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特許7326623イソインドリノン誘導体の調製方法、それに用いられる新規な中間体、及びその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】イソインドリノン誘導体の調製方法、それに用いられる新規な中間体、及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 265/16 20060101AFI20230807BHJP
   C07D 209/46 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 31/4035 20060101ALI20230807BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C07D265/16 CSP
C07D209/46
A61K31/4035
A61P25/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022534238
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2020017517
(87)【国際公開番号】W WO2021112574
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0159421
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522222375
【氏名又は名称】シーエヌジー バイオ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ジェ-キュン
(72)【発明者】
【氏名】リ ミ キョン
(72)【発明者】
【氏名】マンジュナサ ヴィシュワナス
(72)【発明者】
【氏名】リ デ-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジェ-カン
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157728(WO,A1)
【文献】特開2012-077030(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0129083(KR,A)
【文献】国際公開第2014/098306(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2061526(KR,B1)
【文献】Mun, Bohyun 他,Total Synthesis of Isohericerin, Isohericenone, and Erinacerin A: Development of a Copper-Catalyzed Methylboronation of Terminal Alkynes,Journal of Organic Chemistry,2017年,82(12),,6349-6357
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式2の化合物:
【化1】
・・・(2)。
【請求項2】
下記化学式3の化合物:
【化2】
・・・(3)。
【請求項3】
下記化学式4の化合物:
【化3】
・・・(4)。
【請求項4】
下記化学式5の化合物:
【化4】
・・・(5)。
【請求項5】
メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物をフェニルエチルアミン及びホルムアルデヒドと反応させることにより、下記化学式2の化合物を調製する方法。
【化5】
・・・(2)。
【請求項6】
下記化学式2の化合物を酸と反応させ、次いで塩基と反応させることにより、下記化学式3の化合物を調製する方法。
【化6】
・・・(2)
【化7】
・・・(3)。
【請求項7】
下記化学式3の化合物をアリルハライドと反応させることにより、下記化学式4の化合物を調製する方法。
【化8】
・・・(3)
【化9】
・・・(4)。
【請求項8】
下記化学式4の化合物をメシチレン中で反応させることにより、下記化学式5の化合物を調製する方法。
【化10】
・・・(4)
【化11】
・・・(5)
【請求項9】
(a)メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物をフェニルエチルアミン及びホルムアルデヒドと反応させることにより、下記化学式2の化合物を調製するステップと、
(b)下記化学式2の化合物を酸と反応させ、次いで塩基と反応させることにより、下記化学式3の化合物を調製するステップと、を含む、下記化学式1の化合物の調製方法。
【化12】
・・・(1)
【化13】
・・・(2)
【化14】
・・・(3)
【請求項10】
(a)メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物をフェニルエチルアミン及びホルムアルデヒドと反応させることにより、下記化学式2の化合物を調製するステップと、
(b)下記化学式2の化合物を酸と反応させ、次いで塩基と反応させることにより、下記化学式3の化合物を調製するステップと、
(c)下記化学式3の化合物をアリルハライドと反応させることにより、下記化学式4の化合物を調製するステップと、を含む、下記化学式1の化合物の調製方法。
【化15】
・・・(1)
【化16】
・・・(2)
【化17】
・・・(3)
【化18】
・・・(4)
【請求項11】
(a)メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物をフェニルエチルアミン及びホルムアルデヒドと反応させることにより、下記化学式2の化合物を調製するステップと、
(b)下記化学式2の化合物を酸と反応させ、次いで塩基と反応させることにより、下記化学式3の化合物を調製するステップと、
