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特許7326509連続流通触媒反応器のための静的ミキサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】連続流通触媒反応器のための静的ミキサー
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20230807BHJP
   B01F 25/42 20220101ALI20230807BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20230807BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20230807BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20230807BHJP
   B05B 7/14 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B01J19/24 A
B01F25/42
B01J23/755 Z
B01J23/44 Z
B01J23/42 Z
B05B7/14
【請求項の数】 35
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022014685
(22)【出願日】2022-02-02
(62)【分割の表示】P 2018533253の分割
【原出願日】2016-12-21
(65)【公開番号】P2022078026
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】2015905354
(32)【優先日】2015-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2016903998
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・タナクトシディス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ホーヌング
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジョーゼフ・アーバン
(72)【発明者】
【氏名】ダーレン・フレイザー
(72)【発明者】
【氏名】デイアラン・ロメッシュ・グナセガラム
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・デイビッド・ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェーン-ピエール・ベダー
(72)【発明者】
【氏名】セオ・ロドプーロス
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0072481(US,A1)
【文献】特開2007-278689(JP,A)
【文献】特開平02-275704(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00894523(EP,A1)
【文献】特表2008-537904(JP,A)
【文献】特表2011-501691(JP,A)
【文献】特開昭49-043891(JP,A)
【文献】米国特許第07887764(US,B1)
【文献】特開昭53-114773(JP,A)
【文献】特開平08-041010(JP,A)
【文献】特開平02-143010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
B01F 21/00-21/20,23/00-23/80,25/00-25/90
B01J 21/00-38/74
C07B 31/00-61/00,63/00-63/04
C07C 1/00-409/44
B05B 1/00-3/18,7/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の流体状反応物質の反応に使用するための連続流通化学反応器であって、該連続流通化学反応器は、
互いに流体連通した1つ以上の反応チャンバー区画であって、各反応チャンバー区画に挿入するための一体的なモジュールとして構成された、付加製造され、取り外し可能な静的ミキサー要素を格納し、前記連続流通化学反応器のアスペクト比(L/d)が少なくとも50である、1つ以上の反応チャンバー区画と、
前記1つ以上の反応チャンバー区画に前記1つ以上の流体状反応物質を供給するための1つ以上の反応物質入口と、
反応生成物を含む生産物ストリームを受け入れるための、前記静的ミキサー要素と流体連通した1つ以上の出口とを備え、
各静的ミキサー要素は、触媒反応性部位、および一体的な足場を備え、前記足場は、相互接続されたセグメントの連続的な格子を形成するための構造であって、前記足場の長手方向の軸に沿って周期的に繰り返される複数の構造を画定するとともに、複数の通路を画定するものであり、ここで、各セグメントは多角形の角柱、螺旋状セグメント、又は複数の開口部を提供するらせん体を備え、
前記複数の通路は、前記複数の通路を通して、前記静的ミキサー要素の長手方向の軸に沿った所定の長さにおける回数に対応する、200m-1を越える回数で、局所的な流れの方向を変更、または局所的な流れを分割することで、主要な流れに対する横方向に向かって流体を再分配することにより、混合、前記1つ以上の流体状反応物質と前記触媒反応性部位との接触、および伝熱、を改良するように構成されており、
使用時に、断面温度差が10℃/mm未満の温度差と、体積流量が少なくとも0.1ml/分で、前記反応チャンバー区画の両端間での圧力降下(Pa/mで)が100,000未満の圧力降下と、を提供するように構成されている、
連続流通化学反応器。
【請求項2】
前記連続流通化学反応器は、1つ以上の管状反応チャンバー区画を備える管状連続流通反応器である、請求項1に記載の連続流通化学反応器。
【請求項3】
前記足場が触媒材料から形成されること、前記触媒材料が足場の少なくとも一部に差し込まれ、組み入れられ、および/または埋め込まれること、ならびに、前記足場の表面の少なくとも一部が前記触媒材料を含むコーティングを含むこと、のうちの少なくとも1つによって、前記触媒反応性部位が設けられている、請求項1または2に記載の連続流通化学反応器。
【請求項4】
前記足場の表面の少なくとも一部が触媒材料を含むコーティングを含み、前記コーティングが電着コーティングである、請求項1から3のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項5】
前記足場の表面の少なくとも一部が触媒材料を含むコーティングを含み、前記コーティングがコールドスプレーコーティングである、請求項1から3のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項6】
触媒材料が、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項7】
触媒材料が、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタルおよびクロムのうちの少なくとも1つから選択される金属、またはこれらの金属合金、サーメットもしくは金属酸化物を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項8】
触媒材料が、ニッケルまたはニッケル合金を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項9】
前記足場が、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物を含む、またはこれらからなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項10】
前記足場が、チタン、アルミニウムもしくはステンレス鋼を含む、またはこれらからなる、請求項1から9のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項11】
前記足場の構成が、反応物質のラジアル方向および横方向の混合ならびに伝熱を向上させるための数値流体力学ソフトウェアを使用して決定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項12】
前記足場が、反応物質の混合および伝熱を容易にするために構成された複数の通路を画定する複数の一体的なユニットを有する、メッシュ構成として設けられている、請求項1から11のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項13】
前記足場が、少なくとも2500のレイノルズ数(Re)の乱流において動作するように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項14】
前記足場が、2500~6000の範囲のレイノルズ数(Re)の乱流において動作するように構成されている、請求項1から12いずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項15】
各反応チャンバー区画および格納された触媒活性静的ミキサー要素の直径(mm)が5~150の範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項16】
前記連続流通化学反応器の前記アスペクト比(L/d)が少なくとも100である、請求項1から15のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項17】
前記連続流通化学反応器の前記アスペクト比(L/d)が100~500の範囲である、請求項1から15のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項18】
前記連続流通化学反応器が、前記連続流通化学反応器、チャンバー区画、触媒式静的ミキサー、またはこれらの流体状構成要素の温度の制御を可能にするための熱交換器システムを備え、前記熱交換器システムは前記触媒式静的ミキサーと分れている、請求項1から17のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
【請求項19】
前記熱交換器システムが、前記連続流通化学反応器、チャンバー区画、触媒式静的ミキサーまたはこれらの流体状構成要素の温度を制御するための制御装置を備える、請求項18に記載の連続流通化学反応器。
【請求項20】
前記熱交換器システムが、シェルアンドチューブ型熱交換器を含む、請求項19に記載の連続流通化学反応器。
【請求項21】
連続流通化学反応をもたらすためのシステムであって、
請求項1から20のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器、
前記連続流通化学反応器の中を通る1つ以上の流体状反応物質および前記流体状反応物質の任意の生成物を対象にした流体の流動をもたらすためのポンプ、
前記連続流通化学反応器、前記反応チャンバー区画、前記静的ミキサー要素、またはこれらの流体状構成要素の温度の制御を可能にするための1つ以上の熱交換器、ここで、前記熱交換器は前記静的ミキサー要素と分れており、ならびに
前記1つ以上の流体状反応物質または前記流体状反応物質の供給源もしくは生成物の、濃度、流量、温度、圧力および滞留時間から選択される前記システムのパラメーターのうちの1つ以上を制御するための制御装置、を含む、システム。
【請求項22】
1つ以上の流体状反応物質の触媒反応による生成物を合成するための方法であって、請求項1から20のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器、または請求項21に記載のシステムを用意する工程、
前記1つ以上の反応物質入口を介して、少なくとも第1の流体状反応物質を前記連続流通化学反応器に供給する工程、
前記連続流通化学反応器またはその制御手段を動作させて、前記静的ミキサー要素によって前記少なくとも第1の流体状反応物質の流動および触媒反応をもたらす工程、ならびに
前記少なくとも第1の流体状反応物質の触媒反応の生成物を含む生産物ストリームを得る工程を含む、方法。
【請求項23】
少なくとも第1の流体状反応物質と第2の流体状反応物質との不均一触媒反応による生成物を合成するための請求項22に記載の方法であって、
請求項1から20のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器、または請求項21に記載のシステムを用意すること、
1つ以上の反応物質入口を介して、少なくとも第1の流体状反応物質および第2の流体状反応物質または前記流体状反応物質の供給源を前記連続流通化学反応器に供給すること、
前記連続流通化学反応器またはその制御手段を動作させて、前記静的ミキサー要素によって前記第1の流体状反応物質および第2の流体状反応物質の流動および触媒反応をもたらすこと、ならびに
少なくとも前記第1の流体状反応物質と第2の流体状反応物質との触媒反応の生成物を含む生産物ストリームを得ること、を含む方法。
【請求項24】
前記静的ミキサー要素の両端間の圧力差(Pa/mで)が、10,000未満である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記静的ミキサー要素の両端間の圧力差が、少なくとも1ml/分の体積流量に維持される、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
連続流通化学反応器チャンバーのための静的ミキサー要素を調製するための方法であって、該方法は、
1つの反応チャンバー区画に格納するための一体的なモジュールとして構成された、付加製造された静的ミキサー要素を用意する工程と、ここで、前記一体的なモジュールは複数の通路を画定する一体的な足場を含むものであり、
触媒コーティングを前記足場の表面の少なくとも一部に適用して、前記表面に複数の触媒反応性部位を設ける工程と、を備え、
前記静的ミキサー要素は、触媒反応性部位、および一体的な足場を備え、
前記足場は、相互接続されたセグメントの連続的な格子を形成するための構造であって、前記足場の長手方向の軸に沿って周期的に繰り返される複数の構造を画定するとともに、複数の通路を画定し、ここで、各セグメントは多角形の角柱、螺旋状セグメント、又は複数の開口部を提供するらせん体を備え、
前記複数の通路は、前記静的ミキサー要素の長手方向の軸に沿った所定の長さにおける回数に対応する、200m-1を越える回数で、局所的な流れの方向を変更、または局所的な流れを分割することで、主要な流れに対する横方向に向かって流体を再分配することによって、混合、1つ以上の流体状反応物質と前記触媒反応性部位との接触、および伝熱、を改良するように構成されており、
使用時に、断面温度差が10℃/mm未満の温度差と、体積流量が少なくとも0.1ml/分で、前記反応チャンバー区画の両端間での圧力降下(Pa/mで)が100,000未満の圧力降下と、を提供するように構成されている、方法。
【請求項27】
前記静的ミキサー要素は、管状反応チャンバー区画内に格納するための一体的なモジュールとして構成されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記触媒コーティングを前記足場の表面の少なくとも一部に適用する工程が電着によるものである、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記触媒コーティングを前記足場の表面の少なくとも一部に適用する工程がコールドスプレーによるものである、請求項26または27に記載の方法。
【請求項30】
前記触媒コーティングが、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される触媒材料を含む、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記足場の材料が、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記静的ミキサー要素のアスペクト比(L/d)が少なくとも15である、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記静的ミキサー要素のアスペクト比(L/d)が少なくとも25である、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
各静的ミキサー要素のアスペクト比(L/d)が少なくとも15であり、一連の1つ以上の静的ミキサー要素中の各反応チャンバー区画中に配置され、合計のアスペクト比(L/d)が少なくとも50である、請求項1に記載の連続流通化学反応器。
【請求項35】
各静的ミキサー要素のアスペクト比(L/d)が少なくとも25であり、一連の1つ以上の静的ミキサー要素中の各反応チャンバー区画中に配置され、合計のアスペクト比(L/d)が少なくとも75である、請求項1に記載の連続流通化学反応器。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本開示は、触媒材料を含む触媒式静的ミキサーに関する。静的ミキサーは、連続流通化学反応器、たとえば不均一触媒反応のための管状連続流通化学反応器と一緒に使用するために、構成されることが可能である。本開示は、静的ミキサーを調製するための方法にも関する。本開示は、静的ミキサーを含む連続流通化学反応器、連続流通化学反応器を含むシステム、連続流通反応器を使用して生成物を合成するための方法および静的ミキサーを使用して触媒材料をスクリーニングするための方法にも関する。
【発明の背景】
【0002】
連続流通化学反応器は一般に、管状反応チャンバーを含み、反応物質流体が反応チャンバーに継続的に供給されて、反応チャンバーから流れ出る生成物を継続的に形成する化学反応を受ける。反応チャンバーは一般的に、加熱用のまたは冷却材としての流体中に沈められており、たとえばシェルアンドチューブ型熱交換器構成においては、反応に加わる熱の伝達または反応から出た熱の伝達を容易にするために沈められている。
【0003】
触媒反応において使用される連続流通反応器は一般的に、反応チャンバーには、化学反応が起き得る触媒表面を提供する固体触媒粒子が詰められた、充填床反応チャンバーを用いる。静的ミキサーは、充填床反応チャンバーおよびこれらのチャンバーの下流側と接触する前に流体ストリームを予備混合して、反応管の中心領域と外側流域との間で熱を伝達するために、使用される。静的ミキサーは、流体流を妨害して、充填床反応チャンバー内での反応前における反応物質の混合を促進するため、および、これらのチャンバーの下流側において望ましい伝熱のパターンを促進するための、中実な構造を含む。静的ミキサーは、一部の反応物質が反応の活性化のための触媒を必要としないため、充填床とは無関係に使用されもする。
【0004】
