(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】無停電電源システムおよび無停電電源システムの更新方法
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20230807BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230807BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02M7/48 N
H02J9/06 110
(21)【出願番号】P 2022530778
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047562
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 公平
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-184827(JP,A)
【文献】特開2016-144379(JP,A)
【文献】特開2005-86969(JP,A)
【文献】特開昭63-240318(JP,A)
【文献】特開2020-178475(JP,A)
【文献】特開2020-5410(JP,A)
【文献】特開2018-129954(JP,A)
【文献】特開2006-60963(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003332(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/021591(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 9/00
H02M 7/48
H02M 7/493
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
前記第1から第3の無停電電源装置は、対応する前記電力変換器を制御するための第1から第3の制御回路をそれぞれ含み、
前記無停電電源システムは、
前記第1の制御回路と前記第2の制御回路とを通信接続するための第1の通信ケーブルと、
前記第2の制御回路と前記第3の制御回路とを通信接続するための第2の通信ケーブルとをさらに含み、
前記第1および第2のスイッチをオフするステップは、前記第1の通信ケーブルを前記第1および第2の制御回路から取り外すステップを含み、
前記更新するステップは、前記第1の通信ケーブルを、更新された前記第1の無停電電源装置の前記第1の制御回路および前記第2の制御回路に接続するとともに、前記第2の通信ケーブルを前記第2の制御回路から取り外すステップを含み、
前記リアクトルを取り外すステップは、前記第2の通信ケーブルを前記第2の制御回路に再接続するステップを含む、請求項6または7に記載の無停電電源システムの更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源システムおよび無停電電源システムの更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-50933号公報(特許文献1)には、並列冗長方式の無停電電源システムが開示される。並列冗長方式の無停電電源システムは、負荷に対して並列接続された複数の無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記並列冗長方式の無停電電源システムにおいて、複数の既設UPSの各々を新設UPSに更新する場合には、更新された複数のUPSの並列運転制御に異常がないかを確認するための試験(以下、「並列試験」とも称する)を実施する必要がある。その一方で、UPSの更新作業中においても、負荷への給電を継続させることが求められる。
【0005】
そのため、従来、負荷への給電を継続しながら並列試験を実施するために、新設UPSのすべてを既設UPSとは別のスペースに仮置きし、並列試験を実施して並列運転に異常がないかを確認する作業が行われていた。そして、この作業を終了した後に、既設UPSを停止して撤去する作業と、新設UPSによる給電への切り換え作業とが行われていた。
【0006】
上述した手順では、現地に新設UPSのすべてを仮置きするための空きスペースが必要とされるため、空きスペースがない場合には更新作業が困難となることが懸念される。また、新設UPSを既設UPSとは別のスペースに仮置きして運転可能状態とする必要があるため、本来であれば流用可能である通信ケーブルも新規に調達して配設しなければならず、工事費用が嵩んでしまうことが懸念される。
【0007】
