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特許7326485高圧圧縮及び膨張による天然ガスの前処理、予冷及び凝縮物回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】高圧圧縮及び膨張による天然ガスの前処理、予冷及び凝縮物回収
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20230807BHJP
   F25J 1/02 20060101ALI20230807BHJP
   F25J 3/02 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
F25J1/00 B
F25J1/02
F25J3/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021570520
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 US2020028706
(87)【国際公開番号】W WO2021055019
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】62/902,455
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】リウ イジュン
(72)【発明者】
【氏名】ナガヴァラプ アナンダ ケイ
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0066889(US,A1)
【文献】特表2018-538506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0173103(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスストリームから液化天然ガス(LNG)を生産する方法であって、
第1の分離器内で前記天然ガスストリームから重質炭化水素を除去し、それによって分離天然ガスストリーム及び分離器下部ストリームを生成すること;
熱交換器内で前記分離天然ガスストリームを冷却剤として使用し、それによって前処理天然ガスストリームを生成すること;
前記前処理天然ガスストリームを圧縮及び冷却してチルド前処理天然ガスストリームを形成すること;
前記チルド前処理天然ガスストリームの一部を再循環ストリームとして再循環させて、前記熱交換器内で、前記分離天然ガスストリームと熱交換させ、それによって冷却された再循環ストリームを生成すること;
前記冷却された再循環ストリームの温度及び圧力を下げること;
前記冷却された再循環ストリームを、ガス状分離器オーバヘッドストリームと還流ストリームとに分けること;
前記還流ストリームを、前記第1の分離器の上部へ方向づけること;及び
前記チルド前処理天然ガスストリームを液化してLNGを形成すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記チルド前処理天然ガスストリームの液化が、
1つ以上の単一混合冷媒(SMR)液化ユニット、
少なくとも3つの並列SMR液化ユニット、および
1つ以上のエキスパンダベース液化モジュールであって、
1つ以上の窒素ガスエキスパンダベース液化モジュール、又は
1つ以上の供給ガスエキスパンダベース液化モジュール
を含むエキスパンダベース液化モジュール、
のうちの1つにおいて行なわれる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに
第2の分離器内で前記分離器下部ストリームから液体を分離してオーバッドストリームを形成すること;及び
第3の分離器内で前記オーバヘッドストリームを冷却し、それから液体を分離してガス生成物ストリームを形成すること、並びに
前記生成物ストリームの少なくとも一部を、少なくとも1つの圧縮機の上流で前記前処理天然ガスストリームと混ぜ合わせること、を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記前処理天然ガスストリームの圧縮及び冷却が、
前記前処理天然ガスストリームを少なくとも1つの圧縮機内で少なくとも1,500psiaの圧力まで圧縮して、圧縮天然ガスストリームを形成すること;
前記圧縮天然ガスストリームを冷却して、冷却された圧縮天然ガスストリームを形成すること;及び
少なくとも1つのワーク生成天然ガスエキスパンダ内で、前記冷却された圧縮天然ガスストリームを、2,000psia未満であり、かつ前記少なくとも1つの圧縮機が前記前処理天然ガスストリームを圧縮する圧力以下である圧力まで膨張させ、それによって前記チルド前処理天然ガスストリームを形成すること、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(a)前記熱交換器が第1の熱交換器であり、かつ前記圧縮天然ガスストリームの冷却が、周囲環境と熱交換する第2の熱交換器内で前記圧縮天然ガスストリームを冷却することを含む、かつ/又は、
(b)前記少なくとも1つの圧縮機が、少なくとも2つの直列に配置された圧縮機を含み、かつ前記少なくとも2つの直列に配置された圧縮機の1つが、前記ワーク生成天然ガスエキスパンダによって駆動される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、
前記ガス状分離器オーバヘッドストリームを、前記熱交換器の上流でカラムオーバヘッドストリームと混ぜ合わせること
を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、
前記ガス状分離器オーバヘッドストリームを前記熱交換器へ方向づけること;及び
前記熱交換器に通した後に、前記ガス状分離器オーバヘッドストリームを前記前処理天然ガスストリームと混ぜ合わせること
を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、
前記天然ガスストリームの一部を前記熱交換器内で冷却して、冷却された天然ガスストリームを生成すること;及び
前記冷却された天然ガスストリームを前記第1の分離器の上流で前記天然ガスストリームと混ぜ合わせること
を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
天然ガスストリームの液化装置であって、
前記天然ガスストリームの少なくとも一部を冷却して、冷却された天然ガスストリームを生成する第1の熱交換器であって、ここで、前記天然ガスストリームの前記一部は、前記天然ガスストリームと混ざり合っている、第1の熱交換器;
前記天然ガスストリームから重質炭化水素を除去し、それによって分離天然ガスストリーム及び分離器下部ストリームを生成するように構成された第1の分離デバイスであって、ここで、前記分離天然ガスストリームは前記第1の熱交換器に方向づけられて、その中で冷却剤として作用し、それによって前処理天然ガスストリームを生成する、第1の分離デバイス;
前記前処理天然ガスストリームを圧縮及び冷却してチルド前処理天然ガスストリームを形成する圧縮及び冷却ユニット;
ここで、前記チルド前処理天然ガスストリームの一部は、再循環ストリームとして前記第1の熱交換器に再循環されて、前記天然ガスストリームの前記一部及び前記分離天然ガスストリームの少なくとも一方を含む1つ以上のプロセスストリームと熱交換し、それによって冷却された再循環ストリームを形成し;
前記冷却された再循環ストリームの温度及び圧力を下げるように構成された温度及び圧力低減デバイス;
前記冷却された再循環ストリームをガス状分離器オーバヘッドストリームと還流ストリームに分ける第4の分離デバイスであって、前記還流ストリームは、前記第1の分離デバイスの上部へ方向づけられる、第4の分離デバイス;及び
前記チルド前処理天然ガスストリームを液化するように構成された少なくとも1つの液化ユニット、
を含む、前記装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの液化ユニットが、
1つ以上の単一混合冷媒(SMR)液化ユニット、
少なくとも3つの並列SMR液化ユニット、又は
1つ以上のエキスパンダベース液化モジュールであって、
1つ以上の窒素ガスエキスパンダベース液化モジュール、若しくは
1つ以上の供給ガスエキスパンダベース液化モジュール、を含む
エキスパンダベース液化モジュール、
を含む、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、発明の名称「高圧圧縮及び膨張による天然ガスの前処理、予冷及び凝縮物回収」で2019年9月19日に出願された米国仮特許出願第62/902455号の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、液化天然ガス(LNG)を形成するための天然ガスの液化、より詳細には、資本設備の建設及び/又は保守、及び/又は従来のLNGプラントの環境影響が有害である可能性のある遠隔又は敏感な区域でのLNGの生産に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
LNG生産は、豊富な供給量の天然ガスがある場所から天然ガスに対する強い需要のある離れた場所に天然ガスを供給するための急成長している手段である。従来のLNG生産サイクルは、a)水、硫黄化合物及び二酸化炭素等の混入物を除去するための天然ガス源の初期処理、b)自己冷凍、外部冷凍、リーンオイル等を含めた可能な種々の方法によるいくらかの重質炭化水素ガス、例えばプロパン、ブタン、ペンタン等の分離;c)大気圧近傍及び約-160℃で液化天然ガスを形成するための実質的に外部冷凍による天然ガスの冷凍;d)この目的で設計された船舶又はタンカーでのLNG生産物の市場への輸送;e)再ガス化プラントにおける天然ガス消費者に分配可能な加圧天然ガスへのLNGの再加圧及び再ガス化を含む。従来のLNGサイクルのステップ(c)は通常、かなりの炭素その他の排出物を排出する大型ガスタービンドライバーによって動力が供給されることが多い大型冷凍圧縮機の使用を必要とする。液化プラントの一部として、数十億という米ドルの大規模な設備投資及び広範なインフラストラクチャーが必要とされる。従来のLNGサイクルのステップ(e)は一般的に極低温ポンプを使用して所要圧力までLNGを再加圧してから、中間流体を経るが最終的には海水と熱交換することによって、又は天然ガスの一部を燃焼させてLNGを加熱して蒸発させることによって、LNGを再ガス化して加圧天然ガスにすることを含む。
【0004】
LNG生産は一般的に周知であるが、技術改善は、LNG産業におけるその指導的地位の維持を目指すので、未だにLNG生産者に有意な機会を与えることができる。例えば、フローティングLNG(FLNG)は、LNGを生産するための比較的新しい技術オプションである。この技術は、バージ又は船舶等のフローティング構造体上にガス処理及び液化設備を建設することを必要とする。FLNGは、陸へのガスパイプラインを建設することが経済的に実行できない場合に海洋標準ガスを収益化するための技術的解決策である。FLNGは、遠隔的、環境に配慮した及び/又は政治的に困難だがやりがいのある領域にある陸上及び近海ガス分野のためにもますます検討されている。この技術は、生産拠点での環境フットプリントが減少するという点で従来の陸上LNGを超える特定の利点を有する。LNG設備の大半が造船所にてより低い賃金率及び少ない遂行リスクで建設されるので、この技術はプロジェクトの成果をより早くかつ低コストで出すこともできる。
【0005】
FLNGは、従来の陸上LNGを超えるいくつかの利点を有するが、この技術の適用には重大な技術的課題が残っている。例えば、FLNG構造は、多くの場合陸上LNGプラントに利用できる4分の1未満である面積又はスペースで同レベルのガス処理及び液化を可能にしなければならない。この理由のため、液化設備のフットプリントを減らしながら、その能力を維持し、それによってプロジェクト全体のコストを下げる技術を開発する必要がある。FLNGプロジェクトに使用するためにいくつかの液化技術が提案されている。指導的技術としては、単一混合冷媒(SMR)プロセス、二元混合冷媒(DMR)プロセス、及びエキスパンダベース(又は膨張)プロセスがある。
【0006】
DMRプロセスとは対照的に、SMRプロセスは、完全液化プロセスと関係がある全ての機器及び容積を単一FLNGモジュール内で適合させられるという利点を有する。SMR液化モジュールは、完全SMRトレインとしてFLNG構造体の上側に置かれる。この「LNGインボックス(LNG-in-a-Box)」概念は、FLNG構造体が建設される場所とは異なる場所でのSMRトレインの試験及び試運転を可能にするのでFLNGプロジェクト遂行にとって好ましい。それは、賃金率が従来の製造所の賃金率より高い傾向がある造船所における労働時間を減らすので、労働コストの削減をも可能にする。SMRプロセスは、他の混合冷媒プロセスに比べて、相対的に効率がよく、単純かつコンパクトな冷媒プロセスであるという追加利点を有する。さらに、SMR液化プロセスは、エキスパンダベース液化プロセスより典型的に15%~20%効率が良い。
