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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
H02P27/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022541026
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020030085
(87)【国際公開番号】W WO2022029940
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 公志
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-176554(JP,A)
【文献】特表2018-506253(JP,A)
【文献】特開2016-73097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相巻線が互いに非接続状態で配置されたモータを駆動するモータ駆動装置であって、
前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータと、
前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータと、
前記モータの起動に際し、前記第1および前記第2インバータから前記各相巻線に直流励磁電流を供給する直流励磁により前記モータのロータを初期位置へ回動させ、この回動後、前記ロータの回転速度が目標速度となるよう前記第1および前記第2インバータのスイッチングをPWM制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記相巻線における零軸電流がほぼゼロとなる前記直流励磁を行う、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記直流励磁電流は、前記PWM制御により前記各相巻線に流れる各相電流のうち、前記各相巻線における前記零軸電流がゼロとなる位相の各相電流に相等する複数の直流励磁電流である、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記直流励磁電流は、前記各相巻線に流れる各相電流のうち、いずれか1つの相電流がゼロとなり、残りの相電流が正側と負側で互いににほぼ同じ値となる位相の相電流に相等する、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記各相巻線は、3つの相巻線であり、
前記コントローラは、前記3つの相巻線のうち、1つの相巻線に直流励磁電流が流れず、他の1つの相巻線に一方向の直流励磁電流が流れ、残りの1つの相巻線に他方向の直流励磁電流が流れるように、前記第1インバータおよび前記第2インバータのスイッチングを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記各相巻線は、3つの相巻線であり、
前記直流励磁電流は、前記PWM制御により前記各相巻線に流れる3つの相電流のうち、1つの相電流がゼロとなり残りの2つの相電流が正側と負側で互いにほぼ同じ値となる位相の3つの相電流に相等する3つの直流励磁電流である、
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記1つの相電流がゼロとなり前記残りの2つの相電流が正側と負側で互いにほぼ同じ値となる位相は、30度・90度・150度・210度・270度・330度である、
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記モータの起動に際し、前記第1および第2インバータから前記各相巻線に直流励磁電流を供給する直流励磁により前記モータのロータを初期位置へ回動させ、
この回動後、前記第1および第2インバータから前記各相巻線に界磁成分電流を供給する強制転流により、前記ロータを回転させて前記モータの起動を完了し、
この起動の完了後、前記各相巻線に流れる前記各相電流に基づいて前記ロータの回転速度を検出し、検出した回転速度が前記目標速度となるよう前記第1および第2インバータの前記スイッチングを前記PWM制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータのモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機等を駆動するモータとして、複数の相巻線を有する永久磁石同期モータ(DCブラシレスモータともいう)が使用される。また、圧縮機を駆動するモータは、圧縮機内に内蔵される。圧縮機の内部は高温高圧となるため、モータの回転位置、すなわちロータ位置を検出するセンサは内蔵することができない。このため、この種のモータはインバータの出力に応答するモータ巻線電流からロータ位置を推定するセンサレス駆動となっている。また、永久磁石同期モータの一例として、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するオープン巻線モータ(Open-Winding Motor)が知られている。
【0003】
