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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20230807BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J7/34 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022528038
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2022000377
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 暁▲チン▼
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/009998(WO,A1)
【文献】特開2020-195174(JP,A)
【文献】特開2003-79069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/00-11/00
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続される入力端子と、
負荷に接続される出力端子と、
蓄電装置に接続される直流端子と、
前記入力端子および前記出力端子の間に接続されるスイッチと、
各々が前記直流端子と前記出力端子との間で双方向の電力変換を行う複数の電力変換器と、
前記スイッチおよび前記複数の電力変換器を制御する制御装置とを備え、
前記複数の電力変換器は、少なくとも1つの第1の電力変換器を含み、
前記少なくとも1つの第1の電力変換器は、前記交流電源から前記スイッチを介して供給される交流電力を直流電力に変換して対応する蓄電装置に蓄える充電モードと、前記電力変換のための制御信号を生成して前記電力変換を待機する待機モードとを有しており、
前記交流電源から供給される交流電圧が正常である場合には、前記制御装置は、前記スイッチをオンするとともに、前記少なくとも1つの第1の電力変換器を、前記充電モードと前記待機モードとの間で交互に切り換えるように構成され、
前記交流電圧が正常でない場合には、前記制御装置は、前記スイッチをオフするとともに、各々が前記蓄電装置の直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給するように、前記複数の電力変換器を制御する、電源装置。
【請求項2】
前記複数の電力変換器は、少なくとも1つの第2の電力変換器をさらに含み、
前記交流電圧が正常である場合には、前記制御装置は、前記負荷に流出する高調波電流と逆極性の補償電流を前記負荷に供給するように、前記少なくとも1つの第2の電力変換器を制御する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記充電モードの実行時間および前記待機モードの実行時間を測定するタイマを有しており、前記タイマの測定時間に基づいて、予め定められた時間毎に、前記少なくとも1つの第1の電力変換器を前記充電モードおよび前記待機モードの間で交互に切り換える、請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記複数の電力変換器にそれぞれ対応して設けられ、各々が対応する電力変換器と前記出力端子との間に接続される複数の機械スイッチをさらに備え、
前記電源装置の通常運転中、前記制御装置は、前記複数の機械スイッチをオンする、請求項1から3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記待機モード時、前記制御装置は、前記直流端子の直流電圧と参照直流電圧との偏差を0にするための第1の制御信号と、前記出力端子の交流電圧と参照交流電圧との偏差を0にするための第2の制御信号とを生成する、請求項1から4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電源装置は瞬低補償装置である、請求項1から5のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2011/033820号明細書(特許文献1)には、交流電源と負荷との間に接続されるスイッチと、負荷と複数の蓄電装置との間にそれぞれ接続される複数の電力変換器とを備えた電源装置が開示されている。
【0003】
特許文献1では、複数の電力変換器のうちの負荷を駆動するために必要な台数の電力変換器のみを運転させるとともに、残りの電力変換器を負荷から切り離して運転を停止させる。これにより、負荷容量に関係なく全ての電力変換器を運転させる場合に比べて、複数の電力変換器で発生するスイッチング損失を低減させ、電源装置の効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/033820号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電源装置では、負荷を駆動するために必要な台数の電力変換器のみを運転させるとともに、残りの電力変換器を負荷から切り離して運転を停止させるため、負荷容量の急増に対する応答性が遅くなることが懸念される。また、負荷容量が増えるに従って運転させる電力変換器の台数が増えるため、負荷容量が大きい状況では、スイッチング損失を低減する効果を十分に得られないという課題がある。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、高速応答性および高効率を有する電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電源装置は、入力端子、出力端子、直流端子、スイッチ、複数の電力変換器、および制御装置とを備える。入力端子は、交流電源に接続される。出力端子は、負荷に接続される。直流端子は、蓄電装置に接続される。スイッチは、入力端子および出力端子の間に接続される。複数の電力変換器は、各々が直流端子と出力端子との間で双方向の電力変換を行う。制御装置は、スイッチおよび複数の電力変換器を制御する。複数の電力変換器は、少なくとも1つの第1の電力変換器を含む。少なくとも1つの第1の電力変換器は、交流電源からスイッチを介して供給される交流電力を直流電力に変換して対応する蓄電装置に蓄える充電モードと、電力変換のための制御信号を生成して電力変換を待機する待機モードとを有する。交流電源から供給される交流電圧が正常である場合には、制御装置は、スイッチをオンするとともに、少なくとも1つの第1の電力変換器を、充電モードと待機モードとの間で交互に切り換えるように構成される。交流電圧が正常でない場合には、制御装置は、スイッチをオフするとともに、各々が蓄電装置の直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するように、複数の電力変換器を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高速応答性および高効率を有する電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に従う電源装置が適用される瞬低補償装置の構成例を示すブロック図である。