本開示は上述のような課題を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、並列冗長方式の無停電電源システムにおいて、負荷への給電を継続しながら無停電電源装置を1台ずつ更新および並列試験の実施を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る無停電電源システムは、第1から第3の無停電電源装置を含む複数の無停電電源装置と、複数の無停電電源装置を負荷に対して並列に接続するための複数のスイッチとを備える。複数の無停電電源装置の各々は、所定周波数の交流電圧を生成する電力変換器と、電力変換器により生成された交流電圧を出力する出力端子とを含む。複数のスイッチは、第1の無停電電源装置の出力端子と負荷との間に接続される第1のスイッチと、第2の無停電電源装置の出力端子と負荷との間に接続される第2のスイッチと、第3の無停電電源装置の出力端子と負荷との間に接続される第3のスイッチとを含む。無停電電源システムは、接続回路をさらに備える。接続回路は、第1および第2のスイッチがオフされ、かつ、第3のスイッチがオンされた状態において、第1の無停電電源装置の出力端子と第2の無停電電源装置の出力端子との間にリアクトルを接続するように構成される。
【0009】
本開示の別の態様に係る無停電電源システムの更新方法は、各々が出力端子を有する第1から第3の無停電電源装置と、第1から第3の無停電電源装置の出力端子を負荷にそれぞれ接続するための第1から第3のスイッチとを含む無停電電源システムの更新方法である。第1から第3の無停電電源装置の各々は、電力変換器を含み、電力変換器により生成された所定周波数の交流電圧を出力端子に出力するように構成される。更新方法は、第1から第3のスイッチがオンした状態で第1から第3の無停電電源装置が並列運転している場合において、第1および第2の無停電電源装置の運転を停止し、かつ、第1および第2のスイッチをオフするステップと、第1の無停電電源装置において、既設の無停電電源装置を新設の無停電電源装置に更新するステップと、更新された第1の無停電電源装置の出力端子と、第2の無停電電源装置の出力端子との間にリアクトルを接続するステップと、互いに等しい交流電圧を出力端子に出力するように第1および第2の無停電電源装置の各々の電力変換器を制御することにより、第1および第2の無停電電源装置の並列試験を実施するステップと、並列試験の実施後に、第1および第2の無停電電源装置の運転を停止し、第1および第2の無停電電源装置からリアクトルを取り外すステップと、第1および第2のスイッチをオンし、第1および第2の無停電電源装置を起動させることにより、第1から第3の無停電電源装置を並列運転させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、並列冗長方式の無停電電源システムにおいて、負荷への給電を継続しながら無停電電源装置を1台ずつ更新および並列試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る無停電電源システムの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【
図2】通常時における無停電電源システムの運用状態を示す図である。
【
図3】UPS間を繋ぐ通信ケーブルを説明する図である。
【
図6】既設UPSを停止および解列する工程を説明する図である。
【
図7】既設UPSを撤去する工程を説明する図である。
【
図8】新設UPSを据え付ける工程を説明する図である。
【
図9】並列試験を実施する工程を説明する図である。
【
図10】並列試験後のUPSを並列投入する工程を説明する図である。
【
図11】第1の変更例に係る無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
【
図12】第2の変更例に係る無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は原則的には繰り返さない。
【0013】
<無停電電源システムの構成>
図1は、実施の形態に係る無停電電源システムの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【0014】
図1を参照して、無停電電源システム100は、複数(図では3つ)の無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)11~13と、複数のスイッチ15~18と、保守バイパス回路6と、並列盤20と、保守バイパス盤30と、試験並列盤40とを備える。
【0015】
UPS11は、入力端子T1、バッテリ端子T2、出力端子T3、コンバータ2、インバータ3、バイパス切換回路5、および制御回路7を含む。
【0016】
入力端子T1は、商用交流電源1から商用周波数の交流電力を受ける。バッテリ端子T2はバッテリ4に接続される。バッテリ4は直流電力を蓄える。バッテリ4の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。出力端子T3は、並列盤20および保守バイパス盤30を介して負荷50a~50cに接続される。
