(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】超電導コイルの支持構造体
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
H01F6/06 ZAA
(21)【出願番号】P 2022517844
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2020070143
(87)【国際公開番号】W WO2021058163
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522108529
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】カルバート,サイモン ジェームス
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/066526(WO,A1)
【文献】特開2014-099642(JP,A)
【文献】特開平09-283322(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103827(WO,A1)
【文献】特開平04-287903(JP,A)
【文献】特開平11-045807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0174513(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 36/10-36/14
A61N 5/00- 5/10
G01N 22/00-22/04
G01N 24/00-24/14
G01R 33/00-33/64
H01F 5/00- 6/06
H01F 7/20
H05H 3/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル(10、50)の表面(14)に取り付けられ、前記コイルの半径方向外面を越えて軸方向に延在する可撓性装着バンド(12)を備える、超電導コイルの支持構造体、を備え
前記可撓性装着バンドが、複数の位置で支持構造体(22)に取り付けられており、
前記コイル(10、50)が、前記可撓性装着バンド(52)によって1つ又は複数の他のコイル(10、50)に取り付けられており、前記他のコイルが、前記可撓性装着バンド(52)のそれぞれに取り付けら
れ、
前記可撓性装着バンド(12)が、前記コイル(10、50)の半径方向外側表面全体にわたって延在する、
支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項2】
前記可撓性装着バンドのそれぞれが、前記コイルのそれぞれに半径方向外側表面の全体にわたって延在する、請求項1に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項3】
複数の孔(18)が前記可撓性装着バンド(12)を貫通して延在し、締結具(20)が前記複数の孔のそれぞれを貫通して前記支持構造体(22)にまで設けられている、請求項1又は2に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項4】
前記可撓性装着バンド(12)の一部の上に設けられ、前記孔(18)の軸方向の範囲と前記孔の周囲の領域とを覆うのに十分な補強バンド(24)をさらに備える、請求項3に記載の支持
された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項5】
前記コイル(10)はシールドコイルであり、前記支持構造体(22)が主磁石構造体、極低温容器、又はOVC(外側真空チャンバ)に取り付けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の支持
された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項6】
前記コイル(10)が主磁石コイルであり、前記支持構造体(22)が極低温容器又はOVCに取り付けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項7】
前記可撓性装着バンド(12)が、軸方向には比較的剛性が高く、半径方向には比較的柔軟である、請求項1から6のいずれか1項に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項8】
