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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】管接続部の離脱防止構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/04 20060101AFI20230807BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
F16L21/04
F16L21/08 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022055639
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2017242477の分割
【原出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2022091914
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】594087274
【氏名又は名称】神戸市
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】森 充弘
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大介
(72)【発明者】
【氏名】熊木 芳宏
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187996(JP,A)
【文献】特開2016-138637(JP,A)
【文献】特開2008-082418(JP,A)
【文献】特開平10-122466(JP,A)
【文献】特開平09-014569(JP,A)
【文献】特開昭50-079826(JP,A)
【文献】実開昭56-134487(JP,U)
【文献】実開昭59-116685(JP,U)
【文献】実開昭61-066290(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第0314162(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/04
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管部の挿口と他方の管部の受口との嵌合接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記継ぎ輪と他方の前記管部の受口側との管軸芯方向で相対向する部位には、前記受口と前記継ぎ輪との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記離脱移動阻止手段は、前記継ぎ輪の管軸芯方向両端の管支持部のうち、他方の管部側となる他端側の前記管支持部の内周面側で、且つ、他方の管部の外周面との間を密封するシール部よりも前記継ぎ輪の管軸芯方向中央側に偏位した部位に形成された前記受口の外周面と当接可能な離脱阻止部から構成され、
前記離脱阻止部の当接位置から前記シール部のシール保持溝までの距離は、前記継ぎ輪の一端側の管支持部の内周面において、一方の前記管部の外周面との間を密封するシール部のシール保持溝の両区画壁のうち、内方側の前記区画壁における管軸芯方向の厚み寸法よりも大に構成されている管接続部の離脱防止構造
【請求項2】
記離脱移動阻止手段は、前記継ぎ輪の管軸芯方向両端の管支持部のうち、他方の管部側となる他端側の前記管支持部の内周面側で、且つ、他方の管部の外周面との間を密封するシール部よりも前記継ぎ輪の管軸芯方向中央側に偏位した部位に形成された前記受口の外周面と当接可能な離脱阻止部から構成され、
前記継ぎ輪の他端側の前記管支持部の内周面で、且つ、前記離脱阻止部よりも前記継ぎ輪の管軸芯方向中央側に偏位した部位には、前記離脱阻止部が前記受口の外周面に当接した状態で当該受口の外周面との間を密封する弾性シール材が設けられている請求項1記載の管接続部の離脱防止構造。
【請求項3】
記継ぎ輪の管軸芯方向両端の管支持部のうち、他方の管部側となる他端側の前記管支持部の内周面と他方の管部の外周面との間を密封するシール部が設けられ、
前記継ぎ輪の管軸芯方向の他端側の前記管支持部の内周面には、管軸芯方向で2つの凹部が形成され、管軸芯方向外方側の前記凹部は、前記シール部のシール保持溝に構成されている請求項1記載の管接続部の離脱防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の管部の挿口と他方の管部の受口との嵌合接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記継ぎ輪と他方の前記管部の受口側との管軸芯方向で相対向する部位には、前記受口と前記継ぎ輪との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の管接続部の離脱防止構造として、特許文献1に示す管取付け構造が存在する。この管取付け構造では、一方の管部の挿口と他方の管部の受口との嵌合接続部がK形のメカニカル継手から構成されている。このメカニカル継手は、挿口の外周面と受口のテーパー状の内周面との間にゴム輪等のシール材を装着し、このシール材を管軸芯方向から押圧可能な押圧部を備えた押輪のフランジ部と受口のフランジ部とをボルト・ナットで締め付け連結する。この締め付け連結により、受口のフランジ部に引き寄せ固定される押輪の押圧部でシール材が水密状態に圧縮され、その水密状態が維持される。
【0003】
また、嵌合接続部であるメカニカル継手を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪は、受口よりも大径の円筒状の周壁部と、周壁部の管軸芯方向両端から径方向内方に一体的に延設される円環状の側壁部と、各側壁部の内径側端部から管軸芯方向に沿って外方に一体的に延設される管支持部と、を主要構成として備えている。
