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  • 特許-波形取得装置及び波形取得方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】波形取得装置及び波形取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/34 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
G01R13/34 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022008619
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2023107424
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 創
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128246(JP,A)
【文献】特開2018-137681(JP,A)
【文献】特開2009-270895(JP,A)
【文献】特開2007-24657(JP,A)
【文献】特開平1-311282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0200550(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0391577(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/00-13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返しパターンからなる被測定データ信号と同期したトリガクロックを、所定の分周比で分周して分周トリガクロックを生成する可変分周部(31)と、
前記可変分周部により生成された分周トリガクロックの位相を制御し、互いに位相が異なるN個のサンプリングパルス信号を生成する位相調整部(32)と、
前記位相調整部により生成されたN個のサンプリングパルス信号のそれぞれに応じたタイミングで前記被測定データ信号をサンプリングするN個のサンプラ(21-1~21-N)と、を備え、
前記所定の分周比をNで割った値は、前記N個のサンプラによりサンプリングされる前記被測定データ信号の前記繰り返しパターン当たりのサンプル数と互いに素であることを特徴とする波形取得装置。
【請求項2】
繰り返しパターンからなる被測定データ信号と同期したトリガクロックを、所定の分周比で分周して分周トリガクロックを生成する可変分周ステップ(S2)と、
前記可変分周ステップにより生成された分周トリガクロックの位相を制御し、互いに位相が異なるN個のサンプリングパルス信号を生成する位相調整ステップ(S3)と、
前記位相調整ステップにより生成されたN個のサンプリングパルス信号のそれぞれに応じたタイミングで前記被測定データ信号をN個のサンプラ(21-1~21-N)によりサンプリングするサンプリングステップ(S4)と、を含み、
前記所定の分周比をNで割った値は、前記N個のサンプラによりサンプリングされる前記被測定データ信号の前記繰り返しパターン当たりのサンプル数と互いに素であることを特徴とする波形取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形取得装置及び波形取得方法に関し、特に、データ信号やクロック信号等のような繰り返しパターンからなる被測定データ信号の波形を観測するための波形取得装置及び波形取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定データ信号の波形を観測するための波形観測装置として、リアルタイムオシロスコープと、等価時間サンプリング方式のサンプリングオシロスコープとが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、入力データ信号を複数のスプリット信号にスプリットし、これら複数のスプリット信号を必要に応じてミキサで所定周波数の周期的関数とミックスした後に、スプリットされた信号をアナログ・デジタル変換器でデジタイズし、更にこれらの出力を合成ユニットで合成して元の入力信号を表す単一の出力データストリームを得るリアルタイムデジタルオシロスコープ(Digital Storage Oscilloscope:DSO)が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたようなリアルタイムDSOは、サンプリングオシロスコープに比べて高価であり、データ信号やクロック信号等のような繰り返しパターンからなる信号の波形を観測する用途にはコストの観点から適していない。
【0005】
