(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】シワの発生が防止された銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20230808BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20230808BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20230808BHJP
C25D 1/04 20060101ALI20230808BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/64 A
C25D1/00 311
C25D1/04 311
C23C26/00 A
(21)【出願番号】P 2021561763
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 KR2020015966
(87)【国際公開番号】W WO2021101177
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0150119
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518133500
【氏名又は名称】エスケー ネクシリス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】ジン シャン ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ アン ナ
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ミン
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/027174(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0017188(US,A1)
【文献】特開2016-160503(JP,A)
【文献】特開2015-021186(JP,A)
【文献】特開2013-133514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64- 4/84
C25D 1/00
C25D 1/04
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット面およびシャイニー面を有する銅層、および
前記銅層上に配置された防錆膜、を含み、
絶対値を基準として0.5~25Mpaの残留応力(residual stress)を有し、
前記銅層は、
銅、および
炭素(C)、を含み、
前記銅層において、前記炭素(C)の含量は2~20ppmであり、
前記銅層は結晶質(crystalline)粒子を含む(111)面、(200)面、(220)面および(311)面を有し、
前記(111)面、前記(200)面、前記(220)面および前記(311)面の回折強度の和のうち前記(220)面の回折強度が占める比率が10~40%であり、
常温で前記(220)面の前記結晶質粒子は70~120nmの平均粒子の大きさを有する、銅箔。
【請求項2】
前記残留応力は前記(111)面、前記(200)面、前記(220)面および前記(311)面のうち少なくとも一つに対して測定されたものである、請求項1に記載の銅箔。
【請求項3】
前記残留応力は前記(200)面に対して測定されたものである、請求項1に記載の銅箔。
【請求項4】
130℃で30分の熱処理後、2~20%の延伸率を有する、請求項1に記載の銅箔。
【請求項5】
前記マット面方向の第1面および前記シャイニー面方向の第2面を有し、
前記第1面と前記第2面の表面粗さRaの差が0.5μm以下である、請求項1に記載の銅箔。
【請求項6】
前記マット面方向の第1面および前記シャイニー面方向の第2面を有し、
前記第1面と前記第2面の表面粗さRz JISの差が0.5μm以下である、請求項1に記載の銅箔。
【請求項7】
2~20μmの厚さを有する、請求項1に記載の銅箔。
【請求項8】
前記防錆膜はクロム、シラン化合物および窒素化合物のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の銅箔。
【請求項9】
銅箔、および
前記銅箔の少なくとも一面に配置された活物質層、を含み、
前記銅箔は請求項1~請求項8のいずれか一項に記載された銅箔である、二次電池用電極。
【請求項10】
正極(cathode)、
前記正極と対向配置された負極(anode)、
前記正極と前記負極の間に配置されてリチウムイオンが移動できる環境を提供する
電解液(electrolyte)、および
前記正極と前記負極を電気的に絶縁させる分離膜(separator)、を含み、
前記負極は、
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載された銅箔、および
前記銅箔上に配置された活物質層、を含む、二次電池。
【請求項11】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載された銅箔の製造方法であって、
銅イオンを含む電解液を製造する段階、および
前記電解液内に互いに離隔するように配置された正極板および回転陰極ドラムを30~70ASD(A/dm
2)の電流密度で通電させて銅層を形成する段階、を含み、
前記電解液は、
70~100g/Lの銅イオン、
70~150g/Lの硫酸、
1~45ppmの塩素(Cl)、
0.6g/L以下のヒ素(As)イオン、
0.01~0.1ml/Lの過酸化水素、および
有機添加剤、を含み、
前記有機添加剤は光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)および粗さ調節剤(D成分)のうち少なくとも一つを含み、
前記光沢剤(A成分)はスルホン酸またはその金属塩を含み、
前記減速剤(B成分)は非イオン性水溶性高分子を含み、
前記レベリング剤(C成分)は窒素(N)および硫黄(S)のうち少なくとも一つを含み、
前記粗さ調節剤(D成分)は窒素含有ヘテロ環4級アンモニウム塩またはその誘導体を含む、銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシワまたはカール(curl)の発生が防止された銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は電気エネルギーを化学エネルギーに変えて貯蔵してから、電気が必要な時に化学エネルギーを再び電気エネルギーに変換させることによって電気を発生させるエネルギー変換機器の一種である。二次電池は再充電が可能であるという点で充電式電池(rechargeable battery)とも指称される。
【0003】
このような二次電池のうち、リチウム二次電池は高い作動電圧、高いエネルギー密度および優秀な寿命特性を有する。最近、スマートフォン、ノートパソコンなどの携帯用電子機器の使用増加および電気自動車の商用化につれて、リチウム二次電池の需要が急増している。このような二次電池は銅箔からなる負極集電体を含むが、銅箔のうち、電解銅箔が二次電池の負極集電体として広く使われている。二次電池に対する需要の増加とともに、高容量、高効率および高品質の二次電池に対する需要が増加するにつれて、二次電池の特性を向上させ得る銅箔が要求されている。特に、二次電池の高容量化および安定した容量維持を担保できる銅箔が要求されている。
【0004】
一方、銅箔の厚さが薄いほど同一空間に含まれ得る活物質の量が増加し、集電体数が増加し得るため、二次電池の容量が増加し得る。しかし、銅箔が薄いほどカール(curl)が発生して、銅箔の巻き取り時にエッジ(Edge)部のカールによる銅箔の破裂またはシワ(wrinkle)のような不良が発生するため、極薄膜(very thin film)形態の銅箔の製造に困難がある。したがって、非常に薄い厚さを有する銅箔の製造のために、銅箔のカール(Curl)が防止されなければならない。
【0005】
一方、負極集電体として使われる電解銅箔は、約30~40kgf/mm2程度の引張強度を有するが、高容量リチウム二次電池の製造のために、高容量特性を有する金属系または複合系の活物質が最近脚光を浴びている。金属系または複合系の活物質は充放電過程で体積の膨張が激しいため、銅箔が活物質の体積の膨張に対応できなければならない。
【0006】
このような点などを考慮する時、銅箔の製造過程だけでなく、銅箔を利用した二次電池用電極または二次電池の製造過程で、銅箔でカール(Curl)、シワまたは破裂が発生してはならない。特に、ロールツーロール(Roll to Roll、RTR)工程による銅箔または銅箔を利用した二次電池用電極の製造過程で、巻き取り過程または活物質のコーティング過程で銅箔が破裂するなどの不良が発生してはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記のような要求を満足できる銅箔、それを含む電極、それを含む二次電池、および銅箔の製造方法に関する。
【0008】
本発明の一実施例は、薄い厚さを有しても、製造過程でカール、シワまたは破裂が発生しない銅箔を提供しようとする。また、本発明の一実施例は、銅箔を利用した二次電池用電極または二次電池の製造過程で、カール、シワまたは破裂が発生しない銅箔を提供しようとする。
【0009】
本発明の他の一実施例は、このような銅箔を含む二次電池用電極、およびこのような二次電池用電極を含む二次電池を提供しようとする。
【0010】
本発明のさらに他の一実施例は、カール、シワまたは破裂の発生が防止された銅箔の製造方法を提供しようとする。
【0011】