継ぎ輪の両管支持部の内周面には、両管部の外周面との間を密封するシール材が装着されたシール部が設けられている。
【0004】
離脱移動阻止手段は、受口側となる継ぎ輪の他端側の管支持部の内径を、受口のテーパー部の最大外径よりも小径に形成し、挿口と受口との離脱時に、継ぎ輪の他端側の管支持部が受口のテーパー部に管軸芯方向から当接して、それ以上の離脱移動を阻止するように構成されている。
【0005】
また、継ぎ輪内に位置する挿口の外周面には、当該外周面に食い込む係止部材を備えた分割構造の離脱規制部が挟持固定され、この離脱規制部の外径を、挿口側となる継ぎ輪の一端側の管支持部の内径よりも大径に形成し、挿口と受口との離脱時に、挿口に挟持固定されている離脱規制部が継ぎ輪の一端側の管支持部に管軸芯方向から当接して、それ以上の離脱移動を阻止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-138637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示す管取付け構造では、挿口と受口との離脱時に、挿口に挟持固定されている離脱規制部が継ぎ輪の一端側の管支持部に管軸芯方向から当接するだけであり、挿口と継ぎ輪の一端側の管支持部との屈曲を規制する機能は有しない。そのため、挿口と受口とが離脱したとき、挿口と継ぎ輪の一端側の管支持部とが大きく屈曲し、継ぎ輪の一端側の管支持部の内周面に設けられているシール部の周方向での密封性が局部的に低下し、その密封性が低下した部位から流体の漏洩が発生する不都合がある。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、挿口と受口との離脱時に、それ以上の離脱移動を確実に規制しながらも、挿口と継ぎ輪の一端側の管支持部との屈曲状態を適正な範囲に維持して、シール部の周方向での局部的な密封低下に起因する流体の漏洩を抑制することのできる管接続部の離脱防止構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1特徴構成は、一方の管部の挿口と他方の管部の受口との嵌合接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記継ぎ輪と他方の前記管部の受口側との管軸芯方向で相対向する部位には、前記受口と前記継ぎ輪との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
一方の前記管部には、これに外装支持されている前記継ぎ輪の管軸芯方向の一端側の管支持部に固定連結される連結部と、前記継ぎ輪の一端側の管支持部に対する前記挿口の離脱移動に連れて前記挿口の外周面との間での抜止め抵抗が増大する抜止部とを備えた分割構造の補強固定手段が設けられている点にある。
【0010】
上記構成によれば、挿口と受口との嵌合接続部に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、他方の管部の受口側と継ぎ輪との間においては、それらの管軸芯方向で相対向する部位に設けた離脱移動阻止手段により、他方の管部の受口と継ぎ輪との一定以上の相対離脱移動を当接阻止することができる。
また、一方の管部の挿口と継ぎ輪との間においては、挿口に設けた分割構造の補強固定手段の連結部が継ぎ輪の一端側の管支持部に固定連結されている。さらに、補強固定手段の抜止部は、継ぎ輪の一端側の管支持部に対する挿口の離脱移動に連れて当該挿口の外周面との間での抜止め抵抗が増大するので、全体として、一方の管部の挿口と継ぎ輪の一端側の管支持部とが補強固定手段を介して一体的に強固に固定連結される。
これにより、挿口と受口とが離脱しても、継ぎ輪の他端側の管支持部に対する受口の抜け出し移動、及び継ぎ輪の一端側の管支持部に対する挿口の抜け出し移動をそれぞれ強固に阻止することができる。
【0011】
しかも、継ぎ輪の一端側の管支持部と補強固定手段の抜止部とにより、管部の挿口における管軸芯方向に間隔をおいた二箇所を支持するので、挿口と受口とが離脱したとき、挿口と継ぎ輪の一端側の管支持部との屈曲を抑制することができる。
【0012】
したがって、挿口と受口との離脱時に、それ以上の離脱移動を離脱移動阻止手段及び補強固定手段との協働で確実に規制しながらも、挿口と継ぎ輪の一端側の管支持部との屈曲状態を適正な範囲に維持して、シール部の周方向での局部的な密封低下に起因する流体の漏洩を抑制することができる。
【0013】
本発明による第2特徴構成は、前記離脱移動阻止手段は、前記継ぎ輪の管軸芯方向の他端側の管支持部の内周面側で、且つ、他方の管部の外周面との間を密封するシール部よりも前記継ぎ輪の管軸芯方向中央側に偏位した部位に形成された前記受口の外周面と当接可能な離脱阻止部から構成されている点にある。
【0014】
上記構成によれば、挿口と受口との嵌合接続部に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、継ぎ輪の他端側の管支持部の内周面側に形成された離脱阻止部が受口の外周面と当接して、それ以上の両者の離脱移動を阻止することができる。
このとき、継ぎ輪の離脱阻止部が受口の外周面のテーパー部分に当接すると、分割構造の継ぎ輪の分割面を押し開く力が発生する。しかし、本発明では、継ぎ輪の離脱阻止部がシール部よりも継ぎ輪の管軸芯方向中央側に偏位した部位に形成されているため、その偏位代の分だけ押し開き力が小さくなり、継ぎ輪の分割面の押し開きに伴うシール部の密封性低下による流体の漏洩発生を抑制することができる。
【0015】
さらに、挿口と受口とが離脱して、継ぎ輪の他端側の管支持部と他方の管部の受口とが屈曲する際、他端側の管支持部に設けたシール部と、それから継ぎ輪の管軸芯方向中央側に偏位する離脱阻止部との二点で受口側の管部を支持することになるので、両者の屈曲を抑制することができる。これにより、受口側の管部と継ぎ輪の他端側の管支持部との屈曲状態を適正な範囲に維持して、シール部の周方向での局部的な密封性低下に起因する流体の漏洩を抑制することができる。
