(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】サンプリングシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20230807BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
G01N1/00 101L
G01N1/00 101N
G01N1/10 Z
(21)【出願番号】P 2022153117
(22)【出願日】2022-09-26
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000157946
【氏名又は名称】岩井機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】西形 亮
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0074761(US,A1)
【文献】特表2009-533659(JP,A)
【文献】特開2013-106579(JP,A)
【文献】特開2021-019519(JP,A)
【文献】特開2017-044580(JP,A)
【文献】特開2014-221027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0236340(US,A1)
【文献】実開昭60-031663(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 1/10
C12M 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌された液体製品が流通する流通部から前記液体製品を採取するサンプリングシステムであって、
前記液体製品を回収する回収部に接続されるサンプリング流路と、
前記サンプリング流路と前記流通部とを連通する連通流路と、
前記流通部と前記サンプリング流路との間で前記連通流路に接続される一対の中間流路と、
前記サンプリング流路の前記回収部とは反対側に接続されて当該サンプリング流路に滅菌用流体を供給する第1供給ユニットと、
前記中間流路に接続されて当該中間流路に滅菌用気体を供給する第2供給ユニットと、
前記連通流路に配設されて当該連通流路を開閉する二重弁栓部と、
前記第1供給ユニット、前記第2供給ユニット及び前記二重弁栓部の動作を制御して前記液体製品の採取動作を行うサンプリング手段を含む制御部と、を備え、
前記二重弁栓部は、
前記連通流路の前記中間流路よりも前記流通部側に形成される第1弁座部に密接しうる第1弁栓部と、
前記第1弁栓部とは独立して駆動され、前記連通流路の前記中間流路よりも前記サンプリング流路側に形成される第2弁座部に密接しうる第2弁栓部と、を備え、
前記サンプリング手段は、
前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部により前記連通流路を二重に塞いだ状態で、前記第1供給ユニットを作動させて前記サンプリング流路を滅菌状態とし、
前記流通部に前記液体製品が流通されている状態で前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部を作動させて前記連通流路を開放して前記流通部から前記サンプリング流路に前記液体製品を流入させ、
前記流通部に前記液体製品が流通している状態で前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部を作動させて前記連通流路を塞いだ後に、前記サンプリング流路内の前記液体製品を前記回収部に供給する
ことを特徴とするサンプリングシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のサンプリングシステムであって、
前記サンプリング手段は、
前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部を作動させて前記連通流路を開放する際、
前記第1供給ユニットを作動させて前記サンプリング流路に除菌空気を供給し、当該サンプリング流路内を陽圧に保持した状態とする
ことを特徴とするサンプリングシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のサンプリングシステムであって、
前記サンプリング流路は、前記回収部と共に、前記第1供給ユニットから供給される前記滅菌用流体を外部に排出する排出部に接続され、
