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特許7326537昇降機座標軸設定方法及び昇降機形状計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】昇降機座標軸設定方法及び昇降機形状計測装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/00 20060101AFI20230807BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230807BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B66B7/00 K
G01B11/00 H
G01B11/24 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022083107
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】箱田 将和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓人
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024502(JP,A)
【文献】特開2017-001817(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104661944(CN,A)
【文献】国際公開第2021/220345(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199850(WO,A1)
【文献】特開2018-173392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
G01B 11/00;11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室内の所定位置に設置した3Dスキャナで撮影した機械室内の撮影データに対して水平方向、奥行方向及び高さ方向の各座標軸を決定する際に、調速機ロープまたはメインロープで座標軸の水平方向、奥行方向の座標原点を決定して、機械室内座標軸情報を取得し、
昇降路内の所定位置に設置した3Dスキャナで撮影した昇降路内の撮影データに対して水平方向、奥行方向及び高さ方向の各座標軸を決定する際に、調速機ロープまたはメインロープで座標軸の水平方向、奥行方向の座標原点を決定して、昇降路内座標軸情報を取得し、
取得した機械室内座標軸情報と昇降路内座標軸情報とから、3次元モデリング部に機械室内撮影データと昇降路内撮影データを読み込んだ際に、水平方向及び奥行方向の座標原点情報を同一に決定する昇降機座標軸設定方法。
【請求項2】
3Dスキャナを用いて、機械室内の3次元画像を撮影して3次元画像データを取得し、
取得した各3次元画像データを前記機械室内の特徴物を用いて結合して結合データを生成し、
機械室結合データの座標軸を設定する際に、既設の機械室設備の平面をマシンビームの側面またはマシンベッドビームの側面で捉えて機械室の水平方向または奥行方向座標軸に決定し、水平方向または奥行方向の結合データの座標軸を設定する際に、調速機ロープまたはメインロープで座標軸の水平方向、奥行方向の座標原点として活用し、
3Dスキャナを用いて、昇降路内の3次元画像を撮影して3次元画像データを取得し、
取得した各3次元画像データを前記昇降路内の特徴物を用いて結合して結合データを生成し、
昇降路結合データの座標軸を設定する際に、調速機ロープまたはメインロープで座標軸の水平方向、奥行方向の座標原点として活用し、
機械室結合データと昇降路結合データの水平方向及び奥行方向の座標原点情報を同一に決定する昇降機座標軸設定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の昇降機座標軸設定方法によって取得される機械室内座標軸情報に基づき、既設の機械室設備により座標軸を決定し、決定された座標軸に基づき機械室の形状を計測する昇降機形状計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、昇降機座標軸設定方法及び昇降機形状計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの付替えや改修の工事の際には、事前準備段階としてエレベータ昇降路内の形状を正確に把握し、昇降路の図面作成に必要な各部の寸法を測定する必要がある。そのため、乗りかごの上部に3Dスキャナ(3次元レーザ計測器)を設置し、乗りかごの位置を移動させながら複数の高さ位置で昇降路内のあらゆる方向の壁面までの距離を計測することで、乗りかごの可動域及びその上部の昇降路形状情報を取得することが行われている。
【0003】
機械室についても同様に、機械室内の形状を正確に把握し、機械室の図面作成に必要な各部の寸法を測定するため、機械室内の複数の箇所に3Dスキャナを設置し、機械室内のあらゆる方向の壁面までの距離を計測して機械室形状情報を取得している。