【0016】
本発明による第3特徴構成は、前記離脱移動阻止手段は、前記継ぎ輪の管軸芯方向他端側の側壁部の内面に形成された当接面と、これに管軸芯方向で相対向する状態で前記受口側に固定された当接部材とからなり、前記継ぎ輪の前記当接面と前記当接部材の当接面とが、管軸芯に対して直交する直交面に形成されている点にある。
【0017】
上記構成によれば、挿口と受口との嵌合接続部に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、継ぎ輪の他端側の側壁部の内面に形成された当接面と受口側に固定された当接部材とが管軸芯方向から当接して、それ以上の受口側の管部と継ぎ輪との離脱移動が阻止される。このとき、継ぎ輪の当接面と受口側の当接部材の当接面とが管軸芯に対して直交する直交面に形成されているため、継ぎ輪の当接面と当接部材の当接面とが直交方向に沿った面当たり状態となる。これにより、離脱力を確実に受け止めて離脱阻止効果を向上することができるとともに、当接時に継ぎ輪に作用する分割接合部の押し開き力が小さくなり、継ぎ輪の分割接合部での密封性低下を抑制することができる。
【0018】
本発明による第4特徴構成は、前記離脱阻止部の当接位置から前記シール部のシール保持溝までの距離は、前記継ぎ輪の一端側の管支持部の内周面において、一方の前記管部の外周面との間を密封するシール部のシール保持溝の両区画壁のうち、内方側の区画壁における管軸芯方向の厚み寸法よりも大に構成されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、継ぎ輪の離脱阻止部の当接位置からシール部のシール保持溝までの距離に相当する厚み寸法が、継ぎ輪の一端側の管支持部におけるシール保持溝の内方側の区画壁の厚み寸法よりも大に構成されているので、受口の外周面に当接する離脱阻止部を頑丈に構成することができる。しかも、継ぎ輪の分割面の押し開きに伴うシール部の密封性低下による流体の漏洩発生を一層抑制することができる。
【0020】
本発明による第5特徴構成は、前記継ぎ輪の他端側の前記管支持部の内周面で、且つ、前記離脱阻止部よりも前記継ぎ輪の管軸芯方向中央側に偏位した部位には、前記離脱阻止部が前記受口の外周面に当接した状態で当該受口の外周面との間を密封する弾性シール材が設けられている点にある。
【0021】
上記構成によれば、挿口と受口との嵌合接続部に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、継ぎ輪の他端側の管支持部の内周面側に形成された離脱阻止部が受口の外周面と当接して、それ以上の両者の離脱移動を阻止する。このとき、離脱阻止部が当接した受口の外周面に形成される粉体塗装等の被覆保護層が損傷するが、離脱阻止部よりも継ぎ輪の管軸芯方向中央側に偏位した部位に設けられた弾性シール材が受口の外周面との間を密封しているため、被覆保護層の損傷個所に流体が流入することがなく、被覆保護層の損傷個所での受口の腐食進行を抑制することができる。
【0022】
本発明による第6の特徴構成は、前記補強固定手段の連結部は、前記継ぎ輪の一端側の管支持部の外周面に形成された係合凹部に対して管径方向外方側から着脱可能に係合される係合突起から構成されている点にある。
【0023】
上記構成によれば、補強固定手段の連結部を構成する係合突起が、継ぎ輪の一端側の管支持部の外周面に形成された係合凹部に対して管径方向外方側から係合されているため、挿口と受口とが離脱したとき、一方の管部の挿口と継ぎ輪の一端側の管支持部との屈曲を抑制することができる。これにより、管部の挿口と継ぎ輪の一端側の管支持部との屈曲状態を適正な範囲に維持して、シール部の周方向での局部的な密封性低下に起因する流体の漏洩を抑制することができる。
【0024】
本発明による第7の特徴構成は、前記当接部材は、前記受口の外周面におけるテーパー状外周面部分とストレート状外周面部分とに渡る屈曲部位に対して挾持固定可能な分割構造の挾持リングから構成されている点にある。
【0025】
上記構成によれば、挿口と受口との嵌合接続部に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、継ぎ輪の他端側の側壁部の内面に形成された当接面と、受口の外周面における屈曲部位に挾持固定されている挾持リングの当接面とが管軸芯方向から当接する。挾持リングは受口の外周面におけるテーパー状外周面部分に当接し、離脱力を強固に受止めることができる。それでいて、継ぎ輪の当接面と挾持リングの当接面とは管軸芯に対して直交方向に沿った面当たり状態にあるため、当接時に継ぎ輪に作用する分割接合部の押し開き力を小さくして、継ぎ輪の分割接合部での密封性低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】管接続部の離脱防止構造の第1実施形態を示す分解状態の部分断面図
図2】組付け時の全体断面図
図3】組付け時の要部の拡大断面図
図4】離脱時の全体断面図
図5】管接続部の離脱防止構造の第2実施形態を示す組付け時(a)と離脱時(b)の全体断面図
図6】接続部の離脱防止構造の第3実施形態を示す要部の拡大図
図7】管接続部の離脱防止構造の第4実施形態を示す組付け時(a)と離脱時(b)の全体断面図
図8】第4実施形態の別の二つの実施例(a),(b)を示すT頭ボルト側の拡大図
図9】管接続部の離脱防止構造の第5実施形態を示す組付け時(a)と離脱時(b)の全体断面図
図10】管接続部の離脱防止構造の第6実施形態を示す組付け時(a)と離脱時(b)の全体断面図
図11】管接続部の離脱防止構造の第7実施形態を示す組付け時の全体断面図
図12】管接続部の離脱防止構造の第8実施形態を示す組付け時(a)と離脱時(b)の全体断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
