(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】流体密な機械式締結システム、及び関連する構造体
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20230807BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20230807BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20230807BHJP
F16B 37/04 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
F16B5/02 Y
F16J15/10 C
F16J15/10 T
F16J15/10 K
B64C1/00 A
F16B37/04 W
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022034366
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2017119245の分割
【原出願日】2017-06-19
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2016-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ピー.ウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー イー.プラス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ケー.クライン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヴイ.サルミ
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06860689(US,B1)
【文献】米国特許第09174735(US,B2)
【文献】特開平05-215108(JP,A)
【文献】特開平01-288605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
F16J 15/10
B64C 1/00
F16B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面及び内側面を有するとともに、第1部材貫通孔を画定する第1部材と、
外側面及び内側面を有するとともに、前記第1部材貫通孔と整列する第2部材貫通孔を画定する第2部材と、
機械式締結システムと、を含む構造体であって、前記機械式締結システムは、
前記第1部材貫通孔に少なくとも部分的に受容され、ブッシュ貫通孔を画定し、且つ、前記第1部材の前記内側面と前記第2部材の前記外側面との間の間隙に配置されるフランジを含むブッシュと、
前記第2部材の前記内側面に接続されるとともに、前記第2部材貫通孔及び前記ブッシュ貫通孔と整列する隙間穴を画定し、且つ、ナットを含むナットプレートであって、前記隙間穴が、前記第2部材に隣接する第1端部から当該第1端部とは反対側の第2端部まで延びており、前記第1端部が開放端であり、前記第2端部が閉鎖端であるように構成されたナットプレートと、
前記ナットプレートを前記第2部材の前記内側面に接続する機械式締結具と、
前記ブッシュ貫通孔を貫通するとともに、前記ナットと螺合するボルトと、を含
み、
前記ブッシュ貫通孔および前記第2部材貫通孔は、同じ大きさの直径を有している、構造体。
【請求項2】
前記フランジと前記第1部材の前記内側面との間の界面を封止する第1シールをさらに含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第1シールは、フィレットシールである、請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記フランジと前記第2部材の前記外側面との間に設けられた第2シールをさらに含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の構造体。
【請求項5】
前記第2シールはOリングであり、前記Oリングは、前記ブッシュに形成された溝に受容される、請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
前記ナットプレートと前記第2部材の前記内側面との間に設けられた第3シールをさらに含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の構造体。
【請求項7】
前記第3シールはOリングであり、前記Oリングは、前記ナットプレートに形成された溝に受容される、請求項6に記載の構造体。
【請求項8】