【0004】
しかしながら、昇降路内には高さ位置を特定するための目印となるような構造物が少なく、複数の高さ位置で計測したデータを結合する際に目印がないことから、結合後のデータ間にずれが生じる可能性がある。
【0005】
そこで、従来の撮影手法では、データ結合用、座標軸設定用のマーカーを設置した後に、昇降路形状計測装置での計測を実施し、測定データに写っているマーカーを基準にデータの結合、座標軸設定を実施していた。
【0006】
またマーカーを設置しない座標軸設定手法としてガイドレールの先端部を面として捉えて、間口方向の座標軸として設定する手法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-261794号公報
【文献】特開2017-214224号公報
【文献】特開2017-171494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の撮影手法は、マーカーを現地に持参する必要があり、また、撮影前に原点、平行位置決め用、垂直位置決め用の3点のマーカーを平行、垂直に設置する必要があるため、撮影開始前の事前準備に時間を要している。さらに、昇降路形状情報と座標軸を一致させることができず、3次元モデリングソフトに読み込んだ際に、座標軸のズレに起因する昇降機3次元モデルの躯体精度悪化が想定される。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、現地作業の省力化を図り、機械室形状、昇降路形状に依存せず、正確な座標軸設定を可能にすることを目的とする。また機械室及び昇降路の水平方向と奥行方向の座標軸を一致させることができ、3次元モデルの精度悪化を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための実施形態は、機械室内の所定位置に設置した3Dスキャナで撮影した機械室内の撮影データに対して水平方向、奥行方向及び高さ方向の各座標軸を決定する昇降機座標軸設定方法であって、撮影データの座標軸を設定する際に、調速機ロープまたはメインロープで座標軸の水平方向、奥行方向の座標原点を決定する。
【0011】
また、撮影データの座標軸を設定する際に、マシンビームの上面またはマシンベッドビームの上面で座標軸の高さ方向の座標原点を決定する。
【0012】
さらに、撮影データの座標軸を設定する際に、既設の機械室設備の平面をマシンビームの側面またはマシンベッドビームの側面で捉えて機械室の水平方向または奥行方向座標軸に決定する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態が適用される昇降機形状測定処理装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態の昇降機データ取得処理を示すフローチャート。
図3】実施形態の昇降路内データ取得処理を示すフローチャート。
図4】実施形態の機械室内座標軸設定処理を示すフローチャート。
図5】実施形態の昇降路内座標軸設定処理を示すフローチャート。
図6】昇降機3次元モデルと昇降機点群データを重ね合わせて、昇降機3次元モデルを修正する手順を示すフローチャート。
図7】実施形態の機械室内座標軸設定方法を実行する際のデータ取得処理を示す説明図。
図8】マシンビーム周辺の点群データ(撮影データ)に対して水平方向もしくは奥行方向の座標軸、及び高さ方向の座標軸を設定する処理を示す説明図。
図9】機械室内調速機周辺の点群データ(撮影データ)に対して水平方向もしくは奥行方向の座標原点を設定する処理を示す説明図。
図10】マシンビーム断面の点群データ(撮影データ)に対して水平方向もしくは奥行方向の傾きを補正する処理を示す説明図。
図11】昇降路内座標軸設定処理における昇降路内の点群データを取得する処理を示す説明図。
図12】昇降路内座標軸設定処理における乗場敷居付近の撮影処理を示す説明図。
図13】フェッシャープレート周辺の点群データ(撮影データ)に対して水平(間口)方向及び奥行方向の座標軸を設定する処理を示す説明図。
図14】昇降路内調速機周辺の点群データ(撮影データ)に対して水平方向もしくは奥行方向の座標原点を設定する処理を示す説明図。
図15】ヘッダーケース周辺の点群データ(撮影データ)に対して高さ方向の座標軸を設定する処理を示す説明図。
図16】昇降路断面の点群データ(撮影データ)に対して高さ方向の傾きを補正する処理を示す説明図。
図17】昇降機3次元モデルと昇降機点群データを重ね合わせて、昇降機3次元モデルを修正する手順を示す説明図。
図18】機械室内調速機ロープ3次元モデルと調速機点群データを重ね合わせて、機械室3次元モデルの座標軸を修正する手順を示す説明図。
図19】巻上機直上部梁の修正手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る昇降機座標軸設定方法及び昇降機形状計測装置の実施形態を図面を参照して説明する。ここで、「昇降機形状」とは「機械室内形状」と「昇降路内形状」の双方を指す。