(c)下記化学式3の化合物をアリルハライドと反応させることにより、下記化学式4の化合物を調製するステップと、
(d)下記化学式4の化合物をメシチレン中で反応させることにより、下記化学式5の化合物を調製するステップと、を含む、下記化学式1の化合物の調製方法。
【化19】
・・・(1)
【化20】
・・・(2)
【化21】
・・・(3)
【化22】
・・・(4)
【化23】
・・・(5)
【請求項12】
(a)メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物をフェニルエチルアミン及びホルムアルデヒドと反応させることにより、下記化学式2の化合物を調製するステップと、
(b)下記化学式2の化合物を酸と反応させ、次いで塩基と反応させることにより、下記化学式3の化合物を調製するステップと、
(c)下記化学式3の化合物をアリルハライドと反応させることにより、下記化学式4の化合物を調製するステップと、
(d)下記化学式4の化合物をメシチレン中で反応させることにより、下記化学式5の化合物を調製するステップと、
(e)下記化学式5の化合物のヒドロキシ基に保護基を結合させることにより、下記化学式6の化合物を調製するステップと、
(f)下記化学式6の化合物に対して酸化反応を行うことにより、下記化学式7の化合物を調製するステップと、
(g)下記化学式7の化合物に対して還元反応を行うことにより、下記化学式8の化合物を調製するステップと、
(h)下記化学式8の化合物に対して脱保護反応を行うことにより、下記化学式1の化合物を調製するステップと、を含む、下記化学式1の化合物の調製方法。
【化24】
・・・(1)
【化25】
・・・(2)
【化26】
・・・(3)
【化27】
・・・(4)
【化28】
・・・(5)
【化29】
・・・(6)
【化30】
・・・(7)
【化31】
・・・(8)
(式中、Rは、保護基であり、ベンゾイル基、アセチル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルチオメチル基、tert-ブチル基、アリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、ピバロイル基、またはβ-メトキシエトキシメチル基を示す。)
【請求項13】
前記酸が、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記塩基が、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液であることを特徴とする、請求項6に記載の化学式3の化合物を調製する方法。
【請求項14】
ステップ(b)において、前記酸が、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記塩基が、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液であることを特徴とする、請求項9ないし12のいずれか一項に記載の化学式1の化合物の調製方法。
【請求項15】
アリルハライドが、アリルクロライド、アリルブロマイド、及びアリルヨージドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の化学式4の化合物を調製する方法。
【請求項16】
ステップ(c)において、アリルハライドが、アリルクロライド、アリルブロマイド、及びアリルヨージドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項10ないし12のいずれか一項に記載の化学式1の化合物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学式1で表されるイソインドリノン誘導体の調製方法、それに用いられる新規な中間体、及びその調製方法に関する。
【0002】
【化1】
・・・(1)
【背景技術】
【0003】
近年、高齢者人口の急増に伴い、様々な神経変性疾患(Neurodegenerative Disease)を患っている患者が増えており、それに対する治療や予防への関心が高まっている。神経変性疾患は、神経細胞の機能の低下や喪失による運動障害、記憶障害、認知障害など、様々な症状を引き起こす質病である。神経系疾患を患っている人の脳のみならず、正常な成人の脳でも毎日多数の神経細胞が死んでおり、加齢に伴って死ぬ神経細胞の数は指数関数的に増加する(Yuan and Yankner、Nature.407、802-809、2000)。
【0004】
神経変性疾患に属する主な質病としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ルーゲーリック病、ハンチントン病などがあり、現在までその疾患の病因が十分に解明されていない。アルツハイマー病の治療薬としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤またはNMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体拮抗薬などが用いられ、パーキンソン病の治療薬としては、L-ドーパ(dopa)、ドーパミン作動薬、MAO-B阻害剤、またはCOMT阻害剤などが用いられており、ハンチントン病の治療薬としては、ドーパミンD2受容体などが挙げられるが、これらの治療薬は、いずれも神経伝達プロセスを標的としているため、その治療薬を用いた方法は、根本的な治療法ではなく、単に症状を緩和する方法に過ぎない。よって、これらの疾患を根本的に治療することができる新薬が引き続き求められてきた。特許文献1には、神経細胞の死滅を抑制することで、神経変性疾患を治療することができる物質が開示されている。
【0005】
下記化学式1の化合物は、神経成長因子の産生を促進する活性を示すことにより、神経疾患の治療に有用な新規化合物である。
【0006】
【化2】
・・・(1)
【0007】
前記化合物は、ヤマブシタケの抽出物から分離したものであり、神経変性疾患を始めとする神経疾患において神経成長因子の成長を促進することにより、前記疾患の根本的な治療薬として活用することができる。しかしながら、現在まで、前記化合物を調製するための方法は未だ知られていない。