【0007】
FLNGプロジェクトにおけるLNG液化のためのSMRプロセスの選択はその利点を有するが、SMRプロセスにはいくつかの欠点がある。例えば、必要とされるプロパン等の可燃性冷媒の使用及び貯蔵は、FLNGに関するロスプリベンション(loss prevention)問題を顕著に増やす。SMRプロセスは能力にも限界があり、所望のLNG生産量に達するのに必要なトレイン数を増やす。また、重質炭化水素を除去し、冷媒構成に必要な天然ガス液を回収するために、スクラブカラムを用いることが多い。図1は、単純SMRプロセスとスクラブカラム104を統合した典型的なLNG液化システム100である。SMR冷媒ループ106が1つ以上の熱交換器108a、108b、108c内で供給ガスストリーム102を冷却及び液化する。詳細には、SMR冷媒ループ106は、供給ガスストリーム102がスクラブカラム104に送られる前にそれを冷却する。重質炭化水素がスクラブカラム104の下部ストリーム110から除去され、冷却された蒸気ストリーム112がスクラブカラム104の上部から除去される。冷却された蒸気ストリーム112は次に熱交換器108b内でSMR冷媒ループ106との熱交換によって冷却され、部分的に凝縮される。冷却された蒸気ストリームは、分離容器114に送られ、そこで、冷却された蒸気ストリームの凝縮部分は液体還流ストリーム116としてスクラブカラムに戻され、冷却された蒸気ストリームの流蒸気部分118は熱交換器108c内でSMR冷媒ループ106との熱交換によって液化される。LNGストリーム120は、貯蔵及び/又は輸送のためにLNG液化システム100から出る。
【0008】
図1に示し、上述したもののような統合スクラブカラムデザインは、一般的に重質炭化水素除去の最低コストの選択肢である。しかしながら、このデザインは、SMRトレインの冷凍の一部が熱交換器108b内で利用されてカラム還流をもたらすのでトレイン能力を減じるという欠点を有する。それは、SMRトレインの機器数を増やすという欠点をも有し、単一FLNGモジュール内にSMRトレインを設置する能力を制限することがある。さらに、1.5MTA超のFLNG用途には、複数のSMRトレインが必要であり、各トレインはそれ自体の統合スクラブカラムを有する。これら及び他の理由のため、相当量の上側スペース及びウェイトがSMRトレインのために必要である。上側スペース及びウェイトはFLNGプロジェクトコストにとって重大な動因なので、上側スペース、ウェイト及び複雑さをさらに低減させ、ひいてはプロジェクト経済を改善するためにSMR液化プロセスを改善する必要性が残っている。トレイン能力を高めながら、高生産性FLNG用途のための全体的な機器数をも減らすことができる重質炭化水素除去プロセスを開発するさらなる必要性が残っている。
【0009】
エキスパンダベースプロセスは、それをFLNGプロジェクトにうまく適合させるいくつかの利点を有する。最も有意な利点は、この技術が外部炭化水素冷媒を必要としない液化を提供することである。プロパン貯蔵等の液体炭化水素冷媒在庫を排除すると、FLNGプロジェクトに関する安全上の懸念を著しく減らす。混合冷媒プロセスと比べたエキスパンダベースプロセスのさらなる利点は、主冷媒がほとんど気相内に留まるのでエキスパンダベースプロセスは海洋運動に対して感受性が低いことである。しかしながら、年間2百万トン(MTA)超のLNG生産を伴うFLNGプロジェクトへのエキスパンダベースプロセスの適用は、混合冷媒プロセスの使用より魅力的でないことが証明されている。エキスパンダベースプロセストレインの能力は典型的に1.5MTA未満である。対照的に、既知の二元混合冷媒プロセスのトレインのような混合冷媒プロセストレインは、5MTA超のトレイン能力を有する可能性がある。エキスパンダベースプロセストレインのサイズは、プロセス全体を通してその冷媒がほとんど蒸気状態のままであり、冷媒がその顕熱によってエネルギーを吸収するので制限される。これらの理由から、プロセス全体を通して冷媒の体積流量が多く、熱交換器及び配管のサイズは、混合冷媒プロセスのものより比例して大きい。さらに、エキスパンダベースプロセストレインの容量が増すにつれてコンパンダの馬力サイズの限界が並列回転機械類をもたらす。エキスパンダベースプロセスを利用するFLNGプロジェクトの生産率は、複数のエキスパンダベーストレインが許容されれば2MTA超になり得る。例えば、6MTAのFLNGプロジェクトでは、所要生産量を達成するためには6以上の並列エキスパンダベースプロセストレインで十分な可能性がある。しかしながら、複数のエキスパンダトレインのせいで機器数、複雑さ及びコスト全てが増大する。さらに、混合冷媒プロセスは1つ又は2つのトレインで所要生産率を達成できるのにエキスパンダベースプロセスでは複数トレインが必要とされる場合、混合冷媒プロセスに比べてエキスパンダベースプロセスの想定されるプロセスの単純性が疑問を持ち始める。統合スクラブカラムデザインを用いて、エキスパンダベース液化プロセスのために重質炭化水素を除去することもできる。その使用の利点及び欠点は、SMRプロセスのものと同様である。統合スクラブカラムデザインの使用は、供給ガスのクリコンデンバール(cricondenbar)未満の値まで液化圧力を制限する。この事実は、そのプロセス効率が混合冷媒プロセスより低い液化圧力によってさらに悪影響を受けるので、エキスパンダベースプロセスの特定の欠点である。このような理由で、エキスパンダベースプロセスの利点を有する高LNG生産能力のFLNG液化プロセスを開発する必要がある。ガス処理中に船舶運動があるという課題をより良く取り扱うことができるFLNG技術の解決策を開発する必要がさらにある。従来技術に伴う効率及び生産量低減を排除することによって、エキスパンダベースプロセスにより良く適した重質炭化水素除去プロセスを開発するさらなる必要性が残っている。
【0010】
米国特許第6,412,302号は、2つの独立した閉冷凍ループを用いて供給ガスを冷却してLNGを形成する供給ガスエキスパンダベースプロセスについて述べている。一実施形態では、第1の閉冷凍ループが冷媒として供給ガス又は供給ガスの成分を使用する。第2の閉冷凍ループ用の冷媒としては窒素ガスが用いられる。この技術は、二重ループ窒素エキスパンダベースプロセスより小さい機器及び上側スペースを必要とする。例えば、冷媒の低圧圧縮機への体積流量は、この技術では二重ループ窒素エキスパンダベースプロセスに比べて20~50%少なくてよい。しかしながら、この技術は、依然として1.5MTA未満の能力に限定されている。
【0011】
米国特許第8,616,012号は、閉冷凍ループ内で冷媒として供給ガスを用いる供給ガスエキスパンダベースプロセスについて述べている。この閉冷凍ループ内では、冷媒は、1,500psia(10,340kPa)以上、さらに好ましくは2,500psia(17,240kPa)超の圧力まで圧縮される。次に冷媒は極低温に達するまで冷却され、膨張させられる。この冷却された冷媒を熱交換器内で用いて、供給ガスを温かい温度から極低温まで冷却する。次に過冷却冷凍ループを利用して、供給ガスをさらに冷却してLNGを形成する。一実施形態では、過冷却冷凍ループは、冷媒としてフラッシュガスを用いる閉ループである。この供給ガエキスパンダベースプロセスは、1MTA未満のトレイン能力範囲に限定されないという利点を有する。約6MTAのトレインサイズが検討された。しかしながら、この技術は、2つの独立した冷凍ループ及び供給ガスの圧縮のためのその要件に起因する機器数増加及び複雑さの増大という欠点を有する。
【0012】
GB 2,486,036は、予冷エキスパンダループ及び液化エキスパンダループを含む開ループ冷凍サイクルであり、膨張後の気相を用いて天然ガスを液化する供給ガスエキスパンダベースプロセスについて述べている。この文書によれば、プロセスに液化エキスパンダを含めると、ガスの再利用率及び全体的な所要冷凍力を有意に低減させる。この技術は、1種類の冷媒のみを単一圧縮ストリングで使用するので他の技術より単純であるという利点を有する。しかしながら、この技術はそれでも1.5MTA未満の能力に限定され、LNG生産に標準的機器でない液化エキスパンダの使用を要する。この技術は、リーン天然ガスの液化の他の技術より効率が低いことも示されている。
【0013】
米国特許第7,386,996号は、主エキスパンダベース冷却回路に先立つ予冷冷凍プロセスを有するエキスパンダベースプロセスについて述べている。予冷冷凍プロセスは、カスケード配列の二酸化炭素冷凍回路を含む。二酸化炭素冷凍回路は、供給ガス及び主エキスパンダベース冷却回路の冷媒ガスを3つの圧力レベル:二酸化炭素冷凍回路にウォームエンド(warm-end)冷却を与えるための高圧レベル;中温度冷却を与えるための中圧レベル;及びコールドエンド(cold-end)冷却を与えるための低圧レベルで冷却することができる。この技術は、予冷ステップを欠いているエキスパンダベースプロセスより効率が良く、高い生産能力を有する。この技術は、予冷冷凍サイクルが炭化水素冷媒の代わりに二酸化炭素を冷媒として使用するので、FLNG用途に適したさらなる利点を有する。しかしながら、二酸化炭素冷凍回路は、追加冷媒及び相当量の外部機器が導入されるので、液化プロセスに複雑さを加えるという犠牲を払っている。FLNG用途では、二酸化炭素冷凍回路はそれ自体のモジュール内にある可能性があり、複数のエキスパンダベースプロセスに予冷をもたらすサイズであり得る。この配列は、予冷モジュールと主エキスパンダベースプロセスモジュールとの間に相当量のパイプ接続を必要とするという欠点を有する。上記「LNGインボックス(LNG-in-a-Box)」の利点はもはや実現されない。
【0014】
従って、追加冷媒を必要とせず、LNG液化プロセスに相当量の外部機器を導入しない予冷プロセスを開発する必要性が残っている。液化モジュールと同じモジュール内に設置できる予冷プロセスを開発するさらなる必要性がある。さらに、重質炭化水素除去プロセスと容易に統合することができ、液化の上流で補助冷却を実現できる予冷プロセスを開発するさらなる必要性がある。SMRプロセス又はエキスパンダベースプロセスと組み合わせた該予冷プロセスは、上側スペース及びウェイトがプロジェクト経済に大きな影響を与えるFLNG用途に特に適しているであろう。エキスパンダベースプロセスの利点を備え、さらに、設備のフットプリントを有意に増やすことなく高いLNG生産能力を有するLNG生産プロセスを開発する明確な必要性が残っている。さらに、ガス処理中に船舶運動があるという課題をより良く取り扱うことができるLNG技術解決策を開発する必要がある。このような高能力のエキスパンダベース液化プロセスは、エキスパンダベース液化プロセスの固有の安全性及び簡便さが非常に重んじられるFLNG用途に特に適しているであろう。
【0015】
LNGの生産においては、供給ガスは、天然ガス液化の極低温条件下で凍結することになる重質炭化水素、例えば長鎖アルカン及び芳香族化合物を除去するために調整する必要がある。プロパン予冷混合冷媒プロセス又は二元MRプロセスのような混合冷媒(MR)ベース液化プロセスでは、エタン、プロパン、及びブタン等の混合冷媒成分を供給ガスから取り出して、それぞれの冷媒ループで失われた混合冷媒を補充しなければならないとき、供給ガスの液化前調整は、深層天然ガス液(NGL)回収を必要とする可能性がある。該NGL回収は、凍結性重質炭化水素を排除するのみならず、下流の脱エタン塔、脱プロパン塔、及び/又は脱ブタン塔を介してエタン及び液化石油ガス(LPG)を抽出して混合冷媒組成を作り出す。しかしながら、混合冷媒成分を他の供給源、例えばブラウンフィールド拡張プロジェクトにおける既存エタン/プロパン/ブタンストリーム又は物流が輸入に都合よい(例えば湾岸プロジェクト)か若しくは下流処理を単純化する必要がある(例えばFLNGを使用する)場合に外部供給源から得ることができるときには、エタン/メタン/プロパン等の非凍結成分のスクラブカラム下部ストリームへのスリップを最小限にしながら、スクラブカラム下部ストリームへの前記スリップによる供給ストリームからの重質炭化水素の除去を目指すことが望ましいであろう。
【0016】
図10は、エタン/メタン/ブタンのスリップを最小限にしながら、天然ガスストリーム1002からの重質炭化水素の除去を目指す既知のガス前処理装置1000を開示する。天然ガスストリーム1002は、第1の膨張デバイス1004を用いて膨張及び冷却されてから、熱交換器1006流入して部分的に凝縮される。部分的に凝縮された天然ガスストリームは、スクラブカラム1008へ方向づけられて、カラムオーバヘッドストリーム1010とカラム下部ストリーム1012に分けられる。カラムオーバヘッドストリーム1010は、熱交換器1006を通って流れて部分的に凝縮され、二相ストリーム1014を形成する。二相ストリーム1014は、分離器1016に流入し、冷たい前処理ガスストリーム1018と、重質炭化水素及び非凍結成分、例えばエタン/プロパン/ブタンに富む液体ストリーム1020とに分けられる。冷たい前処理ガスストリーム1018は、ジュール・トムソン(J-T)弁1022等の第2の膨張デバイスを通って流れてから、熱交換器1006を通って流れてその中で補助冷却ストリームを形成する。冷たい前処理ガスストリーム1018は、カラムオーバヘッドストリーム1010と間接的に熱交換することによって温められて前処理天然ガスストリーム1024を形成する。液体ストリーム1020は、ポンプ1026を用いて加圧されてから、カラム還流ストリームとしてスクラブカラム1006へ方向づけられる。スクラブカラム操作用のストリッピングガスストリーム1028は、天然ガスストリーム1002から供給されることがあり;或いは、リボイラー(図示せず)を用いてスクラブカラム用ストリッピングガスが供給されることもある。前処理天然ガスストリーム1024は、高圧圧縮及び膨張(HPCE)プロセスモジュール1050に投入される。HPCEプロセスモジュールは、前処理天然ガスストリーム1024を圧縮し、冷却し、膨張させてチルド前処理ガスストリーム1078を生成する。このチルド前処理ガスストリーム1078は、次に液化プロセス1080内で液化されてLNGストリーム1082を生成することができる。