一方、特許文献2には、複数の信号の波形を同じ測定系で同時に観測したいという要求のために、信号入力端子とサンプリング部を複数組内蔵したサンプリングオシロスコープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2006-504100号公報
【文献】特許第5303440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、被測定データ信号の速度は高速化しており、被測定データ信号をサンプリングするためのサンプリング速度の高速化が望まれている。しかしながら、サンプリング速度の限界は、ハードウェア(サンプラ・トリガ)の性能に依存しており、特許文献1,2に開示されたようなリアルタイムDSOやサンプリングオシロスコープの構成でサンプリング速度を高速化するためには、新しいハードウェアを開発しなければならず、技術面とコスト面で課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、サンプリング速度を高速化して、繰り返しパターンからなる被測定データ信号の測定時間の短縮を低コストで実現することができる波形取得装置及び波形取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る波形取得装置は、繰り返しパターンからなる被測定データ信号と同期したトリガクロックを、所定の分周比で分周して分周トリガクロックを生成する可変分周部と、前記可変分周部により生成された分周トリガクロックの位相を制御し、互いに位相が異なるN個のサンプリングパルス信号を生成する位相調整部と、前記位相調整部により生成されたN個のサンプリングパルス信号のそれぞれに応じたタイミングで前記被測定データ信号をサンプリングするN個のサンプラと、を備え、前記所定の分周比をNで割った値は、前記N個のサンプラによりサンプリングされる前記被測定データ信号の前記繰り返しパターン当たりのサンプル数と互いに素である構成である。
【0010】
この構成により、本発明に係る波形取得装置は、N個のサンプラにより被測定データ信号を異なるタイミングでサンプリングするため、1チャネルのサンプリング速度のN倍のサンプリング速度で被測定データ信号のサンプリングを行うことができる。また、本発明に係る波形取得装置は、各サンプラのサンプリング速度が従来よりも高くなくても、高速なサンプリングが実現できるので、安価なサンプラにもかかわらず高いサンプリング速度で被測定データ信号を測定できる。つまり、本発明に係る波形取得装置は、サンプリング速度を高速化して、繰り返しパターンからなる被測定データ信号の測定時間の短縮を低コストで実現することができる。
【0011】
また、本発明に係る波形取得方法は、繰り返しパターンからなる被測定データ信号と同期したトリガクロックを、所定の分周比で分周して分周トリガクロックを生成する可変分周ステップと、前記可変分周ステップにより生成された分周トリガクロックの位相を制御し、互いに位相が異なるN個のサンプリングパルス信号を生成する位相調整ステップと、前記位相調整ステップにより生成されたN個のサンプリングパルス信号のそれぞれに応じたタイミングで前記被測定データ信号をN個のサンプラによりサンプリングするサンプリングステップと、を含み、前記所定の分周比をNで割った値は、前記N個のサンプラによりサンプリングされる前記被測定データ信号の前記繰り返しパターン当たりのサンプル数と互いに素である構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、サンプリング速度を高速化して、繰り返しパターンからなる被測定データ信号の測定時間の短縮を低コストで実現することができる波形取得装置及び波形取得方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る波形取得装置の構成を示すブロック図である。
図2】(a)は光トランシーバから出力される光信号を電気信号に変換して電力分割部に入力する構成を示すブロック図であり、(b)は光トランシーバから出力される電気信号をそのまま電力分割部に入力する構成を示すブロック図である。
図3】波形データの表示例を示す図である。
図4】1つのサンプラでNRZ方式の被測定データ信号をサンプリングする場合のタイミング図である。
図5】2つのサンプラでNRZ方式の被測定データ信号をサンプリングする場合のタイミング図である。
図6】本発明の実施形態に係る波形取得装置を用いる波形取得方法の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る波形取得装置及び波形取得方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