前記で言及された本発明の観点の他にも、本発明の他の特徴および利点が以下で説明されたり、そのような説明から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例は、銅箔を構成する銅層の結晶配向性を制御して銅箔のカール(Curl)現象を制御しようとする。また、銅箔内部の残留応力を減少させることによって、銅箔でカール(Curl)が発生することをできるたけ抑制しようとする。
【0013】
このために本発明の一実施例は、マット面およびシャイニー面を有する銅層、および前記銅層上に配置された防錆膜、を含み、絶対値を基準として0.5~25Mpaの残留応力(residual stress)を有し、前記銅層は、銅、および炭素(C)、を含み、前記銅層において、前記炭素(C)の含量は2~20ppmであり、前記銅層は結晶質(crystalline)粒子を含む(111)面、(200)面、(220)面および(311)面を有し、前記(111)面、前記(200)面、前記(220)面および前記(311)面の回折強度の和のうち前記(220)面の回折強度が占める比率が10~40%であり、常温で前記(220)面の前記結晶質粒子は70~120nmの平均粒子の大きさを有する、銅箔を提供する。
【0014】
前記残留応力は前記(111)面、前記(200)面、前記(220)面および前記(311)面のうち少なくとも一つに対して測定されたものである。
【0015】
前記残留応力は前記(200)面に対して測定されたものである。
【0016】
130℃で30分の熱処理後、2~20%の延伸率を有する。
【0017】
前記銅箔は、前記マット面方向の第1面および前記シャイニー面方向の第2面を有し、前記第1面と前記第2面の表面粗さRaの差が0.5μm以下である。
【0018】
また、前記銅箔は、前記マット面方向の第1面および前記シャイニー面方向の第2面を有し、前記第1面と前記第2面の表面粗さRz JISの差が0.5μm以下である。
【0019】
前記銅箔は2~20μmの厚さを有する。
【0020】
前記防錆膜はクロム、シラン化合物および窒素化合物のうち少なくとも一つを含む。
【0021】
本発明の他の一実施例は、前記銅箔、および前記銅箔の少なくとも一面に配置された活物質層、を含む二次電池用電極を提供する。
【0022】
本発明の他の一実施例は、正極(cathode)、前記正極と対向配置された負極(anode)、前記正極と前記負極の間に配置されてリチウムイオンが移動できる環境を提供する電解質(electrolyte)、および前記正極と前記負極を電気的に絶縁させる分離膜(separator)、を含み、前記負極は、前記銅箔および前記銅箔上に配置された活物質層を含む二次電池を提供する。
【0023】
本発明の他の一実施例は、銅イオンを含む電解液を製造する段階、および前記電解液内に互いに離隔するように配置された正極板および回転陰極ドラムを30~70ASD(A/dm2)の電流密度で通電させて銅層を形成する段階、を含み、前記電解液は、70~100g/Lの銅イオン、70~150g/Lの硫酸、1~45ppmの塩素(Cl)、0.6g/L以下のヒ素(As)イオン、0.01~0.1ml/Lの過酸化水素、および有機添加剤、を含み、前記有機添加剤は光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)および粗さ調節剤(D成分)のうち少なくとも一つを含み、前記光沢剤(A成分)はスルホン酸またはその金属塩を含み、前記減速剤(B成分)は非イオン性水溶性高分子を含み、前記レベリング剤(C成分)は窒素(N)および硫黄(S)のうち少なくとも一つを含み、前記粗さ調節剤(D成分)は窒素含有ヘテロ環4級アンモニウム塩またはその誘導体を含む、銅箔の製造方法を提供する。
【0024】
前記のような本発明に対する一般的な叙述は、本発明を例示または説明するためのものに過ぎず、本発明の権利範囲を制限しない。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施例によると、銅箔を構成する銅層の結晶配向性が制御され、銅箔内部の残留応力が減少して銅箔のカール(Curl)が減少する。これにより、銅箔の製造過程でカール、シワまたは破裂の発生が防止される。また、このような銅箔が使われる場合、二次電池用電極または二次電池の製造過程で銅箔のカール、シワまたは破裂が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付された図面は本発明の理解を助け、本明細書の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明と共に本発明の原理を説明する。
【0027】
【
図1】本発明の一実施例に係る銅箔の概略的な断面図である。
【
図2】オージェ電子(Auger electron)の発生を説明する概略図である。
【
図4】銅箔内部の残留応力に対するXRDグラフの例示である。
【
図5】本発明の他の一実施例に係る銅箔の概略的な断面図である。
【
図6】本発明のさらに他の一実施例に係る二次電池用電極の概略的な断面図である。
【
図7】本発明のさらに他の一実施例に係る二次電池用電極の概略的な断面図である。
【
図8】本発明のさらに他の一実施例に係る二次電池の概略的な断面図である。
【
図9】
図3に図示された銅箔の製造工程に対する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0029】
本発明の技術的思想および範囲を逸脱しない範囲内で本発明の多様な変更および変形が可能であることは、当業者に自明であろう。したがって、本発明は特許請求の範囲に記載された発明およびその均等物の範囲内の変更と変形をすべて含む。
【0030】
本発明の実施例を説明するために図面に開示された形状、大きさ、比率、角度、個数等は例示的なものであるため、本発明は図面に図示された事項によって限定されるものではない。明細書全体に亘って同一の構成要素は同一の参照符号が付され得る。
【0031】
本明細書で言及された「含む」、「有する」、「からなる」等が使われる場合、「~のみ」という表現が使われない限り、他の部分が追加され得る。構成要素が単数で表現された場合、特に明示的な記載事項がない限り複数を含む。また、構成要素の解釈において、別途の明示的な記載がなくても誤差範囲を含むものと解釈される。
【0032】
位置関係についての説明の場合、例えば、「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~そばに」等で両部分の位置関係が説明される場合、「すぐに」または「直接」という表現が使われない限り、両部分の間に一つ以上の他の部分が位置することができる。
【0033】
時間関係についての説明の場合、例えば、「~後に」、「~に引き続き」、「~次に」、「~前に」等で時間的前後関係が説明される場合、「すぐに」または「直接」という表現が使われない限り、連続的でない場合が含まれ得る。
【0034】
多様な構成要素を叙述するために、「第1」、「第2」等のような表現が使われるが、これらの構成要素はこのような用語によって制限されない。このような用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使うものである。したがって、以下で言及される第1構成要素は本発明の技術的思想内で第2構成要素であってもよい。
【0035】
「少なくとも一つ」の用語は一つ以上の関連項目から提示可能なすべての組み合わせを含むものと理解されるべきである。
【0036】
本発明の多様な実施例のそれぞれの特徴が、部分的にまたは全体的に互いに結合または組み合わせ可能であり、技術的に多様な連動および駆動が可能であり、各実施例が互いに対して独立的に実施可能であってもよく、関連関係で共に実施されてもよい。
【0037】
図1は、本発明の一実施例に係る銅箔101の概略的な断面図である。
【0038】
本発明の一実施例に係る銅箔101は銅層110を含む。銅層110はマット面(matte surface)MSおよびその反対側のシャイニー面(shiny surface)SSを有する。
【0039】
銅層110は、例えば、電気メッキを通じて回転陰極ドラム上に形成され得る(
図9参照)。この時、シャイニー面SSは電気メッキ過程で回転陰極ドラムと接触した面を指称し、マット面MSはシャイニー面SSの反対側の面を指称する。
【0040】
一般的にシャイニー面SSはマット面MSに比べて、低い表面粗さを有する。しかし、本発明の一実施例はこれに限定されるものではなく、シャイニー面SSの表面粗さがマット面MSの表面粗さと同一またはさらに高くてもよい。例えば、銅層110の製造に使われる回転陰極ドラム12(
図9参照)の研磨の程度により、シャイニー面SSの表面粗さはマット面MSの表面粗さ(Rz JIS)より低くてもよく高くてもよい。回転陰極ドラム12の表面は#800~#3000の範囲の粒度(Grit)を有する研磨ブラシによって研磨され得る。
【0041】
図1を参照すると、銅箔101は銅層110上に配置された防錆膜211を含む。防錆膜211は省略されてもよい。
【0042】
防錆膜211は銅層110のマット面MSおよびシャイニー面SSのうち少なくとも一つに配置され得る。
図1を参照すると、防錆膜211がマット面MSに配置される。しかし、本発明の一実施例はこれに限定されるものではなく、防錆膜211がシャイニー面SSにのみ配置されてもよく、マット面MSとシャイニー面SSの双方に配置されてもよい。
【0043】
防錆膜211は銅層110を保護して、保存または流通過程で銅層110が酸化したり変質することを防止することができる。したがって、防錆膜211を保護層とも言う。
【0044】
本発明の一実施例によると、防錆膜211はクロム(Cr)、シラン化合物および窒素化合物のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0045】
例えば、クロム(Cr)を含む防錆液、すなわち、クロム酸化合物を含む防錆液によって防錆膜211が作られ得る。
【0046】