前記孔が、前記可撓性装着バンド(12)の軸方向端部の近傍に設けられている、請求項3に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項9】
前記可撓性装着バンドが、連続的な機械的接続によって前記支持構造体(22)に取り付けられる、請求項1から8のいずれか1項に記載の支持
された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項10】
前記他のコイルにおいて、前記可撓性装着バンド(52)が、関連する前記コイルの両方の
軸方向の端部を越えて延在する、請求項1から9のいずれか1項に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項11】
複数の環状コネクタ(54)がコイル間に設けられ、前記可撓性装着バンド(52)のそれぞれが前記環状コネクタ(54)のそれぞれにその軸方向端部で接続される、請求項1から10のいずれか1項に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項12】
前記環状コネクタ(54)が、前記コイル(50)を含む磁石構造体をクライオスタット内に保持するための荷重支持体として使用される、請求項11に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【請求項13】
2つ以上のコイル(50)が単一の共有可撓性装着バンド(52’)に取り付けられる、請求項1から12のいずれか1項に記載の支持された超電導コイルのアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導コイルの支持構造体に関し、特に軽量で可撓性超電導コイルの支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴撮像(MRI)又は核磁気共鳴(NMR)システムに使用されるような多くの超電導磁石は、強力で静磁場を発生する主磁石コイル、及び主磁石コイル内の電流よりも通常は逆方向に電流を流す主磁石コイルよりも直径の大きいシールドコイルを含む。シールドコイルは、磁石が放出する浮遊磁界の量を減少させる。有効性を確保するために、シールドコイルは、実質的な半径方向ギャップだけ主磁石コイルから半径方向に離間される傾向がある。効果的に浮遊磁界をシールドするために、シールドコイルは正確に配置されなければならない。使用時には、このようなシールドコイルは、数トンの軸方向体積力を受けることができる。したがって、このような軸方向荷重に耐えることが可能であり、シールドコイルを必要な位置に正確かつ繰り返し保持することができる、このようなシールドコイルの支持構造体を提供することが必要である。また、支持構造体は、液体極低温材の貯蔵及び消費を最小化し、輸送コスト及び材料消費を最小化するために、現行の駆動装置を満たすために、軽量でコスト効率の良いものである必要がある。
【0003】
極低温浴、すなわち循環質量に依存しない電導冷却磁石は、超電導磁石の「コールドマス」を低温に保つ必要がある。「コールドマス」は、超電導コイルの動作温度で使用されている超電導磁石の全ての構成要素を含む。したがって、それは、超電導コイル自体、支持構造体、電気接続部及び支持構造体に取り付けられた機器を含むことになる。
【0004】
コールドマスが制限されている場合、コイルの材料はワイヤ寸法が小さくなり、従来の形成体は寸法が小さくなるか、又は完全になくなる。したがって、コイルは極めて薄くなり、その固有の剛性の多くを失い、そのようなコイルを支持することは、はるかに困難になる。輸送、コイル間の相互作用、磁石近傍の鉄などの問題は、従来の磁石構造体の場合よりも大きな考慮が必要である。質量を低減したコイルはある程度柔軟性があるので、コイルは機械的な点荷重を受けないことが好ましい。すなわち、コイルは、その周囲の狭い位置にのみ拘束されるべきではない。というのは、結果として生じる動作中の機械的な点荷重がコイルの変形につながるからである。
【0005】
超電導磁石の電流及び将来の設計は、また、低質量で可撓性超電導コイルを主磁石コイルとして特徴付ける可能性が高いので、本発明の方法及び構造体は、主磁石コイル及びシールド磁石コイルの両方に適用することができる。
【0006】
したがって、本発明は、超電導コイルの支持構造体、及び超電導コイルを支持する方法を提供し、質量及び材料消費が最小限に抑えられ、他の構成要素との機械的相互作用が最小限に抑えられ、コイルがその周囲の多くの位置で支持されるようにする。本発明の方法及び装置を使用して、コイルの動作の信頼性に関して懸念なく、比較的薄くかつ可撓性のコイルを高剛性の支持構造体に取り付けることができる。