前記第1部材貫通孔に少なくとも部分的に受容される外側ブッシュをさらに含み、前記外側ブッシュは、前記ブッシュの前記ブッシュ貫通孔と整列する外側ブッシュ貫通孔を画定する、請求項1~7のいずれか1つに記載の構造体。
【請求項9】
前記第1部材貫通孔は、皿穴を含み、前記外側ブッシュは、前記皿穴に固定されている、請求項8に記載の構造体。
【請求項10】
前記外側ブッシュは、金属材料で形成されている、請求項8に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、機械式締結具に関し、具体的には、機械式締結具を用いて組み立てられる航空機の翼などの構造体に関し、より具体的には、航空機の翼構造体のための流体密な機械式締結システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の翼は、典型的には、リブ、翼桁、及び、外板パネル(例えば、上側外板パネル及び下側外板パネル)で構成される。具体的には、リブは、翼の長さに沿って互いに離間している。リブの前端は前方の翼桁に接続している一方で、リブの後端は後方の翼桁に接続している。上側の外板パネルは、各リブの上側部分に接続している一方で、下側の外板パネルは、各リブの下側部分に接続している。したがって、リブ、翼桁、及び外板パネルは、密閉された主翼ボックス(wing box)を形成しており、当該主翼ボックスは、一般に、旅客機及び民間航空機の燃料タンクとして用いられている。
【0003】
ジェット燃料が主翼ボックスに収容される場合、外板パネルとリブとの間の接続部は流体密でなければならない。従来、外板パネルをリブに締結して流体密な接続を実現する処理においては、作業員が、主翼ボックスの狭い空間に入って作業を行う必要がある。したがって、様々な安全対策をとらねばならず、航空機の全体的な製造費が増大する。このため、主翼ボックスを組み立てる際に主翼ボックスに入る必要がないことが好ましい。
【0004】
特定の戦闘機の翼の組み立てにおいては、リブに対して外板パネルを外部から接続することにより、作業員が主翼ボックスに入ることに関連する狭い空間の課題を回避している。しかしながら、戦闘損傷要件(battle damage requirements)を満たすために、戦闘機の燃料は、典型的には、主翼ボックス自体ではなく区分されたブラダー(bladders)に収容される。このため、戦闘機のリブに対して外板パネルを外部から締結する場合、流体密であることはあまり問題ではない。
【0005】
したがって、当業者は、航空機の翼の組み立ての分野において研究及び開発の努力を続けている。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態においては、本開示の機械式締結システムは、第1部材の貫通孔に少なくとも部分的に受容されるようなサイズ及び形状を有するブッシュと、前記第2部材に接続可能なナットプレートと、ボルトとを含みうる。前記ブッシュは、ブッシュ貫通孔を画定するとともに、前記第1部材と反対側の第2部材との間に配置可能なフランジを含み、前記ナットプレートは、ナットを含むとともに、前記第2部材の貫通孔と整列する隙間穴を画定し、前記ボルトは、前記ブッシュ貫通孔を貫通するとともに、前記ナットと螺合する。
【0007】
一実施形態において、本開示の構造体は、外側面及び内側面を有するとともに、第1部材貫通孔を画定する第1部材と、外側面及び内側面を有するとともに、前記第1部材貫通孔と整列する第2部材貫通孔を画定する第2部材と、機械式締結システムと、を含み、前記機械式締結システムは、ブッシュと、ナットプレートと、ボルトとを含み、前記ブッシュは、前記第1部材貫通孔に少なくとも部分的に受容されるとともに、ブッシュ貫通孔を画定し、且つ、フランジを含み、前記フランジは、前記第1部材の前記内側面と前記第2部材の前記外側面との間の間隙に配置され、前記ナットプレートは、前記第2部材の前記内側面に接続されるとともに、前記第2部材貫通孔及び前記ブッシュ貫通孔と整列する隙間穴を画定し、且つ、ナットを含み、前記ボルトは、前記ブッシュ貫通孔を貫通するとと
もに、前記ナットと螺合する。
【0008】
一実施形態において、本開示の構造体は、外側面及び内側面を有するとともに、第1部材貫通孔を画定する第1部材と、外側面及び内側面を有するとともに、前記第1部材貫通孔と整列する第2部材貫通孔を画定する第2部材と、機械式締結システムと、を含み、前記機械式締結システムは、外側ブッシュと、内側ブッシュと、フィレットシールと、ナットプレートと、ボルトと、を含み、前記外側ブッシュは、前記第1部材の前記外側面の近傍において前記第1部材貫通孔に少なくとも部分的に受容されるとともに、外側ブッシュ貫通孔を画定し、前記内側ブッシュは、前記第1部材の前記内側面の近傍において前記第1部材貫通孔に少なくとも部分的に受容されるとともに、内側ブッシュ貫通孔を画定し、且つ、フランジを含み、前記フランジは、前記第1部材の前記内側面と前記第2部材の前記外側面との間の間隙に配置されるとともに、前記第2部材の前記外側面とシール係合しており、前記フィレットシールは、前記フランジと前記第1部材の前記内側面との間の界面を封止し、前記ナットプレートは、前記第2部材の前記内側面とシール係合するとともに、隙間穴を画定し、且つ、前記隙間穴に受容されるナットを含み、前記ボルトは、前記外側ブッシュ貫通孔及び前記内側ブッシュ貫通孔を貫通し、前記ナットと螺合する。
