(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】床下換気シミュレーション装置、床下換気シミュレーションプログラムおよび床下換気シミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20230807BHJP
G06F 30/28 20200101ALI20230807BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20230807BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20230807BHJP
G06F 113/08 20200101ALN20230807BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/28
F24F7/10 A
E04B1/70 C ESW
G06F113:08
(21)【出願番号】P 2022140006
(22)【出願日】2022-09-02
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591089431
【氏名又は名称】株式会社サニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】上門 稔
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-067180(JP,A)
【文献】特開2015-191394(JP,A)
【文献】特開2019-067083(JP,A)
【文献】特開2017-010495(JP,A)
【文献】特開2001-344294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/28
F24F 7/10
E04B 1/70
G06F 113/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置して床下間取り図を作成する床下間取り図作成手段と、
前記床下間取り図から前記基礎の形状を示す情報および前記床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータを出力する床下間取りデータ出力手段と、
前記床下間取りデータを入力し、この入力した床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れを解析し、解析結果を出力する流体解析手段と
を含む床下換気シミュレーション装置。
【請求項2】
前記床下換気のためのアイテムは、中基礎、人通口、床下換気扇、床下拡散ファンおよび床下換気口である請求項1記載の床下換気シミュレーション装置。
【請求項3】
前記床下間取り図作成手段は、建物の1階の間取り図に基づいて前記基礎図を自動的に作成するものである請求項1または2に記載の床下換気シミュレーション装置。
【請求項4】
床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置して床下間取り図を作成する床下間取り図作成手段と、
前記床下間取り図から前記基礎の形状を示す情報および前記床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータを出力する床下間取りデータ出力手段と、
前記床下間取りデータを入力し、この入力した床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れを解析し、解析結果を出力する流体解析手段と
してコンピュータを機能させるための床下換気シミュレーションプログラム。
【請求項5】
床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置して床下間取り図を作成すること、
コンピュータが前記床下間取り図から前記基礎の形状を示す情報および前記床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータを出力すること、
前記床下間取りデータを
コンピュータに入力し、この
コンピュータが、入力した床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れを解析し、解析結果を出力すること
を含む床下換気シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下の状況に応じて床下換気をシミュレーションする床下換気シミュレーション装置、床下換気シミュレーションプログラムおよび床下換気シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気による木材腐朽とシロアリ被害は、家の耐久性を低下させる二大要因である。木材を腐朽する微生物は湿気が多いほど活発に繁殖する。シロアリは湿った木材を好み、ジメジメした環境に住み着く。そこで、家を長持ちさせるためには、床下の湿気対策が重要である。
【0003】
床下の湿気対策としては、基礎の換気口に設置して、床下の湿った空気を外へ排出する床下換気ファンや、床下の換気状態の悪いよどみ部分に設置して360°に風を送り出し、よどんだ空気を動かす床下拡散ファンなどがある。しかしながら、これらのファンは単に設置すれば良いというものではなく、効率良く床下換気がなされるように配置する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、換気システムに関して、ファン部分から床面のスリットへ効率的に空気を循環させるため、必要に応じて人が通るための床下人通口、もしくはφ100~250mm程度のスリーブを適宜あけてもよく、あける位置はシミュレーションなどで検証したルールに基づく旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にはシミュレーションの手法について具体的に示されていない。床下換気のシミュレーションを行うためには、床下換気口や床下換気扇などを含む床下の間取りを正確にモデリングする必要があるが、床下換気口等の検討段階においては床下換気口等を変更する度に再度モデリングを行う必要があり、手間と時間を要する。
【0007】