【0008】
このような背景下、本発明者らは、前記化合物の合成について検討した結果、前記化学式1の化合物の調製方法及びそれに用いられる新規な中間体を開発し、本発明を完成させるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国登録特許第1896398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記化学式1の化合物の合成に用いられる新規な化合物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、前記新規な化合物の調製方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、前記新規な化合物を用いた、前記化学式1の化合物の調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記化学式2~5の化合物を提供する。
【0014】
【化3】
・・・(2)
【0015】
【化4】
・・・(3)
【0016】
【化5】
・・・(4)
【0017】
【化6】
・・・(5)
【0018】
また、本発明は、化学式2の化合物の調製方法を提供する。
【0019】
一実施形態において、メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物に対してマンニッヒ(Mannich)反応を行うことにより、前記化学式2の化合物を調製することができる。例えば、マンニッヒ反応は、メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物を、フェニルエチルアミン及びホルムアルデヒドと反応させるものであってもよい。
【0020】
さらに、本発明は、前記化学式3の化合物の調製方法を提供する。
【0021】
一実施形態において、前記化学式2の化合物を酸と反応させ、次いで塩基と反応させることにより、前記化学式3の化合物を調製することができる。前記酸は、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記塩基は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液であってもよいが、これらに制限されるものではない。好ましくは、前記酸は塩酸であり、前記塩基は水酸化ナトリウム水溶液である。
【0022】
さらに、本発明は、前記化学式4の化合物の調製方法を提供する。
【0023】
一実施形態において、前記化学式3の化合物をアリルハライドと反応させることにより、前記化学式4の化合物を調製することができる。前記アリルハライドは、アリルクロライド、アリルブロマイド、及びアリルヨージドからなる群から選択されてもよく、好ましくは、アリルブロマイドである。
【0024】
さらに、本発明は、前記化学式5の化合物の調製方法を提供する。
【0025】
一実施形態において、前記化学式4の化合物に対してクライゼン転位反応(Claisen rearrangement)を行うことにより、前記化学式5の化合物を調製することができ、前記反応は、例えば、メシチレン(mesitylene)下で行われてもよい。
【0026】
本発明は、下記化学式1の化合物の調製方法を提供する。
【0027】
【化7】
・・・(1)
【0028】
前記化学式1の化合物は、ヤマブシタケの抽出物から最初に分離され、また同定された化合物であり、4-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オンと命名されてもよく、Hericerionol Aとも呼ばれる。
【0029】
一実施形態において、(a)メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物をフェニルエチルアミン及びホルムアルデヒドと反応させることにより、前記化学式2の化合物を調製するステップと、(b)前記化学式2の化合物を酸と反応させ、次いで塩基と反応させることにより、前記化学式3の化合物を調製するステップとを含み、前記化学式1の化合物を調製することができる。ステップ(b)において、前記酸は、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記塩基は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液であってもよいが、これらに制限されるものではない。好ましくは、前記酸は塩酸であり、前記塩基は水酸化ナトリウム水溶液である。
【0030】
別の実施形態において、前記ステップ(b)の後、(c)前記化学式3の化合物をアリルハライドと反応させることにより、化学式4の化合物を調製するステップをさらに含むことで、前記化学式1の化合物を調製することができる。前記アリルハライドは、アリルクロライド、アリルブロマイド、及びアリルヨージドからなる群から選択されてもよく、好ましくは、アリルブロマイドである。
【0031】
別の実施形態において、前記ステップ(c)の後、(d)前記化学式4の化合物に対してクライゼン転位反応(Claisen rearrangement)を行うことにより、前記化学式5の化合物を調製するステップをさらに含むことで、前記化学式1の化合物を調製することができる。その場合、前記クライゼン転位反応は、例えば、メシチレン(mesitylene)下で行われてもよい。
【0032】
別の実施形態において、前記ステップ(d)の後、(e)下記化学式5の化合物のヒドロキシ基に保護基を結合させることにより、下記化学式6の化合物を調製するステップと、(f)下記化学式6の化合物に対して酸化反応を行うことにより、下記化学式7の化合物を調製するステップと、(g)下記化学式7の化合物に対して還元反応を行うことにより、下記化学式8の化合物を調製するステップと、(h)下記化学式8の化合物に対して脱保護反応を行うことにより、前記化学式1の化合物を調製するステップとをさらに含むことで、前記化学式1の化合物を調製することができる。ステップ(f)の酸化反応は、OsO4またはNaIO4の存在下で行われてもよい。ステップ(g)の還元反応は、適切な還元剤、例えば、NaBH4の存在下で行われてもよい。