オープン巻線モータ(モータと略称する)を駆動するモータ駆動装置は、モータの各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータ、モータの各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータを備え、これら第1および第2インバータのスイッチングにより、モータを駆動する。とくに、モータの起動に際しては、第1および第2インバータからモータの各相巻線に所定の経路で直流励磁電流を流すいわゆる直流励磁により、モータのロータを予め定めた初期位置へと回動させて、その位置で固定させる初期位置決めを行う。この位置決めの後、第1および第2インバータから各相巻線に界磁成分電流を供給する強制転流を行い、起動を完了する。そして、起動の完了後、各相巻線に流れる電流を検出し、その検出電流に基づいてロータの回転速度及びロータ位置を検出もしくは推定し、その回転速度が目標速度となるよう第1および第2インバータのスイッチングをPWM制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4906836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記オープン巻線モータを駆動する際の特有の問題としてモータの通電に伴ってモータの駆動に寄与しない零軸電流が流れる。起動の初期位置決めに際し、直流励磁電流が各相巻線に流れることに伴い、零軸電流が増えてモータ損失が増大するという課題がある。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、モータの起動時のモータ損失を低減できるモータ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のモータ駆動装置は、複数の相巻線が互いに非接続状態で配置されたモータを駆動するもので、前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータと;前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータと;前記モータの起動に際し、前記第1および第2インバータから前記各相巻線に直流励磁電流を供給する直流励磁により前記モータのロータを初期位置へ回動させ、この回動後、前記ロータの回転速度が目標速度となるよう前記第1および第2インバータのスイッチングをPWM制御するコントローラと;を備える。そして、前記コントローラは、前記各相巻線における零軸電流がほぼゼロとなる前記直流励磁を行う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の構成を示すブロック図。
図2】同実施形態におけるコントローラの制御を示すフローチャート。
図3】同実施形態における直流励磁の位相を示す図。
図4】同実施形態における直流励磁の位相の他の例を示す図。
図5図4の直流励磁により流れる電流の経路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態のモータ駆動装置について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1に示すように、3相交流電源1に駆動回路2が接続され、その駆動回路2にモータ3およびコントローラ4が接続されている。
【0011】
モータ3は、互いに非接続状態の複数の相巻線Lu,Lv,Lwを有する圧縮機駆動用の三相永久磁石同期モータいわゆるオープン巻線モータ(Open-Winding Motor)であり、相巻線Lu,Lv,Lwを装着したステータ41、複数例えば2つの永久磁石M1,M2を埋設したロータ42、このロータ42を支持するロータ軸43を含む。
【0012】
上記駆動回路2は、3相交流電源1の3相交流電圧を全波整流して平滑し出力する直流電源部10、この直流電源部10の出力端とオープン巻線モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の通電を制御するインバータ(第1インバータ)20、および上記直流電源部10の出力端とオープン巻線モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの他端との間の通電を制御するインバータ(第2インバータ)30を含む。直流電源部10をインバータ20,30の共通の直流電源とする電源共通方式を採用している。
【0013】
インバータ20は、スイッチ素子たとえばIGBT21,22の直列回路、IGBT23,24の直列回路、IGBT25,26の直列回路を有し、IGBT21,22の相互接続点と相巻線Luの一端との間の通電、IGBT23,24の相互接続点と相巻線Lvの一端との間の通電、IGBT25,26の相互接続点と相巻線Lwの一端との間の通電を、IGBT21~26のスイッチング(オン,オフ)により制御する。IGBT21~26に、回生ダイオード(フリー・ホイール・ダイオードともいう)21a~26aが逆並列接続されている。
【0014】
インバータ30は、インバータ20と同様にスイッチ素子たとえばIGBT31,32の直列回路、IGBT33,34の直列回路、IGBT35,36の直列回路を有し、IGBT31,32の相互接続点と相巻線Luの他端との間の通電、IGBT33,34の相互接続点と相巻線Lvの他端との間の通電、IGBT35,36の相互接続点と相巻線Lwの他端との間の通電を、IGBT31~36のスイッチング(オン,オフ)により制御する。IGBT31~36に、回生ダイオード31a~36aが逆並列接続されている。