反応収率の上昇によってプロセスの生産性を改善するために、容易な取り外しおよび容易な置きかえが行われ、さらなる再設計の改良を可能にし、反応物質としての化学物質および/または電気化学的反応物質のより効率的な混合、伝熱および触媒反応をもたらすことができる、連続流通化学反応器のための改良型の静的ミキサーおよび/または反応チャンバーを開発することには、明確な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、代替的な連続流通化学反応器に関する著しい研究および開発を実施してきたが、得られる静的ミキサーが連続流通化学反応器と一緒に使用することが可能になるような触媒表面を静的ミキサーに設けることができることを確認した。驚くべきことに、付加製造された静的ミキサーの表面に触媒材料を導入することは、容易な取り外しおよび容易な置きかえが行われ、さらなる再設計の改良を可能にし、連続流通化学反応器内における反応物質の効率的な混合、伝熱および触媒反応をもたらすように構成され得る、触媒式静的ミキサーを提供することができることが発見された。静的ミキサーは、インサート材として、または、静的ミキサーが反応管自体の区画の一体的な部分になった状態のモジュール型パッケージとして、インライン式連続流通反応器と一緒に使用するために設けられてもよい。
【0006】
したがって、第1の側面において、連続流通化学反応器チャンバーのためのモジュールとして構成された静的ミキサー要素であって、ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する触媒活性な足場を含み、足場の表面の少なくとも一部が、表面に触媒反応性部位を設けるための触媒材料を含む、静的ミキサー要素が提供される。
【0007】
静的ミキサー要素は、付加製造された静的ミキサーであってもよい。静的ミキサー要素は、連続流通反応器チャンバーへの組立てのためのモジュール型インサート材として構成されてもよい。モジュールは、反応器の区画の一体的な部分として静的ミキサーを提供してもよい。
【0008】
第2の側面において、連続流通化学反応器チャンバーのための静的ミキサー要素を調製する方法であって、
ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する足場を含む静的ミキサー要素を用意する工程ならびに
足場の表面の少なくとも一部に触媒コーティングを適用する工程
を含む、方法が提供される。
【0009】
足場の表面の少なくとも一部に触媒コーティングを適用する工程は、電着またはコールドスプレーを含んでもよく、またはこれらからなってもよい。触媒コーティングは、表面に複数の触媒反応性部位を設けるための、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される触媒材料を含んでもよい。本方法は、付加製造によって静的ミキサーの足場を調製する工程を含んでもよい。足場の材料は、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0010】
第3の側面において、ここで記述されたいずれかの態様による1個以上の静的ミキサー要素を含む1種以上の流体状反応物質の反応において使用するための、連続流通化学反応器が提供される。
【0011】
第4の側面において、連続流通化学反応をもたらすためのシステムであって、
ここで記述されたいずれかの態様による静的ミキサーを含む連続流通化学反応器、
反応器の中を通る1種以上の流体状反応物質および流体状反応物質の任意の生成物を対象にして流体の流動をもたらすためのポンプ、
反応器、チャンバー区画、静的ミキサーまたはこれらの流体状構成要素の温度の制御を可能にするための1個以上の熱交換器ならびに
1種以上の流体状反応物質または流体状反応物質の供給源もしくは生成物の濃度、流量、温度、圧力および滞留時間から選択されるシステムのパラメーターのうちの1つ以上を制御するための制御装置
を含む、システムが提供される。
【0012】
第5の側面において、1種以上の流体状反応物質の触媒反応による生成物を合成するための方法であって、
ここで記述されたいずれかの態様による静的ミキサー要素またはシステムを含む連続流通化学反応器を用意する工程、
1個以上の反応物質入口を介して少なくとも第1の流体状反応物質を反応器に供給する工程、
化学反応器または化学反応器の制御手段を動作させて、静的ミキサーによって少なくとも第1の流体状反応物質の流動および触媒反応を起こす工程および
少なくとも第1の反応物質の触媒反応の生成物を含む生産物ストリームを得る工程
を含む、方法が提供される。
【0013】
第6の側面において、ここで記述されたいずれかの態様による静的ミキサー要素またはシステムを使用して触媒反応性に関して触媒材料をスクリーニングする方法であって、
所定の反応器のセッティングにおいて、所定の触媒材料を用いて、静的ミキサーを含む連続流通化学反応器を動作させる工程および
生産物ストリームから得られた生成物の収率を測定する工程
を含む、方法が提供される。
【0014】
第7の側面において、連続流通化学反応器チャンバーのための触媒式静的ミキサー(CSM)要素の設計および製造の方法であって、
ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する足場を含むプロトタイプ型静的ミキサー要素を設計する工程、
プロトタイプ型静的ミキサー要素を付加製造する工程、
触媒コーティングをプロトタイプ型静的ミキサー要素の足場の表面に適用して、プロトタイプ型触媒式静的ミキサー(CSM)要素を形成する工程、
触媒コーティングに対する適性または連続流通化学反応器内における動作性能および耐久性のうちの少なくとも1つに関してプロトタイプ型CSMを試験する工程、
静的ミキサー要素を再設計して、触媒コーティングに対する適性または連続流通化学反応器内における動作性能および耐久性のうちの少なくとも1つを改良する工程ならびに
ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する再設計された足場を含む、再設計された静的ミキサー要素を製造し、触媒コーティングを足場の表面に適用して、触媒式静的ミキサー(CSM)要素を形成する工程
を含む、方法が提供される。
【0015】
上記側面のさらなる態様が、下記において記述されている。
【0016】
次に、例示にすぎないが、添付の図面を参照しながら、本開示の好ましい態様をさらに記述および提示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一部の態様によるいくつかの異なる静的ミキサーを示している。
図2図2は、一部の態様による静的ミキサーを示している。
図3図3は、一部の態様によるコールドスプレーシステムの概略図を示している。
図4図4は、一部の態様による足場をコールドスプレーするための足場支持システムを示している。
図5図5は、他の態様による足場をコールドスプレーするための足場支持システムを示している。
図6図6は、図5の足場支持システムと一緒に使用するための支持部材を示している。
図7A図7Aは、一例による静的ミキサーをコーティングするための方法を示している。
図7B図7Bは、図6Aの方法によってコーティングされた静的ミキサーを示している。
図8-1】図8Aおよび図8Bは、コールドスプレー堆積を使用して触媒によってコーティングされた一例による静的ミキサーに関する、コーティングされた表面と無コーティングの表面(それぞれ、断面)との差異を示している。
図8-2】図8Cおよび図8Dは、コールドスプレーを使用して触媒材料によってコーティングされた一例による静的ミキサーの表面の詳細な画像を示している。
図9図9Aおよび図9Bは、電着を使用して触媒材料によってコーティングされた一例による静的ミキサーの表面の詳細な画像を示している。
図10図10は、本開示のCSMを含む連続流通反応器システムの概略例を示している。
図11図11は、一態様による触媒の組Ni-CS-SS-C-R1-4および基材としてのオレイン酸を使用した変換における、気液比の影響を示している。溶媒:EtOAc、圧力=16bar、T=140℃、総流量=2.30ml/分、τ=6.5分。
図12図12は、一部の態様による異なる3種の触媒の組および基材としてのビニルアセテートを使用した変換における、反応器圧力の影響を示している。溶媒:EtOH、T=140℃、総流量=2.30ml/分、G/L=5.00、τ=4.6~5分。
図13図13は、触媒の組Pt-EP-Ti-A-P1-5および基材としてのビニルアセテートを使用した活性化の調査を示している。溶媒:EtOH、圧力=16bar、T=140℃、総流量=3.00ml/分、G/L=5.00、τ=4.7分。
図14図14は、オレイン酸(黄色の棒線)およびビニルアセテート(青色の棒線)の水素化のための、異なる6種の触媒の組(表1を参照されたい)の比較を示している。OAに関しては、次の条件が使用された:T=140℃、p=16bar、G/L=3.6、τ=6分。VAcに関しては、次の条件が使用された:T=140℃、p=16bar、G/L=5、τ=5分。
図15図15は、0.5mL/分の液体流量、5mL/分の水素ガス流量、24barの状態で120℃において、ステンレス鋼アルミニウム合金(Ni-CS-SS-A-2-8)へのニッケルコールドスプレーコーティングを使用した、ベンジルシアニドからフェニルエチルアミンへの還元を示している。
図16図16は、ステンレス鋼アルミニウム合金(Ni-CS-SS-A-2-8)へのニッケルコールドスプレーコーティングおよび直列になった12セット反応器モジュールを使用して、120℃の温度を用いた、ビニルアセテートからエチルアセテートへの変換を示している。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本開示は、次の様々な非限定的な態様を記述しており、これらの態様は、容易な取り外しおよび容易な置きかえが可能であり、さらなる再設計の改良を可能にし、連続流通化学反応器と一緒に使用するための反応物質の効率的な混合、伝熱および触媒反応をもたらす、静的ミキサーを確認するために実施された調査に関する。驚くべきことに、付加製造された静的ミキサーの表面に触媒材料を導入することは、連続流通化学反応器内における反応物質の効率的な混合、伝熱および触媒反応をもたらし得ることが発見された。付加製造を使用して開発された静的ミキサーを含む連続流通化学反応器は、商業的に適切な流量で動作することも可能であり、下記においてさらに詳述される管理可能な背圧(流動抵抗の指標)を用いて、このような動作を提供してもよい。ここで記述された少なくともいくつかの態様によれば、静的ミキサーは有利には、インサート材として、または、静的ミキサーが反応管自体の区画の一体的な部分になった状態のモジュール型パッケージとして、インライン式連続流通反応器と一緒に構成および使用されることが可能である。少なくともここで開示されている一部の態様によれば、静的ミキサーのさらなる利点は、静的ミキサーが、シングルパスインライン式連続流通反応器と一緒に構成および使用されることが可能であるという点である。静的ミキサーは、管状であってもよいし、管状連続流通化学反応器と一緒に使用されてよい。
【0019】
静的ミキサーは慣例的に、化学反応器と一緒に使用された場合、充填床システムを使用して反応前に要素を予備混合するため、流体状構成要素を混合することを対象としてきた。上記のように、化学反応器は、一般的に充填床システムを使用し、したがって、本発明の静的ミキサーが動作できる、より高い流量の動作を対象としていない。
【0020】
現在の不均一触媒系、たとえば充填床に比較して、本発明の静的ミキサーは、様々な利点を提供することを示してきた。付加製造技術(すなわち、3D印刷)は、静的ミキサーの再設計および構成における自由度を可能にするが、連続流通化学反応器に関する特定の動作性能パラメーターで動作するように、たとえば、連続流通反応器内部における望ましい混合条件および流動条件ならびに充填床システムに比較して改良された伝熱および物質移動特性ならびに低下した背圧をもたらすように触媒コーティングされ得る頑健で商業的に成立可能な足場をもたらすときに、他の困難さおよび難点も提供する。さらに、電着およびコールドスプレー法は、驚くべきことに、静的ミキサーを触媒コーティングするのに適することが発見されており、多種多様な金属触媒を用いる用途に適していた。
【0021】
下記においてさらに記述されているように、静的ミキサーは、インライン式連続流通反応器システムと一緒に使用するためのインサート材を提供するための要素として、構成されることが可能である。静的ミキサーは、不均一触媒反応を提供することも可能であり、不均一触媒反応は、ファインケミカルおよび特殊化学物質、医薬、食品ならびに農薬、消費者製品ならびに石油化学製品の製造を含む広範な範囲に及ぶ化学的な製造に関して著しく重要である。静的ミキサーインサート材のさらなる詳細および態様が、下記において記述されている。
特殊用語
「要素」は、連続流通反応器システムの形成において、1個以上の他の構成要素と一緒に使用することができる、個別のユニットを指す。要素の例には、ここで記述された「インサート材」または「モジュール」が挙げられる。
【0022】
「シングルパス型反応器」は、流体状構成要素が、1回の機会で反応器を通過し、すでに通過した反応器に戻るようにリサイクルされることがない、方法またはシステムにおいて使用される、反応器を指す。
【0023】
「アスペクト比」は、単一のユニットまたは要素の長さ対直径(L/d)の比を意味する。一般用語
本特許明細書を通して、そうではないと具体的に記載されていない限りまたはそうではないことが文脈により要求されていない限り、単一の工程、当該組成物、工程の群または当該組成物の群への言及は、当該の工程、当該組成物、工程の群または当該組成物の群のうちの1つおよび複数(すなわち、1つ以上)を包含するように理解すべきである。したがって、ここで使用されているとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その」は、そうではないと文脈により明確に述べられていない限り、複数の側面を含む。たとえば、「1つの(a)」への言及は、単数および2つ以上を含み、「1つの(an)」への言及は、単数および2つ以上を含み、「その」への言及は、単数および2つ以上を含む等である。
【0024】
ここで、当業者は、本開示が、具体的に記述されたもの以外の変形形態および修正形態に影響され得ることを理解されよう。本開示が、すべてのこのような変形形態および修正形態を含むことを理解すべきである。本開示は、本特許明細書において個別的にまたは集合的に言及または提示された、工程、特徴、組成物および化合物のすべて、ならびに、前記工程または特徴の任意の組合せおよびすべての組合せまたはいずれか2つ以上も含む。
【0025】
ここで記述された本開示の各例は、そうではないと具体的に記載されていない限り、変更すべき点は変更した上で、ありとあらゆる他の例に適用されることになる。本開示は、例示の目的のためにのみ意図されているここで記述された具体例によって、範囲を限定されるべきではない。機能的に等価な生成物、組成物および方法は、ここで記述された本開示の範囲に明確に含まれる。
【0026】
「および/または」という用語、たとえば「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味するように理解すべきであり、両方の意味またはいずれかの意味に関する明示的な裏付けを提供するように理解すべきである。
【0027】
本特許明細書を通して、「含む(comprise)」という語句または変更形態、たとえば「含む(comprises)」もしくは「含める」は、記載された要素、整数もしくは工程または要素、整数もしくは工程の群の包含を含意するが、任意の他の要素、整数もしくは工程または要素、整数もしくは工程の群の排除を含意するわけではないと理解される。
【0028】
いくつかの従来技術の刊行物がここで言及されているが、この言及は、これらの文献のいずれかが、当技術分野、オーストラリアまたは任意の他の国において一般的な常識の一部を形成するという認可を構成するわけではないことは、明確に理解されよう。
【0029】
そうではないと規定されていない限り、ここで使用されている専門用語および科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。ここで記述された方法および材料と同様のまたは等価な方法および材料を、本発明の実用または試験において使用することができるが、適切な方法および材料が、下記において記述されている。矛盾する場合、定義を含めて、本特許明細書が優先する。さらに、材料、方法および例は、説明用のものにすぎず、限定を加えるものであるように意図されていない。
静的ミキサー
静的ミキサーが、化学反応器チャンバーのための一体的な要素を提供できることは、理解されよう。連続流通化学反応器チャンバーのための静的ミキサー要素は、ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を分散および混合するために構成された複数の通路を画定する触媒活性な足場を含んでもよい。足場の表面の少なくとも実質的な部分が、触媒材料を含んでもよいことは、理解されよう。触媒材料は、足場の表面に触媒反応性部位を設けるために、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0030】
静的ミキサーは、それぞれが連続流通化学反応器または連続流通化学反応器の反応器チャンバーに挿入するために構成された、1個以上の要素として用意されてもよい。静的ミキサー要素は、連続流通化学反応器または連続流通化学反応器のチャンバーに組み立てるための、モジュール型インサート材として構成されてもよい。静的ミキサー要素は、インライン式連続流通化学反応器または連続流通化学反応器のチャンバーのためのインサート材として構成されてもよい。インライン式連続流通化学反応器は、リサイクルループ型反応器またはシングルパス型反応器であってもよい。一態様において、インライン式連続流通化学反応器は、シングルパス型反応器である。
【0031】
静的ミキサー要素は、主要な流れに対する横方向、たとえば、静的ミキサー要素の中心にある長手方向の軸に対するラジアル方向および正接または方位角方向に向かって流体を再分配する目的で、混合特性および伝熱特性を改良するために構成されてもよい。静的ミキサー要素は、(i) 最大数に近い反応部位を活性化するように、流れに対して、可能な限り大きな触媒表面積を確保すること、ならびに、(ii) (a) 反応物質分子が静的ミキサー要素の表面とより頻繁に接触するように、および(b) 流体からまたは流体に向かって熱が効率的に伝達されるように、流動混合を改善することのうちの少なくとも1つのために構成されてもよい。静的ミキサー要素は、特定の用途との相関関係のために、様々な幾何学的構成またはアスペクト比を有するように用意されてもよい。静的ミキサー要素により、流体状反応物質を混合し、活性化のための触媒材料のすぐ近くに置くことが可能になる。静的ミキサー要素は、反応器チャンバーのハウジングの内面または内面付近においてさえ、たとえば乱流および混合を改良する乱流流量と一緒に使用するために構成されてもよい。静的ミキサー要素は、層流と乱流の両方に関する伝熱特性および物質移動特性を改良するように構成されることが可能であることも、理解されよう。
【0032】
構成は、効率、化学反応の度合いまたは他の特性、たとえば圧力降下(所定のまたは所望の流量を保持しながら)、滞留時間の分配または伝熱係数を改良するために設計されてもよい。上記のように、慣例的な静的ミキサーは、本発明の静的ミキサーによって提供される触媒反応環境から生じてもよい、改良された伝熱要件に具体的に対処するためには、これまでに開発されてこなかった。