【0017】
図10に示す構造は、スクラブカラム1008のより温かく、より豊富なカラムオーバヘッドストリーム1010を用いて還流ストリーム1014を作り出すので、非凍結成分のスリップを最小限にする。しかしながら、この手法は、液体ストリーム1020中の重質炭化水素の回収を制限し、結果として、液体ストリーム1020のさらなる処理によって作り出される凝縮物の生産量を少なくもする。典型的に、天然ガス液(NGL)回収プロセスは、凝縮物の生産量を増やすために必要とされ、該プロセスは、複雑であり、大量のエネルギーを消費する。従って、重質炭化水素除去、凝縮物回収、及び液化前の予冷の要件のバランスを取るやり方で天然ガスの調整を最適化する必要がある。
【発明の概要】
【0018】
発明の概要
開示態様に従って、天然ガスストリームから液化天然ガス(LNG)を生産する方法を提供する。第1の分離器内で天然ガスストリームから重質炭化水素が除去され、それによって分離天然ガスストリームと分離器下部ストリームが生成される。分離天然ガスストリームは、熱交換器内で冷却剤として使用され、それによって前処理天然ガスストリームを生成する。前処理天然ガスストリームは、圧縮及び冷却されてチルド前処理天然ガスストリームを形成する。このチルド前処理天然ガスストリームの一部は、再循環ストリームを形成して、熱交換器内で分離天然ガスストリームと熱交換し、それによって冷却された再循環ストリームを生成する。冷却された再循環ストリームの温度及び圧力が下げられる。冷却された再循環ストリームは、ガス状分離器オーバヘッドストリームと還流ストリームに分けられる。還流ストリームは、第1の分離器の上部へ方向づけられる。チルド前処理ガスストリームは液化されてLNGを形成する。
【0019】
天然ガスストリームの液化装置をも提供する。第1の熱交換器が、天然ガスストリームの少なくとも一部を冷却して、冷却された天然ガスストリームを生成する。天然ガスストリームのこの部分が天然ガスストリームと混ぜ合わせられる。第1の分離デバイスが天然ガスストリームから重質炭化水素を除去し、それによって分離天然ガスストリームと分離器下部ストリームを生成する。分離天然ガスストリームは、第1の熱交換器へ方向づけられてその中で冷却剤として作用し、それによって前処理天然ガスストリームを生成する。圧縮及び冷却ユニットが前処理天然ガスストリームを圧縮及び冷却してチルド前処理ストリームを形成する。チルド前処理ガスストリームの一部が第1の熱交換器に再循環ストリームとして再循環されて、天然ガスストリームの一部及び分離天然ガスストリームの少なくとも一方を含む1以上のプロセスストリームと熱交換し、それによって冷却再循環ストリームを生成する。温度及び圧力低減装置が、冷却された再循環ストリームの温度及び圧力を下げる。第4の分離デバイスが冷却された再循環ストリームをガス状分離器オーバヘッドストリームと還流ストリームに分ける。還流ストリームは第1の分離器の上部へ方向づけられる。少なくとも1つの液化ユニットがチルド前処理ガスストリームを液化する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】既知原理に従う重質炭化水素除去用統合スクラブカラムを有するSMRプロセスの概略図である。
図2】開示態様に従う重質炭化水素除去を有する高圧圧縮及び膨張(HPCE)モジュールの概略図である。
図3】既知原理に従う単一混合冷媒(SMR)液化モジュールの配列を示す概略図である。
図4】開示態様に従うSMR液化モジュールの配列を示す概略図である。
図5】エキスパンダベース冷凍プロセスの加熱及び冷却曲線を示すグラフである。
図6】開示態様に従う重質炭化水素除去を有するHPCEモジュールの概略図である。
図7】開示態様に従う重質炭化水素除去を有するHPCEモジュール及び供給ガスエキスパンダベース液化モジュールの概略図である。
図8】開示態様に従って天然ガスを液化してLNGを形成する方法の流れ図である。
図9】開示態様に従って天然ガスを液化してLNGを形成する方法の流れ図である。
図10】既知原理に従う天然ガス前処理装置の概略図である。
図11】開示態様に従う天然ガス前処理装置の概略図である。
図12】開示態様に従う天然ガス前処理装置の概略図である。
図13】開示態様に従って液化天然ガスを生産する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
種々の具体的な態様、実施形態、及びバージョンについて、本明細書で採用した定義を含めて以下に述べる。当業者は、このような態様、実施形態、及びバージョンは例示に過ぎず、本発明は、他の方法で実施できることを認めるであろう。「発明」へのいずれの言及も、特許請求の範囲によって規定される実施形態の1つ以上を意味し得るが、必ずしも全てを意味しないこともある。表題の使用は、便宜上の目的に過ぎず、本発明の範囲を限定しない。明瞭さ及び簡潔さの目的で、いくつかの図中の類似の参照番号は、類似のアイテム、ステップ、又は構造体を表し、あらゆる図で詳細に描写されるわけではない。
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲内の全ての数値については、指示値を「約(「about」又は「approximately」)で修飾してあり、当業者が予想する実験誤差及び変動を考慮している。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「圧縮機」は、ワークの適用によってガスの圧力を高くする機械を意味する。「圧縮機」又は「冷媒圧縮機」には、ガスストリームの圧力を高める能力があるいずれのユニット、デバイス、又は装置も含まれる。これには、単一圧縮プロセス若しくはステップを有する圧縮機、又は多段圧縮若しくはステップを有する圧縮機、又はさらに特に単一のケーシング若しくはシェル内の多段圧縮機が含まれる。本明細書での複数圧縮機への言及には、複数の一段圧縮機、1以上の多段圧縮機、及びその任意の組み合わせが含まれる。圧縮すべき蒸発ストリームは、様々な圧力で圧縮機に供給され得る。冷却プロセスのいくつかの段階又はステップは、並列、直列、又は両方の2つ以上の圧縮機を必要とすることがある。本発明は、特にいずれの冷媒回路においても、圧縮機(複数可)のタイプ又は配列若しくは配置によって限定されない。
【0023】
本明細書で使用する場合、「冷却」は、物質の温度及び/又は内部エネルギーを任意の適量、又は所望量、又は所要量だけ減じ及び/又は低下させることを広く意味する。冷却には、少なくとも約1℃、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、少なくとも約15℃、少なくとも約25℃、少なくとも約35℃、又は少なくとも約50℃、又は少なくとも約75℃、又は少なくとも約85℃、又は少なくとも約95℃、又は少なくとも約100℃の温度低下が含まれることがある。冷却は、いずれの適切なヒートシンク、例えば蒸気発生、熱水加熱、冷却水、空気、冷媒、他のプロセスストリーム(統合)、及びその組み合わせを利用してもよい。所望の出口温度に達するように冷却の1以上の原因を組み合わせ及び/又はつなげてよい。冷却ステップは、任意の適切なデバイス及び/又は機器を備えた冷却ユニットを使用してよい。いくつかの実施形態によれば、冷却は、例えば1つ以上の熱交換器による間接的熱交換を含むことがある。別の方法では、冷却は、蒸発(気化熱)冷却及び/又は直接熱交換、例えばプロセスストリームに直接噴霧される液体を利用してよい。
本明細書で使用する場合、用語「環境」は、周囲の局所的条件、例えば、プロセス近傍の温度及び圧力を指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「膨張デバイス」は、ライン内の流体(例えば、液体ストリーム、蒸気ストリーム、又は液体と蒸気を両方とも含有する多相ストリーム)の圧力を下げるのに適した1以上のデバイスを指す。特定タイプの膨張デバイスを具体的に明記していない限り、膨張デバイスは、(1)少なくとも部分的に等エンタルピー手段によるか、又は(2)少なくとも部分的に等エントロピー手段によるか、又は(3)等エントロピー手段と等エンタルピー手段の両方の組み合わせであってよい。天然ガスの等エンタルピー膨張に適したデバイスは技術上周知であり、一般的に、限定するものではないが、手動若しくは自動で駆動される絞りデバイス、例えば、弁、制御弁、ジュール・トムソン(J-T)弁、又はベンチュリデバイスが挙げられる。天然ガスの等エントロピー膨張に適したデバイスは技術上周知であり、一般的に、エキスパンダ又は該膨張からワークを引き出すか若しくは導き出すターボエキスパンダ等の機器が挙げられる。液体ストリームの等エントロピー膨張に適したデバイスは技術上周知であり、一般的にエキスパンダ、油圧エキスパンダ、液体タービン、又は該膨張からワークを引き出すか若しくは導き出すターボエキスパンダ等の機器が挙げられる。等エントロピー手段と等エンタルピー手段の両方の組み合わせの例は、並列状態のジュール・トムソン弁及びターボエキスパンダであり、どちらかを単独で使用するか又はJ-T弁とターボエキスパンダを両方とも同時に使用する可能性を与える。等エンタルピー又は等エントロピー膨張は、全て液相、全て気相、又は混合相状態で行なうことができ、かつ蒸気ストリーム若しくは液体ストリームから多相ストリーム(気相と液相を両方有するストリーム)又はその最初の相と異なる単相ストリームへの相変化を促すために行なうことができる。本明細書の図面の説明において、いずれの図面中の複数の膨張デバイスへの言及も、各膨張デバイスが同一タイプ又はサイズであることを必ずしも意味しない。
【0025】
本明細書では用語「ガス」を「蒸気」と互換的に使用し、液体又は固体状態と区別される気体状態の物質又は物質の混合物と定義する。同様に、用語「液体」は、気体又は固体状態と区別される液体状態の物質又は物質の混合物を意味する。
「熱交換器」は、ある媒体から別の媒体へ、例えば少なくとも2種の別個の流体間で熱エネルギー又は冷熱エネルギーを移す能力があるいずれのデバイスをも広く意味する。熱交換器としては、「直接熱交換器」及び「間接式熱交換器」がある。従って、熱交換器は、いずれの適切なデザインのものであってよく、例えば並流又は逆流熱交換器、間接式熱交換器(例えばスパイラル巻き熱交換器又はプレートフィン熱交換器、例えばアルミろう付けプレートフィン型)、直接接触熱交換器、シェルアンドチューブ熱交換器、スパイラル、ヘアピン、コア、コアアンドケトル(core-and-kettle)、プリント回路、二重管又はいずれの他のタイプの既知熱交換器であってもよい。「熱交換器」は、いずれのカラム、塔、ユニット又は1種以上のストリームのその中の通過を可能にし、かつ冷媒の1以上のライン間、及び1以上の供給ストリーム間の直接又は間接的熱交換に影響を及ぼすように採用された他のアレンジメントをも指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「重質炭化水素」は、4個より多くの炭素原子を有する炭化水素を指す。主要例としては、ペンタン、ヘキサン及びヘプタンが挙げられる。他の例としては、ベンゼン、芳香族化合物、又はダイヤモンドイドがある。
本明細書で使用する場合、用語「間接的熱交換」は、2種の流体が如何なる物理的接触もないか又は相互に混ざることなく該流体を熱交換関係に至らせることを意味する。間接的熱交換を促進する機器の例は、コアインケトル(core-in-kettle)熱交換器及びアルミろう付けプレートフィン熱交換器である。
本明細書で使用する場合、用語「天然ガス」は、油田井から得られる多成分ガス(随伴ガス)又は地下ガス保有層(subterranean gas-bearing formation)から得られる多成分ガス(非随伴ガス)を指す。天然ガスの組成及び圧力は著しく変動し得る。典型的な天然ガスストリームは、重要成分としてメタン(Cl)を含有する。天然ガスストリームは、より高分子量の炭化水素であるエタン(C2)及び1種以上の酸性ガスを含むこともある。天然ガスは、水、窒素、硫化鉄、ワックス、及び原油等の少量の混入物を含むこともある。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「分離デバイス」又は「分離器」は、少なくとも2種の構成要素を有する流体を受け取るように構成され、かつ容器の上部からガス状ストリーム及び容器の下部から液体(又は下部)ストリームを生じさせるように構成されたいずれの容器をも指す。分離デバイス/分離器は内部の接触促進構造体(例えば充填要素、ストリッパー、堰板、煙突等)を含み、1、2、又は3以上の部分(例えばストリッピング部及びリボイラー部)を含むことがあり、及び/又は追加の入口及び出口を含むことがある。典型的な分離デバイス/分離器としては、バルク精留塔、ストリッピングカラム、相分離器、スクラブカラムその他が挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「スクラブカラム」は、天然ガスストリームから重質炭化水素を除去するために用いられる分離デバイスを指す。