図2】制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】本実施の形態に従う瞬低補償装置の通常運転時における双方向コンバータの運転状態の遷移図である。
図4図3に示した充電モードおよび待機モードを説明する図である。
図5】本実施の形態に従う瞬低補償装置の通常運転時における動作波形図である。
図6】制御装置の要部を示すブロック図である。
図7図6に示した制御回路11の構成を示すブロック図である。
図8図6に示した制御回路12の構成を示すブロック図である。
図9】瞬低補償装置の通常運転時における制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
図10】本実施の形態に従う瞬低補償装置および比較例に従う瞬低補償装置における、負荷容量に対する給電効率の推移の一例を示す図である。
図11】比較例に従う瞬低補償装置における運転台数の制御を説明する図である。
図12】本開示の実施の形態に従う電源装置が適用される瞬低補償装置の他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
<瞬低補償装置の構成>
図1は、本開示の実施の形態に従う電源装置が適用される瞬低補償装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、瞬低補償装置は、入力端子T1、出力端子T2、複数の直流端子T31~T35、VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)1,5,6,21、HSS(High Speed Switch:高速スイッチ)2、電流検出器7、複数の双方向コンバータ81~85、複数の変圧器20、操作部9、および制御装置10を備える。図1では、5台の双方向コンバータ81~85が示されているが、複数の双方向コンバータの台数は特に限定されない。
【0012】
入力端子T1は、商用交流電源71から供給される商用周波数の交流電圧VIを受ける。交流電圧VIの瞬時値は、制御装置10によって検出される。制御装置10は、交流電圧VIが予め定められた下限値よりも低下した場合に、瞬低(瞬時電圧低下)が発生したと判断する。
【0013】
出力端子T2は、負荷72に接続される。負荷72は、出力端子T2から供給される交流電圧VOによって駆動される。交流電圧VOの瞬時値は、制御装置10によって検出される。
【0014】
複数の直流端子T31~T35は、複数の蓄電装置73にそれぞれ接続される。蓄電装置73は電力を蓄える。蓄電装置73は、バッテリでもよいし、コンデンサでも構わない。直流端子T31~T35の直流電圧VDC1~VDC5は、制御装置10によってそれぞれ検出される。
【0015】
VCB1、HSS2,およびVCB5は、入力端子T1と出力端子T2との間に直列接続される。VCB1,5は、瞬低補償装置の通常運転時にオンされ、例えば、HSS2のメンテナンス時、またはバイパス給電時にオフされる。
【0016】
HSS2は、直列接続された半導体スイッチ3および機械スイッチ4を含む。半導体スイッチ3および機械スイッチ4の各々は、制御装置10によって制御され、交流電圧VIが正常である場合(正常時)にオンされ、交流電圧VIが正常でない場合(瞬低時)にオフされる。HSS2は「スイッチ」の一実施例に対応する。
【0017】
半導体スイッチ3は、機械スイッチ4に比べて、動作速度が速く、耐圧が低いという特性を有する。機械スイッチ4は、半導体スイッチ3と比べて、動作速度が遅く、耐圧が高いという特性を有する。半導体スイッチ3および機械スイッチ4を直列接続することにより、瞬低発生時に瞬時にオフし、高い耐圧を有するHSS2を構成している。
【0018】
電流検出器7は、HSS2に流れる交流電流IOを検出し、その検出値を示す信号IOfを制御装置10に与える。
【0019】
VCB6は、入力端子T1と出力端子T2との間に接続される。VCB6は、瞬低補償装置の通常運転時にオフされ、例えばバイパス給電時にオンされる。VCB6がオンされると、商用交流電源71からVCB6を介して負荷72に交流電圧VIが供給され、負荷72が駆動される。
【0020】
双方向コンバータ81の直流端子8aは直流端子T31に接続され、その交流端子8bは変圧器20の1次巻線20aに接続される。変圧器20の2次巻線20bは、VCB21を介して、HSS2およびVCB5の間のノードN1に接続される。変圧器20の1次巻線20aに現れる交流電圧VAC1の瞬時値は、制御装置10によって検出される。
【0021】
双方向コンバータ82の直流端子8aは直流端子T32に接続され、その交流端子8bは変圧器20の1次巻線20aに接続される。変圧器20の2次巻線20bは、VCB21を介してノードN1に接続される。変圧器20の1次巻線20aに現れる交流電圧VAC2の瞬時値は、制御装置10によって検出される。
【0022】
双方向コンバータ83の直流端子8aは直流端子T33に接続され、その交流端子8bは変圧器20の1次巻線20aに接続される。変圧器20の2次巻線20bは、VCB21を介してノードN1に接続される。変圧器20の1次巻線20aに現れる交流電圧VAC3の瞬時値は、制御装置10によって検出される。
【0023】
双方向コンバータ84の直流端子8aは直流端子T34に接続され、その交流端子8bは変圧器20の1次巻線20aに接続される。変圧器20の2次巻線20bは、VCB21を介してノードN1に接続される。変圧器20の1次巻線20aに現れる交流電圧VAC4の瞬時値は、制御装置10によって検出される。
【0024】
双方向コンバータ85の直流端子8aは直流端子T35に接続され、その交流端子8bは変圧器20の1次巻線20aに接続される。変圧器20の2次巻線20bは、VCB21を介してノードN1に接続される。変圧器20の1次巻線20aに現れる交流電圧VAC5の瞬時値は、制御装置10によって検出される。
【0025】
双方向コンバータ81~85の各々は、複数のスイッチング素子を含む周知のものである。各スイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、GCT(Gate Commutated Turn-off)サイリスタ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の自己消弧型の半導体スイッチング素子に還流ダイオード(FWD:Freewheeling Diode)が逆並列に接続されて構成される。双方向コンバータ81~85の各々は、制御装置10により、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御される。双方向コンバータに含まれる各スイッチング素子を所定のスイッチング周波数でオンおよびオフさせることにより、交流電力を直流電力に変換したり、直流電力を交流電力に変換することが可能となっている。
【0026】