【0033】
足場または静的ミキサーの構成は、数値流体力学(CFD)ソフトウェアを使用して決定されてもよく、CFDソフトウェアは、足場の触媒反応性部位において、反応物質または反応物質の反応性中間体の接触および活性化を改良すべく、反応物質の混合のための構成を改良するために使用されることが可能である。CFDに基づいた構成の決定は、下記の部においてさらに詳細に記述されている。
【0034】
静的ミキサー要素、足場またはこれらの反応器チャンバーは、下記の部において記述されてもいるように、付加製造によって形成されてもよい。静的ミキサーは、付加製造された静的ミキサーであってもよい。静的ミキサーおよび後続する触媒コーティングの付加製造は、(連続流通化学反応器内にある反応物質の)効率的な混合、伝熱および触媒反応のために構成された、静的ミキサーを提供することが可能であり、静的ミキサーは、信頼性および性能に関して物理的に試験されてもよく、任意に、付加製造(たとえば、3D印刷)技術を使用してさらに再設計および再構成されてもよい。付加製造は、予備的な設計および試験の自由度、ならびに、より商業的に成立可能で持続可能な静的ミキサーの開発を促進するための静的ミキサーのさらなる再設計および再構成をもたらす。
【0035】
静的ミキサー要素は、次の一般の非限定的な例としての構成のうちの1つ以上から選択される構成において、用意されてもよい:
・らせん体を有する開放型の構成、
・ブレードを有する開放型の構成、
・波形プレート、
・多層設計、
・チャネルまたは穴を有する閉鎖構成。
【0036】
一態様において、静的ミキサーの足場は、1種以上の流体状反応物質の混合を促進するために構成された複数の通路を画定する複数の一体的なユニットを有するメッシュ構成において、用意されてもよい。
【0037】
別の態様において、静的ミキサー要素は、反応器チャンバーの中を通って流れる流体の混合を促進するための複数の開口部を画定するように構成された相互接続されたセグメントの格子によって用意された、足場を含んでもよい。足場は、伝熱と流体混合の両方を促進するように構成されてもよい。
【0038】
様々な態様において、幾何形状または構成は、比表面積、体積変位比、コールドスプレーのための視線確保容易度(line-of-sight accessibility)、高い流量のための強度および安定性、付加製造を使用した製作に対する適性から選択される静的ミキサー要素の1種以上の特徴を改良するため、ならびに、度合いが大きなカオス的移流、乱流混合、触媒相互作用および伝熱のうちの1つ以上を得るために、選択されてもよい。
【0039】
一部の態様において、足場は、カオス的移流または乱流混合、たとえば断面的な、(流れに対して)横方向へのもしくは局所的な乱流混合を改良するように構成されてもよい。足場の幾何形状は、静的ミキサー要素の長手方向の軸に沿った所定の長さにおける特定の回数より多く、たとえば200m-1超、任意に400m-1超、任意に800m-1超、任意に1500m-1超、任意に2000m-1超、任意に2500m-1超、任意に3000m-1超、任意に5000m-1超で、局所的な流れ方向を変更させるように、または局所的な流れを分割するように構成されてもよい。足場の幾何形状または構成は、静的ミキサーの所定の体積における特定の数より多い、たとえば100m-3超、任意に1000m-3超、任意に1×10-3超、任意に1×10-3超、任意に1×10-3超、任意に1×1010-3超の流れ分割構造を含んでもよい。
【0040】
足場の幾何形状または構成は、実質的に管状または直線状であってもよい。足場は、複数のセグメントから形成されてもよく、または複数のセグメントを含んでもよい。セグメントの一部またはすべては、直線状のセグメントであってもよい。セグメントの一部またはすべてはたとえば、多角形プリズム、たとえば長方形プリズムを含んでもよい。足場は、複数の平坦な表面を含んでもよい。直線状のセグメントは、互いに対して角度を付けられていてもよい。直線状のセグメントは、足場の長手方向の軸に対するいくつかの異なる角度、たとえば異なる2種、3種、4種、5種または6種の角度で配置されていてもよい。足場は、繰り返された構造を含んでもよい。足場は、足場の長手方向の軸に沿って周期的に繰り返される、複数の類似した構造を含んでもよい。足場の幾何形状または構成は、足場の長さに沿って一貫していてもよい。足場の幾何形状は、足場の長さに沿って異なってもよい。直線状のセグメントは、1個以上の曲がったセグメントによって接続されていてもよい。足場は、1個以上のらせん状セグメントを含んでもよい。足場は一般に、らせん体を画定してもよい。足場は、らせん体の表面に複数の開口部を含む、らせん体を含んでもよい。
【0041】
静的ミキサーの寸法は、用途に応じて変更されてもよい。静的ミキサーまたは静的ミキサーを含む反応器は、管状であってもよい。静的ミキサーまたは反応管はたとえば、1~5000、2~2500、3~1000、4~500、5~150または10~100の範囲の直径(mmで)を有してもよい。静的ミキサーまたは反応管はたとえば、少なくとも略1、5、10、25、50、75、100、250、500または1000の直径(mmで)を有してもよい。静的ミキサーまたは反応管はたとえば、略5000未満、2500未満、1000未満、750未満、500未満、250未満、200未満、150未満、100未満、75未満または50未満の直径(mmで)を有してもよい。静的ミキサー要素または静的ミキサー要素を含む反応器チャンバーのアスペクト比(L/d)は、特定の反応のための工業的な規模の流量に適した範囲で提供されてもよい。アスペクト比はたとえば、略1~1000、2~750、3~500、4~250、5~100または10~50の範囲であってもよい。アスペクト比はたとえば、略1000未満、750未満、500未満、250未満、200未満、150未満、100未満、75未満、50未満、25未満、20未満、15未満、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満または2未満であってもよい。アスペクト比はたとえば、略1超、2超、3超、4超、5超、6超、7超、8超、9超、10超、15超、20超、25超、50超、75超または100超であってもよい。
【0042】
静的ミキサー要素または反応器は一般に、大きな比表面積(すなわち、内表面積と、静的ミキサー要素および反応器チャンバーの容積との比)を有するように用意される。比表面積は、充填床反応器システムによってもたらされる比表面積より小さくてもよい。比表面積(m-3)は、100~40,000、200~30,000、300~20,000、500~15,000または12000~10,000の範囲であってもよい。比表面積(m-3)は、少なくとも100、200、300、400、500、750、1000、2000、3000、4000、5000、7500、10000、12500、15000、17500または20000であってもよい。比表面積は、BET等温式法を含むいくつかの技法によって測定できることは、理解されよう。
【0043】
静的ミキサー要素は、層流流量または乱流流量のための特性、たとえば混合および伝熱を改良するために構成されてもよい。中空パイプ内を流れるニュートン流体の場合、層流および乱流とレイノルズ数(Re)値との相関関係は一般的に、Reが<2300である場合において層流流量をもたらし、2300<Re<4000である場合において過渡的な状態をもたらし、Reが>4000である場合において一般に乱流をもたらすであろうことは、理解されよう。静的ミキサー要素は、混合、反応の度合い、伝熱および圧力降下のうちの1つ以上から選択される改良された特性をもたらすように、層流流量または乱流流量のために構成されてもよい。特定の種類の化学反応をさらに改良することは、それ自体特段の考慮を要求することは、理解されよう。
【0044】
一態様において、静的ミキサー要素は一般に、少なくとも0.01、0.1、1、5、50、100、150、200、250、300、350、400、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000のReで動作するために構成されてもよい。静的ミキサー要素は、略0.1~2000、1~1000、10~800または20~500の一般に層流Re範囲において動作させるために構成されてもよい。静的ミキサー要素は、略1000~15000、1500~10000、2000~8000または2500~6000の一般に乱流Re範囲を動作させるために構成されてもよい。
【0045】
ミキサーを内包するための反応器チャンバーに対する静的ミキサーの体積変位率%は、1~40、2~35、3~30、4~25、5~20または10~15の範囲である。ミキサーを内包するための反応器チャンバーに対する静的ミキサーの体積変位率%は、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満であってもよい。
【0046】
静的ミキサーの構成は、断面的な微視的な乱流を改良するように提供されてもよい。このような乱流は、3D印刷法および/または表面コーティングから生じたCSMの幾何形状またはCSM表面の微視的な粗さを含む、様々な供給源から生じてもよい。たとえば、乱流長さスケールは、より良好な混合を提供するために低減されてもよい。乱流長さスケールはたとえば、微視的な長さスケールの範囲であってもよい。
【0047】
静的ミキサーの構成は、反応器内の伝熱特性、たとえば出口断面における温度差の低減を改良するように提供されてもよい。CSMの伝熱はたとえば、略20℃/mm未満、15℃/mm未満、10℃/mm未満、9℃/mm未満、8℃/mm未満、7℃/mm未満、6℃/mm未満、5℃/mm未満、4℃/mm未満、3℃/mm未満、2℃/mm未満または1℃/mm未満の温度差を有する断面または横方向温度プロファイルをもたらしてもよい。
【0048】
足場は、使用したときに、静的ミキサーの両端間の圧力降下(すなわち、圧力差または背圧)(Pa/mで)が、略0.1~1,000,000Pa/m(または1MPa/m)の範囲であり、任意の値またはこれらの間にある任意の値の範囲を含むように、構成されてもよい。たとえば、静的ミキサーの両端間の圧力降下(Pa/mで)は、略500,000Pa/m未満、250,000Pa/m未満、100,000Pa/m未満、50,000Pa/m未満、10,000Pa/m未満、5,000Pa/m未満、1,000Pa/m未満、750Pa/m未満、500Pa/m未満、250Pa/m未満、100Pa/m未満、75Pa/m未満、50Pa/m未満、25Pa/m未満、20Pa/m未満、15Pa/m未満、10Pa/m未満または5Pa/m未満であってもよい。静的ミキサーは、特定の流量に対してより低い圧力降下をもたらすように構成されてもよい。この点に関して、ここで記述された静的ミキサー、反応器、システムおよび方法は、工業用途に適したパラメーターによって提供されてもよい。上記圧力降下が維持されてもよく、ここで、体積流量は、少なくとも0.1ml/分、0.5ml/分、1ml/分、1.5ml/分、2ml/分、2.5ml/分、3ml/分、3.5ml/分、4ml/分、4.5ml/分、5ml/分、6ml/分、7ml/分、8ml/分、9ml/分、10ml/分、20ml/分、30ml/分、40ml/分、50ml/分である。
静的ミキサーを調製するための方法
連続流通化学反応器チャンバーのための触媒式静的ミキサー(CSM)要素を調製するための方法は、
ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する足場を含む静的ミキサー要素を用意する工程ならびに
触媒コーティングを足場の表面に適用して、触媒式静的ミキサー(CSM)要素を形成する工程
を含んでもよい。
【0049】
静的ミキサー要素は、付加製造、たとえば3D印刷によって用意されてもよい。静的ミキサーおよび後続する触媒コーティングの付加製造は、(連続流通化学反応器内の反応物質の)効率的な混合、伝熱および触媒反応のために構成された静的ミキサーを提供することが可能であり、静的ミキサーは、信頼性および性能に関して物理的に試験されてもよく、任意に、付加製造(たとえば、3D印刷)技術を使用してさらに再設計および再構成される。付加製造を使用した元々の設計および開発の後に、静的ミキサーは、他の製造法、たとえばキャスティング(たとえば、インベストメントキャスティング)を使用して調製されてもよい。付加製造は、予備的な設計および試験の自由度、ならびに、より商業的に成立可能で持続可能な静的ミキサーの開発を促進するための静的ミキサーのさらなる再設計および再構成をもたらす。
【0050】
静的ミキサー要素は、付加製造(すなわち、3D印刷)法によって製造されてもよい。たとえば、電子ビーム式3Dプリンタまたはレーザービーム式3Dプリンタが、使用されてもよい。3D印刷のための添加剤材料はたとえば、チタン合金を主体とした粉末(たとえば、45~105マイクロメートルの直径範囲)またはコバルト-クロム合金を主体とした粉末(たとえば、FSX-414)またはステンレス鋼もしくはアルミニウム-ケイ素合金であってもよい。レーザービーム式プリンタに関連する粉末直径は一般的に、電子ビーム式プリンタと一緒に使用されるものより低い。
【0051】
3D印刷は良く理解されており、ビームまたは押出および焼結に基づいたプロセスによって供給された熱が促進する結合を用いて、材料を粉末床に順次堆積させるプロセスを指す。3D印刷可能なモデルは一般的に、コンピュータ支援設計(CAD)パッケージによって作製される。STLファイルから3Dモデルを印刷する前には、マニフォールドエラーおよび適用された補正について、一般的に検査する。この検査が実施されたらすぐに、STLファイルは、「slicer」と呼ぶソフトウェアによって処理され、slicerは、モデルを一連の薄層に変換し、特定の種類の3Dプリンタに調整された指示を内包するGコードファイルを生成する。3D印刷法は、慣例的な製造経路によって課される製品設計の制限をなくすため、静的ミキサー要素の調製のための使用に関して有利である。この結果、3D印刷から受け継いだ設計の自由さにより、3D印刷がなかった場合のものに比べて、性能に関して、静的ミキサーの幾何形状をさらに最適化することができる。
【0052】
触媒活性な足場は、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される触媒材料から調製されてもよい。静的ミキサーを調製するプロセスは、コールドスプレーまたは電着によって、触媒材料を含むコーティングを足場の少なくとも実質的な部分に適用する工程を含んでもよい。たとえば、コーティングは、足場の表面の少なくとも50%に供給されてもよい。他の態様において、コーティングは、足場の表面の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%に供給されてもよい。
【0053】
電着または電気めっきは、金属塩を含有する溶液中に足場を配置すること、足場から間隔を置いた溶液中に第1の電極を配置すること、第2の電極を足場に接続すること、および、電極の両端に電圧をかけることを含んでもよい。次いで、ガルバニック反応が起こり、溶液中の金属イオンが足場の表面に凝集し、これにより、足場をコーティングまたはめっきする。一部の態様において、電気化学的フローセルを使用して、足場をコーティングしてもよく、ここで、足場は、アノードとして作用し、カソードは、足場を取り囲むように構成される。電着は、触媒材料からできた滑らかなコーティングを足場に供給してもよく(図9Aおよび図9Bに提示のように)、視線確保容易度を要求しない。
【0054】
コールドスプレーコーティング法は一般に、固体粒子を超音速に加速させて、粒子が付着し、表面をコーティングし、材料の堆積層を形成するように、基材の表面に弾道衝突することを含む。様々な金属粉末が、表面へのコールドスプレーのために使用されてもよく、たとえば高圧コールドスプレー、低圧コールドスプレー、運動学的金属化、パルス式ガス動的スプレーおよび真空コールドスプレーを含む、いくつかの異なる種類のコールドスプレー法およびシステムが存在する。粒子は、予備加熱されてもされなくてもよいが、粒子の温度は一般に、粒子の融点より低いままである。粒子は、300ms-1~1400ms-1の範囲の速度に加速されてもよく、粒子が表面に衝突したときに、粒子が塑性変形し、表面に結合する。
【0055】
一部の態様において、粒子は、先細型~末広型のノズルを介して、加圧された気体と一緒にして、粒子をノズルの高圧側からノズルの低圧側に供給し、これにより、超音速固体粒子のストリームを伴う超音速気体ジェットを形成することによって、加速されてもよい。一部の態様において、固体粒子は、ノズルの低圧側において、気体ジェット中に供給されてもよい。ノズルは、図3に提示のde Lavalノズルの形態であってもよい。気体は、ノズルを介して供給される前に、加熱されてもよい。
【0056】
コールドスプレー法により一般的に、高密度な材料層が基材の表面に形成する。しかしながら、コールドスプレー条件が慎重に制御された場合、触媒作用に適した多孔性コーティングが、適切な基材、たとえば静的ミキサー足場上に形成され得る。一部の態様において、コールドスプレー法によって触媒材料を足場の表面上にコーティングして、触媒層を形成してもよい。一部の態様において、コールドスプレー堆積を使用して形成された触媒層の表面は、他の堆積法、たとえば電着に比較して、より粗い(図8Aおよび図8Bに提示のように)ものであってもよい。
【0057】
粗さの増大は、触媒層の表面付近にある流体状反応物質のマイクロスケール乱流混合を促進し得、触媒反応が起き得る触媒材料のより大きな表面積を提供することができる。一部の用途において、多孔性がより大きな触媒層、または、電着もしくは他の堆積法を使用して達成された粗さに比較して増大した粗さを有する触媒層を形成するために、触媒材料を足場に堆積させることが、好ましい。
【0058】
既存のコールドスプレーシステムまたは方法を使用することは、いくつかの静的ミキサー足場をコールドスプレーするのに適さない可能性があり、理由は、足場が、衝突している気体ジェットから出た空気力によって損傷する可能性があるためである。したがって、一部の態様において、システムが、空気力による損傷を軽減または回避するために所定位置に配置されてもよい。
【0059】
図6を参照すると、一部の態様は、触媒材料からできた層を足場に堆積させて、触媒材料を含む静的ミキサーを形成するためのシステムであって、足場を緊張状態に維持するために足場の各端部を保持するように構成された第1のクランプおよび第2のクランプ、および、粒子が足場の表面に衝突し、塑性変形し、表面に結合する速度まで、固体粒子を足場に向かって加速させるように構成されたコールドスプレーシステムを含む、システムに関する。第1のクランプおよび第2のクランプは、コールドスプレーシステムによって異なる相対角度から足場をコーティングできるように、コールドスプレーシステムに対して回転可能であってもよい。第1のクランプおよび第2のクランプは、異なる足場の部分をコールドスプレーシステムによってコーティングできるように、第1のクランプから第2のクランプまで延在する軸に対して平行な方向に向かって、コールドスプレーシステムを基準にして移動可能であってもよい。第1のクランプおよび第2のクランプの片方または両方は、モーターによって回転するように駆動されてもよい。第1のクランプおよび第2のクランプの片方は、足場および他のクランプと一緒に自由に回転してもよい。一部の態様において、第1のクランプおよび第2のクランプの片方または両方は、張力を足場に加えるための緊張装置を含んでもよく、またはこの装置に連結されていてもよい。張力下の足場の保持は、図10に提示のように、コールドスプレーシステムによって発生した空気力に起因して、足場における振動または曲げ応力を低減または軽減してもよい。