【0009】
一実施形態において、組立方法は、(1)前記第1部材に第1部材貫通孔、前記第2部材に第2部材貫通孔をそれぞれ形成し;(2)前記第1部材貫通孔にブッシュを挿入し、その際、前記ブッシュは、ブッシュ貫通孔を画定するとともにフランジを含み、前記フランジは、前記第1部材の内側面と接触し;(3)前記第2部材の内側面にナットプレートを接続し、その際、前記ナットプレートは、前記第2部材貫通孔と整列する隙間穴を画定するとともに、前記隙間穴に受容されるナットを含み;(4)前記ブッシュ貫通孔と前記第2部材貫通孔とを整列させ;(5)前記ブッシュ貫通孔にボルトを挿入するとともに、前記ボルトと前記ナットとを螺合させる、ことを含む。
【0010】
本開示の流体密な機械式締結システム、及び関連する構造体についての他の実施形態は、以下の詳細な説明、添付図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】リブに対して外板パネルを接続するために本開示の流体密な機械式締結システムを用いた航空機の翼を示す斜視図である。
【
図2】構造体の部材を接続する本開示の機械式締結システムの一実施形態を示す側方断面図である。
【
図3】
図2の機械式締結システムの一部を示す斜視図である。
【
図4A-4D】
図2の機械式締結システムを用いた構造体の組み立てに含まれるステップを示す側方断面図である。
【
図5】本開示の機械式締結システムのある代替の実施形態を示す側方断面図である。
【
図6】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2を参照すると、概括的に100で示される流体密な機械式締結システムと、概括的に10で示される構造体とが開示されており、当該構造体は、本開示の流体密な機械式締結システム100を用いて第2部材14に接続された第1部材12を含む。本明細書で詳しく説明するように、本開示の流体密な機械式締結システム100は、第1部材12の流体密性を維持する一方で、第2部材14に対して第1部材12を外部から(第1部材12の外側13(
図2)から)接続し易くすることができる。
【0013】
ある特定の用途において、本開示の構造体10は、旅客機又は民間航空機などの、航空機の翼であってもよい。したがって、構造体10の第1部材12は、航空機の翼の外板パネル16と、任意ではあるが、当該外板パネル16に接続されたストリンガ18とを含みうる。また、構造体10の第2部材14は、内部翼桁リブ20を含みうる。しかしながら、当業者であれば分かるように、本開示の範囲から逸脱しない範囲において、航空宇宙の用途又は航空宇宙以外の用途のいずれにでも、本開示の流体密な機械式締結システム100を用いて様々な部材を互いに接合することが可能である。
【0014】
次に
図2を参照すると、構造体10の第1部材12は、第1部材貫通孔22を画定し、当該第1部材貫通孔22は、皿穴24を含む。構造体10の第2部材14は、第2部材貫通孔26を画定している。第1部材貫通孔22は、貫通孔軸Aに沿って第2部材貫通孔26と整列している。本開示の流体密な機械式締結システム100は、第1部材貫通孔22及び第2部材貫通孔26を貫通して、第1部材12と第2部材14とを接続している。
【0015】
本開示の流体密な機械式締結システム100は、外側ブッシュ102と、内側ブッシュ104と、ナットプレート106と、ナット108と、ボルト110とを含む。本開示の範囲から逸脱しない範囲で、本開示の流体密な機械式締結システム100に追加のコンポーネント及び特徴を含めてもよい。例えば、特定の実施形態において、本開示の流体密な機械式締結システム100は、第1部材12と内側ブッシュ104との間の第1シール112(例えば、フィレットシール(fillet seal))、内側ブッシュ104と第2部材1
4との間の第2シール114(例えば、Oリング)、及び/又は、第2部材14とナットプレート106との間の第3シール116(例えば、Oリング)をさらに含む。
【0016】
本開示の流体密な機械式締結システム100の外側ブッシュ102は、本体部120を含みうる。当該本体部は、第1部材12の外側面13の近傍(その部位又はその近く)において、構造体10の第1部材12における第1部材貫通孔22にきっちりと嵌って受容されるようなサイズ及び形状を有する。例えば、外側ブッシュ102の本体部120は、第1部材12の第1部材貫通孔22の皿穴24にきっちりと嵌って受容されるようなサイズ及び形状を有する。外側ブッシュ102の本体部120は、第1端部122と、当該第1端部122から(貫通孔軸Aに対して)軸方向に反対側の第2端部124とを含みうる。外側ブッシュ102の本体部120は、第1端部122から第2端部124まで軸方向に延びる外側ブッシュ貫通孔126を画定している。外側ブッシュ貫通孔126は、外側ブッシュ102の本体部120における第1端部122の近傍に座ぐり穴(counterbore
