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特許7326628電気コネクタとそれを備えたシステム、および電気コネクタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】電気コネクタとそれを備えたシステム、および電気コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20230807BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20230807BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01R13/533 Z
H01R13/03 D
H01R43/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022540751
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 US2021013533
(87)【国際公開番号】W WO2021158344
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】16/784,518
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】ハック, ハーベイ, ピー
(72)【発明者】
【氏名】ウィントガッセン, ジェームズ, アール
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0233607(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0011107(US,A1)
【文献】特開昭54-025491(JP,A)
【文献】特公昭48-020973(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0388952(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0169184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/533
H01R 13/03
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続された電気コネクタであって、
電気絶縁性の本体と、
水に晒されたときに電気絶縁不動態化層を形成する第1の導電性材料を含む自己不動態化接点と、
水に晒されたときに非反応性である第2の導電性材料を含む非不動態化接点と、を備えており、
前記自己不動態化接点は、前記電源によって前記非不動態化接点よりも高い電圧に保持されている、電気コネクタ。
【請求項2】
前記第1の導電性材料が遷移金属を含み、前記電気絶縁不動態化層が該遷移金属から形成された酸化物である請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記第1の導電性材料が前記自己不動態化接点の外側層である請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記遷移金属が、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、およびイリジウムを含む群から選択される請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記第2の導電性材料が、水性環境において耐食性を有する請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記第2の導電性材料が、銅、銀、金、白金、黒鉛、またはアルミニウムを含む請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記電気絶縁不動態化層が、水に晒されたときに前記自己不動態化接点から前記非不動態化接点へ電流が流れるのを防止する請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
第1の電気コネクタであって、
水に晒されたときに電気絶縁不動態化層を形成する自己不動態化導電性材料で形成された第1の自己不動態化接点と、
水に晒されたときに非反応性である非不動態化導電性材料で形成された第1の非不動態化接点と、を含む第1の電気コネクタと、
第2の電気コネクタであって、
前記第1の自己不動態化接点と嵌合するように構成されて、前記自己不動態化導電性材料で形成された第2の自己不動態化接点と、
前記第1の非不動態化接点と嵌合するように構成されて、前記非不動態化導電性材料で形成された第2の非不動態化接点と、を含む第2の電気コネクタと、
電源であって、
前記第1の自己不動態化接点を前記第1の非不動態化接点よりも高い電圧に保持するように構成された電源と、
を備えたシステム。
【請求項9】