【0060】
図5および図6を参照すると、一部の態様は、触媒材料の層を足場に堆積させて、触媒材料を含む静的ミキサーを形成するためのシステムであって、粒子が足場の表面に衝突し、塑性変形し、表面に結合する速度まで、足場に向かって固体粒子を加速させるように構成されたコールドスプレーシステム、および、コールドスプレーシステムによって発生した空気力によって足場を支持するように構成された支持部材を含む、システムに関する。支持部材は、足場の長さに沿って延在してもよく、コールドスプレーシステムのノズルに対して足場の反対側に配置されていてもよい。支持部材またはジグは、スリット管を含んでもよい。支持部材は、(図6に提示のように)足場をコールドスプレーするために、横方向への視線が足場に到達できるようにすべく、足場を収容するようおよび管の側壁の窓を画定するように構成された、概ね円筒形の管またはパイプを含んでもよい。足場は、コールドスプレーシステムによって異なる相対角度から足場をコーティングできるようにために、支持部材に対して回転可能であってもよい。足場は、異なる足場の部分をコールドスプレーシステムによってコーティングできるように、足場の長手方向の軸に対して平行な方向に向かって、支持部材および/またはコールドスプレーシステムを基準にして移動可能であってもよい。足場を支持部材に取り付けた後で、足場をコールドスプレーすることは、コールドスプレーシステムによって発生した空気力に起因して、足場における振動または曲げ応力を低減または軽減してもよい。
【0061】
一部の態様において、足場は、旋盤のチャックに保持されてもよく、コールドスプレーノズルは、足場に沿って1回以上の走行を行って図7に提示のように足場の異なる部分をコーティングするために、足場の長手方向の軸に対して平行な方向に移動されてもよい。支持部材は、足場と一緒にチャックによって保持されてもよく、または、支持部材がチャックに保持され、足場が支持部材に保持されてもよい。足場は、足場の表面の異なる側面をコールドスプレーノズルに提供するために、連続するラウンドのコールドスプレーの間で、回転させてもよい。
【0062】
一部の態様において、支持部材は、旋盤の本体に対して動かないように保持されてもよく、足場は、旋盤が支持部材に対して足場を回転させて、異なる角度から足場の表面をコーティングできるように、チャックに保持されてもよい。一部の態様において、足場は、足場と直接接触しなくてもよく、または、足場の部分とのみ接触してもよいが、それでもなお、コールドスプレー法中に足場が晒される空気力を低減または軽減することができる。
【0063】
一部の態様は、触媒材料の層を足場に堆積させて、触媒材料を含む静的ミキサーを形成する方法に関し、コールドスプレーノズルを含むコールドスプレーシステムを使用して、粒子が足場の表面に衝突し、塑性変形し、表面に結合する速度まで、足場に向かって固体粒子を加速させ、ここで足場が、コールドスプレーシステムによって発生した空気力が足場に及ぼす効果を低減または軽減するように、支持部材によって支持されていること、足場の長手方向の軸に対して平行な方向にコールドスプレーノズルを移動させて、足場の1回以上のコールドスプレー走行を行って足場の長さに沿って足場の異なる部分をコーティングすること、ならびに、コールドスプレーノズルに対して足場を回転させて、異なる角度方向から足場をコーティングすることを含む、方法に関する。
【0064】
一部の態様は、コールドスプレー法を使用して触媒材料によって足場をコーティングすることを含む、触媒式静的ミキサーを形成する方法に関する。一部の態様において、本方法は、最初に、付加製造法、たとえば3D印刷を使用して足場を形成することを含んでもよい。
触媒材料
足場の触媒反応性部位は、次のもののうちの少なくとも1つによって設けられてもよい:足場が、触媒材料から形成されること、触媒材料が、足場の少なくとも一部と一緒に差し込まれ、組み入れられ、および/または埋め込まれること、ならびに、足場の表面の少なくとも一部が触媒材料を含むコーティングを含むこと。一態様において、触媒反応性部位は、足場において、触媒材料を含むコーティングによって設けられる。
【0065】
触媒材料が、必要とされる特定の反応または用途に応じて選択および変更されてもよいことは、理解されよう。触媒材料は、連続流通反応器の環境中に不均一触媒反応をもたらすように選択されてもよい。多種多様な不均一触媒化学反応は、多様な触媒材料からの選択によって提供されてもよく、限定されるわけではないが、次のものを含む:水素ガスを使用した水素化、液体水素供与体を使用した水素移動反応、触媒酸化、還元的アミノ化、鈴木カップリング、Sonogashiraカップリング、Heckカップリング、Stilleカップリング、根岸カップリング、Ullmannカップリング、Kumadaカップリングを含む炭素-炭素カップリングおよび他の金属が触媒する型の有機変換。水素化反応
水素ガスを使用した水素化または液体水素供与体を使用した水素移動反応は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される1個以上の官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。
【0066】
一態様において、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される官能基は、次のように水素化されてもよい:アルケンからアルカン、アルキンからアルケンおよび/またはアルカン、アルデヒドからアルコール、カルボニルからアルコール、ケトンからアルコール、カルボン酸からアルコール、エーテルからアルコール、エステルからアルコール、ハライドから水素、イミンからアミン、アミドからアミンおよびアルコール、窒素からアンモニア、ニトリルからアミンおよびニトロ基から水素、アミンおよび/またはアナリン。
【0067】
一態様において、水素化は、1個以上のアルケン官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のアルケン官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のアルケン基を含む化合物を含み、モノオレフィンおよびジオレフィンを含んでもよい。一般的なモノオレフィンには、限定されるわけではないが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-ペンテン、メチル-1-ブテン(たとえば2-メチル-1-ブテン)、メチル-2-ブテン(たとえば2-メチル-2-ブテン)、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、メチル-1-ペンテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、メチル-2-ヘキセン、メチル-3-ヘキセン、ジメチルペンテン、エチルペンテン、オクテン、メチルヘプテン、ジメチル-ヘキセン、エチルヘキセン、ノネン、メチルオクテン、ジメチルヘプテン、エチルヘプテン、トリメチルヘキセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロペンテン、シクロヘプテン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロペンテン、エチルシクロペンテン、シクロオクテン、メチルシクロヘプテン、ジメチルシクロヘキセン、エチルシクロヘキセン、トリメチルシクロ-ヘキセン、メチルシクロオクテン、ジメチルシクロオクテン、エチルシクロオクテンならびにこれらの組合せおよび異性体が挙げられる。モノオレフィン化合物は、分子1個当たりモノオレフィン化合物と同じ数の炭素原子を含有する対応するアルカン化合物に水素化されてもよい。
【0068】
一般的なジオレフィンには、限定されるわけではないが、プロパジエン、1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,2-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2-メチル-1,2-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ヘプタジエン、メチルヘキサジエン、オクタジエン、メチルヘプタジエン、ジメチルヘキサジエン、エチルヘキサジエン、トリメチルペンタジエン、メチルオクタジエン、ジメチルヘプタジエン、エチルオクタジエン、トリメチルヘキサジエン、ノナジエン、デカジエン、ウンデカジエン、ドデカジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、メチルシクロ-ペンタジエン、シクロヘプタジエン、メチルシクロヘキサジエン、ジメチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンならびにこれらの組合せおよび異性体が挙げられる。ジオレフィン化合物は、分子1個当たりジオレフィン分子と同じ数の炭素原子を含有する対応するモノオレフィンに水素化されてもよい。たとえば、プロパジエンは、プロピレンに水素化され、1,2-ブタジエンおよび1,3-ブタジエンは、1-ブテンおよび2-ブテンに水素化され、1,3-ペンタジエンおよび1,4-ペンタジエンは、1-ペンテンおよび2-ペンテンに水素化され、イソプレンは、メチル-1-ペンテンおよびメチル-2-ペンテンに水素化され、1,3-シクロペンタジエンは、シクロペンテンに水素化される。あるいは、ジオレフィン化合物は、分子1個当たりジオレフィン化合物と同じ数の炭素原子を含有する対応するアルカン化合物にさらに水素化されてもよい。たとえば、プロパジエンは、プロパンに水素化され、1,2-ブタジエンおよび1,3-ブタジエンは、ブタンに水素化され、1,3-ペンタジエンおよび1,4-ペンタジエンは、ペンタンに水素化される。
【0069】
アルケン含有化合物は、アルキン、アルデヒド、カルボニル、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。一般的な化合物は、限定されるわけではないが、ビニルアセテート、オレイン酸またはシンナムアルデヒドを含む。
【0070】
一態様において、水素化は、1個以上のアルキン官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のアルキン官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のアルキン基を含む化合物を含む。一般的なアルキンには、限定されるわけではないが、アセチレン、プロピン(メチルアセチレンとも呼ぶ)、1-ブチン、2-ブチン、1-ペンチン、2-ペンチン、3-メチル-1-ブチン、1-ヘキシン、1-ヘプチン、1-オクチン、1-ノニン、1-デシンならびにこれらの組合せおよび異性体が挙げられる。アルキンは、対応するアルケンに水素化されてもよい。たとえば、アセチレンは、エチレンに水素化され、プロピンは、プロピレンに水素化され、ブチンは、対応するブテン(たとえば、1-ブテン、2-ブテン)に水素化される。あるいは、アルキン化合物は、分子1個当たりアルキン分子と同じ数の炭素原子を含有する対応するアルカン化合物に水素化されてもよい。たとえば、アセチレンは、エタンに水素化され、プロピンは、プロパンに水素化され、ブチンは、ブタンに水素化される。アルキン含有化合物は、アルケン、アルデヒド、カルボニル、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。一般的な化合物は、限定されるわけではないが、ビニルアセテート、オレイン酸またはシンナムアルデヒドを含む。
【0071】
一態様において、水素化は、1個以上のアルデヒド官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のアルデヒド官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のアルデヒド基を含む化合物を含む。一般的なアルデヒドは、限定されるわけではないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-およびイソ-ブチルアルデヒド、n-およびイソ-バレルアルデヒド、n-ヘキサアルデヒド、n-ヘプタアルデヒド、n-オクタナール、2-エチルヘキサナール、2-エチルヘキサ-2-エナール(2-エチルプロピルアクロレイン)、n-デカナール、2-エチルブタナール、プロパルギルアルデヒド、アクロレイン、グリオキサール、クロトンアルデヒド、フルフラール、アルドール、ヘキサヒドロベンズアルデヒド、α-シトロネラール、シトラール、クロラール、トリメチルアセトアルデヒド、ジエチルアセトアルデヒド、テトラヒドロフルフラール、フェニルアセトアルデヒド、シンナムアルデヒド、ヒドロシンナムアルデヒドならびにこれらの組合せおよび異性体を含む。アルデヒド化合物は、分子1個当たりアルデヒド分子と同じ数の炭素原子を含有する対応するアルコール化合物に水素化されてもよい。たとえば、ホルムアルデヒドは、メタノールに水素化され、アセトアルデヒドは、エタノールに水素化され、プロピオンアルデヒドは、プロパノールに水素化される。アルデヒド含有化合物は、アルケン、アルキン、カルボニル、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。一般的な化合物は、限定されるわけではないが、ビニルアセテート、オレイン酸またはシンナムアルデヒドを含む。
【0072】
一態様において、水素化は、1個以上のカルボニル官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のカルボニル官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のカルボニル基を含む化合物を含む。カルボニル官能基を含有する一般的な化合物は、アルデヒド、カルボニル、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、エノンおよびイミド基を含む他の種類の官能基を含有する、他の化合物を特徴としてもよい。カルボニル官能基を含有する化合物は、分子1個当たり同じ数の炭素原子を含有する対応するアルコール化合物に水素化されてもよい。カルボニルを含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。一般的な化合物は、限定されるわけではないが、ビニルアセテート、オレイン酸またはシンナムアルデヒドを含む。
【0073】
一態様において、水素化は、1個以上のカルボン酸官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のカルボン酸官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のカルボニル基を含む化合物を含む。一般的なカルボン酸を含有する化合物は、限定されるわけではないが、酢酸、シュウ酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸およびエイコサン酸ならびにこれらの異性体を含む。カルボン酸官能基を含有する化合物は、分子1個当たり同じ数の炭素原子を含有する対応するアルコール化合物に水素化されてもよい。カルボン酸を含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、ケトン、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。一般的な化合物は、限定されるわけではないが、ビニルアセテート、オレイン酸またはシンナムアルデヒドを含む。
【0074】
一態様において、水素化は、1個以上のエーテル官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のエーテル官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のエーテル基を含む化合物を含む。一般的なエーテルは、限定されるわけではないが、ジエチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、グリコールエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンを含む。エーテル官能基を含有する化合物は、両方とも、アルコールを含有する化合物に水素化されてもよい。エーテルを含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。
【0075】
一態様において、水素化は、1個以上のエステル官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のエステル官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のエステル基を含む化合物を含む。エステルを含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。
【0076】
一態様において、水素化は、1個以上のイミン官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のイミン官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のイミン基を含む化合物を含む。イミン含有化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、エステル、ハライド、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。
【0077】
一態様において、水素化は、1個以上のアミド官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のアミド官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のアミド基を含む化合物を含む。アミドを含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、エステル、ハライド、イミン、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。
【0078】
一態様において、水素化は、1個以上の窒素官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上の窒素官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上の窒素基を含む化合物を含む。窒素を含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。
【0079】