商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常である場合(商用交流電源71の正常時)には、双方向コンバータ81~85の各々は、商用交流電源71からVCB1、HSS2、VCB21、および変圧器20を介して供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電装置73に蓄える。
【0027】
また、交流電圧VIが正常でない場合(瞬低時)には、双方向コンバータ81~85の各々は、蓄電装置73の直流電力を交流電力に変換して交流端子8bに出力する。この交流電力は、変圧器20、およびVCB21,5を介して負荷72に供給される。
【0028】
各変圧器20は、ノードN1と、対応する双方向コンバータとの間で交流電力を授受する。VCB21は、瞬低補償装置の通常運転時にオンされ、例えばHSS2または対応する双方向コンバータのメンテナンス時にオフされる。
【0029】
操作部9は、複数のボタン、複数のスイッチ、画像表示部等を含む。瞬低補償装置の使用者は、操作部9を操作することにより、瞬低補償装置の起動、停止、自動運転、手動運転等を指示したり、種々の条件設定等を行うことが可能となっている。操作部9は、使用者の指示等を示す信号を制御装置10に与える。
【0030】
制御装置10は、操作部9からの信号、交流電圧VI,VO,VAC1~VAC5、直流電圧VDC1~VDC5、電流検出器7の出力信号IOf等に基づいて、瞬低補償装置全体を制御する。
【0031】
商用交流電源71の交流電圧VIが正常である場合には、制御装置10は、交流電圧VAC1~VAC5、直流電圧VDC1~VDC5、および電流検出器7の出力信号IOfに基づいて、直流端子T31~T35の直流電圧VDC1~VDC5が所定の参照直流電圧VDCrになるように、双方向コンバータ81~85をそれぞれ制御する。
【0032】
商用交流電源71の交流電圧VIが正常でない場合(瞬低時)には、制御装置10は、出力端子T2の交流電圧VOに基づいて、交流電圧VOが所定の参照交流電圧VOrになるように双方向コンバータ81~85を制御する。
【0033】
<瞬低補償装置の基本的動作>
次に、図1に示した瞬低補償装置の通常運転時の基本的動作について説明する。
【0034】
通常運転時には、VCB1,5,21はオンされ、VCB6はオフされている。商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常である場合には、HSS2はオンされ、商用交流電源71からVCB1、HSS2およびVCB5を介して負荷72に交流電力が供給され、負荷72が運転される。
【0035】
また、商用交流電源71からVCB1、HSS2、VCB21および変圧器20を介して双方向コンバータ81~85に交流電力が供給され、その交流電力が双方向コンバータ81~85によって直流電力に変換されて蓄電装置73に蓄えられる。このとき、直流端子T31~T35の直流電圧VDC1~VDC5は参照直流電圧VDCrに維持される。
【0036】
例えば、落雷が発生して交流電圧VIの瞬時電圧低下が発生した場合には、制御装置10によって商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常でないと判断され、HSS2が瞬時にオフされ、商用交流電源71と負荷72とが電気的に切り離される。
【0037】
同時に、蓄電装置73の直流電力が双方向コンバータ81~85によって交流電力に変換され、その交流電力が変圧器20およびVCB21,5を介して負荷72に供給され、負荷72の運転が継続される。このとき、出力端子T2の交流電圧VOは、商用周波数の参照交流電圧VOrに維持される。
【0038】
交流電圧VIが正常な電圧に復帰すると(商用交流電源71が復電すると)、再びHSS2がオンされ、商用交流電源71からVCB1、HSS2およびVCB5を介して負荷72に交流電力が供給され、負荷72が運転される。また、商用交流電源71からの交流電力が双方向コンバータ81~85によって直流電力が変換された蓄電装置73に蓄えられる。
【0039】
したがって、瞬低補償装置によれば、瞬時電圧低下が発生した場合でも負荷72の運転を継続することができる。
【0040】
なお、商用交流電源71から供給される交流電圧VIが比較的短時間(例えば1秒未満)低下する現象は、瞬時電圧低下と呼ばれる。また、交流電圧VIが比較的長時間(例えば1秒以上)低下する現象は、停電と呼ばれる。瞬時電圧低下時に負荷72に交流電力を供給する装置は「瞬低補償装置」と呼ばれ、停電時に負荷72に交流電力を供給する装置は「無停電電源装置」と呼ばれる。瞬低補償装置と無停電電源装置は同様の構成であるので、本明細書では、両者を総称して「電源装置」と呼ぶ場合がある。
【0041】
次に、上述した基本的動作の問題点について説明する。瞬時電圧低下が発生するのは1年間で数十回程度であり、瞬時低電圧低下が発生していない大部分の時間において、双方向コンバータ81~85は蓄電装置73を満充電状態に維持している。蓄電装置73が満充電状態である場合には、双方向コンバータ81~85はほとんど電流を流していないが、双方向コンバータ81~85においてスイッチング損失が発生する。このスイッチング損失により、瞬停補償装置の給電効率が低下する。
【0042】
この対策として、特許文献1に開示されているように、負荷容量に基づいて負荷の駆動に必要な双方向コンバータの適正台数を求め、適正台数の双方向コンバータだけを運転させることにより、双方向コンバータ81~85のスイッチング損失を低減させる方法がある。
【0043】
図11は、比較例に従う瞬低補償装置における運転台数の制御を説明する図である。図11の例では、負荷率(最大負荷容量に対する実際の負荷容量の比)が40%であるときの適正台数を2台とし、負荷率が60%であるときの適正台数を3台とし、負荷率が80%のときの適正台数を4台とする。
【0044】
負荷率が40%であるときには、2台の双方向コンバータ81,82を運転することとし、残りの3台の双方向コンバータ83~85の運転を停止する。具体的には、商用交流電源71の交流電圧VIが正常である場合には、制御装置(図示せず)は、HSS2をオンすることにより、商用交流電源71からHSS2を介して負荷72に交流電力を供給する。同時に、制御装置は、双方向コンバータ81,82に対応するVCB21をオンし、商用交流電源71からHSS2、VCB21および変圧器20を介して双方向コンバータ81,82に交流電力を供給する。制御装置は、双方向コンバータ81,82を制御して、交流電力を直流電力に変換して2台の蓄電装置73にそれぞれ蓄える。
【0045】
このとき、制御装置は、残り3台の双方向コンバータ83~85に対応するVCB21をオフするとともに、双方向コンバータ83~85の運転を停止させる。
【0046】
この状態で、交流電圧VIの瞬時電圧低下が発生した場合には、制御装置は、HSS2を瞬時にオフするとともに、2台の双方向コンバータを制御して、蓄電装置73の直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を変圧器20およびVCB21を介して負荷72に供給する。
【0047】
ここで、負荷容量が変化し、負荷率が40%から60%に増加した場合には、制御装置は、停止中の3台の双方向コンバータ83~85のうちの1台の双方向コンバータ83を起動させるとともに、双方向コンバータ83に対応するVCB21をオンする。制御装置は、3台の双方向コンバータ81~83を制御する。