【0033】
【化8】
・・・(6)
【0034】
【化9】
・・・(7)
【0035】
【化10】
・・・(8)
【0036】
式中、Rは、保護基であり、ベンゾイル基、アセチル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルチオメチル基、tert-ブチル基、アリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、ピバロイル基、またはβ-メトキシエトキシメチル基を示す。
【0037】
前記保護基Rがtert-ブチルジメチルシリル基である場合、それぞれ化学式6aの化合物、化学式7aの化合物、及び化学式8aの化合物であってもよい。
【0038】
【化11】
・・・(6a)
【0039】
【化12】
・・・(7a)
【0040】
【化13】
・・・(8a)
【0041】
前記ステップ(e)のヒドロキシ基に保護基を結合させる反応及び前記ステップ(h)の脱保護反応は、当業界で一般的に用いられる方法を採用してもよい。
【0042】
本願に用いられた「脱保護反応」なる用語は、反応基であるヒドロキシ基を保護するために、ヒドロキシ基と結合させた保護基を取り除くことでヒドロキシ基を回復させる反応のことである。
【0043】
一実施形態において、前記(e)のヒドロキシ保護基の結合反応は、ベンゾイル基、アセチル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルチオメチル基、tert-ブチル基、アリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、ピバロイル基、またはβ-メトキシエトキシメチル基を用いてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0044】
一実施形態において、前記ステップ(h)の脱保護反応では、例えば、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムを用いてもよい。
【0045】
化学式1の化合物の調製方法は、以下のステップを含んでもよい:
(a)メチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸化合物をフェニルエチルアミン及びホルムアルデヒドと反応させることにより、化学式2の化合物を調製するステップと、
(b)化学式2の化合物を酸と反応させ、次いで塩基と反応させることにより、化学式3の化合物を調製するステップと、
(c)化学式3の化合物をアリルハライドと反応させることにより、化学式4の化合物を調製するステップと、
(d)化学式4の化合物に対してクライゼン転位反応(Claisen rearrangement)を行うことにより、化学式5の化合物を調製するステップと、
(e)化学式5の化合物のヒドロキシ基に保護基を結合させることにより、化学式6の化合物を調製するステップと、
(f)化学式6の化合物に対して酸化反応を行うことにより、化学式7の化合物を調製するステップと、
(g)化学式7の化合物に対して還元反応を行うことにより、化学式8の化合物を調製するステップと、
(h)化学式8の化合物に対して脱保護反応を行うことにより、化学式1の化合物を調製するステップ。
【0046】
一実施形態において、前記化学式1の化合物は、下記反応式1によって調製されてもよい。
【0047】
[反応式1]
【発明の効果】
【0048】
本発明は、新規な化合物及びその調製方法を提供することにより、前記化学式1の化合物を効率よく合成することができる。
【0049】
また、本発明の新規な化合物を用いた調製方法により合成された前記化学式1の化合物は、神経成長因子の産生を促進することにより、神経疾患の治療薬として有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】化学式2の化合物の1H NMRの分析結果を示す図である。
図2A】化学式3の化合物の1H NMRの分析結果を示す図である。
図2B】化学式3の化合物の13C NMRの分析結果を示す図である。
図3A】化学式4の化合物の1H NMRの分析結果を示す図である。
図3B】化学式4の化合物の13C NMRの分析結果を示す図である。
図4A】化学式5の化合物の1H NMRの分析結果を示す図である。
図4B】化学式5の化合物の13C NMRの分析結果を示す図である。
図5A】化学式6の化合物の1H NMRの分析結果を示す図である。
図5B】化学式6の化合物の13C NMRの分析結果を示す図である。
図6A】化学式8の化合物の1H NMRの分析結果を示す図である。
図6B】化学式8の化合物の13C NMRの分析結果を示す図である。
図7A】化学式1の化合物の1H NMRの分析結果を示す図である。
図7B】化学式1の化合物の13C NMRの分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、下記の実施例は説明を目的とするものに過ぎず、本願発明の範囲を限定しようとする意図ではない。
【実施例1】
【0052】
化学式2の化合物の調製
メタノール(10mL)中のメチル 3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸(4.0g、21.98mmol)の溶液にフェニルエチルアミン(4.0mL、33.03mmol)を加え、30%のホルムアルデヒド溶液(4.0mL)を室温で滴下した。その後、反応混合物を60℃まで上温させ、3時間にかけて撹拌した。反応が完了した後(TLCにより確認)、反応混合物を室温に冷却し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液をゆっくりと加えることによりクエンチした。水層をEtOAcで3回抽出し、結合された有機層を塩水で洗浄した。それから硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させ、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化学式2で表される黄色の油のメチル 7-メトキシ-3-フェネチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[e][1,3]オキサジン-5-カルボキシレート(3.21g、45%)を得た。