そこで、本発明においては、床下換気口等を含む床下の間取りの変更から床下換気のシミュレーションまでを簡単に行うことが可能な床下換気シミュレーション装置、床下換気シミュレーションプログラムおよび床下換気シミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の床下換気シミュレーション装置は、床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置して床下間取り図を作成する床下間取り図作成手段と、床下間取り図から基礎の形状を示す情報および床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータを出力する床下間取りデータ出力手段と、床下間取りデータを入力し、この入力した床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れを解析し、解析結果を出力する流体解析手段とを含むものである。
【0009】
本発明の床下換気シミュレーションプログラムは、床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置して床下間取り図を作成する床下間取り図作成手段と、床下間取り図から基礎の形状を示す情報および床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータを出力する床下間取りデータ出力手段と、床下間取りデータを入力し、この入力した床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れを解析し、解析結果を出力する流体解析手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0010】
本発明の床下換気シミュレーション方法は、床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置して床下間取り図を作成すること、床下間取り図から基礎の形状を示す情報および床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータを出力すること、床下間取りデータを入力し、この入力した床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れを解析し、解析結果を出力することを含むことを特徴とする。
【0011】
これらの発明によれば、床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置するだけで床下間取り図が作成され、この作成された床下間取り図から基礎の形状を示す情報および床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータが出力され、この出力された床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れが解析され、解析結果が出力される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置するだけで、床下換気の流れが解析され、解析結果が出力されるので、床下の間取りの変更から床下換気のシミュレーションまでを簡単に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態における床下換気シミュレーション装置のブロック図である。
【
図6】シミュレートアプリへの遷移確認画面の例を示す図である。
【
図7】床下間取りデータのダウンロード確認画面の例を示す図である。
【
図8】シミュレートアプリへの遷移確認画面の例を示す図である。
【
図9】床下換気シミュレーション画面の例を示す図である。
【
図10】床下換気シミュレーション画面の例を示す図である。
【
図11】床下換気シミュレーション画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態における床下換気シミュレーション装置のブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態における床下換気シミュレーション装置は、床下間取り図を作成する床下間取り図作成手段10と、床下間取り図から床下間取りデータを出力する床下間取りデータ出力手段11と、床下間取りデータに基づいて床下換気の流れを解析する流体解析手段12とを有する。
【0015】
床下換気シミュレーション装置は、床下間取り図作成手段10、床下間取りデータ出力手段11および流体解析手段12として機能させるための床下換気シミュレーションプログラムをコンピュータ上で実行することにより実現される。なお、床下間取り図作成手段10、床下間取りデータ出力手段11および流体解析手段12は、1つのコンピュータ上で機能させる形態の他、複数のコンピュータ上で別々に機能させたり、クラウド上で機能させたりする構成とすることも可能である。
【0016】
床下間取り図作成手段10は、床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置して床下間取り図を作成する手段である。床下間取り図作成手段10は、床下の基礎を示す基礎図を、建物の1階の間取り図に基づいて自動的に作成する。例えば、床下間取り図作成手段10は、建物の1階の間取り図から各部屋の壁(仕切り)の位置に基礎を配置する。基礎は例えば直線により表示される。なお、自動的に配置された基礎をユーザが手作業により修正することも可能となっている。
【0017】
床下換気のためのアイテムは、中基礎、人通口、床下換気扇、床下拡散ファンおよび床下換気口等である。中基礎は、床下換気において壁の役割を果たすものである。中基礎は、例えば直線により表示され、伸縮させたり、回転させたりして配置することができる。人通口は、基礎および中基礎の風の通り口の役割を果たすものである。人通口は、例えば破線により表示され、伸縮させたり、回転させたりすることができる。人通口は、基礎の線上に重ねて配置する。床下換気扇、床下拡散ファンおよび床下換気口は、例えばアイコンにより表示される。床下換気扇および床下換気口は、基礎の線上に重ねて配置する。床下拡散ファンは、基礎の線、中基礎の線および人通口と重ねないように配置する。
【0018】
床下間取りデータ出力手段11は、床下間取り図から基礎の形状を示す情報および床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータを出力する手段である。床下間取りデータは、例えばXML(Extensible Markup Language)で記述される。基礎の形状を示す情報は、基礎を示すノード名、基礎の線の頂点の座標やモジュールピッチ等である。基礎の各辺の実際の長さを算出するために必要な情報は別途設定されている。床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報は、中基礎および人通口については、それぞれを示すノード名、中心座標や回転角度等であり、床下換気扇、床下拡散ファンおよび床下換気口については、それぞれを示すノード名や中心座標等である。各アイテムの実際の長さは別途設定されている。