本発明の一実施例によると、銅箔101は銅層110を基準としてマット面MS方向の表面である第1面S1およびシャイニー面SS方向の表面である第2面S2を有する。
図1を参照すると、銅箔101の第1面S1は防錆膜211の表面であり、第2面S2はシャイニー面SSである。本発明の一実施例によると、防錆膜211は省略されてもよく、防錆膜211が省略される場合、銅層110のマット面MSが銅箔101の第1面S1となる。
【0047】
銅層110は銅(Cu)および非銅成分(non-copper element)で炭素(C)を含む。非銅成分(non-copper element)は銅層110に含まれた銅以外の成分という点で不純物とも言える。炭素(C)は各種有機添加剤および有機添加剤の分解物、有機不純物によって由来する。
【0048】
銅層110の炭素(C)含量は2~20ppmである。炭素(C)の含量が2ppm未満の場合、結晶粒の粗大化の傾向が少なくなり、カール(Curl)現象が増加することになる。その反面、炭素(C)の含量が20ppm超過の場合、炭素(C)を含んだ有機添加剤を過度に多く使ったものであり、過度な不純物による銅箔内部の欠陥が増加し、不均一な内部エネルギーによって残留応力が増加することになる。したがって、銅層110の引張強度、延伸率および電気伝導性が低下し得る。
【0049】
銅箔101の銅層110に含まれた炭素(c)の含量はオージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)によって測定され得る。
【0050】
図2は、オージェ電子(Auger electron)の発生を説明する概略図である。
【0051】
オージェ効果は、原子やイオンから放出される電子によって他の電子が放出される物理的現象である。この時、発生する2番目の放出電子をオージェ電子(Auger electron)という。
【0052】
原子の内側の準位(1s)で電子(E1)一つが除去されて共析が残ることになると、高い準位(2s)の電子(E2)一つが共析を満たすことによって高い準位(2s)と共析の準位差だけのエネルギーが発生する。このように発生したエネルギーは光子の形態で放出されるか2番目の電子を追加で放出するのに使われる。
【0053】
このように、放出されたエネルギーが2番目を放出するのに使われて、2番目の電子が原子の外に放出される現象がオージェ効果であり、このとき放出された電子をオージェ電子(EAuger)という。
【0054】
本発明の一実施例によると、オージェ電子分光法(AES)により、アルゴン(Ar)イオンビームが試料に照射されて試料が食刻されながら放出されるオージェ電子(Auger electron)を分析して原子の含量を検出する。
【0055】
具体的には、銅箔100を切断して2cm×2cmの測定用サンプルを製造し、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)用機器であるPHI700(ULVAC-PHI、INC.)を利用してサンプルの表面から原子の個数を測定することができる。分析条件は次の通りである。
【0056】
-電子エネルギー分析器(Electron Energy Analyzer):CMA(Cylindrical Mirror Analyzer)
-電子ビームエネルギー(Electron Beam Energy):5KeV
-ターゲット電流(Target Current):10nA
-チルト(Tilt):30degrees
-スパッタリング食刻率(Sputtering Etching Rate):SiO2基準133Å/min(3KVのアルゴンイオンビーム)
【0057】
本発明の一実施例によると、銅層110は結晶面を有し、銅層110の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和のうち、(220)面の回折強度が占める比率が10~40%である。
【0058】
より具体的には、銅層110は複数の結晶面を有し、結晶面はミラー指数(Miller Index)を利用して表現され得る。具体的には、銅層110の結晶面は(hkl)面で表示され得る。このような結晶面はそれぞれ回折強度を有し、結晶面の回折強度はX線回折(XRD)を利用して測定または計算され得る。
【0059】
以下、
図3を参照して、銅箔101を構成する銅層110の結晶面の回折強度を測定および算出する方法を説明する。
【0060】
図3は、銅箔のXRDグラフについての例示である。より具体的には、
図3は銅箔101を構成する銅層110のXRDグラフである。
図3のピークはそれぞれ結晶面に対応する。
【0061】
回折強度の測定のために、まず、30°~95°の回折角(2θ)範囲で、X線回折法(XRD)によってn個の結晶面に対応するピークを有するXRDグラフを求める[Target:Copper K alpha 1、2θinterval:0.01°、 2θscan speed:3°/min]。
図3を参照すると、銅層110で(111)面、(200)面、(220)面および(311)面に該当する4個のピークを含むXRDグラフが得られる。この場合、nは4である。
【0062】
次に、このグラフから各結晶面(hkl)のXRD回折強度[I(hkl)]を求める。
【0063】
本発明の一実施例によると、銅層110の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和のうち、(220)面の回折強度が占める比率を次の式1によって算出する。
【0064】
式1
(hkl)面の回折強度の比率=100*I(hkl)/{I(111)+I(200)+I(220)+I(311)}
【0065】
(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和に対する(220)面の回折強度が占める比率が10%未満であると、銅層110で(111)面および(200)面の成長が相対的に高くなって(111)面および(200)面がまず配向され、それにより銅層110の結晶組織が過度に微細となり、不純物の混入も増加することになる。その結果、銅箔101の残留応力が増加して銅箔101でカール(Curl)の発生が増加し得る。
【0066】
(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和に対する(220)面の回折強度の比率が40%を超過すると、銅層110で(111)面および(200)面の成長が相対的に小さくなって銅層110の微細結晶組織が減少し、それにより銅箔101の強度が低くなる。
【0067】
したがって、本発明の一実施例によると、銅層110の結晶構造において(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和のうち、(220)面の回折強度が占める比率が10~40%の範囲に調整される。
【0068】
このように、本発明の一実施例によると、銅層110の結晶配向性を制御して銅箔101のカール(curl)を防止することができ、それにより銅箔101でシワが発生することを防止することができる。
【0069】
本発明の一実施例によると、銅箔101の銅層110は結晶性を有し、銅層110の各結晶面(hkl)は結晶質(crystalline)粒子を含む。換言すると、銅層110が結晶質(crystalline)粒子を含み、銅層110の結晶性により銅層110を含む銅箔101の物理的、機械的特性が変わり得る。
【0070】
本発明の一実施例において、結晶質(crystalline)粒子は特定の多面体の外形を有するか、または特定の多面体の外形を有しておらずとも原子の周期的な配列で形成された結晶格子によってX線回折現象が確認され得る粒子をすべて含む。
【0071】
銅層110に含まれた結晶質(crystalline)粒子は、70~120nmの平均粒子の大きさを有する。より具体的には、銅層110を厚さ方向に切断した銅層110の断面にかけて、結晶質(crystalline)粒子の平均粒子の大きさは70~120nmである。
【0072】
銅層110に含まれた結晶質(crystalline)粒子の平均粒子の大きさは、前述したX線回折法(XRD)を利用して測定または計算され得る。結晶質(crystalline)粒子の平均粒子の大きさは、各結晶面のXRDピーク値の半値幅を適用して計算され得る。
【0073】
半値幅とは、二つの物理的量の関係をグラフで示す場合、グラフの形態がピークをなす時、ピークの縦軸の値がピークの最大値の半分となる所の横軸の幅をいう。
【0074】
銅層110に含まれた結晶質粒子が微細であり、その平均粒子の大きさが小さい場合、銅箔100が高強度を有することができる。結晶質粒子の平均粒子の大きさと関連して、電解液に添加された有機添加剤から由来した窒素(N)または硫黄(S)成分は、銅層110の結晶粒構造に共析されて熱処理後にも銅層110に含まれた結晶質粒子の平均粒子の大きさが大きくならないようにするピン(pin)効果を示す。
【0075】
例えば、電解液を利用した電解メッキによって銅層110が製造される時、電解液に窒素(N)および硫黄(S)のうち少なくとも一つを含む鎖状または環状の有機物のうち少なくとも1種が添加される場合、有機物の元素が銅層110に共析(incorporation)される。このように共析された元素は銅層110の非銅成分、すなわち、不純物となる。このような非銅成分は、電解メッキによる銅層110の形成過程で銅成分が微細に電着されるようにし、それにより、小さい結晶粒からなる銅層110および銅箔100が形成されるようにする。このような銅箔100は高強度特性を有することができる。
【0076】
常温で銅層110に含まれた結晶質粒子の平均粒子の大きさが70nm未満の場合、相対的に(111)面、(200)面の成長が相対的に高くなって(111)面および(200)がまず配向され、それにより銅層110の結晶組織が過度に微細となり、不純物の混入も増加することになる。その結果、銅箔101の残留応力が増加して銅箔101でカール(Curl)の発生が増加し得る。その反面、銅層110に含まれた結晶質粒子の平均粒子の大きさが120nmを超過する場合、銅層110の微細結晶組織が減少し、銅箔100の高強度具現が難しくなる。