【0015】
なお、インバータ20は、実際には、上記3つの直列回路を互いに並列接続して構成される主回路と、この主回路のIGBT21~26を駆動する駆動回路などの周辺回路とを、単一のパッケージに収納したモジュールいわゆるIPM(Intelligent Power Module)である。インバータ30も、同様の構成のIPMである。
【0016】
インバータ20と相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の3つの通電ラインに電流センサ11u,11v,11wが配置されている。これら電流センサ11u,11v,11wは、相巻線Lu,Lv,Lwに流れる相電流Iu,Iv,Iwを検知する。これら電流センサ11u,11v,11wの検知信号がコントローラ4に送られる。
【0017】
コントローラ4は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、駆動回路2によるモータ駆動をセンサレス・ベクトル制御するもので、回転数検出部51、第1制御部52、第2制御部53、および第3制御部54を含む。
【0018】
回転数検出部51は、電流センサ11u,11v,11wで検知される相電流Iu,Iv,Iwに基づき、モータ3におけるロータ42の回転速度(角速度)を検出(推定)する。
【0019】
第1制御部52は、モータ3の起動に際し、インバータ20,30からモータ3の相巻線Lu,Lv,Lwに所定の経路で直流励磁電流Idu,Idv,Idwを供給する直流励磁により、モータ3のロータ42を予め定めた初期位置(所定の回転機械角)へと回動させる初期位置決めを行う。とくに、第1制御部52は、モータ3の起動に際し、相巻線Lu,Lv,Lwにおける零軸電流(零相電流ともいう)Izがほぼゼロとなる直流励磁を行う。この直流励磁を行うための直流励磁電流Idu,Idv,Idwは、第2制御部53の後述のPWM制御により相巻線Lu,Lv,Lwに流れる相電流Iu,Iv,Iwのうち、相巻線Lu,Lv,Lwにおける零軸電流Izがほぼゼロとなる位相の相電流Iu,Iv,Iwに相等する。零軸電流Izがほぼゼロとなる位相の相電流Iu,Iv,Iwとは、1つの相電流がゼロとなり残りの2つの相電流が正側と負側で互いにほぼ同じ値となる位相の相電流Iu,Iv,Iwである。1つの相電流がゼロとなり残りの2つの相電流が正側と負側で互いに同じ値となる位相の電気角は、いずれか1つの相電流が最大となる時の電気角を基準の0度とした場合に、30度・90度・150度・210度・270度・330度である。以下、位相の表記については、この基準を用いた電気角を意味する。
【0020】
第2制御部53は、上記直流励磁によりロータ42が初期位置へ回動した後、インバータ20,30から相巻線Lu,Lv,Lwに界磁成分電流(d軸電流)を供給する強制転流により、モータ3のロータ42を回転させてモータ3の起動を完了する。
【0021】
第3制御部54は、上記強制転流によるモータ3の起動完了後、回転数検出部51で検出されるロータ42の回転速度が外部から指令される目標速度となるよう、インバータ20,30のスイッチングをPWM制御(パルス幅変調制御)する。
【0022】
このコントローラ4が実行する制御を図2のフローチャートに示す。フローチャート中のステップS1,S2…については単にS1,S2…と略称する。
【0023】
モータ3の起動に際し(S1のYES)、コントローラ4は、モータ3のロータ42を予め定めた初期位置へ回動させるべく、相巻線Lu,Lv,Lwにおける零軸電流Izがほぼゼロとなる位相で直流励磁を行う(S2)。すなわち、コントローラ4は、1つの相巻線に直流励磁電流が流れず、他の1つの相巻線に一方向の直流励磁電流が流れ、残りの1つの相巻線に他方向の直流励磁電流が流れるように、インバータ20,30のスイッチングを制御する。
【0024】
この直流励磁によるロータ42の初期位置への回動後、コントローラ4は、インバータ20,30から相巻線Lu,Lv,Lwに界磁成分電流を供給する強制転流により(S3)、モータ3のロータ42を回転させてモータ3の起動を完了する。この起動完了後、コントローラ4は、回転数検出部51で検出されるロータ42の回転速度が目標速度となるよう、インバータ20,30のスイッチングをPWM制御(パルス幅変調制御)する(S4)。
【0025】
PWM制御により相巻線Lu,Lv,Lwに流れる運転中の相電流Iu,Iv,Iwは、図3に示すように、互いに120度の位相ずれをもって変化する。実線が相電流Iu、破線が相電流Iv、一点鎖線が相電流Iw、二点鎖線が零軸電流Izを示している。図3においては、U相の相電流Iuが最大となる時の電気角を基準の0度として表わしている。零軸電流Izは、各相電流の3倍周期で正弦波状に変化し、その各相電流の1周期中に6つの零クロス点を含む。これら零クロス点の位相は、30度・90度・150度・210度・270度・330度である。これらの位相ごとに、1つの相電流がゼロとなり残りの2つの相電流が正側と負側で互いに同じ値となる通電パターンが形成される。すなわち、1つの相巻線に繋がるインバータ20,30の各スイッチ素子はオフし、他の1つの相巻線に繋がるインバータ20の上側の1つのスイッチ素子がオンしてインバータ30の下側の1つのスイッチ素子がオンし、残りの1つの相巻線に繋がるインバータ30の上側の1つのスイッチ素子がオンしてインバータ20の下側の1つのスイッチ素子がオンする。