前記自己不動態化導電性材料が遷移金属を含み、前記電気絶縁不動態化層が該遷移金属から形成された酸化物である請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記遷移金属が、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、およびイリジウムを含む群から選択される請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記非不動態化導電性材料が、水性環境において耐食性を有する請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記非不動態化導電性材料が、銅、銀、金、白金、黒鉛、またはアルミニウムを含む請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気絶縁不動態化層が、水に晒されたときに前記自己不動態化接点から前記非不動態化接点へ電流が流れるのを防止する請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2の自己不動態化接点が、前記第1の自己不動態化接点と嵌合する際に前記電気絶縁不動態化層の少なくとも一部を削り取り、該第1の自己不動態化接点と該第2の自己不動態化接点の間に電流が流れることを可能にするように構成されている請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
電気絶縁材料からコネクタ本体を形成することと、
水に晒されたときに電気絶縁不動態化層を形成する第1の導電性材料を含む自己不動態化陽極を形成することと、
水に晒されたときに非反応性である第2の導電性材料を含む非不動態化陰極を形成することと、
前記自己不動態化陽極および前記非不動態化陰極を前記コネクタ本体に設置することと、を含み、
前記電気絶縁不動態化層が、水に晒されたときに前記自己不動態化陽極から前記非不動態化陰極へ電流が流れることを防止する電気コネクタの製造方法。
【請求項16】
前記自己不動態化陽極を形成することが、前記第1の導電性材料として遷移金属を形成することを含み、前記電気絶縁不動態化層が、該遷移金属から形成された酸化物である請求項15に記載の電気コネクタの製造方法。
【請求項17】
前記自己不動態化陽極を形成することが、前記遷移金属を、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、およびイリジウムを含む群から選択することを含む請求項16に記載の電気コネクタの製造方法。
【請求項18】
前記自己不動態化陽極を形成することが、前記第2の導電性材料から形成された陽極を前記第1の導電性材料の層で被覆することを含む請求項15に記載の電気コネクタの製造方法。
【請求項19】
前記非不動態化陰極を形成することが、前記第2の導電性材料として水性環境において耐食性のある金属を形成することを含む請求項15に記載の電気コネクタの製造方法。
【請求項20】
前記非不動態化陰極を形成することが、前記第2の導電性材料を、銅、銀、金、白金、黒鉛、またはアルミニウムを含むように選択することを含む請求項19に記載の電気コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪環境下での電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
過酷な環境で使用するための電気コネクタは、一般に、当該環境が接点材料を劣化させたり、接続された電子機器を短絡させたりしないように、電気接点から当該環境を排除するように設計されている。過酷な環境は、電気接点を腐食させることによって、あるいは電気接点と反応することによって、電気接点を劣化させる場合がある。一例では、電気コネクタは、ガスケット、シール、および/またはオイル充填ブラダー(袋)の一式を使用して、電気接点から当該環境を排除してもよい。所期の電気的接続の外部に伝導経路を提供する湿潤環境に対しては、追加の予防措置が取られてもよい。外部の伝導経路により、電気接点が別の方法で腐食し、電気的接続をさらに劣化させる可能性がある。
【0003】
従来のコネクタの一例では、接点材料は、予想される環境と反応しない、または予想される環境と予測可能かつ管理可能な方法で反応する比較的特殊な材料から形成されてもよい。しかしながら、特殊材料および/または複雑なシーリングシステムを有するコネクタは、製造および/またはサービスに追加コストが発生する可能性がある。さらに、いくつかの特殊材料は、電気コネクタの製造および/または使用にさらなる問題をもたらす脆性などの望ましくない特性を有する場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に提示される技術は、電気絶縁性の本体と、非不動態化接点よりも高い電圧に保持されている自己不動態化接点とを含む電気コネクタを提供する。自己不動態化接点は、水に晒されたときに電気絶縁不動態化層を形成する第1の導電性材料を含む。非不動態化接点は、水に晒されたときに不動態化層を形成してもしなくてもよい第2の導電性材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】一実施形態に従う電気コネクタの概略図である。
図2】水環境に晒されたときの、一実施形態に従う電気コネクタを示す図である。
図3】水環境に晒されたときの、嵌合電気コネクタの一実施形態の概略図である。
図4】海水電気リターンを使用する電気コネクタの一実施例の概略図である。
図5】一実施形態に従う電気コネクタを製造するための製造工程の一実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