【0017】
スイッチ16は、例えば遮断器であり、商用交流電源1と入力端子T1との間に接続される。スイッチ16は、商用交流電源1から交流電力が供給されている通常時はオンされ、商用交流電源1からの交流電力が停止された停電時はオフされる。
【0018】
コンバータ2は、商用交流電源1からスイッチ16を介して商用周波数の交流電力を受け、制御回路7によって制御される。コンバータ2は、通常時は、商用交流電源1からスイッチ16を介して供給される交流電力を直流電力に変換して直流ラインに出力する。コンバータ2の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。商用交流電源1の停電時には、コンバータ2の運転は停止される。
【0019】
インバータ3は、直流ラインに接続され、制御回路7によって制御される。インバータ3は、コンバータ2から直流ラインを介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して出力する。インバータ3で生成された交流電力は、出力端子T3、並列盤20および保守バイパス盤30を介して負荷50a~50cに与えられる。インバータ3は、通常時には、コンバータ2から供給される直流電力を交流電力に変換し、商用交流電源1の停電時には、バッテリ4から供給される直流電力を交流電力に変換する。インバータ3の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0020】
バイパス切換回路5は、入力端子T1と出力端子T3との間に接続され、制御回路7によって制御される。バイパス切換回路5は、インバータ3によって生成された交流電力を負荷に供給するインバータ給電モード時はオフされ、商用交流電源1から負荷に交流電力を供給するバイパス給電モード時にはオンされる。
【0021】
制御回路7は、通常時は、コンバータ2およびインバータ3を制御して商用周波数の交流電力を生成させ、停電時には、コンバータ2の運転を停止するとともにインバータ3を制御して商用周波数の交流電力を生成させる。
【0022】
UPS12,13の各々は、UPS11と同じ構成である。スイッチ17は、商用交流電源1とUPS12の入力端子T1との間に接続される。スイッチ18は、商用交流電源1とUPS13の入力端子T1との間に接続される。スイッチ17,18は、通常時はオンされ、商用交流電源1の停電時はオフされる。
【0023】
UPS11~13の各々の制御回路7は通信ケーブル8によって互いに接続されており、通信ケーブル8を介してUPS11~13の間で情報の授受を行う。各制御回路7は、複数のUPS11~13の分担電流が等しくなるように、対応するコンバータ2およびインバータ3を制御する。
【0024】
また、制御回路7は、対応するUPSを停止状態にさせる場合には、対応するコンバータ2およびインバータ3の運転を停止させ、対応するUPSを運転状態にさせる場合は対応するコンバータ2およびインバータ3の運転を継続させる。
【0025】
並列盤20は、入力端子T11~T13と、出力端子T14と、リアクトル21a,22a,23aと、スイッチ21b,22b,23bとを含む。並列盤20は「第1の並列盤」および「並列盤」の一実施例に対応する。
【0026】
入力端子T11は、UPS11の出力端子T3に接続される。入力端子T12は、UPS12の出力端子T3に接続される。入力端子T13は、UPS11の出力端子T3に接続される。
【0027】
リアクトル21aおよびスイッチ21bは、入力端子T11と出力端子T14との間に直列に接続される。リアクトル22aおよびスイッチ22bは、入力端子T12と出力端子T14との間に直列に接続される。リアクトル23aおよびスイッチ23bは、入力端子T131と出力端子T14との間に直列に接続される。
【0028】
リアクトル21a,22a,23aは横流抑制用のリアクトルとして設けられる。スイッチ21b,22b,23bは、例えば遮断器である。スイッチ21a,22a,23aは、常時オンされ、例えば、対応するUPSのメンテナンス時(更新時を含む)にそれぞれオフされる。
【0029】
保守バイパス盤30は、バイパス入力端子T21と、入力端子T22と、少なくとも1つ(図では3つ)の出力端子T23~T25と、スイッチ31~35とを含む。
【0030】
バイパス入力端子T21は、保守バイパス回路6およびスイッチ15を介して商用交流電源1に接続される。スイッチ15は、常時オフされ、例えば、UPS11~13のメンテナンス時にオンされる。
【0031】
入力端子T22は、並列盤20の出力端子T14に接続される。出力端子T23,T24,T25は負荷50a,50b,50cにそれぞれ接続される。
【0032】