図1に示す本発明の実施形態に係る波形取得装置1は、被測定データ信号の波形を観測する等価時間サンプリング方式のサンプリングオシロスコープであって、電力分割部10と、N個のサンプラ21-1~21-Nを含むサンプリング部20と、可変分周部31及び位相調整部32を含むサンプリング制御部30と、波形データメモリ40と、表示制御部50と、操作部60と、表示部70と、を備える。
【0016】
電力分割部10は、被測定データ信号を複数のサンプラ21-1~21-Nの個数に応じたN個のチャネルに分割して出力するものであり、例えば1以上のパワースプリッタ又はパワーディバイダを含む。ここで、Nは、2以上の整数である。ただし、通常、パワースプリッタ又はパワーディバイダは2出力であるため、これらを複数接続して出力数を増やす場合には、Nの値は2のべき乗であることが望ましい。
【0017】
被測定データ信号は、一定のパターン長や周期ごとに同じ波形を繰り返す繰り返しパターンからなる周期信号であり、例えば、NRZ(Non Return to Zero)方式のPRBS(Pseudorandom Binary Sequence)パターン、PAM4(Pulse Amplitude Modulation 4)方式のPRBSパターンやSSPRQ(Short Stress Pattern Random Quaternary)パターン、固定パターン、任意パターンによるプログラマブルパターンなどのパターン信号である。被測定データ信号のシンボル値は、NRZ方式の場合{0,1}、PAM4方式の場合{0,1,2,3}の値を取る。このような被測定データ信号は、例えば、IEEE802.3、OIF-CEIなどの伝送規格に対応した光トランシーバ、PPG(Pulse Pattern Generator)、DSP(Digital Signal Processor)などの各種デバイスから出力される。なお、PPGやDSPは、光トランシーバに内蔵されている場合もある。
【0018】
光トランシーバは、電気信号と光信号を相互に変換するモジュールである。図2(a)に示すように、光トランシーバ100が電気信号を光信号に変換する場合には、光トランシーバ100と電力分割部10との間に設けられるO/Eコンバータ110が、光トランシーバ100から出力された光信号を電気信号(被測定データ信号)に変換して電力分割部10に入力する。一方、図2(b)に示すように、光トランシーバ100が光信号を電気信号に変換する場合には、光トランシーバ100から出力された電気信号は、O/Eコンバータ110を経由せずに被測定データ信号として電力分割部10に直接入力される。
【0019】
サンプリング部20は、N個のサンプラ21-1~21-Nを有する。N個のサンプラ21-1~21-Nは、後述する位相調整部32により生成されたN個のサンプリングパルス信号C~Cのそれぞれに応じたタイミングで、電力分割部10により分割された被測定データ信号をサンプリングする。サンプラ21-1~21-Nは、それぞれA/D変換器で構成することができる。
【0020】
サンプリング制御部30は、可変分周部31と、位相調整部32とを有する。サンプリング制御部30は、可変分周部31の分周比Dr、トリガクロックの周期、被測定データ信号のパターン長・周期、被測定データ信号の1シンボル当たりに取得するサンプル数に応じて、サンプリング部20のサンプリングを制御するようになっている。これらのパラメータは、例えば、ユーザによる操作部60への操作入力によって、サンプリング制御部30に設定されるようになっている。
【0021】
可変分周部31は、繰り返しパターンからなる被測定データ信号と同期したトリガクロックを、所定の分周比Drで分周して分周トリガクロックを生成するようになっている。ここで、分周比Drは、チャネル数Nの整数倍の値である。トリガクロックは、正弦波や矩形波からなり、外部から供給される。あるいは、トリガクロックは、被測定データ信号から抽出されたものであってもよい。この場合、波形取得装置1は、入力された被測定データ信号からそのクロック成分を再生するクロック再生回路を更に備え、このクロック再生回路により再生されたクロック成分がトリガクロックとして可変分周部31に入力されることになる。
【0022】
なお、本実施形態においては、サンプリング制御部30が被測定データ信号の繰り返しパターンの1パターン長にわたって重複なく所望のサンプル数Nsを取得するために、可変分周部31の所定の分周比Drをチャネル数Nで割った値と、N個のサンプラ21-1~21-Nによりサンプリングされる被測定データ信号の繰り返しパターン当たりのサンプル数Nsとが互いに素になっている必要がある。もし、操作部60によりサンプリング制御部30に設定された分周比Drとサンプル数Nsとが互いに素でない場合には、サンプリング制御部30は、設定された分周比Dr又はサンプル数Nsのいずれかを調整して、調整後のこれらの値が互いに素になるようにする。
【0023】
位相調整部32は、可変分周部31により生成された分周トリガクロックの位相を制御し、互いに位相が異なるN個のサンプリングパルス信号C~Cを生成するようになっている。例えば、N個のサンプリングパルス信号C~Cの位相は、可変分周部31の所定の分周比Drをチャネル数Nで割った値に相当するシンボル数分だけ互いにずれていてもよい。