【0028】
特定の実施形態及び特徴について一連の上限数値及び一連の下限数値を用いて述べた。別段の指示がない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲が企図されるものと理解すべきである。全ての数値は、「約(about又はapproximately)」指示値であり、当業者が予想する実験誤差及び変動を考慮している。
本出願に引用した全ての特許、試験手順、及び他の文書は、該開示が本出願と矛盾せず、このような援用が許容されるすべての管轄権に対して矛盾しない程度まで、参照することにより全体が援用される。
【0029】
本明細書で開示する態様は、天然ガスを液化する前の高圧圧縮及び高圧膨張プロセスの追加によるLNG生産のための液化プロセスに対して天然ガスを前処理及び予冷するプロセスについて述べる。圧縮され、膨張したガスの一部を用いて、供給ガスの前処理と関係がある1種以上のプロセスストリームを冷却する。より詳細には、本発明は、重質炭化水素が天然ガスストリームから除去されて、前処理天然ガスストリームを形成するプロセスを開示する。前処理天然ガスは、1,500psia(10,340kPa)超、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超の圧力まで圧縮される。この熱い圧縮ガスは、周囲環境と熱交換することによって冷却されて、圧縮前処理ガスを形成する。圧縮前処理ガスは、3,000psia(20,680kPa)未満の圧力、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)未満の圧力までほぼ等エントロピー的に膨張させられて第1のチルド前処理ガスを形成する。この場合、第1のチルド前処理ガスの圧力は、圧縮前処理ガスの圧力より低い。第1のチルド前処理ガスは、少なくとも1つの冷媒ストリームと非冷媒ストリームに分けられる。少なくとも1つの冷媒ストリームは、少なくとも1つの熱交換器へ方向づけられ、そこでそれが作用してプロセスストリームを冷却し、温められた冷媒ストリームを形成する。この温められた冷媒ストリームは、非冷媒ストリームと混合されて、第2のチルド前処理ガスを形成する。第2のチルド前処理ガスは、1つ以上のSMR液化トレインへ方向づけられることがあり、或いは第2のチルド前処理ガスは、1つ以上のエキスパンダベース液化トレインへ方向づけられることがあり、そこでガスはさらに冷却されてLNGを形成する。
【0030】
図2は、天然ガスストリーム201を前処理及び予冷した後、高圧圧縮及び膨張(HPCE)プロセスモジュール212が続く前処理装置200の実例である。天然ガスストリーム201は、スクラブカラム202等の分離デバイスに流入することができ、そこで天然ガスストリーム201はカラムオーバヘッドストリーム203とカラム下部ストリーム204に分けられる。カラムオーバヘッドストリーム203は、「コールドボックス」として知られる第1の熱交換器205を通って流れることができ、そこでカラムオーバヘッドストリーム203は、部分的に凝縮されて二相ストリーム206を形成する。二相ストリーム206は、別の分離デバイス、例えば分離器207に流入して、冷たい前処理ガスストリーム208及び液体ストリーム209を形成することができる。冷たい前処理ガスストリーム208は、第1の熱交換器205を通って流れることができ、そこで冷たい前処理ガスストリーム208は、カラムオーバヘッドストリーム203と間接的に熱交換することによって温められ、それによって前処理天然ガスストリーム210を形成し得る。液体ストリーム209は、ポンプ211内で加圧されてから、カラム還流ストリームとしてスクラブカラム202へ方向づけられ得る。
【0031】
HPCEプロセスモジュール212は、前処理天然ガスストリーム210を圧縮して中圧ガスストリーム214を形成する第1の圧縮機213を含むことができる。中圧ガスストリーム214は、第2の熱交換器215を通って流れることができ、そこで中圧ガスストリーム214は、周囲環境と間接的に熱交換することによって冷却されて、冷却された中圧ガスストリーム216を形成する。第2の熱交換器215は、空冷熱交換器又は水冷熱交換器であり得る。冷却された中圧ガスストリーム216は、次に第2の圧縮機217内で圧縮されて高圧ガスストリーム218を形成することができる。高圧ガスストリーム218の圧力は、1,500psia(10,340kPa)超、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超であり得る。高圧ガスストリーム218は、第3の熱交換器219を通って流れることができ、そこで高圧ガスストリーム218は、周囲環境と間接的に熱交換することによって冷却されて、冷却された高圧ガスストリーム220を形成する。第3の熱交換器219は空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。冷却された高圧ガスストリーム220は、次にエキスパンダ221内で膨張して第1のチルド前処理ガスストリーム222を形成することができる。第1のチルド前処理ガスストリーム222の圧力は3,000psia(20,680kPa)未満、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)未満であってよく、第1のチルド前処理ガスストリーム222の圧力は、冷却された高圧ガスストリーム220の圧力より低い。好ましい態様では、第2の圧縮機217は、破線223で示すように、エキスパンダ221により生成された軸動力だけで駆動され得る。第1のチルド前処理ガスストリーム222は、冷媒ストリーム224と非冷媒ストリーム225に分けられることがある。冷媒ストリーム224は、第1の熱交換器205を通って流れることができ、そこで冷媒ストリーム224は、カラムオーバヘッドストリーム203と間接的に熱交換することによって部分的に温められ、それによって温められた冷媒ストリーム226を形成する。温められた冷媒ストリーム226は、非冷媒ストリーム225と混ざり合って第2のチルド前処理ガスストリーム227を形成し得る。第2のチルド前処理ガスストリーム227は、次に例えば、SMR液化トレイン240内で、第4の熱交換器229のSMR冷媒ループ228との間接的熱交換によって液化され得る。結果として生じるLNGストリーム230は、次に、必要に応じて貯蔵及び/又は輸送され得る。
【0032】
冷媒ストリーム224を用いて、前処理装置200と関係があるプロセスストリームのいずれをも冷却(cool又はchill)し得ることに留意すべきである。例えば、カラムオーバヘッドストリーム203、二相ストリーム206、冷たい前処理ガスストリーム208、液体ストリーム209、及び前処理天然ガスストリーム210の1種以上が冷媒ストリーム224と熱交換するように構成され得る。さらに、前処理装置200と関係がない他のプロセスストリームを冷媒ストリーム224との熱交換によって冷却してよい。種々のプロセスストリームを冷却するために用いられる2つ以上のサブストリームに冷媒ストリーム224を分けてよい。
【0033】
ある態様では、SMR液化プロセスの上流にHPCEプロセスを追加することによってSMR液化プロセスを向上させることができる。より詳細には、この態様では、前処理天然ガスが1,500psia(10,340kPa)超、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超の圧力まで圧縮され得る。この熱い圧縮ガスは、次に周囲環境と熱交換することによって冷却されて、圧縮前処理ガスを形成する。圧縮前処理ガスは、次に3,000psia(20,680kPa)未満の圧力、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)未満の圧力までほぼ等エントロピー的に膨張させられて第1のチルド前処理ガスを形成し、この場合、第1のチルド前処理ガスの圧力は、圧縮前処理ガスの圧力より低い。第1のチルド前処理ガスストリームは、冷媒ストリームと非冷媒ストリームに分けられる。カラムオーバヘッドストリームを部分的に凝縮し、温められた冷媒ストリームを生成するのを助けるため、冷媒ストリームは、カラムオーバヘッドストリームと熱交換することによって温められる。温められた冷媒ストリームは、非冷媒ストリームと混合されて第2のチルド前処理ガスを生成する。第2のチルド前処理ガスは、次に、並列に配置された複数のSMR液化トレインへ方向づけられることがあり、そこでチルド前処理ガスは、その中でさらに冷却されてLNGを形成する。
【0034】
天然ガスの前処理を有するHPCEプロセスと複数のSMR液化トレイン内での液化との組み合わせは、天然ガスが重質炭化水素除去(最後の前処理ステップ)と液化の両方のために直接SMR液化トレインに送られる従来のSMRプロセスを超えるいくつかの利点を有する。例えば、HPCEプロセスを用いる天然ガスの予冷は、SMR液化トレイン内の所与の馬力のためSMR液化トレイン内のLNG生産率上昇を可能にする。図3及び4は、開示態様が該LNG生産率上昇をどのにようにして実現するかを実証する。図3は、既知原理に従うLNG生産設備、例えばFLNGユニット300における液化モジュール又はトレイン、例えばSMR液化トレインの配列の実例である。酸性ガス及び水を除去して極低温処理に適した天然ガスを作り出すために前処理される天然ガスストリーム302は、並列に配置された5つの同一又はほぼ同一のSMR液化トレイン304、306、308、310、312間に分配され得る。例として、各SMR液化トレインは、ガスタービン又は電動機(図示せず)のどちらかから約50メガワット(MW)の圧縮力を受け取って、それぞれのSMR液化トレインの圧縮機を駆動することができる。各SMR液化モジュールは、天然ガスストリームから重質炭化水素を除去し、冷媒組成を形成するのに十分な量の天然ガス液を回収するための統合スクラブカラムを備える。各SMR液化モジュールは、FLNGユニット300全体で約7.5MTAの総ストリーム生産のため年間約150万トン(MTA)のLNGを生産することができる。
【0035】
対照的に、図4は、開示態様に従うLNG液化設備、例えばFLNGユニット400を概略的に示す。FLNGユニット400は並列に配置された4つのSMR液化トレイン406、408、410、412を含む。図3に示すSMR液化トレインとは異なってSMR液化トレイン406、408、410、412のどれもスクラブカラムを含まない。代わりに、酸性ガス及び水を除去して極低温処理に適したガスを作り出すために前処理される天然ガスストリーム402はHPCEモジュール404へ方向づけられて、チルド前処理ガスストリーム405を生成することができる。前述したように、HPCEモジュールは、その(スクラブカラム又は類似分離器を含む)中で重質炭化水素除去プロセスと統合されて、天然ガスストリーム402の液化中に固体を形成し得るいずれの炭化水素をも除去することができる。HPCEモジュール404は、例えば、ガスタービン又は電動機(図示せず)のどちらかから約55MWの圧縮力を受け取って、HPCEモジュール404内の1つ以上の圧縮機を駆動することができる。チルド前処理ガスストリーム405は、SMR液化モジュール406、408、410、412間に分配され得る。各SMR液化モジュールは、ガスタービン又は電動機(図示せず)のどちらかから約50MWの圧縮力を受け取って、それぞれのSMR液化モジュールの圧縮機を駆動することができる。各SMR液化モジュールは、FLNGユニット400について約7.6MTAのLNGの総生産量のために約1.9MTAのLNGを生産することができる。FLNGユニット400が、単一スクラブカラム及びコールドボックスと統合された開示HPCEプロセスモジュール(HPCEプロセスモジュール404と総称する)を使用する場合、天然ガスストリーム402から重質炭化水素を除去するために単一スクラブカラムが必要なだけである。1つのSMR液化トレインを開示HPCEモジュール404に置き換えると、HPCEモジュールは、置き換えられたSMR液化トレインより小さく、軽く、かつかなり低コストであると予想されるので有利である。置き換えられたSMR液化トレインと同様に、HPCEモジュール404は、同等サイズのガスタービンを有して圧縮力を与えることができ、同等量の空気又は水の冷却器を有することにもなる。しかしながら、置き換えられたSMR液化トレインとは異なって、HPCEモジュール404は高価な主要極低温熱交換器を持たない。置き換えられたHPCE液化トレインでは、SMRモジュール内の冷媒の流れと関連する容器及びパイプは排除される。さらに、HPCEモジュール404内の高価な極低温パイプの量はかなり削減される。