【0048】
負荷容量がさらに変化し、負荷率が60%から80%に増加した場合には、制御装置は、さらに、停止中の2台の双方向コンバータ84,85のうちの1台の双方向コンバータ84を起動させるとともに、双方向コンバータ84に対応するVCB21をオンする。制御装置は、4台の双方向コンバータ81~84を制御する。
【0049】
なお、負荷率が80%から60%に減少した場合には、制御装置は、運転中の4台の双方向コンバータ81~84のうちの1台の双方向コンバータ84を停止させるとともに、双方向コンバータ84に対応するVCB21をオフする。また、負荷率が60%から40%に減少した場合には、制御装置は、運転中の3台の双方向コンバータ81~83のうちの1台の双方向コンバータ83を停止させるとともに、双方向コンバータ83に対応するVCB21をオフする。
【0050】
以上のように、比較例に従う瞬低補償装置によれば、負荷容量に応じた適正台数の双方向コンバータだけをVCB21を介して負荷72に接続して運転することにより、双方向コンバータのスイッチング損失を低減することができる。しかしながら、この方法では、負荷容量が増加した場合には、制御装置は、VCB21をオンして停止中の双方向コンバータを負荷72に接続させた上で、当該双方向コンバータを起動させてその制御を開始することになる。そのため、負荷容量の急変に対する応答性が遅くなることが懸念される。これは、VCB21に動作速度の遅い機械スイッチを用いていること、および、双方向コンバータの起動および制御信号の生成に時間を要することによる。その結果、負荷容量が急変してから当該双方向コンバータが運転可能な状態となるまでの間、運転中の双方向コンバータが過負荷状態に陥る可能性がある。
【0051】
このように比較例では、負荷容量の急変に対する応答性が遅くなるために、瞬時電圧低下を補償することが困難となることが懸念される。また、負荷率が高くなるに従って適正台数が増えるため、負荷率が高い状態では、スイッチング損失を低減する効果を十分に得られないという課題がある。本開示は、これらの問題点の解決を図るものである。
【0052】
<本実施の形態に従う瞬低補償装置の制御構成>
次に、本実施の形態に従う瞬低補償装置の制御構成について説明する。
【0053】
図2は、制御装置10のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)100と、RAM(Random Access Memory)102と、ROM(Read Only Memory)104と、I/F(Interface)装置106と、記憶装置108とを含んで構成される。CPU100、RAM102、ROM104、I/F装置106、および記憶装置108は、通信バス110を通じて各種データを遣り取りする。
【0054】
CPU100は、ROM104に格納されているプログラムをRAM102に展開して実行する。ROM104に格納されているプロフラムには、制御装置10によって実行される処理が記述されている。
【0055】
I/F装置106は、各種センサおよび操作部9からの信号を受信する。また、I/F装置は、VCB1,5,6,21およびHSS2にオンオフ指令を送信するとともに、双方向コンバータ81~85に制御信号を送信する。
【0056】
記憶装置108は、各種情報を記憶するストレージであって、負荷72の情報、蓄電装置73の情報、双方向コンバータ81~85の運転条件を定めた情報等を記憶する。記憶装置108は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)やソリッドステートドライブ(SDD:Solid State Drive)等である。
【0057】
なお、制御装置10の少なくとも一部をFPGA(Field Programmable Gate Array)およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの回路を用いて構成してもよい。
【0058】
図3は、本実施の形態に従う瞬低補償装置の通常運転時における双方向コンバータの運転状態の遷移図である。図3に示すように、瞬低補償装置は、双方向コンバータの運転モードとして、充電モード、待機モード、および給電モードを有している。
【0059】
充電モードは、蓄電装置73に電力を蓄えるためのモードである。充電モードでは、双方向コンバータは、商用交流電源71からVCB1、HSS2、VCB21および変圧器20を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を蓄電装置73に蓄える。
【0060】
待機モードは、双方向コンバータに含まれる複数のスイッチング素子をオンオフするための制御信号(ゲート信号)を生成する一方で、複数のスイッチング素子をオフ状態に維持するモードである。すなわち、待機モードは、双方向コンバータを制御するための制御信号を生成して、双方向コンバータによる電力変換を待機するモードである。待機モード中に制御信号を生成しておくことで、双方向コンバータを充電モードまたは給電モードに速やかに遷移させることが可能となる。
【0061】
給電モードは、蓄電装置73の電力を負荷72に供給するためのモードである。給電モードでは、双方向コンバータは、蓄電装置73の直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を変圧器20およびVCB21,5を介して負荷72に供給する。
【0062】
商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常である場合、双方向コンバータは、充電モードおよび待機モードを選択的に実行する。具体的には、瞬低補償装置の通常運転が開始されると、双方向コンバータは、充電モードに初期設定される。この状態で、蓄電装置73が満充電状態になると、充電モードから待機モードへの遷移が実行される。この状態で、予め定められた時間TBが経過すると、待機モードから充電モードへの遷移が実行される。
【0063】
さらに充電モードにおいて、予め定められた充電時間TAが経過すると、充電モードから待機モードへの遷移が実行される。その後、待機モードにおいて、予め定められた待機時間TBが経過すると、待機モードから充電モードへの遷移が実行される。すなわち、商用交流電源71の交流電圧VIが正常である場合、予め定められた時間TA,TBが経過する毎に、充電モードと待機モードとが交互に切り換えられる。
【0064】
この状態で、交流電圧VIの瞬時電圧低下が発生し、商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常でないと判断されると、充電モードまたは待機モードから給電モードへの遷移が実行される。その後、交流電圧VIが正常な電圧に復帰すると(商用交流電源71が復電すると)、給電モードから充電モードへの遷移が実行される。この状態で蓄電装置73が満充電状態になると、充電モードから待機モードへの遷移が実行される。その後、予め定められた時間TA,TBが経過する毎に、充電モードと待機モードとが交互に切り換えられる。
【0065】