【0077】
本発明の一実施例によると、銅箔101は絶対値を基準として0.5~25Mpaの残留応力(residual stress)を有する。
【0078】
残留応力は物体に外力が加えられていないにもかかわらず、物体内部に残存する応力である。残留応力は加工されたり熱処理された物体の内部に生成された応力であり、物体の処理履歴によって引張応力または圧縮応力が物体に残存し得る。このような残留応力は物体を破壊させたり損傷させる原因となり得る。
【0079】
絶対値を基準として銅箔101が大きな残留応力を有する場合、銅箔のカール(Curl)が激しくなる。カール(Curl)現象は薄膜形態の銅箔で激しく発生するため、薄膜形態の銅箔製造時に特にカール(curl)現象を制御することが重要である。
【0080】
本発明の一実施例によると、銅箔の残留応力を調整することによって銅箔のカール(Curl)を防止する。
【0081】
具体的には、残留応力が正数であれば引張応力が、負数であれば圧縮応力が銅箔101に存在することを意味する。銅箔101の製造過程で使われた有機添加剤の組成により、銅箔は引張応力あるいは圧縮応力の形態の残留応力を有することができる。
【0082】
銅箔101の残留応力が0.5Mpa未満であると、銅層110形成のための電着過程で結晶断面の不均一によって銅箔101の表面が荒くなり得る。この場合、銅箔101を利用した二次電池用電極の製造過程で、銅箔101の表面で活物質が均一にコーティングされない可能性があり、二次電池の充放電容量維持率または安定性が低下し得る。
【0083】
銅箔101を構成する銅層110を製造するためのメッキ工程中に水素の部分的な共析(incorporation)または結晶粒の自己成長などによって、銅箔101は絶対値を基準として0.5Mpa以上の残留応力を有することができる。銅箔101の残留応力の絶対値が25Mpaを超過すると、二次電池の製造工程で銅箔101にカール(curl)またはシワなどが発生し得るため作業性が低下し、二次電池の不良率が増加する。
【0084】
したがって、本発明の一実施例によると、銅箔101の残留応力が絶対値を基準として0.5~25Mpaの範囲となるようにする。このために、銅層110の結晶配向性が調整され得る。すなわち、本発明の一実施例によると、銅層110の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和のうち(220)面回折強度が占める比率が10~40%となるようにして、銅箔101の残留応力が絶対値を基準として0.5~25Mpaの範囲となるようにする。
【0085】
銅箔101の残留応力は銅層110の結晶面のうち少なくとも一つで測定され得る。すなわち、銅層110の結晶面のうち少なくとも一つで測定された残留応力を銅箔101の残留応力と言える。例えば、銅箔101の残留応力は銅層110の結晶面のうち、(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のうち少なくとも一面で測定され得る。すなわち、(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のうち少なくとも一面に対して測定された残留応力が銅箔101の残留応力となり得る。
【0086】
本発明の一実施例によると、X線回折(X-ray Diffraction、XRD)残留応力測定機によって銅箔101の残留応力が測定され得る。より具体的には、銅層110の結晶面に対するX線回折(XRD)を利用する残留応力測定機によって銅層110各結晶面の残留応力が測定され得る。
【0087】
例えば、X線回折(XRD)残留応力測定機であるBruker社のD8 DISCOVERTMによって銅箔101の残留応力が測定され得る。この時、X線回折分析条件は次のように設定され得る。
【0088】
Target:3kW x-ray tube with Cu target
出力:40kV、40mA
波長:1.5406Å
測定範囲:30~100degree
scan axis:Theta-2Theta
scan speed:2deg/min
【0089】
図4は、銅箔内部の残留応力に対するXRDグラフの例示である。
図4は、特に銅層110の(200)面の残留応力測定のためのXRD結果を図示している。
【0090】
残留応力の測定時、銅の結晶面のうちいずれか一つを選定して2θ値は固定し、θ値のみ360°に回しながら測定する。銅層110の4個の主結晶面である(111)面、(200)面、(220)面および(311)面に対してそれぞれ残留応力が測定され得る。
【0091】
特に、XRDグラフにおいて、強度(intensity)は低いが解像度(resolution)が良い結晶面の残留応力を測定して、その測定値を銅箔101の残留応力と判定することができる。例えば、銅層110の(200)面は高角で優秀な測定解像度(resolution)を有し、高い信頼度を有する。したがって、銅層110の(200)面に対して測定された残留応力が銅箔101の残留応力となり得る。
【0092】
本発明の一実施例によると、銅箔101は130℃で30分の熱処理後、2~20%の延伸率を有する。延伸率はIPC-TM-650 Test Method Manualに規定された方法により万能試験機(UTM)によって測定され得る。本発明の一実施例によると、Instron社の設備が使われ得る。この時、延伸率測定用サンプルの幅は12.7mmであり、グリップ(grip)間の距離は50mmであり、測定速度は50mm/minである。
【0093】
130℃で30分の熱処理後、銅箔101の延伸率が2%未満であると、銅箔101が二次電池の集電体として使われる時に、高容量用活物質の大きな体積膨張に対応して銅箔101が十分に伸びずに破裂する危険がある。その反面、延伸率が20%を超過して過度に大きいと、二次電池用電極製造工程で銅箔101が容易に伸びて電極の変形が発生し得る。
【0094】
また、銅箔101は25±15℃の常温で2~20%の延伸率を有することができる。
【0095】
本発明の一実施例によると、銅箔101の第1面S1と第2面S2の表面粗さRaの差は0.5μm以下である。
【0096】
本発明の一実施例に係る表面粗さRaを算術平均粗さともいう。表面粗さRaは表面粗さプロファイルにおいて、測定区間(基準長さ)の中心線で上側と下側の全体面積の和を求め、その和を測定区間の長さで割った値に決定される。表面粗さRaはJIS B 0601-2001規格により、表面粗さ測定機(M300、Mahr)によって測定され得る。
【0097】
また、本発明のさらに他の一実施例によると、銅箔101の第1面S1と第2面S2の表面粗さRz JISの差は0.5μm以下である。
【0098】
本発明のさらに他の一実施例に係る表面粗さRz JISを十点平均粗さともいう。表面粗さRz JISは表面粗さプロファイルにおいて、サンプル区間の中心線から上側に最も遠く離れた5ヶ所の距離の和(絶対値)と、下側に最も遠く離れた5ヶ所の距離の和(絶対値)を足して5で割った値に決定される。表面粗さRz JISはJIS B 0601-2001規格により表面粗さ測定機(M300、Mahr)によって測定される。
【0099】
銅箔101の第1面S1と第2面S2の表面粗さ(RaまたはRz JIS)の差が0.5μmを超過する場合、銅箔101が二次電池用電極の電流集電体として使われる時、第1面S1と第2面S2の表面粗さ(RaまたはRz JIS)の差によって活物質が第1面S1と第2面S2の両面で均等にコーティングされない。それにより、二次電池の充放電時に両面S1、S2の電気的および物理的特性の差が発生し得、これによって二次電池の容量維持率および寿命が低下し得る。
【0100】
また、本発明の一実施例によると、銅箔101の第1面S1と第2面S2はそれぞれ0.80μm~1.30μmの表面粗さ(Ra)を有することができる。
【0101】
本発明の一実施例によると、銅箔101は2μm~20μmの厚さを有する。銅箔101が二次電池で電極の集電体として使われる時、銅箔101の厚さが薄いほど同一の空間内により多くの集電体が収容され得るため二次電池の高容量化に有利である。しかし、銅箔101の厚さが2μm未満である場合、銅箔101を利用した二次電池用電極または二次電池の製造過程で作業性が低下する。
【0102】
反面、銅箔101の厚さが20μmを超過する場合、銅箔101を利用した二次電池用電極の厚さが大きくなり、このような大きな厚さによって二次電池の高容量の具現に困難が発生し得る。
【0103】
図5は、本発明の他の一実施例に係る銅箔102の概略的な断面図である。以下、重複を避けるためにすでに説明された構成要素についての説明は省略される。
【0104】
図5を参照すると、本発明の他の一実施例に係る銅箔102は、銅層110および銅層110のマット面MSとシャイニー面SSにそれぞれ配置された二つの防錆膜211、212を含む。
図1に図示された銅箔101と比較して、
図5に図示された銅箔102は銅層110のシャイニー面SSに配置された防錆膜212をさらに含む。
【0105】
説明の便宜のために、二つの防錆膜211、212中銅層110のマット面MSに配置された防錆膜211を第1保護層といって、シャイニー面SSに配置された防錆膜212を第2保護層ともする。
【0106】
また、
図5に図示された銅箔102は、銅層110を基準として、マット面MS方向の表面である第1面S1とシャイニー面SS方向の表面である第2面S2を有する。ここで、銅箔102の第1面S1はマット面MSに配置された防錆膜211の表面であり、第2面S2はシャイニー面SSに配置された防錆膜212の表面である。
【0107】
本発明の他の一実施例によると、二つの防錆膜211、212はそれぞれクロム(Cr)、シラン化合物および窒素化合物のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0108】