図1図2は、流体の輸送配管系統に用いられる管接続部の離脱防止構造を示す。この管接続部の離脱防止構造では、一方の管部の一例である流体管1の挿口1Aと他方の管部の一例である流体管2の受口2Aとが嵌合接続部20で接続され、この嵌合接続部20を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪30は、両流体管1,2に亘って外装されている。
また、継ぎ輪30と他方の流体管2の受口2A側との管軸芯方向で相対向する部位には、他方の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段40が設けられている。
【0028】
上述の管接続部の離脱防止構造では、管部として流体管1,2を例に挙げたが、管部としては従来から種々の形態のものが存在する。例えば、図示はしないが、流体管に密封状態で外装固定される分割構造の割T字管の分岐管部や流体管に一体的に突出形成された分岐管部、流体機材の一部を構成する管部等を挙げることができる。
さらに、本実施形態の流体管1,2は、流体の一例である上水を輸送するための水道管を構成するダクタイル鋳鉄管であるが、その他の鋳鉄管や鋼管等を使用することができ、
流体としても、上水以外に工業用水やガス等を挙げることができる。
【0029】
一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20は、図1図3に示すように、K形のメカニカル継手から構成されている。このK形のメカニカル継手では、挿口1Aの外周面1aと受口2Aのテーパー状の内周面2aとの間に、ゴム輪等の第1シール部材21が装着されている。この第1シール部材21を管軸芯方向から押圧可能な押圧部22aを備えた分割構造の押輪22が挿口1Aに外装されている。押輪22のフランジ部22bと受口2Aのフランジ部2bとは、T頭ボルト23とナット24で管軸芯方向から締め付け連結されている。この締め付け連結により、受口2Aのフランジ部2bに引き寄せ固定される押輪22の押圧部22aで第1シール部材21が水密状態(密封状態)に圧縮され、その水密状態が維持される。
【0030】
継ぎ輪30は、図2図3に示すように、両流体管1,2の嵌合接続部20を囲繞する状態で両流体管1,2に亘って外装自在な二分割構造の鋳鉄製の両分割継ぎ輪ケース30A,30Bから構成されている。継ぎ輪30には、受口2Aよりも大径の円筒状の周壁部30aと、周壁部30aの管軸芯方向両端から径方向内方に一体的に延設される円環状の側壁部30b,30cと、各側壁部30b,30cの内径側端部から管軸芯方向に沿って外方に一体的に延設される筒状の管支持部30d,30eとが主要構成として備えられている。
【0031】
継ぎ輪30の両分割継ぎ輪ケース30A,30Bの管周方向両端部には、図1に示すように、ボルト31・ナット32等の締結手段を介して互いに固定連結するための連結フランジ部30Cが一体形成されている。両分割継ぎ輪ケース30A,30Bの分割面には、継ぎ輪30の内周面30f(図2参照)と嵌合接続部20を含む両流体管1,2の外周面1a,2cとの間に形成される囲繞空間33を外部に対して水密に密封するシール部35(図2参照)が設けられている。
シール部35は、図2図3に示すように、両分割継ぎ輪ケース30A,30Bの分割面の各々に形成された環状のシール保持溝36に、環状のガスケット等の第2シール部材37を装着して構成されている。両第2シール部材37は、両分割継ぎ輪ケース30A,30Bの管周方向両端部においては管径方向から互いに水密状態で接触し、継ぎ輪30の両管支持部30d,30eにおいては、両流体管1,2の外周面1a,2cに管周方向に沿って水密状態で接触する。
【0032】
離脱移動阻止手段40は、図2図4に示すように、継ぎ輪30の管軸芯方向の他端側の管支持部30eの内周面側で、且つ、当該管支持部30eの内周面に形成されたシール保持溝36の管周方向シール溝部分36a及びそれに装着された第2シール部材37の管周方向シール部分37aよりも継ぎ輪30の管軸芯方向中央側に偏位した部位に、受口2Aの外周面2cと管軸芯方向から当接可能な円環状の当接面41aを備えた離脱阻止部41を形成して構成されている。
この離脱阻止部41は、他端側の管支持部30eの内周面において管周方向シール溝部分36aの管軸芯方向両側に位置する区画壁30gの内径よりも小径に形成されている。換言すれば、離脱阻止部41の内周面は、管周方向シール溝部分36aの両側に位置する区画壁30gの内周面よりも径方向内方側に突出形成されているとともに、離脱阻止部41は一方の区画壁30gと一体形成され、離脱阻止部41の当接面41aからシール部35までの管軸芯方向の厚みも大となる補強構造に構成されている。
また、離脱阻止部41の当接面41aは、受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dの傾斜角度と同一又は略同一の傾斜角度に形成されている。
【0033】
そして、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、他方の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30の他端側の管支持部30eとの間においては、それらの管軸芯方向で相対向する部位に設けた離脱阻止部41の当接面41aと受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dとの当接により、他方の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30の他端側の管支持部30eとの一定以上の相対離脱移動を当接阻止することができる。
【0034】
そのため、本実施形態においては、図2図3に示すように、嵌合接続部20のT頭ボルト23の先端が、継ぎ輪30の一端側の側壁部30bの内面に当接した状態が初期組付け状態となる。また、図4に示すように、継ぎ輪30の他端側の管支持部30eに形成した離脱阻止部41の当接面41aが受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dに当接した状態が最大離脱移動状態となる。
