する。これにより、より多くの電荷量が測定される。温度の影響は圧力に比べて非常に小さい。より高い温度では電荷量がわずかに増加するだけである。このことはわずかに加速された反応速度に起因する。したがって、異なる温度での複数のボルタモグラムを比較することが可能である。
【0071】
したがって、測定の精度を高めるために、複数の燃料電池の複数のガス室内の圧力が測定され、これらの測定値が一定の圧力で補正されることが好ましい。複数の燃料電池の温度も測定されると好適であり、これらの測定値は一定の温度で補正される。さらに、評価に際して燃料電池の老化状態も考慮に入れることができる。
【0072】
再び図3を参照すると、制御装置40は、電解質の水分量および過剰水素の測定が不連続的に、1日、1週間または1ヶ月に1回のように、好ましくは周期的な間隔でのみ行われるように、システム30を制御する。
【0073】
これらの測定の時間外では、モジュール1の電気負荷接続部20、21は短絡されており、したがって、望ましくない電位の形成は避けられる。
【0074】
決定された測定値、例えば1サイクル内の電流の最大値および最小値、または、これらから導出された値、例えばこれらの測定値間の絶対距離、または、水素量もしくは水素濃度の決定値は、評価装置36においてメモリ47に記憶された少なくとも1つの閾値と比較され、この閾値に関連する基準が満たされると、例えばその閾値に達すると、故障信号が生成され、光学または音響表示46によって外部に向けて発信される。好ましくは、故障情報の生成に至らなかったいくつかの閾値を比較した後、評価装置36は寿命信号を生成し、それを同様に光学または音響表示46によって外部に発信する。このようにして、保管要員は、監視が機能しており、かつ、故障がないまたは故障がある、という情報を受信する。
【0075】
決定された複数の測定値、および/または、それらから導出された値、および/または、故障および寿命信号は、評価装置36によってタイムスタンプと共に倉庫要員が読み出し可能なメモリ47に記憶することもでき、および/または、送信装置42、43を介して、例えば燃料電池の製造業者によって操作される、中央の、特にクラウドベースの、監視システムに伝送することができる。これにより、多数の燃料電池モジュール1を監視することができ、例えば、連続故障をより容易に特定することができる。
【0076】
これに相当する機能性を電解質水分量の監視に関しても備えることができる。
【0077】
図11に示すシステム60は、2つのサブシステムに分割されている点で、図3に示すシステム30と異なる。
【0078】
第1のサブシステムは測定システム50として形成されていて、ローカルの現場で燃料電池モジュール1に設置されており、測定装置32、35および送信装置42、43を備えている。
【0079】
測定装置32、35の間、ならびに、送信装置42、43の間に接続された装置51は、測定装置32、35の測定値またはそれらから導出された値を統合し、送信装置42、43による送信を準備するために使用される。
【0080】
燃料電池モジュール1と測定システム50とから空間的に離れた第2のサブシステムは、評価システム53として構成されており、評価装置36と、測定システム50から受信する値に対する受信装置54とを備える。
【0081】
図12によれば、上記のシステム60または評価システム53は、測定システム50がそれぞれ取り付けられた複数の燃料電池モジュール1を監視するために使用することもできる。
【0082】
一例として、図11および図12は、測定システム50から評価システム53への(例えば、モバイル無線3G、4Gまたは5Gに基づく)送信装置42および受信装置54を用いた複数の値の無線伝送を示す。しかしながら、この伝送は(例えば、イーサネット(登録商標)に基づく)送信装置43によって有線接続することもでき、または、その組み合わせ(例えば、WLANとイーサネット(登録商標)との組み合わせ)とすることもできる。
【0083】
測定システム50と評価システム53との間で双方向通信が可能である場合、評価の結果、例えば、故障信号または寿命信号を、評価システム53から測定システム50に伝送し、そこで、例えば光学または音響表示46によって出力することができる。
【0084】
このように、本発明により、燃料電池内に侵入することなく、保管中のまたは非運転状態の燃料電池5を監視することが可能である。必要なのは、負荷接続部20、21にアクセスすることだけである。
【0085】
しかしながら、本発明は、燃料電池モジュール1の運転停止プロセスを監視および/または制御するために非常に有利に使用することもでき、この場合、特に、過剰水素のような燃料電池5内の所望のガス雰囲気を設定することができる。
【0086】
このような運転停止方法は、例えば、特許文献3に記載されている。この場合、過剰水素を達成するために、第1のステップにおいて、酸素入口弁を閉じることによってガス室7への酸素供給が中断される。ガス室内に残った酸素は、水素との電気化学的結合および電気の生成によって消費される。酸素が十分に除去されると、第2のステップにおいて、水素入口弁を閉じることによってガス室6への水素供給が遮断される。
【0087】
さらなるステップで、ガス室6、7を窒素でフラッシュし、次いで保管のために水素で満たすことができる。
【0088】
全てのプロセスにサイクリックボルタンメトリー測定を付随させることができ、その結果、ガス室6、7内のその都度の実際のガス組成を決定することができ、必要であれば、この知見をプロセスの最適な制御のために使用することができる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12