【0024】
すなわち、サンプリング部20は、サンプリング制御部30によりN個のサンプリングパルス信号C~Cの発生タイミングが少しずつずらされた状態で、被測定データ信号を複数周期にわたって測定するようになっている。このようにして、本実施形態の波形取得装置1は、被測定データ信号の1パターン長当たりにサンプル数Nsのサンプルを取得できる。
【0025】
波形データメモリ40は、サンプリング部20によりサンプリングされた被測定データ信号のサンプルの振幅(パワー)、時間軸上の位置などの情報を含む波形データを記憶するようになっている。
【0026】
表示制御部50は、波形データメモリ40に記憶された波形データの振幅及び位置を参照して、表示部70の表示画像における対応するピクセル位置に描画を行うようになっている。例えば、チャネル数Nが2の場合には、表示制御部50は、2つのサンプラ21-1,21-2によりサンプリングされたサンプルが交互に配置されるように表示制御を行う。表示制御部50の制御により表示部70に表示される波形データの表示形態は、時系列波形(パルスパターン)であってもよく、あるいは、図3に示すような時系列波形を2UI(Unit Interval)で折り返したアイパターンであってもよい。
【0027】
操作部60は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部70の表示画面に対応する入力面への接触操作による接触位置を検出するためのタッチセンサを備えるタッチパネルで構成される。あるいは、操作部60は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。操作部60への操作入力は、表示制御部50により検知されるようになっている。例えば、操作部60により、可変分周部31の分周比Dr、トリガクロックの周期、被測定データ信号のパターン長・周期、被測定データ信号の1シンボル当たりに取得するサンプル数などの設定、並びに、測定開始や測定終了のタイミングの指示などをユーザが任意に行うことが可能である。
【0028】
表示部70は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等の表示機器で構成され、表示制御部50による表示制御に基づき、被測定データ信号の波形データなどの各種表示内容を表示画面に表示するようになっている。さらに、表示部70は、各種条件を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0029】
以下、可変分周部31の所定の分周比Drについて、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、図4及び図5に示す例は、あくまで説明を分かりやすくするための例であって、実際に可変分周部31に設定される分周比Drや、複数のサンプリングパルス信号の間の位相の差はそこに示された値に限定されない。
【0030】
図4は、1つのサンプラ21-1で1パターン長が10bitのNRZ方式の被測定データ信号を1bit当たり1サンプル取得する例であって、可変分周部31の分周比Drを11とした場合の分周トリガクロック(サンプリングパルス信号)のタイミングを示している。つまり、この例では、被測定データ信号の1パターン長当たりに取得されるサンプル数Nsの値10と分周比Drの値11とが互いに素となっている。可変分周部31は、入力されたトリガクロックを分周比Drの値11で分周して、11bitごとに1つのパルスが立つ分周トリガクロックを生成する。この場合、11bitごとに被測定データ信号のサンプリングが行われ、1bitの時間分解能ΔTで復元された被測定データ信号が表示部70に表示される。なお、図4の最下段は、時間分解能ΔTで復元された被測定データ信号を時系列波形(パルスパターン)として表示する例を示しているが、表示形態を変えて被測定信号を2UIで折り返して表示すれば、図3に示すようなアイパターンが得られる。
【0031】
また、例えば、1つのサンプラ21-1で1パターン長が10bitの被測定データ信号を1bit当たり10サンプル取得する場合、すなわち被測定データ信号の1パターン長当たりに取得されるサンプル数Nsの値が100である場合は、分周比Drとしては例えば101などのサンプル数Nsの値100と互いに素な値を選択することができる。図4に示した例では、分周比Drが小さければ(すなわち分周トリガクロックの周期が短ければ)高速なサンプリングが可能である。しかしながら、実際にはサンプラのサンプリング周波数の上限によって、サンプリング速度が制約される。
【0032】