前記サンプリング手段は、前記第1供給ユニットによって前記サンプリング流路及び前記回収部に前記滅菌用流体としての滅菌用液体を流通させた後、前記サンプリング流路及び前記排出部に前記滅菌用流体としての滅菌用気体を流通させることで、前記サンプリング流路を滅菌状態とする
ことを特徴とするサンプリングシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のサンプリングシステムであって、
前記サンプリング手段は、
前記サンプリング流路を滅菌状態とする際、
前記第2供給ユニットによって前記中間流路に除菌空気を供給し、前記中間流路内を陽圧に保持した状態とする
ことを特徴とするサンプリングシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のサンプリングシステムであって、
前記サンプリング手段は、
前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部を作動させて前記連通流路を開放する際、
前記第2供給ユニットによって前記中間流路に除菌気体を供給し、前記中間流路内を陽圧に保持した状態とする
ことを特徴とするサンプリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体製品を製造するプラントにおいて、滅菌された液体製品を採取するためのサンプリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品などの液体製品を製造するプラントには、滅菌された液体製品等を採取するためのサンプリングシステムを備えているものがある。例えば、医薬品等の主原料となる物質を生産する生体細胞を培養する培養装置として、分析装置によって培養液を分析するために、培養槽から培養液を採取するサンプリング装置を備えているものがある(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のサンプリング装置は、培養槽への雑菌の混入を抑えることを目的とし、培養槽にバルブを介して接続された培養液抜き出し配管と、バルブを介してサンプリング用配管に接続される培養液導出配管と、を含んで構成され、各バルブ(シングルシートバルブ)の開閉を適宜制御することで、培養槽から、培養液抜き出し配管及び培養液導出配管を介して培養液を採取する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成によっても、サンプリング作業に外部からの雑菌の混入を抑制することはできるものの、サンプリングシステム(サンプリング装置)のサニタリ性は必ずしも十分とは言い切れず、さらになる向上が望まれている。
【0006】
なお、このような問題は、培養装置が備えるサンプリングシステムだけでなく、液体製品を製造するためのプラントを構成する液体処理システムが備えるサンプリングシステムにおいても、同様に存在する。
【0007】
液体処理システムとしては、例えば、液体製品を滅菌する滅菌装置と、液体製品を容器に充填する充填装置と、を備え、滅菌装置によって滅菌された液体製品を充填装置によって容器に充填するものがある。そして、このような液体処理システムにおいて、滅菌装置により滅菌された液体製品をサンプリングシステムによって採取する場合には、上記のような問題が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外部からの雑菌の混入を抑制し、滅菌状態を維持したままで液体製品を採取することできるサンプリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、滅菌された液体製品が流通する流通部から前記液体製品を採取するサンプリングシステムであって、前記液体製品を回収する回収部に接続されるサンプリング流路と、前記サンプリング流路と前記流通部とを連通する連通流路と、前記流通部と前記サンプリング流路との間で前記連通流路に接続される一対の中間流路と、前記サンプリング流路の前記回収部とは反対側に接続されて当該サンプリング流路に滅菌用流体を供給する第1供給ユニットと、前記中間流路に接続されて当該中間流路に滅菌用気体を供給する第2供給ユニットと、前記連通流路に配設されて当該連通流路を開閉する二重弁栓部と、前記第1供給ユニット、前記第2供給ユニット及び前記二重弁栓部の動作を制御して前記液体製品の採取動作を行うサンプリング手段を含む制御部と、を備え、前記二重弁栓部は、前記連通流路の前記中間流路よりも前記流通部側に形成される第1弁座部に密接しうる第1弁栓部と、前記第1弁栓部とは独立して駆動され、前記連通流路の前記中間流路よりも前記サンプリング流路側に形成される第2弁座部に密接しうる第2弁栓部と、を備え、前記サンプリング手段は、前