図5に図示された銅箔102の銅層110は結晶構造を有し、結晶構造の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和のうち、(220)面の回折強度が占める比率は10~40%である。
【0109】
銅箔102は絶対値を基準として0.5~25Mpaの残留応力(residual stress)を有する。残留応力は銅層110の結晶面のうち、(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のうち少なくとも一つに対して測定され得る。より具体的には、残留応力は(200)面に対して測定され得る。
【0110】
130℃で30分の熱処理後、銅箔102は2~20%の延伸率を有し、銅箔102の第1面S1と第2面S2の表面粗さRaまたは表面粗さRz JISの差が0.5μm以下である。
【0111】
【0112】
図6は、本発明のさらに他の一実施例に係る二次電池用電極103の概略的な断面図である。
図6に図示された二次電池用電極103は、例えば、
図8に図示された二次電池105に適用され得る。
【0113】
図6を参照すると、本発明のさらに他の一実施例に係る二次電池用電極103は銅箔101および銅箔101上に配置された活物質層310を含む。ここで、銅箔101は銅層110および銅層110上に配置された防錆膜211を含み、電流集電体として使われる。
【0114】
具体的には、銅箔101は第1面S1と第2面S2を有し、活物質層310は銅箔101の第1面S1と第2面S2のうち少なくとも一つに配置される。活物質層310は防錆膜211上に配置され得る。
【0115】
図6に電流集電体として
図1の銅箔101が利用された例が図示されている。しかし、本発明のさらに他の一実施例はこれに限定されるものではなく、
図3に図示された銅箔102が二次電池用電極103の集電体として使われてもよい。
【0116】
また、銅箔101の第1面S1にのみ活物質層310が配置された構造が
図4に図示されているが、本発明のさらに他の一実施例はこれに限定されるものではなく、銅箔101の第1面S1と第2面S2の双方に活物質層310がそれぞれ配置され得る。また、活物質層310は銅箔101の第2面S2にのみ配置されてもよい。
【0117】
図6に図示された活物質層310は電極活物質からなり、特に負極活物質からなり得る。すなわち、
図6に図示された二次電池用電極103は負極として使われ得る。
【0118】
活物質層310は、炭素、金属、金属の酸化物および金属と炭素の複合体のうち少なくとも一つを含むことができる。金属として、Ge、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、NiおよびFeのうち少なくとも一つが使われ得る。また、二次電池の充放電容量を増加させるために、活物質層310はシリコン(Si)を含むことができる。
【0119】
二次電池の充放電が繰り返されるにつれて、活物質層310の収縮および膨張が交互に発生し、これは活物質層310と銅箔101の分離を誘発して二次電池の充放電効率を低下させる。特に、シリコン(Si)を含む活物質層310は膨張と収縮の程度が大きい。
【0120】
本発明のさらに他の一実施例によると、集電体として使われた銅箔101が活物質層310の収縮および膨張に対応して収縮および膨張できるため、活物質層310が収縮および膨張してもこれによって銅箔101が変形したり破裂しない。それにより、銅箔101と活物質層310の間で分離が発生しない。したがって、このような二次電池用電極103を含む二次電池は優秀な充放電効率および優秀な容量維持率を有する。
【0121】
図7は、本発明のさらに他の一実施例に係る二次電池用電極104の概略的な断面図である。
【0122】
本発明のさらに他の一実施例に係る二次電池用電極104は、銅箔102および銅箔102上に配置された活物質層310、320を含む。銅箔102は銅層110および銅層110の両面に配置された防錆膜211、212を含む。
【0123】
具体的には、
図7に図示された二次電池用電極104は、銅箔102の第1面S1と第2面S2にそれぞれ配置された二つの活物質層310、320を含む。ここで、銅箔102の第1面S1上に配置された活物質層310を第1活物質層といい、銅箔102の第2面S2に配置された活物質層320を第2活物質層ともいう。
【0124】
二つの活物質層310、320は互いに同一の材料によって同一の方法で作られてもよく、他の材料または他の方法で作られてもよい。
【0125】
図8は、本発明のさらに他の一実施例に係る二次電池105の概略的な断面図である。
図8に図示された二次電池105は、例えば、リチウム二次電池である。
【0126】
図8を参照すると、二次電池105は、正極(cathode)370、正極370と対向配置された負極(anode)340、正極370と負極340の間に配置されてイオンが移動できる環境を提供する電解質(electrolyte)350、および正極370と負極340を電気的に絶縁させる分離膜(separator)360を含む。ここで、正極370と負極340の間で移動するイオンは、例えば、リチウムイオンである。分離膜360は一つの電極で発生した電荷が二次電池105の内部を通じて他の電極に移動することによって無益に消耗することを防止するために、正極370と負極340を分離する。
図6を参照すると、分離膜360は電解質350内に配置される。
【0127】
正極370は正極集電体371および正極活物質層372を含む。正極集電体371としてアルミホイル(foil)が使われ得る。
【0128】
負極340は負極集電体341および活物質層342を含む。負極340の活物質層342は負極活物質を含む。
【0129】
負極集電体341として、
図1または
図5に開示された銅箔101、102が使われ得る。また、
図6または
図7に図示された二次電池用電極103、104が
図8に図示された二次電池105の負極340として使われ得る。
【0130】
以下、
図9を参照して、本発明の他の実施例に係る銅箔102の製造方法を具体的に説明する。
【0131】
図9は、
図5に図示された銅箔102の製造方法に対する概略図である。
【0132】
銅箔102を製造するために、まず銅イオンを含む電解液11が製造される。電解液11は電解槽10に収容される。
【0133】
次に、電解液11内に互いに離隔して配置された正極板13および回転陰極ドラム12が30~70ASD(A/dm2)の電流密度で通電されて銅層110が形成される。銅層110は電気メッキの原理によって形成される。正極板13と回転陰極ドラム12の間の間隔は8~13mmの範囲で調整され得る。
【0134】
正極板13と回転陰極ドラム12の間に印加される電流密度が30ASD未満の場合、銅層110の結晶粒生成が増加し、70ASDを超過する場合、結晶粒の微細化が加速化する。より具体的には、電流密度は40ASD以上に調整され得る。
【0135】
銅層110のシャイニー面SSの表面特性は回転陰極ドラム12の表面のバッフィングまたは研磨の程度により変わり得る。シャイニー面SS方向の表面特性の調整のために、例えば、#800~#3000の粒度(Grit)を有する研磨ブラシで回転陰極ドラム12の表面が研磨され得る。
【0136】
銅層110形成過程で、電解液11は40~70℃の温度に維持される。より具体的には、電解液11の温度は50℃以上に維持され得る。この時、電解液11の組成が調整されることによって銅層110の物理的、化学的および電気的特性が制御され得る。
【0137】
本発明の一実施例によると、電解液11は70~100g/Lの銅イオン、70~150g/Lの硫酸、1~45ppmの塩素(Cl)、0.6g/L以下のヒ素(As)イオンおよび有機添加剤を含む。
【0138】
銅の電着による銅層110の形成が円滑となるようにするために、電解液11内の銅イオンの濃度と硫酸の濃度はそれぞれ70~100g/Lおよび70~150g/Lに調整される。
【0139】
本発明の一実施例において、塩素(Cl)は塩素イオン(Cl-)および分子内に存在する塩素原子をすべて含む。塩素(Cl)は、例えば、銅層110が形成される過程で電解液11に流入した銀(Ag)イオンの除去に使われ得る。具体的には、塩素(Cl)は銀(Ag)イオンを塩化銀(AgCl)の形態で沈殿させることができる。このような塩化銀(AgCl)は濾過によって除去され得る。
【0140】
塩素(Cl)の濃度が1ppm未満の場合、銀(Ag)イオンの除去が円滑に行われない。その反面、塩素(Cl)の濃度が45ppmを超過する場合、過量の塩素(Cl)による不要な反応が発生し得る。したがって、電解液11内の塩素(Cl)の濃度は1~45ppmの範囲に管理される。より具体的には、塩素(Cl)の濃度は25ppm以下に管理され得、例えば、5~25ppmの範囲に管理され得る。
【0141】
電解液11内でヒ素(As)イオンの濃度は0.05~0.6g/Lに管理される。より具体的には、電解液11内でヒ素(As)イオンの濃度は0.1~0.3g/Lに管理される。ただし、電解液11内でヒ素(As)は、例えば、3価または5価のイオン状態(As3+またはAs5+)で存在することができる。ヒ素(As)は5価のイオンである場合に3価のイオンである場合より吸着性がさらに優秀であるため、さらに低い濃度で管理しなければならない。したがって、5価イオンのヒ素(As)を含む場合に、ヒ素イオン(As5+)の濃度は0.3g/L以下に管理される。その反面、3価のヒ素イオン(As3+)を含む場合にはヒ素(As)イオンの濃度は0.6g/L以下に管理される。しかし、本発明の一実施例はこれに限定されるものではない。
【0142】
ヒ素イオン(As5+)は一定の濃度区間では銅(Cu)の還元反応を促進する加速剤の役割をする。ヒ素イオン(As5+)の濃度が0.3g/L以下である場合、銅層110形成過程で結晶面を基準として(220)面がまず成長する。
【0143】