スイッチ31は、第1の端子がバイパス入力端子T21に接続され、第2の端子がスイッチ33~35の第1の端子に接続される。スイッチ32は、第1の端子が入力端子T22に接続され、第2の端子がスイッチ33~35の第1の端子に接続される。スイッチ33~35の第2の端子は、出力端子T23~T25にそれぞれ接続される。
【0033】
スイッチ31は、常時オフされ、例えば、UPS11~13のメンテナンス時にオンされる。スイッチ32は、常時オンされ、例えば、UPS11~13のメンテナンス時にオフされる。スイッチ33~35の各々は、常時オンされ、例えば、対応する負荷のメンテナンス時にオフされる。
【0034】
試験並列盤40は、後述するUPSの並列試験に用いられる。試験並列盤40は、第1の端子T31と、第2の端子T32と、端子T31,T32の間に接続されるリアクトル41とを含む。リアクトル41は、並列試験中の横流抑制用のリアクトルとして設けられる。試験並列盤40は「接続回路」および「第2の並列盤」の一実施例に対応する。
【0035】
次に、
図1に示した無停電電源システム100の動作を説明する。
図2は、通常時における無停電電源システム100の運用状態を示す図である。
図2に示すように、通常時には、スイッチ16~18,21b~23b,32~35がオンされ、スイッチ15,31がオフされる。
【0036】
UPS11~13の各々は、図中に太実線で示されるように、商用交流電源1から交流電力の供給を受け、電力変換器(コンバータ2およびインバータ3)を制御して商用周波数の交流電力を生成し、生成した交流電力を出力端子T3に出力する。UPS11~13から出力される交流電力は、並列盤20および保守バイパス盤30に含まれる複数のスイッチを経由して負荷50a~50cに供給される。
【0037】
UPS11~13の制御回路7は、通信ケーブル8で結合されて1つの制御装置を構成する。この制御装置は、UPS11~13の並列運転を制御する。具体的には、制御装置は、負荷50a,50b,50cに流れる電流に基づいて、UPS11~13のインバータ3を制御する。また、制御装置は、運転中のUPSの出力電圧および出力電流が互いに等しくなるように、運転中のUPSを制御する。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態に係る無停電電源システム100は、複数のUPS11~13を負荷に対して並列に接続して冗長性を得るように構成されるため、「並列冗長方式の無停電電源システム」と称される。無停電電源システム100による電源供給にN台のUPSが必要な場合、(N+1)台のUPSを実装して冗長化を図ることにより、電源品質を向上させることができる。
【0039】
並列冗長方式の無停電電源システムにおいて、複数のUPSを既設UPSから新設UPSに更新する場合には、更新された複数のUPSの並列運転制御に異常がないかを確認するための試験(以下、「並列試験」とも称する)を実施する必要がある。その一方で、UPSの更新作業中においても、負荷への給電を継続させることが求められる。そのため、従来、負荷への給電を継続しつつ並列試験を実施するために、以下の手順に従って更新作業が行われていた。
【0040】
(1)新設UPSのすべてを既設UPSとは別のスペースに仮置きし、並列試験を実施して並列運転制御に異常がないかを確認する。
【0041】
(2)負荷給電している既設UPSを一旦保守バイパス給電とし、その間に新設UPSへ負荷を切り換え、新設UPSによる負荷給電状態とする。
【0042】
(3)既設UPSを停止かつ撤去し、別の仮置きスペースに移設して、再び運転可能状態に復旧する。
【0043】
(4)負荷給電している新設UPSから保守バイパス給電を介して仮設の既設UPSによる給電に切り換え、新設UPSを停止する。
【0044】
(5)停止中の新設UPSを仮設場所から正規の据え付け場所に移設する。
(6)仮設の既設UPSによる給電から新設UPSによる給電へ切り換え作業を行う。
【0045】
(7)停止状態の既設UPSを仮設場所から撤去する。
上述した手順では、現地に新設UPSのすべてを仮置きするための空きスペースが必要とされるため、現地に空きスペースを確保できない場合には更新作業が困難となることが懸念される。また、新設UPSを既設UPSとは別のスペースに仮置きして運転可能状態とする必要があるため、本来であれば流用可能である通信ケーブルも新規に調達して配設しなければならず、工事費用が嵩んでしまうことが懸念される。
【0046】
本実施の形態は、新設UPSを仮置きするための空きスペースの確保、および、新規の通信ケーブルの配設を必要とすることなく、UPSの更新および並列試験の実施を可能とする更新方法を提供するものである。
【0047】
<無停電電源システムの更新方法>
次に、
図1に示した無停電電源システム100におけるUPSの更新方法について説明する。以下の説明では、一例として、3台のUPS11~13の並列運転(