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部により前記連通流路を二重に塞いだ状態で、前記第1供給ユニットを作動させて前記サンプリング流路を滅菌状態とし、前記流通部に前記液体製品が流通されている状態で前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部を作動させて前記連通流路を開放して前記流通部から前記サンプリング流路に前記液体製品を流入させ、前記流通部に前記液体製品が流通している状態で前記第1弁栓部及び第2弁栓部を作動させて前記連通流路を塞いだ後に、前記サンプリング流路内の前記液体製品を前記回収部に供給することを特徴とするサンプリングシステム。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様のサンプリングシステムであって、前記サンプリング手段は、前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部を作動させて前記連通流路を開放する際、前記第1供給ユニットを作動させて前記サンプリング流路に除菌空気を供給し、当該サンプリング流路内を陽圧に保持した状態とすることを特徴とするサンプリングシステムにある。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様のサンプリングシステムであって、前記サンプリング流路は、前記回収部と共に、前記第1供給ユニットから供給される前記滅菌用流体を外部に排出する排出部に接続され、前記サンプリング手段は、前記第1供給ユニットによって前記サンプリング流路及び前記回収部に前記滅菌用流体としての滅菌用液体を流通させた後、前記サンプリング流路及び前記排出部に前記滅菌用流体としての滅菌用気体を流通させることで、前記サンプリング流路を滅菌状態とすることを特徴とするサンプリングシステムにある。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様のサンプリングシステムであって、前記サンプリング手段は、前記サンプリング流路を滅菌状態とする際、前記第2供給ユニットによって前記中間流路に除菌空気を供給し、前記中間流路内を陽圧に保持した状態とすることを特徴とするサンプリングシステムにある。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1の態様のサンプリングシステムであって、前記サンプリング手段は、前記第1弁栓部及び前記第2弁栓部を作動させて前記連通流路を開放する際、前記第2供給ユニットによって前記中間流路に除菌気体を供給し、前記中間流路内を陽圧に保持した状態とすることを特徴とするサンプリングシステムにある。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明のサンプリングシステムによれば、外部からの雑菌の混入を抑制でき、滅菌状態を維持したままで、液体製品を採取することできる。特に、流通部への雑菌の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムを備える液体処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムの概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムを構成する二重弁栓部の概略構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムを構成する二重弁栓部の概略構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムの動作を説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムの動作を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムの動作を説明する図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムの動作を説明する図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るサンプリングシステムを備える液体処理システムの概略構成を示す図である。
【0018】
まずは、本実施形態に係る液体処理システムIの全体構成について説明する。液体処理システムIは、液体製品の一例として液状の医薬品(以下、「薬液」と称する)を製造するプラントの一部であり、充填装置1を含んで構成されている。具体的には、液体処理システムIは、調製タンク2と、滅菌機(滅菌装置)3と、貯留タンク4、フィルター装置5及び充填ユニット(充填機)6を含む充填装置1と、これらの機器類を接続する配管からなる製造ラインLと、を備えて構成されている。