そこで、例えば、1つのサンプラ21-1で可変分周部31の分周比Drを11として被測定データ信号のサンプリングを行いたいが、1つのサンプラ21-1では分周比Drが20程度以上でないと対応できないケースを考える。この場合、被測定データ信号のサンプリングをN個のサンプラ21-1~21-Nで行うようにし、可変分周部31の分周比Drを11×Nに設定し、更に位相調整部32により互いに位相が異なるN個のサンプリングパルス信号C~Cを生成するようにすれば、1つのサンプラ21-1で可変分周部31の分周比Drを11とした場合と同じサンプリング速度を実現できる。
【0033】
図5は、2つのサンプラ21-1,21-2で1パターン長が10bitのNRZ方式の被測定データ信号を1bit当たり1サンプル取得する例であって、可変分周部31の分周比Drを22とした場合のサンプリングパルス信号C,Cのタイミングを示している。このような構成では、2つのサンプラ21-1,21-2で11分周相当のサンプリング速度を実現できる。この例では、位相調整部32が、サンプラ21-1用のサンプリングパルス信号Cのタイミングに対して、サンプラ21-2用のサンプリングパルス信号Cのタイミングを分周比Drの半分に相当する11bitだけずらしている。なお、ずらすbit数は、分周比Drの半分に限定されず、分周比Drの整数倍を除く任意の値であってもよい。
【0034】
図5に示すように、2つのサンプラ21-1,21-2は、同じ被測定データ信号を交互にサンプリングする。なお、サンプリング部20で被測定データ信号の1シンボル当たり8サンプル取得することを目標とする場合には、奇数番目のサンプルをサンプラ21-1で、偶数番目のサンプルをサンプラ21-2で取得すればよい。つまり、可変分周部31がN個のサンプリングパルス信号C~Cのタイミングをずらし、N個のサンプラ21-1~21-Nが代わる代わる同じ被測定データ信号のサンプルを取得することで、サンプリング速度をN倍に向上させることができる。
【0035】
以下、波形取得装置1を用いる波形取得方法について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0036】
まず、ユーザによる操作部60への操作入力に応じて、可変分周部31の分周比Dr、トリガクロックの周期、被測定データ信号のパターン長・周期、被測定データ信号の1シンボル当たりに取得するサンプル数などの各種情報がサンプリング制御部30に設定される(ステップS1)。
【0037】
次に、可変分周部31は、繰り返しパターンからなる被測定データ信号と同期したトリガクロックを所定の分周比Drで分周して分周トリガクロックを生成する(可変分周ステップS2)。既に述べたように、分周比Drをチャネル数Nで割った値は、N個のサンプラ21-1~21-Nによりサンプリングされる被測定データ信号の繰り返しパターン当たりのサンプル数Nsと互いに素である。
【0038】
次に、位相調整部32は、可変分周ステップS2により生成された分周トリガクロックの位相を制御し、互いに位相が異なるN個のサンプリングパルス信号を生成する(位相調整ステップS3)。
【0039】
次に、サンプリング部20は、位相調整ステップS3により生成されたN個のサンプリングパルス信号のそれぞれに応じたタイミングで、電力分割部10によりN個のチャネルに分割された被測定データ信号を、N個のサンプラ21-1~21-Nによりサンプリングする(サンプリングステップS4)。また、サンプリング部20は、サンプリングしたサンプルの波形データを波形データメモリ40に保存する。
【0040】
次に、表示制御部50は、波形データメモリ40に記憶された波形データの振幅及び位置を参照して、表示部70の表示画像における対応するピクセル位置に描画を行う(ステップS5)。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る波形取得装置1は、N個のサンプラ21-1~21-Nにより被測定データ信号を異なるタイミングでサンプリングするため、1チャネルのサンプリング速度のN倍のサンプリング速度で被測定データ信号のサンプリングを行うことができる。また、本実施形態に係る波形取得装置1は、各サンプラ21-1~21-Nのサンプリング速度が従来よりも高くなくても、高速なサンプリングが実現できるので、安価なサンプラにもかかわらず高いサンプリング速度で被測定データ信号を測定できる。つまり、本実施形態に係る波形取得装置1は、サンプリング速度を高速化して、繰り返しパターンからなる被測定データ信号の測定時間の短縮を低コストで実現することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 波形取得装置
10 電力分割部
20 サンプリング部
21-1~21-N サンプラ
30 サンプリング制御部
31 可変分周部
32 位相調整部
40 波形データメモリ
50 表示制御部
60 操作部
70 表示部
100 光トランシーバ
110 O/Eコンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6