【0007】
剛性コイル形成体すなわち大きな断面のワイヤのような従来の取付け及び補強構成は、質量、材料消費及び冷却要求を最小化しようとする超電導磁石構造体での使用には適さない。
【0008】
したがって、本発明は、特許請求の範囲に定義されている方法及び装置を提供する。
【0009】
上記、さらに、本発明の物体、特性及び利点は、単なる例として、添付図面とともに与えられる、特定の実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のそれぞれの実施例を、部分半径方向、部分軸方向断面で示している。
【
図2】本発明のそれぞれの実施例を、部分半径方向、部分軸方向断面で示している。
【
図3】本発明のそれぞれの実施例を、部分半径方向、部分軸方向断面で示している。
【
図4】本発明の実施形態による、可撓性装着バンドを有するコイルを製造する製造プロセス自体の段階を概略的に表す。
【
図5】本発明の実施形態による、可撓性装着バンドを有するコイルを製造する製造プロセス自体の段階を概略的に表す。
【
図6】本発明の実施形態による、可撓性装着バンドを有するコイルを製造する製造プロセス自体の段階を概略的に表す。
【
図7】
図1の表現と類似の方法で、本発明の代替実施形態を図式的に表す。
【
図8】
図7に表わすような物品の製造方法における工程を表わす。
【
図9】
図7に表わすような物品の製造方法における工程を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、応力集中が回避され、支持されたコイルの円周の周りに連続的又はほぼ連続的な支持を提供するような方法で、薄くて可撓性のコイルを剛性の支持構造体に接続するための方法及び装置を提供する。これは、質量がほとんどない構造体で達成され、極低温材料を含まない、又はほとんど含まない超電導磁石構成に有用に適用できることが見出され、この構造体質量が低いことによって、動作温度まで比較的速い冷却及び再冷却が可能になる。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の部分軸方向、部分半径方向断面を図式的に表す。構造体は、本質的に、軸A-A(概略的に表される)を中心に回転対称であり、中心線C-C(概略的に表される)を中心に反射対称である。本明細書において、「軸方向」及び類似の用語への言及は、軸A-Aに平行な方向を示し、一方、「半径方向」及び類似の用語への言及は、軸A-Aに垂直な方向を示す。
【0013】
コイル10は、薄くて可撓性のコイルである。シールドコイルであってもよく、本明細書では、シールドコイルと呼ぶことができるが、本発明は、主磁石コイル及び実際には任意の磁石コイルを組み込んだ実施形態にまで及ぶ。
【0014】
本発明の特徴によれば、可撓性装着バンド12がコイル10の半径方向外側表面14に取り付けられ、コイルの表面を越えて軸方向に延在する。図示の実施形態では、可撓性装着バンド12は、コイル10の半径方向外側表面全体にわたって延在する。本発明の他の実施形態では、バンドは、半径方向外側表面全体にわたって延在せず、必要な機械的界面強度を提供するのに十分な幅にわたって延在する。図示の実施形態では、例えばリベット又はボルトによって可撓性装着バンド12を支持構造体に装着する目的で、好ましくはその軸方向端部付近に可撓性装着バンド12を貫通して複数の孔18が形成されている。別個に図示されていない他の実施形態では、可撓性装着バンド12は、代替的に、又は付加的に、リベット止め又はボルト止めされるのではなく、支持構造体に接着又は機械的にクランプすることができる。これらの方法は、連続的な支持を提供し、支持構造体が例えばボルト又はリベットによって断続的に支持される実施形態において発生し得る応力集中をさらに最小化するであろう。
【0015】
図1の実施形態では、可撓性装着バンド12の軸方向内端部16付近に、複数の孔18が形成されている。各孔18を貫通して、リベット又はボルトのような締結具20が設けられ、装着バンド12を複数の位置で支持構造体22に取り付けるように機能する。孔18及び締結具20の数は、コイル10が使用時に変形を生じさせるのに十分な点荷重を受けないように少なくとも十分であるように選択される。ある実施形態では、補強バンド24が、孔18の軸方向の範囲と孔の周りの領域を覆うのに十分な、可撓性装着バンド12の一部を覆って設けられ、締結具20に支持を提供する。孔18は、補強バンドを貫通して延在する。補強バンドが十分に強固である場合、及び/又は孔18及び締結具20が十分に多数である場合、補強バンド24は不要であることが判明し得る。しかしながら、本発明の利点は、可撓性装着バンド12が軽量である場合に最良に得られる。