【0019】
調製タンク2は、薬液の原料や水などの溶媒を調整して薬液を得るためのタンクである。滅菌機3は、熱処理やフィルターによるろ過処理などによって薬液を滅菌するための装置である。
【0020】
充填装置1は、例えば、バイヤル等の容器に薬液を充填するための装置であり、本実施形態では、貯留タンク4と、フィルター装置5と、充填ユニット6と、を備えて構成されている。
【0021】
貯留タンク4は、調製タンク2にて調製され、滅菌機3によって滅菌された薬液が貯留されるものである。貯留タンク4の容量は、特に限定されるものではないが、比較的大容量のものが用いられる。
【0022】
フィルター装置5は、貯留タンク4から供給される薬液をさらにろ過処理するための装置であり、充填ユニット6の近傍に配置されている。
【0023】
充填ユニット6は、貯留タンク4からフィルター装置5を介して供給された薬液を容器に充填するものであり、容器に薬液を充填するための複数の充填針を含んで構成されている。充填ユニット6の構成は、特に限定されず、既存のものを採用すればよいため、充填ユニット6についての詳細な説明は省略する。
【0024】
製造ラインLは、薬液や洗浄用の流体が流通する配管であり、調製タンク2と、滅菌機3と、充填装置1の貯留タンク4と、フィルター装置5と、充填ユニット6とを順次接続する。つまり調製タンク2内の薬液は、製造ラインLによって、滅菌機3、貯留タンク4及びフィルター装置5を介して充填ユニット6に流通されるようになっている。
【0025】
そして、液体処理システムIは、滅菌機3よりも下流側において、流通部である製造ラインLに接続され、この製造ラインLから液体製品である薬液を採取するサンプリングシステム10を備えている。つまり液体処理システムIは、滅菌機3により滅菌された薬液を採取するサンプリングシステム10を備えている。サンプリングシステム10は、滅菌機3よりも下流側であり、かつ装置滅菌可能な範囲であれば、どの位置に配置されていてもよいが、本実施形態では、貯留タンク4とフィルター装置5との間で製造ラインLに接続されている。
【0026】
次に、このサンプリングシステム10の概略構成について説明する。サンプリングシステム10は、
図2に示すように、サンプリング流路11と、連通流路12と、一対の中間流路13A,13Bと、第1供給ユニット14及び第2供給ユニット15と、二重弁栓部16と、これらの装置の動作を制御する制御部17と、を備えている。
【0027】
サンプリング流路11は、一端側が二重弁栓部16及び連通流路12を介して流通部である製造ライン(配管)Lに接続されると共に、他端側が、薬液を回収するための回収部18に接続される。本実施形態では、サンプリング流路11の連通流路12と反対側は、二股に分岐されて第1分岐流路19及び第2分岐流路20に接続されており、第1分岐流路19が回収部18に繋がっている。なお第1分岐流路19は第1開閉バルブ21を介してサンプリング流路11に接続されている。
【0028】
第2分岐流路20は、後述するように滅菌用気体が供給される流路であり、第2分岐流路20には、温度センサー22と絞り弁(ニードルバルブ)23とが配設されている。この第2分岐流路20は、その一端側が第2開閉バルブ24を介してサンプリング流路11に接続され、他端側は滅菌用気体が排出される排出部48に繋がっている。
【0029】
連通流路12は、製造ラインLとサンプリング流路11とを連通する流路であり、連通流路12には、連通流路12を開閉、つまり製造ラインLとサンプリング流路11とを連通又は遮断するための二重弁栓部(二重弁栓装置)16が配置されている。また連通流路12には、第1供給ユニット14に繋がる接続流路25が第3開閉バルブ26を介して接続されている。この接続流路25は、二重弁栓部16によって連通流路12が閉じられた状態においても、連通流路12を介してサンプリング流路11に連通する。
【0030】
一対の中間流路13(13A,13B)は、製造ラインLとサンプリング流路11との間で、連通流路12にそれぞれ接続されている。これらの中間流路13A,13Bは、二重弁栓部16によって連通流路12が閉じられた状態においても、連通流路12を介して連通する。中間流路13Aは、第2供給ユニット15に繋がる流路であり、第4開閉バルブ27を介して連通流路12に接続されている。一方、中間流路13Bは、外部(大気)に連通する流路であり、第5開閉バルブ28を介して連通流路12に接続されている。中間流路13Bには、温度センサー29と、絞り弁30とが設けられている。