【0015】
図1は昇降機形状計測装置の構成を示している。昇降機形状計測装置は、3Dスキャナ10と昇降機形状測定処理装置20とを備える。
【0016】
3Dスキャナ10は、図7に示すように、機械室30の全体形状が測定できる複数の位置に設置される。また、調速機32のロープ形状を測定できる位置に設置される。さらに、マシンビーム33の形状を測定できる位置に設置され、それぞれの位置で機械室内を撮影して撮影データ(点群データ)を生成する。また、昇降路内の計測の場合には、図11に示すように、かご140のかご上141に設置され、かご140を走行させて昇降路内を撮影して撮影データ(点群データ)を生成する。また、3Dスキャナ10をピット134に設置してピット134周辺の昇降路130内を撮影して撮影データ(点群データ)を生成する。さらに、図12に示すように、乗場150に3Dスキャナ10を設置し、乗場ドア151を開扉させて、乗場敷居152を撮影することで乗場敷居152の3次元位置情報を取得する。
【0017】
昇降機形状測定処理装置20は、データ取得部21と、データ結合部22と、結合データ表示部23と、座標軸決定部24と、測定処理部25とを備える。
【0018】
データ取得部21は、3Dスキャナ10で撮影された機械室30の点群データ(撮影データ)を取得する。また、3Dスキャナ10で撮影された昇降路130の点群データ(撮影データを取得する。
【0019】
データ結合部22は、データ取得部21で取得した各撮影データを結合して結合データを生成する。
【0020】
結合データ表示部23は、結合データである機械室画像及び昇降路画像を表示して座標軸決定や測定処理に利用される。
【0021】
座標軸決定部24は、結合データ表示部23に表示された機械室画像及び昇降路画像(結合データ)に対して座標軸及び座標原点を決定する。
【0022】
測定処理部25は、座標軸決定部24で決定された座標軸及び座標原点に基づいて機械室各部及び昇降路各部の寸法を測定する処理を実行する。また、3次元モデリングソフト(3次元モデリング部)を備え、機械室内点群データと機械室3次元モデル202とを合致させる処理、昇降路内点群データと昇降路3次元モデル202とを合致させる処理を実行する。そして、点群データと3次元モデルとの間のずれ量(修正量)を求めて両者のずれを修正することで機械室各部及び昇降路各部の寸法を求める。
【0023】
<処理手順の説明>
図2は実施形態の昇降機データ取得処理の手順、図3は実施形態の昇降路内データ取得処理の手順、図4は、実施形態の機械室内座標軸設定処理の手順、図5は実施形態の昇降路内座標軸設定処理の手順、及び図6は昇降機3次元モデルと昇降機点群データを重ね合わせて、昇降機3次元モデルを修正する手順、をそれぞれ示している。
【0024】
<機械室内座標軸設定方法>
図2に基づき、3Dスキャナ10を使用して機械室30及び昇降路130の3次元画像データ(点群データ)を取得する処理を説明する。
【0025】
先ず、3Dスキャナ10を機械室形状が写る複数位置に設置する(ステップS1)。3Dスキャナ10の設定位置としては、機械室30内の形状が全て把握できる複数の位置、例えば15か所程度を対象にして、順番に点群データを収集する。特に、本実施形態では、調速機ロープ(ガバナロープ)で座標軸の水平方向、奥行方向の座標原点を決定するために、3Dスキャナ10を調速機32のロープ形状を測定できる位置34に設置して撮影する(ステップS2)。また、マシンビームの上面で座標軸の高さ方向の座標原点を決定するために、3Dスキャナをマシンビームの形状を測定できる位置35で撮影する(ステップS3)。
【0026】
次いで、後述する図3のフローチャートに示す昇降路内データ取得処理に従い、昇降路130内を撮影する(ステップS4)。
【0027】
<昇降路内データ取得処理>
図2のステップS4の昇降路内データ取得処理を、図3のフローチャートに基づき、具体的に説明する。
【0028】
先ず、図11に示すように、3Dスキャナ10をかご140のかご上141に設置する(ステップS11)。次に、かご140を走行させ、3Dスキャナ10により各階のフロアレベル131、かご140のつき上げ位置132及びつき下げ位置133で昇降路130内を撮影する(ステップS12)。
【0029】
ここで、つき上げ位置132は、かご140が昇降可能な最高位置を示し、リミットスイッチで設定される。また、つき下げ位置133は、かご140が下降可能な最低位置を示し、リミットスイッチで設定される。
【0030】
次いで、3Dスキャナ10をピット134に設置して、ピット134から昇降路130内を撮影する(ステップS13)。
【0031】
次いで、図12に示すように、乗場150に3Dスキャナ10を設置し、乗場ドア151を開扉させて、乗場敷居152を撮影することで乗場敷居152の3次元位置情報を取得する(ステップS14)。この際、位置情報の取得に障害とならないように、乗場ドア151は戸開したまま撮影することを条件としている。乗場敷居152の上面は昇降路130の高さ方向原点155とする。なお、図12においては最下階での撮影としているが、乗場ドア151が戸開でき、乗場敷居152が撮影可能な他階での適用も可能である。