【0026】
直流励磁用の直流励磁電流Idu,Idv,Idwは、相巻線Lu,Lv,Lwに流れる相電流Iu,Iv,Iwのうち、1つの相電流がゼロとなり残りの2つの相電流が正側と負側で互いに同じ値となる位相たとえば30度の相電流Iu,Iv,Iwに相等する。この30度の位相では、直流励磁電流Idvがゼロとなり、直流励磁電流Idu,Idwが正側と負側で互いに同じ値となる。この直流励磁電流Idu,Idwが流れる経路を図1に破線矢印で示している。
【0027】
直流励磁電流Iduは、インバータ20の上側のIGBT21のオンおよびインバータ30の下側のIGBT32のオンにより、直流電源部10の正側出力端(+)からインバータ20の上側のIGBT21を通って相巻線Luの一端に流れ、その相巻線Luの他端からインバータ30の下側のIGBT32を通って直流電源部10の負側出力端(-)へ流れる。
【0028】
直流励磁電流Idwは、インバータ30の上側のIGBT35のオンおよびインバータ20の下側のIGBT26のオンにより、直流電源部10の正側出力端(+)からインバータ30の上側のIGBT35を通って相巻線Lwの他端に流れ、その相巻線Lwの一端からインバータ20の下側のIGBT26を通って直流電源部10の負側出力端(-)へ流れる。
【0029】
直流励磁電流Idvがゼロとなり、直流励磁電流Idu,Idwが正側と負側の互いに同じ値で平衡するので、直流電源部10の負側出力端(-)のラインからインバータ20,30を通って相巻線Lu,Lv,Lwへ向かう零軸電流Izはゼロとなる。零軸電流Izがゼロとなるので、直流励磁に際してのモータ損失を低減できる。
【0030】
仮に、図4に示すように、位相45度で直流励磁を行うと、直流励磁電流Idvがゼロから正側に外れた値となり、直流励磁電流Idu,Idwが正側と負側の互いに異なる値となる。この直流励磁電流Idu,Idv,Idwが流れる経路を図5に破線矢印で示す。
【0031】
直流励磁電流Iduは、インバータ20の上側のIGBT21のオンおよびインバータ30の下側のIGBT32のオンにより、直流電源部10の正側出力端(+)からインバータ20の上側のIGBT21を通って相巻線Luの一端に流れ、その相巻線Luの他端からインバータ30の下側のIGBT32を通って直流電源部10の負側出力端(-)へ流れる。
【0032】
直流励磁電流Idvは、インバータ20の上側のIGBT25のオンおよびインバータ30の下側のIGBT34のオンにより、直流電源部10の正側出力端(+)からインバータ20の上側のIGBT25を通って相巻線Lvの一端に流れ、その相巻線Lvの他端からインバータ30の下側のIGBT34を通って直流電源部10の負側出力端(-)へ流れる。
【0033】
直流励磁電流Idwは、インバータ30の上側のIGBT35のオンおよびインバータ20の下側のIGBT26のオンにより、直流電源部10の正側出力端(+)からインバータ30の上側のIGBT35を通って相巻線Lwの他端に流れ、その相巻線Lwの一端からインバータ20の下側のIGBT26を通って直流電源部10の負側出力端(-)へ流れる。また、スイッチ素子26を通過した直流励磁電流Idwのうち直流励磁電流Idu,Idvの合成分より大きい電流分Idw´が、インバータ30の下側のIGBT36の回生ダイオード36aを通って相巻線Lwに向かう零軸電流Izとなる。このような通電では、零軸電流Izが大きくなるので、モータ損失が増えてしまう。本実施形態ではこのような不具合を解消できる。
【0034】
なお、相電流Iu,Iv,Iwにおいて、1つの相電流がゼロとなり残りの2つの相電流が正側と負側で互いにほぼ同じ値となる位相は、30度だけでなく、90度・150度・210度・270度・330度である。90度の位相では、直流励磁電流Iduがゼロとなり、直流励磁電流Idv,Idwが正側と負側の互いにほぼ同じ値で平衡する。150度の位相では、直流励磁電流Idwがゼロとなり、直流励磁電流Idv,Iduが正側と負側の互いに同じ値で平衡する。これら30度・90度・150度・210度・270度・330度の位相のいずれかにおいて直流励磁を行えばよい。
【0035】
なお、モータ損失は、零軸電流の大きさに比例する。また、零軸電流は通常の正弦波でのモータ駆動周期に対し、3倍の周波数で略正弦波状に変化する。このため、零軸電流がゼロとなる状態が最も高効率となるが、零軸電流がゼロとなる近傍の位相で通電しても、十分にモータ効率は改善できる。したがって、完全に零軸電流をゼロにしなくとも、30度・90度・150度・210度・270度・330度の近傍の位相、例えば±5度の範囲におけるPWM制御の出力を行わせることでモータの効率向上が可能である。これらの位相における通電では、直流励磁電流Iduがほぼゼロで、直流励磁電流Idv,Idwが正側と負側の互いにほぼ同じ値となり、零軸電流Izはわずかに生じるがその値は小さいため、損失は小さく、モータの効率はそれほど低下しない。
【0036】
なお、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形例は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1…3相交流電源、2…駆動回路、3…オープン巻線モータ、4…コントローラ、10…直流電源部、20…インバータ(第1インバータ)、30…インバータ(第2インバータ)、41…ステータ、42…ロータ、Lu,Lv,Lw…相巻線
図1
図2
図3
図4
図5