)128を含む。
【0017】
外側ブッシュ102の本体部120は、本開示の範囲から逸脱しない範囲で、様々な材料やこれらの材料の組み合わせにより形成される。外側ブッシュ102の本体部120を導電材料で形成することにより、落雷が生じた際に、周囲の第1部材12に電荷を容易に分散させることができる。外側ブッシュ102は、ボルト110と直接接触する可能性があるため、外側ブッシュ102の本体部120を形成する材料の強度及び剛性も考慮される。ある特定の構成において、外側ブッシュ102の本体部120は、金属材料(例えば、金属又は金属合金)で形成される。非限定的な具体例として、外側ブッシュ102の本体部120は、航空宇宙級チタン合金(例えば、Ti-6Al-4V又はTi-5Al-2.5Sn)などのチタン合金で形成されてもよい。しかしながら、ポリマーや複合材料(例えば、炭素繊維強化プラスチック)などの非金属材料を用いることも考えられる。
【0018】
本開示の流体密な機械式締結システム100の内側ブッシュ104は本体部130を含みうる。当該本体部は、第1部材12の内側面15の近傍において、構造体10の第1部材12における第1部材貫通孔22にきっちりと嵌って受容されるようなサイズ及び形状を有する。内側ブッシュ104の本体部130は、第1端部132と、当該第1端部13
2から(貫通孔軸Aに対して)軸方向に反対側の第2端部134とを含みうる。内側ブッシュ104のボディ部130は、第1端部132から第2端部134まで軸方向に延びる内側ブッシュ貫通孔136を画定している。
【0019】
したがって、
図2に示す組立構成においては、内側ブッシュ104の第1端部132は、外側ブッシュ102の第2端部124と接触している。さらに、上記組立構成においては、外側ブッシュ貫通孔126は、内側ブッシュ貫通孔136と軸方向に整列しており、当該内側ブッシュ貫通孔は、第2部材14の第2部材貫通孔26と軸方向に整列している。これにより、外側ブッシュ貫通孔126、内側ブッシュ貫通孔136、第2部材貫通孔26、及び、ナットプレート106の隙間穴(clearance bore)156を含む、ボルト受け穴138が、画定される。
【0020】
内側ブッシュ104の本体部130における第2端部134の近傍において、当該本体部130から、フランジ140が外方に突出している。フランジ140は、第1部材12と第2部材14との間の間隙30に位置しており、第1部材12の内側面15と接触する第1面142と、第2部材14の外側面17と接触する第2面144とを含む。フランジ140の第2面144は、第1面142から(貫通孔軸Aに対して)軸方向に反対側に位置しており、これにより、これらの面の間にフランジ厚みTが規定されている。フランジ厚みTは、第1部材12と第2部材14との間の間隙30の幅Wとほぼ等しいため、第1部材12と第2部材14との間にシム(shim)を設ける必要性を排除することができる。
【0021】
第1シール112は、第1部材12の内側面15と、内側ブッシュ104のフランジ140との間の界面を封止することにより、流体が界面を通過するのを(完全に防止するわけではないが)抑制することができる。例えば、第1シール112は、内側ブッシュ104のフランジ140に沿って周方向に延びるフィレットシール(fillet seal)であって
もよい。例えば、第1シール112は、多硫化物系の結合シーラント剤で形成することができる(又は、これを含みうる)。第1部材12の内側面15と、内側ブッシュ104のフランジ140との間の界面を封止するために、他の技術を用いてもよい。
【0022】
内側ブッシュ104のフランジ140の第2面144は、周溝146を画定している。Oリングなどの第2シール114は、周溝146に受容される。第2シール114は、内側ブッシュ104のフランジ140の第2面144と、第2部材14の外側面17とが接触する際、内側ブッシュ104と第2部材14との間の界面を封止する。したがって、内側ブッシュ104のフランジ140は、第2部材14の外側面17とシール係合している。
【0023】
内側ブッシュ104の本体部130は、本開示の範囲から逸脱しない範囲で、様々な材料や、これらの材料の組み合わせにより形成される。ある特定の構成において、内側ブッシュ104の本体部130は、ポリマー材料で形成することができる。非限定的な具体例として、内側ブッシュ104の本体部130は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの誘電性熱可塑性ポリマーで形成することができる。しかしながら、複合材料や金属材料などの他の材料を用いることも考えられる。