【0032】
また、本実施形態においては、図14に示すように、昇降路130内の調速機ロープ81が写る位置で撮影を行う(図2のステップS5)。図14に示す例では、昇降路内調速機ロープ81として、ガイドレール170に近いレール側ロープ82とガイドレール170からは遠い反レール側ロープ83が撮影データとして得られている。
【0033】
このようにして、3Dスキャナ10により、機械室30の3次元撮影データ及び昇降路130の3次元撮影データが昇降機形状測定処理装置20のデータ取得部21で取得されると、これらの撮影データはデータ結合部22に出力される(図2のステップS6)。
【0034】
<機械室内座標軸設定処理>
図4は、機械室内座標軸設定処理の手順を示している。
【0035】
データ結合部22は、撮影データを取得して結合データ(3次元機械室画像データ)を生成する(ステップS21)。この段階では、結合データには座標軸が設定されていない。
【0036】
図8はマシンビーム33周辺の画像データを示し、図9は調速機32周辺の画像データを示している。
【0037】
座標軸決定部24は、図8に示すように、既設の機械室設備の平面をマシンビーム側面51で捉えて機械室30の水平方向XXまたは奥行方向YYの座標軸に決定する(ステップS22)。次いで、機械室設備の平面をマシンビーム上面52で捉えて機械室30の高さ方向ZZ座標軸に決定する(ステップS23)。
【0038】
次いで、図9に示すように、調速機ロープ61を水平方向XXと奥行方向YYの座標原点62に設定する(ステップS24)。
【0039】
次いで、図8に示すように、マシンビーム上面52を高さ方向ZZの座標原点に設定する(ステップS25)。
【0040】
図10は巻上機31及びマシンビーム33の断面点群データ(機械室画像データG)を示している。
【0041】
図10に示すように、水平方向もしくは奥行方向の傾きを補正する(ステップS26)。この補正処理は、マシンビーム端71の高さ位置が、ステップS25で設定された高さ方向ZZの座標原点72と一致するように修正を行うことで、水平方向もしくは奥行方向の傾きを補正する処理である。
【0042】
<昇降路内座標軸設定方法>
図5は、昇降路内座標軸設定処理の手順を示している。
【0043】
データ結合部22は、昇降路内撮影データを取得して結合データ(3次元昇降路画像データ)を生成する(ステップS31)。この段階では、結合データには座標軸が設定されていない。本実施形態では、昇降路内の以下の設備を基準として座標軸を設定する。
【0044】
図13はフェッシャープレート160周辺の点群データ、図14は昇降路内調速機周辺の点群データ(撮影データ)に対して水平方向もしくは奥行方向の座標原点を設定する処理、図15はヘッダーケース180周辺の点群データ、図16は昇降路断面の点群データ(昇降路画像データG)をそれぞれ示している。
【0045】
座標軸決定部24は、図13に示すように、先ず、既設の昇降路設備の平面をフェッシャ―プレート160で捉えて昇降路130の奥行方向座標軸に決定する(ステップS32)。
【0046】
次いで、図15に示すように、既設の昇降路設備の平面をヘッダーケース180の上面で捉えて昇降路130の高さ方向座標軸に決定する(ステップS33)。
【0047】
次いで、図12に示すように、乗場敷居152の上面を座標軸の高さ方向ZZの座標原点155とする(ステップS34)。
【0048】
また、図14に示すように、昇降路内調速機ロープ81を水平(間口)方向及び奥行方向の座標原点として設定する(ステップS35)。設定された座標原点から間口方向XXの座標軸84、奥行方向YYの座標軸85及び高さ方向ZZの座標軸が設定される。
【0049】
次いで、図16に示すように、高さ方向の傾きを補正する(ステップS36)。この補正処理は、ガイドレール170の頂部で間口方向XXと奥行方向YYの座標172が、最下階フロアレベルで設定された座標原点171と一致するように修正を行うことで高さ方向の傾きを補正する処理である。
【0050】
このように、本実施形態では、撮影時に水平出しを実施せずにデータ結合を実施した点群データに対して、ガイドレール170の長手方向に平行に据え付けられているフェッシャープレート160を奥行方向の座標軸、ガイドレール170に垂直に据え付けられているヘッダーケース180上面を高さ方向の座標軸として活用することができる。なお、実施形態では、フェッシャープレート160を活用しているが、トーガードや乗場ドア151、躯体平面を奥行方向の座標軸として活用しても良い。また、ヘッダーケース180の上部を高さ方向の座標軸として活用しているが、かご天井や敷居、躯体平面を垂直方向の座標軸として活用しても良い。
【0051】
<昇降機3次元モデル修正手順>
図6は昇降機3次元モデル修正手順を示すフローチャートである。図17は昇降機3次元モデルと昇降機点群データを重ね合わせて、昇降機3次元モデルを修正する手順、図18は機械室内調速機ロープ3次元モデルと調速機点群データを重ね合わせて機械室3次元モデルの座標軸を修正する手順、図19は巻上機31の直上部梁の修正手順を示している。