反面、ヒ素イオン(As5+)の濃度が0.3g/Lを超過する場合、銅イオンであるCu2+またはCu1+が銅(Cu)に還元される時に不溶性化合物が形成されて不純物が銅層110に共に電着(共析)され得る。また、ヒ素イオン(As5+)の濃度が高い場合、銅層110形成過程で結晶面を基準として(311)面、(111)面および(100)面がまず成長し、(220)面の成長が抑制され得る。
【0144】
したがって、銅層110の結晶構造において(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和のうち、(220)面の回折強度が占める比率が10~40%となるようにするために、電解液11内のヒ素イオン(As5+)の濃度は0.3g/L以下に調整される。
【0145】
一方、本発明の一実施例によると、銅層110の結晶配向性のために電解液11内でヒ素(As)イオンは0.05g/L以上の濃度を有することができる。すなわち、電解液11内でヒ素(As)イオンは0.05~0.6g/Lの濃度を有することができる。
【0146】
電解液11に含まれた有機添加剤は、光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)および粗さ調節剤(D成分)のうち少なくとも一つを含む。電解液11内で有機添加剤は1~150ppmの濃度を有する。
【0147】
有機添加剤は光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)および粗さ調節剤(D成分)のうち二つ以上を含むことができ、4つの成分すべてを含んでもよい。このような場合であっても、有機添加剤の濃度は150ppm以下である。有機添加剤が光沢剤(A成分)、減速剤(B成分)、レベリング剤(C成分)および粗さ調節剤(D成分)をすべて含む場合、有機添加剤は10~150ppmの濃度を有することができる。
【0148】
光沢剤(A成分)はスルホン酸またはその金属塩を含む。光沢剤(A成分)は電解液11内で1~50ppmの濃度を有することができる。
【0149】
光沢剤(A成分)は電解液11の電荷量を増加させて銅の電着速度を増加させ、銅箔のカール(Curl)特性を改善し、銅箔102の光沢を増進させることができる。光沢剤(A成分)の濃度が1ppm未満であると銅箔102の光沢が低下し、50ppmを超過すると銅箔102の粗さが上昇し強度が低下し得る。
【0150】
より具体的には、光沢剤(A成分)は電解液11内で5~30ppmの濃度を有することができる。
【0151】
光沢剤は、例えば、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩[bis-(3-Sulfopropyl)-disulfide disodium salt](SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-(N,N-ジメチルチオカルバモイル)-チオプロパンスルホネートソジウム塩、3-[(アミノ-イミノメチル)チオ]-1-プロパンスルホネートソジウム塩、o-エチルジチオカーボネート-S-(3-スルホプロピル)-エステルソジウム塩、3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロピル-スルホン酸ソジウム塩およびエチレンジチオジプロピルスルポン酸ソジウム塩(ethylenedithiodipropylsulfonic acid sodium salt)の中から選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0152】
減速剤(B成分)は非イオン性水溶性高分子を含む。減速剤(B成分)は電解液11内で5~50ppmの濃度を有することができる。
【0153】
減速剤(B成分)は銅の電着速度を減少させて銅箔102の急激な粗さ上昇および強度低下を防止する。このような減速剤(B成分)は抑制剤またはsuppressorとも呼ばれる。
【0154】
減速剤(B成分)の濃度が5ppm未満であると銅箔102の粗さが急激に上昇し、銅箔102の強度が低下する問題が発生し得る。その反面、減速剤(B成分)の濃度が50ppmを超過しても、銅箔102の外観、光沢、粗さ、強度、延伸率などの物性変化が殆どない。したがって、減速剤(B成分)の濃度を不要に高くして製造費用を上昇させ、原料を浪費することなく、減速剤(B成分)の濃度を5~50ppmの範囲に調整することができる。
【0155】
減速剤(B成分)は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレンコポリマー、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ヒドロキシエチレンセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリン酸ポリグリコールエーテルおよびステアリルアルコールポリグリコールエーテルの中から選択された少なくとも一つの非イオン性水溶性高分子を含むことができる。しかし、減速剤の種類はこれに限定されるものではなく、高強度銅箔102の製造に使われ得る他の非イオン性水溶性高分子が減速剤として使われ得る。
【0156】
減速剤(B成分)として使われる非イオン性水溶性高分子は500~30,000の数平均分子量を有することができる。減速剤(B成分)の数平均分子量が500未満であると減速剤(B成分)による銅箔102の粗さ上昇の防止および強度低下の防止効果が微小であり、30,000を超過すると減速剤(B成分)の大きな分子量によって銅層110の形成が容易になされないことがある。
【0157】
より具体的には、減速剤(B成分)として使われる非イオン性水溶性高分子は1,000~10,000の分子量を有することができる
【0158】
レベリング剤(C成分)は窒素(N)および硫黄(S)のうち少なくとも一つを含む。すなわち、レベリング剤(C成分)は一つの分子内に一つ以上の窒素原子(N)、または一つ以上の硫黄原子(S)を含むことができ、一つ以上の窒素原子(N)と一つ以上の硫黄原子(S)を含んでもよい。例えば、レベリング剤(C成分)は窒素(N)および硫黄(S)のうち少なくとも一つを含む有機化合物である。
【0159】
レベリング剤(C成分)は銅層110に過度に高いピークや過度に大きい突起が生成されることを防止し、銅層110が巨視的に平坦となるようにする。レベリング剤(C成分)は電解液11内で1~20ppmの濃度を有することができる。
【0160】
レベリング剤(C成分)の濃度が1ppm未満の場合、銅箔102の強度が低下して高強度銅箔102の製造に困難が発生する。その反面、レベリング剤(C成分)の濃度が20ppmを超過する場合、銅箔102の表面粗さが過度に上昇して強度が低下し得、銅箔102の表面にピンホールやカール(Curl)が発生して、銅箔102の製造後にワインダー(WR)からの分離が困難となり得る。
【0161】
レベリング剤(C成分)は、例えば、チオウレア(TU)、ジエチルチオウレア、エチレンチオウレア、アセチレンチオウレア、ジプロピルチオウレア、ジブチルチオウレア、N-トリフルオロアセチルチオウレア(N-trifluoroacetylthiourea)、N-エチルチオウレア(N-ethylthiourea)、N-シアノアセチルチオウレア(N-cyanoacetylthiourea)、N-アリルチオウレア(N-allylthiourea)、o-トリルチオウレア(o-tolylthiourea)、N,N’-ブチレンチオウレア(N,N’-butylene thiourea)、チアゾリジンチオール(thiazolidinethiol)、4-チアゾリンチオール(4-thiazolinethiol)、4-メチル-2-ピリミジンチオール(4-methyl-2-pyrimidinethiol)および2-チオウラシル(2-thiouracil)、3-(ベンゾトリアゾール-2-メルカプト)-プロスルホン酸)、2-メルカプトピリジン、3(5-メルカプト1H-テトラゾール)ベンゼンスルホネート、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルピリジン、2,2’-ビピリジン、4,4’-ビピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピリミジン、ピリノリン、オキサソール、チアゾール、1-メチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-メチル-2メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-エチル-4-メチルイミダゾール、N-メチルピロール、N-エチルピロール、N-ブチルピロール、N-メチルピロリン、N-エチルピロリン、N-ブチルピロリン、ピリミジン、プリン、キノリン、イソキノリン、N-メチルカルバゾール、N-エチルカルバゾールおよびN-ブチルカルバゾールの中から選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0162】
粗さ調節剤(D成分)は窒素含有ヘテロ環4級アンモニウム塩またはその誘導体を含む。
【0163】
粗さ調節剤(D成分)は銅箔102の光沢度および平坦性を向上させる。粗さ調節剤(D成分)は電解液11内で0.01~50ppmの濃度を有することができる。
【0164】
粗さ調節剤(D成分)の濃度が0.01ppm未満の場合、銅箔102の光沢度および平坦性向上効果が示されないこともある。その反面、粗さ調節剤(D成分)の濃度が50ppmを超過する場合、銅箔100の第1面S1、すなわちマット面MS方向の表面光沢が不均一となり、表面粗さが急激に上昇する問題があり、所望の粗さ範囲の確保に困難がある。より具体的には、粗さ調節剤(D成分)は電解液11内で3~20ppmの濃度を有することができる。
【0165】