これにより、図4に示すように、初期組付け状態で、のT頭ボルト23の先端位置又は継ぎ輪30の一端側の側壁部30bの内面から最大離脱移動状態にあるT頭ボルト23の先端位置までの距離Lが最大離脱移動距離となり、最大離脱移動状態では、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとが抜け出した離脱状態にある。
【0035】
そして、上述のように、挿口1Aと受口2Aとの嵌合接続部20に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用して、継ぎ輪30の他端側の管支持部30eの内周面側に形成された離脱阻止部41の当接面41aが受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dに当接すると、分割構造の継ぎ輪30の分割面を押し開く力が発生する。しかし、本発明では、継ぎ輪30の離脱阻止部41がシール部35の管周方向シール溝部分36aよりも継ぎ輪30の管軸芯方向中央側に偏位した部位に形成されているため、その偏位代の分だけ押し開く力が小さくなり、継ぎ輪30の分割面の押し開きに伴うシール部35の密封性低下(面圧低下)による流体の漏洩発生を抑制することができる。
【0036】
また、図3に示すように、離脱阻止部41の当接位置である当接面41aから他端側の管支持部30eの内周面に形成されたシール保持溝36の管周方向シール溝部分36aまでの距離L1は、一端側の管支持部30dの内周面に形成されたシール保持溝36の管周方向シール溝部分36aにおける管軸芯方向両側の区画壁30hのうち、継ぎ輪30の管軸芯方向中央側となる内方側の区画壁30hにおける管軸芯方向の厚み寸法よりも大に構成されている。
図3に示すように、継ぎ輪30の離脱阻止部41の当接面41aからシール部35の管周方向シール溝部分36aまでの距離L1に相当する厚み寸法が、継ぎ輪30の一端側の管支持部30dにおける管周方向シール溝部分36aの区画壁30hの管軸芯方向での厚み寸法よりも大に構成されているので、受口2Aの外周面2cに当接する離脱阻止部41を頑丈に構成することができる。
【0037】
さらに、図1図4に示すように、一方の流体管1と継ぎ輪30の管軸芯方向の一端側の管支持部30dとを一体的に固定連結する補強固定手段の一例である分割構造の耐震補強金具50が設けられている。この耐震補強金具50には、図1に示すように、管周方向で二分割され、且つ、一方の流体管1の挿口1Aに対して管径方向から脱着自在に挟持固定される一対の金属製の分割挟持部材51が備えられている。この一対の分割挟持部材51は、それの管周方向の両端部に設けられたフランジ部51A同士をボルト48・ナット49で締め付け連結することにより、流体管1の挿口1Aに強固に挟持固定される。
【0038】
耐震補強金具50には、図2図4に示すように、継ぎ輪30の一端側の管支持部30dに固定連結される連結部52と、継ぎ輪30の一端側の管支持部30dに対する挿口1Aの離脱移動に連れて挿口1Aの外周面1aとの間での抜止め抵抗が増大する抜止部55とが設けられている。
連結部52は、一端側の管支持部30dの外周面に形成された径方向外方に開口する環状の係合凹部53と、当該係合凹部53に対して管径方向外方側から係脱自在に係合される係合突起54から構成されている。そのうち、係合突起54は、両分割挟持部材51の管周方向の複数個所から管軸芯方向に沿って一体的に突出形成されている。
耐震補強金具50を流体管1の挿口1Aに取付ける場合には、図1図2に示すように、両分割挟持部材51に一体形成されている係合突起54を、一端側の管支持部30dの係合凹部53に対して管径方向外方側から係合し、この状態で両分割挟持部材51のフランジ部51A同士をボルト48・ナット49で締め付け連結する。
【0039】
抜止部55は、図1図2に示すように、両分割挟持部材51の内周面に形成された径方向内方に向かって開口する爪収納部56と、当該爪収納部56内に管径方向内方に移動自在に収容される爪部材57とを備えている。爪部材57の内面には、挿口1Aの外周面1aに喰い込み可能な管周方向に沿う複数列の先鋭なテーパー状の刃部が形成されている。
爪部材57の外面及び爪収納部56の天井面は、両分割挟持部材51の爪収納部56と挿口1Aの外周面1aに喰い込む状態で爪収納部56内に収納されている爪部材57との管軸芯方向での相対離脱移動に伴って、爪部材57を径方向内方側に食い込み移動させる傾斜面に構成されている。
【0040】
そして、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、一方の流体管1の挿口1Aと継ぎ輪30との間においては、挿口1Aに設けた分割構造の耐震補強金具50の連結部52が継ぎ輪30の一端側の管支持部30dに固定連結されている。さらに、耐震補強金具50の抜止部55の爪部材57は、継ぎ輪30の一端側の管支持部30dに対する挿口1Aの離脱移動に伴って当該挿口1Aの外周面1aに食い込むことにより抜止め抵抗が増大する。そのため、全体として、一方の流体管1の挿口1Aと継ぎ輪30の一端側の管支持部30dとが耐震補強金具50を介して一体的に強固に固定連結される。
これにより、図4に示すように、挿口1Aと受口2Aとが離脱しても、継ぎ輪30の他端側の管支持部30eに対する受口2Aの抜け出し移動、及び継ぎ輪30の一端側の管支持部30dに対する挿口1Aの抜け出し移動をそれぞれ強固に阻止することができる。
【0041】
しかも、継ぎ輪30の一端側の管支持部30dと耐震補強金具50の抜止部55とにより、流体管1の挿口1Aにおける管軸芯方向に間隔をおいた二箇所を支持するので、図4に示すように、挿口1Aと受口2Aとが離脱したとき、挿口1Aと継ぎ輪30の一端側の管支持部30dとの屈曲を抑制することができる。
【0042】