【0052】
先ず、図17に示すように、竣工時の2次元図面を基に昇降機の3次元モデル、すなわち、機械室3次元モデル201及び昇降路3次元モデル202を作成する(ステップS41)。
【0053】
次いで、作成された機械室内点群データ203を3次元モデリングソフトに読み込む(ステップS42)。この際、機械室内点群データ203の座標原点及び方向は、ステップS21~S26で設定した座標軸を基準に機械室3次元モデル201と合致させる(ステップS43)。図18はステップS43の作業を示した画像データであり、調速機ロープモデル211を基準に調速機点群データ212の位置を合致させる途中経過を示している。
【0054】
次いで、作成された昇降路内点群データ204を3次元モデリングソフトに読み込む(ステップS44)。
【0055】
この際、昇降路内点群データ204の座標原点及び方向は、ステップS32~S35で設定した座標軸を基準に昇降路3次元モデル202と合致させる(ステップS45)。
【0056】
次いで、昇降機点群データを基準に、竣工時の昇降機3次元モデルの躯体寸法、竣工後に追加改造された設備の外形寸法を修正する(ステップS46)。図18では、機械室床モデルが機械室点群データと異なるため、修正量215だけ修正する。図19では、巻上機31の直上部の梁3次元モデル221が梁の点群データ222と異なるため、修正量223だけ修正する。
【0057】
このように、本実施形態によれば、座標軸設定用のマーカーを設置する作業が不要となり、現地作業を省力化することができ、機械室形状、昇降路形状に依存せず、正確な座標軸設定が可能となる。また、機械室及び昇降路の水平方向と奥行方向の座標軸を一致させることで3次元モデルの精度悪化を防ぐことが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態では、図14に示すように、昇降路内調速機ロープ81の反レール側ロープ83を水平方向及び奥行方向の座標原点として活用しているが、レール側ロープ82を座標原点として活用しても良い。また、調速機ロープ81を活用しているが、巻上機31に架け渡されるメインロープを水平方向及び奥行方向の座標原点として活用しても良い。
【0059】
また、機械室30の壁や天井、マシンベッドビームを機械室内座標方向設定時に活用しても良い。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10…3Dスキャナ(昇降機形状生成装置)、20…昇降機形状測定処理装置、21…データ取得部、22…データ結合部、23…結合データ表示部、24…座標軸決定部、25…測定処理部(3次元モデリング部)、30…機械室、31…巻上機、32…調速機、33…マシンビーム、34…調速機のロープ形状を測定できる位置、35…マシンビームの形状を測定できる位置、36…マシンベッドビーム、51…マシンビーム側面、52…マシンビーム上面、61…調速機ロープ、62…水平方向XXと奥行方向YYの座標原点、71…マシンビーム端、72…高さ方向ZZの座標原点、81…昇降路内調速機ロープ、82…レール側ロープ、83…反レール側ロープ、84…間口方向(水平)XXの座標軸、85…奥行方向YYの座標軸、86…高さ方向ZZの座標軸、130…昇降路、131…フロアレベル、132…つきあげ位置、133…つき下げ位置、134…ピット、140…かご、141…かご上、150…乗場、151…乗場ドア、152…乗場敷居、155…高さ方向原点、160…フェッシャープレート、170…ガイドレール、171…座標原点、180…ヘッダーケース、190…緩衝器、201…機械室3次元モデル、202…昇降路3次元モデル、203…機械室内点群データ、204…昇降路内点群データ、211…調速機ロープモデル、212…調速機点群データ、213…機械室床モデル、214…機械室点群データ、215…修正量、221…梁3次元モデル、222…梁の点群データ、FL…最下階フロアレベル、G…昇降路画像(結合データ)、XX…座標軸の間口方向、YY…座標軸の奥行方向、ZZ…座標軸の高さ方向
【要約】
【課題】現地作業を省力化することができ、機械室形状、昇降路形状に依存せず、正確な座標軸設定を可能にする。
【解決手段】機械室内の所定位置に設置した3Dスキャナで撮影した機械室内の撮影データに対して水平方向、奥行方向及び高さ方向の各座標軸を決定する昇降機座標軸設定方法であって、撮影データの座標軸を設定する際に、調速機ロープまたはメインロープで座標軸の水平方向、奥行方向の座標原点を決定する。また、撮影データの座標軸を設定する際に、マシンビームの上面またはマシンベッドビームの上面で座標軸の高さ方向の座標原点を決定する。さらに、撮影データの座標軸を設定する際に、既設の機械室設備の平面をマシンビームの側面またはマシンベッドビームの側面で捉えて機械室の水平方向または奥行方向座標軸に決定する。
【選択図】図4
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