図4は、図3に示した充電モードおよび待機モードを説明する図である。図4には、充電モードにおける瞬低補償装置の運転状態、および待機モードにおける瞬低補償装置の運転状態が示されている。
【0066】
商用交流電源71の交流電圧VIが正常である場合には、HSS2がオンされ、商用交流電源71からVCB1、HSS2およびVCB5を介して負荷72に交流電力が供給され、負荷72が運転される。この状態で、双方向コンバータ81~85の一部は、予め定められた時間TA,TBが経過する毎に、充電モードと待機モードとが交互に切り換えられる。本実施の形態では、双方向コンバータ81~85のうちの4台の双方向コンバータ82~85を間欠的に運転することとする。双方向コンバータ82~85は「第1の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0067】
充電モードでは、制御装置10は、双方向コンバータ82~85を運転する。各双方向コンバータには、商用交流電源71からVCB1、HSS2、VCB21および変圧器20を介して交流電力が供給される。各双方向コンバータは、その交流電力を直流電力に変換して、対応する蓄電装置73に蓄える。
【0068】
待機モードでは、制御装置10は、双方向コンバータ82~85の制御信号を生成しつつ、双方向コンバータ82~85を電力変換の待機状態とする。双方向コンバータ82~85の運転を停止させることにより、双方向コンバータ82~85のスイッチング損失を0とすることができる。ただし、停止中であっても、制御装置10が双方向コンバータ82~85の制御信号を生成しているため、双方向コンバータ82~85は、待機モードから充電モードまたは給電モードに速やかに遷移することが可能となっている。
【0069】
なお、待機モード時には、双方向コンバータ81~85のうちの一部を常時運転する。本実施の形態では、双方向コンバータ81~85のうちの1台の双方向コンバータ81を常時運転することとする。これは、瞬低補償装置が接続されている配電系統の静電容量と変圧器などのインダクタンスとにより、高周波領域での共振現象が発生し、配電系統への高調波電流を流出させる可能性があるためである。交流電圧VIが正常である場合、双方向コンバータ81は、高調波電流が配電系統に流出するのを抑制するダンピング抵抗として動作するように制御される。双方向コンバータ81は「第2の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0070】
なお、常時運転する双方向コンバータの台数は、複数の双方向コンバータの台数よりも少なければよく、高調波電流の大きさなどに応じて適宜設定することができる。
【0071】
図5は、本実施の形態に従う瞬低補償装置の通常運転時における動作波形図である。図5には、双方向コンバータ82に接続される直流端子T32の直流電圧VDC2の波形が代表的に示されている。
【0072】
直流電圧VDC2は、蓄電装置73の端子間電圧に対応しており、蓄電装置73の充電状態に応じて変化する。直流電圧VDC2は、蓄電装置73が満充電状態に近づくに従って増加する。直流電圧VDC2には、満充電状態であるときの蓄電装置73の端子間電圧を上限値とするように、許容範囲が設定されている。直流電圧VDC2をこの許容範囲に保つことにより、蓄電装置73を満充電状態に近い状態に維持することができる。
【0073】
商用交流電源71の交流電圧VIが正常である場合、制御装置10は、双方向コンバータ82を間欠的に運転させる。充電モード時には、商用交流電源71からの交流電力が双方向コンバータ82によって直流電力に変換されて蓄電装置73に蓄えられるため、直流電圧VDC2が上昇する。
【0074】
待機モード時には、双方向コンバータ82の運転を停止することにより、蓄電装置73の充電が行われない。したがって、双方向コンバータ82のスイッチング損失は0となる。この間、蓄電装置73の状態を監視する監視回路等によって蓄電装置73の電力が消費されるため、蓄電装置73の残容量が徐々に減少する現象である自己放電が生じる。この蓄電装置73の自己放電によって、直流電圧VDC2も徐々に低下する。なお、直流電圧VDC2が低下する速度は、蓄電装置73の種類および環境によって変化する。
【0075】
上述したように、充電時間TAおよび待機時間TBが経過する毎に、充電モードおよび待機モードが交互に切り換えられるため、直流電圧VDC2は上昇および低下を繰り返すこととなる。直流電圧VDC2が許容範囲内で変動するように、充電時間TAおよび待機時間TBの各々の時間長を設定することにより、双方向コンバータ82を間欠運転することによっても蓄電装置73を満充電状態に近い状態に維持することができる。
【0076】
双方向コンバータ82の間欠運転中に交流電圧VIの瞬時電圧低下が発生した場合には、HSS2が瞬時にオフされるのと同時に、双方向コンバータ82は、充電モードまたは待機モードから給電モードへ遷移する。これにより、蓄電装置73の直流電力が双方向コンバータ82によって交流電力に変換されて、その交流電力が変圧器20およびVCB21,5を介して負荷72に供給される。給電モード時、蓄電装置73の残容量の減少に伴って直流電圧VDC2は徐々に低下する。
【0077】
図示は省略するが、商用交流電源71が復電し、交流電圧VIが正常な電圧に復帰すると、再びHSS2がオンされて、商用交流電源71から負荷72に交流電力が供給される。同時に、双方向コンバータ82は給電モードから充電モードに遷移するため、再び商用交流電源71からの交流電力が双方向コンバータ82によって直流電力に変換されて蓄電装置73に蓄えられる。なお、商用交流電源71の復電直後の充電モードは、その実行時間が充電時間TAによって制限されることなく、蓄電装置73が満充電状態になるまで連続して実行される。そして、蓄電装置73が満充電状態になると、制御装置10は、双方向コンバータ82を再び間欠的に運転する。
【0078】
図6は、制御装置10の要部を示すブロック図である。図6に示すように、制御装置10は、瞬低検出部17、タイマ18、スイッチ制御部16、および制御回路11~15を含む。
【0079】
瞬低検出部17は、商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常であるか否かを判定し、判定結果を示す瞬低検出信号DLを、スイッチ制御部16、制御回路11~15およびタイマ18に与える。
【0080】
例えば、瞬低検出部17は、交流電圧VIが予め定められた許容範囲内である場合には、交流電圧VIは正常であると判定し、交流電圧VIが許容範囲の下限値よりも低下した場合には、交流電圧VIは正常でないと判定する。交流電圧VIが正常である場合には、瞬低検出信号DLは非活性化レベルの「L」レベルにされ、交流電圧VIが正常でない場合には瞬低検出信号DLは活性化レベルの「H」レベルにされる。
【0081】
タイマ18は、瞬低検出信号DLが「L」レベルである場合(すなわち、交流電圧VIが正常である場合)に作動する。タイマ18は、充電モードの実行時間Tc、および待機モードの実行時間Tsを測定し、その測定時間を示す信号Tc,Tsを制御回路12~15に与える。
【0082】