【0036】
開示HPCEモジュールは、天然ガスから重質炭化水素を除去してから全ての液化トレインに天然ガスを供給するために用いる単一のスクラブカラムを備える。このデザインは、重質炭化水素除去が含まれないデザインに比べてHPCEモジュールの所要力が10~15%増加する。しかしながら、各SMR液化トレイン内に代えて、HPCEモジュール内に重質炭化水素除去を統合すると、各SMR液化トレインのウェイトを減らし、FLNGシステムの機器数及び全体的な上側のウェイトの総合的減少をもたらし得る。別の利点は、液化圧力が、供給ガスのクリコンデンバールを超えることができ、液化効率上昇をもたらす。さらに、提案デザインは、供給ガスの変化に対して統合スクラブカラムデザインよりフレキシブルである。
開示HPCEモジュールの別の利点は、SMR液化トレイン数が1つ減ったので冷媒の所要貯蔵が減少することである。また、ガスの温かい温度の冷却の大部分がHPCEモジュール内で起こるので、混合冷媒の重質炭化水素成分を減らすことができる。例えば、混合冷媒のプロパン成分は、SMR液化プロセスの効率の如何なる有意な低下もなく排除され得る。
別の利点は、開示HPCEモジュールからチルド前処理ガスを受け取るSMR液化プロセスでは、SMR液化プロセスの気化冷媒の体積流量は、温かい前処理ガスを受け取る従来のSMR液化プロセスのものより25%超少ない可能性がある。冷媒のより少ない体積流量は、主要極低温熱交換器のサイズ及び低圧混合冷媒圧縮機のサイズを縮小することができる。冷媒のより少ない体積流量は、従来のSMR液化プロセスのものに比べてより高いその気化圧力が原因である。
【0037】
既知のプロパン予冷混合冷凍プロセス及び二重混合冷凍(DMR)プロセスは、予冷冷凍回路と組み合わせたSMR液化プロセスの異形と見なすことができるが、該プロセスと本開示の態様との間には有意な差異がある。例えば、既知プロセスは、カスケードプロパン冷凍回路又はウォームエンド混合冷媒を用いてガスを予冷する。これらの既知プロセスは両方ともSMR液化プロセスより5%~15%高い効率をもたらすという利点を有する。さらに、これらの既知プロセスを利用する単一液化トレインの能力は、単一SMR液化トレインの能力よりかなり高い可能性がある。しかしながら、これらの技術の予冷冷凍回路は、追加冷媒及び相当量の外部機器が導入されるので、液化プロセスに複雑さが加味されるという犠牲を払うことになる。例えば、より高い複雑さ及びウェイトというDMR液化プロセスの欠点は、FLNG用途のためにDMR液化プロセスかSMR液化プロセスのどちらかに決めるときにより高い効率及び能力というその利点を上回る可能性がある。既知プロセスは、単一液化トレインに対するより高い熱効率及びより高いLNG生産能力の必要性によって主に推進されるので、SMR液化プロセスの上流に予冷プロセスを追加することが検討された。SMR液化プロセスと組み合わせた開示HPCEプロセスは、冷媒ベースの予冷プロセスが与えるより高い熱効率を与えないので、以前は実現されなかった。本明細書で述べるように、SMR液化を伴うHPCEプロセスの熱効率は、独立型SMR液化プロセスとほぼ同じである。開示態様は、これまでは陸上LNG用途に適した予冷プロセスの追加のための最大動因であった熱効率を高めるのではなくむしろ液化プロセスのウェイト及び複雑さを減じることを目指す予冷プロセスというその詳細に少なくとも一部は基づいているので新規であると考えられる。追加点として、統合スクラブカラムデザインは、液化への天然ガスの重質炭化水素除去のための最低コストの選択肢と伝統的に考えられている。しかしながら、本明細書で開示するように、重質炭化水素除去とHPCEプロセスの統合は、複数の液化トレインが好ましい設計方法論であるときに総合的な機器数及びウェイトを減らす可能性があるという以前は実現されなかった利点をもたらす。FLNGのより新しい用途及び遠隔陸上用途では、液化プロセスのフットプリント、ウェイト、及び複雑さが、プロジェクトコストの大きい動因である可能性がある。従って、開示態様は特に価値がある。
【0038】
ある態様では、エキスパンダベース液化プロセスはエキスパンダベースプロセスの上流にHPCEプロセスを追加することで向上し得る。より詳細には、この態様では、前処理天然ガスストリームが、1,500psia(10,340kPa)超、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超の圧力まで圧縮され得る。この熱い圧縮ガスは、次に周囲環境と熱交換することによって冷却されて、圧縮前処理ガスを形成し得る。圧縮前処理ガスは、3,000psia(20,680kPa)未満、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)未満の圧力までほぼ等エントロピー的に膨張させられて第1のチルド前処理ガスを形成することができ、この場合第1のチルド前処理ガスの圧力は、圧縮前処理ガスの圧力より低い。第1のチルド前処理ガスストリームは、冷媒ストリームと非冷媒ストリームに分けられる。冷媒ストリームは、カラムオーバヘッドストリームを部分的に凝縮し、温められた冷媒ストリームを生成するのに役立つようにカラムオーバヘッドストリームと熱交換することによって温められる。温められた冷媒ストリームは、非冷媒ストリームと混合されて第2のチルド前処理ガスを生成する。第2のチルド前処理ガスは、エキスパンダベースプロセスへ方向づけられ、そこでガスはさらに冷却されてLNGを形成する。好ましい態様では、第2のチルド前処理ガスは、供給ガスエキスパンダベースプロセスへ方向づけられることがある。
【0039】
図5は、エキスパンダベース液化プロセスに典型的な温度冷却曲線500を示す。より高い温度曲線502は、天然ガスストリームの温度曲線である。より低い温度曲線504は、冷たい冷却ストリームと温かい冷却ストリームの複合温度曲線である。天然ガスは、天然ガス冷却曲線(502で示す)と、冷たい冷却ストリーム及び温かい冷却ストリームの複合温度曲線(504で示す)との密接なマッチングを可能にするそのクリコンデンバールより高い圧力で液化されて、熱効率を最大にする。図示するように、冷却曲線は、3つの温度ピンチポイント506、508、及び510を特徴とする。各ピンチポイントは冷却ストリームの混合熱容量が天然ガスストリームの熱容量より少ない、熱交換器内の位置である。このストリーム間の熱容量の不均衡が、有効な熱伝達率を与える最小限に許容できる温度差まで冷却ストリーム間の温度差を小さくすることになる。最低温度のピンチポイント506は、2つの冷却ストリームのより冷たいストリーム、典型的には冷たい冷却ストリームが熱交換器に入るところで生じる。中間温度のピンチポイント508は、第2の冷却ストリーム、典型的には温かい冷却ストリームが熱交換器に入るところで生じる。温かい温度のピンチポイント510は、冷たい冷却ストリーム及び温かい冷却ストリームが熱交換器から出るところで生じる。温かい温度のピンチポイント510は、より温かい冷却ストリームに対して高質量流量の必要性をもたらし、引き続きエキスパンダベースプロセスの動力要求を増やす。
【0040】
温かい温度のピンチポイント510を排除するために提案された1つの方法は、供給ガスを外部冷凍システム、例えばプロパン冷却システム又は二酸化炭素冷却システムで予冷することである。例えば、米国特許第7,386,996号は、カスケード配列の二酸化炭素冷凍回路を含む予冷冷凍プロセスを使用することによって温かい温度のピンチポイントを排除している。この外部予冷冷凍システムは、追加の冷媒システムが全てのその関連機器と共に導入されるので、液化プロセスの複雑さをかなり増大させるという欠点を有する。本明細書に開示する態様は、供給ガスを1,500psia(10,340kPa)超の圧力まで圧縮し、この圧縮供給ガスストリームを冷却し、圧縮ガスストリームを2,000psia(20,690kPa)未満の圧力まで膨張させることによって供給ガスストリームを予冷することで、温かい温度のピンチポイント510の影響を小さくする。この場合、供給ガスストリームの膨張圧力は、供給ガスストリームの圧縮圧力より小さい。この供給ガスストリームを冷却するというプロセスは、エキスパンダベースプロセス冷却ストリームの所要の質量流量の顕著な減少をもたらす。このプロセスは、機器数を著しく増やすことなく、かつ外部冷媒を追加せずに、エキスパンダベースプロセスの熱力学的効率をも改善する。このプロセスは、液化プロセスの上流で重質炭化水素を除去するために重質炭化水素除去と統合してもよい。ガスは、固体を形成するであろう重質炭化水素を今や含まないので、液化効率を改善するために前処理ガスをそのクリコンデンバールより高い圧力で液化することができる。
【0041】
好ましい態様では、エキスパンダベースプロセスは、供給ガスエキスパンダベースプロセスであってよい。この供給ガスエキスパンダプロセスは、第1の閉じたエキスパンダベース冷凍ループ及び第2の閉じたエキスパンダベース冷凍ループを含む。第1のエキスパンダベース冷凍ループは、主に供給ガスストリームからのメタンで充填可能である。第1のエキスパンダベース冷凍ループは供給ガスストリームを液化する。第2のエキスパンダベース冷凍ループは、冷媒としての窒素で充填可能である、第2のエキスパンダベース冷凍ループはLNGストリームを過冷却する。詳細には、生成天然ガスストリームは、存在する場合、水、及び酸性ガス等の不純物を除去して極低温処理に適した天然ガスを作り出すために処理することができる。処理天然ガスストリームをスクラブカラムに方向づけることができ、そこで処理天然ガスストリームはカラムオーバヘッドストリームとカラム下部ストリームに分けられる。カラムオーバヘッドストリームは、第1の熱交換器内で冷たい前処理ガスストリーム及び冷媒ストリームと間接的に熱交換することによって部分的に凝縮され、それによって二相ストリームを形成する。二相ストリームを分離器へ方向づけることができ、そこで二相ストリームは冷たい前処理ガスストリームと液体ストリームに分けられる。冷たい前処理ガスストリームは、第1の熱交換器内でカラムオーバヘッドストリームと熱交換することによって温められて前処理天然ガスストリームを形成することができる。液体ストリームは、ポンプ内で加圧されてからスクラブカラムへ方向づけられてスクラブカラムに還流をもたらすことができる。前処理天然ガスストリームは、本明細書に開示するHPCEプロセスへ方向づけることができ、そこでそれは1,500psia(10,340kPa)超、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超の圧力まで圧縮される。この熱い圧縮ガスストリームは、次に周囲環境と熱交換することによって冷却されて、圧縮された処理天然ガスストリームを形成することができる。圧縮された処理天然ガスストリームは、3,000psia(20,680kPa)未満の圧力、さらに好ましくは2,000psia(12,790kPa)未満の圧力までほぼ等エントロピー的に膨張させられて第1のチルド処理天然ガスストリームを形成することができ、この場合第1のチルド処理天然ガスストリームの圧力は、圧縮された処理天然ガスストリームの圧力より低い。第1のチルド天然ガスストリームは、冷媒ストリームと非冷媒ストリームに分離され得る。冷媒ストリームは、第1の熱交換器内でカラムオーバヘッドストリームと熱交換することによって部分的に温められて、温められた冷媒ストリームを形成することができる。温められた冷媒ストリームは、非冷媒ストリームと混ざり合って第2のチルド天然ガスストリームを形成することができる。第2のチルド処理天然ガスは、供給ガスエキスパンダプロセスへ方向づけることができ、そこで第1のエキスパンダベース冷凍ループが作用して第2のチルド処理天然ガスを液化して加圧LNGストリームを形成する。次に第2のエキスパンダ冷凍ループが作用して、加圧LNGストリームを過冷却する。この過冷却された加圧LNGストリームを今度はより低い温度まで膨張させてLNGストリームを形成することができる。
【0042】
天然ガスの前処理を有するHPCEプロセスとエキスパンダベースプロセス内の前処理ガスの液化との組み合わせは、従来のエキスパンダベースプロセスに勝るいくつかの利点を有する。HPCEプロセスをそれと共に含めると、エキスパンダベースプロセスの効率を、利用するエキスパンダベースプロセスのタイプに応じて5~25%高めることができる。本明細書に記載の供給ガスエキスパンダプロセスは、SMRプロセスの液化効率と同様の液化効率を有しながら、それでも外部冷媒を使用せず、操作が容易で、機器数低減という利点を与えることができる。さらに、冷媒流量及び再循環圧縮機のサイズは、HPCEプロセスと組み合わせたエキスパンダベースプロセスにとっては非常に小さいと予想される。これらの理由から、開示態様に従う単一液化トレインの生産能力は、同様サイズの従来のエキスパンダベース液化プロセスの生産能力より30~50%高い可能性がある。HPCEプロセスとエキスパンダベース液化プロセスの上流の重質炭化水素除去の組み合わせは、ガスをそのクリコンデンバールより高い圧力で液化して液化効率を改善する選択肢を提供するというさらなる利点を有する。エキスパンダベース液化プロセスは、特に液化圧力に敏感である。従って、本明細書に記載のHPCEプロセスは、重質炭化水素を除去するために良く適合しながら、エキスパンダベース液化プロセスの液化効率及び生産能力をも高める。