【0024】
本開示の流体密な機械式締結システム100のナットプレート106は、本体部150(
図3を参照)を含み、当該本体部は、第1端部152と、当該第1端部152から(貫通孔軸Aに対して)軸方向に反対側の第2端部154とを有する。ナットプレート106の本体部150には、第1端部152から第2端部154へ向かって(ただし、完全には貫通しないで)延びる隙間穴156が画定されている。ナットプレート106の本体部150における第1端部152の近傍において、当該本体部150から、フランジ158が外方に突出している。
【0025】
ナット108は、ナットプレート106の本体部150における第1端部152の近傍において、ナットプレート106の隙間穴156に受容される(例えば、圧入される)。ナット108は、当該ナット108が、貫通孔軸Aを中心としてナットプレート106に対して回転しないように、ナットプレート106と係合する。例えば、ナット108は、六角形状の断面を有し、ナットプレート106の隙間穴156は、対応する六角形状を有している。
【0026】
図2に示すように、ナットプレート106及びナット108は、2つの別個のコンポーネントである。しかしながら、1つの変形例においては、ナット108は、ナットプレート106と一体化していてもよい(すなわち、ナット108及びナットプレート106は、単一の一体型構造体として形成されてもよい)。
【0027】
ナットプレート106及びナット108の素材は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ある特定の構成においては、ナットプレート106をポリマー材料で形成し、ナット108を金属材料(例えば、金属又は金属合金)で形成してもよい。非限定的な具体例として、ナットプレート106をポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの誘電性熱可塑性ポリマーで形成し、ナット108を航空宇宙級チタン合金(例えば、Ti-6Al-4V又はTi-5Al-2.5Sn)などのチタン合金で形成してもよい。
【0028】
ナットプレート106は、ナット108及び隙間穴156が、外側ブッシュ貫通孔126、内側ブッシュ貫通孔136、及び、第2部材貫通孔26と軸方向に整列するように、第2部材14と接続している。様々な手法によって、ナットプレート106と第2部材14とを接続することができる。例えば、
図3に示すように、機械式締結具160(例えば、リベット、スクリュー、ボルトなど)をナットプレート106のフランジ158に挿入して、隣接する第2部材14に係合させ、ナットプレート106と第2部材14とを接続する。
【0029】
再び
図2を参照すると、ナットプレート106のフランジ158の接合面162は、周溝164を画定している。Oリングなどの第3シール116は、周溝164に受容される。第3シール116は、ナットプレート106のフランジ158の接合面162と、第2部材14の内側面19とが接触する際、第2部材14とナットプレート106との間の界面を封止する。したがって、ナットプレート106のフランジ158は、第2部材14の内側面19とシール係合している。
【0030】
本開示の流体密な機械式締結システム100のボルト110は、シャフト178の反対の各端174、176にそれぞれ設けられた頭部170及びねじ山部172を含む。外側ブッシュ貫通孔126、内側ブッシュ貫通孔136、第2部材貫通孔26、及び隙間穴156により画定されたボルト受け穴138をボルト110のシャフト178が貫通することにより、ボルト110のネジ部172が、ナット108と螺合する。ボルト110のねじ部172が、ナット108と螺合すると、ボルト110の頭部170は、外側ブッシュ102の外側ブッシュ貫通孔126の座ぐり穴128に受容されるとともに、外側ブッシュ102と接触する。
【0031】
ボルト110は、本開示の範囲から逸脱しない範囲で、様々な材料やこれらの材料の組み合わせにより形成される。ナット108と同じ材料を用いてボルト110を形成することも考えられる。ある特定の構成において、ボルト110は、金属材料(例えば、金属又は金属合金)で形成される。非限定的な具体例として、ボルト110は、航空宇宙級チタン合金(例えば、Ti-6Al-4V又はTi-5Al-2.5Sn)などのチタン合金で形成されてもよい。しかしながら、複合材料などの他の材料を用いることも考えられる
。
【0032】
次に
図4A~
図4Dを参照すると、本開示の流体密な機械式締結システム100(
図2)を用いて構造体10(
図2)を組み立てるための、本開示の方法のステップが示されている。本開示の流体密な機械式締結システム100のコンポーネント(例えば、外側ブッシュ102、内側ブッシュ104、ナットプレート106、ナット108、及びボルト110)の製造などの追加的なステップも想定されている。
【0033】