スイッチ制御部16は、瞬低検出信号DLに従って、HSS2を制御する。具体的には、瞬低検出信号DLが「L」レベルである場合(すなわち、交流電圧VIが正常である場合)には、スイッチ制御部16は、HSS2をオンする。瞬低検出信号DLが「H」レベルである場合(すなわち、交流電圧VIが正常でない場合)には、スイッチ制御部16は、HSS2をオフする。
【0083】
また、スイッチ制御部16は、瞬低補償装置の通常運転時には、VCB1,5,21をオンする。すなわち、スイッチ制御部16は、瞬低検出信号DLによらず(すなわち、交流電圧VIが正常であるか否かによらず)、VCB1,5,21をオンする。
【0084】
制御回路11~15は、双方向コンバータ81~85にそれぞれ対応して設けられている。双方向コンバータ81~85は、制御回路11~15からの制御信号CNT1~CNT5によってそれぞれ制御されることにより、個別に制御可能となっている。
【0085】
本実施の形態では、交流電圧VIが正常である場合には、制御回路11は双方向コンバータ81を常時運転させることとし、制御回路12~15は双方向コンバータ82~85をそれぞれ間欠運転させることとする。また、交流電圧VIが正常でない場合(瞬低時)には、制御回路11~15は、双方向コンバータ81~85をそれぞれ運転し、負荷72に交流電力を供給する。
【0086】
具体的には、制御回路11は、瞬低検出信号DLに従って、双方向コンバータ81を制御するための制御信号CNT1を生成する。瞬低検出信号DLが「L」レベルである場合(すなわち、交流電圧VIが正常である場合)には、制御回路11は、信号IOfおよび交流電圧VO,VAC1に基づいて、制御信号CNT1を生成し、双方向コンバータ81を運転する。双方向コンバータ81を運転させることにより、共振現象による高調波電流が配電系統に流出することを抑制する。
【0087】
瞬低検出信号DLが「H」レベルである場合(すなわち、交流電圧VIが正常でない場合)には、制御回路11は、直流電圧VDC1および交流電圧VO,VAC1に基づいて、双方向コンバータ81を運転して蓄電装置73を放電させ、負荷72に交流電力を供給する。このとき制御回路11は、交流電圧VOが参照交流電圧VOrになるように双方向コンバータ81を制御する。
【0088】
図7は、図6に示した制御回路11の構成を示すブロック図である。図7に示すように、制御回路11は、共振補償部30と、放電制御部32と、セレクタ34と、PWM制御部36とを含む。
【0089】
共振補償部30は、帯域通過型フィルタ(BPF:Band Pass Filter)50と、無効電流指令部52と、電流検出器56と、減算器54と、電流制御部58とを含む。BPF50は、電流検出器7の出力信号IOfによって示される交流電流IOから高調波電流を抽出する。無効電流指令部52は、BPF50により抽出された高調波電流と逆極性の電流指令値IHを出力する。
【0090】
電流検出器56は、双方向コンバータ81から出力される補償電流IAC1を検出し、その検出値を示す信号IAC1fを出力する。減算器54は、電流指令値IHと、電流検出器56の出力信号IAC1fによって示される補償電流IAC1との偏差ΔIAC1=IH-IAC1を求める。
【0091】
電流制御部58は、減算器54によって求められる偏差ΔIAC1が0になるように電流制御値IAC1*を生成する。電流制御部は、例えば、偏差ΔIAC1に比例する値と偏差ΔIAC1の積分値に比例する値とを加算することにより、電流制御値IAC1*を生成する。
【0092】
放電制御部32は、参照電圧生成部60と、電圧検出器64と、減算器62と、電圧制御部66とを含む。参照電圧生成部60は、交流電圧VOの目標電圧である参照交流電圧VOrを生成する。電圧検出器64は、出力端子T2から出力される交流電圧VOを検出し、その検出値を示す信号VOfを出力する。
【0093】
減算器62は、参照交流電圧VOrと、電圧検出器64の出力信号VOfによって示される交流電圧VOとの偏差ΔVOC=VOr-VOを求める。電圧制御部66は、減算器62によって求められる偏差ΔVOCが0になるように電圧制御値VOC*を生成する。電圧制御部66は、例えば、偏差ΔVOCに比例する値と偏差ΔVOCの積分値に比例する値とを加算することにより電圧制御値VOC*を生成する。
【0094】
セレクタ34は、瞬低検出部17の出力信号(瞬低検出信号)DLに基づいて、電流制御値IAC1*および電圧制御値VOC*の何れかを選択する。具体的には、セレクタ34は、瞬低検出信号DLが「L」レベルである場合(交流電圧VIが正常である場合)には、電流制御値IAC1*を選択し、選択した電流制御値IAC1*をPWM制御部36に与える。PWM制御部36は、セレクタ34から与えられる電流制御値IAC1*と所定周波数の搬送波信号(例えば、三角波信号)との高低を比較し、その比較結果に基づいて双方向コンバータ81のゲート信号を生成する。このゲート信号によって双方向コンバータ81のスイッチング素子がオンおよびオフされ、双方向コンバータ81から高調波電流の補償電流が出力される。なお、双方向コンバータ81の運転中、蓄電装置73は、双方向コンバータ81の損失補償分の有効電力を取り込んで直流電圧を保持する。
【0095】
瞬低検出信号DLが「H」レベルである場合(交流電圧VIが正常でない場合)には、セレクタ34は、電圧制御値VOC*を選択し、選択した電圧制御値VOC*をPWM制御部36に与える。PWM制御部36は、セレクタ34から与えられる電圧制御値VOC*と搬送波信号との高低を比較し、その比較結果に基づいて双方向コンバータ81のゲート信号を生成する。このゲート信号によって双方向コンバータ81のスイッチング素子がオンおよびオフされ、蓄電装置73の直流電力が交流電力に変換されて負荷72に供給される。
【0096】
図6に戻って、制御回路12は、瞬低検出信号DLおよびタイマ18の出力信号Tc,Tsに従って、双方向コンバータ82を制御するための制御信号CNT2を生成する。瞬低検出信号DLが「L」レベルである場合(交流電圧VIが正常である場合)には、制御回路12は、タイマ18の出力信号Tc,Tsに基づいて、双方向コンバータ82を充電モードおよび待機モードの間で交互に切り換える。
【0097】
具体的には、Tc<TAである場合、すなわち、充電モードの実行時間Tcが充電時間TAに満たない場合には、制御回路12は、直流電圧VDC2および交流電圧VAC2に基づいて制御信号CNT2を生成し、双方向コンバータ82を運転して蓄電装置73を充電する。このとき、制御回路12は、直流電圧VDC2が参照直流電圧VDCrになるように、双方向コンバータ82を制御する。
【0098】
充電モードの実行時間Tcが充電時間TAに達すると、制御回路12は、双方向コンバータ82を充電モードから待機モードへ遷移させる。そして、Ts<TBである場合、すなわち、待機モードの実行時間Tsが待機時間TBに満たない場合には、制御回路12は、制御信号CNT2を生成しながら、双方向コンバータ82を電力変換の待機状態とする。そして、待機モードの実行時間Tsが待機時間TBに達すると、制御回路12は、双方向コンバータ82を待機モードから充電モードへ遷移させる。
【0099】