一態様において、水素化は、1個以上のニトリル官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のニトリル官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のニトリル基を含む化合物を含む。ニトリルを含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素およびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。
【0080】
一態様において、水素化は、1個以上のニトロ官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。たとえば、1個以上のニトロ官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のニトロ基を含む化合物を含む。ニトロを含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素およびニトリルのうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。
【0081】
一態様において、水素化は、1個以上のハライド官能基を含有する化合物を水素化するためのものであってよい。このような水素化は、ハライド還元としても公知である。たとえば、1個以上のハライド官能基を含有する化合物は、好ましくは1~略20個の炭素原子および1個以上のハライド基を含む化合物を含む。1個以上のハライド官能基を含有する化合物中のハライド官能基は、フルオリド(F)、クロリド(Cl)、ブロミド(Br)、ヨージド(I)およびアスタチド(At)からなる群より選択される。ハライドを含有する化合物は、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、エステル、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される他の官能基を含有してもよい。たとえば、1個以上のハライド官能基を含有する一般的な化合物は、限定されるわけではないが、有機ハライド(たとえば、酸ハライド)を含む。
【0082】
一態様において、水素化は、水素化化合物が上記官能基のうちのいずれか1つ以上を含む様々な保護基、たとえば保護エーテル(たとえば、ベンジルまたはシリル保護エーテル、Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis、Wiley-Interscience、New York、1999を参照されたい)を除去するものであってもよい。
【0083】
アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステル、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される1個以上の官能基を含有する化合物の水素化のための温度(℃)は、略10~200、20~195、40~190、60~185、80~180、100~175、120~170、140~165の範囲であってもよい。たとえば、温度(℃)は、少なくとも略20、40、60、80、100、120、140、160、180または200であってもよい。たとえば、温度(℃)は、略200未満、190未満、180未満、170未満、160未満、150未満、140未満、100未満または50未満であってもよい。温度は、これらの値の概ねいずれかにおいて、またはこれらの値のいずれかの間の範囲、たとえば略20乃至200℃、略50乃至180℃または略100乃至150℃の範囲において、提供されてもよい。
【0084】
アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボニル、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステル、ハライド、イミン、アミド、窒素、ニトリルおよびニトロ基のうちの1つ以上から選択される1個以上の官能基を含有する化合物の水素化のための圧力(bar)は、略1~50、5~40、10~30または15~20の範囲であってもよい。たとえば、圧力(bar)は、少なくとも略1、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50であってもよい。たとえば、圧力(bar)は、略50未満、40未満、30未満、20未満、15未満、10未満または5未満であってもよい。たとえば、圧力(bar)は、略16であってもよい。圧力(bar)は、これらの値の概ねいずれかにおいて、またはこれらの値のいずれかの間の範囲、たとえば略5乃至50または略10乃至25の範囲において、提供されてもよい。
【0085】
静的ミキサーの足場は、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つを含んでもよく、またはこれらからなってもよい。足場は、たとえば金属または金属合金から形成された、金属足場であってもよい。足場は、触媒反応が可能な金属または金属合金、たとえばパラジウムから形成されてもよい。金属足場は、付加製造(すなわち、3D印刷)に適した材料から調製されてもよい。金属足場は、触媒反応性を提供または改良するようなさらなる表面改質に適した材料、たとえば、ニッケル、チタン、パラジウム、白金、金、銅、アルミニウムまたはそれらの合金、および、たとえばステンレス鋼等の他の合金を含む金属から調製されてもよい。一態様において、足場のための金属は、チタン、ステンレス鋼ならびにコバルトおよびクロムの合金を含んでもよく、またはこれらからなってもよい。別の態様において、足場のための金属は、ステンレス鋼およびコバルトクロム合金を含んでもよく、またはこれらからなってもよい。付加製造法、すなわち、3D金属印刷を使用した場合、金属足場は、2つの主要な仕事を実施するために、具体的に設計されることが可能である:a) 触媒層または触媒層のための基材として作用すること、b) 化学反応中における最適な混合性能のための流れガイドとして作用し、続いて、反応器の内部にある反応管(単相液体ストリームまたは多相ストリーム)の壁への発熱の伝達を補助すること。
【0086】
足場または触媒材料は、鉄、アルミニウム、コバルト、銅、亜鉛、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタルおよびクロムまたはこれらの金属合金、サーメットもしくは金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される金属を含んでもよく、またはこれらからなってもよい。足場または触媒材料は、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、銀、コバルト、クロムもしくはこれらの合金を含んでもよく、またはこれらからなっていてもよい。足場は、チタン、チタン合金またはステンレス鋼を含んでもよく、またはこれらからなってもよい。チタン合金は、たとえば、アルミニウムおよびバナジウムを含んでもよい。金属合金中に使用できる他の遷移金属の非限定的な例は、ジルコニウム、ニオブおよびタンタルである。
【0087】
一態様において、足場または触媒材料は、金属、半金属および金属酸化物のうちの少なくとも1つを含む。たとえば、足場または触媒材料は、次のもの:
鉄、コバルト、クロム、アルミニウム、バナジウム、銅、亜鉛、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、ルテニウム、イリジウムおよびロジウムまたはこれらの合金もしくは混合物から選択される金属、
Bi、CdTe、HgCdTe、GaAsまたはこれらの混合物から選択される半金属ならびに
PbO、PbO、ZnO、TiO、CoO、Alまたはこれらの混合物から選択される金属酸化物
のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0088】
足場の表面は、たとえば粗化、および/または、金属もしくは合金を、足場の表面の少なくとも一部、たとえばさらに堆積させた(スパッタリングされた)層に堆積させることによって、触媒反応性を提供または改良するように改質されてもよい。表面粗化は、酸処理、制御された気体雰囲気下での熱処理、物理気相成長、コールドスプレー、プラズマ溶射、イオン注入フレーム溶射熱分解電着、化学気相成長、グロー放電、スパッタリングおよびめっきまたは任意の機械的な手段のうちの任意の方法によって達成されてもよい。表面改質は、1つ以上の外層、たとえば1種以上の金属堆積(たとえば、スパッタリングした)層をもたらしてもよい。
【0089】
触媒材料は、触媒自体を指してもよいし、または、触媒を含む材料もしくは組成物を指してもよい。触媒材料は、足場への触媒のコーティングを容易にするための1種以上の添加剤、たとえばバインダーを有する組成物中に提供されてもよい。触媒または触媒のコーティングは、部分的なコーティングまたは完全な層として足場に設けられてもよい。足場における触媒のコーティングまたは層は、1つ以上の層中に設けられてもよい。触媒は、ブラシ塗り、塗装、スラリースプレー、スプレー熱分解、スパッタリング、化学または物理気相成長法、電気めっき、スクリーン印刷、テープキャスティング、電着、フレーム溶射、アーク溶射、プラズマ溶射、デトネーションスプレー、高速フレーム溶射、レーザー溶射またはコールドスプレーによって、足場に堆積されてもよい。足場の触媒材料またはコーティングは、金属堆積プロセスによって、たとえば電着またはコールドスプレーコーティングによって提供されてもよい。電気めっきおよびコールドスプレーコーティング法は、驚くべきことに、触媒式静的ミキサーにさらなる利点をもたらすことが示された。電気めっきおよびコールドスプレー法は、多孔性触媒コーティングの形成において、単一の工程プロセスを提供することができる。標準的な触媒コーティング法は一般的に、最初に、多孔性金属酸化物層を形成した後、第二に、予備形成された多孔性層に触媒をしみ込ませることである、二工程プロセスを含んできた。一態様において、足場における触媒材料またはコーティングは、含浸された触媒材料のための支持体としての、金属酸化物多孔性層を含まない。
【0090】
触媒材料または触媒材料の組成物もしくはコーティングが、1種以上の添加剤を含んでもよいことは、理解されよう。添加剤は、足場または静的ミキサー表面における反応速度を改良するための触媒または助触媒を含んでもよい。1種以上の添加剤は、たとえば付加製造材料への添加によって、足場自体の中に(たとえばドープによって)導入されていてもよい。助触媒は、低い電気陰性度を有する材料を含んでもよい。適切な助触媒は、アルカリ金属(K、Cs)およびアルカリ土類(大部分はBa)から選択されてもよい。例外は、適度に高い電気陰性度を有する希土類(La、CeおよびSm)を含んでもよいことは、理解されよう。
【0091】
触媒材料は、解離触媒を含んでもよく、解離触媒は、モリブデン、タングステン、鉄、ルテニウム、コバルト、ホウ素、クロム、タンタル、ニッケルならびにこれらの合金、化合物および混合物からなる群より選択されてもよい。
【0092】
一態様において、足場は、触媒材料を含むコーティングを含む金属足場である。別の態様において、金属足場は、チタン、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、コバルト、クロム、これらの任意の合金またはこれらの任意の組合せを含む。別の態様において、金属足場は、ステンレス鋼およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む。別の態様において、金属足場は、チタンまたはチタン合金を含む。さらなる態様において、触媒材料は、ニッケルを含む。金属足場がステンレス鋼またはコバルトクロム合金を含む、またはこれらからなる場合、さらなる利点が提供され得る。
【0093】
一態様において、触媒活性な足場は、ステンレス鋼足場またはコバルトクロム合金足場であり、足場の表面は、白金またはニッケルから選択される金属を含む電着またはコールドスプレーコーティングによってもたらされる。
【0094】
触媒式静的ミキサーの総重量に対するコーティングまたは触媒材料の重量%は、1~40%、2~35%、5~30%、10~25%または15~20%の範囲であってもよい。触媒式静的ミキサーの総重量に対する、触媒材料を含むコーティングの重量%は、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、35%、30%、35%または40%であってもよい。触媒式静的ミキサーの総重量に対して、触媒材料を含むコーティングの重量%は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満または3%未満であってもよい。
連続流通システムおよび反応器
本開示は、1種以上の流体状反応物質の触媒反応に使用するための、連続流通化学反応器を提供する。反応器は、互いに流体連通下1個以上のチャンバー区画を含んでもよい。少なくとも1個のチャンバー区画が、静的ミキサー要素を含むことは、理解されよう。チャンバー区画は、チャンバーモジュールと呼んでもよく、ここで、各モジュールは、1個以上の静的ミキサー要素を含んでもよい。静的ミキサー要素は、連続流通化学反応器への装入のために構成されることが可能であり、この静的ミキサー要素は、「静的ミキサーインサート材」と呼んでもよい。静的ミキサー要素またはインサート材は、1個以上のモジュールの形態で提供されてもよい。静的ミキサーが化学反応器の一体的な部分であることは、理解されよう。静的ミキサーとチャンバー区画は一緒になって、単一のユニットとして提供されてもよい反応器チャンバーを形成する。チャンバー区画は、静的ミキサーのためのハウジングを提供してもよい。チャンバー区画は、任意に、熱交換器システムを含んでもよく、熱交換器システムは、動作中に反応器チャンバーから取り出された熱を制御するために使用されてもよい。1個以上の静的ミキサー要素またはチャンバー区画は、直列にまたは平行な動作の使用のために構成されてもよい。静的ミキサーまたは静的ミキサーの反応器は、チャンバー区画に1種以上の流体状反応物質を供給するための1個以上の反応物質入口、および、反応の1種以上の生成物を含む生産物ストリームを受け入れるための、静的ミキサーと流体連通した1個以上の出口を含んでもよいことは、理解されよう。
【0095】
一態様において、連続流通化学反応器は、管状またはプラグ型流通反応器である。
【0096】
別の態様において、反応器は、反応器、チャンバー区画、触媒式静的ミキサーまたはこれらの流体状構成要素の温度を制御するための熱交換器を含む。熱交換器は、シェルアンドチューブ型熱交換器設計または構成であってもよい。
【0097】
一態様において、反応器のアスペクト比はたとえば、静的ミキサー要素が反応器への挿入のために構成されてもよいように、静的ミキサーに関して上述したものと同様であってもよい。
【0098】
本開示は、
ここで記述された態様のいずれかによる1個以上の静的ミキサーを含む連続流通化学反応器、
反応器の中を通る1種以上の流体状反応物質および流体状反応物質の任意の生成物を対象にした流体の流動をもたらすためのポンプ、
任意に、反応器、チャンバー区画、触媒式静的ミキサーまたはこれらの流体状構成要素の温度を制御するための1個以上の熱交換器ならびに
濃度、流量、温度、圧力および滞留時間、1種以上の流体状反応物質、流体状反応物質の供給源、キャリア流体または反応の生成物から選択される、システムのパラメーターのうちの1つ以上を制御するための制御手段
を含む、連続流通化学反応法のためのシステムも提供する。
【0099】
システムは、チャンバー区画の前および/または後に構成されることが可能である、分散ユニットをさらに含んでもよい。分散ユニットは、1種以上の流体状反応物質を分散させるための静的ミキサーを含んでもよい。
【0100】
システムは、任意の1種以上の流体状反応物質または流体状反応物質の生成物に関する濃度を確認および測定するために使用され得る、分光計をさらに含んでもよい。
【0101】
反応器、反応器チャンバー、チャンバー区画および静的ミキサーのうちの1つ以上はそれぞれ、その補完的連係(complimentary association)のために、モジュール型形態として提供されてもよい。システムは、複数の反応器を含んでもよく、複数の反応器は、同様のまたは異なる内部および/または外部構成であってもよい。反応器は、直列に動作してもよいし、または平行な状態で動作してもよい。システム、反応器または各チャンバー区画が、反応物質を供給するため、生成物を得るため、または、様々な反応物質および/もしくは生成物を再循環させるための、1個以上の入口および出口を含んでもよい。
【0102】
反応器またはシステムが、様々な反応物質、反応物質供給源、中間生成物、または、チャンバー区画に供給されたおよびチャンバー区画内で製造された所望の生成物のリサイクルのために設計されていてもよいことも理解されよう。反応器またはシステムは、様々な設計および形態、たとえば管状反応器の形態で提供されてもよい。別の態様において、反応器は、シングルパス型反応器である。
【0103】
システムおよびプロセスは、より複雑なシステム、たとえば、石炭ガス化器、電界槽および/または天然ガスリフォーマー等を含むシステムおよびプロセスに統合されてもよい。
触媒プロセスおよび反応
静的ミキサーは、連続流通化学反応システムおよびプロセスに使用するためのものである。本方法は、インライン式連続流通プロセスであってもよい。インライン式連続流通プロセスは、リサイクルループプロセスまたはシングルパスプロセスであってもよい。一態様において、インライン式連続流通プロセスは、シングルパスプロセスである。
【0104】
上記のように、静的ミキサー要素を含む化学反応器は、連続的な方式で不均一触媒反応を実施することができる。化学反応器は、単相または多相供給物および生成物ストリームを使用してもよい。一態様において、基材供給物(1種以上の反応物質を含む)は、連続流体ストリーム、たとえば、a) 適切な溶媒中の溶質としての基材、またはb) 共溶媒を有するもしくは有さない液体基材のいずれかを含有する液体ストリームとして、供給されてもよい。流体ストリームが、1種以上の気体ストリーム、たとえば水素ガスまたは水素ガスの供給源によって提供されてもよいことは、理解されよう。基材供給物は、圧力駆動流を使用して、たとえばピストンポンプによって、反応器内に圧送される。
【0105】
本開示は、1種以上の流体状反応物質の触媒反応による生成物を合成するための方法であって、
ここで記述された態様のいずれかによる静的ミキサー要素またはシステムを含む連続流通化学反応器を用意する工程、
1個以上の反応物質入口を介して少なくとも第1の流体状反応物質を反応器に供給する工程
化学反応器または化学反応器の制御手段を動作させて、触媒式静的ミキサーによって少なくとも第1の流体状反応物質の流動および触媒反応をもたらす工程ならびに
少なくとも第1の反応物質の触媒反応の生成物を含む生産物ストリームを得る工程
を含む、方法も提供する。
【0106】
本方法は、少なくとも第1の流体状反応物質と第2の流体状反応物質との不均一触媒反応による生成物を合成するためのものであってもよく、
ここで記述された態様のいずれかによる静的ミキサー要素またはシステムを含む連続流通化学反応器を用意すること、
1個以上の反応物質入口を介して、少なくとも第1の流体状反応物質および第2の流体状反応物質またはこれらの流体状反応物質の供給源を反応器に供給すること、