図2参照)の実行中にUPS11を更新する手順について説明する。すなわち、本例では、UPS11は「第1の無停電電源装置」に対応し、UPS12は「第2の無停電電源装置」に対応し、UPS13は「第3の無停電電源装置」に対応する。
【0048】
本実施の形態では、以下に述べるように、負荷への給電を継続しながら、UPSを1台ずつ既設UPSから新設UPSに取り替える。そして、この新設UPSを他の既設UPSと並列運転させて並列試験を実施し、並列運転制御に異常がないかを確認する。
【0049】
上述したように、UPS11~13の各々の制御回路7は、通信ケーブル8によって通信可能に接続されている。したがって、UPSの更新においては、既設UPSを新設UPSに取り替える作業に併せて、通信ケーブル8を既設UPSから新設UPSに接続し直す作業が必要となる。
【0050】
図3は、UPS11~13間を繋ぐ通信ケーブル8を説明する図である。
図3には、UPS11~13にそれぞれ含まれる3つの制御回路7と、通信ケーブル8とが模式的に示されている。
図3(A)は、UPS11~13の並列運転時における通信ケーブル8の配線を示している。
【0051】
図3(A)を参照して、制御回路7は、複数の端子CAA,CAB,ECAA,ECABと、プロセッサ9とを含む。制御回路7は、図示しないメモリをさらに含む。制御回路7は、予めメモリに格納されたプログラムをプロセッサ9が実行するソフトウェア処理によって、上述した並列運転制御を実行することができる。あるいは、並列運転制御の一部または全部について、ソフトウェア処理に代えて、内蔵された専用の電子回路などを用いたハードウェア処理によって実現することも可能である。
【0052】
端子CAA,CAB,ECAA,ECABの各々は、通信ケーブル8の両端に設けられたコネクタ81,82を接続することが可能に構成されている。端子CAA,CABは、互いに接続され、かつ、プロセッサ9に接続されている。端子CAA,CABは、制御回路7を他のUPSの制御回路7に通信接続するために用いられる。端子ECAA,ECABは、予備用の端子である。端子ECAA,ECABは互いに接続され、かつ、プロセッサ9に接続されている。終端抵抗Eは、通信ケーブル8の端部を終端させるために用いられる。
【0053】
UPS11の制御回路7とUPS12の制御回路7とは通信ケーブル8によって接続されている。具体的には、通信ケーブル8のコネクタ81はUPS11の端子CABに接続され、コネクタ82はUPS12の端子CAAに接続されている。UPS11の端子CAAは不使用のため、終端抵抗Eが接続されている。
【0054】
UPS12の制御回路7とUPS13の制御回路7とは通信ケーブル8によって接続されている。具体的には、通信ケーブル8のコネクタ81はUPS12の端子CABに接続され、コネクタ82はUPS13の端子CAAに接続されている。UPS13の端子CABは不使用のため、終端抵抗Eが接続されている。
図3(A)に示す配線によって、UPS11~13の制御回路7(プロセッサ9)は、通信ケーブル8で結合されて上述した制御装置を構成することができる。UPS11,12,13の各々において、予備用の端子ECAA,ECABは不使用となっている。
【0055】
次に、
図3から
図10を用いて、UPS11を更新する手順を説明する。まず、大きな流れを以下に示す。
【0056】
(1)UPS11~13を並列運転して負荷に給電している状態とする(初期状態)。
(2)UPS11および他の1台のUPS(例えばUPS12)を停止、解列させる。
【0057】
(3)UPS11,12間の通信ケーブル8の接続を変更する。
(4)UPS12を並列投入かつ起動し、UPS12,13を並列運転させる。
【0058】
(5)UPS11にて、停止状態の既設UPSを撤去する。
(6)UPS11にて、新設UPSを据え付ける。
【0059】
(7)UPS12を停止、解列させる。
(8)UPS11~13間の通信ケーブル8の接続を変更する。
【0060】
(9)UPS11,12間に試験並列盤40を接続し、並列試験を実施する。
(10)UPS11,12を停止する。
【0061】
(11)UPS11~13間の通信ケーブル8の接続を変更する。
(12)UPS11,12を並列投入かつ起動し、初期状態に戻す。
【0062】
次に、上記(2)から(12)の各々の工程について説明する。なお、(1)の初期状態については
図2に示されているため、説明を省略する。
【0063】
(2)UPS11,12の停止・解列
図3(B)および
図6を参照して、UPS11~13の並列運転中、更新対象のUPS11および、2台のUPS12,13のうちの1台のUPS(図ではUPS12)の運転を停止させる。具体的には、UPS11,12の各々において、制御回路7はコンバータ2およびインバータ3の運転を停止させ、対応するUPSを停止状態とする。
【0064】
さらに、スイッチ11,12をオフするとともに、並列盤20内のスイッチ21b,22bをオフすることにより、UPS11~13の並列運転からUPS11,UPS12を解列させる。なお、