【0019】
流体解析手段12は、床下間取りデータを入力し、この入力した床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れを解析し、解析結果を出力する手段である。流体解析手段12は、床下間取りデータ出力手段11により出力された床下間取りデータに基づき、床下の基礎、中基礎、人通口、床下換気扇、床下拡散ファンおよび床下換気口等を流体解析モデルに変換し、床下換気の流れをCFD(Computational Fluid Dynamics)により流体解析する。解析結果は、例えば、風速ベクトル図や流線付き風速コンター図などにより出力する。
【0020】
次に、上記構成の床下換気シミュレーション装置による床下換気シミュレーション方法について、
図2~
図11を参照して説明する。
【0021】
図2~
図5は床下間取り図作成手段10による間取り作成画面の例を示している。
図2に示す建物の1階の間取り
図20から「床下」ボタン21をタップすると、
図3に示す床下の間取り画面30に切り替わる。ここで、「基礎を自動生成」ボタン31をタップすると、床下間取り図作成手段10は、建物の1階の間取り図に基づいて、
図4に示すように、床下の基礎を示す基礎
図32を自動的に作成する。
【0022】
そして、床下の基礎の状況に合わせて、
図5に示すように、メニュー33にある床下換気のための中基礎、人通口、床下換気扇、床下拡散ファンおよび床下換気口等のアイテムを基礎
図32上に配置する。このとき、中基礎および人通口は、伸縮させたり、回転させたりして配置することができる。人通口は、基礎の線上に重ねて配置する。床下換気扇および床下換気口は、基礎の線上に重ねて配置する。床下拡散ファンは、基礎の線、中基礎の線および人通口と重ねないように配置する。
【0023】
各アイテムの設置後、「シミュレ」ボタン34をタップすると、
図6に示すように、流体解析手段12としてのシミュレートアプリへの遷移確認画面35が表示される。ここで、「画像ダウンロード」ボタン36をタップすると、
図7に示すように、床下間取りデータ出力手段11による床下間取りデータのダウンロード確認画面37が表示される。このダウンロード確認画面37において「ダウンロード」ボタン38をタップすると、床下間取りデータ出力手段11により出力される床下間取りデータをダウンロードして保存することができる。
【0024】
床下間取りデータのダウンロードが完了すると、
図8に示すようにシミュレートアプリへの遷移確認画面35へ戻る。この遷移確認画面35において、「シミュレートページへ」ボタン38をタップすると、シミュレートアプリ(流体解析手段12)へ遷移し、
図9に示す床下換気シミュレーション画面40が表示される。
【0025】
「ファイル読込」ボタン41をタップすると、図示しない床下間取りデータの読み込み画面が表示される。ここで、先にダウンロードした床下間取りデータを指定して読み込むと、
図10に示すように、上で作成した床下の基礎
図32が表示される。このとき、基礎
図32上で床下換気扇および床下換気口が基礎の線上に重なっているか、床下拡散ファンが基礎等の線に重なっていないかを確認し、「計算実行」ボタン42をタップすると、流体解析手段12による解析が開始する。
【0026】
解析が完了すると、流体解析手段12は、
図11に示す解析結果表示画面41に解析結果を表示する。
図11は流体解析手段12による流線付き風速コンター図の表示例を示している。なお、解析結果の表示は、「風速ベクトル」ボタン43をタップすることで、風速ベクトル図へ変更することが可能である。また、「流線」ボタン44をタップすると、流線付き風速コンターズへ変更することが可能である。さらに、「形状図」ボタン42をタップすると、基礎
図32へ変更することが可能である。
【0027】
以上のように、本実施形態における床下換気シミュレーション装置によれば、床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置するだけで床下間取り図が作成され、この作成された床下間取り図から基礎の形状を示す情報および床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータが出力され、この出力された床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れが解析され、解析結果が出力される。
【0028】
そして、この解析結果に基づき、床下の間取りの変更を行う際には、再度床下間取り図作成手段10により床下の間取りの変更を行ってから再度床下間取りデータ出力手段11による床下間取りデータの出力と、流体解析手段12による床下換気の流れの解析を繰り返し行うことができ、床下の間取りの変更から床下換気のシミュレーションまでを簡単に行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、床下の状況に応じて床下換気をシミュレーションする床下換気シミュレーション装置、床下換気シミュレーションプログラムおよび床下換気シミュレーション方法として有用であり、特に、床下換気口等を含む床下の間取りの変更から床下換気のシミュレーションまでを簡単に行うことが可能な床下換気シミュレーション装置、床下換気シミュレーションプログラムおよび床下換気シミュレーション方法として好適である。
【符号の説明】
【0030】
10 床下間取り図作成手段
11 床下間取りデータ出力手段
12 流体解析手段
【要約】
【課題】床下換気口等を含む床下の間取りの変更から床下換気のシミュレーションまでを簡単に行うこと。
【解決手段】床下の基礎の状況を示す基礎図上に、床下換気のためのアイテムを配置して床下間取り図を作成する床下間取り図作成手段10と、床下間取り図から基礎の形状を示す情報および床下換気のためのアイテムの配置および寸法を示す情報を含む床下間取りデータを出力する床下間取りデータ出力手段11と、床下間取りデータを入力し、この入力した床下間取りデータに基づいて、床下換気の流れを解析し、解析結果を出力する流体解析手段12とを含む。
【選択図】
図1