化学反応器または化学反応器の制御手段を動作させて、静的ミキサーによって第1の流体状反応物質および第2の流体状反応物質の流動および触媒反応をもたらすこと、ならびに
少なくとも第1の流体状反応物質および第2の流体状反応物質の触媒反応の生成物を含む生産物ストリームを得ること
を含んでもよい。
【0107】
本方法において使用される様々なパラメーターおよび条件、たとえば温度、圧力ならびに材料および反応物質の濃度/量は、合成すべき生成物、関与する化学反応または機構、反応物質供給源、使用される触媒の選択、または、使用されている反応器の種類ならびに反応器の材料および構成を含む本方法の変数の範囲に応じて選択されてもよいことは、理解されよう。たとえば、差異は、1種以上の流体状反応物質または共溶媒(たとえば、不活性キャリア)等が気体、液体、固体またはこれらの組合せである場合に存在する。たとえば、1種以上の流体状反応物質は、流体状キャリア、たとえば、液体キャリア中の溶質反応物質またはキャリアガス中の詳述した反応物質として供給されてもよい。1種以上の流体状反応物質は、気体、たとえば水素分子または水素の供給源を含む気体として供給されてもよい。
【0108】
本方法に関する温度(℃)は、-50乃至400の範囲であってもよいし、または、任意の整数もしくはこれらの間にある任意の整数の範囲であってもよい。たとえば、温度(℃)は、少なくとも略-50、-25、0、25、50、75、100、150、200、250、300または350であってもよい。たとえば、温度(℃)は、略350未満、300未満、250未満、200未満、150未満、100未満または50未満であってもよい。温度は、これらの値の概ねいずれかにおいて、または、これらの値のいずれかの間の範囲、たとえば略0乃至250℃、略25乃至200℃または略50乃至150℃の範囲において、提供されてもよい。
【0109】
静的ミキサー要素に関して上述したように、本方法は、少なくとも略0.01、0.1、1、5、50、100、150、200、250、300、350、400、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500または10000のReにおける動作を含んでもよい。本方法は、上記値のうちのいずれか2つによって提供されるRe範囲における、動作を含んでもよい。本方法は、たとえば略50~2000、100~1500、150~1000または200~800のRe範囲の一般に層流における動作を含んでもよい。本方法は、たとえば略3000~15000、4000~10000または5000~9000のRe範囲の一般に乱流における動作を含んでもよい。
【0110】
ミキサーを内包するための反応器チャンバーに対する静的ミキサーの体積変位率%は、1~40、2~35、3~30、4~25、5~20または10~15の範囲である。ミキサーを内包するための反応器チャンバーに対する静的ミキサーの体積変位率%は、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満であってもよい。
【0111】
静的ミキサーの構成は、断面の微視的な乱流を改良するように提供されてもよい。このような乱流は、CSMの幾何形状または3D印刷法から生じたCSM表面の微視的な粗さを含む、様々な供給源から生じてもよい。たとえば、乱流長さスケールは、より良好な混合を提供するために低減されてもよい。乱流長さスケールは、たとえば、微視的な長さスケールであってもよい。
【0112】
静的ミキサーの構成は、反応器内における伝熱特性、たとえば、出口断面における低減された温度差を改良するように提供されてもよい。CSMの伝熱はたとえば、略20℃/mm未満、15℃/mm未満、10℃/mm未満、9℃/mm未満、8℃/mm未満、7℃/mm未満、6℃/mm未満、5℃/mm未満、4℃/mm未満、3℃/mm未満、2℃/mm未満または1℃/mm未満の温度差を有する断面または横方向温度プロファイルを提供してもよい。
【0113】
足場は、使用したときに、静的ミキサーの両端間の圧力降下(または背圧)(Pa/mで)が略0.1~1,000,000Pa/m(または1MPa/m)の範囲であり、任意の値またはこれらの間の任意の値の範囲を含むように構成されてもよい。たとえば、静的ミキサーの両端間の圧力降下(または背圧)(Pa/mで)は、略500,000Pa/m未満、250,000Pa/m未満、100,000Pa/m未満、50,000Pa/m未満、10,000Pa/m未満、5,000Pa/m未満、1,000Pa/m未満、750Pa/m未満、500Pa/m未満、250Pa/m未満、100Pa/m未満、75Pa/m未満、50Pa/m未満、25Pa/m未満、20Pa/m未満、15Pa/m未満、10Pa/m未満または5Pa/m未満であってもよい。静的ミキサーは、特定の流量に対してより低い圧力降下を提供するように構成されてもよい。この点に関して、ここで記述された静的ミキサー、反応器、システムおよび方法は、工業用途に適したパラメーターを有するように提供されてもよい。上記圧力降下は、維持されてもよく、ここで、体積流量は、少なくとも0.1ml/分、0.5ml/分、1ml/分、1.5ml/分、2ml/分、2.5ml/分、3ml/分、3.5ml/分、4ml/分、4.5ml/分、5ml/分、6ml/分、7ml/分、8ml/分、9ml/分、10ml/分、20ml/分、30ml/分、40ml/分、50ml/分、100ml/分、500ml/分、1000ml/分である。
【0114】
本方法は、略1秒~略5時間の範囲である、静的ミキサーまたは反応器内における平均滞留時間を含んでもよい。平均滞留時間(分で)はたとえば、略300未満、250未満、200未満、150未満、120未満、100未満、80未満、60未満、45未満、30未満、15未満、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、1未満、0.5未満または0.1未満であってもよい。平均滞留時間(分で)はたとえば、略0.1超、0.5超、1超、2超、3超、4超、5超、6超、7超、8超、9超、10超、15超、30超、45超、60超、80超、100超、120超、150超、200超または250超であってもよい。平均滞留時間は、上述したこれらの値のうちの任意の2つから選択された範囲として提供されてもよい。たとえば、平均滞留時間は、2~10、3~8、4~7分または5~6分の範囲であってもよい。
【0115】
本方法は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の生成物変換率(生成物に変換された反応物質の%)をもたらしてもよい。
【0116】
本方法は、水素化、酸化、炭素-炭素カップリングおよび還元的アミノ化から選択される不均一触媒反応を含んでもよい。一態様において、不均一触媒反応は、水素化反応である。水素化反応が、水素である少なくとも第1の流体状反応物質および水素化が可能な有機化合物である第2の反応物質を含むことは、理解されよう。水素供給源は、水素ガス(水素分子)または液体水素供与体であってもよい。水素化のための予備工程は、水素化が可能な有機化合物を導入する前に、たとえばより低い流量において、予備活性化のための水素ガスを導入することであってもよい。
【0117】
気体および液体の混合物を含む不均一な反応の場合、気体:液体比(体積/体積)は、少なくとも1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1または15:1であってもよい。気体:液体比(体積/体積)は、15:1未満、14:1未満、13:1未満、12:1未満、11:1未満、10:1未満、9:1未満、8:1未満、7:1未満、6:1未満、5:1未満、4:1未満、3:1未満または2:1未満であってもよい。気体:液体比(体積/体積)は、上述したこれらの値のうちの任意の2つから選択される範囲として提供されてもよい。たとえば、気体:液体比は、2:1~6:1の範囲であってもよい。
【0118】
静的ミキサーにおける触媒または触媒材料は、水素分子または水素の供給源に触媒材料を晒すことによって予備活性化する、たとえば水素化のための、化学的または物理的(加熱)な予備活性化法工程を必要としてもよい。一態様において、足場における触媒材料は、たとえば、少なくとも1分、2分、5分、10分、15分、20分、25分または30分にわたって活性化用流体(たとえば、水素ガス)と接触させることによって、予備活性化される。予備活性化は、30分未満、25分未満、20分未満、15分未満、10分未満、5分未満、2分未満または1分未満で起きてもよい。予備活性化は、30分未満、25分未満、20分未満、15分未満、10分未満、5分未満、2分未満または1分未満で起きてもよい。予備活性化は、上記時間の値のうちの任意の2つの範囲の間で起きてもよい。
【0119】
触媒反応は、水素化触媒の使用を含む水素挿入反応であってもよい。水素挿入または水素化触媒は、上記酸素含有有機材料を形成するための反応物質の分子内結合、たとえば、炭素-酸素結合、への水素の挿入、不飽和結合から飽和結合への変換、保護基の除去、たとえばO-ベンジル基からヒドロキシル基への変換、または、アンモニアもしくはヒドラジンまたはこれらの混合物を形成するための窒素三重結合の反応、を促進する。水素挿入または水素化触媒は、コバルト、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、パラジウム、白金ならびにこれらの合金、化合物および混合物からなる群より選択されてもよい。一態様において、水素挿入または水素化触媒は、白金またはチタンを含む、またはこれらからなる。アンモニア合成において、触媒は、後続する反応のために、水素種供給源および窒素種供給源の解離吸着を促進してもよい。さらなる態様において、水素挿入または水素化触媒は、電着またはコールドスプレーを使用してコーティングされる。
設計プロセス
設計プロセスは、付加製造、たとえば3D印刷を含む、触媒式静的ミキサー(CSM)要素を調製するための方法に関してここで上述された態様のいずれかを含んでもよい。付加製造は、予備的な設計および試験の自由度、ならびに、より商業的に成立可能な静的ミキサーの開発を促進するための静的ミキサーのさらなる再設計および再構成をもたらす。
【0120】
連続流通化学反応器チャンバーのための触媒式静的ミキサー(CSM)要素の設計および製造のための方法は、
ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する足場を含むプロトタイプ型静的ミキサー要素を設計する工程、
プロトタイプ型静的ミキサー要素を付加製造する工程、
触媒コーティングをプロトタイプ型静的ミキサー要素の足場の表面に適用して、プロトタイプ型触媒式静的ミキサー(CSM)要素を形成する工程、
触媒コーティングに対する適性または連続流通化学反応器内における動作性能および耐久性のうちの少なくとも1つに関してプロトタイプ型CSMを試験する工程、
触媒コーティングに対する適性または連続流通化学反応器内における動作性能および耐久性のうちの少なくとも1つを改良するように、静的ミキサー要素を再設計する工程ならびに
ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する再設計された足場を含む再設計された静的ミキサー要素を製造し、触媒コーティングを足場の表面に適用して、触媒式静的ミキサー(CSM)要素を形成する工程
を含んでもよい。
【0121】
触媒式静的ミキサー(CSM)要素を調製するための方法は、CSMの性能、耐久性および製造可能性のうちの少なくとも1つの設計のための方法であってもよい。触媒コーティングを足場の表面に適用する工程は、電着またはコールドスプレーを含んでもよく、またはこれらからなってもよい。足場および触媒コーティングは、ここで記述されたこれらの任意の態様によって供給されてもよい。再設計された静的ミキサー要素の製造は、当技術分野において公知の様々な方法、たとえばキャスティング(たとえば、インベストメントキャスティング)または付加製造によるものであってもよい。CSMを試験する工程、静的ミキサー要素を再設計する工程およびCSMを製造する工程は、触媒コーティングに関する性能、耐久性、製造可能性または足場適性のうちの少なくとも1つをさらに改良するために、1回以上繰り返されてもよい。
【0122】
数値流体力学(CFD)ソフトウェアは、所望の用途および関連する触媒反応によって決定される、CSMおよび足場に関する改良された様々な構成を得るために、設計(または再設計)において使用されることが可能である。たとえば、設計プロセスは、改良された伝熱特性をもたらしながらも、乱流、足場、したがって、触媒の付近における乱流長さスケールによって示されてもよい、改良された微視的および巨視的な混合特性を有する構成および幾何形状を開発するために使用されることが可能である。
【0123】
設計プロセスは、ソフトウェア、たとえばCAD幾何形状生成用ソフトウェア(たとえば、SolidWorks)の使用を含んでもよい。設計(または再設計)工程または静的ミキサーを調製するための方法は、ソフトウェア分析、たとえばCAD幾何形状生成用ソフトウェア(たとえば、SolidWorks)および/またはCFDの使用を含んでもよい。たとえば、設計(または再設計)工程または静的ミキサーを調製するための方法は、次の工程を含んでもよい:
1a. ソフトウェア、たとえばCAD幾何形状生成用ソフトウェアを使用して、CSMの足場のための初期構成を決定する工程。初期構成は、所望される特定の特徴、たとえば最大表面積、または、特定の金属堆積法により適した特徴、たとえばコールドスプレーのための視線確保容易度に基づいて決定されてもよい。
【0124】
1b. 任意に、工程1aからの初期構成によって足場またはCSMの3D物理モデルを調製する工程。
【0125】
1c. 任意に、製造、たとえば3D印刷、コールドスプレーまたは電気めっきのためのCSMの構成の適性を調査および判定する工程。変更が所望される場合、前の工程を繰り返すことができる。
【0126】
1d. CFDソフトウェアによって読取り可能なフォーマット、たとえば「stl」ファイルフォーマットに変換する工程。
【0127】
CFDモデル化ソフトウェアパッケージ(たとえば、Flow-3D、ANSYS CFX、ANSYS Fluent)を含む、さらなる工程が提供されてもよい。CFDモデル化プロセスは、次の工程のうちの1つ以上を含んでもよい:
2a. 構成または幾何形状ファイル(たとえば、STLフォーマット)をCFDモデル化ソフトウェアにインポートする工程。
【0128】
2b. メッシュをモデルの幾何形状に形成する工程。たとえば反応チャンバーの幾何形状全体は、有限の容積に分解され、これらの容積のそれぞれにおいて、流体力学の式が解かれる。
【0129】
2c. 材料特性を割り当てる工程。
【0130】
2d. 物理的性質を割り当てる工程。何のプロセスが作用するかを決定する、たとえば、乱流効果、表面張力効果、伝熱等。
【0131】
2e. 任意に、たとえば、どのように混合が起きているかを見てみたい場合において、トレーサー粒子を割り当てる工程。
【0132】
2f. 初期条件、たとえば入口における速度および圧力、必要に応じて温度、必要に応じて運動エネルギーを割り当てる工程。
【0133】
2g. 境界条件を割り当てる工程。メッシュの外的な境界において何が起きるか、すなわち、どこが入口、出口、壁、対称性等であるかをソフトウェアに通知する。
【0134】
2h. 合理的な長さの時間で所望の精度レベルにおいて結果を得ることができるように溶液プロセスを誘導する、数学的パラメーターを割り当てる工程。
【0135】
2i. 後プロセス - 結果(たとえば、乱流長さスケール、温度)を査定する工程。
【0136】
所定の触媒用途のための足場の構成を改良するために数値流体力学(CFD)ソフトウェアを使用して、足場を含む静的ミキサーを調製する方法は、
1a. CAD幾何形状生成用ソフトウェアを使用して、足場のための初期構成を決定する工程、
1b. 任意に、工程1aからの初期構成によって足場の3D物理モデルを調製する工程、
1c. 任意に、付加製造および表面堆積法のために足場の構成の適性を判定し、任意に、工程1a~1cを繰り返す工程、
1d. CAD幾何形状ソフトウェアからの第1の電子データを、CFDソフトウェアによって読取り可能なフォーマットの第2のデータに変換する工程および
2. CFDモデル化プロセスを実施する工程
を含んでもよい。
【0137】
一態様において、上記方法の工程2は、
2a. 第2のデータをCFDソフトウェアにインポートする工程、
2b. メッシュをモデルの幾何形状に形成する工程および
2c. 材料特性を割り当て、結果を査定する工程
を含んでもよい。
【0138】
設計プロセスは、触媒コーティングに関する性能、耐久性、製造可能性または足場適性のうちの少なくとも1つを最適化または改良するための、反復可能な手法をさらに含んでもよい。たとえば、幾何形状への特定の変更によって結果を改良することができる場合、(流体力学の知識に基づいた)変更を幾何形状に加えて、設計最適化手順を繰り返すことができる。
【0139】
初期の幾何形状は、静的ミキサー要素の様々な特徴、たとえば比表面積、体積変位比、コールドスプレーのための視線確保容易度、高い流量のための強度および安定性、付加製造を使用した製作に対する適性を改良するため、または、度合いが大きなカオス的移流、乱流混合、触媒相互作用もしくは伝熱を得るために、選択および最適化されてもよい。これらの特徴および着目する任意の他の特徴は、特定の用途に関する相対的な重要性に基づいて重み付けされてもよく、設計最適化の方法は、重量を増大させる特徴の改良を対象とすることができる。
【0140】
混合は、流れにおける2つ(以上)の別個の構成要素(すなわち、異なる化学種または異なる値、たとえば、温度を有するスカラー成分)が最終的に一緒になって、分子レベルで相互作用する、プロセスを指すことは、理解されよう。層流および乱流中におけるトレーサー輸送を示している、下記の図式を考慮する:
【0141】
【化1】
【0142】
上記の図式において、直線状の平行な黒い線が流線であり、これらの流線は、平均流に対して平行である。層流において、流体粒子は、層流領域中における線形染料トレースによって示されたように、流線を正確に追跡する。乱流において、数多くのサイズの渦流が、平均流に覆いかぶさる。染料が乱流領域に進入すると、染料は、平均流(流線)と渦流の両方によって指示された経路をトレースする。より大きな渦流は、流線を横切るように、染料を横方向に運搬する。より小さな渦流が発生するほど、染料フィラメントを展開させる(拡散させる)撹拌のスケールが小さくなる。この拡散こそが、より大きな渦流によって様々な場所に輸送された構成要素の局所的な混合を発生させる。
【0143】
乱流の記述は、1.乱流変動における「乱流運動エネルギー」によって示される乱流の強度、および、2.乱流スペクトルにおけるピークによって表された、このエネルギーを集中させるスケール、または等価には、「乱流長さスケール」という、少なくとも2種の量を必要とする。したがって、より高い乱流運動エネルギーを有する流れは、より激しい混合を伴うであろうし、一方で、より高い乱流長さスケールを有する流れは、より幅広な領域にわたって混合が起きることを示しているであろう。
【0144】
CFD手順は、たとえば、温度勾配を平坦化したときの触媒式静的ミキサーの流体温度および関連する特性、気泡を含む二成分流、および、モデルの分解能を増大させ、どのように混合が分子レベル(化学反応のための長さスケールである)で起きるかに関する指標を提供する、マイクロ混合モデルといった、考慮すべきさらなる複雑な事項も可能にする。