さらに、耐震補強金具50の連結部52を構成する係合突起54が、継ぎ輪30の一端側の管支持部30dの外周面に形成された係合凹部53に対して管径方向外方側から係合されているため、挿口1Aと受口2Aとが離脱したとき、一方の流体管1の挿口1Aと継ぎ輪30の一端側の管支持部30dとの屈曲を抑制することができる。これにより、流体管1の挿口1Aと継ぎ輪30の一端側の管支持部30dとの屈曲状態を適正な範囲に維持して、シール部35の周方向での局部的な密封性低下に起因する流体の漏洩を抑制することができる。
〔第2実施形態〕
図5に示す管接続部の離脱防止構造では、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20が、T形のメカニカル継手から構成されている。このT形のメカニカル継手は、受口2Aの内周面に形成した径方向内方に開口する円環状のシール保持溝60に、嵌合接続される挿口1Aの外周面1aとの間で水密状態に圧縮されるゴム輪等の第3シール部材61を装着して構成されている。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0043】
〔第3実施形態〕
図6に示す管接続部の離脱防止構造では、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20が、T形のメカニカル継手から構成されている。この管接続部の離脱防止構造において、他方の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段40の改良を示す。この実施形態においても、継ぎ輪30の管軸芯方向の他端側の管支持部30eの内周面側で、且つ、当該管支持部30eの内周面に形成されたシール保持溝36の管周方向シール溝部分36a及びそれに装着された第2シール部材37の管周方向シール部分37aよりも継ぎ輪30の管軸芯方向中央側に偏位した部位に、受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dと管軸芯方向から当接可能な円環状の当接面41aを備えた離脱阻止部41が形成されている。
【0044】
継ぎ輪30の他端側の管支持部30eの内周面で、且つ、離脱阻止部41よりも継ぎ輪30の管軸芯方向中央側に偏位した部位には、離脱阻止部41の当接面41aが受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dに当接した状態で当該受口2Aの外周面2cとの間を密封する環状の弾性シール材43が設けられている。
離脱阻止部41の当接面41a及び弾性シール材43を保持する第2シール保持溝44は、継ぎ輪30の他端側の側壁部30cの内周面に形成され、他端側の側壁部30cの管軸芯方向の厚みは、継ぎ輪30の一端側の側壁部30bの管軸芯方向の厚み(第1実施形態の図2、第2実施形態の図5参照)よりも大に構成されている。
【0045】
一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、継ぎ輪30の他端側の管支持部30eの内周面側に形成された離脱阻止部41の当接面41aが受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dに当接して、それ以上の両者の離脱移動が阻止される。このとき、離脱阻止部41の当接面41aが当接した受口2Aの外周面2cに形成される粉体塗装等の被覆保護層が損傷するが、離脱阻止部41の当接面41aよりも継ぎ輪30の管軸芯方向中央側に偏位した部位に設けられた弾性シール材43が受口2Aの外周面2cとの間を密封しているため、被覆保護層の損傷個所に流体が流入することがなく、被覆保護層の損傷個所での受口2Aの腐食進行を抑制することができる。
尚、その他の構成は、第2実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0046】
〔第4実施形態〕
図7に示す管接続部の離脱防止構造では、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20がK形のメカニカル継手から構成されている。この管接続部の離脱防止構造において、他方の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段40の改良を示す。
この実施形態の離脱移動阻止手段40は、嵌合接続部20を構成するK形のメカニカル継手の構成部材のうち、管周方向に所定間隔を置いて配置される複数の金属製のT頭ボルト23が、受口2A側に固定される当接部材45に兼用構成され、各T頭ボルト23の頭部23Aの偏平な頂面23aは、当接部材45の当接面45aに構成されている。
【0047】
また、継ぎ輪30の管軸芯方向他端側の側壁部30cの内面のうち、各T頭ボルト23の頭部23Aに管軸芯方向で相対向する内面部分が当接面46に構成されている。
この側壁部30cの内面に形成された当接面46と、各T頭ボルト23の頭部23Aの頂面23aをもって構成される当接部材45の当接面45aの各々は、管軸芯に対して直交する直交面に形成されている。
【0048】
一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、継ぎ輪30の他端側の側壁部30cの内面に形成された当接面46と、受口2A側に固定された各T頭ボルト23の頭部23Aの当接面45aをもって構成される当接部材45の当接面45aとが管軸芯方向から面当たりで当接して、それ以上の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30との離脱移動が阻止される。この継ぎ輪30の当接面46と、各T頭ボルト23の当接面45aをもって構成される当接部材45の当接面45aとの面当たりにより、離脱力を確実に受け止めて離脱阻止効果を向上することができる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0049】