瞬低検出信号DLが「H」レベルである場合(交流電圧VIが正常でない場合)には、制御回路12は、双方向コンバータ82を給電モードへ遷移させる。制御回路12は、直流電圧VDC1および交流電圧VO,VAC1に基づいて双方向コンバータ82を運転して蓄電装置73を放電させ、負荷72に交流電力を供給させる。このとき制御回路12は、交流電圧VOが参照交流電圧VOrになるように双方向コンバータ82を制御する。なお、負荷72に供給される電力は、全ての双方向コンバータ81~85によって分担される。
【0100】
図8は、図6に示した制御回路12の構成を示すブロック図である。図8に示すように、制御回路12は、充電制御部40と、放電制御部42と、セレクタ44と、PWM制御部45と、論理積(AND)回路48と、間欠運転制御部46とを含む。
【0101】
充電制御部40は、参照電圧生成部70と、電圧検出器75と、減算器74と、電圧制御部76とを含む。参照電圧生成部70は、直流電圧VDCの目標電圧である参照直流電圧VDCrを生成する。電圧検出器75は、直流端子T32の直流電圧VDC2を検出し、その検出値を示す信号VDC2fを出力する。
【0102】
減算器74は、参照直流電圧VDCrと、電圧検出器75の出力信号VDC2fによって示される直流電圧VDC2との偏差ΔVDC2を求める。電圧制御部76は、減算器74によって求められる偏差ΔVDC2が0になるように電圧制御値VDC2*を生成する。電圧制御部76は、例えば、偏差ΔVDC2に比例する値と偏差ΔVDC2の積分値に比例する値とを加算することにより電圧制御値VDC2*を生成する。電圧制御値VDC2*は「第1の制御信号」の一実施例に対応する。
【0103】
放電制御部42は、図7に示した放電制御部32と同様の構成を有しており、参照電圧生成部60と、減算器62と、電圧検出器64と、電圧制御部66とを含む。放電制御部42は、参照交流電圧VOrと交流電圧VOとの偏差ΔVOCが0になるように電圧制御値VOC*を生成する。電圧制御値VOC*は「第2の制御信号」の一実施例に対応する。
【0104】
セレクタ44は、瞬低検出部17の出力信号(瞬低検出信号)DLに基づいて、電圧制御値VDC2*および電圧制御値VOC*の何れかを選択する。具体的には、セレクタ44は、瞬低検出信号DLが「L」レベルである場合(交流電圧VIが正常である場合)には、電圧制御値VDC2*を選択し、選択した電圧制御値VDC2*をPWM制御部45に与える。PWM制御部45は、セレクタ44から与えられる電圧制御値VDC2*と搬送波信号との高低を比較し、その比較結果に基づいて双方向コンバータ82のゲート信号(制御信号)を生成する。PWM制御部45により生成されたゲート信号は、AND回路48の第1の入力端子に入力される。
【0105】
瞬低検出信号DLが「H」レベルである場合(交流電圧VIが正常でない場合)には、セレクタ44は、電圧制御値VOC*を選択し、選択した電圧制御値VOC*をPWM制御部45に与える。PWM制御部45は、セレクタ44から与えられる電圧制御値VOC*と搬送波信号との高低を比較し、その比較結果に基づいて双方向コンバータ82のゲート信号を生成する。PWM制御部45により生成されたゲート信号は、AND回路48の第1の入力端子に入力される。
【0106】
間欠運転制御部46は、瞬低検出信号DLおよびタイマ18の出力信号Ts,Tcに基づいて、双方向コンバータ82の間欠運転を制御する。具体的には、間欠運転制御部46は、瞬低検出信号DLが「H」レベルである場合、すなわち、双方向コンバータ82が給電モードである場合には、「H」レベルの制御信号を生成する。また、間欠運転制御部46は、瞬低検出信号DLが「L」レベルであり、かつ、Tc<TAである場合、すなわち、双方向コンバータ82が充電モードである場合には、「H」レベルの制御信号を生成する。一方、瞬低検出信号DLが「L」レベルであり、かつ、Ts<TBである場合、すなわち、双方向コンバータ82が待機モードである場合には、間欠運転制御部46は、「L」レベルの制御信号を生成する。間欠運転制御部46により生成された制御信号はAND回路48の第2の入力端子に入力される。
【0107】
AND回路48は、第1の入力端子に入力されるゲート信号と、第2の入力端子に入力される制御信号との論理積を算出し、その算出結果を制御信号CNT2として出力する。AND回路48は、制御信号が「H」レベルのとき、すなわち、双方向コンバータ82が給電モードまたは充電モードのときには、ゲート信号をそのまま出力する。すなわち、ゲート信号が制御信号CNT2となる。一方、制御信号が「L」レベルのとき、すなわち、双方向コンバータ82が待機モードのときには、AND回路48は、ゲート信号によらず、「L」レベルに固定された制御信号CNT2を出力する。
【0108】
これによると、双方向コンバータ82が給電モードまたは充電モードのときには、制御信号CNT2(すなわち、ゲート信号)に従って、双方向コンバータ82のスイッチング素子がオンおよびオフされることとなる。その結果、双方向コンバータ82が給電モードのときには、蓄電装置73の直流電力が交流電力に変換されて負荷72に供給される。双方向コンバータ82が充電モードのときには、商用交流電源71からの交流電力が直流電力に変換されて蓄電装置73に蓄えられる。
【0109】
これに対して、双方向コンバータ82が待機モードのときには、「L」レベルに固定された制御信号CNT2(ゲート信号)に従って、双方向コンバータ82のスイッチング素子がオフ状態に固定されることにより、双方向コンバータ82の運転が停止される。よって、双方向コンバータ82のスイッチング損失が0となる。
【0110】
なお、AND回路48から出力される制御信号が「L」レベルから「H」レベルに遷移したときには、制御信号CNT2がPWM制御部45により生成されたゲート信号に切り替わるため、双方向コンバータ82を充電モードまたは給電モードに速やかに遷移させることができる。
【0111】
制御回路13~15の構成は、制御回路12の構成と同様であるので、その説明が繰り返さない。
【0112】
図9は、瞬低補償装置の通常運転時における制御装置10の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、予め定められた条件の成立時または所定の周期毎に制御装置10により実行される。
【0113】
図9に示すように、制御装置10は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)01により、瞬低補償装置が通常運転中であるか否かを判定する。S01は、操作部9からの起動指示を受け付けて瞬低補償装置を起動させた場合にYES判定とされ、操作部9からの停止指示を受け付けて瞬低補償装置を停止させた場合にNO判定とされる。瞬低補償装置が通常運転中でない場合(S01のNO判定時)、制御装置10はS02以降の処理をスキップする。
【0114】
瞬低補償装置が通常運転中である場合(S01のYES判定時)には、制御装置10は、S02により、VCB1,5,21をオンするとともに、VCB6をオフする。
【0115】
次いで、制御装置10は、S03により、商用交流電源71の交流電圧VIが正常であるか否かを判定する。S03は、例えば、交流電圧VIが許容範囲内である場合には、交流電圧VIは正常であるとして、YES判定とされる。交流電圧VIが許容範囲の下限値よりも低下した場合には、交流電圧VIは正常でないとして、NO判定とされる。