図6中に太実線で示されるように、UPS13は運転状態に維持されているため、UPS13によって負荷50a~50cへの給電が継続されている。
【0065】
(3)通信ケーブル8の接続変更
次に、
図3(C)に示すように、UPS11,12を停止状態に維持し、UPS11,12間を繋ぐ通信ケーブル8の接続を変更する。この工程は、UPS13の運転を確保しつつ、UPS11とUPS13との通信接続を遮断するために行われる。具体的には、通信ケーブル8のコネクタ81をUPS11の端子CABから引き抜くとともに、コネクタ82をUPS12の端子CAAから端子ECAAに差し替える。さらに、UPS12の端子CAA,ECABに終端抵抗Eを接続する。UPS13においては、端子CABに終端抵抗Eが接続されるとともに、端子CAAには通信ケーブル8、UPS12の端子CAB,CAAを介して終端抵抗Eが接続される。これにより、UPS13単体で運転を継続することができる。
【0066】
(4)UPS12,13の並列運転
次に、
図3(D)および
図7を参照して、UPS11,12間の通信ケーブル8の接続を変更した後に、スイッチ12,22bをオンすることにより、UPS12をUPS13に並列接続させる。
【0067】
さらに、UPS12を起動させて、運転状態のUPS13の出力と同期するように、UPS12の制御回路7が電力変換器(コンバータ2およびインバータ3)を制御することにより、UPS12,13を並列運転させる(
図7参照)。
【0068】
(5)既設UPSの撤去
次に、
図4(A)および
図7を参照して、UPS12,13の並列運転の実行中において、UPS11では、通信ケーブル8を抜き取り、既設UPSを撤去する。
【0069】
(6)新設UPSの据え付け
次に、
図4(B)を参照して、UPS11にて、新設UPSを据え付ける。さらに、通信ケーブル8のコネクタ81を新設UPSの端子CABに挿入することにより、UPS11,122間に通信ケーブル8を接続する。作業中、UPS12,13は運転状態に維持されており、UPS12,13によって負荷50a~50cへの給電が行われている。
【0070】
(7)UPS12の停止・解列
次に、
図4(C)および
図8を参照して、UPS12の運転を停止させる。さらに、スイッチ12,22bをオフすることにより、UPS12,13の並列回路からUPS12を解列させる。
【0071】
(8)通信ケーブル8の接続変更
次に、
図4(D)を参照して、UPS11,12間の通信ケーブル8の接続を変更するとともに、UPS12,13間の通信ケーブル8の接続を変更する。この工程は、UPS11とUPS12とを通信接続するとともに、UPS12とUPS13との通信接続を遮断するために行われる。具体的には、UPS12において、通信ケーブル8のコネクタ82の接続先を端子ECAAから端子CABに変更する。また、通信ケーブル8のコネクタ81の接続先を端子CABから端子ECAAに変更する。これによると、UPS13においては、端子CABに終端抵抗Eが接続されるとともに、端子CAAには通信ケーブル8、UPS12の端子ECAA,ECABを介して終端抵抗Eが接続されるため、UPS13単体で運転を継続することができる。また、UPS11およびUPS12においては、各々の端子CAB同士が通信ケーブル8を介して接続されたことによって、並列運転が可能な状態となる。
【0072】
(9)UPS11,12の並列試験
次に、
図5(A)および
図9を参照して、UPS11の出力端子T3とUPS12の出力端子T3との間に試験並列盤40(リアクトル41)を接続する。この状態でUPS11,12を起動させて並列試験を実施する。並列試験中、UPS13は運転状態に維持されており、UPS13によって負荷50a~50cへの給電が行われている。
【0073】
並列試験中、UPS11,12の各々は無負荷運転を実行する。UPS11,12の各々において、制御回路7は、UPS11,12の出力電圧(位相および振幅)が互いに等しくなるように、対応する電力変換器を制御する。UPS11,12の出力電圧が互いに等しい場合には、UPS11,12の出力端子T3の間に電流が流れない。一方、UPS11,12の出力電圧が異なる場合(位相および振幅の少なくとも一方が異なる場合)には、UPS11,12の出力端子T3の間に電流が流れる。したがって、UPS11,12の出力端子T3間に電流(横流)が流れるか否かに基づいて、UPS11,12の並列運転制御が正常に行なわれているか否かを確認することができる。リアクトル41は、並列運転中の横流を抑制する機能を有する。
【0074】
なお、並列試験は、無負荷運転に代えて、UPS11,12の出力端子T3に模擬負荷を接続した状態で実施する構成としてもよい。この場合、UPS11の出力電流とUPS12の出力電流とがバランスしているか否かに基づいて、UPS11,12の並列運転制御が正常に行われているか否かを確認することができる。