図4Aに示すように、第1部材12及び第2部材14を用意する。第1部材12に、皿穴24を含む第1部材貫通孔22を形成する。第2部材14に第2部材貫通孔26を形成する。第1部材貫通孔22及び第2部材貫通孔26は、例えば、適切な道具を用いて第1及び第2の部材12、14を機械加工/ドリル加工することにより形成することができる。
【0034】
図4Bに示すように、第1部材貫通孔22に本開示の流体密な機械式締結システム100(
図2)の外側ブッシュ102を挿入して、当該外側ブッシュ102を、第1部材貫通孔22の皿穴24に固定する。これに加えて、第1部材貫通孔22に内側ブッシュ104を挿入して、フランジ140を、第1部材12の内側面15に接触させる。外側及び内側のブッシュ102、104を挿入した状態で、外側ブッシュ貫通孔126と内側ブッシュ貫通孔136とを整列させ、内側ブッシュ104の第1端部132と、外側ブッシュ102の第2端部124とを接触させる。
【0035】
引き続き
図4Bを参照すると、第2部材14の内側面19に、ナットプレート106(ナット108と第3シール116とを含む)を接続し、その際、ナット108及び隙間穴156が、第2部材14により画定された第2部材貫通孔26と整列するようにする。
図3に示すように、ナットプレート106と第2部材14との接続は、例えば、機械式締結具160をナットプレート106のフランジ158に挿入して、第2部材14と係合させることにより実現される。ナットプレート106と第2部材14との接続により、ナットプレート106と第2部材14の内側面19との間の第3シール116が押圧される。
【0036】
引き続き
図4Bを参照すると、内側ブッシュ104のフランジ140の厚みT(
図2)は、初期状態では、所望の厚みよりも大きい場合がある。したがって、本開示の組み立て方法の次のステップに進む前に、任意ではあるが、鋸や同様の道具などを用いて、ラインLに沿ってフランジ140を切断し、内側ブッシュ104のフランジ140が所望の厚みTを有するようにしてもよい。所望の厚みT、ひいては、ラインLの位置は、組み立てられる第1部材12と第2部材14との間の間隙30(
図2)の程度に応じて決定される。
【0037】
図4Cに示すように、内側ブッシュ104のフランジ140を、任意で、所定のサイズに合わせて(例えば、
図4Bに示すラインLに沿って)トリミングした後、第1シール112及び第2シール114を導入する。第1シール112の導入は、内側ブッシュ104と第1部材12の内側面15との間で内側ブッシュ104のフランジ140に沿って周方向に延びるフィレットとして、シーラント材料を塗布することにより、行われる。例えばOリングなどの第2シール114の導入は、フランジ140の第2面144を切り欠いて溝146を形成し、この切り欠き溝146に第2シール114(例えば、Oリング)を挿入することにより、導入される。
【0038】
図4Dに示すように、第1部材12に組付けられた外側及び内側のブッシュ102、104、並びに、第2部材14に組付けられたナットプレート106及びナット108を用いて、第1部材12を第2部材14に近づけて、外側ブッシュ貫通孔126及び内側ブッシュ貫通孔136を第2部材貫通孔26及び隙間穴156と整列させることにより、ボル
ト受け穴138を形成する。その後、ボルト110を、第1部材12の外側面13から差し込み、ボルト受け穴138を通過させて、最終的に(
図2を参照)、ナット108と螺合させることにより、
図2に示すような構造体10を形成する。
【0039】
したがって、
図2に示すように、ボルト110がナット108に完全にねじ込まれて結合している状態では、内側ブッシュ104と第2部材14の外側面17との間で第2シール114が押圧される。これにより、ボルト受け穴138を、第1部材12の内側面15における流体(例えば、ジェット燃料)と隔離することができる。
【0040】
図5を参照すると、概括的に200で示される本開示の流体密な機械式締結システムの代替の一実施形態は、ブッシュ203と、ナットプレート206と、ナット208と、ボルト210とを含む。本開示の流体密な機械式締結システム200は、第1部材12´とブッシュ203との間の第1シール212(例えば、フィレットシール)、ブッシュ203と第2部材14´との間の第2シール214(例えば、Oリング)、及び/又は、第2部材14´とナットプレート206との間の第3シール216(例えば、Oリング)をさらに含む。
【0041】
システム200は、システム100の外側ブッシュ102及び内側ブッシュ104の代替である1つのブッシュ203を除けば、システム100と実質的に同じである。
【0042】
ブッシュ203は、本開示の範囲から逸脱しない範囲で、様々な材料やこれらの材料の組み合わせにより形成される。材料の選択においては、(ブッシュ203を第1部材12´に挿入する際の)屈曲性を考慮してもよい。ある特定の構成において、ブッシュ203は、ポリマー材料で形成することができる。非限定的な具体例として、ブッシュ203は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの誘電性熱可塑性ポリマーで形成することができる。しかしながら、複合材料や金属材料などの他の材料を用いることも考えられる。