また、上述の第4実施形態では、各T頭ボルト23の頭部23Aの偏平な頂面23aを当接部材45の当接面45aに構成したが、図8(a)に示すように、各T頭ボルト23の頭部23Aに、継ぎ輪30の側壁部30cの当接面46と管軸芯方向から当接可能な当接面45aを備えた当接部材45を一体形成して実施してもよい。
この場合も、継ぎ輪30の当接面46と受口2A側の各T頭ボルト23における当接部材45の当接面45aとが管軸芯に対して直交する直交面に形成されている。これにより、継ぎ輪30の当接面46と各T頭ボルト23における当接部材45の当接面45aとが面当たりとなり、離脱力を確実に受け止めて離脱阻止効果を向上することができる。
【0050】
さらに、図8(b)に示すように、各T頭ボルト23の頭部23Aに、継ぎ輪30の側壁部30cの当接面46と管軸芯方向から当接可能な当接面45aを備えた当接部材45をアタッチメントとして嵌合固定して実施してもよい。
この場合も、継ぎ輪30の当接面46と受口2A側の各T頭ボルト23における当接部材45Bの当接面45aとが管軸芯に対して直交する直交面に形成されている。これにより、継ぎ輪30の当接面46と各T頭ボルト23における当接部材45Bの当接面45aとが面当たりとなり、離脱力を確実に受け止めて離脱阻止効果を向上することができる。
【0051】
〔第5実施形態〕
図9に示す管接続部の離脱防止構造では、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20がT形のメカニカル継手から構成されている。この管接続部の離脱防止構造において、他方の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段40の改良を示す。
この実施形態の離脱移動阻止手段40では、他方の流体管2の受口2A側に固定される当接部材45の一例で、流体管2の受口2Aに対して管径方向外方から挾持固定される分割構造(当該実施形態では二分割構造)の金属製の当接バンド70が用いられる。この当接バンド70には、受口2Aの接続口側の端面に当接する環状の第1位置決め部70bと、受口2Aの外周面2cのテーパー部分に当接する第2位置決め部70cとが設けられている。 そのため、当接バンド70を受口2Aの外周面に締め付け固定した状態では、第1位置決め部70bと第2位置決め部70cとにより当接バンド70の管軸芯方向での移動が阻止されている。
【0052】
当接バンド70の第2位置決め部70cの先端面70aが、当接部材45の当接面45aに構成され、継ぎ輪30の管軸芯方向他端側の側壁部30cの内面のうち、当接バンド70の第2位置決め部45cの先端面70aをもって構成される当接面45aに対して管軸芯方向で相対向する内面部分が当接面46に構成されている。
【0053】
この場合も、継ぎ輪30の当接面46と、受口2Aに固定された当接バンド70の先端面70aをもって構成される当接面45aとが管軸芯に対して直交する直交面に形成されている。これにより、継ぎ輪30の当接面46と当接バンド70の当接面45aとが面当たりとなり、離脱力を確実に受け止めて離脱阻止効果を向上することができる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第2実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0054】
〔第6実施形態〕
図10に示す管接続部の離脱防止構造では、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20がK形のメカニカル継手から構成されている。この管接続部の離脱防止構造において、他方の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段40の改良を示す。
この実施形態の離脱移動阻止手段40は、他方の流体管2の受口2A側に固定される当接部材45の一例で、受口2Aのフランジ部2bに対して管径方向外方から係合された状態で挾持固定される金属製の受口バンド71が用いられる。この受口バンド71の先端面71aが、当接部材45の当接面45aに構成され、継ぎ輪30の管軸芯方向他端側の側壁部30cの内面のうち、受口バンド71の先端面71aをもって構成される当接面45aに対して管軸芯方向で相対向する内面部分が当接面46に構成されている。
【0055】
この場合も、継ぎ輪30の当接面46と受口2Aに固定された受口バンド71の先端面71aをもって構成される当接面45aの各々は、管軸芯に対して直交する直交面に形成されている。これにより、継ぎ輪30の当接面46と受口バンド71の当接面45aとが面当たりとなり、離脱力を確実に受け止めて離脱阻止効果を向上することができる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0056】
〔第7実施形態〕
図11に示す管接続部の離脱防止構造では、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20がK形のメカニカル継手から構成されている。この管接続部の離脱防止構造において、一方の流体管1と継ぎ輪30の管軸芯方向の一端側の管支持部30dとを一体的に固定連結する分割構造の耐震補強金具(補強固定手段の一例)50の改良を示す。
この実施形態の耐震補強金具50では、継ぎ輪30の管軸芯方向の一端側の管支持部30dのうち、それの内周面に形成されたシール保持溝36の管周方向シール溝部分36a及びそれに装着された第2シール部材37の管周方向シール部分37aよりも耐震補強金具50側に位置する端部側に、径方向内方に向かって開口する環状空間を備えた延長管支持部30jが一体形成されている。
【0057】
この延長管支持部30jを含む一端側の管支持部30dの外周面に、径方向外方に開口する環状の係合凹部53を形成し、この係合凹部53内のうち、延長管支持部30jに対応する範囲の外端側部位に、耐震補強金具50の両分割挟持部材51に一体形成されている係合突起54を管径方向外方から係合させる。
【0058】