【0075】
(10)UPS11,12の停止
次に、
図5(B)を参照して、並列運転を実行した後に、UPS11,12の運転を停止させる。さらに、UPS11の出力端子T3およびUPS12の出力端子T3から試験並列盤40(リアクトル41)を取り外す。
【0076】
(11)通信ケーブル8の接続変更
次に、
図5(C)を参照して、UPS11,12間の通信ケーブル8の接続を変更するとともに、UPS12,13間の通信ケーブル8の接続を変更することにより、配線を初期状態(
図3(A)参照)に戻す。この工程は、UPS11~13の制御回路7を通信接続するために行われる。具体的には、UPS12において、通信ケーブル8のコネクタ82の接続先を端子ECABから端子CAAに変更する。また、通信ケーブル8のコネクタ81の接続先を端子ECAAから端子CABに変更する。この配線によって、UPS11~13の制御回路7(プロセッサ9)は、通信ケーブル8で結合されて再び制御装置を構成することができる。
【0077】
(12)UPS11,12の起動・並列投入
次に、
図5(D)および
図10を参照して、スイッチ16,17をオンするとともに、並列盤20のスイッチ21b,22bをオンすることにより、UPS11,12を運転状態のUPS13に並列接続する。さらに、UPS11,12を起動させて、運転状態のUPS13の出力と同期するように、UPS11,12の制御回路7が電力変換器(コンバータ2およびインバータ3)を制御する。これにより、UPS11~13は初期状態となり、UPS11~13の並列運転が行われる(
図10参照)。
【0078】
なお、上述した手順によってUPS11の更新を終えると、同じ手順を繰り返すことによって、UPS12,13の各々の更新および並列試験を順次実行する。なお、UPS12の更新作業中はUPS11,13のいずれか一方を運転状態に維持し、UPS13の更新作業中はUPS11,12のいずれか一方を運転状態に維持する。これにより、すべてのUPSの更新が完了するまでの間、負荷への給電を継続することが可能となる。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態に係る並列冗長方式の無停電電源システムによれば、3台以上のUPSの並列運転中に、更新対象の1台のUPSおよび他の1台のUPSを並列運転から解列させて、これら2台のUPSの出力端子間に横流抑制用のリアクトルを接続することにより、負荷への給電を継続しながら、UPSの更新と当該2台のUPSに対する並列試験とを実施することができる。したがって、負荷への給電を継続しながら、複数のUPSを1台ずつ更新して並列試験を実施することができる。これによると、新設UPSのすべてを仮置きするための空きスペースの確保、および、新規の通信ケーブルの調達が不要となるため、限られたスペースおよび工事費用で無停電電源システムの更新作業を行うことが可能となる。
【0080】
また、複数の制御回路間を通信接続するための通信ケーブルを、1台のUPSの更新作業中は、上記2台のUPSの制御回路の間を通信接続する一方で、当該2台のUPSの制御回路と他のUPSの制御回路との通信を遮断するように、通信ケーブルの配線を変更することにより、他のUPSによる負荷への給電と、当該2台のUPSに対する並列試験とを並行して実行することが可能となる。
【0081】
<その他の構成例>
上述した実施の形態では、並列試験のためにUPS11,12の出力端子T3間に接続されるリアクトル41を、並列盤20と別体の試験並列盤40により構成する例について説明したが、以下に例示するように、リアクトル41を並列盤20と一体に構成してもよい。
【0082】
図11は、第1の変更例に係る無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
図11を参照して、第1の変更例に係る無停電電源システム100は、
図1に示した無停電電源システム100とは、試験並列盤40および並列盤20に代えて、並列盤20Aを備える点が異なる。
【0083】
並列盤20Aは、
図1の並列盤20に対して、リアクトル41a,41bと、スイッチ42a,42bとを追加したものである。リアクトル41aおよびスイッチ42aは、入力端子T11と入力端子T12との間に直列に接続される。リアクトル41bおよびスイッチ42bは、入力端子T12と入力端子T13との間に直列に接続される。リアクトル41a,41bおよびスイッチ42a,42bは「接続回路」の一実施例に対応する。スイッチ42a,42bは「第4のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0084】
スイッチ42aは、スイッチ21b,22b,23bがオンされた状態においてオフされる。スイッチ42aは、スイッチ21b,22bがオフされ、かつ、スイッチ23bがオンされた状態においてオンされる。スイッチ42aがオンされることによって、UPS11の出力端子T3とUPS12の出力端子T3との間にリアクトル41aが接続されるため、UPS11,12に対する並列試験を実施することができる。