【0031】
なお第1開閉バルブ21、第2開閉バルブ24、第3開閉バルブ26、第4開閉バルブ27及び第5開閉バルブ28は、それぞれ各流路を開閉するためのものであり、例えば、シングルシートバルブで構成されている。
【0032】
第1供給ユニット14は、サンプリング流路11を含む流路を定置洗浄(CIP)及び定置滅菌(SIP)等を行うために、滅菌用流体等を供給するための装置である。図示は省略するが、第1供給ユニット14は、定置洗浄に用いる滅菌用液体(例えば、洗浄液体)の供給源、定置滅菌に用いる滅菌用気体(例えば、飽和水蒸気)の供給源、これらの滅菌用液体及び滅菌用気体等を圧送するための装置(ポンプやガスによる圧送を行う装置)等を備えると共に、除菌空気(除菌エアー)の供給源も備えている。
【0033】
また第2供給ユニット15は、中間流路13の定置滅菌(SIP)等を行うために、滅菌用気体等を供給するための装置であり、定置滅菌に用いる滅菌用気体の供給源、滅菌用気体等を圧送するための装置を備えると共に、第1供給ユニット14と同様に、除菌空気の供給源も備えている。
【0034】
なお、定置洗浄(CIP)に用いられる滅菌用液体(洗浄液体)は、水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加したもの、水に酸性薬剤を添加したもの、界面活性剤を含む水、またはそれらの薬剤を含まない水などである。もちろん、これらは併用してもよい。また定置滅菌(SIP)に用いられる滅菌用気体は、例えば、精製水を原水とした飽和水蒸気(ピュアスチーム)である。
【0035】
次に、連通流路12に配される二重弁栓部(二重弁栓装置)16の概略構成について、二重弁栓部16を簡略化して示す
図3及び
図4を参照して説明する。なお
図3及び
図4は、二重弁栓部の概略構成を示す断面図であり、
図3は、二重弁栓部によって連通流路が閉じられた状態を示す図であり、
図4は、二重弁栓部によって連通流路が開かれた状態を示す図である。
【0036】
図3及び
図4に示すように、二重弁栓部16は、それぞれ独立して駆動可能な第1弁栓部31及び第2弁栓部32を備えている。第1弁栓部31は、連通流路12の軸方向(図中X軸方向)に延びる第1弁軸部33と、第1弁軸部33の製造ラインL側の端部に設けられる第1弁体34と、を備えている。第2弁栓部32は、連通流路12の軸方向に延びる第2弁軸部35と、第2弁軸部35の製造ラインL側に設けられて、X方向とは直交する方向において第1弁体34よりも大径である第2弁体36と、を備えている。そして第1弁栓部31の第1弁軸部33は、第2弁軸部35内に軸方向に摺動可能に挿入されている。
【0037】
これら第1弁栓部31及び第2弁栓部32は、図示しないアクチュエーター等の駆動手段に接続されており、この駆動手段によってX方向で直線移動可能に構成されている。
【0038】
なお第2弁栓部32の第2弁軸部35は、装置本体部37に形成された保持孔38内にバックプレート39を介して保持されている。第2弁栓部32と装置本体部37との間には、連通流路12内と第2弁栓部32との間を隔離する隔膜40が設けられている。隔膜40は、連通流路12とは反対側の面がバックプレート39により非固定状態で支持されると共に装置本体部37に固定されている。さらに、第1弁体34及び第2弁体36の外表面部には、一体的に形成された合成樹脂膜41が隔膜40から連続的に設けられている。
【0039】
一方で、二重弁栓部16が配置される連通流路12には、第1弁体34が密接しうる第1弁座部42と、第2弁体36が密接しうる第2弁座部43と、が設けられている。より詳しくは、連通流路12は、
図4に示すように、それぞれ内径の異なる第1孔部44、第2孔部45及び第3孔部46を含んで構成され、これら第1孔部44、第2孔部45及び第3孔部46によって第1弁座部42及び第2弁座部43が形成されている。
【0040】
X方向とは直交する方向において、第1孔部44は、第1弁体34の直径よりも小さい内径で形成され、第2孔部45は、第1弁体34の直径よりも大きい内径で且つ第2弁体36の直径よりも小さい直径で形成されている。また、第3孔部46は第2弁体36の直径よりも大きく形成されている。
【0041】
これにより、第1孔部44と第2孔部45との境界部分の段差面が第1弁座部42として機能し、第2孔部45と第3孔部46との境界部分の段差面が第2弁座部43として機能する。
【0042】
そして、第1弁体34が第1弁座部42に密接し、第2弁体36が第2弁座部43に密接していることで、連通流路12が閉じられた状態となる。つまり製造ラインLとサンプリング流路11とが遮断された状態となる(
図3参照)。