水中環境などの悪環境において電気コネクタの接点に自己不動態化材料を使用することにより、電気コネクタの接点間への印加電圧によって生じる腐食から保護するための重要なツールが提供される。本明細書で説明するように、接点は、例えば別の電気コネクタの他の接点と電気的接続を行うために形成される導電性材料である。より具体的には、陽極接点、すなわち陽極は、同じ環境において陰極接点、すなわち陰極よりも高い電位に保持される接点を説明するために使用される。陽極を高い電位に保つことで、陽極の材料は環境によって酸化され、陰極の材料は環境によって還元されるようにバイアスがかけられる。自己不動態化材料は、通常、材料の表面に薄い不動態化層を形成することで悪環境と反応する。一実施例では、自己不動態化材料は、悪環境中の液体または蒸気のいずれかである水と反応して不動態化層を形成する場合がある。不動態化層は、通常、環境と非反応性であり、環境とのさらなる反応から材料の大部分を保護する。別の実施例では、自己不動態化材料は導電性であってもよく、一方、不動態化層は、自己不動態化材料を介した悪環境への電気伝導を防ぐために電気絶縁性であってもよい。
【0007】
水中で自己不動態化する材料のいくつかの例には、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、およびイリジウムが含まれる。これらの材料はそれぞれ、水環境に晒されたときに水と反応して電気絶縁不動態化層を形成する。不動態化層は、酸化物、水酸化物、または自己不動態化材料が悪環境と反応することによって形成される他の化合物であってもよい。自己不動態化材料は、電気接点に通常使用される銅などの他の材料よりも高価である場合もある。
【0008】
電気コネクタの陽極接点(すなわち正接点)は、印加電圧によって生じる腐食から保護するために自己不動態化材料から形成されてもよいが、陰極接点(すなわち負接点)は、必ずしも同じ自己不動態化材料から作られる必要はない。電気的に生じる腐食は陽極で起こるため、陰極は、所期の使用環境において十分な耐食性を有し、予想される寿命にわたって十分に機能する任意の適切な材料から形成することができる。例えば、陰極は、銅、銀、金、白金、アルミニウム、またはそれらの合金から作られてもよい。あるいは、陰極は、黒鉛などの非金属導体で作られてもよい。陰極の材料選択の選択肢を増やすことで、コストを削減し、設計の柔軟性を向上させることができる。
【0009】
電気接点に使用されるいくつかの自己不動態化金属は、電気接点に使用される従来の金属よりもはるかに高価である。例えば、ニオブは、電気接点の接点に一般的に使用されるベリリウム銅(例えば、統一番号システム(UNS)C17200)などの銅合金の約10倍も高価である。陰極に銅合金を使用すれば、電気コネクタの原材料のコストが大幅に削減されるであろう。さらに、ニオブは機械加工するには柔らかく、粘着性があるが、銅合金は、より機械加工しやすい硬い材料となり得るため、結果的に製造コストを下げることができる。さらに、いくつかの自己不動態化材料は、従来の電気接点材料よりも導電性が低い場合がある。銅合金などの従来の電気接点材料から陰極を形成することにより、その接点がニオブなどの自己不動態化材料から作られる場合よりも小さい接点を使用することが可能となり、電気コネクタ全体のコストをさらに削減することができる。
【0010】
図1には、第1の電気コネクタとしての電気コネクタ110の一実施例が示されている。電気コネクタ110は、電気接点のための構造および分離を提供するためのコネクタ本体120を含む。コネクタ本体120は、例えば、プラスチックやゴムのような電気絶縁材料で形成されてもよい。電気コネクタ110はまた、第1の導電性材料としての自己不動態化材料132から形成された第1の自己不動態化接点としての陽極130を含む。陽極130は、自己不動態化材料132を、異なる材料134から作られた任意の内側接点の上にメッキして形成されてもよい。電気コネクタ110は、第2の導電性材料としての非不動態化材料142から形成された第1の非不動態化接点としての陰極140を含む。陰極は、非不動態化材料142を、異なる材料144から形成された任意の内側接点の上にメッキして形成されてもよい。陽極130および/または陰極140の形成方法の例は、2019年6月7日に出願された米国特許願第16/434,283号に示され、および/または説明されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
電源150は、電気コネクタ110の接点130、140に電圧を印加し、電気コネクタ110を介して接続される負荷に電力を供給し得る。電源150は、陽極130に接続された正極端子160と、陰極140に接続された負極端子170とを含む。一実施例では、電源150は、正極端子160と負極端子170との間に静的な電圧差を提供する。あるいは、正極端子160と負極端子170との間の電圧差は、例えば、電気コネクタ110を介して情報を伝達するために、時間と共に変化してもよい。本明細書に記載された接点と共に使用するのに適した他の電源の例は、2018年11月26日に出願された米国特許願第16/200,147号に示され、および/または説明されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