【0016】
支持構造体22は、任意の従来型又は適切な支持構造体であってもよい。コイル10がシールドコイルである実施形態では、支持構造体22は、主磁石構造体に、低温容器又は真空容器(外側真空チャンバ「OVC」)に取り付けられてもよい。コイル10が主磁石コイルである実施形態では、支持構造体22は、極低温容器又はOVCに取り付けられてもよい。
【0017】
使用時には、コイル10は、矢印26によって示される著しい軸方向力を受ける。磁石の設計に応じて、26で表される軸方向力は、磁石の軸方向中央面C-Cに向かって、又はそれから離れるように作用し得る。
【0018】
使用時には、コイル10及びコールドマスの残りは、超電導動作温度、通常は20K以下、通常は約4Kまで冷却される。コイル10が受ける軸方向力26は、環状コイル10内の引張力及び熱膨張の差として受けるフープ応力と併せて、コイル10及び可撓性装着バンド12を支持構造体22に対してファントムで表されるような活性位置10′に変位させる。
図1に表わすように、コイル10に作用する力は、図示の例では、外側にバレル状になることによって、それを変形させる場合がある。他の実施形態では、コイル10は、内側にバレル状であってもよく、又は円錐状に変形してもよい。超電導磁石の設計中に、そのような変形及び移動の範囲及び位置は、当業者に周知のコンピュータモデリングソフトウェアによってモデル化することができ、磁石の動作は、コイル10をその「アクティブ」位置10′にした状態でシミュレートすることができる。好ましくは、可撓性装着バンド12は、軸方向には比較的剛性があるが、半径方向には比較的柔軟である。図示されていない1つ又は複数の追加の補強バンドを、可撓性装着バンドの軸方向長さに沿って付加して、半径方向コンプライアンスを維持しながら、軸方向圧縮荷重下での可撓性装着バンドの座屈に抵抗してもよい。
【0019】
コイル10が液体及び/又は気体極低温との接触によって冷却される本発明の実施形態では、可撓性装着バンド12が比較的薄く、熱伝導性であってもよいので、コイル10の全面が極低温との接触によって冷却されるので、本発明の構造体は有利であることが分かるであろう。
【0020】
柔軟な装着バンド12は、コイル10が受ける力の下で比較的薄く、柔軟である。可撓性装着バンド12は、コイル10の半径方向外側表面に接着され、コイル10を支持構造体に取り付けるための手段として機能する。以下により詳細に説明する他の実施形態では、コイル10は、可撓性装着バンド12によって1つ又は複数の他のコイルに取り付けられてもよく、そのような他のコイルにも同様の可撓性装着バンドが設けられる。他の代替実施形態では、また、以下により詳細に説明するが、可撓性装着バンド12は、コイル10の半径方向内側表面に接着される。
【0021】
可撓性装着バンド12の半径方向コンプライアンスは、コイル10と可撓性装着バンド12との間に過度の界面応力を導入することなく、コイル10が支持構造体22に対して膨張することを可能にする。可撓性装着バンド12は、多くの点で、又は連続して接続され、コイル10は、可撓性装着バンド12に連続して接続されるため、コイルは、支持構造体22によって丸く保持される。このようなコイル支持体は、輸送衝撃から生じる実質的な横方向力、及び、例えば、近くの鉄遮蔽板から生じる電磁(EM)荷重に抵抗することができることが分かっている。
【0022】
本発明のある実施形態では、可撓性装着バンド12は、連続的な機械的接続によって支持構造体22に取り付けられる。これは、グラスファイバークロス又はカーボンファイバークロスの樹脂含浸オーバーバインドによって、又は使用される材料に応じて、溶接、ろう付け又は類似の、又は接着接合によって行うことができる。
【0023】
超電導磁石内のクエンチは、特に薄いコイルの場合に非常に厳しい負荷の場合であり、ここで、コイル10は、実質的に支持構造体22に対して加熱され得る。
図1の実施形態によって表わされる本発明の文脈において、可撓性装着バンド12によって提供される半径方向に柔軟な湾曲部は、コイル10に機械的応力を加えることなく、熱膨張差による位置の相対的変化に対応することができる。
【0024】