【0043】
ここで、一対の中間流路13A,13Bは、それぞれ連通流路12を構成する第2孔部45に連通している。言い換えれば、第1弁体34は、連通流路12の中間流路13よりも製造ラインL側に設けられる第1弁座部42に密接し、第2弁体36は、連通流路12の中間流路13よりもサンプリング流路11側に設けられる第2弁座部43に密接するようになっている。
【0044】
したがって、中間流路13(13A,13B)は、第1弁体34が第1弁座部42に密接すると共に、第2弁体36が第2弁座部43に密着して連通流路12が閉じられた状態においても、連通流路12(第2孔部45)を介して連通する。
【0045】
また、このように連通流路12が閉じられた状態から、図示しない駆動手段により、第1弁栓部31及び第2弁栓部32を装置本体部37側である-X方向に若干移動させることで、第1弁体34が第1弁座部42から離れ且つ第2弁体36が第2弁座部43から離れた状態となる。つまり製造ラインLとサンプリング流路11とが連通流路12を介して連通した状態となる(
図4参照)。
【0046】
制御部17は、このようなサンプリングシステム10の包括的な制御を行うものであり、薬液の採取動作(サンプリング動作)を行うサンプリング手段47を備えている。サンプリング手段47は、二重弁栓部16の動作を制御する他、第1供給ユニット14及び第2供給ユニット15や各開閉バルブ等の動作を制御して、薬液の採取を行う。次に、このサンプリング手段47による薬液の採取動作の一例について、
図5~
図9を参照して説明する。なお
図5~
図9中の透過する矢印は、滅菌用液体、滅菌用気体又は液体製品の流れを示している。
【0047】
まずは、二重弁栓部16の第1弁体34を第1弁座部42に密接させると共に第2弁体36を第2弁座部43に密接させて連通流路12を二重に塞いだ状態で、第1供給ユニット14を作動させてサンプリング流路11を滅菌状態とする。
【0048】
具体的には、
図5に示すように、第1開閉バルブ21及び第3開閉バルブ26を開き、第2開閉バルブ24を閉じた状態で、第1供給ユニット14を作動させて、接続流路25、サンプリング流路11及び第1分岐流路19に滅菌用流体としての滅菌用液体(洗浄液体)を流通させ、回収部18に滅菌用液体を排出することで、これらの流路の定置洗浄(CIP)を行う。
【0049】
またこのとき、第4開閉バルブ27及び第5開閉バルブ28を開き、第2供給ユニット15を作動させることで、中間流路13A,13Bに滅菌用気体としての飽和水蒸気(ピュアスチーム)を供給した状態とする。すなわち製造ラインLとサンプリング流路11との間に、ピュアスチームによる蒸気バリアを形成する。なお中間流路13A,13Bに流通する飽和水蒸気の温度は、温度センサー29の検出結果に基づいて管理される。また中間流路13A,13Bに流通する飽和水蒸気の流量は、絞り弁30によって調整される。
【0050】
サンプリング流路11等の定置洗浄(CIP)が終了すると、次に、
図6に示すように、第1開閉バルブ21を閉じて第2開閉バルブ24を開き、接続流路25、サンプリング流路11及び第2分岐流路20に滅菌用気体としての飽和水蒸気(ピュアスチーム)を流通させ、排出部48に飽和水蒸気を排出することで、これらの流路の定置滅菌(SIP)を行う。サンプリング流路11等に供給される飽和水蒸気は、温度センサー22の検出結果に基づいて温度管理され、飽和水蒸気の流量は、絞り弁23によって調整される。またこのときも、中間流路13A,13Bには滅菌用気体である飽和水蒸気を供給した状態とする。
【0051】
サンプリング流路11の定置滅菌(SIP)が終了すると、次に、
図7に示すように、サンプリング流路11内を陽圧に保持する。具体的には、第1開閉バルブ21及び第2開閉バルブ24を閉じ、第3開閉バルブ26を開いた状態で、第1供給ユニット14から接続流路25を介してサンプリング流路11に除菌空気を供給し、サンプリング流路11内を陽圧に保持する。
【0052】
次に、製造ラインLに薬液が流通されている状態で、且つサンプリング流路11内を陽圧に保持した状態で、二重弁栓部16の第1弁栓部31及び第2弁栓部32を作動させて連通流路12を開き、
図8に示すように、製造ラインLから連通流路12を介してサンプリング流路11内に薬液を流入させる。これにより、製造ラインLから連通流路12を介してサンプリング流路11内に薬液を適切に充填できる。すなわち外部からの雑菌の混入を抑制しつつ、薬液をサンプリング流路11内に充填できる。なお二重弁栓部16を作動させて連通流路12を開く際には、第3開閉バルブ26を閉じて第1供給ユニット14からサンプリング流路11内への除菌空気の供給は停止する。
【0053】