【0043】
図6は、本開示の別の態様に従う統合スクラブカラムを有するHPCEモジュール600の態様の実例である。極低温処理に適したガスを作り出すために前処理されて酸性ガス及び水が除去された天然ガスストリーム601が、分離デバイス、例えばスクラブカラム602に流入され、そこで天然ガスストリーム601は、カラムオーバヘッドストリーム603とカラム下部ストリーム604に分けられる。カラムオーバヘッドストリーム603は、第1の熱交換器605を通って流れることができ、そこでカラムオーバヘッドストリーム603は、部分的に凝縮されて二相ストリーム606を形成する。二相ストリーム606は、別の分離デバイス、例えば分離器607に方向づけられて、冷たい前処理ガスストリーム608及び液体ストリーム609を形成し得る。冷たい前処理ガスストリーム608は、第1の熱交換器605を通って流れることができ、そこで冷たい前処理ガスストリーム608は、カラムオーバヘッドストリーム603との間接的熱交換によって温められ、それから前処理天然ガスストリーム610が形成される。液体ストリームは、ポンプ611内で加圧されてからカラム還流ストリームとしてスクラブカラム602へ方向づけられることがある。前処理天然ガスストリーム610は、第1の圧縮機612へ方向づけられ、その中で圧縮されて第1の中圧ガスストリーム613を形成する。第1の中圧ガスストリーム613は第2の熱交換器614を通って流れることができ、そこで第1の中圧ガスストリーム613は、周囲環境との間接的熱交換によって冷却されて、冷却された第1の中圧ガスストリーム615を形成する。第2の熱交換器614は、空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。冷却された第1の中圧ガスストリーム615は、次に第2の圧縮機616内で圧縮されて第2の中圧ガスストリーム617を形成し得る。第2の中圧ガスストリーム617は、第3の熱交換器618を通って流れることができ、そこで第2の中圧ガスストリーム617は、周囲環境との間接的熱交換によって冷却されて、冷却された第2の中圧ガスストリーム619を形成する。第3の熱交換器618は空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。冷却された第2の中圧ガスストリーム619は、次に第3の圧縮機620内で圧縮されて高圧ガスストリーム621を形成し得る。高圧ガスストリーム621の圧力は1,500psia(10,340kPa)超、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超であってよい。高圧ガスストリーム621は、第4の熱交換器622を通って流れることができ、そこで高圧ガスストリーム621は、周囲環境と間接的に熱交換することによって冷却されて、冷却された高圧ガスストリーム623を形成する。第4の熱交換器622は、空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。冷却された高圧ガスストリーム623は、次にエキスパンダ624内で膨張させられて第1のチルド前処理ガスストリーム625を形成する。第1のチルド前処理ガスストリーム625の圧力は、3,000psia(20,680kPa)未満、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)未満であってよく、第1のチルド前処理ガスストリーム625の圧力は、冷却された高圧ガスストリーム623の圧力より低くてよい。ある態様では、第3の圧縮機620は、線624aで示すように、エキスパンダ624により生じた軸動力のみで駆動され得る。第1のチルド前処理ガスストリーム625は、冷媒ストリーム626と非冷媒ストリーム627に分離され得る。冷媒ストリーム626は、第1の熱交換器605を通って流れることができ、そこで冷媒ストリーム626は、カラムオーバヘッドストリーム603と間接的に熱交換することによって部分的に温められて、それから温められた冷媒ストリーム628が形成される。温められた冷媒ストリーム628は、非冷媒ストリーム627と混ざり合って第2のチルド前処理ガスストリーム629を形成することができ、これは、以前に説明したようにSMR液化プロセスによって液化され得る。前処理装置200と同様に、冷媒ストリーム626を用いて、HPCEモジュール600と関係があるか又は関係がないいずれのプロセスストリームをも冷却することができる。
【0044】
図7は、開示態様に従って、統合スクラブカラムを備え、かつ供給ガスエキスパンダベースLNG液化プロセスと組み合わせたHPCEモジュール700の実例である。極低温処理に適したガスを作り出すために前処理されて酸性ガス及び水が除去された天然ガスストリーム701は、分離デバイス、例えばスクラブカラム702に供給され、そこで処理天然ガスストリーム701は、カラムオーバヘッドストリーム703とカラム下部ストリーム704に分けられる。カラムオーバヘッドストリーム703は、第1の熱交換器705を通って流れることができ、そこでカラムオーバヘッドストリーム703は、部分的に凝縮されて二相ストリーム706を形成する。二相ストリーム706は、別の分離デバイス、例えば分離器707に方向づけられて、冷たい前処理ガスストリーム708及び液体ストリーム709を形成し得る。冷たい前処理ガスストリーム708は、第1の熱交換器705を通って流れることができ、そこで冷たい前処理ガスストリーム708は、カラムオーバヘッドストリーム703との間接的熱交換によって温められて、それから前処理天然ガスストリーム710が形成される。液体ストリーム709は、ポンプ711内で加圧されてからカラム環流ストリームとしてスクラブカラム702へ方向づけられ得る。前処理天然ガスストリーム710は、第1の圧縮機713へ方向づけられ、その中で圧縮されて中圧ガスストリーム714を形成する。中圧ガスストリーム714は、第2の熱交換器715を通って流れることができ、そこで中圧ガスストリーム714は周囲環境との間接的熱交換によって冷却されて、冷却された中圧ガスストリーム716を形成する。第2の熱交換器715は、空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。冷却された中圧ガスストリーム716は、次に第2の圧縮機717内で圧縮されて高圧ガスストリーム718を形成し得る。高圧ガスストリーム718の圧力は、1,500psia(10,340kPa)超、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超であり得る。高圧ガスストリーム718は、第3の熱交換器719を通って流れることができ、そこで高圧ガスストリーム718は、周囲環境との間接的熱交換によって冷却されて、冷却された高圧ガスストリーム720を形成する。第3の熱交換器719は、空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。冷却された高圧ガスストリーム720は、次にエキスパンダ721内で膨張させられて第1のチルド前処理ガスストリーム722を形成することができる。第1のチルド前処理ガスストリーム722の圧力は3,000psia(20,680kPa)未満、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)未満であり、第1のチルド前処理ガスストリーム722の圧力は、冷却された高圧ガスストリーム720の圧力より低い。ある態様では、第2の圧縮機717は、破線723で示すように、エキスパンダ721により生成された軸動力だけで駆動され得る。第1のチルド前処理ガスストリーム722は冷媒ストリーム724と非冷媒ストリーム725に分離され得る。冷媒ストリーム724は、第1の熱交換器705を通って流れることができ、そこで冷媒ストリーム724は、カラムオーバヘッドストリーム703との間接的熱交換によって部分的に温められて、それから温められた冷媒ストリーム726が形成される。温められた冷媒ストリーム726は非冷媒ストリーム725と混ざり合って第2のチルド前処理ガスストリーム727を形成し得る。前処理装置200及びHPCEモジュール600と同様に、冷媒ストリーム724を用いて、HPCEモジュール700と関係があるか又は関係がないいずれのプロセスストリームをも冷却することができる。
【0045】
図7に示すように、第2のチルド前処理ガスストリーム727は、供給ガスエキスパンダベースLNG液化プロセス730へ方向づけられる。供給ガスエキスパンダベースプロセス730は、主冷却ループ732を含み、これは供給ガスストリームからの成分で充填され得る閉じたエキスパンダベース冷凍ループである。液化システムは過冷却ループ734をも含み、これは好ましくは過冷却冷媒として窒素で充填される閉じたエキスパンダベース冷凍ループである。主冷却ループ732内では、膨張し、冷却された冷媒ストリーム736が第1の熱交換器ゾーン738へ方向づけられ、そこでそれは第2のチルド前処理ガスストリーム727と熱交換して第1の温かい冷媒ストリーム740を形成する。第1の温かい冷媒740は、第2の熱交換器ゾーン742へ方向づけられ、そこでそれは、圧縮され、冷却された冷媒ストリーム744と熱交換して、圧縮され、冷却された冷媒ストリーム744をさらに冷却し、第2の温かい冷媒ストリーム746及び圧縮され、さらに冷却された冷媒ストリーム748を形成する。第2の熱交換器ゾーン742は、1つ以上の熱交換器を含んでよく、1つ以上の熱交換器は、プリント回路熱交換器タイプ、シェルアンドチューブ熱交換器タイプ、又はその組み合わせであってよい。第2の熱交換器ゾーン742内の熱交換器タイプは、1,500psia(10,340kPa)超の設計圧力、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)超の設計圧力、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超の設計圧力を有してよい。
【0046】
第2の温かい冷媒ストリーム746は、1つ以上の圧縮ユニット750、752内で1,500psia(10,340kPa)超の圧力まで、さらに好ましくは約3,000psia(20,680kPa)の圧力まで圧縮され、それによって圧縮された冷媒ストリーム754を形成する。圧縮された冷媒ストリーム754は、次に冷却器756内で周囲冷却媒体(空気又は水)に接触して冷却されて、圧縮され、冷却された冷媒ストリーム744を生成する。圧縮され、さらに冷却された冷媒ストリーム748は、エキスパンダ758内でほぼ等エントロピー的に膨張させられて、膨張し、冷却された冷媒ストリーム736を生成する。エキスパンダ758は、引き出され、圧縮のために使用し得るワークを作り出すワーク膨張デバイス、例えばガスエキスパンダであってよい。
【0047】
第1の熱交換器ゾーン738は、複数の熱交換器デバイスを含んでよく、図7に示す態様では、第1の熱交換器ゾーンは、主熱交換器760及び過冷却熱交換器762を含む。これらの熱交換器は、アルミろう付け熱交換器タイプ、プレートフィン熱交換器タイプ、スパイラル巻き熱交換器タイプ、又はその組み合わせであってよい。
過冷却ループ734内では、膨張した過冷却冷媒ストリーム764(好ましくは窒素を含む)が、エキスパンダ766から放出され、過冷却熱交換器762及び主熱交換器760を通って取り出される。膨張した過冷却冷媒ストリーム764は、次に圧縮ユニット768に送られ、そこでそれは、より高い圧力まで再圧縮され、温められる。圧縮ユニット768から出た後、結果として生じる再圧縮された過冷却冷媒ストリーム770は、冷却器772内で冷却される。冷却後、再圧縮された過冷却冷媒ストリーム770は、主熱交換器760に通され、そこでそれは、膨張し、冷却された冷媒ストリーム736及び膨張した過冷却冷媒ストリーム764との間接的熱交換によってさらに冷却される。第1の熱交換器領域738から出た後、再圧縮され、冷却された過冷却冷媒ストリームは、エキスパンダ766を通って膨張させられて、膨張した過冷却冷媒ストリーム764を形成し、これは、本明細書に記載どおりに第1の熱交換器ゾーンを通って再循環される。このようにして、第2のチルド前処理ガスストリーム727は、第1の熱交換器ゾーン738内でさらに冷却され、液化され、過冷却されて、過冷却されたガスストリーム774を生成する。過冷却されたガスストリーム774は、より低い圧力まで膨張させられてLNGストリーム(図示せず)を生成し得る。
【0048】