電気コネクタ110は、図1では、2ソケット電気コネクタ(例えば、図3を参照して後述する)と嵌合するように構成された2ピン電気コネクタとして示されているが、電気コネクタの他の構成も、本明細書に記載の技術と共に使用することができる。例えば、電気コネクタは、3つ以上のピンを有していてもよい。さらに、電気コネクタは、様々な形状の接点、例えば、ブレード、プレート、ブロック、柱、桟、スペード形、クリップ、スロット、同軸接続や、それらの組み合わせを含むことができる。さらに、電気コネクタは、同じ電気コネクタに、突出接点(例えば、ピン、ブレードなど)および受け接点(例えば、スロット、レセプタクルなど)の両方を含んでもよい。一般に、本明細書に記載の技術は、ピン、穴、プレート、スロット、突起、またはレセプタクルの任意の組み合わせの接点を有する電気コネクタに適用することができる。
【0013】
図2では、電気コネクタ110が、悪環境210の中に示されている。一実施例では、悪環境210は、水または電気を伝導する電解液の下に完全に沈んでいる場合がある。あるいは、悪環境210は、水蒸気、および/または液体の水へ周期的に晒される状態、を含む場合がある。例えば、海洋環境では、電気コネクタ110は、完全に水没することによって、または海水の飛散および噴霧によって、海水に晒される場合がある。
【0014】
電気コネクタ110が上述のように電源(例えば、電源150)に接続され、悪環境210に晒されると、自己不動態化材料132の少なくとも外側被覆を含む陽極130は、悪環境210と反応して不動態化層220を形成する。非不動態化材料142から形成された陰極140は、悪環境210と反応しない。不動態化層220は、電気絶縁性であり、電源150によって印加される電圧が悪環境210を通じて電流を押し出すことを防止する。一実施例では、不動態化層220は、自己不動態化材料132から形成される酸化物または他の化合物であってもよい。例えば、自己不動態化金属132はニオブ金属であってもよく、不動態化層220は、Nbなどのニオブの酸化物であってもよい。
【0015】
図3には、悪環境において2つの嵌合電気コネクタの間で電気的接続を行う例が示されている。図1および図2に関して説明した電気コネクタ110に接続するために、第2の電気コネクタとしての相補的な電気コネクタ310が提供される。電気コネクタ310は、電気コネクタ110のコネクタ本体120に嵌め込まれるように構成されたコネクタ本体320を含む。電気コネクタ310はまた、自己不動態化材料332から形成された第2の自己不動態化接点としての正極330を含み、この正極330は、悪環境210において不動態化層334を形成する。正極330は、電気コネクタ110の陽極130と整合するように構成される。第2の電気コネクタ310は、第1の電気コネクタ110と同じ材料で形成されてもよい。より具体的には、一実施例では、自己不動態化材料332は、異種金属間のガルバニック腐食を低減するために、自己不動態化材料132と同じ材料であってよい。また、摺動接触時に同種の金属間で発生し得るかじりを低減するために、自己不動態化材料332および132に異種金属を使用してもよい。
【0016】
電気コネクタ310はまた、非不動態化材料342から形成された第2の非不動態化接点としての負極340を含む。負極340は、電気コネクタ110の陰極140と整合するように構成される。一実施例では、非不動態化材料342は、異種金属間のガルバニック腐食を低減するために、非不動態化材料142と同じ材料である。また、摺動接触時に同種の金属間で発生し得るかじりを低減するために、非不動態化材料342および142に異種金属を使用してもよい。図1に関して説明した陽極130および陰極140と同様に、正極330および/または負極340は、それぞれ自己不動態化材料332および非不動態化材料342でメッキされた下地構造で形成されてもよい。
【0017】
電気コネクタ310は、負荷350に接続されて示されており、正極330は第1の端子352に接続され、負極340は第2の端子354に接続されている。負荷350は、電気コネクタ310を介して電力および/または通信信号を受け取るように構成された1つ以上の電気回路を含んでもよい。
【0018】
一実施例では、電気コネクタ110を電気コネクタ310に嵌合する動作は、電極130および330からそれぞれ不動態化層220および334を物理的に削り取り、電極が互いに良好な電気的接触となるように作用する。2つの電気コネクタを接続する処理の間、各電極間および各コネクタ本体間の収縮空間から、図示しない通気孔を通じて悪環境210を排出してもよい。ただし、コネクタ本体および/または電極の形態が、各電極間の十分な電気的接触を可能にする限り、悪環境210を排除する必要はない。
【0019】
図4には、海水のような導電性環境210で電気コネクタを使用するシステムの具体例が示されている。この例では、無人潜水艇(UUV)410が水中電源425から搭載バッテリ420を再充電している様子が図示されている。バッテリ420の正極端子は、UUV410から延びる陽極430に接続されている。陽極430は、ニオブのような自己不動態化材料から形成されている。陽極430は、導電性環境210においてUUV410を移動させることによって正極端子435を捕捉するように構成された形状に作られている。例えば、陽極430は、正極端子435を跨ぐように構成された2つの連結された突起として形成されてもよい。
【0020】