そして、サンプリング流路11内に薬液が充填されると、製造ラインLに薬液が流通している状態で二重弁栓部16の第1弁栓部31及び第2弁栓部32を作動させて連通流路12を塞ぐ。その後、第1開閉バルブ21を開放することで、
図9に示すように、サンプリング流路11内に充填された薬液は第1分岐流路19を介して回収部18に供給され、回収部18にて容器に薬液を採取する。これにより、一連の採取動作(サンプリング動作)が終了する。
【0054】
以上説明したように本実施形態に係るサンプリングシステム10では、流通部である製造ラインLとサンプリング流路11とを二重弁栓部16で開閉するようにしたので、サニタリ性が向上している。したがって、外部からの雑菌の混入を抑制して、滅菌状態を維持したままで薬液を採取することでき、流通部である製造ラインLへの雑菌の混入も抑制することができる。
【0055】
さらには、液体製品である薬液の無駄な廃棄を抑制することができる。例えば、二種類の無菌状態の原料液を容器内で混合する場合、従来は、容器に充填後に品質検査を行っていたため、品質基準を満たさないことが判明すると、容器内で混合した二種類の全ての原料液を廃棄しなければならなくなり無駄が大きかった。これに対し、本実施形態に係るサンプリングシステム10では、容器に充填する前に、滅菌された各原料液を採取して検査することができるため、一方の原料液が品質基準を満たしていない場合、その一方の原料液のみの廃棄で済み、原料液(薬液)の無駄な廃棄を抑えることができる。
【0056】
なお、このように複数種類(例えば、二種類)の原料液を混合する場合、液体処理システムIは、各原料液が流通する複数の製造ライン(流通部)を備えると共に、これら複数の各製造ラインにそれぞれ接続される複数のサンプリングシステム10を備える。つまり液体処理システムIは、滅菌された複数の原料液を混合して液体製品を製造し、滅菌された原料液が流通する流通部(製造ライン)のそれぞれにサンプリングシステムを設けたものであってもよい。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0058】
例えば、製造ラインLからサンプリング流路11に液体製品である薬液を充填する際、二重弁栓部16を作動させて連通流路12が開かれるまで、第2供給ユニット15から中間流路13に除菌空気を供給するようにしてもよい。
【0059】
また上述の実施形態では、サンプリングシステム10が、流通部である製造ラインLに接続された構成を例示したが、例えば、貯留タンク4に接続されていてもよい。つまり流通部とは、製造ラインLだけでなく、薬液が貯留される貯留タンク4も含まれる。
【0060】
また例えば、上述の実施形態では、液体製品の一例として医薬品について説明したが、これに限定されない。本発明のサンプリングシステムは、医薬品のみならず飲料食品一般についても適用できる。
【符号の説明】
【0061】
I…液体処理システム、 L…製造ライン、 1…充填装置、 2…調製タンク、 3…滅菌機、 4…貯留タンク、 5…フィルター装置、 6…充填ユニット、 10…サンプリングシステム、 11…サンプリング流路、 12…連通流路、 13…中間流路、 14…第1供給ユニット、 15…第2供給ユニット、 16…二重弁栓部、 17…制御部、 18…回収部、 19…第1分岐流路、 20…第2分岐流路、 21…第1開閉バルブ、 22…温度センサー、 23…絞り弁、 24…第2開閉バルブ、 25…接続流路、 26…第3開閉バルブ、 27…第4開閉バルブ、 28…第5開閉バルブ、 29…温度センサー、 30…絞り弁、 31…第1弁栓部、 32…第2弁栓部、 33…第1弁軸部、 34…第1弁体、 35…第2弁軸部、 36…第2弁体、 37…装置本体部、 38…保持孔、 39…バックプレート、 40…隔膜、 41…合成樹脂膜、 42…第1弁座部、 43…第2弁座部、 44…第1孔部、 45…第2孔部、 46…第3孔部、 47…サンプリング手段、 48…排出部
【要約】 (修正有)
【課題】外部からの雑菌の混入を抑制し、滅菌状態を維持したままで液体製品を採取することできるサンプリングシステムを提供する。
【解決手段】二重弁栓部16を構成する第1弁栓部及び第2弁栓部により連通流路12を二重に塞いだ状態で、第1供給ユニット14を作動させてサンプリング流路11を滅菌状態とし、流通部Lに液体製品が流通されている状態で第1弁栓部及び第2弁栓部を作動させて連通流路12を開放して流通部Lからサンプリング流路11に液体製品を流入させ、流通部Lに液体製品が流通している状態で第1弁栓部及び第2弁栓部を作動させて連通流路12を塞いだ後に、サンプリング流路11内の液体製品を回収部18に供給する。
【選択図】
図2