図8は、開示態様に従ってLNGを生産する方法800を示す。ブロック802で、重質炭化水素が天然ガスストリームから除去され、それによって分離天然ガスストリームが生成される。ブロック804で、分離天然ガスストリームが第1の熱交換器内で部分的に凝縮され、それによって部分的に凝縮された天然ガスストリームを生成する。ブロック806で、部分的に凝縮された天然ガスストリームから液体が分離され、それによって前処理天然ガスストリームを生成される。ブロック808で、前処理天然ガスストリームが少なくとも2つの直列に配置された圧縮機内で少なくとも1,500psia(10,340kPa)の圧力まで圧縮されて、圧縮天然ガスストリームを形成する。ブロック810で、圧縮天然ガスストリームが冷却されて、冷却された圧縮天然ガスストリームを形成する。ブロック812で、冷却された天然ガスストリームが、2,000psia(13,790kPa)未満であり、かつ少なくとも2つの直列に配置された圧縮機が前処理天然ガスストリームを圧縮する圧力以下である圧力まで膨張させられ、それによってチルド天然ガスストリームを形成する。ブロック814で、チルド天然ガスストリームが冷媒ストリームと非冷媒ストリームに分けられる。ブロック816で、冷媒ストリームが、天然ガスストリーム、分離天然ガスストリーム、部分的に凝縮された天然ガスストリーム、及び前処理天然ガスストリームを含む1以上のプロセスストリームとの熱交換によって温められ、それによって温められた冷媒ストリームを生成する。ブロック818で、この温められた冷媒ストリーム及び非冷媒ストリームが液化される。
【0049】
図9は、開示態様に従ってLNGを生産する方法900を示す。ブロック902で、天然ガスストリームが前処理されて前処理天然ガスストリームを生成する。ブロック904で、前処理天然ガスストリームが、少なくとも2つの直列に配置された圧縮機内で少なくとも1,500psia(10,340kPa)の圧力まで圧縮される。ブロック906で、この圧縮天然ガスストリームが冷却される。ブロック908で、この冷却された圧縮天然ガスストリームは、少なくとも1つのワーク生成天然ガスエキスパンダ内で、2,000psia(13,790kPa)未満であり、かつ少なくとも2つの直列に配置された圧縮機が前処理天然ガスストリームを圧縮する圧力以下である圧力まで膨張させられ、それによってチルド天然ガスストリームを形成する。ブロック910で、このチルド天然ガスストリームは、冷媒ストリームと非冷媒ストリームに分けられる。ブロック912で、冷媒ストリームは、熱交換器内で、天然ガスストリームの前処理と関係がある1以上のプロセスストリームとの熱交換によって温められ、それによって温められた冷媒ストリームを生成する。ブロック914で、この温められた冷媒ストリーム及び非冷媒ストリームが液化される。
【0050】
図11は、本開示の別の態様に従って、天然ガスストリーム1102を前処理及び予冷し、その後に高圧圧縮及び膨張(HPCE)プロセスモジュール1150が続く前処理装置1100を示す。天然ガスストリーム1102のサイドストリーム1104は、第1の熱交換器1106へ方向づけられて、その中で冷却され、冷却された天然ガスストリーム1108を形成することができる。この冷却された天然ガスストリーム1108は、天然ガスストリーム1102と混ぜ合わせられて、混合天然ガスストリーム1110を生成する。サイドストリームは、1%~100%、又は10%~90%、又は25%~75%、又は40%~60%の天然ガスストリーム1102を含むことがあり、天然ガスストリーム1102の温度及び混合天然ガスストリーム1110の、混合天然ガスストリームが方向づけられるスクラブカラム1112への所望投入温度によって決まる。スクラブカラム1112の内部では、混合天然ガスストリーム1110がカラムオーバヘッドストリーム1114(分離天然ガスストリームと呼ぶことがある)とカラム下部ストリーム1116に分けられる。このカラム下部ストリーム1116は、安定化装置1118へ方向づけられる。安定化装置1118は、カラム下部ストリーム1116から軽質炭化水素を除去し、それによってカラム下部ストリーム1116は、安定化装置オーバヘッドストリーム1120と安定化炭化水素液体ストリーム1122に分離される。この安定化炭化水素液体ストリーム1122は、通常の貯蔵条件で安定性を示し、安定化凝縮物として売却可能である。安定化装置オーバヘッドストリーム1120は、還流冷却器1124内で冷却され、還流分離器1126へ方向づけられ、そこで還流液体ストリーム1128とガス生成物ストリーム1130に分離される。このガス生成物ストリーム1130は、燃料ガスとして使用するか、又は液化ユニット内でエンドフラッシュガス(図示せず)を用いて液化してよい。或いは、ガス生成物ストリーム1130の一部又は全てを圧縮してから、ライン1131を利用して前処理天然ガスストリーム1140と混ぜ合わせてもよい。これについては本明細書でさらに述べる。還流液体ストリーム1128は、ポンプ1132で汲み出して安定化装置1118に戻してよく、そこでそれは、安定化装置内の上向流ガスからのいずれの重質炭化水素をも洗い流す働きをする。スクラブカラム用のストリッピングガスストリーム1134は、天然ガスストリーム1102から供給してよく;或いは、リボイラー(図示せず)を用いてスクラブカラム用のストリッピングガスを供給してもよい。
【0051】
カラムオーバヘッドストリーム1114は、第1の熱交換器1106を通って流れ、それによって前処理天然ガスストリーム1140を形成する。第1の熱交換器1106を通って流れる前に、ジュール・トムソン弁1142等の圧力低減デバイスを用いてカラムオーバヘッドストリーム1114の圧力及び温度を下げてよい。前処理天然ガスストリーム1140は、一態様では高圧圧縮及び膨張(HPCE)プロセスモジュール1150を含み得る圧縮及び冷却ユニットに送られる。HPCEプロセスモジュール1150は、前処理天然ガスストリーム1140を圧縮して中圧ガスストリーム1154を形成する第1の圧縮機1152を含んでよい。中圧ガスストリーム1154は、第2の熱交換器(図示せず)を通って流れることができ、そこで中圧ガスストリーム1154は周囲環境と間接的に熱交換することによって冷却される。第2の熱交換器は空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。中圧ガスストリーム1154は、次に第2の圧縮機1156内で圧縮されて高圧ガスストリーム1158を形成し得る。高圧ガスストリーム1158の圧力は1,500psia(10,340kPa)超、さらに好ましくは3,000psia(20,680kPa)超であり得る。高圧ガスストリーム1158は、第3の熱交換器1160を通って流れることができ、そこで高圧ガスストリーム1158は周囲環境と間接的に熱交換することによって冷却され、それによって冷却された高圧ガスストリーム1162を形成する。第3の熱交換器1160は空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。冷却された高圧ガスストリーム1162は、次にエキスパンダ1164内で膨張させられてチルド前処理ガスストリーム1166を形成し得る。本明細書ではチルド前処理ガスストリーム1166を冷却された前処理ガスストリームと称することもある。チルド前処理ガスストリーム1166の圧力は、3,000psia(20,680kPa)未満、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)未満であってよく、かつチルド前処理ガスストリーム1166の圧力は、冷却された高圧ガスストリーム1162の圧力より低い。好ましい態様では、エキスパンダ1164により生成された軸動力だけで第2の圧縮機1156を駆動してよい。HPCEプロセスモジュール1150が1つの圧縮機のみを含む態様を含めた他の開示態様では、エキスパンダ1164を発電機(図示せず)に接続して動力を発生させてもよい。
【0052】
チルド前処理ガスストリームの一部は、再循環ストリーム1168として第1の熱交換器1106に方向づけられ、そこでそれとサイドストリーム1104は、カラムオーバヘッドストリーム1114及び/又はガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1176によって後述するように冷却される。結果として生じる冷却された再循環ストリーム1170は、ジュール・トムソン弁1172等の圧力及び温度低減デバイスを通り抜け、分離器ドラム1174へ方向づけられる。分離器ドラムは、冷却された再循環ストリーム1170をガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1176とスクラブカラム還流ストリーム1178に分ける。ガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1176をカラムオーバヘッドストリーム1114(すなわち、第1の熱交換器の上流)と混ぜ合わせてよい。或いは、ガス状分離器ドラムオーバヘッドストリームがカラムオーバヘッドストリームからの分離ストリームとして第1の熱交換器を通り抜けるように、ガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1176を前処理天然ガスストリーム1140(すなわち第1の熱交換器の下流)と混ぜ合わせてよい。この代替シナリオは、混ざり合った2つのストリームを第1の熱交換器に通すことがシステムの複雑さを減じながら、第1の熱交換器内の冷却曲線のマッチングのフレキシビリティを高めることができる。スクラブカラム還流ストリーム1178は、スクラブカラム1112の上部に方向づけられ、そこでそれはスクラブカラム内で重質炭化水素を液化及び分離するのに十分な冷却をもたらす。チルド前処理ガスストリーム1166の残りは、好ましい態様では天然ガス液化モジュール1180であるさらなる処理へ方向づけられる。液化モジュール1180は、いずれのタイプの液化技術をも、例えば単一混合冷媒(SMR)、二元混合冷媒(DMR)、窒素及び/若しくはメタンを用いるエキスパンダベース技術、又は他の液化技術を利用することができる。該液化技術は開示態様の範囲内にあると考えられる。
【0053】
図12は、本開示の別の態様に従って天然ガスストリーム1202を前処理及び予冷するための前処理装置1200を示す。弁1203(又は別の圧力低減デバイス、例えばエキスパンダ)は天然ガスストリームの温度及び圧力を下げる。天然ガスストリームは、第1の熱交換器1206へ方向づけられ、その中で冷却され、それによって冷却された天然ガスストリーム1208を形成する。この冷却された天然ガスストリーム1208はスクラブカラム1212へ方向づけられる。スクラブカラム1212内部では、冷却された天然ガスストリーム1208は、カラムオーバヘッドストリーム1214(分離天然ガスストリームと称することもある)及びカラム下部ストリーム1216に分けられる。カラム下部ストリーム1216は、安定化装置1218へ方向づけられる。安定化装置1218は、軽質炭化水素をカラム下部ストリーム1216から除去し、それによってカラム下部ストリーム1216は、安定化装置オーバヘッドストリーム1220と安定化炭化水素液体ストリーム1222に分離される。安定化炭化水素液体ストリーム1222は、通常の貯蔵条件で安定性を示し、安定化凝縮物として売却可能である。安定化装置オーバヘッドストリーム1220は、還流冷却器1224内で冷却され、還流分離器1226へ方向づけられ、そこでそれは還流液体ストリーム1228とガス生成物ストリーム1230に分けられる。このガス生成物ストリーム1230は、燃料ガスとして使用するか又は液化ユニット内でエンドフラッシュガス(図示せず)を用いて液化してよい。或いは、ガス生成物ストリーム1230の一部又は全てをガス生成物圧縮機1231a内で圧縮してから、ライン1231を利用して、前処理天然ガスストリーム1240と混ぜ合わせてよい。これについは本明細書でさらに述べる。還流液体ストリーム1228は、ポンプ1232で汲み出して安定化装置1218に戻してよく、そこでそれは、安定化装置内の上向流ガスからのいずれの重質炭化水素をも洗い流す働きをする。スクラブカラム用のストリッピングガスストリーム1234は、天然ガスストリーム1202から供給してよく;或いは、リボイラー(図示せず)を用いてスクラブカラム用のストリッピングガスを供給してもよい。
【0054】
カラムオーバヘッドストリーム1214は、第1の熱交換器1206を通って流れ。それによって前処理天然ガスストリーム1240を形成する。前処理天然ガスストリーム1240は供給物圧縮機1252に送られ、これは前処理天然ガスストリーム1240を圧縮して中圧ガスストリーム1254を形成する。この中圧ガスストリーム1254は、第2の熱交換器1255を通って流れることができ、そこで中圧ガスストリーム1254は、周囲環境と間接的に熱交換することによって冷却され、それによってチルド又は冷却された前処理ガスストリーム1266を形成する。第2の熱交換器は空冷熱交換器又は水冷熱交換器であってよい。冷却された前処理ガスストリーム1266の圧力は、3,000psia(20,680kPa)未満、さらに好ましくは2,000psia(13,790kPa)未満であり得る。
【0055】