粗さ調節剤(D成分)は下記の化学式1~6で表現される化合物のうち少なくとも一つを含むことができる。具体的には、粗さ調節剤(D成分)は下記の化学式6で表現される化合物を含むことができる。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
化学式1~6において、j、k、l、mおよびn1~n6はそれぞれ繰り返し単位を示し、1以上の整数であり、互いに同一であってもよく、異なってもよい。
【0173】
本発明の一実施例によると、化学式1~6で表現される化合物はそれぞれ500~12,000の数平均分子量を有する。
【0174】
粗さ調節剤として使われる化学式1~6で表現される化合物の数平均分子量が500未満の場合、単量体の比率が高いため銅箔102の表面粗さが高くなる。粗さ調節剤の含量が少ない場合、銅層110のマット面MSの表面粗さが高くなって光沢度および平坦性が低下し得る。
【0175】
化学式1~6で表現される化合物の数平均分子量が12,000を超過すると、銅箔102の表面粗さの偏差が大きくなる。この場合、他の添加剤の濃度を調整しても銅箔102のマット面方向の表面粗さの偏差が大きくなることを抑制し難い。
【0176】
化学式1~6で表現される化合物は例えば、DDAC(Diallyl dimethyl ammoniumchloride)を利用した重合または共重合で作られ得る。
【0177】
化学式1で表現される化合物として、PAS-H-1L(Mw 8500、Nittobo社)等がある。
【0178】
化学式2で表現される化合物として、例えば、PAS-2451(Mw 30,000、Nittobo社)、PAS-2401(Mw 2,000、Nittobo社)等がある。
【0179】
化学式3で表現される化合物として、例えば、PAS-2351(Mw 25,000、Nittobo社)等がある。
【0180】
化学式4で表現される化合物として、例えば、PAS-A-1(Mw 5,000、Nittobo社)、PAS-A-5(Mw 4,000、Nittobo社)等がある。
【0181】
化学式5で表現される化合物として、例えば、PAS-J-81L(Mw 10,000、Nittobo社)、PAS-J-41(Mw 10,000、Nittobo社)等がある。
【0182】
化学式6で表現される化合物として、例えば、PAS-21(Mw 5,000、Nittobo社)等がある。
【0183】
本発明の一実施例によると、有機添加剤を含む電解液11は過酸化水素(H2O2)をさらに含むことができる。連続メッキされる電解液11には有機添加剤によって有機不純物が存在するが、過酸化水素を処理することによって有機不純物を分解して銅箔内部の炭素(C)の含量を適切に調節することができる。電解液11内のTOC濃度が高いほど銅層110に流入する炭素(C)元素の量が増加し、それにより熱処理時に銅層110から離脱する全体元素の量が増加して熱処理後の銅箔102の強度が低下する原因となる。
【0184】
添加する過酸化水素の量は電解液L当たり0.01~0.1mlの過酸化水素を添加する。具体的には、電解液L当たり0.05~0.08mlの過酸化水素を添加することが好ましい。過酸化水素の添加量が0.01ml/L未満である場合には、有機不純物分解効果が殆どないため意味がない。過酸化水素の添加量が0.1ml/L超過の場合には、有機不純物が過度に分解されて、光沢剤、減速剤、レベリング剤および粗さ調節剤などの有機添加剤の効果も抑制される。
【0185】
本発明の一実施例によると、電解液11内に添加される有機添加剤、特に、窒素(N)または硫黄(S)を含む有機添加剤の濃度を調整して銅層110内に一定の量の炭素(C)、水素(H)、窒素(N)または硫黄(S)が共析されるようにすることができる。このような共析によって銅層110の結晶配向性が制御され得る。
【0186】
銅層110を形成する段階は、活性炭を利用して電解液11を濾過する段階、硅藻土を利用して電解液11を濾過する段階および電解液11をオゾン(O3)で処理する段階のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0187】
具体的には、電解液11の濾過のために、電解液11は35~45m3/hourの流量で循環され得る。すなわち、銅層110の形成のための電気メッキが遂行される間、電解液11に存在する固形不純物を除去するために、35~45m3/hourの流量で濾過が遂行され得る。この時、活性炭または硅藻土が使われ得る。
【0188】
電解液11の清浄度を維持するために、電解液11がオゾン(O3)で処理されてもよい。
【0189】
また、電解液11の清浄度のために、電解液11の原料となる銅ワイヤー(Cu wire)が洗浄され得る。
【0190】
本発明の一実施例によると、電解液11を製造する段階は、銅ワイヤーを熱処理する段階、熱処理された銅ワイヤーを酸洗浄する段階、酸洗浄された銅ワイヤーを水洗浄する段階および水洗浄された銅ワイヤーを電解液用硫酸に投入する段階を含むことができる。
【0191】
より具体的には、電解液11の清浄度維持のために、高純度(99.9%以上)銅ワイヤー(Cu wire)を750℃~850℃の電気炉で熱処理して銅ワイヤーに付着している各種有機不純物を焼いた後、10%硫酸溶液を利用して10~20分間熱処理された銅ワイヤーを酸洗浄し、蒸溜水を利用して酸洗浄された銅ワイヤーを水洗浄する過程を順次経て、電解液11製造用銅が製造され得る。水洗浄された銅ワイヤーを電解液用硫酸に投入して電解液11を製造することができる。
【0192】
本発明の一実施例によると、銅箔102の特性を満足させるために、電解液11内の全体の有機炭素(TOC)の濃度は200ppm以下に管理される。すなわち、電解液11は200ppm以下の全体の有機炭素(TOC)濃度を有することができる。
【0193】
このように製造された銅層110は洗浄槽20で洗浄され得る。
【0194】
例えば、銅層110の表面上の不純物、例えば、樹脂成分または自然酸化膜(natural oxide)等を除去するための酸洗浄(acid cleaning)および酸洗浄に使われた酸性溶液の除去のための水洗浄(water cleaning)が順次遂行され得る。洗浄工程は省略されてもよい。
【0195】
次に、銅層110上に防錆膜211、212が形成される。
【0196】
図7を参照すると、防錆槽30に入っている防錆液31内に銅層110を浸漬して、銅層110上に防錆膜211、212を形成することができる。防錆液31はクロムを含むことができ、クロム(Cr)は防錆液31内でイオン状態で存在することができる。
【0197】
防錆液31は1~10g/Lのクロムを含むことができる。防錆膜211、212の形成のために、防錆液31の温度は20~40℃に維持され得る。銅層110は防錆液31内に1~30秒程度浸漬され得る。
【0198】
一方、防錆膜211、212はシラン処理によるシラン化合物を含んでもよく、窒素処理による窒素化合物を含んでもよい。
【0199】
このような防錆膜211、212の形成によって銅箔102が作られる。
【0200】
次に、銅箔102が洗浄槽40で洗浄される。このような洗浄工程は省略され得る。
【0201】
次に、乾燥工程が遂行された後、銅箔102がワインダー(WR)に巻き取られる。
【0202】
以下、製造例および比較例を通じて本発明を具体的に説明する。ただし、下記の製造例および比較例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明の権利範囲は製造例または比較例によって限定されない。
【0203】
製造例1-4および比較例1-4
電解槽10、電解槽10に配置された回転陰極ドラム12および回転陰極ドラム12と離隔して配置された正極板13を含む製箔機を利用して銅箔を製造した。電解液11は硫酸銅溶液である。電解液11内の銅イオンの濃度は87g/L、硫酸の濃度は110g/L、過酸化水素(H2O2)の濃度は0.05~0.08ml/Lに維持、電解液の温度は55℃、電流密度は60ASDに設定された。
【0204】
また、電解液11に含まれたヒ素(As)イオン(As3+およびAs5+)の濃度、塩素(Cl)濃度および有機添加剤の濃度は下記の表1の通りである。
【0205】
有機添加剤のうち、光沢剤(A成分)としてビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)が使われ、減速剤(B成分)としてポリエチレングリコール(PEG)が使われ、レベリング剤(C成分)としてチオウレア(TU)が使われ、粗さ調節剤(D成分)として前記化学式2で表現される、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチル塩.二酸化硫黄共重合体(PAS-2401 TM、Nittobo社、Mw.2,000)が使われた。
【0206】
回転陰極ドラム12と正極板13の間に60ASDの電流密度で電流を印加して銅層110を製造した。次に、銅層110を防錆液に約2秒間浸漬させて銅層110の表面にクロメート処理をして防錆膜211、212を形成することによって、銅箔102を製造した。防錆液としてクロム酸を主成分とする防錆液が使われ、クロム酸の濃度は5g/Lであった。
【0207】
その結果、製造例1-4および比較例1-4の銅箔が製造された。
【0208】
【表1】
TU:thiourea PAS-2401:ジアリルメチルエチルアンモニウムエチル塩.二酸化硫黄共重合体(Mw 2,000、Nittobo社)
【0209】
このように製造された製造例1-4および比較例1-4の銅箔に対して、(i)残留応力(ii)(220)面の結晶質粒子の大きさ(iii)(220)面の回折強度が占める比率(iv)炭素(C)の含量(v)熱処理後の延伸率(vi)銅箔の第1面と第2面の表面粗さ(RaまたはRz JIS)の差、および(vii)銅箔のカール(curl)を測定した。
【0210】
また、銅箔を利用して二次電池を製造し、二次電池に対して充放電を実施した後、(viii)二次電池を解体してシワ発生の有無を観察した。
【0211】
(i)残留応力の測定