触媒スクリーニング法
ここで記述された静的ミキサー要素またはシステムを使用して触媒反応性に関して触媒または触媒材料をスクリーニングする方法であって、
所定の触媒または触媒材料を含む静的ミキサーを含む連続流通化学反応器を用意する工程、
所定のセッティングにおいて反応器を動作させる工程および
生産物ストリームから得られた生成物の%を決定する工程
を含む、方法も提供される。
【0145】
触媒スクリーニング法は、所定の反応または反応方式において、たとえば所定の条件下または所定のセッティングにおいて動作する所与の化学的な流通反応器において使用するための効果的なまたは最適な触媒材料を決定するために使用されてもよい。スクリーニング方法は、特定の触媒が、特定の用途において使用された場合において効果的または有利であるかを判定するために使用されてもよい。いくつかの異なる触媒材料が、どれが最良の収率をもたらすまたは特定の用途のために最も効果的であるかを判定するために、特定の用途に関して選択およびスクリーニングされてもよい。各特定の用途は、ここで記述された反応または反応の種類のいずれかを確立するために、任意の適切な動作構成に設定された、たとえばここで記述された動作条件のいずれかに設定された、ここで記述された化学反応器のいずれかを含んでもよい。スクリーニングのために選択された触媒材料は、潜在的に適切な任意の触媒、たとえば、ここで記述された触媒のいずれかまたはここで記述された触媒のいずれかを含む化合物を含んでもよい。触媒材料は、ここで記述された堆積法のいずれかを使用して、静的ミキサー足場の表面上にコーティングされてもよく、スクリーニング方法は、異なる触媒材料を比較する代わりにまたはこの比較に加えて、異なる堆積方法の有効性を比較するために、使用されてもよい。
【0146】
[実施例]
次の例によって、本開示をさらに記述する。次の記述は、特定の態様を記述することを目的としたものにすぎず、上記記述に関して限定を加えるものであるように意図されていないと理解すべきである。
【0147】
図1および表1を参照すると、それぞれが連続流通水素化反応器内で一緒になって直列に動作するための4個で1組とした同一の静的ミキサーである、いくつかの異なる静的ミキサーが、実験を目的として製造された。Ni-EP-CoCr-A-P2-1は、足場設計構成A-P2-6の状態になるようにコバルトクロム合金足場(CoCr)に電気めっき(EP)されたニッケル触媒層(Ni)を内包する、3D印刷された静的ミキサーである。Ni-EP-Ti-A-P2-3は、足場設計構成A-P2-3の状態になるようにチタン足場(Ti)に電気めっき(EP)されたニッケル触媒層(Ni)を内包する、3D印刷された静的ミキサーである。Ni-CS-Ti-A-P2-1は、足場設計構成A-P2-1の状態になるようにチタン足場(TI)にコールドスプレー(CS)されたニッケル触媒層(Ni)を内包する、3D印刷された静的ミキサーである。Ni-CS-SS-C-R1-4は、足場設計構成C-R1-4の状態になるようにステンレス鋼(SS)足場にコールドスプレー(CS)されたニッケル触媒層(Ni)を内包する、静的ミキサーである。Pt-EP-Ti-A-P1-5は、足場設計構成A-P2-2の状態になるようにチタン足場(Ti)に電気めっき(EP)された白金触媒層(Pt)を内包する、3D印刷された静的ミキサーである。
【0148】
【表1】
【0149】
CSMの多孔度Φは、
【0150】
【数1】
【0151】
を使用して計算することができる。
金属足場の付加製造
すべてのSMは、TiAl64V粉末(45~105マイクロメートルの直径範囲)またはコバルト-クロム超合金FSX-414粉末のいずれかを使用して、電子ビーム式3DプリンタArcam A1によって製造された。機械プロセスパラメーターは、FSX-414に関しては、試行錯誤によって設定されたが、Ti6Al4Vに関しては、合金に関して蓄積された過去の経験から既知だった。次いで、金属足場への触媒のコールドスプレーまたは電着のいずれかを行った。
金属足場への触媒のコールドスプレー
表2に示された異なるコールドスプレーシステムおよび方法を使用して、12個の異なる足場をコーティングした。最も最適な冶金学的結合および多孔度を触媒層にもたらした条件は、列8~11に提示されている。
【0152】
【表2】
【0153】
コールドスプレー法において、足場は、図7Aに示されたように片側が開いたアルミニウム管の中に保持された。この配置により、足場を効果的にコールドスプレーすることができ、同時に、キャリアガスの力による足場の破壊を防止することができた。3mmののど部を有する水冷された一体型の炭化タングステンノズルを装着したコールドスプレーシステムPlasma Giken PCS-1000を使用して、ニッケル粉末(-20~+10ミクロンの球状粒子)をスプレーした。図8A図8Dに示されたコールドスプレーされた3D足場のSEMおよび光学画像によれば、表2の列8~11に提示のコールドスプレーパラメーターは、高い多孔度および高い冶金学的結合を有するコーティングをもたらした。
金属足場への触媒の電着
電着法において、電気化学的フローセルを使用して、銅、ニッケルおよび白金をTi-6Al-4V合金またはCo-Cr静的ミキサー足場に堆積させた。SMは、カソードになり、アノードによって取り囲まれたセルの中心に位置する。同心円状の幾何形状により、均一な電流の分配が維持される。
【0154】
電着は、堆積が視線に限定されないため、他の方法を使用して効率的に堆積することが困難な貴金属を含む数多くの金属および合金が可能であること、および、素早く安価な方法であることを理由として、この用途のために有用である。手順は、適切な溶液化学反応を選択すること、ミキサーの表面の前処理を行うこと、効果的なパルス電流プロファイルを発生させることおよび堆積後に清浄化することを含んでいた。それぞれの異なる足場ミキサー材料および触媒コーティングは、異なるめっき条件を必要としてもよい。条件が慎重に制御された場合、実質的に一様な触媒金属のコーティングが、図9Aおよび図9Bのように製造された。
流通反応器による実験
連続流通反応器機構が、図10の流れ図に示されている。機構は、触媒インサート材を格納している反応器モジュール、液体試薬ポンプ(Gilson305HPLCポンプ)を含む液体供給ライン、気体供給ラインならびに電子プロセスの制御およびデータのロギングからなる。
【0155】
図10に図示のように、反応器モジュールは、それぞれが長さ15cmのステンレス鋼管(Swagelok、8mmのOD、6mmのID)から製造された4つの反応器区域を内包する。反応器モジュールは、各反応器区域の前後に位置する5個の温度プローブ(PT-100)をさらに内包する。
【0156】
反応器モジュールは、触媒インサート材の切りかえを容易にするために、容易に取り外すことができる。試薬ポンプは、ニートの出発物質基材の溶液または溶媒に溶かした出発物質基材の溶液を含有する、基材供給物ストリームを供給する。水素ガスが水素シリンダー(G型シリンダー)から供給され、T字形の構成要素の中で液体ストリームと混合される。次いで、合流したストリームは、液気分散装置(Swagelok SS-4TF-90)の中を通って流れた後で、反応器に進入する。反応器内部の圧力は、反応器の出口に位置するダイアフラム背圧調整装置(BPR、Swagelok KBP1J0A4D5A20000)によって調整される。
【0157】
BPRを通過した後、任意に、高温の排出物が、冷却用流体として水道水を用いて動作するコイル型熱交換器内で冷却されてもよい。次いで、さらなる後処理のために生成物ストリームをボトルまたはフラスコの中に収集する。
【0158】
反応器の入口にある圧力安全逃がし弁(Swagelok、SS-4R3A)、気体用管路内にある安全遮断弁(Buerkert、2/2方ソレノイド弁6027-A03)、気体用管路内にある逆流防止装置(Witt85-10);気体用管路内にあるマス・フロー・コントローラー(Bronkhorst、MFC F-201CV-500)ならびに液体ライン、気体用管路および反応器の入口にある圧力センサー(pL、pG、pR)という、さらなる安全部品ならびにプロセス制御およびモニタリング用の設備が、機構の中に据え付けられる。
【0159】
反応は、4つの反応器区域の内部において、触媒インサート材の固液界面で起きる。反応器システムの動作は、LabViewというソフトウェアによって制御されており、施設内で記録された。温度、圧力および気体流量のデータもまた、制御プログラムLabViewによってモニタリングする。
【0160】
上記構成は、水素化反応のために調整されているが、最小限の変更を装置に加えて、金属が触媒する型のC-Cカップリング反応、酸化または他の有機反応のために反応器システムを使用することもできる。
【0161】
水素化反応に関してこの反応器を評価するために、一連の実験を実施して、オレイン酸(OA、スキーム1を参照されたい)、ビニルアセテート(Vac)およびシンナムアルデヒド(CAL、スキーム2を参照されたい)の水素化を調査した。
【0162】
【化2】
【0163】
スキーム1.水素を使用したニッケル触媒によるオレイン酸からステアリン酸への還元。
【0164】
【化3】
【0165】
スキーム2.シンナミルアルコール(COH)、ヒドロシンナムアルデヒド(HCAL)およびヒドロシンナミルアルコール(HCOH)を生じさせる、シンナムアルデヒド(CAL)の還元。
【0166】
上記反応器構成による一般的な水素化反応を、次のように実施した。反応器の内部にある第1の触媒インサート材を、16bar、180℃および100mL/分の気体流量において水素を触媒インサート材に注ぎかけることによって活性化した。活性化を数時間(2.5乃至6時間)実施した。活性化の後、液体試薬ポンプを使用して、溶媒であるエチルアセテート(EtOAc)によって反応器をフラッシングした。基材であるオレイン酸をエチルアセテートに溶解させて、1mol/Lの濃度にした。
【0167】
反応の開始前に、洗浄用の溶媒と一緒に水素ガスを導入し、反応のパラメーターを調節した:反応器内部の圧力、pR=16bar、液体流量、VG,R=0.25ml/分、反応器内部の気体流量、VG,R=2.05ml/分(VG,N=21.2mL/分)、反応器温度、TR=140℃。
【0168】
圧力および温度が安定化されたらすぐに、純粋な溶媒から調製された透明なストック溶液に試薬ポンプを切り替えることによって、基材(OA)を反応器に供給した。反応器の中を通る合計流量は2.3ml/分であり、この結果、6分の平均滞留時間、τは、6分だった。反応開始から6分後、反応器の出口において、いくつかの画分に取り込まれた状態の生成物が収集された。生成物を含有する画分を合わせ、溶媒を蒸発によって除去した。
【0169】
溶媒の除去後に、白色のワックス状固体(ステアリン酸)が回収され、次いで、この固体を1H-NMRおよびGCによって分析した。反応の変換率を1H NMRスペクトルから計算し、重水素化クロロホルム(Cambridge Isotope Laboratories Inc.製)中において、分光計Bruker AC-400によって記録した。δ=7.26ppmにおける残留溶媒のピークを、内部標準として使用した。生成物の組成をGC-FIDおよびGC-MSによって分析した。
【0170】
GC-FIDの結果も使用して、NMR変換率を確認し、これによって、GCに基づいた収率を計算した。GC質量分光計Perkin Elmer Clarus600により、70eVのイオン化エネルギーによる陽イオンモードの電子衝撃イオン化を使用して、GC-質量スペクトルを得た。GCカラムPerkin Elmer Elite-5MS(30m×0.25mmのID、0.25μmの膜厚)を用いて、2分間40℃の温度プログラムにより、ガスクロマトグラフィーを実施し、次いで、10℃/分で280℃に加熱し、70のスプリット比によってこの温度に4分保持し、250℃のインジェクタ温度および移送ラインを250℃に設定した。超高純度ヘリウムを、0.7ml/分の流量でキャリアガスとして使用した。
【0171】
スプリット/スプリットレス注入口および250℃の検出器温度を有するガスクロマトグラフAgilent6850Series IIによって、GC-FID分析を実施した。Grace BPX5キャピラリーカラム(25m×0.32mmのID、0.50μmの膜厚)によって分離を実施し、40℃で2分の温度プログラム、次いで、10℃/分で280℃まで加熱し、50のスプリット比および200℃のインジェクタ温度の状態で温度を4分保持した。高純度ヘリウムを、2.4ml/分の流量でキャリアガスとして使用した。試薬であるオレイン酸は、Sigma Aldrichから得ており、溶媒であるエチルアセテート(EtOAc)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(iPrOH)は、Merck KGaAから得た。すべての試薬および溶媒は、さらなる精製なしで使用された。
【0172】
表3は、オレイン酸、ビニルアセテートおよびシンナムアルデヒドならびに表1に記載のCSMを使用した水素化反応からの実験データを示している。
【0173】
【表3】
【0174】
表3は、同様の条件下において、表1から調製された異なる組のSMに関する性能の比較を示している。G/L比ならびに足場材料、コーティング法および触媒の選択は、基材の水素化(変換率%)に影響を与え得ることが分かる。無コーティングの組のSM(X-X-Ti-A-P2-2)を使用した対照実験は、オレイン酸の水素化を全く起こさなかった。この組のオレイン酸に関する実験で観察された最も高い変換率は、55%だった(表3の記載事項9)。略10%以上の変換率をもたらした実験の生成物ストリームは濁っていたが、溶媒の除去後に白色のワックス状固体が得られた。
【0175】
G/Lおよび反応器圧力というパラメーターは、反応器の性能に著しい影響を与えることが判明しており、したがって、これらの2種のパラメーターをより詳細に研究した。図11は、G/Lに伴う変換率の線形増加を示している、Ni-CSMにおけるOAの水素化に関するパラメーターの調査を提示しており、より多量の水素が変換率を増大する。VAcの水素化のために反応器圧力を変更したとき(図12を参照されたい)にも、同様の傾向が観察された。ここで、異なる3種の触媒の組を試験したが、これらの組のうちの1つは、20bar超の圧力において、非常に高い変換率をもたらしたが、そうではない場合の線形挙動からの漸近的な偏差が観察された。表3は、異なる条件および異なる6種の触媒の組において実施された、要約した1組のこれらの実験を収載している。記載事項3は、1組の非触媒ミキサーを使用した対照実験であるが、ここで、変換は観察されなかった。OAが10%超の変換率をもたらした実験の生成物ストリームは濁っていたが、溶媒の除去後に白色のワックス状固体が得られた。この材料は、反応器内に圧送された透明なストック溶液と顕著に異なっていた。これは、ワックス状固体であるステアリン酸が、ねばついた油状物であるオレイン酸から形成されたため、水素化反応の成功の明確な指標である。
【0176】
一連の繰返し反応を設定することによって、反応器の性能および触媒の長期的な性能に及ぼす活性化の影響を研究した。ここで、1組の条件を選択し、同じ反応を、Pt-CSM組であるPt-EP-Ti-A-P1-5を使用して複数回実施した。特定の数の繰返し後、触媒を再度活性化した後で、さらなる実験を実施した。図13は、この調査の結果を示しており、新たに活性化された触媒の場合、変換率がより高く、すなわち、88.3乃至100%であり、一方で、新たに活性化された触媒なしの場合、変換率が65.3%に低下したことが明示されている。概して、触媒は、複数回の試行後でさえ触媒活性を保持しており、新たに活性化された触媒より概ね略20%低い中等度~高い変換率を一般に生じさせたと言うことができる。
【0177】
表3の記載事項16は、2種の反応性部分、すなわち、カルボニル基および二重結合を含有する基材である、シンナムアルデヒドの水素化を示している。ここで、Pt-CSMを使用して、2種の反応性基に対するこの触媒系の選択性を調査した。実験により、89%というCALの合計変換率が生じ、これにより、61%という大部分は、対応する不飽和アルコールであるシンナミルアルコール(COH)に水素化された。水素化されたアルデヒドであるヒドロシンナムアルデヒド(HCAL)は、7%見出され、完全に水素化された生成物であるヒドロシンナミルアルコール(HCOH)は、16%見出された(未反応のCAL:11%、同定されなかった他の生成物:5%)。この結果により、Pt触媒は、二重結合の還元よりアルデヒドの還元の方がより活性が高かったことが示されている。
【0178】
図14は、OAおよびVAcという異なる2種の基材に関するこの調査において使用された、異なる6種のCSM組の比較を示している。これらの比較用条件下におけるOAの変換率は、すべての触媒の場合で比較的低かったが、最も良く実施されたものは、26%におけるNi-CS-SS-C-R1-4だったが、これは、最も多量のニッケルを含有するCSM組でもあった。OAの水素化に関するこの組の良好な性能は、適用された触媒堆積法およびミキサーの3D設計が原因である。Ni-CS-SS-C-R1-4は、リボン状ミキサー設計の上にある比較的厚いNi層を含有する、両方の最良の組合せだった。図1に示された多孔性3D印刷構造と比較して、この設計は、比較的平坦で、非多孔性であるが、視線堆積法、たとえばコールドスプレーに良く適合したため、ニッケルによってミキサーが完全に被覆された。対照的に、内部細孔を含めて、多孔性設計の表面全体を完全に被覆することは、コールドスプレーによって可能ではない。一方、沈めることに基づいた堆積法である電気めっきは、これらの構造の内部細孔さえ被覆すると理解されている。しかしながら、電気めっきによって生成した層は、ここで選択された条件に関しては厚い状態ではなく、コールドスプレーによって適用されたものと多孔性が等程度でもなく、したがって、組Ni-EP-CoCr-A-P2-6およびNi-EP-Ti-A-P2-3の活性は、コールドスプレーによる場合のものと同じほどには高くなかった。Vacとの反応に関しては、Pt-CSM組、Pt-EP-Ti-A-P1-5は、Ni-CS-SS-C-R1-4を含む他のすべてのものより優れていた。ここで、本発明者らは、より活性な触媒金属Ptが、Niを主体としたCSMと比較したときに、後者の方がより多量の触媒を含有していたにもかかわらず、システムの反応性を著しく増大させていると考えている。
【0179】
Ti合金ミキサーは、水素脆化により影響されやすいように思われた。気体状水素と一緒に長期間使用した後には、ミキサーが多孔性になり、機械的安定性を喪失し、崩壊し始めた。これは、多数の実験のために使用されてきたミキサーを反応器から取り出して、新たなミキサーと置きかえたときに、明らかになった。一インシデントにおいて、ミキサーがバラバラになり、反応器パイプから粗大な金属粒の形態でのみ取り出すことが可能であった。比較において、CoCr合金CSMに関しては脆化が観察されなかった。
【0180】