冷却された前処理ガスストリーム1266の一部は、再循環ストリーム1268として第1の熱交換器1206へ方向づけられ、そこでそれ及び天然ガスストリームは、後述するようにカラムオーバヘッドストリーム1214及び/又はガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1276によって冷却される。結果として生じる冷却された再循環ストリーム1270は、ジュール・トムソン弁1272等の圧力及び温度低減デバイスを通り抜けて、分離器ドラム1274へ方向づけられる。分離器ドラムは、冷却された再循環ストリーム1270をガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1276とスクラブカラム還流ストリーム1278に分ける。ガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1276をカラムオーバヘッドストリーム1214(すなわち、第1の熱交換器の上流)と混ぜ合わせてよい。或いは、図12に示すように、ガス状分離器ドラムオーバヘッドストリームがカラムオーバヘッドストリームからの分離ストリームとして第1の熱交換器を通り抜けるように、第1の熱交換器の下流でガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1276を前処理天然ガスストリーム1240と混ぜ合わせてよい。この代替シナリオは、混ざり合った2つのストリームを第1の熱交換器に通すことがシステムの複雑さを減じながら、第1の熱交換器内の冷却曲線のマッチングのフレキシビリティを高めることができる。スクラブカラム還流ストリーム1278は、スクラブカラム1212の上部に方向づけられ、そこでそれは、スクラブカラム内で重質炭化水素を液化及び分離するのに十分な冷却をもたらす。冷却された前処理ガスストリーム1266の残りは、好ましい態様では天然ガス液化モジュール1280であるさらなる処理へ方向づけられる。液化モジュール1280は、いずれのタイプの液化技術をも、例えば単一混合冷媒(SMR)、二元混合冷媒(DMR)、窒素及び/若しくはメタンを用いるエキスパンダベース技術、又は他の液化技術技を利用することがでる。該液化技術は開示態様の範囲内にあると考えられる。
【0056】
図11~12に開示する態様は、既知のガス前処理又は調整プロセスを超えるいくつかの利点を提供する。例えば、ガス状分離器ドラムオーバヘッドストリーム1176/1276及びカラムオーバヘッドストリーム1114/1214は、許容できる低レベルの重質炭化水素を有し、スクラブカラム還流ストリーム1178/1278は、スクラブカラム1112/1212内の重質炭化水素分離に十分な冷却をもたらす。結果として、既知のガス前処理技術に比べて重質炭化水素回収の向上が達成される。さらに、ガス前処理の全体的コストと同様に、ガス前処理に必要なエネルギーが削減される。
開示態様のガス前処理の利点は種々多様の供給ガス組成によく適応できることである。
別の利点は、安定化装置1118/1218からの重質炭化水素回収向上のため、1122/1222での凝縮物ストリームが多いことである。これは、プロセッサーが凝縮物売却に好ましい価格又は需要条件を考慮できるようにする。従って、開示態様は、商品の価格及び需要の変化に対応するガス処理へのフレキシブルなアプローチを提供する。
さらに、本明細書で開示する態様は、いずれのLNG液化場所でも使用可能であり、それらは、海洋液化、陸上遠隔設備等のようなLNG液化のためのスペースが限られている状況に特に優れた有用性を有する。
【0057】
図13は、開示態様に従って天然ガスストリームから液化天然ガス(LNG)を生産する方法1300を示す流れ図である。ブロック1302で、第1の分離器内で天然ガスストリームから重質炭化水素が除去され、それによって分離天然ガスストリーム及び分離器下部ストリームが生成される。ブロック1304で、熱交換器内で分離天然ガスストリームが冷却剤として使用され、それによって前処理天然ガスストリームが生成される。ブロック1306で、前処理天然ガスストリームが圧縮及び冷却されてチルド前処理天然ガスストリームを形成する。ブロック1308で、チルド前処理ガスストリームの一部が再循環ストリームを形成して熱交換器内で分離天然ガスストリームと熱交換し、それによって冷却された再循環ストリームを生成する。ブロック1310で、冷却された再循環ストリームの温度及び圧力が下げられる。ブロック1312で、冷却された再循環ストリームがガス状分離器オーバヘッドストリームと還流ストリームに分けられる。ブロック1314で、還流ストリームが第1の分離器の上部へ方向づけられる。ブロック1316で、チルド前処理ガスストリームが液化されてLNGを形成する。
【0058】
前述のものは本開示の態様に関するものであるが、本開示の基本範囲から逸脱することなく、本開示の他のさらなる態様を考案することができ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決まる。
本発明は、以下のように捉えることも可能である。
(付記1)
天然ガスストリームから液化天然ガス(LNG)を生産する方法であって、
第1の分離器内で前記天然ガスストリームから重質炭化水素を除去し、それによって分離天然ガスストリーム及び分離器下部ストリームを生成すること;
熱交換器内で前記分離天然ガスストリームを冷却剤として使用し、それによって前処理天然ガスストリームを生成すること;
前記前処理天然ガスストリームを圧縮及び冷却してチルド前処理天然ガスストリームを形成すること;
前記チルド前処理天然ガスストリームの一部を再循環ストリームとして再循環させて、前記熱交換器内で、前記分離天然ガスストリームと熱交換させ、それによって冷却された再循環ストリームを生成すること;
前記冷却された再循環ストリームの温度及び圧力を下げること;
前記冷却された再循環ストリームを、ガス状分離器オーバヘッドストリームと還流ストリームとに分けること;
前記還流ストリームを前記第1の分離器の上部へ方向づけること;及び
前記チルド前処理ガスストリームを液化してLNGを形成すること
を含む、前記方法。
(付記2)
前記チルド前処理ガスストリームの液化が、
1つ以上の単一混合冷媒(SMR)液化ユニット、
少なくとも3つの並列SMR液化ユニット、および
1つ以上のエキスパンダベース液化モジュールであって、
1つ以上の窒素ガスエキスパンダベース液化モジュール、又は
1つ以上の供給ガスエキスパンダベース液化モジュール、
を含むエキスパンダベース液化モジュール、
のうちの1つにおいて行なわれる、
付記1に記載の方法。
(付記3)
さらに、
第2の分離器内で前記分離器下部ストリームから液体を分離してオーバーヘッドストリームを形成すること;及び
第3の分離器内で前記オーバヘッドストリームを冷却し、それから液体を分離してガス生成物ストリームを形成すること
を含む、付記1又は付記2に記載の方法。
(付記4)
さらに下記:
前記生成物ガスストリームの少なくとも一部を少なくとも1つの圧縮機の上流で前記前処理天然ガスストリームと混ぜ合わせること
を含む、付記3に記載の方法。
(付記5)
前記前処理天然ガスストリームの圧縮及び冷却が、
前記前処理天然ガスストリームを少なくとも1つの圧縮機内で少なくとも1,500psiaの圧力まで圧縮して、圧縮天然ガスストリームを形成すること;
前記圧縮天然ガスストリームを冷却して、冷却された圧縮天然ガスストリームを形成すること;及び
少なくとも1つのワーク生成天然ガスエキスパンダ内で、前記冷却された圧縮天然ガスストリームを、2,000psia未満であり、かつ前記少なくとも1つの圧縮機が前記前処理天然ガスストリームを圧縮する圧力以下である圧力まで膨張させ、それによって前記チルド前処理ガスストリームを形成すること
を含む、付記1~4のいずれか1項に記載の方法。
(付記6)
前記熱交換器が第1の熱交換器であり、かつ前記圧縮天然ガスストリームの冷却が、周囲環境と熱交換する第2の熱交換器内で前記圧縮天然ガスストリームを冷却することを含む、付記8に記載の方法。
(付記7)
前記少なくとも1つの圧縮機が、少なくとも2つの直列に配置された圧縮機を含み、かつ前記少なくとも2つの直列に配置された圧縮機の1つが、前記天然ガスエキスパンダによって駆動される、付記5又は付記6に記載の方法。
(付記8)
さらに、
前記ガス状分離器オーバヘッドストリームを、前記熱交換器の上流で前記カラムオーバヘッドストリームと混ぜ合わせること
を含む、
付記1~7のいずれか1項に記載の方法。
(付記9)
さらに、
前記ガス状分離器オーバヘッドストリームを前記熱交換器へ方向づけること;及び
前記熱交換器に通した後に、前記ガス状分離器オーバヘッドストリームを前記前処理天然ガスストリームと混ぜ合わせること
を含む、
付記1~8のいずれか1項に記載の方法。
(付記10)
さらに、
前記天然ガスストリームの一部を前記熱交換器内で冷却して、冷却された天然ガスストリームを生成すること;及び
前記冷却された天然ガスストリームを前記第1の分離器の上流で前記天然ガスストリームと混ぜ合わせること
を含む、
付記1~9のいずれか1項に記載の方法。
(付記11)
さらに、
第1の分離器の上流で前記天然ガスストリームを前記熱交換器内で冷却すること
を含む、
付記1~10のいずれか1項に記載の方法。
(付記12)
天然ガスストリームの液化装置であって、
前記天然ガスストリームの少なくとも一部を冷却して、冷却された天然ガスストリームを生成する第1の熱交換器であって、ここで、前記天然ガスストリームの前記部分は、前記天然ガスストリームと混ざり合っている、第1の熱交換器;
前記天然ガスストリームから重質炭化水素を除去し、それによって分離天然ガスストリーム及び分離器下部ストリームを生成するように構成された第1の分離デバイスであって、ここで、前記分離天然ガスストリームは前記第1の熱交換器に方向づけられて、その中で冷却剤として作用し、それによって前処理天然ガスストリームを生成する、第1の分離デバイス;
前記前処理天然ガスストリームを圧縮及び冷却してチルド前処理ストリームを形成する圧縮及び冷却ユニット;
ここで、前記チルド前処理ガスストリームの一部は、再循環ストリームとして前記第1の熱交換器に再循環されて、前記天然ガスストリームの前記一部及び前記分離天然ガスストリームの少なくとも一方を含む1つ以上のプロセスストリームと熱交換し、それによって冷却された再循環ストリームを形成し;
前記冷却された再循環ストリームの温度及び圧力を下げるように構成された温度及び圧力低減デバイス;
前記冷却された再循環ストリームをガス状分離器オーバヘッドストリームと還流ストリームに分ける第4の分離デバイスであって、ここで、前記還流ストリームは、前記第1の分離器の上部へ方向づけられる、第4の分離デバイス;及び
前記チルド前処理ガスストリームを液化するように構成された少なくとも1つの液化ユニット
を含む、前記装置。
(付記13)
前記少なくとも1つの液化ユニットが、
1つ以上の単一混合冷媒(SMR)液化ユニット、
少なくとも3つの並列SMR液化ユニット、又は
1つ以上のエキスパンダベース液化モジュールであって、
1つ以上の窒素ガスエキスパンダベース液化モジュール、若しくは
1つ以上の供給ガスエキスパンダベース液化モジュール、
を含むエキスパンダベース液化モジュール
を含む、付記12に記載の装置。
(付記14)
さらに下記:
前記分離器下部ストリームから液体を分離してオーバヘッドストリームを形成する第2の分離デバイス;及び
前記オーバヘッドストリームを、それぞれ、冷却及び分離し、それによってガス生成物ストリームを形成する第2の熱交換器及び第3の分離デバイス
を含む、付記12又は付記13に記載の装置。
(付記15)
前記生成物ガスストリームの少なくとも一部が、前記圧縮及び冷却ユニットの上流で前記前処理天然ガスストリームと混ぜ合わせられる、付記12~14のいずれか1項に記載の装置。
(付記16)
前記圧縮及び冷却ユニットが下記:
前記前処理天然ガスストリームを少なくとも1,500psia(10,340kPa)の圧力まで圧縮し、それによって圧縮天然ガスストリームを形成する少なくとも1つの圧縮機;
前記圧縮天然ガスストリームを冷却して、冷却された圧縮天然ガスストリームを形成する第3の熱交換器;及び
前記冷却された圧縮天然ガスストリームを、2,000psia(13,790kPa)未満であり、かつ前記少なくとも1つの圧縮機が前記前処理天然ガスストリームを圧縮する圧力以下である圧力まで膨張させ、それによって前記チルド前処理ガスストリームを形成する、少なくとも1つのワーク生成天然ガスエキスパンダ
を含む、付記12~15のいずれか1項に記載の装置。
(付記17)
前記少なくとも1つの圧縮機が、少なくとも2つの直列に配置された圧縮機を含み、かつ前記少なくとも2つの直列に配置された圧縮機の1つが、前記天然ガスエキスパンダによって駆動される、付記16に記載の装置。
(付記18)
前記圧縮及び冷却ユニットが下記:
前記前処理天然ガスストリームを少なくとも1,500psia(10,340kPa)の圧力まで圧縮して、圧縮天然ガスストリームを形成する少なくとも1つの圧縮機;及び
前記圧縮天然ガスストリームを冷却してチルド前処理ガスストリームを形成する第3の熱交換器
を含む、付記12~17のいずれか1項に記載の装置。
(付記19)
前記ガス状分離器オーバヘッドストリームが、前記熱交換器の上流でカラムオーバヘッドストリームと混ぜ合わせられる、付記12~18のいずれか1項に記載の装置。
(付記20)
前記ガス状分離器オーバヘッドストリームが、前記熱交換器を通り抜けるように方向づけられ、前記前処理天然ガスストリームと混ぜ合わせられる、付記12~19のいずれか1項に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13