コイル10と支持構造体22との間の機械的接続は、コイルから遠く離れた締結具20において有効である。支持構造体22に対するコイルの任意の機械的な動きは、コイル10から離れた、可撓性装着バンド12と支持構造体22との間の動きによって取り上げられるであろう。反対に、他の何らかの理由で、可撓性装着バンド12と支持構造体22との間の何らかの機械的な動きもまた、コイル10から離れて起こり、いかなるこのような動きでの摩擦によって発生する熱もコイル10に到達せず、コイルのクエンチを引き起こさないであろう。
【0025】
可撓性装着バンド12は、冷却、通電又はクエンチのような現象によるコイル10への応力集中の導入を回避する半径方向に柔軟なたわみ支持体である。可撓性装着バンド12は、軸方向及び方位方向において剛性であり、したがって、EM荷重及び出荷荷荷重に抵抗することができる。
【0026】
したがって、本発明は、非常に薄いコイルに特に適したコイル支持方法を提供する。本発明のコイル支持体は、多くの方位角位置でコイルを支持するため、コイルが丸くなったり座屈したりするのを防止する。好ましい実施形態では、コイル支持方法は、超電導マグネットにコスト又は構造上の質量をほとんど追加しない。いかなるスティックスリップ現象もコイル自体から十分に離れて起こるので、本発明の構造体によってクエンチのスティックスリップ開始は回避される。
【0027】
図2は、本発明の別の実施形態を示しており、この実施形態では、主磁石コイル50は、それぞれ、
図1の実施形態を参照して説明したのと同様の方法で、可撓性装着バンド52に取り付けられている。
図2の左側に示されているような端部コイルの場合、可撓性装着バンド52は、関連するコイル50の軸方向内端部を越えて軸方向に延在する。他方の(内側)コイルの場合、可撓性装着バンド52は、コイル50の両軸方向端部を越えて軸方向に延在する。
【0028】
したがって、第1のコイル要素60は、関連する端部コイル50の軸方向内端部を越えて軸方向に延在する端部コイル50と、関連する可撓性装着バンド52とを備える。第2のコイル要素62及び第3のコイル要素64はそれぞれ、内部コイル50を含み、関連する可撓性装着バンド52は、コイル50の両方の軸方向端部を越えて軸方向に延在する。
【0029】
環状コネクタ54がコイル間に設けられ、これらはコイル間の機械的接続を提供し、それぞれの可撓性装着バンド52が各環状コネクタ54に取り付けられて隣接するコイルを接合する点である。環状コネクタ54は、複合材料であっても、形状に機械加工されたものであっても、環状形状に形成されたアルミニウム押出成形体であっても、超電導磁石を設計する当業者には明らかであろう他の適切な材料であってもよい。環状コネクタ54は、可撓性装着バンド52よりも剛性がある。したがって、環状コネクタ54は、結果として生じる構造体に機械的強度を与え、各コイルが関連する可撓性装着バンド52の軸方向の端部/端部にしっかりと支持されることを保証する。環状コネクタ54は、磁石構造体をクライオスタット内に保持するための荷重支持体として使用することができる。支持ロッド又は類似物を環状コネクタ54に取り付けて、コールドマスの重み付けを負担するために使用することができる。
【0030】
図3は、
図2の実施形態の変形例である別の実施形態を示し、この実施形態では、2つ以上のコイル50が、それらのコイル間に環状コネクタ54を有さずに、単一の共有可撓性装着バンド52′に取り付けられている。それに応じて、軸方向に離間しているが共用の可撓性装着バンド52′に接続された2つ以上のコイル50を有する多重コイル要素66が設けられる。
【0031】
図2及び
図3の構成は、特に、モジュール方式で完全な非常に軽量で低コストのコイルシステムを構築するために使用することができる、本発明のコイル支持構造体を示す。環状コネクタ54は、多数の供給業者のいずれかから購入することができ、在庫品として保持される。コイル50は、必要な範囲の設計で製造され、在庫に保持されてもよい。すべての可撓性装着バンド52、52′を最大要求軸方向寸法にすることによって、特定の設計の製造前に、可撓性装着バンド52、52′を必要な軸方向寸法にトリミングすることによって、複数の設計の磁石を製造することができる。
【0032】
図4~
図6は、本発明のコイル支持構造体の製造方法の例における段階を示す。そのような方法自体が、本発明の実施形態を形成する。
【0033】
図4に示すように、環状の取り外し可能な型70が設けられている。図示の例では複数の部品70a、70b、70cで構成されており、これらは型からの完成したコイル構造体の除去を容易にするために互いに除去可能である。
【0034】