X線回折(X-ray Diffraction、XRD)を利用して銅箔の残留応力を測定した。より具体的には、銅層110の結晶面に対するX線回折(XRD)を利用して各結晶面の残留応力を測定した。
【0212】
常温で銅箔に対するX線回折分析条件は次の通りである。
【0213】
測定機器(モデル名):Bruker D8 DISCOVER
Target:3kW x-ray tube with Cu target
出力:40kV、40mA
波長:1.5406Å
測定範囲:30~100degree
scan axis:Theta-2Theta
scan speed:2deg/min
【0214】
具体的には、銅箔を構成する銅層110の結晶面の残留応力測定条件は次の表2の通りである。
【0215】
【0216】
(ii)(220)面の結晶質粒子の大きさ測定製造例1-4および比較例1-4で製造された銅箔を構成する銅層110の結晶面(220)面の結晶質粒子の平均粒子の大きさを測定した。
【0217】
X線回折法(XRD)を利用して測定または計算され得る。結晶質(crystalline)粒子の平均粒子の大きさは、各結晶面のXRDピーク値の半値幅を適用して計算され得る。
【0218】
(iii)(220)面の回折強度が占める比率測定
製造例1-4および比較例1-4で製造された銅箔を構成する銅層110の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和のうち、(220)面の回折強度が占める比率を測定した。
【0219】
まず、30°~95°の回折角(2θ)範囲で、X線回折法(XRD)によってn個の結晶面に対応するピークを有するXRDグラフを得た[Target:Copper K alpha 1、2θinterval:0.01°、2θscan speed:3°/min]。
図2bを参照すると、銅層110の場合、(111)面、(200)面、(220)面、および(311)面に該当する4個のピークを含むXRDグラフが得られ得る。ここで、nは4である。
【0220】
次に、このグラフから各結晶面(hkl)のXRD回折強度[I(hkl)]を求めた。
【0221】
銅層110の結晶面である(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の回折強度の和のうち、(220)面の回折強度が占める比率を次の式1によって算出する。
【0222】
式1
(hkl)面の回折強度の比率=100*I(hkl)/{I(111)+I(200)+I(220)+I(311)}
【0223】
(iv)炭素(C)の含量
製造例1-4および比較例1-4の銅箔を切断して2cm×2cmの測定用サンプルを製造し、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)用機器であるPHI700(ULVAC-PHI、INC.)を利用してサンプルの表面から原子の個数を測定することによって炭素(C)成分の含量を計算した。
【0224】
分析条件は次の通りである。
【0225】
-電子エネルギー分析器(Electron Energy Analyzer):CMA(Cylindrical Mirror Analyzer)
-電子ビームエネルギー(Electron Beam Energy):5KeV
-ターゲット電流(Target Current):10nA
-チルト(Tilt):30degrees
-スパッタリング食刻率(Sputtering Etching Rate):SiO2基準133Å/min(3KVのアルゴンイオンビーム)
【0226】
(v)熱処理後の延伸率測定
製造例1-4および比較例1-4で製造された銅箔を130℃で30分の熱処理後、銅箔の延伸率を測定した。
【0227】
延伸率はIPC-TM-650 Test Method Manualの規定により万能試験機(UTM)によって測定された。具体的には、Instron社の万能試験機を利用して延伸率を測定した。延伸率測定用サンプルの幅は12.7mmであり、グリップ(grip)間の距離は50mmであり、測定速度は50mm/minであった。
【0228】
(vi)銅箔の第1面と第2面の表面粗さ(RaまたはRz JIS)の差(ΔRaまたはΔRz JIS)
JIS B 0601-2001規格により表面粗さ測定機(M300、Mahr)を利用して、製造例1-4および比較例1-4で製造された銅箔の第1面S1と第2面S2の表面粗さ(RaまたはRz JIS)をそれぞれ測定した。測定結果を利用して、銅箔の第1面S1と第2面S2の表面粗さ(RaまたはRz JIS)の差(ΔRaまたはΔRz JIS)を計算した。
【0229】
(vii)銅箔のカール(curl)測定
製造例1-4および比較例1-4で製造された銅箔を幅方向に沿って30cmの幅で切断(30cm×30cm)してサンプルを準備した。サンプルのマット面MS方向である第1面S1が上を向くように支持台に配置した後、支持台から突出している高さを測定した。サンプルの4ヶ所で測定した高さの平均値を計算して銅箔のカール(curl)値を算定した。
【0230】
(viii)シワおよび破裂発生観察
1)負極の製造
商業的に利用可能な負極活物質用シリコン/カーボン複合負極材100重量部に2重量部のスチレンブタジエンゴム(SBR)および2重量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合し、蒸溜水を溶剤として利用して負極活物質用スラリーを調製した。ドクターブレードを利用して10cmの幅を有する製造例1-4および比較例1-4の銅箔上に40μmの厚さで負極活物質用スラリーを塗布し、これを120℃で乾燥し、1ton/cm2の圧力を加えて二次電池用負極を製造した。
【0231】
2)電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を1:2の割合で混合した非水性有機溶媒に溶質であるLiPF6を1Mの濃度で溶解して基本電解液を製造した。99.5重量%の基本電解液と0.5重量%のコハク酸無水物(Succinic anhydride)を混合して非水電解液を製造した。
【0232】
3)正極の製造
Li1.1Mn1.85Al0.05O4であるリチウムマンガン酸化物とo-LiMnO2であるorthorhombic結晶構造のリチウムマンガン酸化物を90:10(重量比)の比で混合して正極活物質を製造した。正極活物質、カーボンブラック、および結着剤であるPVDF[Poly(vinylidenefluoride)]を85:10:5(重量比)で混合し、これを有機溶媒であるNMPと混合してスラリーを製造した。このように製造されたスラリーを厚さ20μmのAl箔(foil)の両面に塗布した後、乾燥して正極を製造した。
【0233】
4)試験用リチウム二次電池の製造
アルミニウム缶の内部に、アルミニウム缶と絶縁されるように正極と負極を配置し、その間に非水電解液および分離膜を配置してコイン形態のリチウム二次電池を製造した。使われた分離膜はポリプロピレン(Celgard 2325、厚さ25μm、average pore sizeφ28nm、porosity 40%)であった。
【0234】
5)二次電池の充放電
このように製造されたリチウム二次電池を利用して4.3V充電電圧および3.4V放電電圧で電池を駆動し、50℃の高温で0.2C率(current rate、C-rate)で100回の充/放電を遂行した。
【0235】
6)シワまたは破裂発生の有無
100回の充放電後、二次電池を分解して銅箔にシワまたは破裂が発生するかどうかを観察した。銅箔にシワまたは破裂が発行した場合を「発生」と表示し、発生していない場合を「なし」と表記した。
【0236】
以上の試験結果は表3および4の通りである。
【0237】
【0238】
【0239】
表1および表3、4を参照すると、次のような結果を確認することができる。ヒ素(As)イオンとレベリング剤(C成分)を過量に含む電解液によって製造された比較例1の銅箔で(111)面の高い残留応力を有し、結晶質粒子の大きさが基準値より小さく、カール(curl)と破裂が発生した。
【0240】
光沢剤(A成分)を過量に含む電解液によって製造された比較例2の銅箔は高い残留応力を有し、結晶質粒子の大きさが基準値より小さかった。また、(220)面の回折強度の比率、炭素(C)含量および熱処理後の延伸率が基準値以下であり、第1面と第2面の表面粗さの差も大きく、シワ、カール(curl)と破裂が発生した。
【0241】
ヒ素(As)イオンを過量に含む電解液によって製造された比較例3の銅箔は高い残留応力を有し、結晶質粒子の大きさが基準値より小さかった。また、(220)面の回折強度の比率および炭素(C)含量が基準値以下であり、第1面と第2面の表面粗さの差も大きく、カール(curl)と破裂が発生した。
【0242】
ヒ素(As)イオンと塩素(Cl)を過量に含む電解液によって製造された比較例4の銅箔で低い残留応力を有し、シワと破裂が発生した。
【0243】
反面、本発明に係る製造例1-4の銅箔では20mm以下のカール(curl)が発生し、シワと破裂が発生しなかった。
【0244】
以上で説明された本発明は前述した製造例および添付された図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的事項を逸脱しない範囲内で多様な置換、変形および変更が可能であることが本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明白であろう。したがって、本発明の範囲は後述する特許請求の範囲によって表現され、特許請求の範囲の意味、範囲そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態も本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0245】
101、102:銅箔
211、212:防錆膜
310、320:活物質層
103、104:二次電池用電極
MS:マット面
SS:シャイニー面