1H NMR(400MHz、)δ 7.32-7.23(m、2H)、7.19(d、J=7.3Hz、3H)、7.13(s、1H)、7.07(s、1H)、4.85(s、2H)、4.00(s、2H)、3.88(s、3H)、3.84(s、3H)、3.08-2.95(m、2H)、2.93-2.77(m、2H)。
【実施例2】
【0053】
化学式3の化合物の調製
化学式2で表されるメチル 7-メトキシ-3-フェネチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[e][1,3]オキサジン-5-カルボキシレート(3.21g、9.82mmol)を、室温でエタノールに加え、3時間にかけて還流加熱された反応混合物にHClを滴下した。出発物質の消失を確認し、その後反応混合物を0℃まで冷却し、pHが8に達するまで水酸化ナトリウム水溶液を加えた。その後、反応混合物を室温で2時間にかけて撹拌した。反応を塩水(30mL)でクエンチし、CHCl3(3×30mL)で洗浄した。有機層を結合してMgSO4で乾燥し、ろ過してから、濃縮した。カラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製することで、目的の化合物である、化学式3で表される白色の固体の4-ヒドロキシ-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(1.52g、55%)を得た。
1H NMR(400MHz、)δ 7.27-7.13(m、5H)、6.76(d、J=2.1Hz、1H)、6.50(d、J=2.1Hz、1H)、4.14(s、2H)、3.81(dd、J=9.3、5.2Hz、2H)、3.77(s、3H)、2.96(t、J=7.3Hz、2H)。13C NMR(101MHz、)δ 169.56、161.73、153.10、138.79、134.31、128.46、128.27、126.21、120.75、105.10、97.57、54.70、44.11、34.20。
【実施例3】
【0054】
化学式4の化合物の調製
化学式3で表される4-ヒドロキシ-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(1.50g、5.30mmol)のDMF溶液に炭酸カリウム(2.5equiv)を加え、次にアリルブロマイド(1.27g、10.60mmol)を室温で滴下した。反応混合物を室温で5時間にかけて撹拌した。NaHCO3飽和水溶液(30mL)を加えることにより反応をクエンチ(quench)し、次にCHCl3(3×30mL)で洗浄した。結合された有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過してから、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/Et2O、20:1)により粗生成物を精製することで、化学式4で表される白色の固体の4-(アリルオキシ)-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(1.55g、91%)を得た。
1H NMR(400MHz、)δ 7.39-7.14(m、5H)、6.92(d、J=1.9Hz、1H)、6.54(d、J=2.0Hz、1H)、6.06-5.90(m、1H)、5.33(ddd、J=13.9、11.9、1.4Hz、2H)、4.54(dt、J=5.3、1.5Hz、2H)、4.16(s、2H)、3.93-3.76(m、5H)、2.96(dd、J=14.3、7.1Hz、2H)。13C NMR(101MHz、)δ 168.52、161.63、154.09、138.79、135.21、132.65、128.80、128.70、126.58、122.49、118.13、103.33、98.11、69.00、55.93、48.16、44.29、34.93。
【実施例4】
【0055】
化学式5の化合物の調製
化学式4で表される4-(アリルオキシ)-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(1.55g、4.8mmol)を、メシチレン(10mL)中で1日にかけて還流した。冷却された反応混合物を真空で濃縮し、次にAcOEt(30mL)に溶解させた。結合された有機層を飽和NaCl水溶液(100mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させ、次に濃縮した。溶離剤としてAcOEt及びヘキサン(1:3)の混合物を用い、シリカゲルカラムによって粗生成物を精製したところ、化学式5で表される白色の固体の5-アリル-4-ヒドロキシ-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(1.26g、84%)を得た。
1H NMR(400MHz、)δ 7.31-7.15(m、5H)、6.97(s、1H)、5.95(ddt、J=16.2、10.1、6.1Hz、1H)、5.22-5.04(m、2H)、4.18(s、2H)、3.89-3.80(m、5H)、3.58-3.46(m、2H)、3.01-2.89(m、2H)。13C NMR(101MHz、)δ 168.92、158.66、150.25、138.75、135.80、132.70、128.76、128.70、126.60、121.06、116.80、116.48、97.93、56.24、48.23、44.35、34.96、27.96。
【実施例5】
【0056】
化学式6の化合物の調製