組み立てられると、型70は、必要な超電導コイルを巻くための正しい寸法の第1の環状空洞72と、第1の環状空洞に少なくとも部分的に重なり合い、かつ可撓性装着バンド12、52を包囲するための正しい寸法の第2の環状空洞74とを画定する。任意に、第2の環状空洞は、補強バンド24を収容するようにさらに画定されてもよい。
【0035】
製造プロセスの第1段階では、
図4に示すように、超電導ワイヤを複数ターン巻くことによって、第1の環状空洞72内にコイル10、50が形成される。このワイヤは、後の樹脂含浸のために乾式巻回してもよいし、湿式巻回してもよいし、これは、コイルが形成されるにつれて樹脂含浸となるように未硬化の樹脂で被覆してもよい。他の実施形態では、コイルは、ボンディング可能な熱可塑性コーティングで被覆されたワイヤから巻回されてもよく、このワイヤは、加熱上で一緒に融合するか、又はUV光への露光上で一緒に融合する材料で被覆されたボンディング可能なワイヤから巻回されてもよく、又はワイヤの層は、未硬化樹脂で予め含浸されたキャリア材料とインターリーブされてもよく、このような複合材料は、「プリプレグ」として同時公知である。コイルが完全に巻かれると、
図5に示すように、プロセスは次のステージに移る。
【0036】
図5において、材料が第2の環状空洞74に巻かれた、可撓性装着バンド12、52、52′を形成する。材料は、コイル10、50の半径方向外側表面の少なくとも一部の上に巻かれ、軸方向に隣接する型部品70aの上に延在し、その結果、材料は、コイル10、50から少なくとも一方の側に軸方向に離れて延在する可撓性装着バンドを形成する。可撓性装着バンド52′がコイル10、50から軸方向両側に離れて軸方向に延在する本発明の実施形態では、第2の環状空洞74は、それに対応して、軸方向両側で第1の環状空洞72から軸方向に離れて延在し、可撓性装着バンド52′を形成する体積を規定する。
【0037】
可撓性装着バンド12、52、52′を形成するために使用される材料は、ガラス繊維布又はフィラメント、又は炭素繊維布又はフィラメントであってもよい。布又はフィラメントは、乾式に巻いてもよいし、後に樹脂で含浸させるために巻いてもよいし、湿式に巻いてもよいし、つまり、樹脂含浸した可撓性装着バンドをそのまま巻くようにして未硬化樹脂で被覆してもよいし、あるいは、例えば、上記に概説したような他の配置によってもよい。あるいは、金属ストリップ、例えば、厚さ1mmのステンレス鋼ストリップを、可撓性装着バンドの材料として使用してもよい。ストリップは、コイル10、50の全周にわたって延在してもよく、その端部は、好ましくは、ある程度重なり合うであろう。又は、ストリップの端部は、コイル10、50の上に配置された単一の環状構造体に溶接、ろう付け、又は他の方法で接合されてもよい。そのような実施形態は、単一の環状構造体がコイルの上に配置されるためのアクセスを可能にするために、型70の部品の追加又は除去を必要とし得る。他の実施形態では、未硬化樹脂で被覆されたガラス繊維布又は炭素繊維布は、最初にコイル10、50の上に巻き付けられ、次いで、布の層の上に巻き付けられた金属又は同様のバンドであってもよい。一旦硬化されると、樹脂は、バンドをコイルに結合し、バンドとコイルの表面の不整合を取り除く役割を果たすであろう。非硬化樹脂で被覆されたガラス繊維布又は炭素繊維布のさらなる層を、バンドの上に巻き付けて、所定の位置に保持し、適宜、必要な機械的剛性を与えることができる。必要に応じて、典型的には、ガラス繊維布又は適切な幅の炭素繊維布のストリップを、コイル10、50から軸方向に離れた可撓性装着バンド12、52の端部に巻き付けることによって、補強バンド24を形成することができる。
【0038】
次の工程で、樹脂は硬化され、コイル巻線と可撓性装着バンドの材料を囲むモノリシック構造体に硬化する。
【0039】
次に、モノリシック樹脂含浸構造体に含浸されたコイル及び可撓性装着バンドを、その構成部品70a、70b、70cに型を解体することによって型70から取り外す。超電導コイルの製造の当業者にはよく知られているように、この工程を補助するために剥離剤を設けてもよい。
【0040】
図6に金型から取り出した仕上げ構造体を示す。コイル10、50は、可撓性装着バンド12、52、52′を備え、孔18は、可撓性装着バンドの円周の周囲に間隔を置いて形成される。このような孔18は、存在する場合、補強バンド24を通過する。
図6の構造体は、
図2、3に示すような実施形態で使用する準備が整っている。
【0041】
図7に図示され、
図1の表現に類似した代替の実施形態では、可撓性装着バンド12は、