【0085】
スイッチ42bは、スイッチ21b,22b,23bがオンされた状態においてオフされる。スイッチ42bは、スイッチ22b,23bがオフされ、かつ、スイッチ21bがオンされた状態においてオンされる。スイッチ42bがオンされることによって、UPS12の出力端子T3とUPS13の出力端子T3との間にリアクトル41bが接続されるため、UPS12,13に対する並列試験を実施することができる。
【0086】
図12は、第2の変更例に係る無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
図12を参照して、第2の変更例に係る無停電電源システム100は、
図1に示した無停電電源システム100とは、試験並列盤40および並列盤20に代えて、並列盤20Bを備える点が異なる。
【0087】
並列盤20Bは、
図1の並列盤20に対して、スイッチ43a、43bを追加したものである。スイッチ43aは、リアクトル21aおよびスイッチ21bの接続ノードと、リアクトル22aおよびスイッチ22bの接続ノードとの間に接続される。スイッチ43bは、リアクトル22aおよびスイッチ22bの接続ノードと、リアクトル23aおよびスイッチ23bの接続ノードとの間に接続される。リアクトル21a,22a,23aおよびスイッチ43a,43bは「接続回路」の一実施例に対応する。スイッチ43a,43bは「第4のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0088】
スイッチ43aは、スイッチ21b,22b,23bがオンされた状態においてオフされる。スイッチ43aは、スイッチ21b,22bがオフされ、かつ、スイッチ23bがオンされた状態においてオンされる。スイッチ43aがオンされることによって、UPS11の出力端子T3とUPS12の出力端子T3との間にリアクトル21a,22aが直列に接続されることになる。リアクトル21a,22aの直列回路が横流抑制用のリアクトルとして機能するため、UPS11,12に対する並列試験を実施することができる。
【0089】
スイッチ43bは、スイッチ21b,22b,23bがオンされた状態においてオフされる。スイッチ43bは、スイッチ22b,23bがオフされ、かつ、スイッチ21bがオンされた状態においてオンされる。スイッチ43bがオンされることによって、UPS12の出力端子T3とUPS13の出力端子T3との間にリアクトル22a,23aが直列に接続されることになる。リアクトル22a,23aの直列回路が横流抑制用のリアクトルとして機能するため、UPS12,13に対する並列試験を実施することができる。
【0090】
なお、上述した実施の形態およびその変更例では、3台のUPSを備える並列冗長方式の無停電電源システムについて説明したが、本開示に係る無停電電源システムにおいて、負荷に対して並列接続されるUPSの台数は3台以上であればよい。
【0091】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の技術的範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 商用交流電源、2 コンバータ、3 インバータ、5 バイパス切換回路、6 保守バイパス回路、7,24 制御回路、8 通信ケーブル、9 プロセッサ、11~13
UPS、15~18,21b~23b,31~35,42a,42b,43a,43b
スイッチ、20,20A,20B 並列盤、21a,22a,23a,41,41a,41b リアクトル、30 保守バイパス盤、40 試験並列盤、50a~50c 負荷、100 無停電電源システム、T1,T11~T13,T21,T22 入力端子、T2 バッテリ端子、T3,T14,T23~T25 出力端子、CAA,CAB,ECAA,ECAB 端子、E 終端抵抗。
【要約】
無停電電源システム(100)は、複数のUPSと、複数のUPSを負荷に対して並列に接続するための複数のスイッチと、接続回路(40)とを備える。各UPSは、所定周波数の交流電圧を生成する電力変換器(3)と、電力変換器により生成された交流電圧を出力する出力端子(T3)とを含む。複数のスイッチは、第1のUPS(11)の出力端子と負荷との間に接続される第1のスイッチ(21b)と、第2のUPS(12)の出力端子と負荷との間に接続される第2のスイッチ(22b)と、第3のUPS(13)の出力端子と負荷との間に接続される第3のスイッチ(23b)とを含む。接続回路(40)は、第1および第2のスイッチがオフされ、かつ、第3のスイッチがオンされた状態において、第1のUPSの出力端子と第2のUPSの出力端子との間にリアクトル(41)を接続するように構成される。