【0043】
本開示の例を、
図6に示す航空機の製造及び保守方法400、及び、
図7に示す航空機402に関連させて説明する。生産の開始前において、航空機の製造及び保守方法400は、航空機402の仕様決定及び設計404と、材料調達406とを含む。生産中には、航空機402の部品/小組立品の製造408、及び、システムインテグレーション410が行われる。その後、航空機402は、認可及び納品412の工程を経て、使用414に入る。顧客による使用中は、航空機402は、定例の整備及び保守416に組み込まれる。これには、改良、再構成、改修などが含まれる。
【0044】
方法400の各工程は、システムインテグレーター、第三者、及び/又は、オペレーター(例えば顧客)によって実行又は実施することができる。なお、システムインテグレーターは、航空機メーカー及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよく、その数は特に限定されない。同様に、第三者は、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよい。オペレーターは、例えば、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等である。
【0045】
図7に示すように、例示的な方法400によって製造された航空機402は、複数のシステム420及び内装422を有する機体418を含む。複数のシステム420の例としては、1つ又は複数の推進系424、電気系426、油圧系428、および環境系430が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでもよい。
【0046】
本開示の流体密な機械式締結システムは、航空機の製造及び保守方法400における1つ又は複数の段階において用いることができる。一例として、本開示の流体密な機械式締
結システムは、材料調達406において用いてもよい。他の例として、部品/小組立品の製造408、システムインテグレーション410、及び/又は、整備及び保守416に対応する部品又は小組立品は、本開示の流体密な機械式締結システムを用いて作製又は製造されてもよい。他の例として、機体418及び/又は内装422は、本開示の流体密な機械式締結システムを用いて構築されてもよい。また、1つ又は複数の装置の実施例、方法の実施例、又は、それらの組み合わせを、例えば、部品/小組立品の製造408やシステムインテグレーション410で用いることにより、実質的に、機体418や内装422などの航空機402の組み立て速度を速めたりコストを削減したりすることもできる。同様に、1つ又は複数のシステムの実施例、方法の実施例、又は、それらの組み合わせを、航空機402の使用中、例えば、限定するものではないが、整備及び保守416に用いてもよい。
【0047】
さらに、本開示は、以下の付記による実施形態を含む。
【0048】
付記1.外側面13及び内側面15を有するとともに、第1部材貫通孔22を画定する第1部材12と、外側面17及び内側面19を有する第2部材14と、機械式締結システム100と、を含む構造体であって、前記第2部材14は、前記第1部材貫通孔22と整列する第2部材貫通孔26を画定し、前記機械式締結システム100は、前記第1部材貫通孔22に少なくとも部分的に受容されるブッシュ104と、前記第2部材14の前記内側面19に接続されたナットプレート106と、ボルト110と、を含み、前記ブッシュ104は、ブッシュ貫通孔136を画定するとともにフランジ140を含み、前記フランジ140は、前記第1部材12の前記内側面15と前記第2部材14の前記外側面17との間の間隙30に配置されており、前記ナットプレート106は、前記第2部材貫通孔26及び前記ブッシュ貫通孔136と整列する隙間穴156を画定し、前記ナットプレート106は、ナット108を含み、前記ボルトは、前記ブッシュ貫通孔136を貫通するとともに、前記ナット108と螺合する、構造体10。
【0049】
付記2.前記フランジ140と前記第1部材12の前記内側面15との間の界面を封止する第1シール112をさらに含む、付記1に記載の構造体10。
【0050】
付記3.前記第1シール112は、フィレットシールである、付記2に記載の構造体10。
【0051】
付記4.前記フランジ140と前記第2部材14の前記外側面17との間に設けられた第2シール114をさらに含む、付記1に記載の構造体10。
【0052】
付記5.前記第2シール114はOリングであり、前記Oリングは、前記ブッシュ104に形成された溝146に受容される、付記4に記載の構造体10。
【0053】