図1の実施形態で採用される半径方向外側表面14ではなく、コイル10の半径方向内側表面に取り付けられる。可撓性装着バンド12は、コイル10の半径方向内側表面82に取り付けられ、可撓性装着バンド12の半径方向外側表面上に随意の補強バンド24があり、コイル10から軸方向に変位する。
図8及び9は、
図4-6を参照して上記した方法ステップと類似の、そのような構造体の製造方法におけるステップを示す。
図8に示す工程では、環状空洞84は、部品86a、86b、86cを含む取り外し可能な型ツール86によって画定される。材料が環状空洞84に巻かれ、可撓性装着バンド12、52、52′を形成する。材料は、可撓性装着バンドを形成し、この装着バンドは、完成したアセンブリにおいて、少なくとも1つの側面上でコイル10、50から軸方向に離れて延在するであろう。可撓性装着バンド12、52、52′を形成するために使用される材料は、ガラス繊維布又はフィラメント、又は炭素繊維布又はフィラメントであってもよい。布又はフィラメントは、乾式に巻いてもよいし、後に樹脂で含浸させるために巻いてもよいし、湿式に巻いてもよいし、つまり、樹脂含浸した可撓性装着バンドをそのまま巻くようにして未硬化樹脂で被覆してもよいし、あるいは、例えば、上記に概説したような他の配置によってもよい。あるいは、金属ストリップ、例えば、厚さ1mmのステンレス鋼ストリップを、可撓性装着バンドの材料として使用してもよい。ストリップは、コイル10、50の全周にわたって延在してもよく、その端部は、好ましくは、ある程度重なり合うであろう。あるいは、ストリップの端部は、溶接され、ろう付けされるか、さもなければ、単一の環状構造体に接合されてもよい。そのような実施形態は、単一の環状構造体が環状空洞84内に配置されるためのアクセスを可能にするために、型86の追加又は除去を必要とし得る。他の実施形態では、非硬化樹脂で被覆されたガラス繊維布又は炭素繊維布は、まず環状空洞84内に巻かれ、次いで、布の層の上に巻かれた金属又は同様のバンドであってもよい。一旦硬化されると、樹脂は、バンドをコイルに結合し、バンドとコイルの表面の不整合を取り除く役割を果たすであろう。非硬化樹脂で被覆されたガラス繊維布又は炭素繊維布のさらなる層を、バンドの上に巻き付けて、所定の位置に保持し、適宜、必要な機械的剛性を与えることができる。必要に応じて、補強バンド24を形成することができ、これは、典型的には、仕上げられたアセンブリ内のコイル10、50から軸方向に離れた可撓性装着バンド12、52の端部上に、適当な幅のガラス繊維布又は炭素繊維布のストリップを巻くことによって形成することができる。
【0042】
可撓性装着バンド12、52、52′の材料が環状空洞84内に配置された後、1つ又は複数のさらなる脱着可能な型部品86dが設置され、コイル10、50が可撓性装着バンド12、52、52′の上に巻かれるコイル空洞88を画定する。
【0043】
次いで、コイル10、50は、超電導ワイヤのコイル空洞88内に巻かれ、そのコイル空洞は、後に含浸され、「プリプレグ」と共巻かれ、又は上記したもののような任意の他の適当な方法によって巻かれる。得られた構造体は、
図9に示す通りである。バンディング材料90は、それらを所定の位置に保持するために、型部品86dの構成部品の上に配置されてもよい。
【0044】
次いで、含浸材料は、硬化させられるか、又は硬化させられ、次いで、
図7に示される得られた構造体は、型を解体することによって、型工具から除去される。当業者にはよく知られているように、コイルと型工具表面との間に剥離層又は被覆を設けて、このプロセスを補助してもよい。
図7のような構造体は、
図2-3に示されているものと類似の方法で、同様の磁石構造体に組み立てることができる。
【0045】
可撓性装着バンド52′がコイル10、50から軸方向に両軸側に離れて軸方向に延在する本発明の実施形態では、コイル空洞88は、環状空洞84の軸方向両側に86dで示されるものと同様の更なる型部品を配置してコイル空洞88を規定することによって、環状空洞84の軸方向両端部から軸方向に離れて対応して形成される。
【0046】
他の実施形態では、可撓性装着バンド12、52、52′は、代替的に、又は付加的に、又は各コイル10の軸方向外側表面に取り付けられてもよい。
【0047】
したがって、本発明は、非常に単純であり、通常のコイル製造技術の適応によって作ることができるコイル支持構造体を提供する。本発明の構造体及び方法は、コイル支持構造体の質量を最小限に抑え、また、コイルと支持構造体との間の望ましくない機械的相互作用を最小限に抑え、したがって、クエンチのリスクを低減する。本発明の構造体及び方法は、応力集中の導入を回避しながら、薄い超電導コイルの支持のために高度に最適化された支持構造体を提供する。