コールドスプレーされた1組のNi CSMを対象にして、ICP-OESを使用して、予備的な浸出試験を実施した。この試験のために、定常状態条件において長期間の時間にわたって反応器を動作させて、合計で1L超のストック溶液を処理した。平均で、生成物ストリームは、157ppbのNi、621ppbのFeおよび34ppbのCrを含有していた。この結果により、Ni触媒は、基材に非常に良く結合していること、および、可溶性金属による汚染の大部分は、触媒層自体ではなくステンレス鋼反応管に由来する可能性があり、この汚染の総量が非常に少ないことが示されている。
SMの設計を最適化するための数値流体力学(CFD)の使用
CFDをSMの設計に適用して、付加製造されたバージョンの方が、反応物質を混合しているときにより良好であり、さらには、流動している反応物質に、触媒が堆積した表面積の最大量を付与することを確実にした。第1の設計は、流れを乱して乱流を生成するように互い違いになった時計回り方向および反時計回り方向を有するらせん状幾何形状を有する、メッシュとして想定された(図4Aおよび図4B)。
【0181】
CFD分析により、この幾何形状は、流れが利用できる直線状のチャネルが初めから終わりまで保たれていたという、著しい限定を有することが示された。これは、受けた妨害が最小だったことを意味する。
【0182】
幾何形状は、流れに対して平行に延びる直線状のチャネルを回避するように変更することによって、改善されてもよい。
さらなる流通反応器による実験
さらなる触媒式静的ミキサーを調製し、4連静的ミキサー系列(直列に一緒になった4個のモジュールで、「4セット」と呼ぶもの)または12連静的ミキサー系列(直列に一緒になった12個のモジュールで、「12セット」と呼ぶもの)のいずれかで試験した。Pd-EP-SS-A-3-7(4セット、パラジウム-エレクトロスプレーコーティング、ステンレス鋼およびアルミニウム合金基材)、Ni-CS-SS-A-2-8(12セット、ニッケル-コールドスプレーコーティング、ステンレス鋼およびアルミニウム合金基材)およびPd-EP-SS-A-2-9(12セット、パラジウム-エレクトロスプレーコーティング、ステンレス鋼およびアルミニウム合金基材)という、3種のシステムを試験した。
Mark1反応器(4セットシステム)を使用したニトロ化合物からアミンへの水素移動反応
【0183】
【化4】
【0184】
パラジウムコーティングされた静的ミキサーが存在する状況下で、メタノール中のアンモニウムホルメートを使用して、インサイチューで水素を生成した。MeOH(3mL)中のp-ニトロアニソール(153mg、1mmol)およびアンモニウムホルメート(315mg、4.6mmol)の溶液を、触媒式静的ミキサーPd-EP-SS-A-3-7を装着したMark I反応器に通し、130℃、11.5bar、1mL/分の流量において加熱した。溶離液を収集し、溶媒を蒸発させて、100%の変換率でp-メトキシアニリンを得た。
【0185】
表4に示されたパラメーターおよび変換率を用いて、同様の方法により、さらなる反応を実施した。
【0186】
【表4】
【0187】
Mark1反応器を使用した水素移動反応によるアセトフェノンの脱ハロゲン化
【0188】
【化5】
【0189】
パラジウムコーティングされた静的ミキサーが存在する状況下で、メタノール中のアンモニウムホルメートを使用して、インサイチューで水素を生成した。MeOH(3mL)中の4-ブロモアセトフェノン(100mg、0.5mmol)およびアンモニウムホルメート(510mg、7.5mmol)の溶液を、触媒式静的ミキサーPd-EP-SS-A-3-7を装着したMark I反応器に通し、130℃、12bar、1mL/分の流量で加熱した。溶離液を収集し、溶媒を蒸発させて、アセトフェノン(65%)、4-ブロモアセトフェノン(33%)および2%のアセトフェノンホモダイマーを得た。Mark2反応器
Mark2連続流通反応器機構は、液体用管路供給物、液体試薬ポンプ(Gilson305HPLCポンプ)、気体供給ラインならびに電子プロセス制御およびデータロギングを有し、Mark1反応器のためのものと同様である。しかしながら、Mark2反応器は、4個ではなく12個の触媒インサート材を格納している。
【0190】
触媒は、たとえば20barにおいて120℃で1時間水素ガスを反応器に通すことによって、予備活性化されてもよい。
【0191】
所与の基材パラメーター、たとえば温度、溶媒、圧力、液体流量、水素ガス流量および濃度に関しては、これらのパラメーターは、基材から生成物への変換のための最良の反応条件を決定するために、変更されてもよい。
【0192】
この方法は、最良の反応条件が表5に列記された、種々の基材のために使用された。Mark2反応器を使用したビニルアセテートからエチルアセテートへの還元(表5の記載事項1、を参照されたい)
ビニルアセテートの溶液(30mL、EtOH中の2M)を、120℃、24bar、1mL/分の液体流量および5mL/分の水素ガス流量において、触媒式静的ミキサーNi-CS-SS-A-2-8を装着したMark2反応器に通した。溶離液を収集して、100%の変換率でエチルアセテートを得た。
【0193】
表5に示されたパラメーターおよび変換率を用いて、同様の方法により、さらなる反応を実施した。
【0194】
【表5】
【0195】
フェニルアセチレンからエチルベンゼンへの還元(表5、記載事項3を参照されたい)のための、最適化プロセスの一例が図15に示されている。0.5mL/分の液体流量、5mL/分の水素ガス流量、120℃における24barというより有利な条件が、フェニルアセチレンからエチルベンゼンへの100%の変換率のために必要とされることが発見された。
【0196】
図16は、Ni-CS-SS-A-2-8およびMark2反応器を使用したビニルアセテートからエチルアセテートへの変換に関しては、100%の変換率を達成するために、120℃の最適温度が必要とされることを示している(表5、記載事項1を参照されたい)。
浸出実験
触媒式静的ミキサーからの触媒の潜在的な浸出を分析するために、複数の実験の出口を収集し、濃縮し、ICP-OESを実施した。下記の2つの表は、ニッケル触媒とパラジウム触媒の両方において定常状態に見えるときの、触媒式静的ミキサー浸出結果を示しており、反応中における静的ミキサーからの触媒の浸出が最小限であることを示している。
【0197】
【表6】
【0198】
【表7】
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 連続流通化学反応器チャンバーのためのモジュールとして構成された静的ミキサー要素であって、前記ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する触媒活性な足場を含み、前記足場の表面の少なくとも一部が、前記表面に触媒反応性部位を設けるための触媒材料を含む、静的ミキサー要素。
[2] 前記モジュールが、連続流通化学反応器チャンバーへの挿入のために構成される、[1]に記載の静的ミキサー要素。
[3] 前記触媒反応性部位が、前記足場が前記触媒材料から形成されること、前記触媒材料が前記足場の少なくとも一部と一緒に差し込まれ、組み入れられ、および/または埋め込まれること、ならびに、前記足場の前記表面の少なくとも一部が前記触媒材料を含むコーティングを含むこと、のうちの少なくとも1つによって設けられている、[1]または[2]に記載の静的ミキサー要素。
[4] 前記足場の少なくとも一部が、前記触媒材料を含むコーティングを含む、[1]から[3]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[5] 前記コーティングが、電着またはコールドスプレーコーティングである、[3]または[4]に記載の静的ミキサー要素。
[6] 前記触媒材料が、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される、[1]から[5]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[7] 前記触媒材料が、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタルおよびクロムのうちの少なくとも1つから選択される金属、またはこれらの金属合金、サーメットもしくは金属酸化物を含む、[1]から[6]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[8] 前記触媒材料が、次のもの:
鉄、コバルト、銅、亜鉛、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、ルテニウム、イリジウムならびにロジウムまたはこれらの合金もしくは混合物から選択される金属、
Bi、CdTe、HgCdTe、GaAsまたはこれらの混合物から選択される半金属ならびに
PbO、PbO 、ZnO、TiO 、CoO、Al またはこれらの混合物から選択される金属酸化物
のうちの少なくとも1つを含む、[1]から[7]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[9] 前記触媒材料が、ニッケルまたはニッケル合金を含む、[1]から[8]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[10] 前記足場が、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物を含む、またはこれらからなる、[1]から[9]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[11] 前記足場が、チタン、アルミニウムもしくはステンレス鋼を含む、またはこれらからなる、[10]に記載の静的ミキサー要素。
[12] 前記足場が、付加製造によって形成される、[1]から[11]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[13] 前記ミキサーを内包するための反応器チャンバーに対する前記静的ミキサーの体積変位率%が、30未満である、[1]から[12]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[14] 前記足場の構成が、反応物質の混合および伝熱を向上させるための数値流体力学ソフトウェアを使用して決定される、[1]から[13]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[15] 前記足場が、反応物質の混合および伝熱を容易にするために構成された複数の通路を画定する複数の一体的なユニットを有する、メッシュ構成として設けられている、[1]から[14]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[16] 前記足場の構成が、少なくとも略3000のレイノルズ数(Re)をもたらす、[1]から[15]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素。
[17] [1]から[16]のいずれか一項に記載の1個以上の静的ミキサー要素を含む、1種以上の流体状反応物質の反応に使用するための連続流通化学反応器。
[18] 1個以上の触媒式静的ミキサーインサート材ならびに前記インサート材を収容および格納するために構成された少なくとも1個のチャンバー区画を含む、[17]に記載の連続流通化学反応器。
[19] 互いに流体連通した1個以上のチャンバー区画であって、少なくとも1個のチャンバー区画が、前記ミキサーによって流動および反応している最中の前記1種以上の流体状反応物質を分散および混合するために当該チャンバー区画の中に配置された前記静的ミキサー要素を含む、チャンバー区画と、
前記1個以上のチャンバー区画に前記1種以上の流体状反応物質を供給するための1個以上の反応物質入口と、
前記反応の生成物を含む生産物ストリームを受け入れるための、前記静的ミキサーと流体連通した1個以上の出口と
を含む、[17]または[18]に記載の連続流通化学反応器。
[20] 前記反応器が、管状反応器である、[17]から[19]のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
[21] 前記ミキサーを内包するための反応器チャンバーに対する前記静的ミキサーの体積変位率%が、略30未満である、[17]から[20]のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
[22] 前記反応器が、前記反応器、チャンバー区画、触媒式静的ミキサーまたはこれらの流体状構成要素の温度の制御を可能にするための熱交換器システムを含む、[17]から[21]のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
[23] 熱交換器システムが、前記反応器、チャンバー区画、触媒式静的ミキサーまたはこれらの流体状構成要素の温度を制御するための制御装置を含む、[17]から[22]のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器。
[24] 前記熱交換器システムが、シェルアンドチューブ型熱交換器を含む、[23]に記載の連続流通化学反応器。
[25] 連続流通化学反応をもたらすためのシステムであって、
[1]から[16]のいずれか一項に記載の静的ミキサーを含む連続流通化学反応器または[17]から[24]のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器、
前記反応器の中を通る1種以上の流体状反応物質および前記流体状反応物質の任意の生成物を対象にした流体の流動をもたらすためのポンプ、
前記反応器、チャンバー区画、静的ミキサーまたはこれらの流体状構成要素の温度の制御を可能にするための1個以上の熱交換器ならびに
前記1種以上の流体状反応物質または前記流体状反応物質の供給源もしくは生成物の濃度、流量、温度、圧力および滞留時間から選択される前記システムのパラメーターのうちの1つ以上を制御するための制御装置
を含む、システム。
[26] 1種以上の流体状反応物質の触媒反応による生成物を合成するための方法であって、
[1]から[16]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素、[17]から[24]のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器または[25]に記載のシステムを含む連続流通化学反応器を用意する工程、
前記1個以上の反応物質入口を介して、少なくとも第1の流体状反応物質を前記反応器に供給する工程、
前記化学反応器または前記化学反応器の制御手段を動作させて、前記静的ミキサーによって前記少なくとも第1の流体状反応物質の流動および触媒反応をもたらす工程ならびに 前記少なくとも第1の反応物質の触媒反応の生成物を含む生産物ストリームを得る工程を含む、方法。
[27] 少なくとも第1の流体状反応物質と第2の流体状反応物質との不均一触媒反応による生成物を合成するための[26]に記載の方法であって、
[1]から[16]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素、[17]から[24]のいずれか一項に記載の連続流通化学反応器または[25]に記載のシステムを含む連続流通化学反応器を用意すること、
1個以上の反応物質入口を介して、少なくとも第1の流体状反応物質および第2の流体状反応物質または前記流体状反応物質の供給源を前記反応器に供給すること、
前記化学反応器または前記化学反応器の制御手段を動作させて、前記静的ミキサーによって前記第1の流体状反応物質および第2の流体状反応物質の流動および触媒反応をもたらすことならびに
少なくとも前記第1の流体状反応物質と第2の流体状反応物質との触媒反応の生成物を含む生産物ストリームを得ること
を含む、方法。
[28] 前記静的ミキサーの両端間の圧力差(Pa/mで)が、略10,000未満である、[26]または[27]に記載の方法。
[29] 体積流量の圧力差が、少なくとも1ml/分である、[26]から[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30] 連続流通化学反応器チャンバーのための静的ミキサー要素を調製するための方法であって、
前記ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する足場を含む静的ミキサー要素を用意する工程ならびに
触媒コーティングを前記足場の表面の少なくとも一部に適用して、前記表面に複数の触媒反応性部位を設ける工程
を含む、方法。
[31] 前記触媒コーティングを前記足場の前記表面の少なくとも一部に適用する前記工程が、電着またはコールドスプレーによるものである、[30]に記載の方法。
[32] 前記触媒コーティングが、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される触媒材料を含む、[30]または[31]に記載の方法。
[33] 前記方法が、付加製造によって前記静的ミキサーの前記足場を調製する工程を含む、[30]から[32]のいずれか一項に記載の方法。
[34] 前記足場の材料が、金属、金属合金、サーメットおよび金属酸化物のうちの少なくとも1つから選択される、[30]から[33]のいずれか一項に記載の方法。 [35] 連続流通化学反応器チャンバーのための触媒式静的ミキサー(CSM)要素の設計および製造のための方法であって、
前記ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する足場を含むプロトタイプ型静的ミキサー要素を設計する工程、
前記プロトタイプ型静的ミキサー要素を付加製造する工程、
触媒コーティングを前記プロトタイプ型静的ミキサー要素の前記足場の表面に適用して、プロトタイプ型触媒式静的ミキサー(CSM)要素を形成する工程、
触媒コーティングに対する適性または連続流通化学反応器内における動作性能および耐久性のうちの少なくとも1つに関して前記プロトタイプ型CSMを試験する工程、
触媒コーティングに対する適性または連続流通化学反応器内における動作性能および耐久性のうちの少なくとも1つを改良するように、前記静的ミキサー要素を再設計する工程ならびに
前記ミキサーによって流動および反応している最中の1種以上の流体状反応物質を混合するために構成された複数の通路を画定する再設計された足場を含む前記再設計された静的ミキサー要素を製造し、触媒コーティングを前記足場の前記表面に適用して、前記触媒式静的ミキサー(CSM)要素を形成する工程
を含む、方法。
[36] 前記触媒コーティングを前記足場の前記表面に適用する前記工程が、電着またはコールドスプレーである、[35]に記載の方法。
[37] 前記設計工程および再設計工程のうちの少なくとも1つが、CAD幾何形状生成用ソフトウェアの使用を含む、[35]または[36]に記載の方法。
[38] 前記設計工程および再設計工程のうちの少なくとも1つが、数値流体力学モデル化の使用を含む、[35]から[37]のいずれか一項に記載の方法。
[39] [1]から[16]のいずれか一項に記載の静的ミキサー要素を使用して触媒反応性に関して触媒材料をスクリーニングする方法であって、
所定の反応器のセッティングにおいて、所定の触媒材料を用いて、前記静的ミキサーを含む連続流通化学反応器を動作させる工程および
生産物ストリームから得られた生成物の収率を決定する工程
を含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16