バッテリ420の負極端子は、UUV410から導電性環境210内に延びる海水接地電極440に接続される。導電性環境210は、海水接地電極440から、導電性環境210を通って、電源425の負極端子に接続されている相補的な海水接地電極445に、電気リターンとして電流を流すことができる。海水接地電極440および補完的な海水接地電極445は、黒鉛、混合金属酸化物、または貴金属などの耐食性材料から作られてもよい。
【0021】
図4に示す例では、UUV410の電源425への陽極接続に自己不動態化材料が使用されている。海水電気リターンは、UUV410の海水接地電極440を通って導電性環境210を通り、相補的な海水接地電極445へ、そして電源425へ戻って電気回路を完成させる。この配置により、ニオブなどの自己不動態化材料の簡易な露出ロッドまたはワイヤが、海水中でUUVなどの海中システムを充電する機構として機能することができる。当該接続はまた、UUVと電源との間でデータを転送するために使用されてもよい。
【0022】
図5には、本明細書に記載の技術に従って電気コネクタ(例えば、電気コネクタ110)を製造するための例示的な工程500を示すフローチャートが示されている。510において、コネクタ本体が電気絶縁材料から形成される。一実施例では、コネクタ本体は、適切な金型へのプラスチック射出によって形成されてもよい。電気絶縁材料は、コネクタ本体が悪環境で劣化しないように、予想される使用環境に従って選択されてもよい。別の実施例では、コネクタ本体は、電極を収容するための開口部を有して形成されてもよい。
【0023】
520において、自己不動態化陽極接点が、予想される使用環境に晒されたときに不動態化層を形成する第1の導電性材料から形成される。一実施例では、自己不動態化材料は、水に晒されたときに電気絶縁性の酸化物または他の化合物を形成する、ニオブまたはチタンなどの遷移金属であってよい。別の実施例では、自己不動態化導電性材料は、より安価または製造が容易とされ得る別の導電性材料上にメッキされる。更に別の実施例では、自己不動態化陽極接点は、ピン、プレート、穴、スロット、突起、またはレセプタクルとして形成されてもよい。
【0024】
530において、非不動態化陰極接点が、電気コネクタが使用されることが予想される環境に対して非反応性の第2の導電性材料から形成される。一実施例では、非不動態化陰極接点の導電性材料は、自己不動態化陽極接点の導電性材料よりも安価で機械加工が容易な、銅または銅合金であってもよい。別の実施例では、非不動態化陰極接点は、ピン、プレート、穴、スロット、突起、またはレセプタクルとして形成されてもよい。
【0025】
一実施例では、自己不動態化陽極を形成するための製造技術は、例えば、材料が異なることを理由に、非不動態化陰極を形成するための製造技術と異なっていてもよい。例えば、ニオブは比較的柔らかいため、機械加工には課題があるが、放電加工機で容易に切削できる場合がある。また、ニオブは化学エッチングに著しく支障をきたすが、銅は容易にエッチングして接点を形成できる場合がある。
【0026】
540において、自己不動態化陽極接点および非不動態化陰極接点は、電気コネクタを形成するためにコネクタ本体に設置される。陽極/陰極接点は、コネクタ本体とは別に形成され、例えば、圧入されることによってコネクタ本体に接合されてもよい。あるいは、陽極/陰極接点は、コネクタ本体内に形成されてもよい。
【0027】
要約すると、本明細書に記載の技術は、悪環境、例えば水中で使用するための電気コネクタの陽極接点(正接点)のみに自己不動態化材料を使用することを提供するものである。電気コネクタの2つの接点の一方が自己不動態化金属から作られることを可能にし、他方の接点が任意の耐食性導電体から作られることによって、コストを下げ、水中電気コネクタの設計空間を広げる。
【0028】
方法およびシステムは、その機能、特徴、および関係を説明する機能的構成要素を利用して本明細書に開示される。これらの機能的構成要素の境界の少なくともいくつかは、説明の便宜のために本明細書で任意に定義されている。特定の機能およびその関係が適切に実行される限り、代替の境界を定義してもよい。本明細書では、様々な実施形態が開示されているが、それらは例として提示されていることを理解されたい。特許請求の範囲は、本明細書に開示された例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。
【0029】
上述した内容は、例である。もちろん、構成要素または方法論の考え得る全ての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者であれば、多くのさらなる組み合わせおよび順列が可能であることを認識するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲を含む、本願の範囲内に入る全てのそのような変更、修正、および変形を包含することを意図している。本明細書で使用される場合、「含む(includes)」という用語は、含むがそれに限定されないことを意味し、「含んでいる(including)」という用語は、含んでいるがそれに限定されないことを意味する。「基づいて(based on)」という用語は、少なくとも部分的に基づいていることを意味する。さらに、本開示または請求項が「1つの(a)」、「1つの(an)」、「第1の(a first)」、または「もう1つの(another)」要素、またはその等価物を列挙する場合、1つ以上のそのような要素を含むと解釈されるべきで、2つ以上のそのような要素を要求も除外もしない。
図1
図2
図3
図4
図5