この実施形態の場合は、継ぎ輪30の一端側の管支持部30dに対する耐震補強金具50の係合突起54による係合位置が、管支持部30dの内周面に形成されたシール保持溝36の管周方向シール溝部分36a及びそれに装着された第2シール部材37の管周方向シール部分37aから外端側に離間する。そのため、図4に示すように、挿口1Aと受口2Aとが離脱したとき、挿口1Aと継ぎ輪30の一端側の管支持部30dとの屈曲を抑制することができる。これにより、流体管1の挿口1Aと継ぎ輪30の一端側の管支持部30dとの屈曲状態を適正な範囲に維持して、シール部35の管周方向シール溝部分36aの周方向での局部的な密封性低下に起因する流体の漏洩を抑制することができる。
【0059】
〔第8実施形態〕
図12に示す管接続部の離脱防止構造では、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20がK形のメカニカル継手から構成されている。この管接続部の離脱防止構造において、他方の流体管2の受口2Aと継ぎ輪30との一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段40の改良を示す。
この実施形態の離脱移動阻止手段40では、他方の流体管2の受口2A側に固定される当接部材45の一例で、受口2Aの外周面2cにおけるテーパー状外周面部分2eとストレート状外周面部分2fとに渡る屈曲部位に対して管径方向外方から脱着自在に挾持固定可能な分割構造(当該実施形態では二分割構造)の金属製の挾持リング80が用いられる。この挾持リング80には、管周方向で二分割された半円弧状の分割リング80Aが備えられている。この一対の分割リング80Aは、それの管周方向の両端部に設けられた連結片80B同士をボルト81で締め付け連結することにより、受口2Aの屈曲部位に強固に挟持固定される。
挾持リング80の管軸芯方向の一端面80aは、受口2Aの外周面2cにおけるテーパー状外周面部分2eに面当たり状態で当接するテーパー状端面に構成されている。挾持リング80の管軸芯方向の他端面80bは、分割リング80Aの管軸芯方向の他端面及び連結片80Bの管軸芯方向の他端面を含み、且つ、当接部材45の当接面45aに構成されている。継ぎ輪30の管軸芯方向他端側の側壁部30cの内面は、挾持リング80の他端面80bをもって構成される当接面45aに対して管軸芯方向から当接可能な当接面46に構成されている。継ぎ輪30の側壁部30cの内面をもって構成される当接面46と、挾持リング80の他端面80bをもって構成される当接面45aとは、管軸芯に対して直交する直交面に形成されている。
【0060】
そして、一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの嵌合接続部20に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、継ぎ輪30の他端側の側壁部30cの内面に形成された当接面46が、受口2Aの外周面2cにおける屈曲部位に挾持固定されている挾持リング80の当接面45aに管軸芯方向から当接する。挾持リング80のテーパー状の一端面80aは、受口2Aの外周面2cにおけるテーパー状外周面部分2eに管軸芯方向から面当たり状態で当接し、離脱力を強固に受止めることができる。それでいて、継ぎ輪30の当接面46と挾持リング80の当接面45aとは、管軸芯に対する直交方向に沿った面当たり状態にあるため、当接時に継ぎ輪30に作用する分割接合部の押し開き力を小さくして、継ぎ輪30の分割接合部での密封性低下(第2シール部材37の面圧低下)を抑制することができる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0061】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、図3に示すように、K形のメカニカル継手のT頭ボルト23の先端を、継ぎ輪30の一端側の側壁部30bの内面に当接又は近接させた組付け初期状態において、継ぎ輪30の離脱阻止部41の当接面41aが受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dとの間に伸縮代を形成したが、この伸縮代を削減又は少なく構成してもよい。
【0062】
(2)上述の第1実施形態では、継ぎ輪30の他端側の管支持部30eの内周面側に形成された離脱阻止部41の当接面41aを、受口2Aの外周面2cのテーパー状当接部位2dに直接に当接させるように構成したが、離脱阻止部41の当接面41aに弾性体を設けて構成してもよい。
【0063】
(3)上述の第1実施形態では、耐震補強金具50の連結部52を、一端側の管支持部30dの外周面に形成された径方向外方に開口する環状の係合凹部53と、当該係合凹部53に対して管径方向外方側から係脱自在に係合される係合突起54から構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、耐震補強金具50の連結部52を、継ぎ輪30の一端側の管支持部30dと両分割挟持部材51とを固定連結するボルト・ナットから構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 一方の管部(流体管)
1A 挿口
2 他方の管部(流体管)
2A 受口
2c 外周面
2e テーパー状外周面部分
2f ストレート状外周面部分
20 嵌合接続部
30 継ぎ輪
30c 側壁部
30d 一端側の管支持部
30e 他端側の管支持部
35 シール部
36 シール保持溝
40 離脱移動阻止手段
41 離脱阻止部
41a 当接面
43 弾性シール材
45 当接部材
45a 当接面
50 補強固定手段(耐震補強金具)
52 連結部
53 係合凹部
54 係合突起
55 抜止部
70 当接バンド(当接部材)
71 受口バンド(当接部材)
80 挾持リング(当接部材)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12