付記6.前記ナットプレート106と前記第2部材14の前記内側面17との間に設けられた第3シール116をさらに含む、付記1に記載の構造体10。
【0054】
付記7.前記第3シール116はOリングであり、前記Oリングは、前記ナットプレート106に形成された溝164に受容される、付記6に記載の構造体10。
【0055】
付記8.前記第1部材貫通孔22に少なくとも部分的に受容される外側ブッシュ102をさらに含み、前記外側ブッシュ102は、前記ブッシュ104の前記ブッシュ貫通孔136と整列する外側ブッシュ貫通孔126を画定する、付記1に記載の構造体10。
【0056】
付記9.前記第1部材貫通孔22は、皿穴24を含み、前記外側ブッシュ102は、前
記皿穴24に固定されている、付記8に記載の構造体10。
【0057】
付記10.前記外側ブッシュ102は、金属材料で形成されている、付記8に記載の構造体10。
【0058】
付記11.前記ブッシュ104及びナットプレート106は、ポリマー材料で形成されている、付記10に記載の構造体10。
【0059】
付記12.前記ナット108は、前記隙間穴156に圧入される、付記1に記載の構造体10。
【0060】
付記13.前記ナットプレート106は、機械式締結具160を用いて前記第2部材14の前記内側面19と接続されている、付記1に記載の構造体10。
【0061】
付記14.付記1に記載の構造体を含む航空機。
【0062】
付記15.前記第1部材は、航空機の翼における外板パネルであり、前記第2部材は、リブである、付記14に記載の航空機。
【0063】
付記16.外側面及び内側面を有するとともに、第1部材貫通孔を画定する第1部材と、外側面及び内側面を有するとともに、前記第1部材貫通孔と整列する第2部材貫通孔を画定する第2部材と、機械式締結システムと、を含む構造体であって、前記機械式締結システムは、外側ブッシュと、内側ブッシュと、フィレットシールと、ナットプレートと、ボルトと、を含み、前記外側ブッシュは、前記第1部材の前記外側面の近傍において前記第1部材貫通孔に少なくとも部分的に受容されるとともに、外側ブッシュ貫通孔を画定し、前記内側ブッシュは、前記第1部材の前記内側面の近傍において前記第1部材貫通孔に少なくとも部分的に受容され、内側ブッシュ貫通孔を画定するとともにフランジを含み、前記フランジは、前記第1部材の前記内側面と前記第2部材の前記外側面との間の間隙に配置されるとともに、前記第2部材の前記外側面とシール係合しており、前記フィレットシールは、前記フランジと前記第1部材の前記内側面との間の界面を封止し、前記ナットプレートは、前記第2部材の前記内側面とシール係合するとともに、隙間穴を画定し、且つ、前記隙間穴に受容されるナットを含み、前記ボルトは、前記外側ブッシュ貫通孔及び前記内側ブッシュ貫通孔を貫通して、前記ナットと螺合する、構造体。
【0064】
付記17.前記外側ブッシュは、金属材料で形成されており、前記内側ブッシュはポリマー材料で形成されている、付記16に記載の構造体。
【0065】
付記18.第1部材及び第2部材を組み立てるための方法であって、前記第1部材に第1部材貫通孔、前記第2部材に第2部材貫通孔をそれぞれ形成し;前記第1部材貫通孔にブッシュを挿入し、その際、前記ブッシュは、ブッシュ貫通孔を画定するとともにフランジを含み、前記フランジは、前記第1部材の内側面と接触し;前記第2部材の内側面にナットプレートを接続し、その際、前記ナットプレートは、前記第2部材貫通孔と整列する隙間穴を画定するとともに、前記隙間穴に受容されるナットを含み;前記ブッシュ貫通孔と前記第2部材貫通孔とを整列させ;前記ブッシュ貫通孔にボルトを挿入するとともに、前記ボルトと前記ナットとを螺合させる、ことを含む方法。
【0066】
付記19.前記フランジと前記第1部材の前記内側面との間の界面に第1シールを設け、前記フランジに第2シールを設けて、前記第2シールが、前記フランジと前記第2部材の外側面との間の界面を封止するようにし、前記ナットプレートに第3シールを設けて、前記第3シールが、前記ナットプレートと前記第2部材の前記内側面との間の界面を封止
するようにする、ことをさらに含む、付記18に記載の方法。
【0067】
付記20.前記ボルトを挿入する前記ステップの前に前記フランジをトリミングすることをさらに含む、付記18に記載の方法。
【0068】
本開示の流体密な機械式締結システム及び関連する構造体の説明を航空機に関連させて行ったが、当業者であれば、本開示の流体密な機械式締結システム及び関連する構造体を様々な輸送機および輸送機以外の用途に利用可能であることを容易に理解するであろう。例えば、本明細書で説明した実施形態は、ヘリコプター、旅客船、自動車などの様々な輸送機において実施することが可能である。
【0069】
本開示の流体密な機械式締結システム及び関連する構造体の様々な実施形態を図示及び説明してきたが、本明細書を読めば当業者には種々の改変が可能であろう。本願は、そのような改変も包含し、請求の範囲によってのみ限定されるものとする。