DMF(25mL)の中の化学式5で表される5-アリル-4-ヒドロキシ-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(1.3g、4.02mmol)及び1Hイミダゾール(2.5equiv)が溶解されている溶液に、tert-ブチルジメチルクロロシラン(1.20g、8.04mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間にかけて撹拌した。その後、NaHCO3飽和水溶液を加えて反応をクエンチし、CH2Cl2(3×30mL)で洗浄した。結合された有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過してから、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/Et2O、20:1)により粗化合物を精製することで、化学式6で表される白色の固体の5-アリル-4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(1.48g、84%)を得た。
1H NMR(400MHz、)δ 7.27-7.21(m、5H)、7.07-7.02(m、1H)、5.95-5.79(m、1H)、4.90(ddd、J=18.8、13.6、1.8Hz、2H)、3.98(s、2H)、3.88-3.83(m、5H)、3.44-3.34(m、2H)、2.97(t、J=7.0Hz、2H)、0.96(s、9H)、0.09(s、6H)。13C NMR(101MHz、)δ 168.72、159.47、148.67、144.78、139.12、136.03、132.48、128.77、126.63、124.24、123.24、114.79、99.29、56.15、49.73、44.25、35.17、28.40、25.98、18.67、-3.26。
【実施例6】
【0057】
化学式7の化合物及び化学式8の化合物の調製
化学式6で表される5-アリル-4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(1.4g、1.20mmol)をEt2O(24mL)に溶解し、それから溶液に0.05MのOsO4アセトン溶液(2.5equiv)を加えた。得られた暗褐色の溶液を1時間にかけて撹拌し、溶液に水(24mL)を加え、次にNaIO4の微粉末(1.28g、6.0mmol)を5時間にかけて5回に分けて加えた。さらに黄褐色のスラリーを45分にかけて撹拌し、次にEt2Oで希釈して、層を分離した。有機層を飽和塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過してから、真空で濃縮することで、化学式7で表される粗生成物を得た。
【0058】
粗生成物をCH3OH(6.0mL)に溶解し、0℃に冷却してから、NaBH4(1.36g、3.60mmol)で処理した。30分後、10%HClを加えて過剰の水素化物(excess hydride)をクエンチし、生成された混合物をEt2Oで抽出した。結合された有機抽出物を飽和塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、SiO2プラグ(1.0in)によってセライト(Celite)パッド上にろ過してから、真空で濃縮することで、化学式8で表される白色の固体の4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(437mg、31%)を得た。
1H NMR(400MHz、)δ 7.28-7.10(m、5H)、6.99(s、1H)、4.86(s、2H)、4.00(s、2H)、3.90-3.80(m、5H)、3.58-3.50(m、2H)、2.98-2.93(m、4H)、0.99-0.96(m、9H)、0.11-0.09(m、6H)。13C NMR(101MHz、)δ 169.31、159.85、149.20、139.05、131.84、128.20、126.29、124.60、122.10、98.32、96.20、60.18、55.10、50.01、44.02、34.39、27.58、25.12、18.18、-4.52。
【実施例7】
【0059】
化学式1の化合物の調製
THF中の化学式8で表される4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(430mg、0.97mmol)の溶液に、THF中のフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1.46mmol)の1.0M溶液(1.46mL)を0℃で滴下した。溶液を2時間にかけて室温で撹拌し、次にNH4Cl飽和溶液に加えた。混合物をEt2Oで抽出し、次に結合された有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過してから、真空で濃縮することで油を得た。それをSiO2クロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン)により精製することで、化学式1で表される白色の固体の4-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-メトキシ-2-フェネチルイソインドリン-1-オン(261mg)を得た。
1H NMR(400MHz、)δ 7.34-7.19(m、5H)、7.19-7.14(m、1H)、6.85(s、1H)、4.15(s、2H)、3.86-3.79(m、5H)、3.64(t、J=7.0Hz、2H)、2.96(td、J=7.1、1.8Hz、4H)。13C NMR(101MHz、)δ 169.72、159.34、151.01、138.80、131.45、128.46、128.29、126.22、121.27、118.33、96.17、61.14、55.01、48.44、44.06、34.24、26.57。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B