【0116】
交流電圧VIが正常である場合(S03のYES判定時)、制御装置10は、S04に進み、HSS2をオンする。商用交流電源71からVCB1、HSS2およびVCB5を介して負荷72に交流電力が供給され、負荷72が運転される。
【0117】
さらに、制御装置10は、S05により、双方向コンバータ81~85のうちの予め設定された一部の双方向コンバータ(例えば、双方向コンバータ81)を常時運転させる。S05では、制御装置10は、配電系統における共振現象により発生する高調波電流と逆極性の補償電流を出力するように、双方向コンバータ81を制御する。
【0118】
また、制御装置10は、S06により、残りの双方向コンバータ(例えば、双方向コンバータ82~85)を間欠的に運転させる。S06では、制御装置10は、タイマ18の出力信号Ts,Tcに基づいて、双方向コンバータ82~85の各々を予め定められた時間TA,TB毎に充電モードおよび待機モードに交互に切り換える。
【0119】
充電モード時には、商用交流電源71からVCB1、HSS2、VCB21および変圧器20を介して双方向コンバータ82~85に交流電力が供給され、その交流電力が蓄電装置73に蓄えられる。双方向コンバータ81~85が運転され、直流電圧VDC1~VDC5は参照直流電圧VDCrに維持される。
【0120】
待機モード時には、双方向コンバータ82~85の運転が停止され、双方向コンバータ82~85のスイッチング損失が削減される。待機モード中、制御装置10は、双方向コンバータ82~85の制御信号を生成する。
【0121】
S03に戻って、交流電圧VIが正常でない場合(S03のNO判定時)には、制御装置10は、S07に進み、HSS2をオフする。これにより、商用交流電源71と負荷72とが電気的に切り離される。
【0122】
さらに、制御装置10は、S08により、双方向コンバータ81~85を運転させる。S08では、制御装置10は、双方向コンバータ81~85を給電モードへ遷移させることにより、蓄電装置73の直流電力が双方向コンバータ81~85によって交流電力に変換され、その交流電力が負荷72に供給され、負荷72の運転が継続される。交流電圧VIの瞬時電圧低下が発生した場合でも、制御装置10は、待機モード中に生成した制御信号を用いて双方向コンバータ82~85を速やかに給電モードに遷移させることができる。
【0123】
以上説明したように、本実施の形態に従う瞬低補償装置によれば、商用交流電源の交流電圧が正常である場合には、負荷に対して並列接続される複数の双方向コンバータのうちの一部を間欠的に運転させることにより、蓄電装置を満充電状態に維持しつつ、複数の双方向コンバータのスイッチング損失を低減し、給電効率を向上させることができる。図10は、本実施の形態に従う瞬低補償装置および比較例に従う瞬低補償装置(図11)における、負荷容量に対する給電効率の推移の一例を示す図である。図10に示すように、双方向コンバータの運転台数制御を行う比較例に比べて、本実施の形態では給電効率を改善することができる。
【0124】
また、商用交流電源が正常である場合には、上記一部の双方向コンバータを、蓄電装置に電力を蓄える充電モードと、電力変換のための制御信号を生成して、双方向コンバータによる電力変換を待機する待機モードとの間で交互に切り換えることにより、スイッチング損失を低減しつつ、商用交流電源の瞬時電圧低下および負荷容量の急変に対する、双方向コンバータの応答性を向上させることができる。
【0125】
加えて、瞬低補償装置の通常運転中は複数の双方向コンバータを負荷にそれぞれ接続する複数のVCBをオンしておくことにより、負荷容量に応じた適正台数の双方向コンバータだけをVCBを介して負荷に接続する比較例に比べて、負荷容量の急変に対する応答性を改善することができる。
【0126】
その結果、本実施の形態によれば、高い給電効率を実現しつつ、瞬低補償装置の高速応答性を向上させることが可能となる。
【0127】
さらに、上記一部の双方向コンバータの間欠運転に並行して、他の双方向コンバータを常時運転させて、配電系統の共振現象により発生する高調波電流を補償することにより、配電系統に流出する高調波電流を抑制することが可能となる。
【0128】
なお、上述した実施の形態では、複数の直流端子T31~T35を有する瞬低補償装置の構成例について説明したが、直流端子の数は単数であってもよい。この構成では、図12に示すように、複数の双方向コンバータ81~85は、1つの直流端子に対して互いに並列に接続される。
【0129】
図12は、本開示の実施の形態に従う電源装置が適用される瞬低補償装置の他の構成例を示すブロック図である。図12に示す瞬低補償装置が図1に示した瞬低補償装置と異なる点は、複数の直流端子T31~T35に代えて、直流端子T3を備える点である。直流端子T3は、蓄電装置73に接続される。複数の双方向コンバータ81~83の各々の直流端子8aは直流端子T3に接続される。
【0130】
図12に示す瞬低補償装置においても、図1に示した瞬低補償装置と同様に、商用交流電源71の交流電圧が正常である場合には、複数の双方向コンバータ81~85のうちの一部を間欠的に運転させる。また、瞬低補償装置の通常運転中は、複数の双方向コンバータ81~85を負荷72にそれぞれ接続する複数のVCB21をオンしておく。したがって、上述した実施の形態と同じ効果が得られる。
【0131】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
2 HSS、3 半導体スイッチ、4 機械スイッチ、7,56 電流検出器、9 操作部、10 制御装置、11~15 制御回路、16 スイッチ制御部、17 瞬低検出部、18 タイマ、20 変圧器、30 共振補償部、32,42 放電制御部、34,44 セレクタ、36,45 PWM制御部、40 充電制御部、46 間欠運転制御部、48 AND回路、52 無効電流指令t部、54,63,74 減算器、58 電流制御部、60,70 参照電圧生成部、64,75 電圧検出器、66,76 電圧制御部、71 商用交流電源、72 負荷、73 蓄電装置、81~85 双方向コンバータ、100 CPU、102 RAM、104 ROM、106 I/F装置、110 通信バス、T1 入力端子、T2 出力端子、T31~T35 直流端子、TA 充電時間、TB 待機時間。
【要約】
複数の電力変換器(81~85)のうちの少なくとも1つの第1の電力変換器は、交流電源(71)からスイッチ(2)を介して供給される交流電力を直流電力に変換して対応する蓄電装置(73)に蓄える充電モードと、電力変換のための制御信号を生成して電力変換を待機する待機モードとを有する。交流電源(71)の交流電圧が正常である場合には、制御装置(10)は、スイッチ(2)をオンするとともに、少なくとも1つの第1の電力変換器を、充電モードと待機モードとの間で交互に切り換える。交流電圧が正常でない場合には、制御装置(10)は、スイッチ(2)をオフするとともに、各々が蓄電装置(73)の直流電力を交流電力に変換して負荷(72)に供給するように、複数の電力変換器(81~85)を制御する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12